JP2007321167A - 焼入れ方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 複雑な作業無しに、焼入れ時のそり量を大きく改善しかつ機械的特性も良好な焼入れ材を得る。
【解決手段】 板厚25mm以上の6000系アルミニウム合金板の溶体化処理後の焼き入れ過程において、板表面の熱伝達係数を500〜1000 kcal/m2・hr・℃以下で冷却することにより板表面と板厚中心部の温度差を40℃以下とする。そのためには、冷却媒体として気体中に200ml/m3以下の水滴を含有したミスト状の冷媒を用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】 板厚25mm以上の6000系アルミニウム合金板の溶体化処理後の焼き入れ過程において、板表面の熱伝達係数を500〜1000 kcal/m2・hr・℃以下で冷却することにより板表面と板厚中心部の温度差を40℃以下とする。そのためには、冷却媒体として気体中に200ml/m3以下の水滴を含有したミスト状の冷媒を用いる。
【選択図】 なし
Description
本発明は熱処理型アルミニウム合金の焼入れ方法に関するものであり、より詳細には焼入れ処理時の板の表面温度と板厚中心部の温度差を小さくすることで焼入れ時の熱歪みによる反りを改善するものである。
溶体化処理は時効硬化反応を引き起こすために必要な固溶体を得るための熱処理である。焼入れ処理は溶体化処理によって溶質原子が固溶した状態を急冷によって強制的に凍結させ、過飽和固溶体を得るために行われる。この際、冷却速度が十分であること、焼入れ遅れのないことに注意が必要である。焼入れ遅れが生じたりや冷却速度が不十分であると固溶した溶質原子の粒界析出が起こり、強度、延性を低下させることがあるため注意が必要である。しかしながら、熱処理型アルミニウム合金では焼入れの際、溶体化温度から急冷されるため、非常に大きな熱応力が発生し、これにより大きく変形する問題がある。 特に板の幅,長さが大きい焼入れ時の熱応力によって発生して起こる板反りが問題になっており、続いて行うフラット矯正および残留応力除去のための冷間加工時に材料のハンドリングがスムースに実施できない。さらには最終製品とするための切断あるいは切削加工時に残留応力の解放による変形によって所望の寸法精度が得られないなどの問題が生じる。
残留応力を小さくする方法としては、特許文献1には冷却時に気泡を用いる熱処理方法について示されている。加熱したアルミニウム材、鋼材等の鋳物、鍛造品をトレーとともに冷却水中に浸漬して冷却初期に気泡群により覆い、内部温度差を低減することにより残留応力を低減することを特徴としている。しかし、特許文献1では気泡で被熱処理体の表面全体を覆い、表面と内部で温度差を小さくするために、同時に焼き入れられるトレーより発生する気泡を用いており、本方法では被処理体の大きさや厚みに応じた泡を得るためはトレーの熱容量を毎回変えなければならないため複雑な作業を必要とする。
特許第2895499号
複雑な作業無しに、板厚25mm以上の6000系熱処理型アルミニウム合金板において焼入れ後に反りの少ない板を得ることを目的とする。
請求項1に記載の発明は、板厚25mm以上の6000系アルミニウム合金板の溶体化処理後の焼き入れ過程において、板表面と板厚中心部の温度差を40℃以下とすることを特徴とする焼入れ方法である。
請求項2に記載の発明は、板厚25mm以上の6000系アルミニウム合金板の溶体化処理後の焼き入れ過程において、板表面の熱伝達係数を500〜1000 kcal/m2・hr・℃以下で冷却することを特徴とする請求項1に記載の焼入れ方法である。
請求項3に記載の発明は、板厚25mm以上の6000系アルミニウム合金板の溶体化処理後の焼き入れ過程において、冷却媒体として気体中に200ml/m3以下の水滴を含有したミスト状の冷媒を用いることを特徴とした請求項2に記載の焼入れ方法である。
本発明によって、複雑な作業無しに、焼入れ時のそり量を大きく改善しかつ機械的特性も良好な焼入れ材が得られ、工業的にも有効である。
焼入れ時の板反り改善方法に関して本発明者らは種々検討の結果、板反りの発生原因は冷却中の板表面と板厚中心部の温度差が最も大きな要因であることを見出した。すなわち、通常の浸漬型焼入れにおいては、焼入れ処理時に板表面は冷媒(例えば水)により急激に冷却されるが板中心部は熱伝導によって冷却(抜熱)されるため、板の面積が十分大きい場合には、熱伝導度と板厚によって支配される。このため内部の冷却速度を速くするためには板表面を急冷する必要があるが、この場合板厚中心部との温度差が大きくなり大きな熱応力が発生する。熱応力を小さくするため板表面と板厚中心部との温度差を小さくする必要があるが、板表面の冷却が緩やかであると十分な焼入れ速度が得られずに十分な機械的特性が得られなくなる。
このように、良好な機械的特性を得かつ残留歪みの少ない板を得るためには、板の冷却速度と内部に発生する温度差に影響されるが、冷却速度を速くしようとすると内部に大きな温度差が発生し、温度差を低減するために冷却速度を低下させると所望の機械的特性が得られないという相反する関係がある。
このため冷却速度と機械的特性および冷却速度と熱伝達係数について種々検討した結果、6000系合金では図1のような関係があることが確認された。これより十分な強度を確保するためには冷却速度を2℃/sec以上とする必要がある。
一方、一般的な焼入れ媒体としては水が用いられるが、この場合、板中心部においても十分な冷却速度が得られる反面、表面と板厚中心での温度差が大きくなる。例えば図2のように板厚50mmの6061を水焼入れした場合、板表面と中心部の温度差は冷却途中では最大で約150℃となり、材料内部に大きな熱応力が発生し、これによって板そりあるいは材料内部に残留応力が発生する。
板厚中心部においても十分な冷却速度を確保しつつ、かつ板表面と板厚中心部の温度差を小さくする条件について検討を行った。
まず板厚方向温度差によって生じる板厚直角方向(圧延方向)熱応力について考えると、発生する熱応力(σ)は
σ=E*ln(1+c*ΔT)*ν
E:ヤング率 c:熱膨張係数 ν:ポアソン比 ΔT:温度差 となり、
6000系のアルミニウム合金では、E:ヤング率 70000MPa c:熱膨張係数 23*10−6 ν:ポアソン比 0.33 なので、例えば板厚方向の温度差が150℃発生した場合は、
σ=70000*ln(1+23*10−6*150)*0.33=80MPa となり、例えば300℃での高温耐力23MPaを大きく上回るため塑性変形が生じ、板そりが発生する。このため23MPa以下となる温度差について調べると約43℃以下にする必要があることが分かる。このため温度を40℃以下とすることが望ましい。
σ=E*ln(1+c*ΔT)*ν
E:ヤング率 c:熱膨張係数 ν:ポアソン比 ΔT:温度差 となり、
6000系のアルミニウム合金では、E:ヤング率 70000MPa c:熱膨張係数 23*10−6 ν:ポアソン比 0.33 なので、例えば板厚方向の温度差が150℃発生した場合は、
σ=70000*ln(1+23*10−6*150)*0.33=80MPa となり、例えば300℃での高温耐力23MPaを大きく上回るため塑性変形が生じ、板そりが発生する。このため23MPa以下となる温度差について調べると約43℃以下にする必要があることが分かる。このため温度を40℃以下とすることが望ましい。
次に板表面と板厚中心部の温度差が40℃以下でかつ板厚中心部においても2℃/sec以上の冷却速度が得られる板表面の熱伝達係数について検討を行ったところ、両者を満足できる熱伝達係数の範囲は500〜1000 kcal/m2・hr・℃であった。なおここで考慮した板厚範囲は25〜100mmとした。
なおそれぞれの冷却曲線については、まずt50xw200xL200mmのブロックの表層2mmと中央25mmの位置に熱電対を取り付けファン冷却,ミスト冷却,水冷の3条件の温度測定を実施し、表面の熱伝達係数を求めた。さらに各条件での冷却曲線は差分法により密度2.7g/cm3,比熱896J/kg・K,熱伝導度180W/m・Kの条件で計算を行った。また冷却速度の算出は板中央部位置の400→200℃の冷却速度を求めた。
以上の検討結果から本発明の限定理由について述べる。
まず焼入れ工程における板の表面温度と板厚中心部の温度差を40℃以下に関しては、冷却時に生じる温度差は熱応力を発生する原因であり、上記のごとくこの熱応力によって変形が発生するため、できるだけ小さくする必要がある。しかしながら温度差を限りなく小さくすると十分な冷却速度が得られないため、現実的に変形を抑制できる40℃以下とする必要がある。
まず焼入れ工程における板の表面温度と板厚中心部の温度差を40℃以下に関しては、冷却時に生じる温度差は熱応力を発生する原因であり、上記のごとくこの熱応力によって変形が発生するため、できるだけ小さくする必要がある。しかしながら温度差を限りなく小さくすると十分な冷却速度が得られないため、現実的に変形を抑制できる40℃以下とする必要がある。
次に表面の熱伝達係数の限定理由について述べる。
通常焼入れ時に行われている水冷あるいは高圧スプレーなどによる冷却は表面の熱伝達係数が3000〜10000 kcal/m2・hr・℃とされており、これらは急激に表面を冷却することにより板中心部の冷却を高めるものである。しかしながら本法では冷却速度は向上するものの板内部での温度差が大きくなるため板に変形が生じる結果となる。このため本発明では6000系合金の焼入れ後の特性を損なわない冷却速度を得る範囲として、表面の熱伝達係数を500〜1000kcal/m2・hr・℃とした。
通常焼入れ時に行われている水冷あるいは高圧スプレーなどによる冷却は表面の熱伝達係数が3000〜10000 kcal/m2・hr・℃とされており、これらは急激に表面を冷却することにより板中心部の冷却を高めるものである。しかしながら本法では冷却速度は向上するものの板内部での温度差が大きくなるため板に変形が生じる結果となる。このため本発明では6000系合金の焼入れ後の特性を損なわない冷却速度を得る範囲として、表面の熱伝達係数を500〜1000kcal/m2・hr・℃とした。
次に、冷却媒体の規定について述べる。
上述したように水槽への浸漬あるいは高圧スプレー等による方法では表面冷却が強くなりすぎるため、本発明にて規定した熱伝達係数を得ることができない。表面の熱伝達係数を500〜1000kcal/m2・hr・℃とするためには気体中に200ml/m3以下の水滴を含有したミスト状の冷媒を用いることで所望の熱伝達係数が得られる。
上述したように水槽への浸漬あるいは高圧スプレー等による方法では表面冷却が強くなりすぎるため、本発明にて規定した熱伝達係数を得ることができない。表面の熱伝達係数を500〜1000kcal/m2・hr・℃とするためには気体中に200ml/m3以下の水滴を含有したミスト状の冷媒を用いることで所望の熱伝達係数が得られる。
JIS6061合金を常法により溶解鋳造、面削した後、均質化処理、熱間加工を施し、幅1800mm,長さ5000mmで板厚を30mmとした。この板材よりt30xw200xL200mmの板材を切り出し、両面に均等にミストが噴霧されるように20cm離した位置に、ノズルを片面に4個づつ配置し、表1に示す条件で焼入れをいった。溶体化処理条件としては535℃×60minとした。焼入れしたサンプルは4日以上室温にて放置(自然時効)した後、175℃×10hrのT6時効処理を行った後、板中央部よりLT方向にJIS4号丸棒試験片を採取し機械的特性を評価した。なお、比較として実施した水槽への浸漬焼入れは板にそりが大きかったため冷間圧延によりスキンパスを実施しフラット矯正を行った後時効処理を実施した。
温度測定は予備の試験片の板表面から2mmと中央部(15mm)に熱電対を設置し、温度測定を行った。この温度測定より表面温度を計算し、表面と中心部の温度差および表面の熱伝達係数を求めた。計算に用いた各パラメーターは上述した値を用いた。
またそり量の測定は定盤の上で頂点の1箇所を固定し、他の3つの頂点のうちもっともそりの大きい場所の値を測定した。
表1に本発明例と比較例について実験条件と結果を示す。比較例の中でNo.9は従来の水冷浸漬によるものであるが、機械的特性は良好なものの焼入れ時にそりが大きく発生している。またNo.10はファンによる冷却を行ったものであるが、冷却時の温度差は非常に小さく、そりは認められなかったが冷却速度不足により機械的特性が著しく劣る結果となった。
これに対して本発明例では機械的特性はJIS規格を満足する値が得られており、焼入れ後のそり量も浸漬焼入れと比べて著しく改善されていることが分かる。
Claims (3)
- 板厚25mm以上の6000系アルミニウム合金板の溶体化処理後の焼き入れ過程において、板表面と板厚中心部の温度差を40℃以下とすることを特徴とする焼入れ方法。
- 板厚25mm以上の6000系アルミニウム合金板の溶体化処理後の焼き入れ過程において、板表面の熱伝達係数を500〜1000 kcal/m2・hr・℃以下で冷却することを特徴とする請求項1に記載の焼入れ方法。
- 板厚25mm以上の6000系アルミニウム合金板の溶体化処理後の焼き入れ過程において、冷却媒体として気体中に200ml/m3以下の水滴を含有したミスト状の冷媒を用いることを特徴とした請求項2に記載の焼入れ方法。
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JP2006149127A JP2007321167A (ja) | 2006-05-30 | 2006-05-30 | 焼入れ方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2022080369A1 (ja) * | 2020-10-15 | 2022-04-21 | キョーラク株式会社 | パネル |
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2006
- 2006-05-30 JP JP2006149127A patent/JP2007321167A/ja active Pending
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