JP2007320902A - クロロフィル・ナノ粒子及びの製造方法 - Google Patents

クロロフィル・ナノ粒子及びの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】クロロフィル類縁体及びその自己会合体ナノ粒子の疎水性を制御し、光線力学的治療法(PDT)等に応用可能なクロロフィル・ナノ粒子及びその製造方法を提供する。
【解決手段】クロロフィル類縁体と、そのクロロフィル類縁体分子間の距離を広げるスペーサー分子とが混合して存在するクロロフィル・ナノ粒子により、上記課題を解決した。このクロロフィル・ナノ粒子において、クロロフィル類縁体を構成するクロリン環の長さと、スペーサー分子を構成するコレステロール骨格の長さがほぼ等しいことが好ましく、また、クロロフィル・ナノ粒子は、選択図1に示すように、クロロフィル類縁体とリトコール酸誘導体を混合して得ることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、蛍光量子効率のよいクロロフィル・ナノ粒子及びその製造方法に関する。
クロロフィル等の環状テトラピロール類は、670nm付近に吸収をもち、かつ単量体状態では蛍光発光も比較的強いことから、有望な光線力学的治療(photodynamic therapy、以下、PDTという。)用の増感剤として期待されている。PDTは、近年、癌の治療に臨床応用されている治療法である。この治療法は、腫瘍組織に集積させた光増感剤にレーザー光を照射し、腫瘍組織を壊死に陥らせるものである。PDT用の光増感剤としては、組織透過性のよい600nm以上の吸光係数が大きいこと、一重項酸素発生能が大きいこと(蛍光発光が大きいこと)、粒子のサイズが腫瘍組織に進入し易くかつ滞留し易い50〜100nmであること、細胞膜に吸着し易くかつ透過し易いカチオン性であること、そして合成が容易であること、の5点が重要である。
腫瘍組織の血管は、20〜数百nmという大きな孔が空いており、腫瘍組織は20〜数百nmの粒子を取り込む機会が多くなる。また、腫瘍組織はリンパ系組織が未発達のため、いったん進入した50〜100nm程度の粒子は組織内に滞留し易くなる(エンドサイトーシスで透過する場合)。このように、このサイズの粒子が腫瘍組織に進入し易く、かつ滞留し易いことをEPR効果という。
しかしながら、クロロフィル等の環状テトラピロール類は、水中ではμmオーダーの粒径を持つ高次会合体のコロイドを形成し易く、そのサイズを自由に制御することは極めて難しい。また、高次会合体内部では、励起状態が失活し易いので、高次会合体の殺細胞特性(一重項酸素発生能)は単量体に比べて著しく低いのが普通である。したがって、従来のPDT用増感剤の開発は、疎水的な環状テトラピロール類に親水性を付与し、単分子分散させることに努力が注がれてきた。
大庭亨ら、「クロロフィル類の分子間会合」、生産研究、46巻、1号、p.3〜p.9(1994).
しかしながら、光増感剤であるクロロフィル類を選択的に腫瘍組織に集積させるためには、むしろ会合体のようなナノ粒子が適していると考えられる。こうした観点から、リポソームやデンドリマー等、様々なドラッグキャリアがこれまでに検討されているが、クロロフィル類縁体会合体そのものを機能化する研究例はなかった。そして、クロロフィル類縁体の会合体ナノ粒子の蛍光発光を大幅に改善することができれば、それは優れたPDT用増感剤となると期待される。
また、会合体ナノ粒子内部での励起エネルギーの失活を防ぐためには(会合体の蛍光発光効率や一重項酸素発生効率の低下を防ぐにためは)、会合体粒子内のクロロフィル類縁体分子同士の高次会合を抑制することが必要である。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、クロロフィル類縁体及びその自己会合体ナノ粒子の疎水性を制御し、光線力学的治療法(PDT)等に応用可能なクロロフィル・ナノ粒子及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、クロロフィル類縁体に大きさのよく似た化合物(言わば「スペーサー分子」)を混合して会合体を作製すれば、2種類の化合物が混ざった会合体ができ、クロロフィル類縁体分子間の距離が大きくなって、励起エネルギーの失活が防げると予測し、その予測に基づいて鋭意研究を行った結果、本発明を完成させた。
すなわち、上記課題を解決するための本発明のクロロフィル・ナノ粒子は、クロロフィル類縁体と、当該クロロフィル類縁体分子間の距離を広げるスペーサー分子とが混合して存在することを特徴とする。
上記本発明のクロロフィル・ナノ粒子において、前記クロロフィル類縁体を構成するクロリン環の長さと、前記スペーサー分子を構成するコレステロール骨格の長さがほぼ等しいことを特徴とする。
上記本発明のクロロフィル・ナノ粒子において、前記クロロフィル類縁体が下記式で表されるクロロフィル類縁体であり、前記スペーサー分子が下記式で表されるリトコール酸誘導体であることが好ましい。
Figure 2007320902
Figure 2007320902
(上記式中、Rは、H、CH、C11、C17、C1327、C1735、C(OC1837から選ばれ、R’は、H、COOCHから選ばれ、R”は、OCH、OC2039から選ばれる。また、R”’は、C1837である。)
上記本発明のクロロフィル・ナノ粒子において、前記クロロフィル・ナノ粒子の平均粒径が、50nm以上200nm以下の範囲内であることが好ましい。
上記本発明のクロロフィル・ナノ粒子は、良好な蛍光量子効率を有し、光線力学的治療用増感剤として使用されることが好ましい。
上記課題を解決するための本発明のクロロフィル・ナノ粒子の製造方法は、クロロフィル類縁体と、当該クロロフィル類縁体分子間の距離を広げる疎水性のスペーサー分子とを水中に混合して粒子化することを特徴とする。
本発明のクロロフィル・ナノ粒子及びその製造方法によれば、以下のような効果を奏することが明らかになった。
(1)種々の疎水性のクロロフィル・ナノ粒子を合成することができた。
(2)これらの化合物を5vol%THF水溶液中で会合させたところ、(イ)粒径が50〜200nmのクロロフィル・ナノ粒子会合体を得ることができた。(ロ)上記式で表されるリトコール酸誘導体を加えて会合させることにより、粒径は少し大きくなるが、蛍光発光の強いクロロフィル・ナノ粒子が得られることが分かった。(ハ)炭素数8(R=C17)のアルキル側鎖を持つクロロフィル類縁体と、上記式で表されるリトコール酸誘導体を混合することにより、最も強い蛍光発光を示した。
(3)リトコール酸誘導体等のスペーサー分子をクロロフィル類縁体等の増感剤や他の蛍光色素と混合することにより、クロロフィル・ナノ粒子の粒径や蛍光発光特性、活性酸素発生能、触媒能等の異なる様々なナノ粒子を得ることができる。その結果、PDTや生体プローブ、光触媒、エレクトロニクス素子等に適した粒径と、従来よりも高い蛍光量子収率をもつクロロフィル・ナノ粒子を作製することができる。
(4)アルキル側鎖の鎖長の異なる他のリトコール酸誘導体や、リトコール酸誘導体以外の化合物でも、混合するクロロフィル類縁体と分子構造が似ているものであれば、上記同様に、粒径や蛍光発光特性、活性酸素発生能、触媒能等の異なる様々なクロロフィル・ナノ粒子を得ることができる。その結果、PDTや生体プローブ、光触媒、エレクトロニクス素子等に適した粒径と、従来よりも高い蛍光量子収率をもつ会合体ナノ粒子を作製することができる。
(5)クロロフィル類縁体も、スペーサー分子であるリトコール酸誘導体も生物由来の分子であり、生物に分解され易いので、本発明のクロロフィル・ナノ粒子は生分解性を持つユニークな光触媒ナノ粒子である。
以下、本発明のクロロフィル・ナノ粒子及びその製造方法について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は、その技術的特徴を有する範囲を包含し、以下に示す形態等に限定されない。
図1は、本発明のクロロフィル・ナノ粒子の製造方法の説明図である。本発明は、クロロフィル類縁体に大きさのよく似たスペーサー分子を混合して会合体を作製すれば、2種類の化合物が混ざった会合体ができ、クロロフィル類縁体分子間の距離が大きくなって励起エネルギーの失活が防げるとの発明者独自の予測に基づいてなされたものである。本発明のクロロフィル・ナノ粒子は、図1に示すように、クロロフィル類縁体と、そのクロロフィル類縁体分子間の距離を広げるスペーサー分子とが混合して存在してなるものである。
(クロロフィル類縁体)
クロロフィル類縁体は、670nm付近に吸収をもち、かつ単量体状態において蛍光発光が比較的強いものが好ましく用いられる。クロロフィル類縁体としては、公知のもの又は公知のものと同様の化学構造からなるものを用いることができる。その一例として、以下のものを例示できる。
Figure 2007320902
Figure 2007320902
Figure 2007320902
Figure 2007320902
Figure 2007320902
Figure 2007320902
Figure 2007320902
Figure 2007320902
好ましく用いられるクロロフィル類縁体を一般式で表せば下式のように表すことができる。
Figure 2007320902
なお、図1中のクロロフィル類縁体において、式中のRは水素原子、アルキル基等を挙げることができ、R’は水素原子、カルボキシル基等を挙げることができ、R”は水素原子、エーテル基を挙げることができる。好ましくは、Rは、H、CH、C11、C17、C1327、C1735、C(OC1837から選ばれ、R’は、H、COOCHから選ばれ、R”は、OCH、OC2039から選ばれる。
また、以下に例示するベンゾポルフィリン類をクロロフィル類縁体の代わりに用いてもよい。ベンゾポリフィリン類は、近赤外域に強い吸収を持ち、光線力学的治療用の増感剤としてクロロフィル類縁体と同様に有望と考えられている物質であるが、水を含む種々の溶媒に溶け難い性質がある。
Figure 2007320902
(スペーサー分子)
スペーサー分子は、上記クロロフィル類縁体に大きさのよく似た化合物が好ましく用いられる。このスペーサー分子がクロロフィル類縁体分子間の距離を広げるよう作用し、その結果、得られたクロロフィル・ナノ粒子は、増感剤であるクロロフィル類縁体の励起エネルギーの失活を防ぐことができるという効果を奏する。スペーサー分子としては、例えば、下記式で表されるリトコール酸誘導体が好ましく用いられる。
Figure 2007320902
上記リトコール酸誘導体のうち好ましいリトルコール酸誘導体としては、R”’が炭素数( )〜( )のアルキル基、より好ましくはR”’がC1837のリトルコール酸オクタデシル(下記式参照)を挙げることができる。こうしたトルコール酸誘導体は、コレステロール骨格の長さが、クロロフィル類縁体を構成するクロリン環の長さとほぼ等しいので、クロロフィル類縁体分子間に入り込んでその距離を広げるように作用する。
Figure 2007320902
(クロロフィル・ナノ粒子及びその製造方法)
本発明のクロロフィル・ナノ粒子は、クロロフィル類縁体と、クロロフィル類縁体分子間の距離を広げる疎水性のスペーサー分子とを水中に混合し、粒子化して製造される。得られたクロロフィル・ナノ粒子は、疎水性となっており、粒径が50nm以上200nm以下の範囲でバラツキの小さい粒子会合体を得ることができる。また、会合体粒子としても、従来のように、蛍光発光の低下が起き難く、増感剤として好ましく応用することができ、特に、炭素数8(R=C17)のアルキル側鎖を持つクロロフィル類縁体と、上記式で表されるリトコール酸オクタデシルを混合することにより、最も強い蛍光発光を示した。
さらに、リトコール酸誘導体等のスペーサー分子をクロロフィル類縁体等の増感剤や他の蛍光色素と混合することにより、クロロフィル・ナノ粒子の粒径や蛍光発光特性、活性酸素発生能、触媒能等の異なる様々なナノ粒子を得ることができ、その結果、PDTや生体プローブ、光触媒、エレクトロニクス素子等に適した粒径と、従来よりも高い蛍光量子収率をもつクロロフィル・ナノ粒子を作製することができる。
さらに、アルキル側鎖の鎖長の異なる他のリトコール酸誘導体や、リトコール酸誘導体以外の化合物でも、混合するクロロフィル類縁体と分子構造が似ているものであれば、上記同様に、粒径や蛍光発光特性、活性酸素発生能、触媒能等の異なる様々なクロロフィル・ナノ粒子を得ることができ、その結果、PDTや生体プローブ、光触媒、エレクトロニクス素子等に適した粒径と、従来よりも高い蛍光量子収率をもつ会合体ナノ粒子を作製することができる。
さらに、クロロフィル類縁体も、スペーサー分子であるリトコール酸誘導体も生物由来の分子であり、生物に分解され易いので、本発明のクロロフィル・ナノ粒子は生分解性を持つユニークな光触媒ナノ粒子である。
図2は、光線力学的治療法(PDT)の説明図であり、図3は、本発明のクロロフィル・ナノ粒子が腫瘍組織に進入し易くかつ滞留し易いこと(EPR効果)を示す模式図である。本発明のクロロフィル・ナノ粒子は、上記範囲内の粒子径であってバラツキが小さいので、腫瘍組織に進入し易くかつ滞留し易い。そして、600nm以上の吸光係数が大きく、蛍光発光の低下が起き難く一重項酸素発生能が高いので、腫瘍組織に集積させた光増感剤にレーザー光を照射すれば、その高い増感効果により腫瘍組織を壊死に陥らせることが期待できる。
次に、スペーサー分子として上記のようなリトルコール酸誘導体を混合して本発明特有の効果が発現する理論的な根拠について検討する。
本発明者は、会合体の励起エネルギーの失活を防ぐためには、会合体粒子内のクロロフィル類縁体の高次会合を抑制することが必要であり、そのため、クロロフィル類縁体に大きさのよく似た化合物を混合して会合体を作製すれば2種類の化合物が混ざった会合体ができるのではないかと考え、そして、そのときには、クロロフィル類縁体分子間の距離が大きくなり、エネルギーの失活が防げるとの予測のもとに実験を重ねて本発明に至った。そして、本発明者は、疎水性を高めると粒径が小さくなると考え、疎水的な化合物であるリトルコール酸オクタデシル(化合物20)を加えて実験を行った。
「似た物は似た物を溶かす」という経験則は、溶液だけでなく合金や高分子混合物等、あらゆる混合物に適用され得る。本発明者は光合成メカニズムの解明と応用を目指して、クロロフィル類縁体のナノ粒子化挙動を研究してきたが、その中で、構造のよく似た2種類のクロロフィル類縁体を混合してナノ粒子化すると(自己会合させると)、構造の類似具合と混合比によって光学的性質の異なるナノ粒子が得られることを見いだした。このとき、モル比=0.3〜0.7の時に2種類のクロロフィル類縁体に特有の自己会合体の吸収スペクトルが両方とも観察され、その吸収強度は2種類のクロロフィル類縁体のモル比に依存することを見いだした。さらに、種々の分光学的測定や粒径の評価から、2種類のクロロフィル類縁体はそれぞれが別々のナノ粒子を作っているのでなく、1つ1つのナノ粒子の中に2種類のクロロフィル類縁体自己会合体が混在していることを見いだした。
一般に、成分A及びBのモル分率をそれぞれXa,Xbとおくと、系のギブスエネルギーDGは、下式のように表される。
DG=(XalnXa+XblnXb)+KXaXb
(ただし、K=k[Ea1/2−Eb1/2
ここで、KはA,B間の相互作用の強さ、kは定数、Ea及びEbはA,A間及びB,B間の相互作用の強さを表す。1つのナノ粒子の中に2種類のクロロフィル類縁体自己会合体が生成することを相分離と考えると、ナノ粒子の中に混在する2相が平衡に達しているとすれば、
d(DG)/dXa=0
でなければならないから、上式より、
K=−(1−2Xa)−1ln[Xa/(1−Xa)]
となり、モル比Xa=0.3〜0.7の時に相分離するなら、K〜XaのグラフからK=2.1と求まる。K=2が相分離の起こる限界であるので、このクロロフィル類縁体混合系は相分離の比較的起こり難い系であり、より分子構造の似ているクロロフィル類縁体同士を混合した場合には、単一相のアモルファスな会合体ナノ粒子が得られるものと考察された。
一般に会合体内部ではクロロフィル類縁体間の分子間距離が小さいため、励起エネルギーの移動が起こり易いが、クロロフィル類縁体の結晶性は非常に悪く(結晶性を向上させることは非常に難しく)、会合体内部には「格子欠陥」が無数に存在している。励起エネルギーはこの「格子欠陥」に落ちて失活するので、会合体はクロロフィル類縁体単独分子より蛍光が弱いのが普通である。がん治療や蛍光プローブとして応用するためには、会合体ナノ粒子の蛍光量子収率の低下を抑えなければならない。そのために本発明者は、共存物質(「スペーサー分子」)を混合することによって会合体内部のクロロフィル類縁体濃度を下げる(クロロフィル類縁体間の距離を広げる)ことを見いだし、本願において提案した。
1つのナノ粒子の中に共存物質とクロロフィル類縁体とが混在しており、なおかつそのナノ粒子内部が単一相(アモルファス)であるためには、共存物質はクロロフィル類縁体に「適度に似た」化合物でなければならないし、混合比も適当な値でなければならない。共存物質はまた、クロロフィル類縁体とのエネルギーのやり取りのない化合物(紫外可視光〜近赤外光に透明な化合物)でもなければならない。リトコール酸(19)のコレステロール骨格の長さはクロロフィル類縁体のクロリン環の長さとほぼ等しいので、これにオクタデシル基(クロロフィル類縁体側鎖と同様、長鎖アルキル基)を縮合すると、可視光に透明で、なおかつクロロフィル類縁体に「似た」分子構造になる。リトコール酸誘導体はまた生物に分解され得る化合物であり、本研究の目的に合ったナノ粒子を形成することができた。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
<chlorophyll a,b(1,2)の抽出とpheophytin a,b (3,4)合成>
ホウレンソウの葉(湿重量:86.47g)とメタノール(450ml)をミキサーに入れて葉を破砕した。その後、これを三角フラスコに移し、石油エーテル(石油エーテル/メタノール=1/1)を加えて攪拌することで色素を抽出した。減圧濾過し、抽出液から葉を取り除いた(減圧濾過の際、濾過瓶に希塩酸(3wt%)を入れておいた)。この操作を葉が白くなるまで繰り返した。抽出液に希塩酸(3wt%)(150ml)を加え、脱金属した。次に、有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液(5wt%)(50ml)で中和した。塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥した。その後、溶媒をエバポレーターで留去し、化合物3,4の混合物を得た。
Figure 2007320902
<methylpheophorbide a,b(5,6)の合成>
化合物3,4の混合物をメタノール(150ml)に溶解した。氷浴中で濃硫酸(20ml)を滴下し、室温で15時間攪拌した。反応溶液を氷水で20倍希釈し、クロロホルム(210ml)で色素を抽出した。有機相を炭酸水素ナトリウム(5wt%)(20ml)で中和した。塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムにより乾燥した。溶媒をエバポレーターで留去し、得られた粗生成物をクロロホルムとヘキサンにより再沈殿をして、化合物5,6の粗結晶(32.5μmol)を得た。ここで得られた化合物5,6は混合物であり、精製もしていないため1H-NMRなどによる構造の決定は行っていない。
Figure 2007320902
<7-hydroxymethylpheophorbide b(7)の合成とmethylpheophorbide a(5)の分離>
化合物5,6の混合物(32.5μmol)をクロロホルム(20ml)に溶解し、氷浴中で冷却した。tBuNH2・BH3(2.8mg(32μmol))を加え、N2雰囲気下で17時間攪拌し、この反応溶液に希塩酸(3wt%)(5ml)を加えた。炭酸水素ナトリウム水溶液(5wt%)(4ml)で中和し、塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒をエバポレーターで留去し、粗結晶を得た。これをカラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:四塩化炭素/エーテル=8/2〜7/3)にかけ、3成分を分離した(f1:5,Rf=0.35、f2:Rf=0.28、f3:7,Rf=0.13(四塩化炭素/エーテル=100/10))。
Figure 2007320902
<7-hydroxymethylpyropheophorbide b(8)の合成>
化合物7(5.88μmol)を2,4,6-トリメチルピリジン(20ml)に溶解し、N2雰囲気下で3時間還流した。その後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:四塩化炭素/エーテル=7/3〜5/5)で精製し、化合物8(1.22μmol、収量20 %)を得た。
Figure 2007320902
<7-hydroxymethylpheophorbide b(7)と直鎖カルボン酸によるエステル化>
化合物7を乾燥クロロホルムに溶解した。その後、撹拌しながら、トリエチルアミン(TEA)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)、直鎖カルボン酸を化合物7に対して、それぞれ6当量ずつ加え、撹拌した。氷浴中、N雰囲気下で1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)を化合物7に対して、6当量加えて所定時間攪拌し、この反応溶液に希塩酸(3wt%)を加えた。炭酸水素ナトリウム水溶液(5wt%)で中和し、塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒をエバポレーターで留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:四塩化炭素/エーテル=7/3〜6/4(11)、ジクロロエタン/エーテル=100/1〜100/12(9,10,12,13,14)で精製し、化合物9,10,11,12,13,14を得た。
Figure 2007320902
表1に、化合物9〜14の合成の条件を示した。
Figure 2007320902
<化合物(16)の合成>
ナスフラスコに化合物15を入れ、DMSOに溶解した。20%水酸化ナトリウム水溶液を一滴ずつ加え、N2雰囲気下、120℃で所定時間撹拌し、この反応溶液に希塩酸(3wt%)を加えた。炭酸水素ナトリウム水溶液(5wt%)で中和し、塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、減圧濾過し、粗結晶を得た。クロロホルムで洗浄後、メタノールで再結晶をして化合物16を得た。
Figure 2007320902
<7-hydroxypheophytin b(17)の合成とpheophytin a(3)の分離>
化合物3,4の混合物(46.2μmol)をクロロホルム(20ml)に溶解し、氷浴中で冷却した。tBuNH2・BH3(4.9mg(56.4μmol))を加え、N2雰囲気下で42時間攪拌し、この反応溶液に希塩酸(3wt%)(5ml)を加えた。炭酸水素ナトリウム水溶液(5wt%)(7ml)で中和し、塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒をエバポレーターで留去し、粗結晶を得た。これをカラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:ジクロロエタン/エーテル=100/5)にかけ、3成分を分離した(f1:Rf=0.77、f2:3,Rf=0.72、f3:17,Rf=0.57(ジクロロエタン/エーテル=8/2))。
Figure 2007320902
<pyropheophytin a(18)の合成>
化合物3(10.6μmol)を2,4,6-トリメチルピリジン(20ml)に溶解し、N2雰囲気下で3時間還流した。その後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:ジクロロエタン/エーテル=100/5)で精製し、化合物18(7.72μmol、収量72.8 %)を得た。
Figure 2007320902
<リトコール酸オクタデシル(20)の合成>
リトコール酸(19)(0.17g(0.45mmol))を乾燥DMSO(13ml)に溶解し、炭酸カリウム(0.32g(2.3mmol))を加えて攪拌した。その後、1-臭化オクタデシル(0.16g(0.49mmol))を加えてN2雰囲気下、50℃で42時間攪拌した。反応溶液を水に注ぎ込み、クロロホルムで抽出をした。塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒をエバポレーターで留去した。得られた粗生成物をカラムクロマトグラフィー(充填剤:シリカゲル、展開溶媒:クロロホルム/メタノール=100/5)で精製し、リトコール酸オクタデシル(20)(0.20g、収量70 %)を得た。
Figure 2007320902
<得られた化合物の同定>
化合物9のH−NMRスペクトル;H−NMR(CDCl,300MHz)δ=9.61,9.51,8.58(3H,3s,CH−5,10,20),7.93(1H,dd,J=12,18Hz,CH−3),6.26(1H,s,CH−13),6.29(1H,dd,J=1,18Hz,CH−3−trans),6.19(1H,dd,J=1,11Hz,CH−3−cis),6.20(2H,s,CH−7),4.45(1H,dq,J=2,7Hz,CH−18),4.20(1H,dt,J=2,8Hz,CH−17),3.89,3.69,3.57,3.40(12H,4s,CH−2,12,13,17),3.77(2H,q,J=8Hz,CH−8),2.67−2.58,2.54−2.47(4H,2m,CH−17,17),2.20(3H,s,ethanoicacid−CH),1.81(3H,d,J=8Hz,CH−18),1.73(3H,t,J=7Hz,CH−8),0.45,−1.67(2H,2s,NH)。化合物9のMSスペクトル(M+H):646.318(分子量M=664.758)。
化合物10のH−NMRスペクトル;H−NMR(CDCl,300MHz):δ=9.62,9.51,8.58(3H,3s,CH−5,10,20),7.93(1H,dd,J=12,18Hz,CH−3),6.25(1H,s,CH−13),6.28(1H,dd,J=1,17Hz,CH−3−trans),6.18(1H,dd,J=2,10Hz,CH−3−cis),6.21(2H,s,CH−7),4.45(1H,dq,J=3,7Hz,CH−18),4.19(1H,dt,J=2,9Hz,CH−17),3.89,3.70,3.57,3.40(12H,4s,CH−2,12,13,17),3.78(2H,q,J=7Hz,CH−8),2.70−2.52,2.32−2.13(4H,2m,CH−17,17),2.41(2H,t,J=7Hz,hexanoicacid−CO−CH−),1.81(3H,d,J=7Hz,CH−18),1.73(3H,t,J=8Hz,CH−8),1.30−1.25(6H,m,hexanoicacid−(CH−),0.75(3H,t,J=6Hz,hexanoicacid−CH),0.48,−1.65(2H,2s,NH)。化合物10のMSスペクトル(M+H):723.368(分子量M=720.865)。
化合物11のH−NMRスペクトル;H−NMR(CDCl,300MHz)δ=9.61,9.51,8.58(3H,3s,CH−5,10,20),7.94(1H,dd,J=11,17Hz,CH−3),6.26(1H,s,CH−13),6.28(1H,dd,J=2,17Hz,CH−3−trans),6.18(1H,dd,J=1,11Hz,CH−3−cis),6.21(2H,s,CH−7),4.45(1H,dq,J=1,8Hz,CH−18),4.19(1H,dt,J=2,9Hz,CH−17),3.89,3.70,3.57,3.40(12H,4s,CH−2,12,13,17),3.78(2H,q,J=7Hz,CH−8),2.67−2.50,2.32−2.18(4H,2m,CH−17,17),2.41(2H,t,J=7Hz,nonanoicacid−CO−CH−),1.80(3H,d,J=7Hz,CH−18),1.73(3H,t,J=7Hz,CH−8),1.21−1.07(12H,m,nonanoicacid−(CH−),0.83(2H,q,J=6Hz,nonanoicacid−CH−CH),0.70(3H,t,J=6Hz,nonanoicacid−CH),0.48,−1.65(2H,2s,NH)。化合物11のMSスペクトル(M+H):765.328(分子量M=762.946)。
化合物12のH−NMRスペクトル;H−NMR(CDCl,300MHz)δ=9.61,9.50,8.58(3H,3s,CH−5,10,20),7.93(1H,dd,J=12,18Hz,CH−3),6.25(1H,s,CH−13),6.28(1H,dd,J=2,18Hz,CH−3−trans),6.18(1H,dd,J=1,10Hz,CH−3−cis),6.20(2H,s,CH−7),4.45(1H,dq,J=1,7Hz,CH−18),4.20(1H,dt,J=2,6Hz,CH−17),3.89,3.69,3.57,3.40(12H,4s,CH−2,12,13,17),3.77(2H,q,J=8Hz,CH−8),2.67−2.52,2.34−2.18(4H,2m,CH−17,17),2.41(2H,t,J=7Hz,tetradecanoicacid−CO−CH−),1.80(3H,d,J=7Hz,CH−18),1.73(3H,t,J=7Hz,CH−8),1.25−1.09(22H,m,tetradecanoicacid−(CH11−),0.82(3H,t,J=7Hz,tetradecanoicacid−CH),0.47,−1.65(2H,2s,NH)。化合物12のMSスペクトル(M+H):835.207(分子量M=833.080)。
化合物13のH−NMRスペクトル;H−NMR(CDCl,300MHz)δ=9.61,9.51,8.58(3H,3s,CH−5,10,20),7.93(1H,dd,J=11,18Hz,CH−3),6.25(1H,s,CH−13),6.28(1H,dd,J=1,18Hz,CH−3−trans),6.18(1H,dd,J=1,11Hz,CH−3−cis),6.21(2H,s,CH−7),4.45(1H,dq,J=1,7Hz,CH−18),4.19(1H,dt,J=1,8Hz,CH−17),3.89,3.70,3.57,3.40(12H,4s,CH−2,12,13,17),3.78(2H,q,J=7Hz,CH−8),2.69−2.50,2.35−2.19(4H,2m,CH−17,17),2.41(2H,t,J=7Hz,octadecanoicacid−CO−CH−),1.81(3H,d,J=7Hz,CH−18),1.73(3H,t,J=7Hz,CH−8),1.30−1.10(30H,m,octadecanoicacid−(CH15−),0.84(3H,t,J=6Hz,octadecanoicacid−CH),0.47,−1.65(2H,2s,NH)。化合物13のMSスペクトル(M+H):891.417(分子量M=889.188)。
化合物14のH−NMRスペクトル;H−NMR(CDCl,500MHz)δ=9.66,9.64,8.59(3H,3s,CH−5,10,20),7.91(1H,dd,J=11,18Hz,CH−3),6.44(2H,s,CH−7),6.26(1H,s,CH−13),6.31(1H,dd,J=2,17Hz,CH−3−trans),6.10(1H,dd,J=2,11Hz,CH−3−cis),4.45(1H,dq,J=2,7Hz,CH−18),4.40(6H,t,J=5Hz,化合物16−(O−CH−),4.18(1H,dt,J=1,6Hz,CH−17),3.89,3.71,3.57,3.40(12H,4s,CH−2,12,13,17),3.92(2H,q,J=6Hz,CH−8),2.70−2.47,2.35−2.25(4H,2m,CH−17,17),1.80(3H,d,J=7Hz,CH−18),1.64(3H,t,J=7Hz,CH−8),1.56−1.17(96H,m,化合物16−((CH16−),0.85(9H,t,J=2Hz,化合物16−(CH−),0.49,−1.63(2H,2s,NH)。化合物14のMSスペクトル(M+H):1534.95(分子量M=1532.28)。
化合物18のH−NMRスペクトル;H−NMR(CDCl,300MHz)δ=9.50,9.38,8.55(3H,3s,CH−5,10,20),7.96(1H,dd,J=11,18Hz,CH−3),6.25(1H,dd,J=1,19Hz,CH−3−trans),6.15(1H,dd,J=1,11Hz,CH−3−cis),5.24,5.07(2H,2d,J=20Hz,CH−13),5.19(1H,t,J=6Hz,CH−P),4.59−4.45(3H,m,CH−18+CH−P),4.28(1H,dt,J=3,8Hz,CH−17),3.67,3.41,3.23,(9H,3s,CH−2,7,12),3.65(2H,q,J=5Hz,CH−8),2.69−2.53,2.35−2.24(4H,2m,CH−17,17),1.92(2H,t,J=7Hz,CH−P),1.79(3H,d,J=7Hz,CH−18),1.66(3H,t,J=8Hz,CH−8),1.58−0.76(34H,m,P−P20),0.48,−1.69(2H,2s,NH)。
化合物20のH−NMRスペクトル;H−NMR(CDCl,500MHz)δ=4.02(2H,t,J=7Hz,CH−D),3.62(1H,m,CH−B),2.39−2.15(2H,m,CH−C),1.40−1.25(32H,m,C1632−E),0.85(9H,m,CH−L,M,N),0.64(3H,s,CH−R)。
上記の同定は、核磁気共鳴装置(VARIAN、VXR−300)と質量分析装置(TOF/MS、Voyager Jr Applied Biosystems社)を用いて測定した。
<会合体ナノ粒子の作製>
化合物20を混合しない会合体の作製:化合物3、9〜14、18(25nmol)をサンプル瓶に分けた。THF(又は2−プロパノール)を0.25ml加え、1分間撹拌した。その後、水4.75ml加え、1分間撹拌した。試料調製後、紫外可視吸収スペクトル、蛍光スペクトル、動的光散乱による粒径の測定を行った。
化合物20を混合した会合体の作製:化合物3、11、18(25nmol)をサンプル瓶に分けた。化合物20をそれぞれ、250nmol、25nmolずつ加えた。THF(又は2−プロパノール)を0.25ml加え、1分間攪拌した。その後、水を4.75ml加え、1分間攪拌した。試料調製後、紫外可視吸収スペクトル、蛍光スペクトル、動的光散乱による粒径の測定を行った。
<会合体の紫外可視吸収スペクトル>
図4は、化合物20を混合しない、化合物9(5μM)(5vol% THF水溶液,実線:試料調製後,点線:モノマー,室温)のみの場合の紫外可視吸収スペクトルであり、図5は、化合物9(5μM)と化合物20(250nmol)を混合した場合(5vol% THF水溶液,実線:試料調製後,点線:モノマー,室温)の紫外可視吸収スペクトルである。化合物20を加えたもの(図5参照)は、加えないもの(図4参照)よりも吸収帯のシフトがずっと少なく、モノマーのスペクトルと形が似ていた。このことから、モノマーと低次会合体が混在していることがわかる。なお、紫外可視吸収スペクトルは、可視・紫外分光光度計(日本分光、V−550)を用いて測定した。
<蛍光スペクトル>
図6は、化合物20を混合しない、化合物9〜14(5μM)(5vol% THF水溶液、励起波長422nm、室温)の蛍光スペクトルであり、図7は、化合物20を混合しない、化合物3,18(5μM)(5vol% THF水溶液、励起波長422nm、室温)の蛍光スペクトルであり、図8は、化合物20を250nmol混合した化合物3,9,18(5μM)(5vol% THF水溶液、励起波長422nm、室温)の蛍光スペクトルである。
図6〜図8の結果からわかるように、化合物20を混合しない場合の化合物9〜14と3、18は、ほとんどの化合物がほぼ同じ程度の蛍光強度を示したが、中でも側鎖のアルキル鎖の炭素数が8の化合物11が比較的強かった。これは、7位に縮合している置換基によって会合体粒子の構造が異なっているためと考えられる。
一方、図8に示すように、化合物20を混合すると蛍光発光が大きく増加し、化合物3の場合9.8倍に増加した。このように化合物20を混合することにより蛍光発光が大幅に増加したことから、クロロフィル類縁体と化合物20が混ざった会合体が形成されていると考えられる。化合物20は、クロロフィル類縁体よりも多く混合させることが好ましく、図8の例では、クロロフィル類縁体の10倍量配合させている。なお、蛍光スペクトルは、蛍光光度計(日本分光、FP−777)を用いて測定した。
<粒径>
図9は、化合物20を混合しない、化合物9〜14の粒径について、各化合物の炭素数を横軸として表した図であり、図10は、化合物20を混合しない、化合物3,18の粒径を表した図であり、図11は、化合物20を混合して得られたものの粒径を表した図である。なお、粒径は、粒度分析計(日機装、Zata PALS)により測定した結果で表した。
図9及び図10に示すように、化合物20を混合しない会合体の平均粒径は50〜300nmの範囲でばらついていたが、図11に示すように、化合物20をクロロフィル類縁体(化合物3,9、18に対して10倍量配合させることにより、粒径が少し大きくなり、化合物20の粒径とほぼ同じ大きさで小さなバラツキ(150〜200nm)の粒子になった。このことからも、化合物20の粒子にクロロフィル類縁体が入り込んだ会合体が形成されていると考えられる。なお、図11中には、化合物20と化合物18とが1:1の場合を示しているが、両者の配合比は、化合物20をクロロフィル類縁体に対して多量に配合させることが好ましい。
<他の実施例>
本発明においては、ベンゾポルフィリン類をクロロフィル類縁体の代わりに用いてもよい。ベンゾポリフィリン類は、近赤外域に強い吸収を持ち、光線力学的治療用の増感剤としてクロロフィル類縁体と同様に有望と考えられている物質であるが、水を含む種々の溶媒に溶け難い性質がある。ここでは、ベンゾポリフィリン誘導体を合成し、上記のクロロフィル類縁体の場合と同様に、化合物20と混合して会合体ナノ粒子を作製した。その結果、会合体ナノ粒子の平均粒径は約160nmで、吸収帯は660nm付近に観測され、蛍光ピークは660〜720nm付近に観測された。
ベンゾポリフィリン類は以下のように合成したものを用いた。ジクロロエチレン(1)とグリシン(6)を出発物質として、多段階の反応によってビシクロピロール(10)を合成する。次に、この化合物10を脱炭酸した後、種々のアルデヒドとともに四量環化させてビシクロポルフィリン(12)とする。化合物12を熱分解してベンゾポルフィリン(13)とした後、メソ位のメチルエステルを加水分解し、種々のアルコール(ここではデンドリティックなHOCH(C)(C1837)を縮合させて、化合物14を得る。
Figure 2007320902
Figure 2007320902
Figure 2007320902
本発明のクロロフィル・ナノ粒子の製造方法の説明図である。 光線力学的治療法(PDT)の説明図である。 本発明のクロロフィル・ナノ粒子が腫瘍組織に進入し易くかつ滞留し易いこと(EPR効果)を示す模式図である。 化合物9のみの場合の紫外可視吸収スペクトルである。 化合物9と化合物20を混合した本発明のクロロフィル・ナノ粒子の紫外可視吸収スペクトルである。 化合物20を混合しない化合物9〜14の蛍光スペクトルである。 化合物20を混合しない化合物3,18の蛍光スペクトルである。 化合物20を250nmol混合した化合物3,9,18の蛍光スペクトルである。 化合物20を混合しない化合物9〜14の粒径について、各化合物の炭素数を横軸として表した図である。 化合物20を混合しない化合物3,18の粒径を表した図である。 化合物20を混合して得られたものの粒径を表した図である。

Claims (6)

  1. クロロフィル類縁体と、当該クロロフィル類縁体分子間の距離を広げるスペーサー分子とが混合して存在することを特徴とするクロロフィル・ナノ粒子。
  2. 前記クロロフィル類縁体を構成するクロリン環の長さと、前記スペーサー分子を構成するコレステロール骨格の長さがほぼ等しいことを特徴とする請求項1に記載のクロロフィル・ナノ粒子。
  3. 前記クロロフィル類縁体が下記式で表されるクロロフィル類縁体であり、前記スペーサー分子が下記式で表されるリトコール酸誘導体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のクロロフィル・ナノ粒子。
    Figure 2007320902
    Figure 2007320902
    (式中、Rは、H、CH、C11、C17、C1327、C1735、C(OC1837から選ばれ、R’は、H、COOCHから選ばれ、R”は、OCH、OC2039から選ばれる。また、R”’は、C1837である。)
  4. 前記クロロフィル・ナノ粒子の平均粒径が、50nm以上200nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のクロロフィル・ナノ粒子。
  5. 光線力学的治療用増感剤として使用されることを特徴とする請求項1〜4に記載のクロロフィル・ナノ粒子。
  6. クロロフィル類縁体と、当該クロロフィル類縁体分子間の距離を広げる疎水性のスペーサー分子とを水中に混合して粒子化することを特徴とするクロロフィル・ナノ粒子の製造方法。
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