JP2007335336A - ギ酸燃料を用いた燃料電池システム - Google Patents

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修一 鈴木
Yoshiyuki Takamori
良幸 高森
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貴彰 水上
Kenichi Soma
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Abstract

【課題】DFAFCはDMFCに比べ高い出力を得ることができるが、ギ酸は強酸であり、またメタノールと比較して毒性が強く、燃料を持ち運ぶ場合に取り扱い難い。本発明の目的は、取り扱いが容易な燃料を用いて高い出力密度を得ることが可能な燃料電池を提供する。
【解決手段】前記の課題を解決する為に、本発明では比較的取り扱いが容易な炭化水素燃料を、燃料電池システムに備わる改質器にてギ酸を含む燃料へ改質し、これを燃料として発電する燃料電池システムである。
【選択図】図1

Description

本願はメタノールをギ酸に改質して用いる燃料電池に関する。
燃料電池は少なくとも固体又は液体の電解質及び所望の電気化学反応を誘起する二個の電極,アノード及びカソードから構成され、その燃料が持つ化学エネルギーを直接電気エネルギーに高効率で変換する発電機である。燃料には化石燃料或いは水などから化学変換された水素、通常の環境で液体或いは溶液であるメタノール,ギ酸,アルカリハイドライドやヒドラジン又は加圧液化ガスであるジメチルエーテルが用いられ、酸化剤ガスには空気又は酸素ガスが用いられる。燃料はアノードにおいて電気化学的に酸化され、カソードでは酸素が還元されて、両電極間には電気的なポテンシャルの差が生じる。このときに外部回路として負荷が両極間にかけられると電解質中にイオンの移動が生起し外部負荷には電気エネルギーが取り出される。このために各種の燃料電池は、火力機器代替の大型発電システム,小型分散型コージェネレーションシステムやエンジン発電機代替の電気自動車電源としての期待は高く、実用化開発が活発に展開されている。
また非特許文献1では、ギ酸を燃料として使用する直接ギ酸形燃料電池(DFAFC:Direct Formic Acid Fuel Cell)が提案されている。
J. Power sources 144(2005) p.28-34
DFAFCはDMFCに比べ高い出力を得ることができるが、ギ酸は強酸であり、またメタノールと比較して毒性が強く、燃料を持ち運ぶ場合に取り扱い難い。
本発明の目的は、取り扱いが容易な燃料を用いて高い出力密度を得ることが可能な燃料電池を提供する。
前記の課題を解決する為に、本発明では比較的取り扱いが容易な炭化水素燃料を、燃料電池システムに備わる改質器にてギ酸を含む燃料へ改質し、これを燃料として発電する燃料電池システムである。
本発明によって、取り扱いが容易な炭化水素燃料を供給しながら、高い出力密度を得ることができる燃料電池システムを提供できる。
(実施例1)
本実施例の実施の形態を示す。
メタノールを燃料とするDMFCは、以下に示す電気化学反応でメタノールの持っている化学エネルギーが直接電気エネルギーに変換される形で発電される。アノード側では、供給されたメタノール水溶液が(1)式に従って反応して炭酸ガスと水素イオンと電子に解離する。
CH3OH+H2O→CO2+6H++6e- ・・・(1)
生成された水素イオンは、電解質膜中をアノードからカソードへ移動し、カソード上で空気中から拡散してきた酸素ガスと電極上の電子と(2)式に従って反応して水を生成する。
6H++3/2O2+6e-→3H2O ・・・(2)
従って、発電に伴う全化学反応は(3)式に示すようにメタノールが酸素によって酸化されて炭酸ガスと水を生成する反応となり、化学反応式はメタノールの火炎燃焼と同じになる。
CH3OH+3/2O2→CO2+H2O ・・・(3)
一方でギ酸を燃料とするDFAFCでは、アノード側の反応がDMFCと異なり、供給されたギ酸が(4)式に従って反応して炭酸ガスと水素イオンと電子に解離する。
HCOOH→CO2+2H++2e- ・・・(4)
カソード側での反応はDMFCと同様で(2)式のようになり、発電に伴う全化学反応は(5)式に示すようになる。
HCOOH+1/2O2→CO2+H2O ・・・(5)
ここで、本発明に係る燃料電池システムの模式図を図1に示す。燃料タンク11よりメタノール水溶液12が改質器13に供給される。ここで燃料タンク11へのメタノール水溶液12の供給は、例えば、持ち運び容易なメタノールカートリッジによって行うことができる。メタノール水溶液12のメタノール濃度は、特に規定されるものではないが、好ましくは1〜64重量%が良い。1重量%以下であると電池反応に必要な量のギ酸を生成することが困難となり、64重量%以上であると改質に必要な水が不足する。
改質器13に供給されたメタノール水溶液12は改質され改質燃料14となる。メタノール水溶液の改質反応は、例えば(6)〜(9)式のようになる。
CH3OH→HCHO+H2 ・・・(6)
HCHO+H2O→HCOOH+H2 ・・・(7)
HCHO+CH3OH→CH3OOCH3+H2 ・・・(8)
HCOOCH3+2H2O→2HCOOH+2H2 ・・・(9)
したがって改質燃料14は、ギ酸,ギ酸メチル,ホルムアルデヒド,水素,水の他に改質されなかったメタノールを含む。改質燃料14の組成は、改質器13に備わる触媒の量や改質器の温度で変化するが、好ましくは0.1 重量%以上、より好ましくは1重量%以上のギ酸を含むことが望ましい。ギ酸の量が少なすぎると、高い出力密度を得ることが困難である。ギ酸による発電反応は水を必要としないため、上限は無く、100%でもかまわない。
また改質器13に備わる改質触媒は、メタノールをギ酸へ改質するものであれば良いが、好ましくは白金,ルテニウム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,ロジウム,パラジウム,レニウム,イリジウム,金,銀,銅,モリブデン,錫から選ばれる少なくとも1種以上の金属が良く、より好ましくはパラジウム,銅,モリブデン,錫が良い。パラジウム,銅,モリブデン,錫は重量当りのギ酸改質活性が高く、コスト,性能の面から望ましい。また改質器13の構成は、ハニカムを用いることができる。これに前記改質触媒を担持することで改質器13を構成する。ハニカムの材料は、金属,樹脂,セラミック,炭素等、特に限定されるものではないが、好ましくはジルコニア,シリカ,アルミナ等のセラミックが良い。またハニカムの細孔径は、1〜100μmが好ましい。ハニカムへの改質触媒の担持法は、例えば含浸法が挙げられる。ハニカムの材料としてジルコニアを用い、改質触媒として銅を用いた場合、まずジルコニアハニカムを、硝酸銅錯体を含む水溶液に含浸する。1時間後にジルコニアハニカムを取り出し、大気中で120℃,24時間乾燥させる。その後、3%の水素を含むアルゴンガスを100ml/min で流しながら500℃にて3時間の熱処理を行うことで銅の微粒子がジルコニアハニカムに担持された改質器
13を得ることができる。ここで改質器13の模式図を図2に示す。ジルコニアハニカム21は四角形あるいは三角形,六角形の細孔を有しており、細孔壁22に改質触媒23が担持されている。なお改質触媒のハニカムへの担持量は、目的とする改質効率や用いる改質触媒,ハニカムの材料によって変化するため、特に規定されるものではないが、銅/ジルコニアを用いる場合には1〜20重量%が好ましい。これより少ないと、改質効率が低くなりすぎる。また多いと銅の凝集が起こり、銅比表面積が減少するため改質効率が低くなる。
改質燃料14は、燃料電池15へ供給され、燃料として消費される。燃料電池15において、消費されなかった未反応燃料16は再び改質器13に供給し、改質させることが、燃料の有効利用の観点から好ましいといえる。また改質器13はヒーターを備えることで、より効率的に改質を行うことができる。ただし、少ないスペースに燃料電池システムを配置しなければならない場合には、必ずしもヒーターを備える必要はない。ヒーターによる改質器13の加熱温度は、30〜350℃の範囲が望ましい。30℃以下の場合は、ヒーターを備える利点が少なく、350℃以上の場合はヒーターの断熱が容易ではなくなるとともにヒーターの消費電力が増大するため、好ましくない。より好ましくは70〜250℃の範囲がよい。
図3は、本発明の一実施形態に係る燃料電池の断面図の模式図である。燃料電池は、電極触媒とバインダーを含むアノード31,カソード33及びそれらの中間の固体高分子電解質膜32を有する膜/電極接合体を中心に構成される。アノード31およびカソード
33の外表面には、図示していないカーボンペーパーやカーボンクロスなどの拡散層を配置することが望ましい。アノード31側には、改質燃料35が供給され、二酸化炭素36が排出される。カソード33側には、酸素,空気等の酸化剤ガス37が供給され、導入した気体中の未反応気体と、水とを含む排ガス38が排出される。またアノード31と、カソード33は外部回路34へ接続される。ここで固体高分子電解質膜32には水素イオン導電性材料を用いると大気中の炭酸ガスの影響を受けることなく安定な燃料電池を実現できる。これは、OH- 導電材料の場合、大気中の炭酸ガスを吸収して中和されてしまうためである。このような材料としてポリパーフルオロスチレンスルフォン酸,パーフルオロカーボン系スルフォン酸などに代表されるスルフォン酸化したフッ素系ポリマーやポリスチレンスルフォン酸,スルフォン酸化ポリエーテルスルフォン類,スルフォン酸化ポリエーテルエーテルケトン類などの炭化水素系ポリマーをスルフォン化した材料或いは炭化水素系ポリマーをアルキルスルフォン酸化した材料を用いることができる。これらの材料を電解質膜として用いれば一般に燃料電池を80℃以下の温度で作動することができる。また、タングステン酸化物水和物,ジルコニウム酸化物水和物,スズ酸化物水和物などの水素イオン導電性無機物を耐熱性樹脂若しくはスルフォン酸化樹脂にミクロ分散した複合電解質膜等を用いることによって、より高温域まで作動する燃料電池とすることもできる。特にスルフォン酸化されたポリエーテルスルフォン類,ポリエーテルエーテルスルフォン類或いは水素イオン導電性無機物を用いた複合電解質類は、ポリパーフルオロカーボンスルフォン酸類に比較して燃料のメタノール透過性の低い電解質膜として好ましい。いずれにしても水素イオン伝導性が高く、メタノール透過性の低い電解質膜を用いると燃料の発電利用率が高くなるため本実施例の効果であるコンパクト化及び長時間発電をより高いレベルで達成することができる。またバインダーは同様に固体高分子電解質を用いることができ、電解質膜と同様の材質のものが使える。また膜/電極接合体の作製方法としては、電極触媒とバインダーを溶媒に分散させ、これを電解質膜に直接スプレー法,インクジェット法などで塗布する方法や、ポリテトラフルオロエチレンのシートなどに塗布し、熱転写によって電解質膜に貼り付ける方法、あるいは拡散層に塗布した後に電解質膜に貼り付ける方法がある。ここでアノードの電極触媒としては白金,ルテニウム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,ロジウム,パラジウム,レニウム,イリジウム,金,銀,銅,モリブデン,錫から選ばれる少なくとも1種以上の金属が望ましい。より望ましい形態としては、白金,ルテニウム,パラジウムの3種類の金属を用いることである。白金,ルテニウム,パラジウムの3種を触媒として用いる場合、白金とルテニウムは合金となっていることが望ましく、パラジウムはできるだけ、白金,ルテニウムと合金化していない方が良い。ここで白金,ルテニウム合金はメタノール酸化触媒として働き、パラジウムはギ酸酸化触媒として働く。パラジウムを白金,ルテニウムと合金化してしまうと、ギ酸を酸化する高い触媒活性が得られなくなる。このような触媒を用いることで、改質により得られたギ酸は、パラジウム上で酸化され、未反応のメタノールや他の改質された燃料は白金,ルテニウム合金にて酸化され、より効率よく発電を行うことが可能となる。またカソードの電極触媒は、特に限定されるものではないが、白金が望ましい。
(実施例2)
本実施例に係る燃料電池システムの模式図を図4に示す。改質器43は多孔体にて構成される。ここで多孔体の材料は、金属,樹脂,セラミック,炭素等、特に限定されるものではないが、好ましくはジルコニア,シリカ,アルミナ等のセラミックが良い。また多孔体の細孔径rc は、(10)式の関係を満たすことが望ましい。
ρghc≦2ρcosθc/rc ・・・(10)
ここでρはメタノール水溶液42の粘度、gは重力加速度、hc は燃料タンク41と多孔体の最大液面高低差、θc は多孔体材料とメタノール水溶液42との接触角を示す。このような関係をとることで、メタノール水溶液は多孔体中に毛管力によって吸い上げられ、ここに保持される。前記多孔体に改質触媒を担持することで改質器41とする。ここで改質触媒としては、実施例1と同様のものが選ばれる。また改質触媒の担持法も実施例1と同様の方法を用いることができる。本実施例においては、メタノール水溶液42は、燃料タンク41より改質器43に吸い上げられ、保持されると同時に、ギ酸,ギ酸メチル,ホルムアルデヒド,水素を含む改質燃料44へと改質され、未反応のメタノールおよび水とともに燃料電池45のアノードへと供給される。ここで改質器43は燃料電池45のアノードと拡散層を介して接触される。なおこの際に、改質器43を構成する多孔体の毛管力が、拡散層およびアノードの毛管力よりも弱くなるようにrc を決定することが望ましい。こうすることで、改質燃料44は容易に燃料電池45へと供給される。ここで燃料電池45の構成は実施例1と同様である。このような構成をとることで、メタノール水溶液42は、改質器43の中に保持されている時間が長くなり、より効率的に改質を行うことが可能となる。
(実施例3)
また作成したDMFCを携帯用情報端末に実装した例を図5に示す。この携帯用情報端末は、タッチパネル式入力装置が一体化された表示装置51とアンテナ52を内蔵した部分とDMFC53,プロセッサ,揮発及び不揮発メモリ,電力制御部,燃料電池及び二次電池ハイブリッド制御,燃料モニタなどの電子機器及び電子回路などを実装したメインボード54,リチウムイオン二次電池55を搭載する部分が燃料カートリッジ56のホルダーをかねたヒンジ57で連結された折たたみ式の構造をとっている。
このようにして得られる携帯用情報端末は、燃料電池システムの出力が高いため、燃料電池システムを小さくでき、軽量でコンパクトな構成とすることができる。
本発明の実施例に係る燃料電池システムの模式図。 本発明の実施例に係る改質器の模式図。 本発明の実施例に係る燃料電池の模式図。 本発明の実施例に係る燃料電池システムの模式図。 本発明の実施例に係る燃料電池を搭載した携帯用情報端末。
符号の説明
11,41…燃料タンク、12,42…メタノール水溶液、13,43…改質器、14,35,44…改質燃料、15,45…燃料電池、16…未反応燃料、21…ジルコニアハニカム、22…細孔壁、23…改質触媒、31…アノード、32…固体高分子電解質膜、33…カソード、34…外部回路、36…二酸化炭素、37…酸化剤ガス、38…排ガス、51…表示装置、52…アンテナ、53…DMFC、54…メインボード、55…リチウムイオン二次電池、56…燃料カートリッジ、57…ヒンジ。

Claims (12)

  1. ギ酸を含む燃料を酸化するアノードと、酸素を還元するカソードと、前記アノードと前記カソードとの間に形成される固体高分子電解質膜とを有する燃料電池と、炭化水素燃料をギ酸を含む燃料に改質する改質部と、前記ギ酸を含む燃料を前記アノードに供給する機構とを備える燃料電池システム。
  2. 前記炭化水素燃料がメタノール水溶液である請求項1記載の燃料電池システム。
  3. 前記改質部に白金,ルテニウム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,ロジウム,パラジウム,レニウム,イリジウム,金,銀,銅,モリブデン,錫、から選ばれる少なくとも1種以上の改質触媒を有する請求項2記載の燃料電池システム。
  4. 前記改質部にパラジウム,銅,モリブデン,錫、から選ばれる少なくとも1種以上の改質触媒を有する請求項2記載の燃料電池システム。
  5. 前記改質部の構造がハニカム構造である請求項3記載の燃料電池システム。
  6. 前記改質部の構造が多孔体である請求項3の燃料電池システム。
  7. 前記改質部が前記アノードと接触する請求項6記載の燃料電池システム。
  8. 前記アノードに、白金,ルテニウム,マンガン,鉄,コバルト,ニッケル,ロジウム,パラジウム,レニウム,イリジウム,金,銀,銅,モリブデン,錫、から選ばれる少なくとも1種以上の触媒を有する請求項1記載の燃料電池システム。
  9. 前記アノードに、白金,ルテニウム,パラジウムから選ばれる少なくとも1種以上の触媒を有する請求項1記載の燃料電池システム。
  10. 前記燃料電池のアノードに白金とルテニウムが合金として備わっており、且つパラジウムが前記白金及びルテニウムと合金となることなく備わっていることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。
  11. メタノール水溶液を貯蔵するメタノールタンクから、前記改質器にメタノールを供給する請求項1記載の燃料電池システム。
  12. 請求項10記載の燃料電池システムを搭載した電子機器。
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