JP2007325359A - 電力系統の制御系定数設定方法、装置及びプログラム - Google Patents
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Abstract
【課題】電力系統の制御系定数の設定において、発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮すると共に大外乱に対して電力系統の同期安定度を確保することによって安定に送電できる電力を増加させることを可能とする。
【解決手段】固有値解析手法により制御系定数の初期値を算定し、非線形解析手法により安定性指標を算出し、安定性指標を用いて振動発散に関する安定限界エネルギーを算出し、制御系定数と安定限界エネルギーとを用いて制御系定数の変化に対する安定限界エネルギーの感度を計算し、安定限界エネルギーの感度を用いて制御系定数を調整し、制御系定数調整後の電力系統の動揺モードの固有値が許容範囲内にあるか否かを判断し、制御系定数調整前と調整後との間の制御系定数の変化幅及び安定性指標の変化幅が収束条件を満たしているか否かを判断するを有するようにした。
【選択図】図1
【解決手段】固有値解析手法により制御系定数の初期値を算定し、非線形解析手法により安定性指標を算出し、安定性指標を用いて振動発散に関する安定限界エネルギーを算出し、制御系定数と安定限界エネルギーとを用いて制御系定数の変化に対する安定限界エネルギーの感度を計算し、安定限界エネルギーの感度を用いて制御系定数を調整し、制御系定数調整後の電力系統の動揺モードの固有値が許容範囲内にあるか否かを判断し、制御系定数調整前と調整後との間の制御系定数の変化幅及び安定性指標の変化幅が収束条件を満たしているか否かを判断するを有するようにした。
【選択図】図1
Description
本発明は、電力系統の制御系定数設定方法、装置及びプログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、多機系統の同期安定度向上のための制御系の設計に用いて好適な電力系統の制御系定数設定方法、装置及びプログラムに関する。
本明細書において、電力動揺とは、電力系統に連系する同期発電機の内部相差角の振動を意味するものとして用いている。また、制御系定数とは、電力系統安定化装置(Power System Stabilizer;以下、PSSと表記する)や静止型無効電力補償装置(Static Var Compensator;以下、SVCと表記する)等の制御装置の作動を規定するための定数を意味するものとして用いている。
電力系統における電力動揺については外乱による振動発散現象が発生する場合があり、電力動揺を抑制して振動発散現象の発生を防ぐため、同期発電機の励磁量を調整する自動電圧制御装置(Automatic Voltage Regulator;以下、AVRと表記する)に制御信号を与えて電力系統を安定化させるPSSが用いられる。また、SVCなどのパワーエレクトロニクス機器を同期安定度向上に活用する方策もある。
電力系統の同期安定度の向上を目的としたPSSやSVC等の制御系の設計では、従来、線形解析である固有値解析が多く用いられてきた。しかしながら、固有値解析に基づく制御では、発電機内部相差角の設計点近傍での小外乱に対しては有効に機能するが、電力系統構成の変更や大規模な負荷遮断などによる安定平衡点の移動によって非線形が強く現れるような大外乱に対しては電力系統の同期安定度を確保することができないという問題があった。
そこで、発電機に接続された主変圧器の二次側母線の電圧の位相に対する発電機の内部相差角の位相差を算出すると共に位相差の位相差基準値からの偏差を出力する位相差計算回路と、位相差計算回路の出力に基づく補助信号を作成する系統安定化回路と、位相差計算回路が算出した位相差、同期発電機の回転数偏差、同期発電機の内部電圧及び主変圧器の二次側電圧を用いて電力系統の非線形性を補償する補償信号を出力する第一の非線形補償回路と、位相差計算回路が算出した位相差及び主変圧器の二次側電圧を用いて電力系統の非線形性を補償する補償信号を出力する第二の非線形補償回路とを備えたPSSが提案されている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1の方法では、非線形補償回路を備えるようにすることにより電力動揺の非線形性を考慮することはできても、制御系の構造自体の改良または変更が必要であり、既存の制御系をそのまま活用することはできないという問題がある。
また、本発明で対象とする電力系統における電力動揺は、図3に示すように、小さい外乱に対しては動揺モードは安定性を保ち振動発散が発生することはないが(減衰波形1)、非線形性が強く現れる大きい外乱に対しては動揺モードが不安定になって振動発散が発生する(発散波形2)電力動揺である。このとき、動揺モードの安定性が維持され振動発散が発生することがない内部相差角の範囲を安定領域4といい、動揺モードが安定な場合と不安定な場合との境界即ち振動発散の発生・不発生の境界を安定限界4a,4bという。そして、安定限界4aと4bとの間の間隔である安定領域4の幅と動揺の振幅とが一致するときは、動揺は減衰も発散もせず周期的に繰り返されて周期軌道3となる。固有値解析では、微分方程式を線形化して得られた行列の固有値が算出される。固有値はα+jβ(jは虚数単位)の形で算出され、実部αは動揺モードの減衰率に対応し、虚部βは動揺モードの周波数に対応する。したがって、小外乱に対する減衰は固有値の実部として評価できるが、大外乱に対する安定限界については非線形性の考慮が不可欠であるため固有値解析では算出することができない。
さらに、多機系統では一般に複数の動揺モードが振動発散に関係し、かつ、動揺モードが発散することなく安定を保つ安定限界は動揺モード毎に異なる。したがって、電力系統を安定化させるためには複数の動揺モードの安定限界を同時に考慮しなければならないが、従来の制御系定数の設定方法では、複数の動揺モードの安定限界を同時に考慮して制御系定数を調整することは困難であるという問題がある。さらに、安定限界のみに着目して制御系定数を設定すると発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果(ダンピングともいう)が低下し、小外乱に対して不安定になるという問題がある。
そこで、本発明は、発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮すると共に複数の動揺モードの安定限界を同時に考慮することで大外乱に対する電力系統の同期安定度を確保することによって安定に送電できる電力を増加させることができる電力系統の制御系定数設定方法、装置及びプログラムを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するため、請求項1記載の電力系統の制御系定数設定方法は、固有値解析手法により制御系定数の初期値を算定するステップと、非線形解析手法により安定性指標を算出するステップと、安定性指標を用いて振動発散に関する安定限界エネルギーを算出するステップと、制御系定数と安定限界エネルギーとを用いて制御系定数の変化に対する安定限界エネルギーの感度を計算するステップと、安定限界エネルギーの感度を用いて制御系定数を調整するステップと、制御系定数調整後の電力系統の動揺モードの固有値が許容範囲内にあるか否かを判断するステップと、制御系定数調整前と調整後との間の制御系定数の変化幅及び安定性指標の変化幅が収束条件を満たしているか否かを判断するステップとを有するようにしている。
また、請求項2記載の電力系統の制御系定数設定装置は、固有値解析手法により制御系定数の初期値を算定する手段と、非線形解析手法により安定性指標を算出する手段と、安定性指標を用いて振動発散に関する安定限界エネルギーを算出する手段と、制御系定数と安定限界エネルギーとを用いて制御系定数の変化に対する安定限界エネルギーの感度を計算する手段と、安定限界エネルギーの感度を用いて制御系定数を調整する手段と、制御系定数調整後の電力系統の動揺モードの固有値が許容範囲内にあるか否かを判断する手段と、制御系定数調整前と調整後との間の制御系定数の変化幅及び安定性指標の変化幅が収束条件を満たしているか否かを判断する手段とを有するようにしている。
さらに、請求項3記載の電力系統の制御系定数設定プログラムは、電力系統の制御系定数の設定を行う際に、少なくとも、固有値解析手法により制御系定数の初期値を算定する手段、非線形解析手法により安定性指標を算出する手段、安定性指標を用いて振動発散に関する安定限界エネルギーを算出する手段、制御系定数と安定限界エネルギーとを用いて制御系定数の変化に対する安定限界エネルギーの感度を計算する手段、安定限界エネルギーの感度を用いて制御系定数を調整する手段、制御系定数調整後の電力系統の動揺モードの固有値が許容範囲内にあるか否かを判断する手段、制御系定数調整前と調整後との間の制御系定数の変化幅及び安定性指標の変化幅が収束条件を満たしているか否かを判断する手段としてコンピュータを機能させるようにしている。
したがって、この電力系統の制御系定数設定方法、装置及びプログラムによると、固有値解析手法を用いて制御系定数の初期値を算定し、さらに、非線形解析手法を用いて安定性指標を算出すると共に振動発散に関する安定限界エネルギーを算出し、これらに基づいて安定限界エネルギーの感度を計算して収束計算を行うことにより固有値解析手法を用いて算定した制御系定数を調整するようにしているので、固有値解析手法を用いて算定され発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮することができる制御系定数が大外乱に対して電力系統の同期安定度を確保することもできる制御系定数に調整される。また、非線形解析手法を用いて安定性指標を算出すると共に振動発散に関する安定限界エネルギーを算出して制御系定数を調整するようにしているので、非線形性が強い動揺モードの安定限界を考慮して制御系定数が調整されると共に複数の動揺モードの安定限界を同時に考慮して制御系定数が調整される。
本発明の電力系統の制御系定数設定方法、装置及びプログラムによれば、固有値解析手法を用いて算定され発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮することができる制御系定数が大外乱に対して電力系統の同期安定度を確保することもできる制御系定数に調整されるので、発電機内部相差角の小外乱並びに大外乱の両方に適切に対応することができる電力系統の制御系定数を設定することが可能であり、電力系統安定化の最適化を図ると共に安定に送電できる電力の増加を図ることができる。しかも、非線形解析手法を用いて安定性指標を算出すると共に振動発散に関する安定限界エネルギーを算出して制御系定数を調整するようにしているので、非線形性が強い動揺モードの安定限界を考慮して制御系定数を調整することが可能であると共に複数の動揺モードの安定限界を同時に考慮して制御系定数を調整することが可能であり、どのような動揺モードに対しても電力系統安定化の最適化を図ることができる。
以下、本発明の構成を図面に示す最良の形態に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に、本発明の電力系統の制御系定数設定方法並びに制御系定数設定装置の実施形態の一例を示す。
本発明の電力系統の制御系定数設定装置は、一般的な電力系統の動特性の解析に用いられるデータである発電機、送電線、変圧器及び制御系の定数、並びに電力系統の潮流条件等(以下、電力系統動特性解析用入力データと呼ぶ)が記録された装置16にアクセス可能であると共に、収束計算のターン回数をカウントする手段11aと、固有値解析手法により制御系定数の初期値を算定する手段11bと、非線形解析手法により安定性指標を算出する手段11cと、安定性指標を用いて振動発散に関する安定限界エネルギーを算出する手段11dと、制御系定数と安定限界エネルギーとを用いて制御系定数の変化に対する安定限界エネルギーの感度を計算する手段11eと、安定限界エネルギーの感度を用いて制御系定数を調整する手段11fと、制御系定数調整後の電力系統の動揺モードの固有値が許容範囲内にあるか否かを判断する手段11gと、制御系定数調整前と調整後との間の制御系定数の変化幅及び安定性指標の変化幅が収束条件を満たしているか否かを判断する手段11hと、制御系定数を決定する手段11iを有する。
そして、この電力系統の制御系定数設定装置の処理は、図1のフロー図に示すステップに従って実行される。すなわち、収束計算のターン回数Tをゼロにするステップ(S1)と、固有値解析手法により制御系定数の初期値を算定するステップ(S2)と、収束計算のターン回数Tに1を加えるステップ(S3)と、非線形解析手法により安定性指標を算出するステップ(S4)と、安定性指標を用いて振動発散に関する安定限界エネルギーを算出するステップ(S5)と、制御系定数と安定限界エネルギーとを用いて制御系定数の変化に対する安定限界エネルギーの感度を計算するステップ(S6)と、安定限界エネルギーの感度を用いて制御系定数を調整するステップ(S7)と、制御系定数調整後の電力系統の動揺モードの固有値が許容範囲内にあるか否かを判断するステップ(S8)と、制御系定数調整前と調整後との間の制御系定数の変化幅及び安定性指標の変化幅が収束条件を満たしているか否かを判断するステップ(S9)と、収束計算のターン回数[T−1]回目のターン[T−1]の制御系定数を採用するステップ(S10)と、収束計算のターン回数T回目のターンTの制御系定数を採用するステップ(S11)とから構成される。
上述の電力系統の制御系定数設定方法並びに制御系定数設定装置は、電力系統の制御系定数設定プログラムをコンピュータ上で実行することによっても実現される。本実施形態では、電力系統の制御系定数設定プログラムを電力系統の制御系定数設定装置上で実行する場合を例に挙げて説明する。
電力系統の制御系定数設定プログラム17を実行するための電力系統の制御系定数設定装置の全体構成を図2に示す。この電力系統の制御系定数設定装置10は、制御部11、記憶部12、入力部13、表示部14及びメモリ15を備え相互にバス等の信号回線により接続されている。また、電力系統の制御系定数設定装置10にはデータサーバ16が通信回線等により接続されており、その通信回線等を介して相互にデータや制御指令等の信号の送受信(出入力)が行われる。
制御部11は記憶部12に記憶されている電力系統の制御系定数設定プログラム17により電力系統の制御系定数設定装置10全体の制御並びに電力系統の制御系定数の設定に係る演算を行うものであり、例えばCPUである。記憶部12は少なくともデータやプログラムを記憶可能な装置であり、例えばハードディスクである。入力部13は少なくとも作業者の命令をCPUに与えるためのインターフェイスであり、例えばキーボードである。表示部14は制御部11の制御により文字や図形等の表示を行うものであり、例えばディスプレイである。メモリ15は制御部11が各種制御や演算を実行する際の作業領域であるメモリ空間となる。データサーバ16はデータを少なくとも記憶可能なサーバである。
電力系統の制御系定数設定装置10の制御部11には、電力系統の制御系定数設定プログラム17を実行することにより、収束計算のターン回数Tをカウントするカウント部11a、固有値解析手法により制御系定数の初期値を算定する定数算定部11b、非線形解析手法により安定性指標を算出する指標算出部11c、安定性指標を用いて振動発散に関する安定限界エネルギーを算出するエネルギー算出部11d、制御系定数と安定限界エネルギーとを用いて制御系定数の変化に対する安定限界エネルギーの感度を計算する感度計算部11e、安定限界エネルギーの感度を用いて制御系定数を調整する定数調整部11f、制御系定数調整後の電力系統の動揺モードの固有値が許容範囲内にあるか否かを判断する固有値判断部11g、制御系定数調整前と調整後との間の制御系定数の変化幅及び安定性指標の変化幅が収束条件を満たしているか否かを判断する収束条件判断部11h、制御系定数を決定する定数決定部11iが構成される。
また、データサーバ16には、電力系統動特性解析用入力データが蓄積された電力系統データベース18が保存されている。
本発明の電力系統の制御系定数設定方法の実行にあたっては、まず、制御部11のカウント部11aは、収束計算のターン回数T=0とする(S1)。そして、カウント部11aは、収束計算のターン回数Tの値をメモリ15に記憶させる。
次に、制御部11の定数算定部11bは、固有値解析手法により制御系定数の初期値を算定する(S2)。
S2の処理で算定する制御系定数は、発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮する制御系定数であって、S3以降の処理で収束計算によって調整を行うための初期値となる制御系定数である。制御系定数の算定は、電力系統動特性解析用入力データを使用し固有値解析手法を用いて行う。なお、固有値解析手法を用いた制御系定数の算定方法自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略する(例えば、吉村健司・内田直之:多機系統ロバスト安定化のためのP+ω形PSS定数最適設計手法,電気学会論文誌B,118巻11号,1998年、並びに、岡本浩・多田泰之:ロバスト性を考慮したPSSの自動整定に関する一検討,電気学会論文誌B,119巻12号,1999年)。
制御系定数としては、PSSやSVC等の制御装置の作動を規定するための定数を設定し、具体的には例えば、PSSやSVCのゲインや位相補償時定数等を設定する。本実施形態では、PSSのゲイン及び位相補償時定数を対象とした場合を例に挙げて説明する。
定数算定部11bは、データサーバ16に保存された電力系統データベース18から電力系統動特性解析用入力データを読み込み、固有値解析手法を用い、制御系定数としてPSSのゲイン及び位相補償時定数を算定する。そして、定数算定部11bは、算定した制御系定数の値を収束計算のターン0の制御系定数の値としてメモリ15に記憶させる。
次に、制御部11のカウント部11aは、S1の処理でメモリ15に記憶された収束計算のターン回数Tの値を読み込み、読み込んだ収束計算のターン回数Tの値に1を加える(S3)。そして、カウント部11aは、新たな収束計算のターン回数Tの値をメモリ15に記憶させる。続いて、制御部11は、収束計算のターン回数T回目のターンT(以下、収束計算のターンTと表記する)の処理を開始する。
制御部11の指標算出部11cは、非線形解析手法により安定性指標を算出する(S4)。
本発明では、電力系統の動揺モードの非線形性を考慮するため、標準形理論を用いて系を簡約化することにより安定性指標を算出する。標準形理論は、非線形の座標変換を行うことによって系の非線形項を順次取り除き、系をできる限り簡単な形(標準形という)へ変形する理論であり、標準形理論自体は周知の技術であるのでここでは詳細については省略する(例えば、J.Guckenheimer and P.Holmes:Nonlinear Oscillations Dynamical Systems and Bifurcations of Vector Fields,Springer-Verlag,New York,1983年、並びに、S.Wiggins:“Introduction to Applied Nonlinear Dynamical Systems and Chaos”,Springer-Verlag,New York,1990年)。また、安定性指標とは、振動発散に関する安定限界に対応する指標であり、具体的には、安定限界に対応する周期軌道に関する各動揺モードの振幅及び位相である。
ここで、多機系統で振動発散が問題となる場合は、各動揺モードの周波数の大きさの関係が整数比に近い場合即ち内部共振が影響する場合が多いと考えられるため、本発明では、内部共振が影響する場合を対象とする。そこで、以降では、まず、基本的な系の簡約化として内部共振が影響しない場合の標準形理論を用いた系の簡約化について説明し、続いて、内部共振が影響する場合の系の簡約化について説明すると共に安定性指標の算出について説明する。
また、本実施形態では、標準形理論を用いて系を三次の項まで簡約化する場合について説明する。なお、標準形理論を用いて系を簡約化する際に四次以上の項まで簡約化するようにしても良い。
1)線形変換
電力系統の動特性を記述する微分方程式を数式1により表す。なお、f(x)は微分可能であり、安定な平衡点x0を持ち、平衡点x0での線形化行列Aは対角可能である。
電力系統の動特性を記述する微分方程式を数式1により表す。なお、f(x)は微分可能であり、安定な平衡点x0を持ち、平衡点x0での線形化行列Aは対角可能である。
なお、状態変数xは、具体的には例えば、同期発電機の内部相差角や角速度、制御系の内部状態を表す変数などである。
平衡点x0での線形化行列Aの固有ベクトルからなる行列Pによる線形座標変換であって数式2に示す通常のモード変換を行い、数式1を数式3に変換する。
(数2) y=P−1(x−x0)
ここに、y:式変形の説明のための変数、P:平衡点x0での線形化行列Aの固有ベクトルからなる行列、x:状態変数、x0:平衡点。
ここに、y:式変形の説明のための変数、P:平衡点x0での線形化行列Aの固有ベクトルからなる行列、x:状態変数、x0:平衡点。
ここで、F(y)=P−1f(Py+x0)の線形部分をJyと表し、k次の非線形項をFk(y)と表して数式3を数式4に変形する。なお、行列J=P−1APyは対角行列となる。
2)二次の変換
次に、数式5に示す二次の座標変換を行い、数式4の二次の項F2(y)を取り除く。
次に、数式5に示す二次の座標変換を行い、数式4の二次の項F2(y)を取り除く。
(数5) y=w+h2(w)
ここに、y,w:式変形の説明のための変数、h2(w):座標変換に用いる関数。
ここに、y,w:式変形の説明のための変数、h2(w):座標変換に用いる関数。
具体的には、標準形理論に基づき、数式6,7及び8を用いて数式5に示す二次の座標変換を行う。
なお、数式6,7及び8の導出において数式9の近似を用いる。
(数9) (id+Dh2(w))−1=id−Dh2(w)+O[│w│2]
ここに、id:単位変換、h2(w):座標変換に用いる関数、w:式変形の説明のための変数、D:微分演算子。また、O[X]:Xより低い次数の式は無視できることを表す。
ここに、id:単位変換、h2(w):座標変換に用いる関数、w:式変形の説明のための変数、D:微分演算子。また、O[X]:Xより低い次数の式は無視できることを表す。
上記の二次の座標変換を行い、数式4を数式10に変換する。
3)三次の変換
安定限界付近の動揺モードであって複素固有値を持つ動揺モードがM個の場合は、この動揺モードi(ただし、i≦M)に対し、標準形理論に基づいて三次までの範囲で数式10を数式11の形に変換する。ただし、λk=λl+λm+λnの関係が成り立たないとする。
安定限界付近の動揺モードであって複素固有値を持つ動揺モードがM個の場合は、この動揺モードi(ただし、i≦M)に対し、標準形理論に基づいて三次までの範囲で数式10を数式11の形に変換する。ただし、λk=λl+λm+λnの関係が成り立たないとする。
数式11の動揺モードiの平衡点x0での線形化行列Aの固有値λiは固有値実部αiと固有値虚部βiとからなり、λi=αi+jβi(j:虚数単位)と表される。また、三次の項の係数cijは係数実部crijと係数虚部ciijとからなり、cij=crij+jciij(j:虚数単位)と表される。
数式5から数式8による二次の座標変換を考慮し、数式11の三次の項の係数cijを数式12により求める。
なお、数式12の第一項は数式4の三次の非線形項F3に含まれていたもともとの非線形項であり、第二項は二次の変換によって変形された効果を表す。
続いて、内部共振が影響する場合の系の簡約化を行う。数式11に関し、λl=λm+λn又はλk=λl+λm+λnの関係が成り立つ場合は、座標変換に用いる係数の分母がゼロになるために数式11の形に変換できない。また,λl=λm+λn又はλk=λl+λm+λnに近い関係が成り立つ場合には、座標変換に用いる係数の分母が小さくなり、その結果、数式9の近似が成り立たなくなるために数式11のような形に簡約化できない。このため、内部共振が影響する場合には、数式11のような形に簡約化するのではなく、座標変換に用いる係数の分母が小さくなるような項についてはそのまま残した形に簡約化する。具体的には例えば、動揺モード1と2とが1:2の内部共振の場合には数式13の形に簡約化する。数式13は、数式11に座標変換の二次の項であるb11,b21に関する項が加わった形である。なお、二次の項の係数bは数式14により求め、三次の項の係数cは数式12により求める。
4)安定性指標の算出
内部共振が影響する場合を対象として安定性指標を算出する。内部共振に関係する動揺モードiの振幅をri度並びに位相をθiradとし、数式15を用いて極座標表示をすることにより、標準形理論による系の簡約化によって得られた式を変形する。具体的には例えば、動揺モード1と2とが1:2の内部共振の場合には、数式13を極座標表示して整理すると数式16になる。
内部共振が影響する場合を対象として安定性指標を算出する。内部共振に関係する動揺モードiの振幅をri度並びに位相をθiradとし、数式15を用いて極座標表示をすることにより、標準形理論による系の簡約化によって得られた式を変形する。具体的には例えば、動揺モード1と2とが1:2の内部共振の場合には、数式13を極座標表示して整理すると数式16になる。
そして、動揺モードの振幅の微分をゼロとした式及び位相差の微分をゼロとした式からなる代数方程式を解いて振動発散に関する安定限界に対応する安定性指標を算出する。具体的には例えば、動揺モード1と2とが1:2の内部共振の場合には、動揺モードの振幅の微分をゼロとした数式17及び位相差の微分をゼロとした数式18からなる代数方程式を解く。
安定性指標は数式17及び数式18からなる代数方程式の解ri,θiとして得られ、振動発散に関する安定限界に対応する指標Ri,Θiとして算出される。すなわち、Riは図3の安定限界に対応する周期軌道3に関する各動揺モードの振幅に対応し、Θiは図3の周期軌道3に関する各動揺モードの位相に対応する。なお、周期軌道の基本周波数ΩはRi,Θiから算出できる。例えば、動揺モード1と2とが1:2の内部共振の場合には数式19により算出できる。
(数19) Ω=2g3(R1,R2,2Θ1−Θ2)=g4(R1,R2,2Θ1−Θ2)
ここに、Ω:周期軌道の基本周波数(rad/秒)、Ri:周期軌道に関する動揺モードiの振幅、Θi:周期軌道に関する動揺モードiの位相、gx:説明のための関数の名前。
ここに、Ω:周期軌道の基本周波数(rad/秒)、Ri:周期軌道に関する動揺モードiの振幅、Θi:周期軌道に関する動揺モードiの位相、gx:説明のための関数の名前。
上記の考え方に基づいて、指標算出部11cは、データサーバ16に保存された電力系統データベース18から電力系統動特性解析用入力データを読み込み、動揺モードの振幅の微分をゼロとした式及び位相差の微分をゼロとした式からなる代数方程式を解くことにより周期軌道に関する動揺モードi毎の振幅Ri及び位相Θiを算出する。そして、指標算出部11cは、安定性指標として周期軌道に関する動揺モードi毎の振幅Ri及び位相Θiの値をメモリ15に記憶させる。
なお、安定領域が十分に広く、若しくは収束計算を繰り返し行う間に安定領域が十分広くなり、非線形解析手法によって周期軌道が算出できない場合には、制御部11はS4の処理を終了して収束計算のターンTの処理を終了し、S10の処理に移行する。そして、制御部11の定数決定部11iは、収束計算のターン[T−1]の制御系定数を採用して(S10)制御系定数の設定処理を終了する(END)。
次に、制御部11のエネルギー算出部11dは、S4の処理で算出した安定性指標を用いて振動発散に関する安定限界エネルギーを算出する(S5)。
S4の処理で算出された安定限界に対応する周期軌道に関する各動揺モードの振幅Riと位相Θiとを用いて周期軌道を数式20により表す。なお、数式20の変数のうち動揺モードiの固有ベクトルaiについては、収束計算のターン1ではS2の処理で固有値と同時に算出される固有ベクトルの値を用い、それ以降の収束計算のターンT(T≧2)では収束計算のターン[T−1]のS8の処理で算出される固有ベクトルの値を用いる。
そして、本実施形態ではS4の処理において三次までの非線形性を考慮していることに対応して、周期軌道を基本周波数、2倍周波数及び3倍周波数の各成分で表現することとし、ni=1である動揺モードの集合をN1、ni=2である動揺モードの集合をN2、ni=3である動揺モードの集合をN3として数式20を数式21に変形する。
さらに、数式21の周波数成分のうち総和演算子Σに係る部分を数式22により置き換えて数式21を数式23に変形する。
そして、数式23のn倍周波数成分を数式24で表す。
(数24) xn(t)=Anexp(jnΩt)
=(Re[An]+jIm[An]){cos(nΩt)+jsin(nΩt)}
ここに、xn:状態変数xのn倍周波数成分、An:数式22で表される変数、j:虚数単位、n:動揺モードの周波数の周期軌道の基本周波数Ωに対する比(整数)、Ω:周期軌道の基本周波数(=2π/周期)(rad/秒)、t:時間(秒)。
また、Re[X]は複素数Xの実部をとることを表し、Im[X]は複素数Xの虚部をとることを表す。
=(Re[An]+jIm[An]){cos(nΩt)+jsin(nΩt)}
ここに、xn:状態変数xのn倍周波数成分、An:数式22で表される変数、j:虚数単位、n:動揺モードの周波数の周期軌道の基本周波数Ωに対する比(整数)、Ω:周期軌道の基本周波数(=2π/周期)(rad/秒)、t:時間(秒)。
また、Re[X]は複素数Xの実部をとることを表し、Im[X]は複素数Xの虚部をとることを表す。
また、n倍周波数成分の運動エネルギーEkn(t)を数式25で表す。
さらに、数式25で表される運動エネルギーEkn(t)が周期軌道においてとり得る最大値を各n倍周波数成分のエネルギーEnとし、各n倍周波数成分の運動エネルギーEnを数式26により算出する。なお、数式24よりΔωCOA s(t)は三角関数の合成で表現されるので、運動エネルギーEkn(t)の最大値を算出することも可能である。
そして、周期軌道全体に対応する運動エネルギーを各周波数成分の運動エネルギーEnの和として数式27により算出し、この運動エネルギーを振動発散に関する安定限界エネルギーEと呼ぶ。
(数27) E=E1+E2+E3
ここに、E:振動発散に関する安定限界エネルギー、E1:基本周波数成分の運動エネルギー、E2:2倍周波数成分の運動エネルギー、E3:3倍周波数成分の運動エネルギー。なお、単位は全てrad2/秒。
ここに、E:振動発散に関する安定限界エネルギー、E1:基本周波数成分の運動エネルギー、E2:2倍周波数成分の運動エネルギー、E3:3倍周波数成分の運動エネルギー。なお、単位は全てrad2/秒。
上記の考え方に基づいて振動発散に関する安定限界エネルギーEを算出するため、エネルギー算出部11dは、S4の処理でメモリ15に記憶された安定性指標としての周期軌道に関する動揺モードi毎の振幅Ri及び位相Θiの値を読み込み、数式25及び26により基本周波数成分の運動エネルギーE1、2倍周波数成分の運動エネルギーE2及び3倍周波数成分の運動エネルギーE3を算出し、それぞれの値をメモリ15に記憶させる。さらに、エネルギー算出部11dは、メモリ15に記憶させた基本周波数成分の運動エネルギーE1、2倍周波数成分の運動エネルギーE2及び3倍周波数成分の運動エネルギーE3を読み込み、数式27により振動発散に関する安定限界エネルギーEを算出し、その値をメモリ15に記憶させる。
次に、制御部11の感度計算部11eは、S5の処理で算出した安定限界エネルギーを用いて制御系定数の変化に対する安定限界エネルギーの感度を計算する(S6)。
S5の処理で算出される振動発散に関する安定限界エネルギーEを大きくすることによって、振動発散に関する安定領域が拡大し、大外乱に対する安定性が向上すると共に安定に送電できる電力を増加させることができる。本発明では、振動発散に関する安定限界エネルギーEを大きくするように制御系定数を調整するため、最急勾配法(山登り法とも呼ばれる)の考え方を用いて制御系定数の変化に対する安定限界エネルギーEの感度を利用する。
本発明では、安定限界エネルギーEの感度として、安定限界エネルギーEを制御系定数で偏微分した値を算出する。具体的には例えば、制御系定数を一つずつ微小に変化させたときの安定限界エネルギーE’を算出し、変化させる前の元の安定限界エネルギーEとの偏差ΔE(=E’−E)と制御系定数の変化幅ΔPとからΔE/ΔPとして数値的に偏微分の値を算出する。または、安定限界エネルギーEを制御系定数で偏微分した値を解析的に算出しても良い。
なお、制御系定数の最大変化幅は特に限定されるものではなく、作業者が適当な値を設定する。具体的には例えば、0.01〜0.02程度とすることが考えられる。また、標準形理論を用いた簡約化により得られる二次及び三次の非線形項については計算量が多大となることを勘案し、感度の計算においてはこれらの項は一定であると見なすようにしても良い。すなわち、周期軌道における各動揺モードの振幅と位相の感度は、固有値の変化のみを利用して近似的な感度を算出するようにしても良い。
上記の考え方に基づいて、感度計算部11eは、収束計算のターン1ではS2の処理で、それ以降の収束計算のターンT(T≧2)ではターン[T−1]のS7の処理でメモリ15に記憶されたターン[T−1]の制御系定数の値、並びにS5の処理でメモリ15に記憶された振動発散に関する安定限界エネルギーEの値を読み込み、制御系定数を一つずつ微小に変化させたときの安定限界エネルギーE’を数式25から27により算出すると共にΔE/ΔPを計算する。そして、感度計算部11eは、安定限界エネルギーEを制御系定数Pで偏微分した値としてΔE/ΔPの値をメモリ15に記憶させる。
次に、制御部11の定数調整部11fは、S6の処理で計算した安定限界エネルギーの感度を用いて制御系定数を調整する(S7)。
具体的には、制御系定数Pを安定限界エネルギーの感度を用いて数式28により調整する。
(数28) PT=PT−1+α(∂E/∂P)
ここに、PT:収束計算のターンTの制御系定数の値、PT−1:収束計算のターン[T−1]の制御系定数の値、α:パラメータを適切に変化させるための係数、∂E/∂P:安定限界エネルギーEを制御系定数Pで偏微分した値。
ここに、PT:収束計算のターンTの制御系定数の値、PT−1:収束計算のターン[T−1]の制御系定数の値、α:パラメータを適切に変化させるための係数、∂E/∂P:安定限界エネルギーEを制御系定数Pで偏微分した値。
なお、αの値は特に限定されるものではなく、作業者が適当な値を設定する。具体的には例えば、0.01〜0.10程度とすることが考えられる。なお、一般的には、αの値が小さい方が制御系定数の調整の精度が高まる。また、安定限界エネルギーEが低下する方向に制御系定数が調整される場合には、反対方向即ち安定限界エネルギーEが増加する方向に定数を調整する。
定数調整部11fは、収束計算のターン1ではS2の処理で、それ以降の収束計算のターンT(T≧2)ではターン[T−1]のS7の処理でメモリ15に記憶されたターン[T−1]の制御系定数PT−1、並びにS6の処理でメモリ15に記憶された安定限界エネルギーを制御系定数で偏微分した値としてのΔE/ΔPの値を読み込み、数式28により制御系定数PTを算出する。なお、係数αの値は、入力部13を介して定数調整部11fに与えるようにしても良いし、電力系統の制御系定数設定プログラム17上に予め規定しておくようにしても良い。そして、定数調整部11fは、算出した制御系定数PTを収束計算のターンTの制御系定数の値としてメモリ15に記憶させる。
次に、制御部11の固有値判断部11gは、制御系定数調整後の電力系統の動揺モードの固有値が許容範囲内にあるか否かを判断する(S8)。
固有値が許容範囲内にあるか否かの判断は、具体的には、固有値実部閾値を設定し、各動揺モードの固有値実部が固有値実部閾値よりも大きいか否かを判断することにより行う。固有値実部閾値の大きさは特に限定されるものではなく、作業者が適当な値を設定する。具体的には例えば、−0.05〜−0.1程度とすることが考えられる。
固有値判断部11gは、電力系統動特性解析用入力データ及びS7の処理により調整された制御系定数を用いて固有値を算出し、固有値実部が固有値実部閾値よりも大きいか否かを判断する。閾値の値は、入力部13を介して固有値判断部11gに与えるようにしても良いし、電力系統の制御系定数設定プログラム17上に予め規定しておくようにしても良い。
固有値実部が固有値実部閾値よりも大きい場合即ち固有値が許容範囲内にない場合には(S8;No)、制御部11はS8の処理を終了して収束計算のターンTの処理を終了し、S10の処理に移行する。そして、制御部11の定数決定部11iは、収束計算のターン[T−1]の制御系定数を採用して(S10)制御系定数の設定処理を終了する(END)。
一方、固有値実部が固有値実部閾値以下の場合即ち固有値が許容範囲内にある場合には(S8;Yes)、制御部11はS8の処理を終了してS9の処理に移行する。そして、制御部11の収束条件判断部11hは、制御系定数調整前と調整後との間の制御系定数の変化幅及び安定性指標の変化幅が収束条件を満たしているか否かを判断する(S9)。
収束条件を満たしているか否かの判断は、具体的には、制御系定数毎の変化幅閾値並びに安定性指標変化幅閾値を設定し、全ての制御系定数並びに安定性指標の変化幅が各々の閾値よりも小さいか否かを判断することにより行う。制御系定数毎の変化幅閾値並びに安定性指標変化幅閾値の大きさは特に限定されるものではなく、S7の処理のαの値を考慮して作業者が適当な値を設定する。具体的には、αの値を0.01〜0.10程度とした場合は、例えば、閾値を0.00001〜0.0001程度とすることが考えられる。
収束条件判断部11hは、収束計算のターン1ではS2の処理で、それ以降の収束計算のターンT(T≧2)ではターン[T−1]のS7の処理でメモリ15に記憶されたターン[T−1]の制御系定数の値、並びに収束計算のターンTのS7の処理でメモリ15に記憶された収束計算のターンTの制御系定数の値を読み込み、制御系定数毎の変化幅を計算する。さらに、収束条件判断部11hは、収束計算のターン[T−1]のS4の処理でメモリ15に記憶された安定性指標の値、並びに、収束計算のターンTのS4の処理でメモリ15に記憶された安定性指標の値を読み込み、安定性指標の変化幅を計算する。なお、収束計算のターン0の安定性指標の値はないため、収束計算のターン1のS9の処理においては安定性指標の変化幅の収束条件充足の判断は行わない。また、閾値の値は、入力部13を介して収束条件判断部11hに与えるようにしても良いし、電力系統の制御系定数設定プログラム17上に予め規定しておくようにしても良い。
制御系定数の変化幅及び安定性指標の変化幅が収束条件を満たしている場合には(S9;Yes)、制御部11はS9の処理を終了してS11の処理に移行する。そして、制御部11の定数決定部11iは、収束計算のターンTの制御系定数を採用して(S11)収束計算のターンTの処理を終了し、制御系定数の設定処理を終了する(END)。
一方、収束条件を満たしていない場合には(S9;No)、制御部11はS9の処理を終了して収束計算のターンTの処理を終了し、S3の処理に戻ってS3以降の処理を繰り返す。
なお、上述の形態は本発明の好適な形態の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、制御系定数としてPSSのゲイン及び位相補償時定数を設定しているが、これに限られず、SVCの作動を規定するための定数を設定するようにしても良い。
本発明の電力系統の制御系定数設定方法を用いた制御系定数の設定並びに電力系統の安定度シミュレーション解析(微分方程式を積分することによって横軸が時間である波形を求める解析;例えば、大規模電力系統の安定度総合解析システムの開発,電力中央研究所総合報告,T14,平成2年4月)による制御系定数の性能評価の実施例を図4から図7を用いて説明する。
本実施例では、解析対象の電力系統モデルとして電気学会標準系統モデルのWEST10機系統モデル(図4)を部分的に変更したモデル(以下、実施例モデル1と呼ぶ)を用いた。WEST10機系統モデルは、実系統の系統構成を模擬し、実系統と同程度の長周期動揺が発生するようになっている。なお、WEST10機系統モデルの詳細は周知(電力系統モデル標準化調査専門委員会:電力系統の標準モデル,電気学会技術報告,第754号,1999年11月)であるのでここでは詳細については省略するが、WEST10機系統モデルの概要並びにWEST10機系統モデルからの実施例モデル1の変更点は以下の通りである。
1)潮流条件
WEST10機系統モデルの昼間断面と夜間断面とのうち昼間断面を解析対象とした。WEST10機系統モデルからの実施例モデル1の変更点として、限界送電電力を求める際は発電機の出力を変更した。
WEST10機系統モデルの昼間断面と夜間断面とのうち昼間断面を解析対象とした。WEST10機系統モデルからの実施例モデル1の変更点として、限界送電電力を求める際は発電機の出力を変更した。
2)発電機モデル
発電機は、電力系統の動特性の解析で一般的に用いられる界磁巻線および制動回路を考慮したモデルである。
発電機は、電力系統の動特性の解析で一般的に用いられる界磁巻線および制動回路を考慮したモデルである。
3)励磁系モデル
自動電圧調整機(以下、AVRと表記する)は、基本的には回転形励磁機用モデルである。WEST10機系統モデルからの実施例モデル1の変更点として、本発明の電力系統の制御系定数設定方法を適用する発電機を発電機G1とし、発電機G1については超速応励磁系モデル(図5)に変更してPSSを設置した。PSSの入力はΔP形(図6)とした。
自動電圧調整機(以下、AVRと表記する)は、基本的には回転形励磁機用モデルである。WEST10機系統モデルからの実施例モデル1の変更点として、本発明の電力系統の制御系定数設定方法を適用する発電機を発電機G1とし、発電機G1については超速応励磁系モデル(図5)に変更してPSSを設置した。PSSの入力はΔP形(図6)とした。
調整の対象とした制御系定数は、PSSの2段の進み遅れ時定数T2,T3,T4及びT5並びにゲインG8とした。なお、ゲインG8に関しては、ゲインが上がり過ぎないように調整の上限を1.0とした。また、リセット回路時定数は長周期動揺に対しても効果を期待できるように5.0秒とし、最終段の一次遅れ時定数は0.02秒とした。また、出力リミッタは±0.1puとした。
4)調速機系モデル
調速機系は、火力・原子力機用のモデルと水力機用のモデルを使用した。なお、限界送電電力を求める際に発電機出力を定格出力よりも大きくする必要があったために調速機系モデルのリミッタは無視した。
調速機系は、火力・原子力機用のモデルと水力機用のモデルを使用した。なお、限界送電電力を求める際に発電機出力を定格出力よりも大きくする必要があったために調速機系モデルのリミッタは無視した。
5)負荷特性
WEST10機系統モデルからの実施例モデル1の変更点として、負荷は定インピーダンスとし、周波数特性はなしとした。
WEST10機系統モデルからの実施例モデル1の変更点として、負荷は定インピーダンスとし、周波数特性はなしとした。
上述の実施例モデル1を用いた制御系定数の設定として、まず、固有値解析手法を用い、発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮する制御系定数であって、以降の処理で収束計算によって調整を行うための初期値となる制御系定数を算定した。具体的には、数式29により算出される固有値指標Fが小さくなるように定数の調整を行った(吉村健司・内田直之:大規模電力系統のロバスト安定化に関する研究,電中研総合報告,T66,2001年4月)。固有値解析手法による制御系定数の調整の結果、2段の進み遅れ時定数T2=0.5163,T3=0.3696,T4=0.0580,T5=0.3665、並びにゲインG8=1.000となった。なお、このときの固有値指標Fの値は0.67となった。
(数29) F=Σi[exp(kf×Re[λi])]
ここに、F:固有値指標、kf:重み係数(=10)、λ:固有値、i:揺動モードの番号。また、Re[X]は複素数Xの実部をとることを表す。
ここに、F:固有値指標、kf:重み係数(=10)、λ:固有値、i:揺動モードの番号。また、Re[X]は複素数Xの実部をとることを表す。
次に、固有値解析手法を用いて算定した制御系定数(以下、固有値制御系定数と呼ぶ)を初期値とし、本発明の電力系統の制御系定数設定方法により振動発散に関する安定限界エネルギーEが大きくなるように制御系定数を調整した。本実施例では、収束計算のターン回数T=30回目で安定限界エネルギーEの値が最大となったため、収束計算のターン30の制御系定数の値を採用した。本発明の方法による制御系定数の調整の結果、2段の進み遅れ時定数T2=0.9309,T3=0.4698,T4=0.0000,T5=0.4692、並びにゲインG8=1.000となった。
なお、収束計算のターン30の制御系定数に対応する固有値指標Fの値は0.71であり、固有値制御系定数に対応する固有値指標Fの値と比べて大きく悪化しているとは言えず、本発明の方法を用いて設定した制御系定数(以下、本発明制御系定数と呼ぶ)は発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮することができる定数であることが確認された。
続いて、本発明制御系定数の大外乱に対する電力系統の同期安定度を確認するため、発電機G1至近端での三相地絡事故(ただし、事故除去後は元の系統に戻す)を想定し、故障除去時間を10msecずつ増やしてシミュレーションを行い、臨界故障除去時間を算出した。ここで、臨界故障除去時間とは、故障除去時間がその値を超えると不安定となるような値のことを言う。その結果、固有値制御系定数を用いた場合は40msecであるのに対し、本発明制御系定数を用いた場合は50msecとなった。この結果から、本発明制御系定数を用いた場合の方が、臨界故障除去時間が延びて電力系統の同期安定度が向上していることが確認された。なお、位相角基準の発電機G10からの位相角の絶対値が、シミュレーション開始後30秒までに360度を超過した場合を不安定と判定し、それ以外は安定と判定した。
さらに、故障除去時間を70msecに固定すると共に発電機G1の発電機出力を12.00puから0.05puずつ増加させて潮流条件を変更して限界送電電力を算出した。なお、限界送電電力は、位相角基準の発電機G10からの位相角の絶対値がシミュレーション開始後30秒までに360度を超過して不安定と判定されたケースの直前での発電機G1の発電機出力とした。その結果、固有値制御系定数を用いた場合は12.35puであるのに対し、本発明制御系定数を用いた場合は12.70puとなり、限界送電電力が約3%増加した。この結果から、本発明制御系定数を用いた場合の方が、振動発散に関する安定領域が拡大して限界送電電力が増加することが確認された。
また、本発明制御系定数の電力系統の同期安定度向上効果の例として、前述の限界送電電力の算出において固有値制御系定数を用いた場合に最初に不安定となる発電機G1の発電機出力12.40puの潮流条件での発電機内部相差角の推移の結果を図7に示す。図7から、固有値制御系定数を用いた場合には発電機内部相差角の動揺が発散しているのに対し(図7(A))、本発明制御系定数を用いた場合には発電機内部相差角の動揺が減衰して収束していることが確認でき(図7(B))、本発明制御系定数により大外乱に対する電力系統の同期安定度が向上していることが確認された。
本発明の電力系統の制御系定数設定方法を用いた制御系定数の設定並びにシミュレーション解析による制御系定数の性能評価の他の実施例を説明する。
本実施例では、本発明の電力系統の制御系定数設定方法を適用する発電機を発電機G10とし、その他の電力系統モデルの条件については実施例1と同じとした。
固有値解析手法による制御系定数の調整の結果、2段の進み遅れ時定数T2=0.8664,T3=0.4435,T4=0.0000,T5=0.4283、並びにゲインG8=0.3718となり、固有値制御系定数に対する固有値指標Fの値は0.60となった。また、本発明の方法による制御系定数の調整の結果、2段の進み遅れ時定数T2=0.7836,T3=0.6150,T4=0.0000,T5=0.6051、並びにゲインG8=0.4518となり、本発明制御系定数に対する固有値指標Fの値は0.65となった。この結果から、本発明制御系定数に対する固有値指標Fの値は固有値制御系定数に対応する固有値指標Fの値と比べて大きく悪化しているとは言えず、本実施例についても本発明制御系定数は発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮することができる定数であることが確認された。
続いて、本発明制御系定数の大外乱に対する電力系統の同期安定度を確認するため、発電機G10至近端での三相地絡事故(ただし、事故除去後は元の系統に戻す)を想定し、臨界故障除去時間を10msecずつ増やして算出した。その結果、固有値制御系定数を用いた場合は50msecであるのに対し、本発明制御系定数を用いた場合は60msecとなった。この結果から、本実施例についても本発明制御系定数を用いた場合の方が、臨界故障除去時間が延びて電力系統の同期安定度が向上していることが確認された。
さらに、故障除去時間を70msecに固定すると共に発電機G10の発電機出力を12.00puから0.05puずつ増加させて潮流条件を変更して限界送電電力を算出した。なお、限界送電電力は、位相角基準の発電機G10からの位相角の絶対値がシミュレーション開始後30秒までに360度を超過して不安定と判定されたケースの直前での発電機G10の発電機出力とした。その結果、固有値制御系定数を用いた場合は26.35puであるのに対し、本発明制御系定数を用いた場合は26.85puとなり、限界送電電力が約2%増加した。この結果から、本実施例についても本発明制御系定数を用いた場合の方が、振動発散に関する安定領域が拡大して限界送電電力が増加することが確認された。
本発明の電力系統の制御系定数設定方法を用いた制御系定数の設定並びにシミュレーション解析による制御系定数の性能評価の更に他の実施例を説明する。
本実施例では、PSSの入力をΔω形(図8)とすると共に、固有値解析手法による制御系定数の調整の際の収束性を考慮してゲインG8は5.0で固定し、その他の電力系統モデルの条件については実施例1と同じとした。
固有値解析手法による制御系定数の調整の結果、2段の進み遅れ時定数T2=0.5714,T3=0.2726,T4=0.5598,T5=0.1462となり、固有値制御系定数に対する固有値指標Fの値は0.72となった。また、本発明の方法による制御系定数の調整の結果、2段の進み遅れ時定数T2=0.8449,T3=0.3495,T4=0.8329,T5=0.3464となり、本発明制御系定数に対する固有値指標Fの値は0.76となった。この結果から、本発明制御系定数に対する固有値指標Fの値は固有値制御系定数に対応する固有値指標Fの値と比べて大きく悪化しているとは言えず、本実施例についても本発明制御系定数は発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮することができる定数であることが確認された。
続いて、本発明制御系定数の大外乱に対する電力系統の同期安定度を確認するため、発電機G1至近端での三相地絡事故(ただし、事故除去後は元の系統に戻す)を想定し、臨界故障除去時間を10msecずつ増やして算出した。その結果、固有値制御系定数を用いた場合は40msecであるのに対し、本発明制御系定数を用いた場合は50msecとなった。この結果から、本実施例についても本発明制御系定数を用いた場合の方が、臨界故障除去時間が延びて電力系統の同期安定度が向上していることが確認された。
さらに、故障除去時間を70msecに固定すると共に発電機G1の発電機出力を12.00puから0.05puずつ増加させて潮流条件を変更して限界送電電力を算出した。なお、限界送電電力は、位相角基準の発電機G10からの位相角の絶対値がシミュレーション開始後30秒までに360度を超過して不安定と判定されたケースの直前での発電機G1の発電機出力とした。その結果、固有値制御系定数を用いた場合は12.55puであるのに対し、本発明制御系定数を用いた場合は12.90puとなり、限界送電電力が約2%増加した。この結果から、本実施例についても本発明制御系定数を用いた場合の方が、振動発散に関する安定領域が拡大して限界送電電力が増加することが確認された。
本発明の電力系統の制御系定数設定方法を用いた制御系定数の設定並びにシミュレーション解析による制御系定数の性能評価の更に他の実施例を説明する。
本実施例では、本発明の電力系統の制御系定数設定方法を適用する発電機を発電機G10とし、さらに、PSSの入力をΔω形とすると共に、固有値解析手法による制御系定数の調整の際の収束性を考慮してゲインG8は1.0で固定し、その他の電力系統モデルの条件については実施例1と同じとした。
固有値解析手法による制御系定数の調整の結果、2段の進み遅れ時定数T2=1.116,T3=0.3187,T4=1.112,T5=0.3187となり、固有値制御系定数に対する固有値指標Fの値は0.62となった。また、本発明の方法による制御系定数の調整の結果、2段の進み遅れ時定数T2=1.085,T3=0.4187,T4=1.081,T5=0.4187となり、本発明制御系定数に対する固有値指標Fの値は0.67となった。この結果から、本発明制御系定数に対する固有値指標Fの値は固有値制御系定数に対応する固有値指標Fの値と比べて大きく悪化しているとは言えず、本実施例についても本発明制御系定数は発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮することができる定数であることが確認された。
続いて、本発明制御系定数の大外乱に対する電力系統の同期安定度を確認するため、発電機G10至近端での三相地絡事故(ただし、事故除去後は元の系統に戻す)を想定し、臨界故障除去時間を10msecずつ増やして算出した。その結果、固有値制御系定数を用いた場合も本発明制御系定数を用いた場合も50msecとなった。この結果から、本発明制御系定数を用いた場合に固有値制御系定数を用いた場合と同等の電力系統の同期安定度が確保されることが確認された。
さらに、故障除去時間を70msecに固定すると共に発電機G10の発電機出力を12.00puから0.05puずつ増加させて潮流条件を変更して限界送電電力を算出した。なお、限界送電電力は、位相角基準の発電機G10からの位相角の絶対値がシミュレーション開始後30秒までに360度を超過して不安定と判定されたケースの直前での発電機G10の発電機出力とした。その結果、固有値制御系定数を用いた場合は26.15puであるのに対し、本発明制御系定数を用いた場合は26.30puとなり、限界送電電力が約1%増加した。この結果から、本実施例についても本発明制御系定数を用いた場合の方が、振動発散に関する安定領域が拡大して限界送電電力が増加することが確認された。
本発明の電力系統の制御系定数設定方法を用いた制御系定数の設定並びにシミュレーション解析による制御系定数の性能評価の更に他の実施例を説明する。
本実施例では、解析対象の電力系統モデルとして電気学会標準系統モデルのEAST10機系統モデル(図9)を部分的に変更したモデル(以下、実施例モデル2と呼ぶ)を用いた。EAST10機系統モデルは、実系統の系統構成を模擬し、実系統と同程度の長周期動揺が発生するようになっている。なお、EAST10機系統モデルの詳細は周知(電力系統モデル標準化調査専門委員会:電力系統の標準モデル,電気学会技術報告,第754号,1999年11月)であるのでここでは詳細については省略する。また、EAST10機系統モデルからの実施例モデル2の変更点は、WEST10機系統モデルからの実施例モデル1の変更点と同じとした。
本実施例では、解析対象の電力系統モデルとして実施例モデル2を用いると共に本発明の電力系統の制御系定数設定方法を適用する発電機を発電機G10とし、その他の電力系統モデルの条件については実施例1と同じとした。
固有値解析手法による制御系定数の調整の結果、2段の進み遅れ時定数T2=0.5869,T3=0.5302,T4=0.5199,T5=0.5293、並びにゲインG8=1.000となり、固有値制御系定数に対する固有値指標Fの値は0.69となった。また、本発明の方法による制御系定数の調整の結果、2段の進み遅れ時定数T2=0.4671,T3=0.6434,T4=0.3911,T5=0.6426、並びにゲインG8=0.9576となり、本発明制御系定数に対する固有値指標Fの値は0.78となった。この結果から、本発明制御系定数に対する固有値指標Fの値は固有値制御系定数に対応する固有値指標Fの値と比べて大きく悪化しているとは言えず、本実施例についても本発明制御系定数は発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮することができる定数であることが確認された。
続いて、本発明制御系定数の大外乱に対する電力系統の同期安定度を確認するため、発電機G10至近端での三相地絡事故(ただし、事故除去後は元の系統に戻す)を想定し、臨界故障除去時間を10msecずつ増やして算出した。その結果、固有値制御系定数を用いた場合は80msecであるのに対し、本発明制御系定数を用いた場合は110msecとなった。この結果から、本実施例についても本発明制御系定数を用いた場合の方が、臨界故障除去時間が延びて電力系統の同期安定度が向上していることが確認された。
さらに、故障除去時間を70msecに固定すると共に発電機G10の発電機出力を12.00puから0.05puずつ増加させて潮流条件を変更して限界送電電力を算出した。なお、限界送電電力は、位相角基準の発電機G10からの位相角の絶対値がシミュレーション開始後30秒までに360度を超過して不安定と判定されたケースの直前での発電機G10の発電機出力とした。その結果、固有値制御系定数を用いた場合は5.25puであるのに対し、本発明制御系定数を用いた場合は5.65puとなり、限界送電電力が約8%増加した。この結果から、本実施例についても本発明制御系定数を用いた場合の方が、振動発散に関する安定領域が拡大して限界送電電力が増加することが確認された。
本発明の電力系統の制御系定数設定方法を用いた制御系定数の設定並びにシミュレーション解析による制御系定数の性能評価の更に他の実施例を説明する。
本実施例では、解析対象の電力系統モデルとして実施例モデル2を用いると共に本発明の電力系統の制御系定数設定方法を適用する発電機を発電機G10とし、さらに、PSSの入力をΔω形とすると共に、固有値解析手法による制御系定数の調整の際の収束性を考慮してゲインG8は3.0で固定し、その他の電力系統モデルの条件については実施例1と同じとした。
固有値解析手法による制御系定数の調整の結果、2段の進み遅れ時定数T2=1.473,T3=0.3897,T4=1.463,T5=0.3885となり、固有値制御系定数に対する固有値指標Fの値は0.59となった。また、本発明の方法による制御系定数の調整の結果、2段の進み遅れ時定数T2=2.013,T3=0.6497,T4=2.003,T5=0.6497となり、本発明制御系定数に対する固有値指標Fの値は0.61となった。この結果から、本発明制御系定数に対する固有値指標Fの値は固有値制御系定数に対応する固有値指標Fの値と比べて大きく悪化しているとは言えず、本実施例についても本発明制御系定数は発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮することができる定数であることが確認された。
続いて、本発明制御系定数の大外乱に対する電力系統の同期安定度を確認するため、発電機G10至近端での三相地絡事故(ただし、事故除去後は元の系統に戻す)を想定し、臨界故障除去時間を10msecずつ増やして算出した。その結果、固有値制御系定数を用いた場合も本発明制御系定数を用いた場合も100msecとなった。この結果から、本発明制御系定数を用いた場合に固有値制御系定数を用いた場合と同等の電力系統の同期安定度が確保されることが確認された。
さらに、故障除去時間を70msecに固定すると共に発電機G10の発電機出力を12.00puから0.05puずつ増加させて潮流条件を変更して限界送電電力を算出した。なお、限界送電電力は、位相角基準の発電機G10からの位相角の絶対値がシミュレーション開始後30秒までに360度を超過して不安定と判定されたケースの直前での発電機G10の発電機出力とした。その結果、固有値制御系定数を用いた場合は5.60puであるのに対し、本発明制御系定数を用いた場合は5.80puとなり、限界送電電力が約4%増加した。この結果から、本実施例についても本発明制御系定数を用いた場合の方が、振動発散に関する安定領域が拡大して限界送電電力が増加することが確認された。
上述の実施例1〜6の結果から、本発明の電力系統の制御系定数設定方法により設定した制御系定数を用いた場合には、いずれの電力系統の条件についても、固有値制御系定数を用いた場合と比べ、発電機内部相差角の小外乱に対する動揺の減衰効果を適切に発揮すると共に大外乱に対する電力系統の同期安定度を適切に確保し、さらに、振動発散に関する安定領域が拡大して限界送電電力が増加することが確認された。
10 電力系統の制御系定数設定装置
11 制御部
11a カウント部
11b 定数算定部
11c 指標算出部
11d エネルギー算出部
11e 感度計算部
11f 定数調整部
11g 固有値判断部
11h 収束条件判断部
11i 定数決定部
12 記憶部
13 入力部
14 表示部
15 メモリ
16 データサーバ
17 電力系統の制御系定数設定プログラム
11 制御部
11a カウント部
11b 定数算定部
11c 指標算出部
11d エネルギー算出部
11e 感度計算部
11f 定数調整部
11g 固有値判断部
11h 収束条件判断部
11i 定数決定部
12 記憶部
13 入力部
14 表示部
15 メモリ
16 データサーバ
17 電力系統の制御系定数設定プログラム
Claims (3)
- 固有値解析手法により制御系定数の初期値を算定するステップと、非線形解析手法により安定性指標を算出するステップと、前記安定性指標を用いて振動発散に関する安定限界エネルギーを算出するステップと、前記制御系定数と前記安定限界エネルギーとを用いて前記制御系定数の変化に対する前記安定限界エネルギーの感度を計算するステップと、前記安定限界エネルギーの感度を用いて前記制御系定数を調整するステップと、前記制御系定数調整後の電力系統の動揺モードの固有値が許容範囲内にあるか否かを判断するステップと、前記制御系定数調整前と調整後との間の前記制御系定数の変化幅及び前記安定性指標の変化幅が収束条件を満たしているか否かを判断するステップとを有することを特徴とする電力系統の制御系定数設定方法。
- 固有値解析手法により制御系定数の初期値を算定する手段と、非線形解析手法により安定性指標を算出する手段と、前記安定性指標を用いて振動発散に関する安定限界エネルギーを算出する手段と、前記制御系定数と前記安定限界エネルギーとを用いて前記制御系定数の変化に対する前記安定限界エネルギーの感度を計算する手段と、前記安定限界エネルギーの感度を用いて前記制御系定数を調整する手段と、前記制御系定数調整後の電力系統の動揺モードの固有値が許容範囲内にあるか否かを判断する手段と、前記制御系定数調整前と調整後との間の前記制御系定数の変化幅及び前記安定性指標の変化幅が収束条件を満たしているか否かを判断する手段とを有することを特徴とする電力系統の制御系定数設定装置。
- 電力系統の制御系定数の設定を行う際に、少なくとも、固有値解析手法により制御系定数の初期値を算定する手段、非線形解析手法により安定性指標を算出する手段、前記安定性指標を用いて振動発散に関する安定限界エネルギーを算出する手段、前記制御系定数と前記安定限界エネルギーとを用いて前記制御系定数の変化に対する前記安定限界エネルギーの感度を計算する手段、前記安定限界エネルギーの感度を用いて前記制御系定数を調整する手段、前記制御系定数調整後の電力系統の動揺モードの固有値が許容範囲内にあるか否かを判断する手段、前記制御系定数調整前と調整後との間の前記制御系定数の変化幅及び前記安定性指標の変化幅が収束条件を満たしているか否かを判断する手段としてコンピュータを機能させるための電力系統の制御系定数設定プログラム。
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-
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- 2006-05-30 JP JP2006150282A patent/JP2007325359A/ja active Pending
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