JP2007320106A - インクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの吐出量調整方法 - Google Patents

インクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの吐出量調整方法 Download PDF

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Abstract

【課題】電気的に吐出調整をすることなくインクジェットヘッドの各ノズルが吐出する液滴の量の均一性を確保可能なインクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの吐出量調整方法を提供することを目的とする。
【解決手段】圧力を付与して圧力室42と連通するノズル17からインク滴20を吐出するヘッドユニット40を有するインクジェットヘッド4であって、試作などによる同構造の既製ヘッドユニットの既製ノズルから吐出されるインク滴20aの吐出量の計測結果に基づき、以降加工するヘッドユニット40において、供給流路43の断面積を変更することにより、ノズル17から吐出するインク滴20bの吐出量を所定量とすることを特徴とする。
【選択図】図9

Description

本発明は、ノズルから液滴を吐出するインクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの吐出量調整方法に関する。
従来、インクジェットヘッドは、圧力室のインクに圧電振動子などにより圧力を加えて、インクを液滴状態にしてノズルから吐出している。インクの吐出量は、ノズルの寸法、ノズルとインクとの抵抗および圧力室が有するインクの量などによって影響を受けて増減する。近年、インクジェットヘッドでの描画をより速くするために、インクジェットヘッドに設けるノズル数を増加させ、描画をより繊細にするために、各ノズルから吐出する液滴の微小化が図られている。この場合、当該液滴の量的な不均一は、吐出する液滴の微小化が進むほど、より顕著になる。
この課題を解決するため、特許文献1では、圧電振動子へ複数のコンデンサ素子を選択的に接続して、圧電振動子を制御する補正回路を設け、ノズルから吐出する液滴が所定量となるように調整している。また、特許文献2では、圧電素子を駆動するための吐出波形の電圧を調整することにより、ノズルから吐出する液滴が所定量となるように圧電振動子を制御している。そして、特許文献3には、ノズルから液滴を吐出させるための吐出波形の一周期が複数の同一パルスからなる構成とし、ノズルから吐出する液滴が所定量となるように、ノズルの一周期が有する同一パルスの数を個別設定している。これらによれば、インクジェットヘッドの各ノズルが吐出する液滴の量を、均一に確保することが可能である。
特開2000−351209号公報 特開2002−347224号公報 特開2003−127357号公報
しかし、従来の技術では、電気的に圧電振動子を制御して、ノズル個々の液滴の吐出量を調整しているため、ノズル単位でドライバ回路を設定して調整する必要があった。そのため、インクジェットヘッドのノズル数が増加すると、それに伴いドライバ回路を形成する回路基板が大型化し、インクジェットヘッドが大きくなる、という課題があった。
本発明は、上記課題を解決するため、電気的な吐出調整を行わずにインクジェットヘッドの各ノズルから吐出する液滴の吐出量を均一にすることが可能なインクジェットヘッドおよびインクジェットヘッドの吐出量調整方法を提供することを目的とする。
本発明のインクジェットヘッドは、供給流路から圧力室に流入して貯留されている機能液へ圧力を付与し、圧力室と連通するノズルから機能液を液滴状態で吐出するヘッドユニットを有するインクジェットヘッドであって、ヘッドユニットと同構造の既製ヘッドユニットの既製ノズルから吐出される液滴の吐出量の計測結果に基づき、供給流路の断面積を変更して機能液と供給流路との流体抵抗を変えることにより、ノズルから吐出する液滴の吐出量を所定量とすることを特徴とする。
このインクジェットヘッドによれば、圧力室に貯留されている機能液は、圧力を付与されてノズルへ押されることにより、所定量がノズルから吐出される。その際、機能液の一部が供給流路へ押し戻されるが、圧力室からは一定量の機能液が圧力によりノズルへ押し出されるため、ノズルは、常に所定量の液滴を正確に吐出可能である。しかしこの構成では、ノズルの寸法やノズルと機能液との抵抗などによって、ノズルが吐出する液滴の吐出量が所定量と相違してしまうことがある。このような場合において、ノズルが吐出する液滴の吐出量を所定量とするために、事前に同構造の既製ヘッドユニットの既製ノズルから吐出される液滴の量を計測しておき、その計測結果に基づいて供給流路の断面積を調整することが有効である。つまり、ノズルからの吐出量が所定量より少ない場合には、供給流路の断面積を減少させて機能液と供給流路との流体抵抗を増やし、供給流路へ押し戻される機能液量を抑制することにより、ノズルへ押し出される機能液の量を多くする。その結果、ノズルからの機能液の吐出量が増加する。一方、ノズルからの吐出量が所定量より多い場合には、供給流路の断面積を増加させて機能液と供給流路との流体抵抗を減らし、供給流路へ押し戻される機能液量を増やすことにより、ノズルへ押し出される機能液の量を少なくする。その結果、ノズルからの機能液の吐出量が減少する。このように、圧力によりノズルから吐出される機能液の液滴の吐出量が所定量と異なる場合、供給流路の断面積を変更することにより、ノズルから吐出する液滴の吐出量を所定量にすることが可能である。
この場合、供給流路は、機能液の流入方向を長手とする略直方体であって、略直方体の流入方向と直交する幅方向を拡大することによりノズルからの吐出量を減少させ、幅方向を縮小することによりノズルからの吐出量を増加させることが好ましい。
この構成によれば、供給流路は、機能液が流れ易いように、機能液の流入方向に沿った方向へ長く延在する略直方体の形状をしている。この供給流路の断面積の変更は、機能液が圧力室へ流入する方向と直交する供給流路の幅を変えることにより行う。つまり、供給流路の幅を拡大すれば、供給流路の断面積が増加して供給流路へ押し戻される機能液量が増えるため、ノズルへ押し出される機能液の量が減少し、その結果、ノズルからの機能液の吐出量が減少する。また、供給流路の幅を縮小すれば、供給流路の断面積が減少して供給流路へ押し戻される機能液量が減るため、ノズルへ押し出される機能液の量が増加し、その結果、ノズルからの機能液の吐出量が増加する。このように、供給流路の断面積のみが変更要因となり、供給流路の断面積以外を既製のままで変更しないため、複雑に要因が絡み合うことがなく、確実に、ノズルからの吐出量を所定量にすることが可能である。
また、圧力室の一端部側にノズルが設けられ、圧力室の他端部側に供給流路が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、圧力室の一方の端部に位置する供給流路から機能液が圧力室へ流入して貯留され、圧力室で圧力を付与された機能液は、圧力室の端部の供給流路と反対側端部に設けられたノズルから吐出される。機能液は、流入、貯留、圧力付与、吐出の順に、圧力室を順に流れるため、淀みなく整然とノズルへ供給される。これにより、ノズルは液滴をより正確な量で吐出可能である。
本発明のインクジェットヘッドの吐出量調整方法は、既製ヘッドユニットの既製ノズルから吐出される機能液の液滴の吐出量を計測する計測工程と、計測工程の計測結果に基づき、既製ヘッドユニットと同構造の圧力室および該圧力室と連通するノズルおよび圧力室へ機能液を供給するための供給流路を有するヘッドユニットの供給流路の断面積を変更する補正工程と、圧力室に流入して貯留されている機能液へ圧力を付与しノズルから所定量の液滴を吐出する吐出工程と、を有することを特徴とする。
このインクジェットヘッドの吐出量調整方法によれば、圧力室に貯留されている機能液は、圧力を付与されてノズルへ押されることにより、所定量がノズルから吐出される。その際、機能液の一部が供給流路へ押し戻されるが、圧力室からは一定量の機能液が圧力によりノズルへ押し出されるため、ノズルは、常に所定量の液滴を正確に吐出可能である。しかしこの構成では、ノズルの寸法やノズルと機能液との抵抗などによって、ノズルが吐出する液滴の吐出量が所定量と相違してしまうことがある。このような場合において、ノズルが吐出する液滴の吐出量を所定量とするために、まず、事前に同構造の既製ヘッドユニットの既製ノズルから吐出される液滴の量を計測工程で計測しておき、その計測結果に基づいて、補正工程で供給流路の断面積を変更する方法が有効である。つまり、ノズルからの吐出量が所定量より少ない場合には、供給流路の断面積を減少させて機能液と供給流路との流体抵抗を増やし、供給流路へ押し戻される機能液量を抑制することにより、ノズルへ押し出される機能液の量を多くする。その結果、吐出工程におけるノズルからの機能液の吐出量が増加する。一方、ノズルからの吐出量が所定量より多い場合には、供給流路の断面積を増加させて機能液と供給流路との流体抵抗を減らし、供給流路へ押し戻される機能液量を増やすことにより、ノズルへ押し出される機能液の量を少なくする。その結果、吐出工程におけるノズルからの機能液の吐出量が減少する。この吐出量調整方法によれば、圧力によりノズルから吐出される機能液の液滴の吐出量が所定量と異なる場合、供給流路の断面積を変更することにより、ノズルから吐出する液滴の吐出量を所定量にすることが可能である。
この場合、補正工程では、ノズルからの吐出量を増加させる場合、機能液の流入方向を長手とする略直方体の形状である供給流路の流入方向と直交する幅方向を縮小し、ノズルからの吐出量を減少させる場合、幅方向を拡大することが好ましい。
この方法によれば、供給流路は、機能液が流れ易いように、流入方向に沿った方向へ長く延在する略直方体の形状をしており、供給流路の断面積を変更する補正工程では、機能液が圧力室へ流入する方向と直交する方向である供給流路の幅を変えている。つまり、供給流路の幅を拡大すれば、供給流路の断面積が増加して供給流路へ押し戻される機能液量が増えるため、ノズルへ押し出される機能液の量が減少し、その結果、ノズルからの機能液の吐出量が減少する。また、供給流路の幅を縮小すれば、供給流路の断面積が減少して供給流路へ押し戻される機能液量が減るため、ノズルへ押し出される機能液の量が増加し、その結果、ノズルからの機能液の吐出量が増加する。このように、供給流路以外を既製のままで変更せずに、供給流路の断面積のみを変更要因とする吐出量調整方法により、複雑に要因が絡み合うことなく、確実に、ノズルの吐出量を所定量にすることが可能である。
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。実施形態におけるインクジェットヘッドは、4色のインクをそれぞれ吐出するノズル列を有しており、印刷用紙へ4色印刷が可能なインクジェットプリンタに搭載されている。
(実施形態)
図1は、本発明のインクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンタを示す斜視図である。また、図2は、印刷ヘッドの走査範囲等を示す模式図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ1は、インクカートリッジ2としてのクロインクカートリッジ2a及びカラーインクカートリッジ2bを収容するカートリッジホルダ3と、インクカートリッジ2のインク(機能液)19を液滴状態で吐出するインクジェットヘッド4と、を有するキャリッジ5を備えている。キャリッジ5は、ヘッド走査機構によって、往復移動が可能に構成されている。
ヘッド走査機構は、ハウジングの左右方向に架設されたガイド軸6と、ハウジングの一方側に設けられたキャリッジモータ7と、キャリッジモータ7の回転軸に接続されて回転駆動される駆動プーリー8と、ハウジングの他方側に取り付けられた遊転プーリー9と、駆動プーリー8及び遊転プーリー9の間に掛け渡されると共にキャリッジ5に結合されたタイミングベルト10と、キャリッジモータ7の回転などを制御する制御部30と、を有する。この構成により、キャリッジモータ7を作動させることによって、キャリッジ5、即ち、インクジェットヘッド4を、ガイド軸6と平行な印刷用紙12の幅方向である主走査方向に往復移動させ、記録領域Rにある印刷用紙12へ記録動作させることが可能である。
また、インクジェットプリンタ1は、印刷用紙12を幅方向と直交する副走査方向である紙送り方向に送り出す紙送り機構を有する。この紙送り機構は、紙送モータ13及び紙送ローラ14などから構成され、印刷用紙12は、インクジェットヘッド4の記録動作に連動して、順次送り出される。
そして、図2に詳細が示されているように、キャリッジ5の移動範囲の端部領域には、インクジェットヘッド4(キャリッジ5)の待機ポジションWと、ホームポジションHと、が設定されている。待機ポジションWは、ホームポジションHに対して記録領域Rの側に略隣接して設定されている。また、ホームポジションHは、インクジェットヘッド4が移動し得るヘッド移動範囲の最側端部に設定されている。
待機ポジションWは、インクジェットヘッド4を走査する際の起点となる位置であり、インクジェットヘッド4は、通常、この待機ポジションWで待機し、記録動作時に待機ポジションWから記録領域Rへ走査され、記録動作が終了すると待機ポジションWに戻る。ホームポジションHは、電源オフ時や長時問に亘って印刷が行われなかった場合にインクジェットヘッド4が移動して留まる場所である。
待機ポジションWの下方には、インクジェットヘッド4を清浄に保つためにインク19を吐出するフラッシング動作によって、インクジェットヘッド4が排出するインク19を回収するキャッピング部15が設けられている。また、インクジェットヘッド4がホームポジションHに位置する時には、インクジェットヘッド4のホームポジションHヘの移動に伴って、キャッピング部15がホームポジションHの側へ移動している。
ここで、インクジェットヘッド4とキャッピング部15との関係について説明する。図3(a)は、インクジェットヘッドの待機ポジションを示す模式図、(b)は、インクジェットヘッドの記録領域での動作を示す模式図、(c)は、インクジェットヘッドのホームポジションを示す模式図である。図3(a)に示すように、インクジェットヘッド4が待機ポジションWに位置する時には、キャッピング部15は、インクジェットヘッド4の下方に位置し、必要に応じてインクジェットヘッド4が行うフラッシング動作により排出されるインク19を回収する。
図3(b)は、インクジェットヘッド4がインク19をインク滴(液滴)20として吐出して、記録動作をしているところであり、所定の記録動作毎に、図3(a)に示すように、待機ポジションWにおいてフラッシングを行う。記録動作が終了すると、インクジェットヘッド4は、ホームポジションHヘ移動する。図3(c)に示すようにホームポジションHでは、キャッピング部15がインクジェットヘッド4に当接して、インクジェットヘッド4をキャッピングして封止する。
キャッピング部15は、インクジェットヘッド4に対向して開放されたゴム等のトレー状の弾性部材であり、内部にはフェルト等の保湿材が取り付けられている。インクジェットヘッド4がキャッピング部15の弾性部材により封止されることで、弾性部材内部が高湿度に保たれ、インクジェットヘッド4からのインク19の蒸発が緩和される。キャッピング部15は、フラッシング動作によるインク19の受け部としてだけでなく、インクジェットヘッド4をキャッピングする役目も果たして、インクジェットヘッド4の吐出機能を維持している。さらに、インクジェットプリンタ1では、待機ポジションWと記録領域Rとの間に、図2に示すように、加速領域Sが設定されている。加速領域Sは、インクジェットヘッド4の移動速度を所定速度まで加速させるための領域である。
次に、図4は、インクジェットヘッドのノズル配列を示す平面図である。インクジェットヘッド4は、クロ、シアン、マゼンタおよびイエロの異なる4色のインク19によって多色印刷が可能である。インク19は、インクジェットヘッド4の印刷用紙12と対向するノズルプレート16に形成されているノズル17から吐出される。インクジェットヘッド4は、複数のノズル17を有し、吐出するインク19の色毎に、クロインクを吐出するノズル列K、シアンインクを吐出するノズル列C、マゼンタインクを吐出するノズル列M、イエロインクを吐出するノズル列Yが形成されている。各ノズル列K,C,M,Yのノズル17は、インクカートリッジ2の対応するインク収容部と連通構造部によって連通しており、ノズル列K,C,M,Yの各ノズル17と連通構造部とによりヘッドユニット40K,40C,40M,40Yがそれぞれ形成されている。
次に、ヘッドユニット40の詳細な構成について、図4に加え図5および図6を参照して説明する。図5は、ヘッドユニットの構成を示す断面図、図6は、流路ユニットの詳細を示す斜視図である。ヘッドユニット40は、図5または図6に示すように、収容部41と、収容部41の一方の開口から挿入され収容されている櫛歯状の圧電振動子21と、収容部41の他方の開口に位置する圧電振動子21の櫛歯状先端部21aと、収容部41の櫛歯状先端部21a側に接合された流路ユニット50と、を有する。
流路ユニット50は、流路形成板49を間に挟んで、ノズル17が形成されているノズルプレート16と弾性プレート47とを両側に積層して構成されている。流路形成板49は、ノズルプレート16の有するノズル17と連通した圧力室42と、圧力室42に連通するインク供給流路(供給流路)43と、インク供給流路43が連通しノズル列K,C,M,Yと平行な共通インク室44と、インク供給流路43に設けられインク19の流れを整流化する整流子53と、が形成された板材である。圧力室42、インク供給流路43および整流子53は、ヘッドユニット40のノズル17毎に設けられており、各ノズル17の形成されているピッチに対応して配置されている。また、共通インク室44は、各ノズル17と個々に連通しているインク供給流路43のそれぞれへインク19を供給可能なように、各インク供給流路43と連通している。
流路形成板49は、シリコンウエハーをエッチング加工して形成されている。具体的には、ノズル列K,C,M,Yと略平行に細長い共通インク室44を形成し、共通インク室44に沿って、圧力室42をノズル17のピッチに合わせて形成し、同時に、各圧力室42と共通インク室44との間に流線型状の整流子53を形成する。整流子53に沿うインク19の流路がインク供給流路43である。この場合、圧力室42の一端部側にノズル17が位置し、インク供給流路43とは反対側の他端部側にインク供給流路43が位置するように配置されている。また、共通インク室44は、インクカートリッジ2に貯留されたインク19を圧力室42に供給するためのものであり、共通インク室44の長手方向のほぼ中央に設けられたインク供給管51を介してインクカートリッジ2と連通している。
そして、弾性プレート47は、図5に示すように、ノズルプレート16とは反対側の流路形成板49の面に設けられ、ステンレスの弾性金属板45の流路形成板49側にPPS(Polyphenylene Sulfide)の高分子体フィルムを弾性フィルム46としてラミネート加工した二重構造である。さらに、圧力室42に対応する部分の弾性金属板45をエッチング加工して、圧電振動子21の櫛歯状先端部21aを当接固定するためのダイヤフラム48が形成されている。ダイヤフラム48は、弾性金属板45から隔離され弾性フィルム46によって支持されたアイランド状部である。
また、圧電振動子21は、圧電体21bを挟んで共通電極21cと個別電極21dとを交互に板状に積層し、櫛歯状先端部21aが圧力室42に対応するダイヤフラム48の形状に準ずるように櫛歯状に切断した構成である。この圧電振動子21の共通電極21cと個別電極21dとの間に電位差を与えると、圧電振動子21は、積層方向と直交する長手方向に伸縮し、即ち、圧力室42の側へ伸びて、収容部41の側へ縮む。
このような構成のインクジェットヘッド4では、圧電振動子21を長手方向に伸長させることにより、ダイヤフラム48がノズルプレート16側に押圧され、ダイヤフラム48周辺の弾性フィルム46が変形して圧力室42が収縮する。そして、圧力室42を収縮させた状態において、圧電振動子21を長手方向に縮ませると、弾性フィルム46の弾性により圧力室42が膨張する。圧力室42を一旦膨張させてから収縮させれば、圧力室42内のインク19の圧力が高まって、ノズル17からインク19がインク滴20として吐出される。
つまり、インクジェットヘッド4では、圧電振動子21に対して電位差を付与して充放電させることに伴って、圧電振動子21に対応する圧力室42の容量が変化する。このように、圧力室42の容量変化を利用して、ノズル17からインク滴20を吐出させている。従って、インク滴20の吐出量は、圧電振動子21が動作していない場合の圧力室42の容積が異なれば、その容積に対応して変化する。また、ノズル17で大気に露出しているインク19の表面(メニスカス)を微振動させることにより、インク19が滞留せずに流動し吐出不良を起こす粘度の増加を防止することが可能である。
次に、インクジェットプリンタ1を制御する制御部について、簡単に説明する。図7は、インクジェットプリンタの制御部を示すブロック図である。制御部30は、ホストコンピュータ25と接続する通信インタフェース31と、インクジェットプリンタ1を制御するプログラム等が記憶されているROM33と、ホストコンピュータ25から送られて来る印刷データなどを一時的に記憶しておくRAM34と、ROM33に記憶されているプログラムに基づきインクジェットプリンタ1の制御を実行するCPU32と、を有する。
また、制御部30は、さらに、複数のヘッドユニット40K,40C,40M,40Yへそれぞれに互いに独立な信号を与えてヘッドユニット40の各ノズル17の液滴吐出を制御する印刷制御部35と、キャリッジモータ7および紙送モータ13を制御する搬送制御部36と、ノズル17の吐出機能を維持するためのフラッシングおよびキャッピングの動作およびキャッピング部15を制御するメンテナンス制御部37と、を有する。これら制御部30を構成する通信インタフェース31、CPU32、ROM33、RAM34、印刷制御部35、搬送制御部36およびメンテナンス制御部37とがバス38を介して相互に接続されている。
次に、インクジェットヘッド4のノズル17から吐出するインク滴20を所定量に調整する方法について説明する。図8は、流路ユニットの供給流路および圧力室の詳細を示す平面図であり、流路形成板49を弾性プレート47の方向から見た図である。そして、図9(a)は、圧力室を経てノズルからのインク滴の吐出を示す断面図、(b)は、供給流路の幅を拡大した場合のインク滴の吐出を示す断面図である。圧力室42は、共通インク室44とノズル17とを連通して、インク19を共通インク室44からノズル17へ供給する流路であり、直方体の形状である。既述したように、圧力室42の一端部側にノズル17が位置し、圧力室42の他端部側であるインク供給流路43には、整流子53が設けられている。この場合、ノズル17は、直径20μmであり、圧力室42の共通インク室44と平行である幅は110μmであり、流入方向の長さは430μm、幅と流入方向とに直交方向である高さは70μmである。また、供給流路43の幅S1は、21.5μmである。
流路形成板49は、シリコンウエハーをエッチングによって寸法精度良く加工され、ノズル17は、ノズルプレート16に精密プレス加工によって形成されている。しかし、試作などの量産前の既製インクジェットヘッドにおいて、既製ノズルの寸法、既製ノズルとインク19との抵抗などの吐出要因の影響を受けて、圧電振動子21の振動によって既製ノズルから吐出されるインク滴20の吐出量が、所定量と異なったデータとして、計測工程で計測される場合がある。このような場合、以降のインクジェットヘッド4の量産では、吐出量が所定量と異なる既製ノズルと同位置のノズル17に連通する圧力室42および供給流路43を形成する時に、計測工程での計測結果のデータに基づいて、例えば、図8に示すように、供給流路43の幅S1の値を幅S2に変更する。図8は、供給流路43の幅S1を変更する補正工程を表しており、この場合、幅S1を幅S2に拡大している。
次に、図9(a)は、供給流路43が幅S1の場合を表していて、圧電振動子21によってダイヤフラム48がノズル17の方向へ押されると、圧力室42は縮小する。この時、一部のインク19は、供給流路43へ押し戻されるが、圧力室42に流入しているインク19は、ノズル17から長さ△L1だけ押し出される。そして、ダイヤフラム48が元の状態に戻るとき、押し出されたインク19は、ノズル17から離れてインク滴20aとなって吐出する。通常、インク滴20aの量を計測する計測工程での計測において、インク滴20aは所定量でなければならないが、この場合、インク滴20aの計測結果は所定量より多い。図9(a)のノズル17は、既製ノズルに該当する。
このように計測工程での計測結果における既製ノズルのインク滴20aの吐出量が、所定量ではない場合、以降のインクジェットヘッド4の加工では、既製ノズルと同位置にあるノズル17のインク滴20の吐出量が所定量となるように供給流路43の幅S1を変更する。そして、インク滴20aの計測結果に基づいて供給流路43の幅S1を変更する場合のために、ノズル17の直径と供給流路43の幅と吐出量との関係を事前に実験してデータ化し、そのデータをホストコンピュータ25に記憶させてある。こうすれば、計測工程での計測結果に基づき、吐出量を所定量にするための供給流路43の幅S1を、例えばS2に変更すればよいことが容易に求められる。
図9(b)は、既製ノズルのインク滴20aが所定量より多いため、以降のインクジェットヘッド4において、供給流路43の幅S1を幅S2へ変更して、供給流路43の断面積を増加した場合を示している。平面形状では、図8に示すように、供給流路43の幅S2が流路方向に沿って均一に拡大しており、拡大した部分のインク量調整領域70の分だけ、インク19と供給流路43との流体抵抗が減少し、インク19が供給流路43を通過しやすくなっている。ここで、圧電振動子21によってダイヤフラム48がノズル17の方向へ押され、圧力室42を縮小させると、図9(a)の供給流路43が幅S1の場合に比べて、流体抵抗が減少した分だけインク19が供給流路43へ多く押し戻される。よって、圧力室42に貯留されるインク19が減少しており、インク19は、ノズル17から長さ△L1より短い長さ△L2だけ押し出される。そして、ダイヤフラム48が元の状態に戻るとき、押し出されたインク19は、ノズル17から離れてインク滴20aより小さなインク滴20bとなって吐出する。このインク滴20bは所定量の液滴である。
なお、幅S1の供給流路43を有するインクジェットヘッド4のノズル17から吐出するインク滴20が、所定量より少ない場合には、ホストコンピュータ25に記憶したデータに基づいて、供給流路43の幅S1を縮小することにより、供給流路43へ押し戻されるインク19の量を減らし、ノズル17から吐出するインク滴20の量を増加させて、所定量とすることが可能である。
以下、実施形態の効果をまとめて記載する。
(1)ノズル17の寸法やノズル17とインク19との抵抗などによって、インクジェットヘッド4のノズル17が吐出するインク滴20の吐出量が所定量と相違する場合、圧力室42および供給流路43を形成する時に、供給流路43の断面積を変えることにより、ノズル17から吐出するインク滴20の吐出量を所定量に調整することが可能である。供給流路43の断面積を変える機械的な調整だけで、ノズル17からのインク滴20の吐出量を所定量とすることが可能である。
(2)供給流路43は、インク19が流れ易いように、インク19の流入方向に沿った方向へ長く延在する直方体の形状であり、供給流路43の断面積の変更は、この供給流路43の幅S1を変えることにより行って、ノズル17からのインク滴20の吐出量を調整する。このように、供給流路43以外を既製のままで変更せずに、供給流路43の幅S1の変更のみを変更要因とすることにより、複雑に要因が絡み合うことなく、ノズル17からの吐出量の調整が確実に行える。
(3)インク19は、供給流路43を経て圧力室42への流入からノズル17での吐出まで、ほぼ直線状に整然と流れて貯留されるため、インク19の乱流などによる影響が少なくノズル17からインク滴20を正確な量で吐出可能である。さらに、インク供給流路43に設けられている整流子53により、インク19をより整然と流動させることが可能である。
(4)圧電振動子21は、積層方向と直交する長手方向に伸縮する、いわゆる縦振動モードのものであり、圧力室42の幅Sが変更されても、圧電体21b、共通電極21c、個別電極21dの長さ調整により、振動特性を維持する対応が容易に可能である。
(5)インクジェットヘッド4は、複数のノズル17をそれぞれ有するノズル列K,C,M,Yを有することにより、異なるインク19を同時に吐出可能である。これにより、一回の走査による印刷が、複数のインク19を同時に、広範囲に吐出でき、効率的に行える。
また、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態と同様な効果が得られる。
(変形例1)供給流路43の断面積は、幅S1を変えて増減する方法に限らず、幅S1および機能液の流入する方向と直交方向の高さを変える方法であっても良い。いずれであっても供給流路43の断面積をほぼ同等の加工工数によって変更可能である。
(変形例2)供給流路43は直方体であることが望ましいが、多角形柱の形態であっても良い。また、共通インク室44から曲線状等をなしてノズル17へ連通する形態であっても良い。さらに、ノズル17に対応する供給流路43のそれぞれの長さが異なっていても良い。供給流路43の断面積とインク滴20の吐出量との相関が複雑にはなるが、実施形態に準じて供給流路43の断面積を調節して、ノズル17から所定量のインク滴20の吐出が可能である。
(変形例3)圧電振動子21は、積層方向と直交する長手方向に伸縮する縦振動モードのものであるが、圧電振動子21が積層方向に伸縮する、いわゆる横振動モードのものを用いても良い。但し、圧力室42の幅Sが狭くなる場合などにおいて、振動特性を維持する対応は、特性の異なる圧電体を選択する横振動モードに比べ縦振動モードの方が容易である。
本発明のインクジェットヘッド4は、インクジェットプリンタ1に搭載されて印刷用紙12に印刷をする用途に、最も用いられている。インクジェットヘッド4は、機能液として印刷用のインク19だけでなく、カラーフィルタを構成する赤、緑、青などのフィルタ液、有機EL(Electro Luminescence)表示装置の有機EL発光液、液晶表示装置の配向膜を形成する配向液、各種回路基板の配線を描画する銀(Ag)などを含有した配線液などを吐出可能であり、多様な工業分野での応用が図れる。インクジェットヘッド4によれば、必要な部分にのみ液滴を塗布可能であり、リソグラフィ技術のように剥離した機能液を廃棄するなどの無駄が生じないため、省資源化への貢献も多大である。
本発明の印刷ヘッドを搭載したインクジェットプリンタを示す斜視図。 インクジェットヘッドの走査範囲等を示す模式図。 (a)インクジェットヘッドの待機ポジションを示す模式図、(b)インクジェットヘッドの記録領域での動作を示す模式図、(c)インクジェットヘッドのホームポジションを示す模式図。 インクジェットヘッドのノズル配列を示す平面図。 インクジェットヘッドの構造を示す断面図。 流路ユニットの詳細を示す斜視図。 インクジェットプリンタの制御部を示すブロック図。 流路ユニットの圧力室供給流路およびの詳細を示す平面図。 (a)圧力室を経てノズルからのインク滴の吐出を示す断面図、(b)供給流路の幅を拡大した場合のインク滴の吐出を示す断面図。
符号の説明
1…インクジェットプリンタ、2…インクカートリッジ、4…インクジェットヘッド、5…キャリッジ、12…印刷用紙、15…キャッピング部、16…ノズルプレート、17…ノズル、19…機能液としてのインク、20…液滴としてのインク滴、21…圧電振動子、21a…櫛歯状先端部、21b…圧電体、21c…共通電極、21d…個別電極、30…制御部、35…印刷制御部、40…ヘッドユニット、41…収容部、42…圧力室、43…供給流路としてのインク供給流路、44…共通インク室、45…弾性金属板、46…弾性フィルム、47…弾性プレート、48…ダイヤフラム、49…流路形成板、50…流路ユニット、51…インク供給管、53…整流子、70…インク量調整領域。

Claims (5)

  1. 供給流路から圧力室に流入して貯留されている機能液へ圧力を付与し、前記圧力室と連通するノズルから前記機能液を液滴状態で吐出するヘッドユニットを有するインクジェットヘッドであって、
    前記ヘッドユニットと同構造の既製ヘッドユニットの既製ノズルから吐出される前記液滴の吐出量の計測結果に基づき、前記供給流路の断面積を変更して前記機能液と前記供給流路との流体抵抗を変えることにより、前記ノズルから吐出する前記液滴の吐出量を所定量とすることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    前記供給流路は、前記機能液の流入方向を長手とする略直方体であって、前記略直方体の前記流入方向と直交する幅方向を拡大することにより前記ノズルからの前記吐出量を減少させ、前記幅方向を縮小することにより前記ノズルからの前記吐出量を増加させることを特徴とするインクジェットヘッド。
  3. 請求項1または2に記載のインクジェットヘッドにおいて、
    前記圧力室の一端部側に前記ノズルが設けられ、前記圧力室の他端部側に前記供給流路が設けられていることを特徴とするインクジェットヘッド。
  4. 既製ヘッドユニットの既製ノズルから吐出される機能液の液滴の吐出量を計測する計測工程と、
    前記計測工程の計測結果に基づき、前記既製ヘッドユニットと同構造の圧力室および該圧力室と連通するノズルおよび前記圧力室へ前記機能液を供給するための供給流路を有するヘッドユニットの前記供給流路の断面積を変更する補正工程と、
    前記圧力室に流入して貯留されている前記機能液へ圧力を付与し前記ノズルから所定量の前記液滴を吐出する吐出工程と、を有することを特徴とするインクジェットヘッドの吐出量調整方法。
  5. 請求項4に記載のインクジェットヘッドの吐出量調整方法において、
    前記補正工程では、前記ノズルからの前記吐出量を増加させる場合、前記機能液の流入方向を長手とする略直方体の形状である前記供給流路の前記流入方向と直交する幅方向を縮小し、前記ノズルからの前記吐出量を減少させる場合、前記幅方向を拡大することを特徴とするインクジェットヘッドの吐出量調整方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2011235628A (ja) * 2010-05-11 2011-11-24 Samsung Electro-Mechanics Co Ltd インクジェットプリントヘッド及びこれを具備するインクジェットプリンタ
JP2013116603A (ja) * 2011-12-05 2013-06-13 Seiko Epson Corp 非水系洗浄液および洗浄方法

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