JP2007326330A - 複合型光学素子の成形用型および複合型光学素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来のレプリカ成形に比して、成形樹脂と成形型との離型性を向上させることができ、生産の効率化とコストダウンが可能となる複合型光学素子の成形用型および複合型光学素子を提供する。
【解決手段】光学形状19を光硬化性樹脂に転写するための成形面を備え、該成形面にガラス基板13によって押圧充填された光硬化性樹脂12を光硬化させ、該硬化させた樹脂を該ガラス基板と共に該成形面より離型して複合型光学素子を成形する成形用型において、
前記成形面における光学有効成形面外に、前記光硬化性樹脂の樹脂厚の70%以上95%以下の高さを有する凸形状部18を有する構成とする。
【選択図】 図11

Description

本発明は、複合型光学素子の成形用型および複合型光学素子に関する。特に、成形用型により光硬化性樹脂に成形面を転写して光学面形状を得る、所謂レプリカ成形における複合型光学素子の成形用型および複合型光学素子に関するものである。
従来、回折光学素子や非球面レンズなど複合型光学素子の成形技術の一つとして、大面積成形性と高転写性に優れ、その成形技術の容易さから大量生産に適しているレプリカ成形技術が知られている。
このレプリカ成形技術は、所望の光学形状の反転形状を有する成形型面上に光硬化性樹脂を滴下し、その上から基板となるレンズブランクを圧着させて押し広げ、所望の形状になったところで、光源からの光を照射し光硬化性樹脂を硬化させる。そして、この硬化樹脂をレンズブランクと共に離型することで、成形型上の形状を硬化樹脂に転写させ成形を行なう。
このようなレプリカ成形の離型においては、硬化樹脂の一部が成形型表面に接着してしまうことや、回折光学素子などの光学微細形状が離型時の応力により変形あるいは欠損を受けるなどして、成形品を容易に精度良く離型することが難しい。また、成形材料の光硬化性樹脂においても、近年の材料の複合化多様化にともなって成形型との密着性の高い材料も少なくなく、同様に成形品を容易に精度良く離型することが難しい。
従来において、複合型光学素子を成形するためのレプリカ成形に際し、離型性を向上させるため、例えば、離型剤を成形型面へ塗布する手法や、離型剤を成形樹脂材料へ添加する手法などが知られている。また、離型性を向上させるためのレプリカ離型方法、あるいは成形用型が数多く提案されている。
例えば、特許文献1では、成形型の光学有効径外外周部に凹凸面を設けて、当凹凸面外周部まで成形樹脂を充填して硬化成形し、離型時における離型力を小さくする方法が提案されている。
また、特許文献2では、成形型の光学有効径外の外周部にV溝を形成し、離型起点での樹脂材料と成形型との密着力を低下させ、離型を容易にする方法が提案されている。
また、特許文献3では、成形型の光学有効径外に外周部樹脂厚を調整する突起部を設けることにより、樹脂層側面中央部での表面張力による凹みを小さくし、該凹み部を光学有効径内にはみ出させない成形型の構成が提案されている。
また、特許文献4では、成形樹脂の端部と接する成形型の光学有効径外外周の成形型中心軸との角度θを15°<θ<45°とすることで、成形樹脂端部形状を制御し、外周部から欠損なく離型する方法が提案されている。
特許第3092964号公報 特開平5−220773号公報 特許第3228613号公報 特許第3184677号公報
ところで、非球面レンズや回折光学素子など複合型光学素子のレプリカ成形技術の離型プロセスにおいて、離型時の応力による光学形状の変形または欠損は多少なりとも避けがたい。
レプリカ成形における離型のメカニズムは、成形樹脂と成形型からなる界面の外周端部に対して垂直方向またはせん断方向の負荷を与えることで界面亀裂を発生させ、この界面亀裂を内部成形面へと連続的に進行させることで離型が行われる。この離型プロセスの間に界面に与えられる離型時応力は、小さければ小さいほど良い。とりわけ大きな離型時応力が負荷された場合には、非球面レンズにおける光学曲面や回折光学素子における格子面などに変形や欠損を与える。これらの変形部や欠損部は複合型光学素子の光学性能を著しく低下させることは言うまでもない。
しかしながら、上記した従来例におけるレプリカ成形技術においては、離型性を向上させる上で必ずしも満足の得られるものではなかった。
例えば、成形型面上に離型剤を塗布して成形型と成形樹脂との界面の密着力を低下させる方法では、液剤塗布による液垂れまたは表面張力による膜厚の不均一性などによって、極めて精密に加工された成形型面上の光学曲面や微細形状を歪めることになる。
また、離型剤を成形樹脂そのものへ添加する方法においては、成形樹脂の耐環境性の悪化や屈折率など光学特性の低下等の影響が確認され、複合型光学素子を成形する光学材料としては好ましくない。
また、特許文献1においては、成形型の光学有効径外外周部に凹凸面を設けて離型するようにしたものであるが、成形樹脂の硬化収縮を制御できる形状ではなく離型性をより向上させることができない。
また、特許文献2においても、成形型の光学有効径外外周部にV溝を設けて離型するようにしたものであるが、同様に成形樹脂の硬化収縮を制御することができず離型性をより向上させることができない。
また、特許文献3においては、成形型の光学有効径外外周部に突起部を設けて離型するようにしたものであるが、成形樹脂を充填させる位置が適切ではないために、成形樹脂の硬化収縮を制御することができず離型性をより向上させることができない。
また、特許文献4においては、成形樹脂の端部と接する成形型の光学有効径外外周の成形型中心軸との角度θを15°<θ<45°とすることで成形樹脂端部形状を制御して離型するようにしたものである。しかし、これにおいても、離型時の成形樹脂における応力分布が適切ではないため離型性をより向上させることができない。
さらに、これらの従来例においては、成形樹脂の外周端部の形状制御が十分でないため、離型時における硬化樹脂の凝集破壊によって生じる成形型面上への樹脂残留が多く発生する。この現象が複合型光学素子の生産現場において発生した場合、成形型面上に付着した残留樹脂を作業者が毎回拭き取らなければならないため、生産性を低下させ大幅なコストアップとなるだけでなく、成形型の耐久性も低くなる。大きな凝集破壊が生じて離型した複合型光学素子は、製品不良となってしまうことは言うまでもない。
本発明は、上記課題に鑑み、従来のレプリカ成形に比して、成形樹脂と成形型との離型性を向上させることができ、生産の効率化とコストダウンが可能となる複合型光学素子の成形用型および複合型光学素子を提供することを目的とする。
本発明は上記課題を解決するため、次のように構成した複合型光学素子の成形用型および複合型光学素子を提供するものである。
本発明は、光学形状を光硬化性樹脂に転写するための成形面を備え、該成形面にガラス基板によって押圧充填された光硬化性樹脂を光硬化させ、該硬化させた樹脂を該ガラス基板と共に該成形面より離型して複合型光学素子を成形する成形用型において、前記成形面における光学有効成形面外に、前記光硬化性樹脂の樹脂厚の70%以上95%以下の高さを有する凸形状部を有することを特徴とする。また、本発明の複合型光学素子の成形用型は、前記凸形状部が、光学有効成形面外に1点乃至は複数点、あるいは該光学有効成形面外の外周全域に設置されていることを特徴とする。
また、本発明の複合型光学素子は、上記したいずかに記載の複合型光学素子の成形用型を用いて成形されたことを特徴とする。
また、本発明の複合型光学素子は、回折光学素子または非球面レンズであることを特徴とする。
本発明によれば、従来のレプリカ成形に比して、成形樹脂と成形型との離型性を向上させることができ、生産の効率化とコストダウンが可能となる複合型光学素子の成形用型および複合型光学素子を実現することができる。
上記構成により、前述した本発明の課題を達成することができるものであるが、それは本発明者のつぎのような知見に基づくものである。すなわち、成形面の光学有効成形面外(光学有効径外)に光硬化性樹脂の樹脂厚の70%以上95%以下の高さを有する凸形状部を設置することで、硬化収縮による光硬化性樹脂の内向きの流動が阻され、離型性が向上することが見出されたことによるものである。
つぎに、これらについて、さらに詳しく説明する。
図1及び図2に、レプリカ成形における光硬化性樹脂の硬化プロセスを説明するための模式図を示す。
図1において、成形型1とレンズブランク3の間に押圧充填された硬化前の光硬化性樹脂2が雰囲気と接する充填樹脂面4は、充填直後の光照射前の未硬化状態において、外に向く凸形状を形成する。この外周端部の凸面形状は、成形型1やレンズブランク3の撥水性などの表面状態、または用いる硬化前の光硬化性樹脂2の粘弾性、さらには重力や雰囲気温度による経時変化等の諸条件によって形成される。
次に、図2に示すように、光硬化用光源5の光を硬化前の光硬化性樹脂2に対して照射することで、硬化後の光硬化性樹脂2’が雰囲気に接する充填硬化樹脂面4’は内に向く凹形状を形成する。
これは、硬化後の光硬化性樹脂2’内に図示した矢印(↑)で表される硬化収縮が、硬化前の光硬化性樹脂2と雰囲気との界面に集中的に発生したことによる。すなわち、硬化収縮が、界面密着エネルギーが比較的に高い硬化前の光硬化性樹脂2と成形型1またはレンズブランク3との界面にわずかしか発生せずに、界面密着エネルギーが比較的に低い硬化前の光硬化性樹脂2と雰囲気との界面に集中的に発生したことによる。
ここで示した硬化プロセスにおいて、レンズブランク保持部材7によりレンズブランク3は成形型1に対して等間隔で保持されているが、硬化前の光硬化性樹脂2と成形型1との界面に硬化収縮が働くならば、所謂ひけと呼ばれる該界面の剥離現象が発生する。
一方、硬化前の光硬化性樹脂2とレンズブランク3との界面に生じる硬化収縮は、レンズブランク3の歪みとして発生するが、レンズブランク3が厚いほどまたはその弾性が小さいほどその歪みは軽減する。
図3、図4、図5は、レプリカ成形における複合型光学素子の離型プロセスを説明するための模式図である。
各々の図は、離型時に界面亀裂を発生させる充填した硬化後の光硬化性樹脂2’と成形型1からなる界面の外周部での充填硬化樹脂面4’が成形型面となす充填硬化樹脂側で表した角θの次の各角度における断面を表したものである。
すなわち、上記角θの0°<θ<90°、θ=90°、90°<θ<180°の断面を表したものである。
図3は、充填硬化樹脂面4’が内に向く凹形状を形成した断面であり(0°<θ<90°)、図中に示した離型力Fをレンズブランク3の端部に対して垂直に負荷した場合の、離型の亀裂進行を図中の破線矢印6で示したものである。
離型力Fによって凹形状の充填硬化樹脂面4’に負荷される応力分布は、成形型1と硬化後の光硬化性樹脂2’の界面からわずかに離れた離型の亀裂進行6の始点において最も大きい。
そこには、充填硬化樹脂面4’の凹形状中央部のそれに比較しておよそ3倍の応力が負荷されている。
図3の離型プロセスの模式図の具体例を図6に示す。
図6において、樹脂厚50μmで充填硬化樹脂面4’が曲率半径25μmの凹形状にて形成された硬化後の光硬化性樹脂2’では、レンズブランク3の端部に垂直方向1.0[ N/mm2 ]の離型力を負荷した場合、つぎの位置に応力集中が確認された。
すなわち、充填硬化樹脂面4’と成形型1との接触界面より水平方向に15μm、垂直方向に4μmの位置にて応力集中が確認された。
これは、離型亀裂が充填硬化樹脂面4’と成形型1との接触界面よりも充填硬化樹脂面4’上にて発生するという樹脂の凝集破壊の可能性が高いことを示している。充填した硬化後の光硬化性樹脂2’の凝集破壊においては、離型の際により大きな離型力を必要とするだけでなく、成形型1上に残留樹脂を残すことになる。
図4は、充填硬化樹脂面4’が成形型1に対して垂直面を形成した断面であり(θ=90°)、図中に示した離型力Fをレンズブランク3の端部に対して垂直に負荷した場合の、離型の亀裂進行を図中の破線矢印6で示したものである。離型力Fによって垂直な充填硬化樹脂面4’に負荷される応力分布は、成形型1と充填硬化樹脂面4’との接触界面において最も大きく、充填硬化樹脂面4’の垂直面中央部のそれに比較しておよそ2倍の応力が負荷されている。これは、離型亀裂が成形型1と充填硬化樹脂面4’との接触界面にて発生する可能性が高いことを示している。成形型1と充填硬化樹脂面4’との界面破壊においては、離型の際に大きな離型力を必要とせず、成形型1上に残留樹脂は残さない。
図5は、充填硬化樹脂面4’が外に向く凸形状を形成した断面であり(90°<θ<180°)、図中に示した離型力Fをレンズブランク3の端部に対して垂直に負荷した場合の、離型の亀裂進行を図中の破線矢印6で示したものである。離型力Fによって凸形状の充填硬化樹脂面4’に負荷される応力分布は、成形型1と充填硬化樹脂面4’との接触界面において最も大きく、充填硬化樹脂面4’の凸形状中央部のそれに比較してもおよそ5倍以上の応力が集中的に負荷される。
これは、離型亀裂が成形型1と充填硬化樹脂面4’との接触界面にて発生する可能性がより高いことを示している。成形型1と充填硬化樹脂面4’との界面破壊においては、離型の際に大きな離型力を必要とせず、成形型1上に残留樹脂は残さない。
さらには、充填硬化樹脂面4’において比較的に均一な応力分布を示す図4の垂直面を形成した離型プロセスとは異なり、離型応力を成形型1と充填硬化樹脂面4’との接触界面に集中できるためより効率的に小さい応力で離型することができる。
以上の結果は、実験と構造解析のシミュレーションにより得られたものである。また、図3、図4、図5で示される各離型プロセスにおいては、成形型1とレンズブランク3が充填した硬化後の光硬化性樹脂2’となす両界面に上下対称性がある。
このため、該硬化後の光硬化性樹脂2’内に負荷される応力分布も樹脂の中心線を挟んで上下対称なものとなる。
ただし、レンズブランク3と硬化後の光硬化性樹脂2’との界面については、成形型1と硬化後の光硬化性樹脂2’の界面に同様の応力が負荷されるが、レンズブランクと樹脂との密着処理を施してあるために亀裂は発生しない。
図7は、本構成におけるレプリカ成形の光硬化プロセスを表した模式図である。
前述したように、成形型1とレンズブランク3の間に押圧充填された硬化前の光硬化性樹脂2が雰囲気に接する充填硬化樹脂面4は、充填直後の光照射前の未硬化状態において、外に向く凸形状を形成する。
しかし、光硬化用光源からの光を硬化前の光硬化性樹脂2に対して照射することで、該光硬化性樹脂2内には図示した矢印(↑)で表される内向きの硬化収縮が発生する。
この時、本構成における成形型1上の凸形状部8が、硬化収縮による光硬化性樹脂2の内向きの流動を阻止するために、光硬化性樹脂2の雰囲気に接する充填硬化樹脂面4は凸形状を保持したまま硬化する。凸形状部8については、硬化収縮による光硬化性樹脂2の内向きの流動を十分に阻止できる該凸形状部8の高さとして、光学有効径外における光硬化性樹脂2の樹脂厚の70%以上95%以下の高さである必要がある。すなわち70%以下だと硬化収縮による光硬化性樹脂2の内向きの流動を十分に阻止できない。また、95%以上だと凸形状部8とレンズブランク3の間隔が狭くなりすぎるために、当該部に硬化収縮によるヒケが多く発生してしまう。
図8は、本構成におけるレプリカ成形の離型プロセスを説明するための模式図である。図中に示した離型力Fをレンズブランク3の端部に対して垂直に負荷した場合の、離型の亀裂進行を図中の破線矢印6で示した。
前述したように、離型力Fによって凸形状の充填硬化樹脂面4’に負荷される応力分布は、成形型1と充填硬化樹脂面4’との接触界面において最も大きいために、離型亀裂は成形型1と充填硬化樹脂面4’との接触界面にて発生する可能性が高い。成形型1と充填硬化樹脂面4’との界面破壊においては、離型の際に大きな離型力を必要とせず、成形型1上に残留樹脂は残さない。
以上のことから、本実施の形態においては、前記凸形状部が成形用型の光学有効径外の1点乃至は複数点、あるいは該光学有効径外の外周全域に設置した構成を採ることにより、成形樹脂と成形型との離型性を向上させることが可能となる。
つぎに、これらについて、さらに詳細に説明する。
図9は、上記凸形状部8を成形型面上の光学有効径外の1点に設置した成形型1を用いたレプリカ成形の光硬化プロセスを説明するための模式図であり、図9(a)はその上面図、(b)は断面図である。
このような構成によれば、図9の断面図に示されるように、凸形状部8付近の充填硬化樹脂面4’は外に向く凸形状を形成するが、該凸形状部8を設置しない充填硬化樹脂面4’は、成形樹脂の硬化収縮により内に向く凹形状を形成する。
図10は、上記凸形状部を成形型面上の光学有効径外の1点に設置した成形型を用いたレプリカ成形の離型プロセスを説明するための模式図であり、図10(a)はその上面図、(b)は断面図である。
図中に示した離型力Fを徐々にレンズブランク3の外周端部全域に対して垂直に負荷した場合の、離型の亀裂進行を図中の破線矢印6で示した。
この時、充填硬化樹脂面4’の全周にわたって同様の離型力Fが負荷されるが、離型の亀裂は、凸形状の充填硬化樹脂面4’側から凹形状の充填硬化樹脂面4’側へと進行する。これは、前述したように凸形状の充填硬化樹脂面4’と成形型1との接触界面の方が、先に離型が進行していくことによる。すなわち、凸形状の充填硬化樹脂面4’と成形型1との接触界面の方が、凹形状の充填硬化樹脂面4’と成形型1との接触界面よりも弱い離型力で亀裂を発生させることができるためである。
同様に、凸形状部8を成形型の光学有効径外の複数点に設置した場合においては、複数点ある凸形状の充填硬化樹脂面4’側から該凸形状部8を設置しない凹形状の充填硬化樹脂面4’側へと離型の亀裂は進行する。
また、凸形状部8を成形型の光学有効径外の外周全域に設置した場合においては、外周全域にある凸形状の充填硬化樹脂面4’から成形型の中心に向けて離型の亀裂は進行する。
以上の本実施の形態による前記凸形状部を成形用型の光学有効径外の1点または複数点、あるいは該光学有効径外の外周全域に設置した構成によれば、該凸形状部の設置点を亀裂進行の始点とすることが可能となる。
これにより、レプリカ成形における離型の際に大きな離型力を必要としないので、従来のものに比して、離型性を向上させることができる。
また、レプリカ成形における離型の際に成形樹脂の凝集破壊が発生しにくいので、従来のものに比して、生産の効率化とコストダウンが可能となる。
また、このような成形用型を用いて成形された複合型光学素子によれば、旧来の光学系に比して、非球面収差や色収差を良好に補正することができ、光学系全体の小型軽量化を図ることが可能となる。
以下に、本発明の実施例について説明する。
[実施例1]
実施例1においては、本発明を適用した複写機に用いられる回折光学素子のレプリカ成形装置について説明する。
図11に、本実施例における回折光学素子の成形に用いられるレプリカ成形装置の模式図を示す。
図11において、11は成形型、12は光硬化性樹脂、13はレンズブランク、15は光源、17はレンズブランク保持部材、18は凸形状部、19は光学機能形状である。
本実施例のレプリカ成形装置に用いられる成形型は、所望とする光学機能形状の反転形状19と、凸形状部18とを備えている。
成形金型11は固定されており、成形金型11を嵌め込んでいるリング状のレンズブランク保持部材17上にはレンズブランク13が載置される。
レンズブランク13の中心軸と成形金型11の成形面の中心との軸合わせは、レンズブランク保持材17上のレンズブランク13を載置する内周部の全周に、成形金型11の成形面の中心と軸を合わせた深さ1mm幅1mm程度の嵌合部を設ける。
そして、該嵌合部にレンズブランク13の外周部を嵌め込むことで実現する。レンズブランク13は、ガラスまたはプラスティックの材質から成り、光学面においては平面または曲面を有する。リング状のレンズブランク保持部材17は、上下動自在に保持されている。
成形金型11の成形面上には不図示のディスペンサーにより光硬化性樹脂12が適量供給され、レンズブランク13の上方には紫外線照射ランプ15が成形金型11の光学機能面に対して紫外光が垂直に入射するように設置されている。
光硬化性樹脂12としては、光開始剤の紫外線波長365nm付近の吸収からラジカルが生成されるアクリレート系またはメタクリレート系またはエポキシ等の光学用樹脂が使用される。
紫外線照射ランプ15は、高圧水銀ランプまたは超高圧水銀ランプの波長365nm付近に発振のピークを有する光源を使用する。
図12は、本実施例における成形金型11を説明するための模式図であり、図12(a)はその上面図、図12(b)は断面図である。
光学機能面19を形成する微細形状は、光学有効径φ20mmにおいて、平面上に格子高さ5〜20μm、格子幅0.1〜3mmのブレーズ型回折格子を有し、上面図に示されるように中心への凸形状で同心円状に配置されている。また、凸形状部18は、光学有効径外において、高さ40μm、幅100μmの三角形状で同心円状に配置されている。該成形面の微細形状は、金型メッキ層の切削法等により形成される。
図13は、本発明の実施例1における成形型により成形される回折光学素子の構成を示す模式図であり、(a)はその上面図、(b)は断面図である。図13において、20は本実施例における成形金型11により作製される回折光学素子であり、レンズブランク13上に形成された樹脂層の光学機能面19’は、ブレーズ型回折格子の中心への凹形状、即ち該成形金型11の反転形状として同心円状に形成される。また、樹脂層の凸形状部18’も同様に、成形金型11における凸形状部18の反転形状として同心円状に形成される。
つぎに、本実施例における回折光学素子20の成形プロセスを、図11と図14を参照して説明する。
まず、図11において、成形金型11の成形面上中央付近に不図示のディスペンサーにて光硬化性樹脂12を適量供給する。そして、あらかじめ樹脂との密着力を上げるためのシランカップリング処理を片面に施したレンズブランク13を、カップリング処理面を下にしてリング状のレンズブランク保持部材17上の内周に設けられた嵌合部に嵌め込む。この際に、芯だし用チャックやベルクランプ方式等、さらにレンズブランク13を保持するための機構を備えても良い。
次に、図14に示されるように、リング状のレンズブランク保持部材17を下降させ、成形金型11とレンズブランク13を相対的に接近させる。そして、光硬化性樹脂12の層厚が50μmになるまで、且つ光学有効径外における凸形状部18の外周まで満たすように押し広げる。この時、光硬化性樹脂12への気泡混入や成形型の成形形状への樹脂未充填を防止するために、樹脂の粘度や型の成形面の濡れ性を考慮して、接液速度を調整しなければならない。
次に、充填された光硬化性樹脂12に対して、紫外線照射ランプ15による紫外光を24J(40 [mW/cm2 ]×10分)照射する。この時、光硬化性樹脂12の雰囲気に接する充填樹脂面14は、紫外光照射前の未硬化状態において、外に向く凸形状を形成している。しかし、紫外光の照射時において、成形金型11上の凸形状部18が光硬化性樹脂12の硬化収縮による内向きの流動を阻止するために、該充填樹脂面14は凸形状を保持したまま硬化する。本実施例における凸形状部18については、光硬化性樹脂12の硬化収縮による内向きの流動を十分に阻止できる該凸形状部18の高さとして、光学有効径外における光硬化性樹脂12の層厚50μmの80%の高さである40μmを設定した。
次に、光硬化性樹脂12の重合硬化が完了した後、リング状のレンズブランク保持部材17を上昇させることで、成形金型11から硬化した光硬化性樹脂12’とレンズブランク13とから成る回折光学素子20を剥離させる。この時、光硬化性樹脂12’の全外周にある凸形状の充填硬化樹脂面14と成形金型11との接触界面から成形金型11の中心に向けて離型の亀裂は進行し、且つ成形金型11上に樹脂の凝集破壊による残留樹脂は残さない。
本実施例においては、凸形状部18の高さとして40μmを設定したが、光硬化性樹脂12の層厚50μmの70%以上95%以下の範囲であれば同様の効果を得ることができる。
このように、本実施例によれば、レプリカ成形における離型の際に大きな離型力を必要としないので、従来のものに比して、離型性を向上させることができる。また、レプリカ成形における離型の際に成形樹脂の凝集破壊が発生しにくいので、従来のものに比して、生産の効率化とコストダウンが可能となる。
[実施例2]
実施例2においては、本発明を適用したカメラレンズに用いられる非球面レンズのレプリカ成形装置について説明する。
図15に、本実施例における非球面レンズの成形に用いられるレプリカ成形装置の模式図を示す。図15において、21は成形型、22は光硬化性樹脂、23はレンズブランク、24は充填樹脂面、25は光源、27はレンズブランク保持部材、28は凸形状部、29は光学機能形状、30はレンズブランク突き当て部である。
本実施例のレプリカ成形装置に用いられる成形型は、所望とする光学機能形状の反転形状29と、凸形状部28と、レンズブランク突き当て部30とを備えている。
成形金型21は固定されており、成形金型21上のレンズブランク突き当て部30とレンズブランク保持部材27上にはレンズブランク23が載置される。レンズブランク23と成形金型21の成形面との位置合わせは、レンズブランク突き当て部30上のレンズブランク23の載置部に、成形金型21の成形面と位置を合わせた深さ300μm幅1mm程度の嵌合部を設ける。そして、該嵌合部にレンズブランク23の外周部を嵌め込むことで実現する。
レンズブランク23は、t1mm×10mm×15mm平板のガラスまたはプラスティックの光学材料から成る。レンズブランク保持部材27は上下動自在に保持されている。成形金型21の成形面上には不図示のディスペンサーにより光硬化性樹脂22が適量供給され、レンズブランク23の上方には紫外線照射ランプ25が成形金型21の光学機能面に対して紫外光が垂直に入射するように設置されている。光硬化性樹脂22としては、光開始剤の紫外線波長365nm付近の吸収からラジカルが生成されるアクリレート系またはメタクリレート系またはエポキシ等の光学用樹脂が使用される。紫外線照射ランプ25は、高圧水銀ランプまたは超高圧水銀ランプの波長365nm付近に発振のピークを有する光源を使用する。
図16は、本実施例における成形金型21を説明するための模式図であり、図16(a)はその上面図、図16(b)は断面図である。光学機能面29は、レンズ径3mm、厚さ200〜500μmの非球面レンズ形状を成形型面上に4つ配置している。
また、凸形状部28は、光学有効径外において、高さ140μm、幅150μmの半円形状で成形面を横断するように配置されている。該成形面の微細形状は、金型メッキ層の切削法等により形成される。
図17は、本実施例における成形金型21により作製される非球面レンズ31を示している。レンズブランク23上に形成された樹脂層の光学機能面29’と凸形状部28’は、成形金型21の反転形状として形成される。
次に、本実施例における非球面レンズ31の成形プロセスを、図15を参照して説明する。
まず、成形金型21の成形面上中央付近に不図示のディスペンサーにて光硬化性樹脂22を適量供給する。そして、あらかじめ樹脂との密着力を上げるためのシランカップリング処理を片面に施したレンズブランク23を、カップリング処理面を下にしてレンズブランク突き当て部30上に設けられた嵌合部とレンズブランク保持部材27上に載置する。この時、光硬化性樹脂22は、レンズブランク23の自重により成形面上の凸形状部28まで満たすように押し広げられる。しかし、該光硬化性樹脂22の層厚は、レンズブランク突き当て部30とレンズブランク保持部材27により、成形面に対して200μmとなるように設定されている。
次に、充填された光硬化性樹脂22に対して、紫外線照射ランプ25による紫外光を27J(150 [mW/cm2 ]×3分)照射する。この時、光硬化性樹脂22の雰囲気に接する充填樹脂面24は、紫外光照射前の未硬化状態において、外に向く凸形状を形成している。しかし、紫外光の照射時において、成形金型21上の凸形状部28が光硬化性樹脂22の硬化収縮による内向きの流動を阻止するために、該充填樹脂面24は凸形状を保持したまま硬化する。また、該凸形状部28を設置しない充填樹脂面については、光硬化性樹脂22の硬化収縮による内向きの流動が発生するために、該充填樹脂面は凹形状を形成する。本実施例における凸形状部28については、光硬化性樹脂22の硬化収縮による内向きの流動を十分に阻止できる該凸形状部28の高さとして、光学有効径外における光硬化性樹脂22の層厚200μmの70%の高さである140μmを設定した。
次に、光硬化性樹脂22の重合硬化が完了した後、レンズブランク保持部材7を上昇させることで、成形金型21から硬化した光硬化性樹脂22とレンズブランク23とから成る非球面レンズ31を剥離させる。この時、凸形状部28を設置する凸形状の充填硬化樹脂面と成形金型21との接触界面から、該凸形状部28を設置しない凹形状の充填硬化樹脂面と成形金型21との接触界面に向けて離型の亀裂は進行し、且つ成形金型21上に樹脂の凝集破壊による残留樹脂は残さない。
本実施例においては、凸形状部28の高さとして140μmを設定したが、光硬化性樹脂22の層厚200μmの70%以上95%以下の範囲であれば同様の効果を得ることができる。
このように、本実施例によれば、レプリカ成形における離型の際に大きな離型力を必要としないので、従来のものに比して、離型性を向上させることができる。
また、レプリカ成形における離型の際に成形樹脂の凝集破壊が発生しにくいので、従来のものに比して、生産の効率化とコストダウンが可能となる。
また、凸形状部28を成形用型の光学有効径外における任意の位置に設置することで、レプリカ成形における離型亀裂の進行を制御することができる。
本発明の実施の形態でのレプリカ成形における光硬化性樹脂の硬化プロセスを説明するための模式図。 本発明の実施の形態でのレプリカ成形における光硬化性樹脂の硬化プロセスを説明するための模式図。 本発明の実施の形態におけるレプリカ成形の離型プロセスを説明するための模式図。 本発明の実施の形態におけるレプリカ成形の離型プロセスを説明するための模式図。 本発明の実施の形態におけるレプリカ成形の離型プロセスを説明するための模式図。 本発明の実施の形態による図3の離型プロセスの模式図の具体例を示す図。 本発明の実施の形態でのレプリカ成形における光硬化性樹脂の硬化プロセスを説明するための模式図。 本発明の実施の形態におけるレプリカ成形の離型プロセスを説明するための模式図。 本発明の実施の形態における凸形状部を成形型面上の光学有効径外の1点に設置した成形型を用いたレプリカ成形の光硬化プロセスを説明するための模式図であり、(a)はその上面図、(b)は断面図。 本発明の実施の形態における凸形状部を成形型面上の光学有効径外の1点に設置した成形型を用いたレプリカ成形の離型プロセスを説明するための模式図であり、(a)はその上面図、(b)は断面図。 本発明の実施例1における回折光学素子の成形に用いられるレプリカ成形装置の断面図。 本発明の実施例1における成形型を説明するための模式図であり、(a)はその上面図、(b)は断面図。 本発明の実施例1における成形型により成形される回折光学素子の構成を示す模式図であり、(a)はその上面図、(b)は断面図。 本発明の実施例1における回折光学素子の成形に用いられるレプリカ成形装置の断面図。 本発明の実施例2における非球面レンズの成形に用いられるレプリカ成形装置の模式図。 本発明の実施例2における成形型を説明するための模式図であり、(a)はその上面図、(b)は断面図。 本発明の実施例2における成形型により成形される非球面レンズの構成を示す模式図であり、(a)はその上面図、(b)は断面図。
符号の説明
1:成形型
2:光硬化性樹脂
2’:光硬化性樹脂
3:レンズブランク
4:充填樹脂面
4’:充填硬化樹脂面
5:光源
6:離型の亀裂進行
7:レンズブランク保持部材
8:凸形状部
11:成形型
12:光硬化性樹脂
12’:光硬化性樹脂
13:レンズブランク
14:充填樹脂面
15:光源
17:レンズブランク保持部材
18:凸形状部
18’:凸形状部
19:光学機能形状
19’:光学機能形状
20:回折光学素子
21:成形型
22:光硬化性樹脂
22’:光硬化性樹脂
23:レンズブランク
24:充填樹脂面
25:光源
27:レンズブランク保持部材
28:凸形状部
28’:凸形状部
29:光学機能形状
29’:光学機能形状
30:レンズブランク突き当て部
31:非球面レンズ

Claims (4)

  1. 光学形状を光硬化性樹脂に転写するための成形面を備え、該成形面にガラス基板によって押圧充填された光硬化性樹脂を光硬化させ、該硬化させた樹脂を該ガラス基板と共に該成形面より離型して複合型光学素子を成形する成形用型において、
    前記成形面における光学有効成形面外に、前記光硬化性樹脂の樹脂厚の70%以上95%以下の高さを有する凸形状部を有することを特徴とする複合型光学素子の成形用型。
  2. 前記凸形状部は、光学有効成形面外に1点乃至は複数点、あるいは該光学有効成形面外の外周全域に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の複合型光学素子の成形用型。
  3. 請求項1または請求項2に記載の複合型光学素子の成形用型を用いて成形されたことを特徴とする複合型光学素子。
  4. 複合型光学素子が、回折光学素子または非球面レンズであることを特徴とする請求項3に記載の複合型光学素子。
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