JP2007314645A - 高強度高結晶性四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電離放射線の吸収線量が0.5kGy〜3kGyである四フッ化エチレン樹脂成形用粉末を用い、それを成形した樹脂の結晶融解熱量が27J/gから40J/gの範囲にあって、その引張り破断強度の保持率が電離放射線を照射しない成形用粉末を用いたときの1/2以上である高い延伸性を持つ、四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体。
【選択図】 図1
Description
(1)予め電離放射線を照射した四フッ化エチレン樹脂成形用粉末を用いることにより、成形した樹脂の結晶融解熱量が27J/gから40J/gの範囲にあるとともに、その引張り破断強度の保持率が電離放射線を照射しない成形用粉末を用いたときの1/2以上である高い延伸性を持つ、フリーベーキング法による四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体、
(2)四フッ化エチレン樹脂の成形用粉末に照射する電離放射線の吸収線量が0.5kGy〜3kGyである上記(1)のフリーベーキング法による四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体、
(3)フィラーとしてカーボン、カーボングラファイト、ガラス、エコノールなどの繊維状物質もしくは粉体と混合して成る四フッ化エチレン樹脂成形用粉末である上記(1)のフリーベーキング法による四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体、
(4)成形した樹脂の気体透過度、線膨張率、圧縮クリープなどが低く抑えられ、物性が改善された上記(1)のフリーベーキング法による四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体、
(5)上記(1)記載の四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体を用いて得られる機械加工による切削加工品、
(6)上記(1)記載の四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体から機械加工により切削したテープあるいはシートを用いて延伸加工した四フッ化エチレン樹脂の多孔質体、
を提供するものである。
旭硝子フロロポリマーズ(株)製モールディングパウダー(G350)に対して、Co-60を照射線源とする1kGy/hのγ線を室温、大気中で0.5時間、1時間、1.5時間、および2時間照射した試料をそれぞれ用意した。照射しないものを含め、それぞれの試料から直径50mm、高さ70mmの圧縮成形ロッドを調製した。このとき、圧縮成形は5分間かけて30MPaまでリニアに加圧したのち、30MPaで10分間保持した。さらに、金型から取り出した圧縮成形ロッドは、焼成を行うためオーブンに移し、80℃/hの速度で温度を上げ、360℃で4時間保持したのち−100℃/hで室温まで冷却した。かくして調製した圧縮成形ロッドにクラックなどの欠陥はなかった。当該圧縮成形ロッドを切削機にかけ、それぞれを厚さ0.5mmの切削シートとして調製した。さらに、この切削シートから、切削方向と圧縮方向に向きを合わせたダンベル状の引張試験片を打ち抜き、インストロン4302型引張試験機により引張速度200mm/minで、それぞれの破断強度と破断伸びを測定した。なお、破断伸びは標線間隔を追尾し、真の値を求めた。その結果は表1-1(切削方向の引張強度特性)、および表1-2(圧縮方向の引張強度特性)に示すように、未照射時に対する破断強度の保持率は各線量で大きく、また、破断伸びは線量の増大に伴って著しく増大していた。
あらかじめモールディングパウダーに電離放射線を照射してから成形する本発明のメリットを明らかにするため、常法により成形した四フッ化エチレン樹脂のシートに対して同等の電離放射線を照射した場合の線量と機械特性の変化を比較した。すなわち、表1に示した未照射のモールディングパウダーを用いて、実施例1同様に調製した切削シート試料に対し、実施例1に同じ条件でγ線を照射した。これらの照射試料は、各線量で実施例1同様に切削方向の引張破断強度と破断伸びを測定した。その結果は、表2に示すように、破断強度の照射による低下が激しく、1kGy以下の線量で半減した。一方、破断伸びは0.5kGyまで僅かに増大するものの、0.5kGyを超えると単純に低下した。これらの結果は、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)の放射線による劣化が極めて速く、照射による材料特性の改善策を否定しているものであり、実施例1の本発明による照射効果が優れた材料特性の改善策となって現れていることは明白である。
本発明によるフリーベーキング法による圧縮成形では、照射した粉末を室温で圧縮成形したのち時間をかけて焼成するため、この熱履歴が再結晶化を促進する。そこで、常法により成形した四フッ化エチレン樹脂シートに電離放射線を照射した場合の照射後の条件として、熱履歴を与えた後の機械特性を測定した。比較例1同様、未照射のモールディングパウダーを用いて調製した切削シートに各線量のγ線を照射した。照射した各シートは、アニーリングによる破断伸びの変化量を調べるためオーブンに入れ80℃/hで360℃まで加熱し、360℃で2時間保持したのち、−100℃/hの速度で室温まで冷却した。これらの試料は、各線量で実施例1同様に破断強度と破断伸びを測定したところ、破断伸びは図1のごとく増大したが、破断強度は各線量で増大することはなく同等もしくは、さらに低下していた。
実施例1同様に調製した切削シートについて、示差走査熱量計(DSC)により10℃/分の昇温速度で結晶の融解熱量として吸熱量(J/g)を測定したところ、あらかじめ電離放射線を照射したモールディングパウダーを用いた場合、表3に示すように、未照射のモールディングパウダーを用いて調製した切削シート試料より各線量で結晶の融解熱量は大きくなり、明らかに結晶性が高くなっていることを示した。
実施例1同様に2kGy照射したモールディングパウダーを用いて圧縮成形した切削シートの引裂き強度(Trouser shear strength)を測定したところ、厚さ1mm当りの切削方向に向けた引裂き応力は90.4N、および圧縮方向に向けた引裂き応力は94.4Nであった。同様に測定した未照射のモールディングパウダーを用いて圧縮成形した切削シートの引裂き応力は、それぞれ27.6Nおよび25.3Nであった。この結果から、あらかじめモールディングパウダーを照射しておくことによって、引裂き強度は切削方向で約3.3倍、および圧縮方向で約3.7倍大きくなり、裂け目を開いても容易に裂けない特長があることがわかった。
ダイキン工業株式会社製のモールディングパウダー(ニューポリフロンPTFE、M-139)を用いて、実施例1同様に、あらかじめ1kGyの電離放射線を照射して圧縮成形したフリーベーキング法による切削シート(厚さ0.5mm)の切削方向の機械特性と、同様に未照射のモールディングパウダーを用いて調製した切削シートの機械特性を測定して両者を比較した。その結果は表4に示す通り、微量の変性処理をした新しいタイプの四フッ化エチレン樹脂(PTFE)においても、電離放射線の照射により引張強度は僅かに低下するものの、実用的には降伏点強度が高くなるほか、引張弾性率、破断伸び、引裂き強さも顕著に増大し、優れた照射効果を発揮した。
あらかじめ1kGy照射したモールディングパウダー(G350)を用い、焼成時間を2時間としたほかは実施例1と同様に成形した切削シート(厚さ0.5mm)、および、あらかじめ1kGy照射したモールディングパウダー(M-139)を用い、実施例1同様に成形した切削シート(厚さ0.5mm)の23℃における乾燥窒素および酸素に対するガス透過性を差圧法(JIS K7126準拠、差圧1気圧)により測定し、モールディングパウダーの未照射と照射改質の場合を表5に比較した。その結果、ガス透過性は照射改質により明らかに改善されることが証明された。
カーボングラファイトおよび、ガラス短繊維入りのモールディングパウダーを用いて成形したそれぞれの切削シートについて、実施例5同様のガス透過性試験を実施した。なお、カーボングラファイトの場合、成形圧力は40MPa、焼成時間は2時間、ガラス短繊維の場合は焼成時間を2時間としたほか実施例1同様の成形条件とした。また、照射改質に要したモールディングパウダーの線量は、カーボングラファイトの場合0.8kGy、およびガラス短繊維の場合0.5kGyとした。表6に示すように、もともとガス透過度の高いこれらのフィラー入りモールディングパウダーは、照射改質によるガス透過度の抑制効果が特に大きく、カーボングラファイトの場合は約1/2に、またガラス短繊維の場合は窒素ガスに対する効果が大きく1/4強まで低下した。
あらかじめ1.6kGy照射したモールディングパウダー(G350)を用い、実施例1同様に成形した圧縮成形ロッドから、機械加工により直径20φ、高さ50mmの検体を作り、試験応力7MPaで100℃の圧縮クリープを測定したところ、同じ未照射のモールディングパウダーを用いた成形体が2.4%であったのに対し、1.6kGy照射したモールディングパウダーを用いた成形体は1.8%であった。すなわち、照射改質したモールディングパウダーを用いた四フッ化エチレン樹脂は、変形しにくい特長があり、耐クリープ性に優れていることがわかった。
Claims (7)
- 予め電離放射線を照射した四フッ化エチレン樹脂成形用粉末を用いることにより、成形した樹脂の結晶融解熱量が27J/gから40J/gの範囲にあるとともに、その引張り破断強度の保持率が電離放射線を照射しない成形用粉末を用いたときの1/2以上である高い延伸性を持つ、フリーベーキング法による四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体。
- 四フッ化エチレン樹脂の成形用粉末に照射する電離放射線の吸収線量が0.5kGy〜3kGyである請求項1記載のフリーベーキング法による四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体。
- フィラーとしてカーボン、カーボングラファイト、ガラス、エコノールなどの繊維状物質もしくは粉体と混合して成る四フッ化エチレン樹脂成形用粉末である請求項1記載のフリーベーキング法による四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体。
- 成形した樹脂の気体透過度、線膨張率、圧縮クリープなどが低く抑えられ、物性が改善された請求項1記載のフリーベーキング法による四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体。
- 予め電離放射線を照射したことにより吸収線量が0.5kGy〜3kGyである四フッ化エチレン樹脂成形用粉末を圧縮成形し、その圧縮成形体を350〜380℃で焼成して得られた四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体であって、その焼成後の樹脂の結晶融解熱量が高い結晶性を示す27J/g〜40J/gの範囲にあるとともに、その引張り破断強度の保持率が電離放射線を照射しない成形用粉末を用いたときの1/2以上である高い延伸性を持ち、且つその窒素及び酸素の気体透過係数が電離放射線を照射しない成形用粉末を用いたときと比較して低くいことを特徴とする四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体。
- 請求項1記載の四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体を用いて得られる機械加工による切削加工品。
- 請求項1記載の四フッ化エチレン樹脂圧縮成形体から機械加工により切削したテープあるいはシートを用いて延伸加工した四フッ化エチレン樹脂の多孔質体。
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