図1から図8には、本発明の実施例1である撮影装置(光学機器)のレンズ鏡筒部の構成を示している。図1は、本実施例のレンズ鏡筒部の分解斜視図である。
また、図2は、該レンズ鏡筒部を光軸を含む水平面で切断した断面図である。図3は、該レンズ鏡筒部を構成する第1振動型リニアアクチュエータ部分の拡大図である。図4は、図3のB−B断面図、図5は、図3のA−A断面図である。図6は、該レンズ鏡筒部を構成する第2振動型リニアアクチュエータの拡大図である。図7は、図6のH−H断面図、図8は、図6のG−G断面図である。
図1および図2において、物体側から順に、1は固定された第1レンズユニット、2は変倍のために光軸方向(第1の方向)に移動する第2レンズユニット、15は光量調節ユニットである。3は固定された第3レンズユニット、4は変倍に伴う像面変動の補正および焦点調節のために光軸方向に移動する第4レンズユニットである。
5は後述する撮像素子やローパスフィルタ(LPF)を保持し、不図示のカメラ本体に固定される後部鏡筒である。6は第1レンズユニット1を保持し、ビス7、8、9により後部鏡筒5に固定された第1レンズ保持部材である。
10、11は後部鏡筒5と第1レンズ保持部材6により光軸方向に平行に保持されたガイドバー(ガイド部材)である。
12は第2レンズユニット2を保持する第2レンズ保持部材であり、不要光をカットするマスク32が固定されている。
この第2レンズ保持部材12は、係合部(スリーブ部)12aにてガイドバー10に係合して光軸方向にガイドされ、係合部(U溝部)12bにてガイドバー11に係合してガイドバー10回りでの回転が阻止されている。
13は第3レンズユニット3を保持し、ビス16により後部鏡筒5に固定された第3レンズ保持部材である。14は第4レンズユニット4を保持する第4レンズ保持部材であり、係合部(スリーブ部)14aにてガイドバー11に係合して光軸方向にガイドされ、係合部(U溝部)14bにてガイドバー10に係合してガイドバー11回りでの回転が阻止されている。
光量調節ユニット15は、光軸方向から見て左右方向よりも上下方向に長い外形形状を有する。この光量調節ユニット15は、ビス17により後部鏡筒5に固定されている。
この光量調節ユニット5は、詳細は図示しないが、一対の絞り羽根をステッピングモータにより回動されるレバーによって上下方向に平行移動させることにより、開口径を増減させるいわゆるギロチン型の絞りである。
18は磁石と弾性部材とを接合して構成されたスライダ(接触部材)であり、スライダホルダ(アクチュエータ保持部材)21に形成された溝部21a内に接着等で固定されている。19は圧電素子(電気−機械エネルギ変換素子)と該圧電素子により振動が励起される板状の弾性部材とにより構成される振動子である。ここで、該振動子18の弾性部材は強磁性体であり、該強磁性体がスライダ18の磁石と引き合う。これにより、スライダ18の弾性部材の圧接面18aと振動子19の弾性部材に光軸方向2箇所に形成された圧接面19a、19bとが圧接される。
これらスライダ18および振動子19によって構成される第1振動型リニアアクチュエータでは、フレキシブル配線板20を介して2つの位相が異なる周波信号(パルス信号又は交番信号)が圧電素子に入力される。これにより、振動子19の圧接面19a、19bに楕円運動が発生し、スライダ18の圧接面18aに光軸方向の駆動力が発生する。
スライダホルダ21はその上下に突出する軸部(当接部)21bを有する。23は第1振動型リニアアクチュエータを覆う第1アクチュエータカバー(ベース部材)であり、ビス25、26、27により第1レンズ保持部材6に固定されている。
22はビス24によって第1アクチュエータカバー23に固定された弾性部材としての板ばね(加圧手段)である。第1アクチュエータカバー23には、図4および図5に示すように、光軸方向に対して直交する平面部としての壁面23aが形成されている。該壁面23aは、図5に示すように、スライダホルダ21の両側に2つ形成されている。該壁面23aと板ばね22における光軸方向に直交する面とによって、スライダホルダ21に設けられた円筒形状の軸部21bを挟み込むための空間(長穴)23bが形成される。
上記長穴23b内に配置された軸部21bは、板ばね22の付勢力(加圧力)によって、その円筒面21cが壁面23aに圧接される。この状態で、軸部21bは壁面23aに対して図4中の矢印C方向に回転可能であり、これにより、スライダホルダ21およびスライダ18は、軸部21b回りで矢印C方向に回転可能となる。また、スライダホルダ21およびスライダ18は、軸部21bがその径方向に長穴23b内を移動する、すなわち壁面23aに対して長穴23bの長手方向に摺動することで、矢印D方向に移動可能である。矢印D方向は、光軸に直交する方向のうち振動子19側の方向である。
さらに、スライダホルダ21の両側の軸部21bが、それぞれが当接する壁面23aに対して各長穴23b内を互いに反対方向に摺動することで、スライダホルダ21およびスライダ18は、図5に示す矢印E方向に回転することができる。このように、スライダ18は、スライダホルダ21の軸部21bを介して、光軸方向に直交する方向(C方向)への平行移動と、それぞれ光軸方向に直交する2軸回り(D,E方向)での回転とが可能に第1アクチュエータカバー23により保持される。
なお、板ばね22が軸部21bを光軸方向に付勢して壁面23aに圧接させることで、スライダホルダ21およびスライダ18の第1アクチュエータカバー23に対する光軸方向での動きが制限(阻止)される。
なお、本実施例において、「中心」、「平行」、「直交」および「対称」とは、完全な中心、平行、直交および対称と、許容誤差範囲内でそれらと同等とみなせる位置や状態を含む意味である。
28は第2レンズ保持部材12の光軸方向での移動量(位置)を検出するためのスケールであり、第2レンズ保持部材12に形成された溝部12e内に接着等で固定されている。29はスケール28に対して投光し、スケール28からの反射光を受光して第2レンズ保持部材12の移動量を検出するための投受光素子である。これら投受光素子29およびスケール28により位置検出器としての第1リニアエンコーダが構成されている。
30は投受光素子29に対して信号を入出力するためのフレキシブル配線板であり、ビス31により第1レンズ保持部材6に固定されている。
ガイドバー10と、第1振動型リニアアクチュエータと、第1リニアエンコーダとは、光軸方向前方から見て、光量調節ユニット15の右側面に近接して配置されている。また、第1振動型リニアアクチュエータと第1リニアエンコーダは、上下方向においてガイドバー10を挟むように該ガイドバー10に隣接して配置されている。
振動子34は、圧電素子と該圧電素子により振動が励起される板状の弾性部材とにより構成される。ここで、該振動子34の弾性部材は強磁性体であり、該強磁性体がスライダ33の磁石と引き合う。これにより、スライダ33の弾性部材の圧接面33aと振動子34の弾性部材に光軸方向2箇所に形成された34a、34bとが圧接される。
これらスライダ33および振動子34によって構成される第2振動型リニアアクチュエータでは、フレキシブル配線板35を介して2つの位相が異なる周波信号(パルス信号又は交番信号)が圧電素子に入力される。これにより、振動子34の圧接面34a、34bに楕円運動が発生し、スライダ33の圧接面33aに光軸方向の駆動力が発生する。
スライダ33は第4レンズ保持部材14に形成された長方形溝(図示せず)に接着等で固定される。
36は振動子34が接着等で固定される振動子ホルダ(アクチュエータ保持部材)である。38は振動子34およびスライダ33により構成される第2振動型リニアアクチュエータを覆う第2アクチュエータカバー(ベース部材)であり、ビス40、41、42により後群鏡筒5に固定される。37はビス39により、第2アクチュエータカバー38に固定される弾性部材としての板ばね(加圧手段)である。
振動子ホルダ36はその上下に突出する軸部(当接部)36aを有する。第2アクチュエータカバー38には、図7および図8に示すように、光軸方向に対して直交する平面部としての壁面38aが形成されている。この壁面38aは、図8に示すように、振動子ホルダ36の両側に2つ形成されている。該壁面38aと板ばね37における光軸方向に直交する面とによって、振動子ホルダ36に設けられた軸部36aを挟み込むための空間(長穴)38bが形成される。
上記長穴38b内に配置された軸部36aは、板ばね37の付勢力(加圧力)によって、その球面36cが壁面38aに圧接される。この状態で、軸部36aは壁面38aに対して図7中の矢印K方向に回転可能である。これにより、振動子ホルダ36および振動子34は、軸部36a回りで矢印K方向に回転可能となる。また、振動子ホルダ36および振動子34は、軸部36aがその径方向に長穴38b内を移動する、すなわち壁面38aに対して長穴38bの長手方向に摺動することで、矢印J方向に移動可能である。矢印J方向は、光軸方向に直交する方向のうちスライダ33側の方向である。
さらに、振動子ホルダ36の両側の軸部36aが、それぞれが当接する壁面38aに対して各長穴38b内を互いに反対方向に摺動することで、振動子ホルダ36および振動子34は、図8に示す矢印L方向に回転することができる。このように、振動子34は、振動子ホルダ36の軸部36aを介して、光軸方向に直交する方向(K方向)への移動と、それぞれ光軸方向に直交する2軸回り(J,L方向)での回転とが可能に第2アクチュエータカバー38により保持される。
なお、板ばね37が軸部36aを光軸方向に付勢して壁面38aに圧接させることで、振動子ホルダ36および振動子34の第2アクチュエータカバー38に対する光軸方向での動きが制限(阻止)される。
43は第4レンズ保持部材14の移動量(位置)を検出するためのスケールであり、第4レンズ保持部材14に形成された溝部14d内に接着等で固定されている。44はスケール43に対して投光し、スケール43からの反射光を受光して第4レンズ保持部材14の移動量を検出するための投受光素子である。これら投受光素子44およびスケール43により検出器としての第2リニアエンコーダが構成されている。45は投受光素子44に対して信号を入出力するためのフレキシブル配線板であり、ビス46により後部鏡筒5に固定されている。
ガイドバー11と、第2振動型リニアアクチュエータと、第2リニアエンコーダとは、光軸方向前方から見て、光量調節ユニット15の左側面に近接して配置されている。また、第2振動型リニアアクチュエータと第2リニアエンコーダは、上下方向においてガイドバー11を挟むように該ガイドバー11に隣接して配置されている。
さらに、第1振動型リニアアクチュエータ、ガイドバー10および第1リニアエンコーダと、第2振動型リニアアクチュエータ、ガイドバー11および第2リニアエンコーダとが、光軸中心を通って上下方向に延びる軸に対して対称となるように配置されている。
ここで、図2に示すように、光軸直交方向視において、第2レンズ保持部材12(ガイドバー10との係合部12a)の光軸方向での可動範囲L2は、光量調節ユニット15よりも物体側(図2の左側)から像面側にある。また、第4レンズ保持部材14(ガイドバー11との係合部14a)の光軸方向での可動範囲L4は、光量調節ユニット15よりも像面側から光量調節ユニット15と重複する位置まである。一方、図2において、第1および第2アクチュエータカバー23、38の設置範囲から推測できるように、第1振動型リニアアクチュエータの設置範囲(スライダ18が設けられた範囲)の一部と第2振動型リニアアクチュエータの設置範囲(スライダ33が設けられた範囲)の一部とは、光軸方向において互いに重複している。
なお、第2レンズ保持部材12の可動範囲L2は、第4レンズ保持部材14の光軸方向での可動範囲L4よりも大きい。
図9には、本実施例の撮影装置の電気的構成を示している。図9において、101はCCDセンサやCMOSセンサ等により構成される撮像素子である。102は第2レンズユニット2(第2レンズ保持部材12)の駆動源であり、スライダ18および振動子19を含む第1振動型リニアアクチュエータである。103は第4レンズユニット4(第4レンズ保持部材14)の駆動源であり、スライダ33および振動子34を含む第2振動型リニアアクチュエータである。
104は光量調節ユニット15の駆動源としての絞りモータ(ステッピングモータ)である。105はスケール28および投受光素子29を含む第1リニアエンコーダとしての第2レンズエンコーダ、106はスケール43および投受光素子44を含む第2リニアエンコーダとしての第4レンズエンコーダである。これらのエンコーダはそれぞれ、第2レンズユニット2および第4レンズユニット4の光軸方向での相対位置(基準位置からの移動量)を検出する。本実施例では、エンコーダとして光学式エンコーダを用いているが、磁気式エンコーダを用いてもよいし、電気抵抗を用いて絶対位置を検出するエンコーダ等を用いてもよい。
107は絞りエンコーダであり、例えば、光量調節ユニット15の駆動源である絞りモータ104の内部に設けられたホール素子によって、該絞りモータ104のロータとステータの回転位置関係を検出する方式のものが用いられる。
117は該撮影装置の動作の制御を司るコントローラとしてのCPUである。108はカメラ信号処理回路であり、撮像素子101の出力に対して増幅やガンマ補正などを施す。これらの所定の処理を受けた映像信号のコントラスト信号は、AEゲート109およびAFゲート110を通過する。これらのゲート109、110により、露出決定およびピント合わせのために最適な信号の取り出し範囲が撮影画面内から設定される。これらのゲート109、110の大きさは可変であってもよいし、ゲート109、110をそれぞれ複数設けてもよい。
114はオートフォーカス(AF)のためのAF信号処理回路であり、映像信号の高周波成分を抽出してAF評価値信号を生成する。115はズーム操作を行うためのズームスイッチである。116はズームトラッキングメモリであり、変倍に際して合焦状態を維持するために、被写体距離と第2レンズユニット2の位置とに応じた、第4レンズユニット4を駆動すべき目標位置情報を記憶している。なお、ズームトラッキングメモリとして、CPU117内のメモリを使用してもよい。
上記構成において、撮影者によりズームスイッチ115が操作されると、CPU117は第2レンズユニット2を駆動するために第1振動型リニアアクチュエータ102を制御する。これに伴い、ズームトラッキングメモリ116の情報と第2レンズユニットエンコーダ105の検出結果から求めた現在の第2レンズユニット2の位置とに基づいて、第4レンズユニット4の目標駆動位置を算出する。そして、該目標駆動位置に第4レンズユニット4を駆動するよう第2振動型リニアアクチュエータ103を制御する。第4レンズユニット4が目標駆動位置に達したか否かは、第4レンズユニットエンコーダ106の検出結果から求められた現在の第4レンズユニット4の位置と目標駆動位置とが一致したか否かによって判別される。
また、オートフォーカスにおいては、CPU117は、AF信号処理回路114で得られたAF評価値がピークを示す位置を探索するように、第2振動型リニアアクチュエータ103を制御して第4レンズユニット4を駆動する。
さらに、適正露出を得るために、CPU117は、AEゲート109を通過した輝度信号の平均値が所定値となるように、つまりは絞りエンコーダ107の出力が該所定値に対応した値となるように、絞りモータ104を制御して絞り開口径をコントロールする。
本実施例では、製造誤差等でスライダ18と振動子19のいずれかの圧接面の光軸方向に直交する方向での位置や傾きが変化した場合でも、スライダホルダ21の位置や傾きが変化することで、スライダ18の位置や傾き(向き)、すなわち姿勢が変化する。これにより、両圧接面は平行に維持され、適正な面接触状態が維持される。その際、本構成では、スライダ18と振動子19の圧接方向(スライダ18が変位する方向)にばね性を持たないので、スライダ18と振動子19の圧接位置が変わっても圧接面での圧接力に変化はない。したがって、第1振動型リニアアクチュエータ102が本来持つ性能に応じた出力を安定的に引き出すことができる。
また、本実施例では、図4に示すように、スライダホルダ21の軸部21bが圧接面の近傍に配置されている。具体的には、軸部21bの中心(円筒面21cの曲率中心)21oがスライダ18の厚み(圧接面の法線方向の幅)t1内に相当する位置に配置されている。このため、アクチュエータ駆動時に圧接面に発生するこじり力を少なくすることができる。すなわち、駆動時にスライダホルダ21とスライダ18からなるスライダユニットが圧接面においては駆動方向と逆向きの力F1を受け、固定部23aとの接点ではF1と大きさが同じで反対向きの力F2を受ける。この偶力F1とF2によりスライダユニットには回転モーメントが生じ、この反力として圧接面には駆動方向とは反対向きの力であるこじり力が生じる。本実施例ではこのこじり力を少なくすることができる。なお、理想的には、軸部21bの中心が圧接面を含む面上の位置21o′に位置するとよい。
また、上記構成において、スライダ18は磁石を用いて構成され、振動子19を吸着することによって振動型リニアアクチュエータとしての駆動力を発生するために必要な圧接力を得ている。このため、圧接力の反力が第2レンズ保持部材12には作用しない。これにより、第2レンズ保持部材12におけるガイドバー10、11との係合部12a、12bに発生する摩擦力が大きくならず、摩擦による駆動負荷も大きくならない。したがって、低出力で小型の振動型リニアアクチュエータを使用することができ、この結果、レンズ鏡筒の小型化を図ることができる。
また、大きな圧接力が第2レンズ保持部材12に作用することがないので、第2レンズ保持部材12におけるガイドバー10、11との係合部12a、12bに発生する摩擦力が大きくならない。したがって、係合部12a、12bのガイドバー10、11との摩擦による摩耗を低減することもできる。また、第2レンズ保持部材12(第2レンズユニット2)の微小駆動も正確に行うことができる。
一方、スライダ33は磁石を用いて構成され、振動子34を吸着することによって振動型リニアアクチュエータとしての駆動力を発生するために必要な圧接力を得ている。このため、圧接力の反力が第4レンズ保持部材14には作用しない。これにより、第4レンズ保持部材14におけるガイドバー11、10との係合部14a、14bに発生する摩擦力が大きくならず、摩擦による駆動負荷も大きくならない。したがって、低出力で小型の振動型リニアアクチュエータを使用することができ、この結果、レンズ鏡筒の小型化を図ることができる。
また、大きな圧接力が第4レンズ保持部材14に作用することがないので、第4レンズ保持部材14におけるガイドバー11、10との係合部14a、14bに発生する摩擦力が大きくならない。したがって、係合部14a、14bのガイドバー11、10との摩擦による摩耗を低減することもできる。また、第4レンズ保持部材14(第4レンズユニット4)の微小駆動も正確に行うことができる。
また、製造誤差等でスライダ33と振動子34のいずれかの圧接面の光軸方向に直交する方向での位置や傾きが変化した場合でも、振動子ホルダ36の位置および傾きが変化することにより、振動子35の位置や傾き(向き)、つまりは姿勢が変化する。これにより、両圧接面は平行に維持され、適正な面接触状態が維持される。本構成では、この際、スライダ33と振動子34の圧接方向(振動子34が変位する方向)に対してばね性を持たないため、圧接面の位置や傾きが変わった場合でも圧接力に変化はない。したがって、製造誤差によるばらつきがある場合でも、第2振動型リニアアクチュエータ103が本来持つ性能に応じた出力を安定的に引き出すことができる。
また、振動子ホルダ36の軸部36aは、図7および図8に示すように、圧接面を含む面内に配置されている。このため、アクチュエータ駆動時に圧接面に発生するこじり力を抑えることができるすなわち、駆動時に振動子ホルダ36と振動子34からなる振動子ユニットは、圧接面においては駆動方向と逆向きの力F1を受け、固定部38aとの接点ではF1と大きさが同じで反対向きの力F2を受ける。この偶力F1とF2により振動子ユニットには回転モーメントが生じ、この反力として圧接面には駆動方向とは反対向きの力であるこじり力が生じる。本実施例では、このこじり力を抑えることができる。なお、軸部36aは、その中心(球面36cの曲率中心)36oが振動子34の厚み(圧接面の法線方向の幅)t2内に相当する位置に配置されていればよい。
さらに上述したように、本実施例では、光軸方向視において、ガイドバー10と第1振動型リニアアクチュエータと第1リニアエンコーダとが、光量調節ユニット15のうち光軸から最も近い平面の1つである右側面に沿うように(近接するように)配置されている。また、ガイドバー10の上下に隣接するように第1振動型リニアアクチュエータと第1のリニアエンコーダが配置されている。さらに、光軸方向視において、ガイドバー11と第2振動型リニアアクチュエータと第2リニアエンコーダとが、光量調節ユニット15のうち光軸から最も近い平面の1つである左側面に沿うように(近接するように)配置されている。また、ガイドバー11の上下に隣接するように第2振動型リニアアクチュエータと第2リニアエンコーダが配置されている。
したがって、光量調節ユニット15と、第2および第4レンズ保持部材12、14をそれぞれ駆動する2つの振動型リニアアクチュエータ、2つのガイドバーおよび2つのリニアエンコーダを有しながらもレンズ鏡筒部を小型に構成することができる。
また、ガイドバー10、11に隣接してスライダ18、33が配置されているので、第2および第4レンズ保持部材12、14をスムーズに駆動することができる。しかも、ガイドバー10、11に隣接してスケール28、43が配置されているので、第2および第4レンズ保持部材12、14の係合部12a、12b、14a、14bのがたによるスケール28、43の変位が少ない。したがって、精度良く第2および第4レンズユニット2、4の位置検出を行うことができる。
ここで、リニアアクチュエータとリニアエンコーダとが、これらの駆動対象および位置検出対象であるレンズ保持部材をガイドするガイドバーに対して、光軸を挟んだ反対側に配置されている場合がある。この場合、該ガイドバーに対するレンズ保持部材の係合部の係合がたによって、駆動開始時に該ガイドバーを支点としてリニアエンコーダが駆動方向とは反対側に変位する可能性がある。これは、位置検出精度を悪化させる原因になる。しかし、本実施例では、リニアアクチュエータとリニアエンコーダがこれらの駆動対象および位置検出対象であるレンズ保持部材をガイドするガイドバーと同じ側に配置されているので、そのような問題は生じず、精度良く位置検出を行うことができる。
なお、本実施例では、第1振動型リニアアクチュエータについて、振動子19を第2レンズ保持部材12側に設け、スライダ18をレンズ鏡筒部の固定部側(第1アクチュエータカバー23)に設けた場合について説明した。しかし、振動子およびその保持機構を固定部側に設け、スライダおよびその保持機構を第2レンズ保持部材側に設けてもよい。
また、本実施例では、第2振動型リニアアクチュエータについて、スライダ33を第4レンズ保持部材14側に設け、振動子34をレンズ鏡筒の固定部側に設けた場合について説明した。しかし、スライダおよびその保持機構を固定部側に設け、スライダおよびその保持機構を第4レンズ保持部材側に設けてもよい。
また、本実施例では、スライダ又は振動子を保持するホルダ21、36に軸部21b、36aを設け、ベース部材であるアクチュエータカバー23、38に、光軸方向に直交する面である壁面23a、38aと板ばね22、37を設けた場合について説明した。しかし、ホルダに壁面と板ばねを設け、ベース部材に設けた軸部を挟み込む構成にしても、本実施例と同様な効果が得られる。
図10から図14には、本発明の実施例2である撮像装置におけるレンズ保持枠とそれを駆動する振動型リニアアクチュエータの構成を示している。この振動型リニアアクチュエータは、実施例1における第2レンズ保持枠と第1振動型アクチュエータに相当する。振動型リニアアクチュエータおよびレンズ保持枠以外の構成は実施例1と同じであるので、説明を省略する。
図10は、本実施例のレンズ保持枠と振動型アクチュエータの分解斜視図である。 図11および図12はそれぞれ、該レンズ保持枠と振動型リニアアクチュエータの斜視図および側面図を示している。また、図13は、図12におけるA−A断面図を、図14は図12におけるB−B断面図を示している。
50はレンズ保持枠であり、実施例1の第2レンズ保持枠12に相当する。レンズ保持枠50は、光軸方向に平行に配置される不図示のガイドバーに係合する係合部50c、50dを有する。
51は振動子ホルダであり、その内側にDカット断面を有する軸形状を有し、光軸に平行な面内でT字状に形成された軸部51a、51bを有する。
53は振動子であり、振動子ホルダ51に固定される。52は振動子53に2つの位相が異なる周波信号を入力するためのフレキシブル配線板である。
54はスライダであり、レンズ鏡筒部における不図示の固定部(ベース部材)に固定される。55は弾性部材としての板ばね(加圧手段)であり、ビス56によって第2レンズ保持枠50に固定される。
レンズ保持枠50には、光軸に直交する平面部としての2つの壁面50aが、図14において上下に分かれて2つ形成されている。この壁面50aと板ばね55における光軸方向に直交する面55aとの間には、図10および図13に示すように、長方形溝(空間)51cが形成される。
そして、該長方形溝51c内には、振動子ホルダ51に、図14における上下方向に延びる軸部(当接部)51aが挿入される。図13に示すように、軸部51aはその前後に円弧面51dを有し、板ばね55の付勢力によって該円弧面51dが壁面50aに圧接する。これにより、振動子ホルダ51の光軸方向の動きが制限(阻止)される。
また、レンズ保持枠50に光軸方向に延びるように形成された溝部50bには、同方向に延びる軸部51bが係合している。軸部51bも、その両側に円弧面を有する。
このような構成において、図13に示すように、軸部51aが壁面50aに対して矢印M方向に回転可能である。このため、振動子ホルダ51は、レンズ保持枠50によって、該軸部51a回りで矢印M方向に回転可能に保持される。また、軸部51aは壁面50aに対して矢印N方向、すなわち長方形溝51cの長手方向に摺動可能である。このため、振動子ホルダ51は、レンズ保持枠50に対して矢印N方向、すなわちスライダ54に圧接する方向に移動可能である。また、図14に示すように、軸部51aが壁面50aに対して矢印O方向に摺動しながら回転可能であるため、振動子ホルダ51は、軸部51b回りで矢印O方向に回転可能である。
上記構成において、製造誤差等でスライダ54と振動子53のいずれかの圧接面の光軸に平行な軸に対する位置や該軸回りでの傾きが変化した場合でも、振動子ホルダ51の位置および傾きが変化することにより、両圧接面は平行に維持される。その際、圧接方向にばね性を持たないので、スライダ54と振動子53との圧接位置が変わっても圧接面の圧接力は変化しない。したがって、スライダ54と振動子53で構成される振動型リニアアクチュエータが本来持つ性能に応じた出力を安定的に引き出すことができる。
また、板ばね55の光軸方向の付勢力により、振動子ホルダ51はレンズ保持枠50に対する光軸方向への移動が阻止される。このため、振動型リニアアクチュエータによってレンズ保持枠50をガタなく駆動でき、レンズ保持枠50の高精度な位置決めが可能となる。
また、振動子ホルダ51の矢印M方向の回転軸となる軸部51aを、振動子53の圧接面の裏側に圧接面に平行となるように配置したため、振動子ホルダ51の幅方向(図12において紙面左右方向)の大きさを小さくすることができる。
また、振動子ホルダ51の矢印O方向の回転軸となる軸部51bに対して、板ばね55と、振動子ホルダ51の軸部51aとの圧接位置が同平面内にあるため、振動子ホルダ51の矢印O方向の回転に対する負荷を低減できる。
さらに、振動子ホルダ51の軸部51a、51bは、板ばね55、壁面50aおよび溝部50bの内側面に接触する部分を円弧面51dとし、振動子53に対向する部分を平面として形成している。このため、軸部51a、51bの振動子53に対向する部分を含めて円弧面(円筒面)で構成する場合に比べて、振動子53を軸部51a、51bの円弧面51dの曲率中心軸に近づけることができる。これにより、振動子53および振動子ホルダ51を厚み方向にコンパクトに組み立てることができる。
また、板ばね55をレンズ保持枠50に沿って配置することで、ばね長を十分確保しながら、余分なスペースを必要としないため、小型化に有効である。