JP2007325571A - 組換え哺乳類動物細胞を用いたタンパク質生産方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
哺乳類動物細胞を宿主として組換えタンパク質を生産する系を構築する際に、選択薬剤を添加しない条件下における長期的な培養時においても、組換えタンパク質を一定レベルで安定に生産できるタンパク質生産方法の提供
【解決手段】
哺乳類動物培養細胞において、内在性かつ構成的に転写されている遺伝子の、隣接する遺伝子とは独立した転写発現の制御を受けうる、染色体領域に外来性遺伝子の発現ユニットを位置特異的に導入することにより、クローン間の発現レベルの差異が小さく、かつ長期的な発現の安定性が改良された組換えタンパク質生産細胞クローンを取得できる。
【選択図】 図1
哺乳類動物細胞を宿主として組換えタンパク質を生産する系を構築する際に、選択薬剤を添加しない条件下における長期的な培養時においても、組換えタンパク質を一定レベルで安定に生産できるタンパク質生産方法の提供
【解決手段】
哺乳類動物培養細胞において、内在性かつ構成的に転写されている遺伝子の、隣接する遺伝子とは独立した転写発現の制御を受けうる、染色体領域に外来性遺伝子の発現ユニットを位置特異的に導入することにより、クローン間の発現レベルの差異が小さく、かつ長期的な発現の安定性が改良された組換えタンパク質生産細胞クローンを取得できる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、組換え哺乳類動物培養細胞を利用した、タンパク質生産方法に関する。
組換えタンパク質生産システムにおいて、原核生物や真核生物を宿主とした種々の方法が知られている。哺乳類動物細胞を宿主とした組換えタンパク質生産システムは、ヒトを始めとする高等動物由来のタンパク質に対し、糖鎖付加、フォールディング、リン酸化などの翻訳後修飾をより生体で作られるものと同じように施すことが可能である。
この翻訳後修飾は、タンパク質の本来有する生理活性を組換えタンパク質で再現するために必要なものであり、そのような生理活性が特に必要とされる医薬品などに用いられる組換えタンパク質の生産系には、哺乳類動物細胞を宿主としたタンパク質生産システムがよく用いられている。
現在、工業的生産に用いられている哺乳類動物細胞によるタンパク質生産システムとして、CHO-DHFRシステムとGS-NS0システムの二つが挙げられる。これらの生産システムでは、プラスミドベクターに含まれる選択マーカーと適切な薬剤選択プロセスを組み合わせることで、染色体に組込まれたプラスミドベクターのコピー数が増幅したクローンを選択する。CHO-DHFRシステムでは選択薬剤メトトレキセートによる2段階の選抜工程により、発現レベルが数十倍に増大した細胞クローンを選択できる。
しかしながら、単純に増幅されたプラスミドベクターのコピー数に比例して目的タンパク質の発現レベルが増大しないこと、発現レベルが増大した細胞クローンを選択するまでにかかる時間が長いことなどの課題がある。より重要な課題としては、発現レベルが増大した細胞クローンの選択後に、選択薬剤を含まない培地で選択細胞クローンの培養を継続することで、ほとんどのクローンにおいて発現レベルの減少または消失が確認されることである(特許文献1、非特許文献1)。
哺乳類動物細胞によるタンパク質の生産は、目的タンパク質をコードするDNA配列とそれを適切に発現しうるように連結されたプロモーター配列やポリA付加配列、および選択マーカーなどを含むプラスミドベクターを細胞に導入し、該プラスミドベクターが染色体へ組込まれた細胞クローンを選択し、さらに該細胞クローンを適切な培養条件で培養して目的タンパク質を発現させることにより行なわれている。
この染色体への組込みはランダムな位置で起こりうる事象で、得られる細胞クローンによって目的タンパク質の発現レベルが異なる。また細胞クローンによっては目的タンパク質を発現しないなどの問題がある。これについては、多数のクローンを組換えタンパク質の発現レベルにより選抜して、好ましいクローンを選択するという方法が採られている。このスクリーニングプロセスは非常に手間と労力を要し、このような手間を回避して迅速に好ましいクローンを選択するプロセスが求められる。
このような技術として、マウス細胞の特定染色体位置にベクターを組込む技術が開示されている(特許文献2)。免疫グロブリンγ2A座と相同な塩基配列を有する配列を搭載したベクターにより、組換え細胞クローンのプール中に相同的組換え細胞クローンを生じさせる。標的となる染色体位置は、外来遺伝子が組込まれた際にランダム組込みと比較して高い発現レベルを与えうる位置としてあらかじめ同定されている。したがって、スクリーニング対象となる組換え細胞クローンのプール中に、高い発現レベルを有する相同的組換え細胞クローンが一定の頻度で存在することにより、発現レベルによるスクリーニングの際の労力を低減することが可能となる。
また、マーキングプラスミドの利用技術についても開示されている(特許文献3)。あらかじめマーキングプラスミドをランダム組換えした細胞クローン集団の中からマーキングプラスミド内に存在するマーカー遺伝子の発現レベルが高いクローンを選択しておく。次に目的タンパク質遺伝子を有するプラスミドベクターとランダムに組込まれたマーキングプラスミド配列との間で部位特異的組換えが引き起こされた細胞クローンを選択することにより、マーカー遺伝子の発現レベルを継承した目的タンパク質産生クローンが得られる。
前記した技術によって、発現レベルの高いクローンの選択に要する労力を削減することはできる。しかしながら、得られたクローンを選択薬剤非添加で継続的に培養した際における、長期的発現レベルの安定性については予測できないという問題点がいまだ残されている。
医薬タンパク質の工業的生産においては、高いタンパク質発現レベルでかつ発現レベルが安定に維持されることが重要である。特に発現レベルが安定に維持されることに関しては、コスト面のみならず、医薬タンパク質としての同一性および安全性を証明するためにも重要である。組換えタンパク質生産細胞を工業的スケールでの生産に用いるためには生産細胞クローンの培養スケールの拡大を図る必要がある。これには通常少なくとも樹立直後のクローンから約60回の細胞分裂を経なければならないと見積られており(非特許文献2)、この発現レベルが一定に保たれていなければならない。
また、選択薬剤は培養コストを上昇させることのみならず、医薬品への異物混入リスク回避のために行われる精製プロセスのコストも上昇させる。したがって、選択薬剤を添加することなく発現レベルを安定に維持できる細胞クローンの選択技術、または細胞クローンの作製技術の開発が強く望まれている。
上記のような事情があるにも関わらず、目的タンパク質発現レベルの安定性に関して充分な技術的検討が行なわれてきたとはいえない。これまでのところ、長期培養時における成長速度並びに生産性に関して蓄積されたデータを元に、経験的にクローン選択が行なわれている。しかしながら、この経験的な方法では発現レベルが安定な細胞クローンを実際に取得できるケースは稀である(非特許文献3)。
人工染色体ベクターを用いて長期的な発現レベルの安定性を改善する技術が開示されている(特許文献4)。
しかしながら、人工染色体ベクターはその取扱いの難しさ故に実用化技術へ向けての課題は依然残されたままである。従来用いられているプラスミドベクターをもとに、選択薬剤の非存在下で、長期的な発現レベルの安定性を達成しうる技術開発が強く望まれている。
しかしながら、人工染色体ベクターはその取扱いの難しさ故に実用化技術へ向けての課題は依然残されたままである。従来用いられているプラスミドベクターをもとに、選択薬剤の非存在下で、長期的な発現レベルの安定性を達成しうる技術開発が強く望まれている。
本発明は、哺乳類動物細胞を宿主として組換えタンパク質を生産する系を構築する際に生ずる、上述した問題点を解決することを課題とする。すなわち、選択薬剤を添加しない条件下における長期的な培養時においても、組換えタンパク質を一定レベルで安定に生産できるするタンパク質生産方法の提供をその目的としている。
本発明者らは、今般、ヒト培養細胞において内在性かつ構成的に転写されている遺伝子領域に外来性遺伝子の発現ユニットを位置特異的に導入することにより、従来どおりのランダム位置に発現ユニットが導入されたクローンと比較して、クローン間の発現レベルの差異が小さく、かつ選択薬剤非添加時における発現レベルの長期的な安定性が飛躍的に改良された組換えタンパク質生産用細胞クローンを取得できるという新規な知見を得た。本発明はこれに基づくものである。
したがって、本発明は、内在性かつ構成的に転写されている遺伝子の、隣接する遺伝子とは独立した転写発現の制御を受けうる、染色体領域に部位特異的な組込みを生じうるベクターシステムを利用し、生産したい目的のタンパク質をコードする配列を含む発現ユニットが該染色体領域内に導入された細胞クローンを選択する工程、および該細胞クローンを用いて選択薬剤非添加条件で該目的タンパク質を生産する工程により構成される。
内在性かつ構成的に転写されている遺伝子の、隣接する遺伝子とは独立した転写発現の制御を受けうる、染色体領域に部位特異的に組込みを生じた細胞クローンは、クローン間のタンパク質発現レベルの差異が小さく、かつ薬剤非添加条件下で継続的に培養を行なっても発現レベルが減少しないという特徴を有する。これらの効果により、部位特異的組換えが引き起こされた細胞クローンを選択することで、クローン間の発現レベルの差異が小さいプールが得られるため、従来の発現レベルによる生産用細胞の選択に伴う労力を大幅に軽減することができる。さらに、従来の経験的な長期安定性クローンの選択に伴う不確実性を完全に排除することができる。
細胞
組換えの対象となる細胞は、特に限定されるものではないが、一般的にタンパク質生産ホストとなる哺乳類動物細胞が好適に利用可能である。また哺乳類動物細胞のうちでも、ヒト型の翻訳後修飾が可能なヒト由来の培養細胞がより好適に利用可能である。
組換えの対象となる細胞は、特に限定されるものではないが、一般的にタンパク質生産ホストとなる哺乳類動物細胞が好適に利用可能である。また哺乳類動物細胞のうちでも、ヒト型の翻訳後修飾が可能なヒト由来の培養細胞がより好適に利用可能である。
ターゲット領域
ここで、内在性かつ構成的に転写されている遺伝子の例としては、あらゆる細胞種で恒常的に発現されている、一般的にハウスキーピング遺伝子と呼ばれる遺伝子群が挙げられる。このような遺伝子の例としては、HPRT遺伝子やTK遺伝子などがある。
ここで、内在性かつ構成的に転写されている遺伝子の例としては、あらゆる細胞種で恒常的に発現されている、一般的にハウスキーピング遺伝子と呼ばれる遺伝子群が挙げられる。このような遺伝子の例としては、HPRT遺伝子やTK遺伝子などがある。
ここで、隣接する遺伝子とは独立した転写発現の制御を受けうる染色体領域とは、構成的に転写されている内在性遺伝子の転写発現を制御するシスDNA配列因子の効果が及ぶ範囲内の領域を指す。そのような領域は、一概に、塩基配列の特徴であるとか、上流、下流の塩基数をもって特徴付けられるものではなく、少なくとも、該遺伝子に対し、エンハンサー様エレメントが挿入された場合に、その影響を受ける範囲であると規定することが可能である。
ベクター
また、該染色体領域内に特異的にベクターを組込むベクターシステムとしては、該標的遺伝子座と相同な塩基配列を含むベクターを用いて相同組換え反応により組込む方法が好適に利用可能である。また、あらかじめ該遺伝子座に認識配列を導入しておく必要があるが、Cre/loxPシステムまたはFlp/FRTシステムなどのような、loxP配列やFRT配列などの特異的配列を認識して組換えを引き起こすCreリコンビナーゼやFlpリコンビナーゼなどの組換え酵素を利用した部位特異的組換えも利用可能である。
また、該染色体領域内に特異的にベクターを組込むベクターシステムとしては、該標的遺伝子座と相同な塩基配列を含むベクターを用いて相同組換え反応により組込む方法が好適に利用可能である。また、あらかじめ該遺伝子座に認識配列を導入しておく必要があるが、Cre/loxPシステムまたはFlp/FRTシステムなどのような、loxP配列やFRT配列などの特異的配列を認識して組換えを引き起こすCreリコンビナーゼやFlpリコンビナーゼなどの組換え酵素を利用した部位特異的組換えも利用可能である。
ベクターにより組み込まれる、外来性タンパク質の発現ユニットは、当該タンパク質の転写を開始可能なプロモーター、タンパク質コード配列、および転写終結シグナルを少なくとも含んでなるものである。また、プロモーターや転写終結シグナルは、外来性のものでも内在性のものでもよい。
ベクターの導入
ベクターを細胞に導入する方法としては、一般的に用いられている方法が好適に利用可能である。例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、DEAE−デキストラン法、リポソーム試薬を用いる方法、カチオン性脂質を用いたリポフェクション法などが挙げられる。ここで、ベクターが環状である場合、公知の方法により線状化して細胞に導入されてもよい。
ベクターを細胞に導入する方法としては、一般的に用いられている方法が好適に利用可能である。例えば、リン酸カルシウム法、エレクトロポレーション法、マイクロインジェクション法、DEAE−デキストラン法、リポソーム試薬を用いる方法、カチオン性脂質を用いたリポフェクション法などが挙げられる。ここで、ベクターが環状である場合、公知の方法により線状化して細胞に導入されてもよい。
細胞株の選択
該遺伝子座内に特異的にベクターが導入された細胞株の選択方法としては、相同組換え反応の利用の際には、相同組換え細胞を濃縮する技術として公知である、プロモータートラップ法やポリAトラップ法などの利用による薬剤耐性クローンの選択が可能である。ここで薬剤耐性遺伝子としては、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素、グルタミン合成酵素などが利用可能である。
該遺伝子座内に特異的にベクターが導入された細胞株の選択方法としては、相同組換え反応の利用の際には、相同組換え細胞を濃縮する技術として公知である、プロモータートラップ法やポリAトラップ法などの利用による薬剤耐性クローンの選択が可能である。ここで薬剤耐性遺伝子としては、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素、グルタミン合成酵素などが利用可能である。
同様に、リコンビナーゼを利用した部位特異的組換えの場合にも、プロモータートラップ法やポリAトラップ法などが好適に利用可能である。また、特異的配列をあらかじめ標的遺伝子座に組込む際に、外来性のプロモーター、ポリAシグナル、および薬剤耐性遺伝子コード配列の一部を同時に組込んでおき、部位特異的組換え後のスクリーニングにこれらを利用することも可能である。
また、HPRT遺伝子やTK遺伝子など、遺伝子破壊によるカウンターセレクションが可能な遺伝子を標的とした場合、標的位置をエキソン配列上に設定するなどして、標的遺伝子のタンパク質機能を破壊するように設計することで、標的細胞クローンを選択することも可能である。例えば、HPRTでは6TG(6-thioguanine)、8AG(8-azaguanine)による選択、TKではTFT(trifluorothymidine)、BrdU(bromodeoxyuridine)による選択などが可能である。
目的タンパク質の生産
目的タンパク質の生産は、公知技術により行ないうる。
培地に関しては、血清を含まない培地で生産を行なうことが好ましく、より好ましくは含有される全組成が明らかである培地で生産を行なうことである。詳細な培地組成は個々の組換え細胞において最適化する必要があるが、公知の技術により行ないうる。また、組換え細胞を選択する際に用いる選択薬剤を添加しない状態で培養することが望ましい。
培養は、バッチカルチャー法、フェッド−バッチカルチャー法、還流培養法など公知の方法で行ないうる。
目的タンパク質の生産は、公知技術により行ないうる。
培地に関しては、血清を含まない培地で生産を行なうことが好ましく、より好ましくは含有される全組成が明らかである培地で生産を行なうことである。詳細な培地組成は個々の組換え細胞において最適化する必要があるが、公知の技術により行ないうる。また、組換え細胞を選択する際に用いる選択薬剤を添加しない状態で培養することが望ましい。
培養は、バッチカルチャー法、フェッド−バッチカルチャー法、還流培養法など公知の方法で行ないうる。
本発明で得られる目的タンパク質生産組換え細胞は、選択薬剤を添加しない培地で培養を長期的に継続しても少なくとも170世代(HT1080株において129日間の培養期間に相当)にわたって発現レベルは一定に保たれる。この特徴によりバッチカルチャー法、フェッド−バッチカルチャー法においてバッチ期間中の生産タンパク質蓄積量を増加できる。また、還流培養法により連続的に生産する方法も好適に利用可能である。
なお、哺乳動物細胞発現系における外来遺伝子の組換え産生に使用される種々の手法のさらなる詳細は、例えば、F.M.Ausubel,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,(1989)に記載されており、これら手法は、本発明においても用いることができる。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1:プラスミドベクターの構築
図2Bに示されるプラスミドベクター(以下、「ΦHTot31」という。)を以下の手順に従って構築した。このプラスミドベクターはHPRT遺伝子を相同組換えの標的遺伝子とし、GFP遺伝子およびNeoR遺伝子を同一コンストラクト上に含むように設計した。
図2Bに示されるプラスミドベクター(以下、「ΦHTot31」という。)を以下の手順に従って構築した。このプラスミドベクターはHPRT遺伝子を相同組換えの標的遺伝子とし、GFP遺伝子およびNeoR遺伝子を同一コンストラクト上に含むように設計した。
相同DNA断片の取得
JCRBセルバンクから入手した(カタログ番号IFO50354)ヒト由来樹立細胞株であるHT-1080株を、GFXTM Genomic Blood DNA Purification Kit(Amersham Biosciences)にて処理し、ゲノムDNAを得た。このゲノムDNAから、ヒトHPRT遺伝子のエキソン3を完全に含む1000 bpのDNA配列をPCR法により増幅して単離した。そして、このDNA配列を、エキソン3の5'末端から169bpの位置にて二分し、5'末端側の500 bpを相同DNA断片1とし、3’末端側の500 bpを相同DNA断片2とした。
JCRBセルバンクから入手した(カタログ番号IFO50354)ヒト由来樹立細胞株であるHT-1080株を、GFXTM Genomic Blood DNA Purification Kit(Amersham Biosciences)にて処理し、ゲノムDNAを得た。このゲノムDNAから、ヒトHPRT遺伝子のエキソン3を完全に含む1000 bpのDNA配列をPCR法により増幅して単離した。そして、このDNA配列を、エキソン3の5'末端から169bpの位置にて二分し、5'末端側の500 bpを相同DNA断片1とし、3’末端側の500 bpを相同DNA断片2とした。
構築
ΦHTot31は以下の工程に従って、pQBI25(和光純薬社製、カタログ番号546-00791)に、各DNA配列を順次ライゲートすることにより構築された。
ΦHTot31は以下の工程に従って、pQBI25(和光純薬社製、カタログ番号546-00791)に、各DNA配列を順次ライゲートすることにより構築された。
工程1−a
相同DNA断片1は以下に記載のプライマーを用いPCR法により増幅して単離した。PCR反応時に、相同DNA断片1の5’末端にはBgl II制限酵素切断配列、そのさらに下流にNru I制限酵素切断配列を、3’末端にはBgl II制限酵素切断配列を導入した。
センスプライマー:
HA1 sense; CCTTAGATCTTCGCGAAAGGATGTGATACG (配列番号1)
アンチセンスプライマー:
HA1 antisense; CCTTAGATCTTCTGATAAAATCTACAGTCA (配列番号2)
このPCR増幅断片およびプラスミドpQBI25をBgl II(TaKaRa社製)で切断し、得られた目的のDNA配列をライゲートさせ、プラスミドpQBI25-HA1を構築した。
相同DNA断片1は以下に記載のプライマーを用いPCR法により増幅して単離した。PCR反応時に、相同DNA断片1の5’末端にはBgl II制限酵素切断配列、そのさらに下流にNru I制限酵素切断配列を、3’末端にはBgl II制限酵素切断配列を導入した。
センスプライマー:
HA1 sense; CCTTAGATCTTCGCGAAAGGATGTGATACG (配列番号1)
アンチセンスプライマー:
HA1 antisense; CCTTAGATCTTCTGATAAAATCTACAGTCA (配列番号2)
このPCR増幅断片およびプラスミドpQBI25をBgl II(TaKaRa社製)で切断し、得られた目的のDNA配列をライゲートさせ、プラスミドpQBI25-HA1を構築した。
工程1−b
相同DNA断片2は以下に記載のプライマーを用いPCR法により増幅して単離した。PCR反応時に、相同DNA断片2の5’末端にはPci I制限酵素切断配列、そのさらに下流にNru I制限酵素切断配列を、3’末端にはPci I制限酵素切断配列を導入した。
センスプライマー:
HA2 sense; CCTTACATGTCTGAAGAGCTATTGTGTGAG (配列番号3)
アンチセンスプライマー:
HA2 antisense; CCTTACATGTTCGCGATGCGACTTACTCTC (配列番号4)
このPCR増幅断片およびプラスミドpQBI25-HA1をPci I(New England Biolabs社製)で切断し、得られた目的のDNA配列をライゲートさせΦHTot31プラスミドを構築した。ΦHTot31プラスミドは、配列番号5に示されるDNA配列を有していた。
得られたΦHTot31プラスミドは、大腸菌DH5α(New England Biolabs社製)中で増殖させ、維持した。
相同DNA断片2は以下に記載のプライマーを用いPCR法により増幅して単離した。PCR反応時に、相同DNA断片2の5’末端にはPci I制限酵素切断配列、そのさらに下流にNru I制限酵素切断配列を、3’末端にはPci I制限酵素切断配列を導入した。
センスプライマー:
HA2 sense; CCTTACATGTCTGAAGAGCTATTGTGTGAG (配列番号3)
アンチセンスプライマー:
HA2 antisense; CCTTACATGTTCGCGATGCGACTTACTCTC (配列番号4)
このPCR増幅断片およびプラスミドpQBI25-HA1をPci I(New England Biolabs社製)で切断し、得られた目的のDNA配列をライゲートさせΦHTot31プラスミドを構築した。ΦHTot31プラスミドは、配列番号5に示されるDNA配列を有していた。
得られたΦHTot31プラスミドは、大腸菌DH5α(New England Biolabs社製)中で増殖させ、維持した。
実施例2:細胞へのベクターの導入
プラスミドの切断および精製
実施例1にて得られたΦHTot31プラスミドを用いて以下の実験を行った。
大腸菌DH5α内のΦHTot31プラスミドを、Endofree Plasmid Maxi kit (QIAGEN社製)を用いて精製し、Nru Iにて切断した。切断したΦHTot31プラスミドは1 %アガロースゲルに電気泳動し、目的の長さの断片を切り出した。切り出されたΦHTot31プラスミドはGFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit (AmershamBiosciences製)を用いて精製し、1 g/ Lの濃度になるよう滅菌水に溶解し、以下のトランスフェクション実験に用いた。
プラスミドの切断および精製
実施例1にて得られたΦHTot31プラスミドを用いて以下の実験を行った。
大腸菌DH5α内のΦHTot31プラスミドを、Endofree Plasmid Maxi kit (QIAGEN社製)を用いて精製し、Nru Iにて切断した。切断したΦHTot31プラスミドは1 %アガロースゲルに電気泳動し、目的の長さの断片を切り出した。切り出されたΦHTot31プラスミドはGFX PCR DNA and Gel Band Purification Kit (AmershamBiosciences製)を用いて精製し、1 g/ Lの濃度になるよう滅菌水に溶解し、以下のトランスフェクション実験に用いた。
トランスフェクション
細胞株としてヒト線維肉腫細胞株HT-1080 (IFO50354)を用いた。対数増殖中のHT-1080株を7.5-10 x 106 細胞/ mLにて調製し、その細胞液0.8 mLと精製したΦHTot31プラスミド10 μgとの混合液を得た。この混合液を用いて、BioRad社製のGenePulserを用い、250 V・950 μFの条件にてエレクトロポレーション法により細胞へトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞は、1 x 106 細胞/プレートにてプレートに播種し、インキュベーター中37 ℃、5 % CO2にて培養した。24時間後、プレートにG418を加えた(最終濃度; 500 μg/ mL)。
細胞株としてヒト線維肉腫細胞株HT-1080 (IFO50354)を用いた。対数増殖中のHT-1080株を7.5-10 x 106 細胞/ mLにて調製し、その細胞液0.8 mLと精製したΦHTot31プラスミド10 μgとの混合液を得た。この混合液を用いて、BioRad社製のGenePulserを用い、250 V・950 μFの条件にてエレクトロポレーション法により細胞へトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞は、1 x 106 細胞/プレートにてプレートに播種し、インキュベーター中37 ℃、5 % CO2にて培養した。24時間後、プレートにG418を加えた(最終濃度; 500 μg/ mL)。
相同組換え株のスクリーニング
培養8-12日後、上記プレートにG418耐性コロニーが現れたことを確認した。このプレートの培地を、6TG (最終濃度; 50 μM)およびG418 (最終濃度; 100 μg/ mL)が添加された新しい培地に交換し、さらに8日間培養し、6TGおよびG418耐性コロニーを確認した。
培養8-12日後、上記プレートにG418耐性コロニーが現れたことを確認した。このプレートの培地を、6TG (最終濃度; 50 μM)およびG418 (最終濃度; 100 μg/ mL)が添加された新しい培地に交換し、さらに8日間培養し、6TGおよびG418耐性コロニーを確認した。
スクリーニング後のコロニー数
上記スクリーニング後のコロニー数、および蛍光を発するコロニー数は、以下の表1に示される通りであった。蛍光を発するコロニー数のカウントは蛍光顕微鏡下で行った。
上記スクリーニング後のコロニー数、および蛍光を発するコロニー数は、以下の表1に示される通りであった。蛍光を発するコロニー数のカウントは蛍光顕微鏡下で行った。
86個の緑色コロニーうち、29個をクローニング用シリンダー(アズワン株式会社製)を用い、トリプシン処理して単離した。単離した29個のコロニーうち、増殖した14個のコロニーについてGenome PCR解析を行った。
ゲノムPCRによる解析
上記14個のコロニー(1 x 106細胞)を単離し、GFX Genomic Blood DNA purification kit (AmershamBiosciences社製)を用いて染色体を抽出した。この染色体を鋳型にExpand Long Template PCR system (Roche社製)を用いて以下のプライマーを用いてPCRを行った。この際、プライマーは以下に記載したものを用いた。
センスプライマー:
HA1f; CTTATGAAACATGAGGGCAA (配列番号6)
Vf-recon; TAATGGTTACAAATAAAGCAATAGC (配列番号7)
アンチプライマー:
HA2r; CTCTCTTGAGTATACCTGCAGTCC (配列番号8)
HA2Gr; AATGTGAACATAAGGCGAGT (配列番号9)
Vr-recon; TGGGGTGGAGACTTGGAAATCC (配列番号10)
上記14個のコロニー(1 x 106細胞)を単離し、GFX Genomic Blood DNA purification kit (AmershamBiosciences社製)を用いて染色体を抽出した。この染色体を鋳型にExpand Long Template PCR system (Roche社製)を用いて以下のプライマーを用いてPCRを行った。この際、プライマーは以下に記載したものを用いた。
センスプライマー:
HA1f; CTTATGAAACATGAGGGCAA (配列番号6)
Vf-recon; TAATGGTTACAAATAAAGCAATAGC (配列番号7)
アンチプライマー:
HA2r; CTCTCTTGAGTATACCTGCAGTCC (配列番号8)
HA2Gr; AATGTGAACATAAGGCGAGT (配列番号9)
Vr-recon; TGGGGTGGAGACTTGGAAATCC (配列番号10)
上記プライマーを用いて増幅されうる遺伝子領域を図2に示す。
HA1fおよびHA2rを用いてPCR反応を行った場合、図2Aで示されるように、HPRT遺伝子の1031 b.p.の断片が増幅され得る。しかし、標的部位にΦHTot31が挿入されている場合、図2Bで示されるように、1031 b.p.の断片の代わりに5425 b.p.の断片が増幅され得る。
また、図2Bで示されるように、標的部位にΦHTot31が挿入されていれば、HA1fおよびVr-reconを用いてPCR反応を行った場合、1258 b.p.が増幅され得る。さらにVf-reconおよびHA2Grを用いてPCR反応を行った場合、1319 b.p.が増幅され得る。
HA1fおよびHA2rを用いてPCR反応を行った場合、図2Aで示されるように、HPRT遺伝子の1031 b.p.の断片が増幅され得る。しかし、標的部位にΦHTot31が挿入されている場合、図2Bで示されるように、1031 b.p.の断片の代わりに5425 b.p.の断片が増幅され得る。
また、図2Bで示されるように、標的部位にΦHTot31が挿入されていれば、HA1fおよびVr-reconを用いてPCR反応を行った場合、1258 b.p.が増幅され得る。さらにVf-reconおよびHA2Grを用いてPCR反応を行った場合、1319 b.p.が増幅され得る。
上記プライマーを用いたPCRによる結果は、図3、4および5に示される通りであった。ここでサンプルのWは野生型のHT-1080株(以下、「WT」という)であり、1から14番までは上記のスクリーニング後に単離した細胞株である。
HA1fおよびHA2rプライマーにてPCR反応を行った結果(図3)、1、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14番の細胞株およびWTでは1031 b.p.の断片が増幅され、2および3番の細胞株では1031 b.p.の断片は消失し、代わりに5425 b.p.の断片が増幅した。
1、2、3、8番の細胞株およびWTに対し、HA1fおよびVr-reconプライマーにてPCR反応を行った結果(図4)、2および3番の細胞株では1258 b.p.の断片が増幅され、1、8番の細胞株およびWTではその増幅は確認されなかった。
1、2、3、8番の細胞株およびWTに対し、Vf-reconおよびHA2GrプライマーにてPCR反応を行った結果(図5)、2および3番の細胞株では1319 b.p.の断片が増幅され、1、8番の細胞株およびWTではその増幅は確認されなかった。
上記結果から、2および3番の細胞株は標的部位にΦHTot31が挿入されている相同組換え株であり、1、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14番の細胞株はΦHTot31がランダムに染色体に組込まれているランダム挿入株であることが確認された。
得られた14個の細胞株はRecovery Cell Culture Freezing Medium (GIBCO社製)中-80 ℃で凍結保存した。
HA1fおよびHA2rプライマーにてPCR反応を行った結果(図3)、1、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14番の細胞株およびWTでは1031 b.p.の断片が増幅され、2および3番の細胞株では1031 b.p.の断片は消失し、代わりに5425 b.p.の断片が増幅した。
1、2、3、8番の細胞株およびWTに対し、HA1fおよびVr-reconプライマーにてPCR反応を行った結果(図4)、2および3番の細胞株では1258 b.p.の断片が増幅され、1、8番の細胞株およびWTではその増幅は確認されなかった。
1、2、3、8番の細胞株およびWTに対し、Vf-reconおよびHA2GrプライマーにてPCR反応を行った結果(図5)、2および3番の細胞株では1319 b.p.の断片が増幅され、1、8番の細胞株およびWTではその増幅は確認されなかった。
上記結果から、2および3番の細胞株は標的部位にΦHTot31が挿入されている相同組換え株であり、1、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14番の細胞株はΦHTot31がランダムに染色体に組込まれているランダム挿入株であることが確認された。
得られた14個の細胞株はRecovery Cell Culture Freezing Medium (GIBCO社製)中-80 ℃で凍結保存した。
実施例3:相同組換え株の発現長期安定性の解析
実施例2で得られた細胞株を用いて、以下の実験を行った。
ゲノムPCRによって確かめられた相同組換え株2株(以下、「GT2」および「GT3」という)とランダム挿入株2株(以下、「R1」および「R8」という)を、凍結保存状態から再び培養を開始し、129日間連続的に培養を行った。培養は、FBS(Thermo Trace社製)を10 %含んだMinimum Essential Medium(GIBCO社製)中、5 % CO2存在下37 ℃で行われ、細胞密度が70-80 %に達したところで継代を行った。培養129日目の細胞を長期培養細胞、培養7日目の細胞を初期培養細胞とし、以下の発現長期安定性解析実験に用いた。
実施例2で得られた細胞株を用いて、以下の実験を行った。
ゲノムPCRによって確かめられた相同組換え株2株(以下、「GT2」および「GT3」という)とランダム挿入株2株(以下、「R1」および「R8」という)を、凍結保存状態から再び培養を開始し、129日間連続的に培養を行った。培養は、FBS(Thermo Trace社製)を10 %含んだMinimum Essential Medium(GIBCO社製)中、5 % CO2存在下37 ℃で行われ、細胞密度が70-80 %に達したところで継代を行った。培養129日目の細胞を長期培養細胞、培養7日目の細胞を初期培養細胞とし、以下の発現長期安定性解析実験に用いた。
フローサイトメーター解析
上記4つの細胞株の長期培養細胞および初期培養細胞におけるGFPの蛍光量を調べるため、以下の実験を行った。
上記細胞サンプルをそれぞれ1 x 105 細胞/ mlに調製し、JSAN フローサイトメーター(ベイバイオサイエンス社製)を用いてGFPの蛍光量を測定した。測定は100-200 events/ secの速度で行われ、約8 x 105細胞がAppSan software version138 (ベイバイオサイエンス社製)を用いて解析された。
上記4つの細胞株の長期培養細胞および初期培養細胞におけるGFPの蛍光量を調べるため、以下の実験を行った。
上記細胞サンプルをそれぞれ1 x 105 細胞/ mlに調製し、JSAN フローサイトメーター(ベイバイオサイエンス社製)を用いてGFPの蛍光量を測定した。測定は100-200 events/ secの速度で行われ、約8 x 105細胞がAppSan software version138 (ベイバイオサイエンス社製)を用いて解析された。
上記フローサイトメーターによる解析結果は、図6に示す通りであった。ここで平均蛍光強度は、WTの細胞が10以下の蛍光領域に分布するため、10以上の蛍光強度を保持する細胞から算出されている。
図6に示されるように、GT2およびGT3では、長期培養後も初期培養時と同等の蛍光量を保持することが確かめられた。一方、R1およびR8では、長期培養後蛍光量が減少することが確かめられた。
上記結果から、相同組換え株GT2およびGT3では長期培養後もタンパク質発現量が安定であることが確認された。
図6に示されるように、GT2およびGT3では、長期培養後も初期培養時と同等の蛍光量を保持することが確かめられた。一方、R1およびR8では、長期培養後蛍光量が減少することが確かめられた。
上記結果から、相同組換え株GT2およびGT3では長期培養後もタンパク質発現量が安定であることが確認された。
リアルタイムPCR解析
上記4つの細胞株の長期培養細胞および初期培養細胞におけるGFPのmRNA量を調べるため、以下の実験を行った。
上記細胞サンプルそれぞれからISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いてmRNAを抽出し、High-capacity cDNA archieve kit(Applied Biosystem社製)を用いてcDNAを合成した。このcDNAを鋳型にABI PRISM7300(Applied Biosystem社製)を用いて、以下のプライマーおよびプローブを用いてリアルタイムPCRを行った。この際、プライマーおよびプローブは以下に記載したものを用いた。
センスプライマー:
GFP-Forward; GTGATGTTAACGGCCACAAGTTC (配列番号11)
アンチセンスプライマー:
GFP-Reverse; AACAGGCAGTTTGCCAGTAGTG (配列番号12)
プローブ:
GFP-probe; CTTACCCTGAAGTTCATC (配列番号13)
また、同時に内部標準遺伝子であるβアクチンのmRNAコピー数をHuman ACTB kit(Applied Biosystem社製)を用いて測定した。
上記4つの細胞株の長期培養細胞および初期培養細胞におけるGFPのmRNA量を調べるため、以下の実験を行った。
上記細胞サンプルそれぞれからISOGEN(ニッポンジーン社製)を用いてmRNAを抽出し、High-capacity cDNA archieve kit(Applied Biosystem社製)を用いてcDNAを合成した。このcDNAを鋳型にABI PRISM7300(Applied Biosystem社製)を用いて、以下のプライマーおよびプローブを用いてリアルタイムPCRを行った。この際、プライマーおよびプローブは以下に記載したものを用いた。
センスプライマー:
GFP-Forward; GTGATGTTAACGGCCACAAGTTC (配列番号11)
アンチセンスプライマー:
GFP-Reverse; AACAGGCAGTTTGCCAGTAGTG (配列番号12)
プローブ:
GFP-probe; CTTACCCTGAAGTTCATC (配列番号13)
また、同時に内部標準遺伝子であるβアクチンのmRNAコピー数をHuman ACTB kit(Applied Biosystem社製)を用いて測定した。
上記プライマーを用いたリアルタイムPCRによる結果は、図7に示される通りであった。ここで、コピー数は、濃度既知のΦHTot31プラスミドを使った検量線と、βアクチンの発現量から算出し、3回行った平均値を示している。
図7に示されるように、GT2およびGT3では、長期培養後も初期培養時と同等のmRNA量を保持することが確かめられた。一方、R1およびR8では、長期培養後mRNA量が減少することが確かめられた。
上記結果から、相同組換えGT2およびGT3では長期培養後も転写発現量が安定であることが確認された。
図7に示されるように、GT2およびGT3では、長期培養後も初期培養時と同等のmRNA量を保持することが確かめられた。一方、R1およびR8では、長期培養後mRNA量が減少することが確かめられた。
上記結果から、相同組換えGT2およびGT3では長期培養後も転写発現量が安定であることが確認された。
サザンハイブリダイゼーション解析
上記4つの細胞株の長期培養細胞および初期培養細胞におけるΦHTot31のコピー数を調べるため、以下の実験を行った。
プローブの作成
DIG標識したプローブは、pGEM-T vector (promega社製)に相同DNA断片2がサブクローニングされたpGEMT-HA2プラスミドと、NeoR遺伝子のCDS領域がサブクローニングされたpGEMT-NeoRプラスミドをテンプレートに、それぞれ以下のプライマーを用いてPCR DIG probe synthesis kit (Roche社製)を用いて作成した。
センスプライマー:
M13 Forward; GTTTTCCCAGTCACGAC (配列番号14)
アンチセンスプライマー:
M13 Reverse; CAGGAAACAGCTATGAC (配列番号15)
メンブレンの作成
上記細胞サンプルそれぞれから、GFX Genomic Blood DNA purification kit (AmershamBiosciences社製)を用いてゲノムDNAを抽出し、Bgl II(TaKaRa社製)またはHind III(TaKaRa社製)で切断した。切断したゲノムDNA 10 μgを0.6 %アガロースゲルを用いて電気泳動し、Hybond N+ membrane(AmershamBiosciences社製)に転写した。転写したメンブレンは80 ℃で2時間インキュベートし、DNAをメンブレン上に固定化した。
プレハイブリダイゼーション/ハイブリダイゼーション/検出
プレハイブリダイゼーション、プローブのハイブリダイゼーションおよび検出は、DIG Application Manual for filter hybridyzation(Roche社製)に基づき行った。
ストリッピング
プローブのストリッピングは、ストリッピングバッファー(0.2 M NaOH、0.1 % SDS)中37 ℃で15分行った。この操作を2回行った後、メンブレンからシグナルが検出されないことを確認した。
上記4つの細胞株の長期培養細胞および初期培養細胞におけるΦHTot31のコピー数を調べるため、以下の実験を行った。
プローブの作成
DIG標識したプローブは、pGEM-T vector (promega社製)に相同DNA断片2がサブクローニングされたpGEMT-HA2プラスミドと、NeoR遺伝子のCDS領域がサブクローニングされたpGEMT-NeoRプラスミドをテンプレートに、それぞれ以下のプライマーを用いてPCR DIG probe synthesis kit (Roche社製)を用いて作成した。
センスプライマー:
M13 Forward; GTTTTCCCAGTCACGAC (配列番号14)
アンチセンスプライマー:
M13 Reverse; CAGGAAACAGCTATGAC (配列番号15)
メンブレンの作成
上記細胞サンプルそれぞれから、GFX Genomic Blood DNA purification kit (AmershamBiosciences社製)を用いてゲノムDNAを抽出し、Bgl II(TaKaRa社製)またはHind III(TaKaRa社製)で切断した。切断したゲノムDNA 10 μgを0.6 %アガロースゲルを用いて電気泳動し、Hybond N+ membrane(AmershamBiosciences社製)に転写した。転写したメンブレンは80 ℃で2時間インキュベートし、DNAをメンブレン上に固定化した。
プレハイブリダイゼーション/ハイブリダイゼーション/検出
プレハイブリダイゼーション、プローブのハイブリダイゼーションおよび検出は、DIG Application Manual for filter hybridyzation(Roche社製)に基づき行った。
ストリッピング
プローブのストリッピングは、ストリッピングバッファー(0.2 M NaOH、0.1 % SDS)中37 ℃で15分行った。この操作を2回行った後、メンブレンからシグナルが検出されないことを確認した。
上記プローブを用いて検出されうるDNA断片を図2に示す。
ゲノムDNAをBgl IIで切断し、相同DNA断片2から作成したプローブ(以下、「HA2プローブ」という)を用いてサザンハイブリダイゼーションを行った場合、図2Aで示されるように、HPRT遺伝子の3385 b.p.のバンドが検出され得る。しかし、標的部位にΦHTot31が挿入されている場合、図2Bで示されるように、3385 b.p.のバンドの代わりに5945 b.p.のバンドが検出され得る。
ゲノムDNAをBgl IIで切断し、NeoR遺伝子のCDS領域から作成したプローブ(以下、「NeoRプローブ」という)を用いてサザンハイブリダイゼーションを行った場合、ΦHTot31が挿入された場所のバンドが検出され得る。標的部位にΦHTot31が挿入されている場合、図2Bで示されるように、5945 b.p.のバンドが検出され得る。
ゲノムDNAをHind IIIで切断し、相同DNA断片2から作成したプローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行った場合、図2Aで示されるように、HPRT遺伝子の6909 b.p.のバンドが検出され得る。しかし、標的部位にΦHTot31が挿入されている場合、図2Bで示されるように、6909 b.p.のバンドの代わりに11258 b.p.のバンドが検出され得る。
ゲノムDNAをHind IIIで切断し、NeoR遺伝子のCDS領域から作成したプローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行った場合、ΦHTot31が挿入された場所のバンドが検出され得る。標的部位にΦHTot31が挿入されている場合、図2Bで示されるように、11258 b.p.のバンドが検出され得る。
ゲノムDNAをBgl IIで切断し、相同DNA断片2から作成したプローブ(以下、「HA2プローブ」という)を用いてサザンハイブリダイゼーションを行った場合、図2Aで示されるように、HPRT遺伝子の3385 b.p.のバンドが検出され得る。しかし、標的部位にΦHTot31が挿入されている場合、図2Bで示されるように、3385 b.p.のバンドの代わりに5945 b.p.のバンドが検出され得る。
ゲノムDNAをBgl IIで切断し、NeoR遺伝子のCDS領域から作成したプローブ(以下、「NeoRプローブ」という)を用いてサザンハイブリダイゼーションを行った場合、ΦHTot31が挿入された場所のバンドが検出され得る。標的部位にΦHTot31が挿入されている場合、図2Bで示されるように、5945 b.p.のバンドが検出され得る。
ゲノムDNAをHind IIIで切断し、相同DNA断片2から作成したプローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行った場合、図2Aで示されるように、HPRT遺伝子の6909 b.p.のバンドが検出され得る。しかし、標的部位にΦHTot31が挿入されている場合、図2Bで示されるように、6909 b.p.のバンドの代わりに11258 b.p.のバンドが検出され得る。
ゲノムDNAをHind IIIで切断し、NeoR遺伝子のCDS領域から作成したプローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行った場合、ΦHTot31が挿入された場所のバンドが検出され得る。標的部位にΦHTot31が挿入されている場合、図2Bで示されるように、11258 b.p.のバンドが検出され得る。
上記プローブを用いてサザンハイブリダイゼーションを行った結果は、図8、9、10、11に示す通りであった。ここで、aは初期培養細胞を、bは長期培養細胞を示している。
Bgl IIで切断したゲノムDNAを転写したメンブレンを用い、HA2プローブにてサザンハイブリダイゼーションを行った結果(図8)、WT、R1およびR8では3385 b.p.のバンドが検出され、GT2およびGT3では3385 b.p.の代わりに5945 b.p.のバンドが検出されることが確認された。さらにGT2およびGT3の5945 b.p.のバンドは長期培養後も初期培養時と変わらないことが確認された。
Bgl IIで切断したゲノムDNAを転写したメンブレンを用い、NeoRプローブにてサザンハイブリダイゼーションを行った結果(図10)、GT2およびGT3の5945 b.p.のバンドは、図8と同様に長期培養後も初期培養時と変わらないことが確認された。一方、R1では長期培養後ΦHTot31由来のバンドが消失していることが確認された。
Hind IIIで切断したゲノムDNAを転写したメンブレンを用い、HA2プローブにてサザンハイブリダイゼーションを行った結果(図9)、WT、R1およびR8では6909 b.p.のバンドが検出され、GT2およびGT3では6909 b.p.の代わりに11258 b.p.のバンドが検出されることが確認された。さらにGT2およびGT3の11258 b.p.のバンドは長期培養後も初期培養時と変わらないことが確認された。
Hind IIIで切断したゲノムDNAを転写したメンブレンを用い、NeoRプローブにてサザンハイブリダイゼーションを行った結果(図11)、GT2およびGT3の11258 b.p.のバンドは、図9と同様に長期培養後も初期培養時と変わらないことが確認された。一方、R1では長期培養後ΦHTot31由来のバンドが消失していることが確認された。
上記の結果から、相同組換え株GT2およびGT3では、長期培養後も導入されたΦHTot31のコピー数は変わらず安定であることが確認された。
Bgl IIで切断したゲノムDNAを転写したメンブレンを用い、HA2プローブにてサザンハイブリダイゼーションを行った結果(図8)、WT、R1およびR8では3385 b.p.のバンドが検出され、GT2およびGT3では3385 b.p.の代わりに5945 b.p.のバンドが検出されることが確認された。さらにGT2およびGT3の5945 b.p.のバンドは長期培養後も初期培養時と変わらないことが確認された。
Bgl IIで切断したゲノムDNAを転写したメンブレンを用い、NeoRプローブにてサザンハイブリダイゼーションを行った結果(図10)、GT2およびGT3の5945 b.p.のバンドは、図8と同様に長期培養後も初期培養時と変わらないことが確認された。一方、R1では長期培養後ΦHTot31由来のバンドが消失していることが確認された。
Hind IIIで切断したゲノムDNAを転写したメンブレンを用い、HA2プローブにてサザンハイブリダイゼーションを行った結果(図9)、WT、R1およびR8では6909 b.p.のバンドが検出され、GT2およびGT3では6909 b.p.の代わりに11258 b.p.のバンドが検出されることが確認された。さらにGT2およびGT3の11258 b.p.のバンドは長期培養後も初期培養時と変わらないことが確認された。
Hind IIIで切断したゲノムDNAを転写したメンブレンを用い、NeoRプローブにてサザンハイブリダイゼーションを行った結果(図11)、GT2およびGT3の11258 b.p.のバンドは、図9と同様に長期培養後も初期培養時と変わらないことが確認された。一方、R1では長期培養後ΦHTot31由来のバンドが消失していることが確認された。
上記の結果から、相同組換え株GT2およびGT3では、長期培養後も導入されたΦHTot31のコピー数は変わらず安定であることが確認された。
Claims (5)
- 細胞内在性でかつ構成的に発現されている遺伝子の、隣接する遺伝子とは独立した転写発現の制御を受けうる、染色体領域に、外来性の目的タンパク質遺伝子発現ユニットを挿入または置換した哺乳類動物細胞を用いた前記目的タンパク質を生産する方法。
- 前記染色体領域が、当該遺伝子の転写されうる配列の一部または全部から選択される、請求項1に記載の目的タンパク質を生産する方法。
- 前記哺乳類動物細胞が、ヒト由来の培養細胞である請求項1または2に記載の目的タンパク質を生産する方法。
- 細胞内在性でかつ構成的に発現されている遺伝子がHPRT遺伝子であり、相同組換えにより目的タンパク質遺伝子の発現ユニットが導入された請求項1から3のいずれかに記載の目的タンパク質を生産する方法。
- 前記ヒト由来の培養細胞がヒト線維肉腫由来のHT1080細胞株である請求項3または4に記載の目的タンパク質を生産する方法。
Priority Applications (1)
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JP2006161518A JP2007325571A (ja) | 2006-06-09 | 2006-06-09 | 組換え哺乳類動物細胞を用いたタンパク質生産方法 |
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Publications (1)
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ID=38926513
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2011040285A1 (ja) | 2009-10-01 | 2011-04-07 | Toto株式会社 | Dna構築物およびそれを用いた組み換えcho細胞の製造方法 |
EP3382029A1 (en) | 2017-03-31 | 2018-10-03 | Toto Ltd. | Recombinant mammalian cells and method for producing substance of interest |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2005046147A (ja) * | 1991-11-05 | 2005-02-24 | Transkaryotic Therapies Inc | 相同組換えによる脊椎動物細胞等のトランスフェクション |
-
2006
- 2006-06-09 JP JP2006161518A patent/JP2007325571A/ja active Pending
Patent Citations (1)
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CN102639699A (zh) * | 2009-10-01 | 2012-08-15 | Toto株式会社 | Dna构建体以及用其制备重组cho细胞的方法 |
JP4998814B2 (ja) * | 2009-10-01 | 2012-08-15 | Toto株式会社 | Dna構築物およびそれを用いた組み換えcho細胞の製造方法 |
EP3382029A1 (en) | 2017-03-31 | 2018-10-03 | Toto Ltd. | Recombinant mammalian cells and method for producing substance of interest |
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