JP2007314568A - チオベンズイミダゾール誘導体 - Google Patents
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Abstract
【課題】高血圧症、心臓病(心肥大、心不全、心筋梗塞など)、脳卒中、腎炎など循環器疾患に有効な薬剤(予防剤または治療剤)の提供。
【解決手段】キマーゼ阻害剤及びACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤を併用して使用される形態の循環器疾患治療剤。また、キマーゼ阻害剤単品を有効成分として含有する循環器疾患治療剤およびアンジオテンシンII産生抑制剤。キマーゼ阻害剤としては、特にチオベンズイミダゾール誘導体が有効であり、ACE阻害剤としては、特に、塩酸テモカプリルが有効である。
【選択図】なし
【解決手段】キマーゼ阻害剤及びACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤を併用して使用される形態の循環器疾患治療剤。また、キマーゼ阻害剤単品を有効成分として含有する循環器疾患治療剤およびアンジオテンシンII産生抑制剤。キマーゼ阻害剤としては、特にチオベンズイミダゾール誘導体が有効であり、ACE阻害剤としては、特に、塩酸テモカプリルが有効である。
【選択図】なし
Description
本発明は、キマーゼ阻害剤及びACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害剤の両方を有効成分として含有する薬剤、あるいはキマーゼ阻害剤及びACE阻害剤を投与する予防方法又は治療方法に関する。さらに具体的には、該薬剤又は該方法の、循環器系疾患の予防剤、治療剤、予防方法、又は治療方法、あるいはアンジオテンシンII産生抑制剤又は抑制方法に関する。本発明の薬剤は、その強力なアンジオテンシンII産生抑制効果により、高血圧症、心臓病(心肥大、心不全、心筋梗塞など)、脳卒中、又は腎炎などの治療に有効である。
アンジオテンシンIIは、全身血圧、体液量などの生体内恒常性維持に重要なレニン−アンジオテンシン系の主要な因子として研究されてきた。アンジオテンシンIIは、その強い血管収縮作用から高血圧性の疾患における原因物質として最も注目を集めてきた因子であり、その作用を抑制することにより循環器系疾患の薬剤治療薬が開発されてきた。さらに、近年、アンジオテンシンIIは増殖因子として繊維芽細胞の増殖などを促し、特に心血管系疾患においては、心筋細胞の肥大、平滑筋細胞の遊走・増殖、線維芽細胞の細胞内マトリックス産生刺激、アポトーシス誘導など広く細胞機能の調節に関わり、線維化や腎の硬化、動脈硬化巣の形成においても重要な役割を担うと考えられている。事実、アンジオテンシンIIを生成する酵素であるアンジオテンシン変換酵素(以下、「ACE」という。)の阻害剤は、長く循環器系疾患における第1選択薬として用いられており、その有効性は臨床において明確にされている。
一方、このような局所アンジオテンシンIIの産生系の重要性が明らかにされる中で、ヒト組織局所におけるアンジオテンシンIIの産生に非ACE依存の経路が見出され、特にヒトマスト細胞キマーゼ(キマーゼ)によるアンジオテンシンII産生経路に関して注目がされてきた。例えば、経皮的冠動脈形成術(PTCA)後の再狭窄において、ACE阻害剤は無効であることが分かり(Circulation 1992; 86:100-110, J. Am. Coll. Cardiol 1995; 25:362-369)、アンジオテンシンIIの産生に関してACE以外の産生酵素の存在が示唆された。浦田らは、ヒト心臓よりアンジオテンシンIからアンジオテンシンIIを産生する酵素を単離抽出し、その酵素の化学構造および遺伝子クローニングからヒトマスト細胞キマーゼがアンジオテンシンIIの産生を担うことを明らかにした(J. Biol. Chem 1990; 265: 222348-22357, J. Biol. Chem. 1991; 266: 17173-17179)。これまでの研究では、キマーゼは組織結合型のマスト細胞のみでその存在が確認されており、組織局所において生理機能をもつとされる。血管壁において、正常時、キマーゼは外膜に最も多く、内膜にはむしろACEが局在しているが、一旦血管が障害をうけると、キマーゼは外膜の再構築および新生内膜増殖に関わると考えられている(Circulation 1996; 94: 1655-1664)。
このキマーゼによる非ACE依存のアンジオテンシンII産生経路は、ヒトにおいては他の動物種と比較して寄与が高いことが種々の報告から実証されている。例えば、サル、イヌの摘出血管におけるアンジオテンシンI添加の血管収縮作用は、ACE阻害剤単独では30%程度しか抑制されないことが古くから報告されており、セリンプロテアーゼ阻害蛋白であるキモスタチンの併用によってはじめて完全に抑制されることから、ACE以外の酵素による何らかのアンジオテンシンII産生経路が存在し、しかもげっ歯類と比較してこれらの大動物においては非ACE依存のアンジオテンシンII産生経路の寄与が大きいことが推測されてきた(J. Hypertensions 1984; 2: 277-189)。この非ACE依存アンジオテンシンII産生経路は、後にキマーゼによることが明らかにされ、さらに、ヒト心臓においてのアンジオテンシンIIの生成は約80%をキマーゼが担うという報告もある(Circ. Res. 1990; 66: 883-890)。
ヒトにおいて、ACE依存と非ACE依存の主要な二つのアンジオテンシンII生成経路を同時に抑制するために、近年アンジオテンシンII受容体拮抗剤が開発されている。アンジオテンシンIIは細胞膜上のアンジオテンシンII受容体を介して作用することから、特に血管収縮に関わるアンジオテンシンII受容体であるAT1受容体の拮抗剤が開発されている(特開昭56−17073号公報、EP0253310号明細書、EP0291969号明細書、EP0324377号明細書、特開昭63−23868号公報、特開平1−1178676号公報、EP0323841号明細書、特開平1−287071号公報、特開平4−364171号公報など多数)。これらの受容体拮抗剤の多くは既に血圧降下剤として臨床応用され、ACE阻害剤と同等以上の効果が認められつつある。そしてこれらの受容体拮抗剤によるACE依存及び非ACE依存の2つのアンジオテンIIを抑制することの有用性が臨床上において検証されつつある。しかしながら、アンジオテンシンII受容体拮抗剤によって循環器疾患の治療上の問題点がすべて解決されたとはいえない。
実際にAT1受容体拮抗剤の大規模な臨床試験が実施されており、その臨床効果が明確になりつつある。しかしながら、AT1受容体拮抗剤の効果として、特に心不全などの心疾患においては、心血管イベントの再発や心不全の増悪による再入院などの患者のQOL(Quality of Life)を改善するものの、心不全患者の総死亡率低下そのものはACE阻害剤と同等であって、未だ心疾患の治療上満足のいく結果とはなっていない(ELITEII試験、Lancet 2000 355巻 1582頁、アメリカ心臓協会学術集会2000年、2001年;Val−HeFT試験、New England Journal of Medeine 2001年 345巻、1667頁、アメリカ心臓協会学術集会2000年、2001年)。
また、近年のノックアウトマウスの研究から、心臓における肥大や線維化において、アンジオテンシンIIが、アンジオテンシンII受容体であるAT2受容体に働いて増悪因子となり得る可能性を示唆する報告もされている(Circulation,2001年104巻247頁、Ichiharaら、Trends Cardiovasc Med,2001年11巻324頁、Inagamiら)。
心疾患以外の循環器疾患においても、ACE阻害剤やアンジオテンシンII受容体拮抗剤によっても血圧が低下しない一部の高血圧患者が存在している。また、肺高血圧症においてもACE阻害剤やアンジオテンシンII受容体拮抗剤の治療上の効果は明確ではない。
従って発明者らは、これまで臨床応用されていない新しい概念に基づく治療剤・治療法を開発し、これらの循環器疾患の治療における問題点を克服すべく本発明を提案するに至った。
従って発明者らは、これまで臨床応用されていない新しい概念に基づく治療剤・治療法を開発し、これらの循環器疾患の治療における問題点を克服すべく本発明を提案するに至った。
本発明の課題は、心疾患(心肥大、心不全、又は心筋梗塞など)、脳卒中、PTCA後の再狭窄などの血管障害、動脈硬化、腎不全、腎炎、一部の高血圧症、又は肺高血圧症などの高血圧症における心血管系疾患に対する新たな治療薬を提供することである。
AT1受容体拮抗剤が、ACE及び非ACE依存の、2つのアンジオテンシンIIの作用を同時に抑制する薬剤でありながら、心疾患領域で期待されるほどの治療効果を得られていない点に関しては、次のような考察をすることができる。即ち、これらの受容体拮抗剤はAT1受容体選択的な拮抗剤であり、AT1受容体以外のアンジオテンシンII受容体に対する作用を抑制するものではない。事実、AT1受容体の拮抗作用により血清中および組織中のアンジオテンシンII濃度が上昇することが知られていることから、これらのアンジオテンシンIIが他の受容体を刺激することが推察される。例えば、アンジオテンシンII受容体であるAT2受容体は、AT1受容体と同様に重要な作用を有すると考えられてきたが、その循環器系疾患における役割は未だ不明確な点も多い。
前述した、心臓における肥大や線維化においてアンジオテンシンIIがAT2受容体に働いて増悪因子となり得る可能性を示唆する報告から、AT1受容体の拮抗作用により血清中および組織中のアンジオテンシンII濃度が上昇し、これらのアンジオテンシンIIが他の受容体を刺激することが心疾患などの循環器疾患では病態増悪に働くという仮説を部分的に裏付けるものである。従って、慢性心不全などの心疾患は、最終的には広汎な心臓の線維化とそれに伴う心機能の低下によって死亡に至らしめるものであるが、これら心疾患の病態の進行過程においては、AT2受容体を刺激することは病態増悪につながる可能性があり、このAT2受容体の刺激が、AT1受容体拮抗剤が慢性心不全、心筋梗塞後の心機能不全などの心疾患において治療効果が十分に得られない要因であると考えられる。
また、現在広く循環器系疾患の臨床に用いられているACE阻害剤は、ブラジキニンなどの分解抑制を介して循環器系疾患に対する治療効果も発現すると考えられ、アンジオテンシン受容体拮抗剤が、完全にACE阻害剤の治療効果を代替できるものではない。
更にキマーゼは、アンジオテンシンIIと同様に強力な血管収縮作用を有し様々な細胞に対して増殖作用を有する因子であるエンドセリンを活性化することからアンジオテンシンII受容体以外の機序による循環器疾患の病態形成に関与する可能性がある。また、キマーゼは炎症性サイトカインの一つであるIL−1βの活性化を通じて心血管障害部位での炎症反応増悪や、フィブロネクチンやIV型コラーゲンの分解、マトリックスプロテアーゼの活性化を通じての細胞外タンパク質の分解に寄与することや、トランスフォーミンググロースファクターβ(TGFβ)の遊離促進を通じて、線維芽細胞の分化増殖を促し、組織線維化/組織リモデリングを促進すると考えられる。従って、キマーゼ阻害剤はこれら循環器疾患において、アンジオテンシンIIの作用を抑制するのみならず、アンジオテンシン受容体拮抗剤で代替できない広汎な薬理作用を併せ持つ有用な循環器疾患治療薬であると考えられる。ところで、キマーゼ阻害剤としては、ベンズイミダゾール誘導体またはその医学上許容される塩が開示されている(WO01/53291号明細書、WO01/53272号明細書、WO00/03997号明細書)。その化学構造は後述する。
更に、発明者らは、ACE阻害剤とキマーゼ阻害剤を同時に投与することを実現する治療法あるいは治療剤が、相乗的な治療効果を期待し得る画期的な循環器治療法あるいは治療剤になると考えるに至った。即ち、本発明は、組織におけるACE依存及び非依存のアンジオテンシンII産生を完全に抑制するのみならず、AT1受容体拮抗剤が有しないACE阻害剤によるブラジキニン分解抑制による治療効果をも維持し、かつ、キマーゼの持つインターロイキン−1−β(IL−1β)の活性化、マトリックスプロテアーゼの活性化、フィブロネクチンやIV型コラーゲンの分解、トランスフォーミンググロースファクター−β(TGF−β)の遊離促進、サブスタンスPやバソアクティブインテスティナルペプチド(Vasoactive intestinal peptide, VIP)の活性化などを抑制することにより、循環器系疾患において新しい治療剤の概念を与えるものである。
アンジオテンシンIIの産生に関し、病態局所においては、ACEとキマーゼがその役割を分担していると考えられ、PTCA後の再狭窄など血管障害性の病態ではむしろACEよりキマーゼが重要であると考えられる。さらに、血管粥状動脈硬化巣でのキマーゼ活性の上昇、先天性心疾患の肺血管病変の進行にキマーゼが関与すること、キマーゼによる心筋細胞のアポトーシスおよび心繊維芽細胞の増殖なども報告され、障害血管や心臓を中心とした循環器系組織リモデリングにキマーゼによるアンジオテンシンII産生がACEとともに関わると同時に異なる役割をもって関与しているとも考えられる。
したがって、ACEによるアンジオテンシンII産生とキマーゼによるアンジオテンシンII産生の両方の経路を同時に抑制することによって、生体内のアンジオテンシンII自体の濃度を低下させることは、循環器系疾患の治療に有効であり、心不全、心筋梗塞およびその予後、PTCAなどの処置後血管再狭窄、肺高血圧に伴う心疾患、動脈硬化症、腎不全、一部の高血圧症などに広く有効であると考えられる。
本発明者らは、キマーゼがACEと共に心血管系の疾患に対してアンジオテンシンIIの産生を通じて深く関与することに着目し、鋭意研究を重ねてきた。ヒトキマーゼは、げっ歯類であるマウスおよびラットにおいてもその類似酵素が同定されているが、これらの類似酵素はヒトと異なりアンジオテンシンII産生活性ともにアンジオテンシンII分解活性を有し、げっ歯類におけるキマーゼ依存アンジオテンシンII産生経路の寄与はヒトと比較して低いとされる。したがって、キマーゼによるアンジオテンシンII産生が比較的ヒトに近いとされるハムスターを実験動物として用い、キマーゼによるアンジオテンシンII産生経路の寄与を検討してきた。さらに、ヒトキマーゼ遺伝子をマウス受精卵に移入することによりヒトキマーゼ過剰発現マウスを作成し、このヒト型のキマーゼを産生する遺伝子組み換え動物により、その循環器系疾患に対する作用を検討してきた。
本発明者らは、これら先進的な研究結果に基づき、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤を同時に投与することによって、循環器系疾患において極めて有効な治療薬となりうることを見出した。
すなわち、本発明は、キマーゼ阻害剤及びACE阻害剤を有効成分として含有する薬剤あるいはキマーゼ阻害剤及びACE阻害剤を投与することによる予防方法又は治療方法である。
また本発明は、キマーゼ阻害剤及びACE阻害剤を有効成分として含有する循環器疾患の予防剤又は治療剤あるいはキマーゼ阻害剤及びACE阻害剤を投与することによる循環器系疾患の予防方法又は治療方法である。
さらに本発明は、前記循環器系疾患が、高血圧症、心臓病、脳卒中、血管障害、動脈硬化、腎炎、又は腎不全である治療剤又は治療法である。
さらに本発明は、前記心臓病が、心肥大、心不全、又は心筋梗塞である循環器系疾患治療剤又は治療法である。
さらに本発明は、キマーゼ阻害剤及びACE阻害剤を有効成分として含有するアンジオテンシンIIの産生抑制剤あるいはキマーゼ阻害剤及びACE阻害剤を投与することによるアンジオテンシンIIの産生抑制方法である。
本発明は、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤を有効成分として含有する薬剤、循環器系疾患治療剤、又はアンジオテンシンIIの産生抑制剤、あるいはキマーゼ阻害剤とACE阻害剤を投与する治療法、循環器系疾患治療方法、又はアンジオテンシンIIの産生抑制方法である。
本発明においては、キマーゼ阻害剤を第1有効成分として、ACE阻害剤を第2有効成分として用いる。
ACE阻害剤は、既に高血圧などの循環器疾患で有用性が確かめられている薬剤である。キマーゼ阻害剤は、局所アンジオテンシンIIの産生を抑制することによって心筋梗塞の予後等に有効であることが、本発明において確かめられている。従って、キマーゼ阻害剤単独でも、循環器系疾患の薬剤やアンジオテンシンIIの産生抑制剤として有用である。更に、本発明は、ACE阻害剤とキマーゼ阻害剤を併用して用いることにより、ACE阻害剤又はキマーゼ阻害剤を単独で用いるのに比べ、組織局所のアンジオテンシンIIの産生を完全に抑制し、ACE阻害剤のブラジキニン分解抑制などの作用を維持し、且つ、キマーゼの媒介する様々な生理作用を抑制することにより、相乗的な治療効果を発揮し、循環器系疾患治療やアンジオテンシンII産生抑制等に効果的である。
ACE阻害剤は、既に高血圧などの循環器疾患で有用性が確かめられている薬剤である。キマーゼ阻害剤は、局所アンジオテンシンIIの産生を抑制することによって心筋梗塞の予後等に有効であることが、本発明において確かめられている。従って、キマーゼ阻害剤単独でも、循環器系疾患の薬剤やアンジオテンシンIIの産生抑制剤として有用である。更に、本発明は、ACE阻害剤とキマーゼ阻害剤を併用して用いることにより、ACE阻害剤又はキマーゼ阻害剤を単独で用いるのに比べ、組織局所のアンジオテンシンIIの産生を完全に抑制し、ACE阻害剤のブラジキニン分解抑制などの作用を維持し、且つ、キマーゼの媒介する様々な生理作用を抑制することにより、相乗的な治療効果を発揮し、循環器系疾患治療やアンジオテンシンII産生抑制等に効果的である。
本発明における薬剤は、キマーゼ阻害剤及びACE阻害剤を同時にあるいは時間を置いて別々に投与する薬剤である。
本発明における薬剤は、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤を有効成分として含有していればよく、どのような形態の薬剤であっても構わない。本発明における薬剤の形態としては、例えば、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤を主成分とする合剤であってもよく、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤が合剤でなく独立した薬剤としてのそれぞれの単剤であってもよく、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤が配合された形態であれば、特に限定されない。ここで、合剤とは、単一の製剤に2つ以上の有効成分を配合したものを指し、単剤とは単一の製剤に単一の特定の有効成分を含むものを指す。
本発明における薬剤は、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤を有効成分として含有していればよく、どのような形態の薬剤であっても構わない。本発明における薬剤の形態としては、例えば、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤を主成分とする合剤であってもよく、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤が合剤でなく独立した薬剤としてのそれぞれの単剤であってもよく、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤が配合された形態であれば、特に限定されない。ここで、合剤とは、単一の製剤に2つ以上の有効成分を配合したものを指し、単剤とは単一の製剤に単一の特定の有効成分を含むものを指す。
キマーゼ阻害剤とACE阻害剤の配合剤としては、例えば、キマーゼ阻害剤の有効成分とACE阻害剤の有効成分のそれぞれの剤の効果が発揮できる適当量を合わせて、錠剤、カプセル剤、液剤などの剤形を製造する。このときキマーゼ阻害剤とACE阻害剤を合わせて配合剤とするタイミングは、合剤として剤型の製造段階で行ってもよいし、投与する直前に配合するものであってもよい。製造段階で行う場合には、例えばキマーゼ阻害剤とACE阻害剤のそれぞれの成分を適当量混合して、成型したり、詰め合わせたりすればよい。成型する方法としては、例えば、それぞれの剤を混合してもよいし、層状に積み重ねてもよく、特に限定されない。投与する直前に配合剤とする場合は、例えば投与直前までは、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤はそれぞれ独立の状態で保存され、投与する時に、液体状の剤を混合したり、液体状の剤に錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、又はカプセル剤等の固体の剤を溶かしたり、顆粒剤又は散剤等の固体の剤同士を混合したりする方法がある。直前に混合するための方法としては、手作業で行ってもよいし、切断したり、引いたり、裂いたり、引き抜く等して、簡単に両剤が混ざるようなパッケージのものを使用してもよい。配合剤の形態としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、又はカプセル剤等の剤型がある。
キマーゼ阻害剤とACE阻害剤が、それぞれ独立した単剤である薬剤とは、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤で、それぞれ単一に利用できる単剤を、組み合わせて利用する薬剤である。それぞれの剤の形態は、固体又は液体同士でもよいし、固体と液体でも良いし、特に限定されない。
本発明におけるキマーゼ阻害剤とACE阻害剤がキットの形態にあるとは、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤が容易に準備されるように、一式として揃えられた状態にある形態をいう。キットの形態とは例えば、剤の製造終了段階でPTPやブリスターパック等で同一のパッケージがされたり、病院や薬局等で処方されるときに同一の袋に入れられたりしてもよく、特に限定されない。
また、本発明における予防方法又は治療方法は、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤の両剤を投与する方法であればよく、投与方法は特に限定されない。本発明における方法は、また、キマーゼ阻害剤及びACE阻害剤を同時にあるいは時間を置いて別々に投与する方法である。
本発明のキマーゼ阻害剤及びACE阻害剤を投与する方法としては、例えば、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤との合剤を投与する方法、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤の独立した単剤を準備して投与する方法、又はキマーゼ阻害剤とACE阻害剤とを配合したものを投与する方法等がある。
また本発明のキマーゼ阻害剤及びACE阻害剤は、投与時が同時でも良いし、同時でなく別々でも良い。投与時が同時でない場合は、例えば、互いに交互に投与してもよいし、一方の剤を続けて投与した後に、他方の剤を投与してもよい。また、投与回数についても、両者が同じであっても、異なっていてもよい。
投与方法としては、両者とも経口又は非経口であってもよいし、一方が経口で他方が非経口であってもよい。
投与方法としては、両者とも経口又は非経口であってもよいし、一方が経口で他方が非経口であってもよい。
本発明におけるキマーゼ阻害剤のなかで、式(I)で表されるベンズイミダゾール誘導体は、製薬学的に許容される担体とともに医薬組成物として、該医薬組成物を種々の剤型に成型して経口あるいは非経口によって、ACE阻害剤を含む医薬品組成物と別に投与されることが好ましい。あるいはまた、適当なACE阻害剤との合剤又は配合剤を作製し、経口あるいは非経口投与されることが好ましい。
本発明において、キマーゼ阻害剤と併用するACE阻害剤の投与方法および投与量は、疾患の種類、投与経路、患者の症状、年齢、性別、体重等により異なるが、幾つかの方法を用いることができる。例えば、ACE阻害剤とキマーゼ阻害剤の合剤を製造し、同時内服投与することができる。例えば、ACE阻害剤として塩酸テモカプリルを用いる場合は1−4mgの塩酸テモカプリルおよび1−10mgのキマーゼ阻害剤を使用した合剤を製造し、経口にて内服投与することができる。あるいは、ACE阻害剤とキマーゼ阻害剤を別々の錠剤にて製造し、それぞれ投与することも可能である。用法としては同時に内服することが望ましいが、症状や疾患状態に合わせ、それぞれの薬剤を独立に投与量を調整することも可能である。
本発明の医薬組成物の剤型としては、以下のようなものが挙げられる。例えば経口投与剤の場合は、錠剤、丸剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、シロップ剤、又はカプセル剤等の剤型が挙げられる。
ここで、錠剤の成型方法としては、賦形剤、結合剤、及び/又は崩壊剤等の製薬学的に許容される担体を用いて通常の方法により成型することができる。丸剤、顆粒剤、又は散剤も錠剤の場合と同様に賦形剤等を用いて通常の方法により成型することができる。液剤、懸濁剤、又はシロップ剤の成型方法は、グリセリンエステル類、アルコール類、水、及び/又は植物油等を用いて通常の方法により成型することができる。カプセル剤の成型方法は、顆粒剤、散剤、あるいは液剤等を、ゼラチン等のカプセルに充填することによって成型することができる。
本発明で用いられるキマーゼ阻害剤としては、上述したWO01/53291号明細書、WO01/53272号明細書、WO00/03997号明細書で開示された下記式(I)で表されるベンズイミダゾール誘導体またはその医学上許容される塩を用いることが好ましい。
[式(I)中、R1およびR2は、同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、トリハロメチル基、シアノ基、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、またはR1およびR2は一緒になって−O−CH2−O−、−O−CH2CH2−O−、もしくは−CH2CH2CH2−(−O−CH2−O−、−O−CH2CH2−O−、もしくは−CH2CH2CH2−の場合、その炭素原子は1つもしくは複数の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。)を表す。;
Aは、置換もしくは無置換の炭素数1〜7の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキレン基またはアルケニレン基を表し、途中に−O−、−S−、−SO2−、−NR3−(ここで、R3は水素原子または直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を一つもしくは複数個含んでいてもよい。これらの基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルチオ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、アルキレン基またはアルケニレン基の任意の場所で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。;
Eは、−COOR3、−SO3R3、−CONHR3、−SO2NHR3、テトラゾール−5−イル基、5−オキソ−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル基、または5−オキソ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル基(ここで、R3は前記定義に同じである。)を表す。;
Gは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6の直鎖または分岐状のアルキレン基を表し、途中に−O−、−S−、−SO2−、−NR3−(ここで、R3は前記定義に同じである。これらの原子あるいは原子団が含まれる場合は、それらは直接ベンズイミダゾール環に結合することはない。)を一つもしくは複数個含んでいてもよい。かかるアルキレン基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、またはオキソ基である。;
Mは、単結合または−S(O)m−を表し、mは0〜2の整数である。;
Jは、置換もしくは無置換の、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子からなる群から選ばれたひとつ以上のヘテロ原子を環上にもつ炭素数4〜10のヘテロアリール基を表す。ただし、ピリジン環は除く。かかるヘテロアリール基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルチオ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、置換もしくは無置換のアニリド基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、COOR3基(ここで、R3は前記定義に同じである。)、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、環の任意の位置で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。;またJは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数4〜10のアリール基{これらの基がもちうる置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、−COOR4(ここで、R4は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)、直鎖、環状、もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルチオ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、アルキレン基またはアリール基の任意の場所で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。また、これらの置換基は、さらにハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アシル基、トリハロメチル基、フェニル基、オキソ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基で置換されていてもよい。}を表す。;
Xは、メチン(−CH=)または窒素原子を表す。]
Aは、置換もしくは無置換の炭素数1〜7の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキレン基またはアルケニレン基を表し、途中に−O−、−S−、−SO2−、−NR3−(ここで、R3は水素原子または直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を一つもしくは複数個含んでいてもよい。これらの基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルチオ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、アルキレン基またはアルケニレン基の任意の場所で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。;
Eは、−COOR3、−SO3R3、−CONHR3、−SO2NHR3、テトラゾール−5−イル基、5−オキソ−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル基、または5−オキソ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル基(ここで、R3は前記定義に同じである。)を表す。;
Gは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6の直鎖または分岐状のアルキレン基を表し、途中に−O−、−S−、−SO2−、−NR3−(ここで、R3は前記定義に同じである。これらの原子あるいは原子団が含まれる場合は、それらは直接ベンズイミダゾール環に結合することはない。)を一つもしくは複数個含んでいてもよい。かかるアルキレン基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、またはオキソ基である。;
Mは、単結合または−S(O)m−を表し、mは0〜2の整数である。;
Jは、置換もしくは無置換の、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子からなる群から選ばれたひとつ以上のヘテロ原子を環上にもつ炭素数4〜10のヘテロアリール基を表す。ただし、ピリジン環は除く。かかるヘテロアリール基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルチオ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、置換もしくは無置換のアニリド基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、COOR3基(ここで、R3は前記定義に同じである。)、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、環の任意の位置で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。;またJは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数4〜10のアリール基{これらの基がもちうる置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、−COOR4(ここで、R4は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)、直鎖、環状、もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルチオ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、アルキレン基またはアリール基の任意の場所で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。また、これらの置換基は、さらにハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アシル基、トリハロメチル基、フェニル基、オキソ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基で置換されていてもよい。}を表す。;
Xは、メチン(−CH=)または窒素原子を表す。]
かかる式(I)で表される化合物のなかでも好ましいものを以下に述べる。
R1およびR2は、同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、トリハロメチル基、シアノ基、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、またはR1およびR2は一緒になって−O−CH2−O−、−O−CH2CH2−O−、もしくは−CH2CH2CH2−を表す。この場合、その炭素原子は1つもしくは複数の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。
R1およびR2は、同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、トリハロメチル基、シアノ基、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基、またはR1およびR2は一緒になって−O−CH2−O−、−O−CH2CH2−O−、もしくは−CH2CH2CH2−を表す。この場合、その炭素原子は1つもしくは複数の炭素数1〜4のアルキル基で置換されていてもよい。
R1およびR2の炭素数1〜4のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、(n−,i−,s−,t−)ブチル基を挙げることができる。より好ましくはメチル基を挙げることができる。炭素数1〜4のアルコキシ基としては、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、(n−,i−)プロピルオキシ基、(n−,i−,s−,t−)ブチルオキシ基を挙げることができる。
R1およびR2の好ましい基としては、水素原子、ハロゲン原子、トリハロメチル基、シアノ基、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基を挙げることができる。さらには水素原子、ハロゲン原子、トリハロメチル基、シアノ基、炭素数1〜4のアルキル基、又は炭素数1〜4のアルコキシ基が好ましく、水素原子、塩素原子、フッ素原子、トリフルオロメチル基、メチル基、メトキシ基、又はエトキシ基がより好ましく、特に水素原子、メチル基、メトキシ基、又はエトキシ基が好ましい。
Aは、置換もしくは無置換の炭素数1〜7の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキレン基またはアルケニレン基を表す。かかる無置換の炭素数1〜7の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、(n−,i−)プロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、(n−,i−,t−)ブチレン基、1,1−ジメチルブチレン基、n−ペンチレン基、又はシクロヘキシレン基等を挙げることができる。好ましくはエチレン基、n−プロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、又は(n−,t−)ブチレン基が挙げられる。さらに好ましくは、n−プロピレン基又は2,2−ジメチルプロピレン基が挙げられる。特に好ましくは、n−プロピレン基を挙げることができる。
無置換の炭素数1〜7の直鎖もしくは分岐状のアルケニレン基としては、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、又はペンテニレン基等を挙げることができる。かかるアルキレン基またはアルケニレン基は、途中に−O−、−S−、−SO2−、−NR3−(ここで、R3は水素原子または直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を一つもしくは複数個含んでいてもよいが、これらの原子または原子団が、直接Mに結合することはない。具体的には、エチレン基、n−プロピレン基、又は(n−,t−)ブチレン基の間に挟まれた基があげられる。さらに具体的には−CH2OCH2−、−CH2OCH2CH2−、−CH2SCH2−、−CH2SCH2CH2−、−CH2SO2CH2−、−CH2SO2CH2CH2−、−CH2NR4CH2−、又は−CH2NR4CH2CH2−等が挙げられる。好ましくは−CH2OCH2−、−CH2SCH2−、又は−CH2SO2CH2−が挙げられる。
かかるアルキレン基又はアルケニレン基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルチオ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、アルキレン基またはアルケニレン基の任意の位置で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。
Aの置換基のハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。好ましくは、フッ素原子又は塩素原子を挙げることができる。
Aの置換基の直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、又は(n−,i−,s−,t−)ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基を挙げることができる。さらに好ましくはメチル基を挙げることができる。
Aの置換基の直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基としては、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、(n−,i−)プロピルオキシ基、又は(n−,i−,s−,t−)ブチルオキシ基等が挙げられ、好ましくはメトキシ基又はエトキシ基を挙げることができる。さらに好ましくはメトキシ基を挙げることができる。
Aの置換基の直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルチオ基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、(n−,i−)プロピルチオ基、又は(n−,i−,s−,t−)ブチルチオ基等が挙げられ、好ましくはメチルチオ基又はエチルチオ基を挙げることができる。さらに好ましくはメチルチオ基を挙げることができる。
Aの置換基の直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基としては、具体的にはメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、(n−,i−)プロピルスルホニル基、又は(n−,i−,s−,t−)ブチルスルホニル基等が挙げられ、好ましくはメチルスルホニル基又はエチルスルホニル基を挙げることができる。さらに好ましくはメチルスルホニル基を挙げることができる。
Aの置換基の直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基としては、アセチル基、エチルカルボニル基、(n−,i−)プロピルカルボニル基、(n−,i−,s−,t−)カルボニル基等が挙げられ、好ましくはアセチル基又はエチルカルボニル基を挙げることができる。さらに好ましくはアセチル基を挙げることができる。
Aの置換基の直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基としては、具体的にはアセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、(n−,i−)プロピルカルボニルアミノ基、又は(n−,i−,s−,t−)カルボニルアミノ基等が挙げられ、好ましくはアセチルアミノ基又はエチルカルボニルアミノ基を挙げることができる。さらに好ましくはアセチルアミノ基を挙げることができる。
Aの置換基のトリハロメチル基としては、具体的にはトリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、又はトリクロロメチル基が挙げることができる。好ましくはトリフルオロメチル基を挙げることができる。
なかでも、Aとして好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数1〜7の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキレン基{途中に−O−、−S−、−SO2−、−NR3−(ここで、R3は前記定義に同じである。)を一つもしくは複数個含んでいてもよいが、これらの原子または原子団が直接Mに結合することはない。}が挙げられる。好ましくは−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2C(=O)CH2−、−CH2OCH2−、−CH2SCH2−、−CH2S(=O)CH2−、−CH2CF2CH2−、−CH2SO2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2C(CH3)2CH2−、−CH2SO2CH2CH2−、−CH2C(=O)CH2CH2−、−CH2C(=O)(CH3)2CH2−、又は−CH2C(=O)C(=O)CH2−等が挙げられる。より好ましくは−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2C(=O)CH2−、−CH2OCH2−、−CH2SCH2−、−CH2S(=O)CH2−、−CH2CF2CH2−、−CH2SO2CH2−、又は−CH2C(CH3)2CH2−が挙げられる。さらに好ましくは−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、又は−CH2C(CH3)2CH2−を挙げることができる。特に好ましくは−CH2CH2CH2−を挙げることができる。
Eは、−COOR3、−SO3R3、−CONHR3、−SO2NHR3、テトラゾール−5−イル基、5−オキソ−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル基、または5−オキソ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル基を表す(ここで、R3は水素原子または直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基を表す。)。
かかるR3としては、水素原子、メチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、又は(n−,i−,s−,t−)ブチル基等が挙げられる。好ましくは、水素原子、メチル基、又はエチル基が挙げられる。特に好ましくは水素原子が挙げられる。
なかでも、Eとして好ましくは、−COOR3、−SO3R3、又はテトラゾール−5−イル基が挙げられる。さらに好ましくは−COOR3を挙げることができる。特に好ましくは−COOHを挙げることができる。
Gは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6の直鎖または分岐状のアルキレン基を表し、途中に−O−、−S−、−SO2−、又は−NR3−を一つあるいは複数個含んでもよい。ここで、R3は上記定義に同じである。また、これらのヘテロ原子あるいは原子団が含まれる場合は、これら原子あるいは原子団は、直接ベンズイミダゾール環には結合しない。かかるアルキレン基がもちうる置換基はハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基またはオキソ基である。具体的には、例えば−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CO−、−CH2CH2O−、−CH2CONH−、−CO−、−SO2−、−CH2SO2−、−CH2S−、又は−CH2CH2S−等が挙げられ、好ましいものとしては−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CO−、又は−CH2CH2O−を挙げることができる。さらに好ましくは−CH2−又は−CH2CH2−を挙げることができ、特に−CH2−が好ましい。ただし、ここに挙げられている基は左側がベンズイミダゾールの1位(N原子)と結合しており、右側がJと結合している。
Mは単結合または−S(O)m−を表し、mは0〜2の整数を表す。好ましくは−S−または−SO2−を挙げることができる。特に好ましくは−S−を挙げることができる。
JはJ1またはJ2で表される。
J1は、置換もしくは無置換の(酸素原子、窒素原子、および硫黄原子からなる群から選ばれたひとつ以上のヘテロ原子を環上にもつ炭素数4〜10のヘテロアリール基)を表す。ただし、ピリジン環は除く。J2は、置換もしくは無置換の炭素数1〜6の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数4〜10のアリール基を表す。これらは化学的に合成可能なものに限られる。
J1は、置換もしくは無置換の(酸素原子、窒素原子、および硫黄原子からなる群から選ばれたひとつ以上のヘテロ原子を環上にもつ炭素数4〜10のヘテロアリール基)を表す。ただし、ピリジン環は除く。J2は、置換もしくは無置換の炭素数1〜6の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数4〜10のアリール基を表す。これらは化学的に合成可能なものに限られる。
J1の無置換の(酸素原子、窒素原子、および硫黄原子からなる群から選ばれた一つ以上のヘテロ原子を環上にもつ炭素数4〜10のヘテロアリール基)としては、具体的には、フリル基、チエニル基、チアゾリル基、ピリミジニル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、ベンゾフリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、インドリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、又はベンゾイソオキサゾリル基等を挙げることができる。好ましくは2環式のヘテロ芳香環、さらに好ましくはベンゾフリル基、ベンゾイミダゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、ベンゾオキサジアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、インドリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾチエニル基、又はベンゾイソオキサゾリル基が挙げられ、特に好ましくはベンゾチエニル基又はインドリル基を挙げることができる。
かかるヘテロアリール基あるいはアリール基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルチオ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、置換もしくは無置換のアニリド基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、環の任意の位置で一つあるいは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。
J1の置換基であるハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。好ましくはフッ素原子又は塩素原子を挙げることができる。
J1の置換基である直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、又は(n−,i−,s−,t−)ブチル基等が挙げられ、好ましくはメチル基又はエチル基を挙げることができる。さらに好ましくはメチル基を挙げることができる。
J1の置換基である直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基としては、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、(n−,i−)プロピルオキシ基、(n−,i−,s−,t−)ブチルオキシ基、又はメチレンジオキシ基等が挙げられ、好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基を挙げることができる。さらに好ましくはメトキシ基を挙げることができる。
J1の置換基である直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルチオ基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、(n−,i−)プロピルチオ基、又は(n−,i−,s−,t−)ブチルチオ基等が挙げられ、好ましくはメチルチオ基又はエチルチオ基を挙げることができる。さらに好ましくはメチルチオ基を挙げることができる。
J1の置換基である直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルホニル基としては、具体的にはメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、(n−,i−)プロピルスルホニル基、又は(n−,i−,s−,t−)ブチルスルホニル基等が挙げられ、好ましくはメチルスルホニル基又はエチルスルホニル基を挙げることができる。さらに好ましくはメチルスルホニル基を挙げることができる。
J1の置換基である直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基としては、アセチル基、エチルカルボニル基、(n−,i−)プロピルカルボニル基、又は(n−,i−,s−,t−)カルボニル基等が挙げられ、好ましくはアセチル基又はエチルカルボニル基を挙げることができる。さらに好ましくはアセチル基を挙げることができる。
J1の置換基である直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基としては、具体的にはアセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、(n−,i−)プロピルカルボニルアミノ基、又は(n−,i−,s−,t−)カルボニルアミノ基等が挙げられ、好ましくはアセチルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基を挙げることができる。さらに好ましくはアセチルアミノ基を挙げることができる。
J1の置換基であるトリハロメチル基としては、具体的にはトリフルオロメチル基、トリブロモメチル基、又はトリクロロメチル基を挙げることができる。
J2は置換もしくは無置換の炭素数1〜6の直鎖、環状または分岐状のアルキル基、或いは置換もしくは無置換の炭素数4〜10のアリール基を表す。無置換の炭素数1〜6の直鎖、環状または分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、(n−,i−)プロピル基、(n−,i−,s−,t−)ブチル基、シクロペンチル基、又はシクロヘキシル基等が挙げられる。
J2の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、−COOR4(R4は、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)、直鎖、環状もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基(この場合置換基としては、お互い隣接する部位でアセタール結合していてもよい。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルチオ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルフィニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基を表す。これらの置換基はアルキル基またはアリール基の任意の場所で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。これらの置換基はさらにハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アシル基、トリハロメチル基、フェニル基、オキソ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基で置換されていてもよい。
なかでも、J2として好ましくは、置換もしくは無置換の炭素数4〜10のアリール基が挙げられる。具体的には次式(XII)、(XIII)
[ここで、X2、X3、およびX4は、同一であっても相異なっていてもよく、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、COOR4(ここで、R4は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)、置換もしくは無置換の炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐状のアルコキシ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐状のアルキルチオ基、置換もしくは無置換の炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルホニル基、又は置換もしくは無置換の炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜3のアルキルスルフィニル基を表す。X2、X3、およびX4のベンゼン環もしくはナフタレン環上の置換位置は限定されない。]
で表される基が好ましい。
で表される基が好ましい。
J2の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。好ましくは、フッ素原子又は塩素原子が挙げられる。トリハロメチル基としては、トリフルオロメチル基が好ましい。トリハロメトキシ基としては、トリフルオロメトキシ基が好ましい。無置換の炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐状のアルキル基としては、具体的にはメチル基、エチル基、又は(n−,i−)プロピル基が挙げられる。無置換の炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐状のアルコキシ基としては、具体的にはメトキシ基、エトキシ基、又は(n−,i−)プロピルオキシ基等が挙げられる。無置換の炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐状のアルキルチオ基としては、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、又は(n−,i−)プロピルチオ基等が挙げられる。無置換の炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルホニル基としては、具体的にはメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、又は(n−,i−)プロピルスルホニル基等が挙げられる。無置換の炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルフィニル基としては、具体的にはメチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、又は(n−,i−)プロピルスルフィニル基等が挙げられる。
これらJ2の置換基はさらに、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アシル基、トリハロメチル基、フェニル基、オキソ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基で置換されていてもよい。
式(XII)、(XIII)のX2、X3、およびX4の置換位置については、特に限定されないが、より好ましくは式(XII)においては、(2位、3位)の組み合わせ、もしくは(2位、5位)の組み合わせである。式(XIII)においては、(4位、7位、8位)、(4位、6位、8位)、もしくは(6位、7位、8位)の組み合わせが好ましい。
なかでも、J2として好ましくは、2−メチルフェニル基、2−エチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、2−エトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−クロロフェニル基、2−トリフルオロフェニル基、2,3−メチレンジオキシフェニル基、2−メチル−3−メトキシフェニル基、2−トリフルオロメチル−3−メトキシフェニル基、2−メチル−3−トリフルオロメトキシフェニル基、2,3−ジメチルフェニル基、2,3−ジクロロフェニル基、2,3−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメトキシフェニル基、2,5−ジメチルフェニル基、2,5−ジクロロフェニル基、2,5−ジトリフルオロメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、8−メチル−1−ナフチル基、7−メチル−1−ナフチル基、6,8−ジメチル−1−ナフチル基、又は4,6,8−トリメチル−1−ナフチル基等を挙げることができる。
式(I)におけるXは、−CH=または窒素原子を表し、好ましくは−CH=を挙げることができる。
式(I)で表される化合物として好ましいものは、好ましいものとして前述したそれぞれの基を組み合わせて構成される各種化合物群である。限定する意図ではないが、なかでも表1に記載されたものが好ましい。この表1中で特に好ましいものとしては、化合物番号2、6、7、9、10、20、22、24、26、27、31、33、43、45、56、60、62、92、128、164、182、187、189、201、202、204、206、240、又は242の化合物である。
なお、表1中のA1およびJ1〜J36は次式で表される基である。J1〜J36の「−」の端で何も記載されていない部分では「−CH3」が省略されている。
式中、E、G、M、m、およびXは前記定義に同じであるが、ここでは特にEがCOOH、GがCH2、MがS(mは0)または単結合(表中では−と表記)、Xが−CH=であるものに代表させて記載してあるが、それらに限定する趣旨ではない。
式中、E、G、M、m、およびXは前記定義に同じであるが、ここでは特にEがCOOH、GがCH2、MがS(mは0)または単結合(表中では−と表記)、Xが−CH=であるものに代表させて記載してあるが、それらに限定する趣旨ではない。
本発明で用いるキマーゼ阻害剤は、ヒトキマーゼ活性を強く阻害するものである。具体的には、IC50が1000nM以下が好ましく、より好ましくは0.01nM以上1000nM未満、さらにより好ましくは0.05nM以上500nM未満である。このような優れたヒトキマーゼ阻害活性を有する薬剤はACE阻害剤との併用によって、種々の循環器系疾患に対する臨床応用可能な予防剤および/または治療剤として使用することができる。
本発明においてキマーゼ阻害剤と共に使用するACE阻害剤としては、特に限定されるものではない。ACE阻害剤として、既に臨床応用されその使用法、安全性が確立されているものが多くある。例えば、アラセプリル、塩酸イミダプリル、塩酸キナプリル、塩酸テモカプリル、塩酸デラプリル、塩酸ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル、トランドラプリル、ペリンドプリルエルブミン、マレイン酸エナラプリル、又はリシノプリルなどが挙げられる。これらいずれのACE阻害剤も本発明において用いることができるが、特に好ましくは、カプトプリル、塩酸テモカプリル、マレイン酸エナラプリル、又はリシノプリルが挙げられる。もっとも、安全性および有効性の高いACE阻害剤であればよく、これらの例に限られない。
本発明を以下に実施例によって具体的に説明する。しかし、本発明の範囲はこれらの実施例によっていかなる意味においても制限されない。
実施例1 組換えヒトマストセルキマーゼの調製
組換えプロ型ヒトマストセルキマーゼは、浦田らの報告(ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー第266巻、17173頁(1991年))に従って調製した。すなわちヒトマストセルキマーゼをコードするcDNAを含有する組換えバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞(Th5)の培養液上清から、ヘパリンセファロース(ファルマシア)により精製した。さらに村上らの報告(ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー第270巻、2218頁(1995年))に従ってヒトマストセルキマーゼを活性化した後、ヘパリンセファロースで精製して活性型ヒトマストセルキマーゼを得た。
組換えプロ型ヒトマストセルキマーゼは、浦田らの報告(ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー第266巻、17173頁(1991年))に従って調製した。すなわちヒトマストセルキマーゼをコードするcDNAを含有する組換えバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞(Th5)の培養液上清から、ヘパリンセファロース(ファルマシア)により精製した。さらに村上らの報告(ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー第270巻、2218頁(1995年))に従ってヒトマストセルキマーゼを活性化した後、ヘパリンセファロースで精製して活性型ヒトマストセルキマーゼを得た。
実施例2 組換えヒトマストセルキマーゼの酵素活性阻害測定
実施例1で得られた1〜5ngの活性型ヒトマストセルキマーゼを含む50μlのバッファーA(0.5〜3.0M NaCl、50mM トリス塩酸、pH8.0)に本発明の化合物を含むDMSO溶液2μlを加えた後、基質として0.5mM スクシニル−アラニル−ヒスチジル−プロリル−フェニルアラニルパラニトロアニリド(バッケム社)を含む50μlのバッファーAを加え、室温にて5分間反応させた。405nmの吸光度の経時変化を測定し、阻害活性を調べた。
実施例1で得られた1〜5ngの活性型ヒトマストセルキマーゼを含む50μlのバッファーA(0.5〜3.0M NaCl、50mM トリス塩酸、pH8.0)に本発明の化合物を含むDMSO溶液2μlを加えた後、基質として0.5mM スクシニル−アラニル−ヒスチジル−プロリル−フェニルアラニルパラニトロアニリド(バッケム社)を含む50μlのバッファーAを加え、室温にて5分間反応させた。405nmの吸光度の経時変化を測定し、阻害活性を調べた。
その結果、化合物番号24、26、27、31、33、56、62、187、200、202、204、206、240、および242の化合物にIC50=1nM以上10nM未満、化合物番号2、6、9、10、20、22、43、45、60、62、92、128、164、182、および189の化合物にIC50=10nM以上100nM以下の阻害活性を認めた。
以上のように本発明で用いるキマーゼ阻害剤のベンズイミダゾール誘導体は、強いキマーゼ阻害活性を示す。したがって、本発明で用いるキマーゼ阻害剤のベンズイミダゾール誘導体は、ヒトキマーゼが関与する各種疾患の予防および/または治療に用いられる臨床応用可能なヒトキマーゼ活性阻害物質であることが明らかとなった。
実施例3 ハムスターキマーゼを用いたキマーゼ阻害活性の測定
ハムスターキマーゼはハムスター舌組織から酸性緩衝液によって抽出した粗精製物をフェニル−セファロースカラム(溶出:0.15MNaCl、50mM リン酸ナトリウム、pH6.5、50%エチレングリコール)およびヘパリンセルロファインカラム(溶出:0.5−2.0MNaCl)を用いて精製したものを用いた。N末端アミノ酸配列により、ハムスターキマーゼ−1であることを確認し、ヒトキマーゼと同様の方法によって阻害活性を測定した。ヒトキマーゼに対して阻害活性を有する化合物はいずれもハムスターキマーゼに対して阻害活性を見出した。表2に代表的な実験結果として化合物番号33に関するハムスターキマーゼの阻害定数を示す。
ハムスターキマーゼはハムスター舌組織から酸性緩衝液によって抽出した粗精製物をフェニル−セファロースカラム(溶出:0.15MNaCl、50mM リン酸ナトリウム、pH6.5、50%エチレングリコール)およびヘパリンセルロファインカラム(溶出:0.5−2.0MNaCl)を用いて精製したものを用いた。N末端アミノ酸配列により、ハムスターキマーゼ−1であることを確認し、ヒトキマーゼと同様の方法によって阻害活性を測定した。ヒトキマーゼに対して阻害活性を有する化合物はいずれもハムスターキマーゼに対して阻害活性を見出した。表2に代表的な実験結果として化合物番号33に関するハムスターキマーゼの阻害定数を示す。
以上の結果から、本発明で用いられているヒトキマーゼ阻害剤は酵素選択性が高く、医薬品として極めて安全性が高い化合物であることが示された。
実施例4 錠剤の製造
1錠が次の組成からなる錠剤を製造した。
化合物(化合物番号33) 5mg
塩酸テモカプリル 1mg
乳糖 230mg
じゃがいもデンプン 80mg
ポリビニルピロリドン 11mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
1錠が次の組成からなる錠剤を製造した。
化合物(化合物番号33) 5mg
塩酸テモカプリル 1mg
乳糖 230mg
じゃがいもデンプン 80mg
ポリビニルピロリドン 11mg
ステアリン酸マグネシウム 5mg
化合物番号33の化合物、塩酸テモカプリル、乳糖、およびジャガイモデンプンを混合し、これをポリビニルピロリドンの20%エタノール溶液で均等に湿潤させ、20メッシュのふるいを通し、45℃で乾燥させ、再度15メッシュを通した。こうして得られた顆粒をステアリン酸マグネシウムと混和して錠剤に圧縮した。
実施例5 ハムスターを用いたキマーゼ阻害剤の経口投与による薬物血中濃度測定
化合物番号33で表されるキマーゼ阻害剤を0.1%(w/w)の配合比になるようにMF粉末飼料に混合したハムスター餌を調製し、ハムスターに5日間与えた。その後、エーテル麻酔下にて腹部大動脈より採血し、血清を採取し、血清中の化合物濃度を高速液体クロマトグラフィーにて測定した。
その結果、化合物番号33で表されるキマーゼ阻害剤のハムスター血清中未変化体濃度は7.89±1.09μM(Mean±S.E.、N=4)となり、阻害活性強度と比較して十分な薬物血中濃度を示すことが明らかとなった。
化合物番号33で表されるキマーゼ阻害剤を0.1%(w/w)の配合比になるようにMF粉末飼料に混合したハムスター餌を調製し、ハムスターに5日間与えた。その後、エーテル麻酔下にて腹部大動脈より採血し、血清を採取し、血清中の化合物濃度を高速液体クロマトグラフィーにて測定した。
その結果、化合物番号33で表されるキマーゼ阻害剤のハムスター血清中未変化体濃度は7.89±1.09μM(Mean±S.E.、N=4)となり、阻害活性強度と比較して十分な薬物血中濃度を示すことが明らかとなった。
実施例6 ハムスターキマーゼ皮内注による血管透過性亢進モデルにおけるキマーゼ阻害剤の作用
化合物番号33で表される化合物を0.1%(w/w)の配合比になるように粉末飼料に混合した餌を5日間ハムスター(Syrian hamster、雄性、7週齢)に与えた。その後、エーテル麻酔下、ハムスター背面を剃毛し、その皮内にハムスターキマーゼを皮内注した(ハムスターキマーゼ;1、0.3、0.1μg/site、およびVehicle;0.15M NaCl、0.1mg/ml BSA、10mM Pi−Na、pH7.0)。予め皮内注直前にエバンスブルー(1%(w/v)溶液、5ml/kg)を静脈より投与しておき、キマーゼ皮内注によって生じる青色のスポットを定量した。すなわち、皮内注30分後に腹部動脈より脱血死させ、ブルーイングスポットを指標に皮膚を採取した。採取した皮膚をガラス試験管に取りEB抽出液(アセトン:0.3%Na2SO4=7:3)2mlにて色素を抽出し、分光光度計により色素漏出量を比色定量した(620nm)。結果を第1図に示す。
化合物番号33で表される化合物を0.1%(w/w)の配合比になるように粉末飼料に混合した餌を5日間ハムスター(Syrian hamster、雄性、7週齢)に与えた。その後、エーテル麻酔下、ハムスター背面を剃毛し、その皮内にハムスターキマーゼを皮内注した(ハムスターキマーゼ;1、0.3、0.1μg/site、およびVehicle;0.15M NaCl、0.1mg/ml BSA、10mM Pi−Na、pH7.0)。予め皮内注直前にエバンスブルー(1%(w/v)溶液、5ml/kg)を静脈より投与しておき、キマーゼ皮内注によって生じる青色のスポットを定量した。すなわち、皮内注30分後に腹部動脈より脱血死させ、ブルーイングスポットを指標に皮膚を採取した。採取した皮膚をガラス試験管に取りEB抽出液(アセトン:0.3%Na2SO4=7:3)2mlにて色素を抽出し、分光光度計により色素漏出量を比色定量した(620nm)。結果を第1図に示す。
予めキマーゼ阻害剤を投与した群ではいずれも漏出色素量の減少が認められた。また、化合物番号33の化合物以外に、本実験系にてイミダゾリジン誘導体(WO96/04248号明細書)の代表的化合物として下記式化合物A(ヒトキマーゼIC50値:9nM)、およびトリアジン誘導体(特開平8−208654号公報)の代表的化合物として下記式化合物B(ヒトキマーゼIC50値:30nM)を用いて同様の実験を実施したが、明確な血管透過性亢進に対する抑制作用は認められなかった。
本検討により、式(I)で示す化合物群は、キマーゼ阻害剤として好ましく、経口投与により生体内でキマーゼ阻害活性を有することが検証された。
実施例7 キマーゼ過剰発現マウスを用いたアンジオテンシン惹起血圧上昇モデルにおけるキマーゼ阻害剤およびACE阻害剤の併用効果
アンジオテンシンII産生機能を有するヒトキマーゼ遺伝子を受精卵に導入して作成したヒトキマーゼ過剰発現マウス(以下TGM)を動物モデルとして用いた。すなわち、8−10週齢のTGMを使用し、マウス皮下に埋め込まれたマイクロオスモテッィクポンプにより、アンジオテンシンIを持続注入することにより(700ng/kg/分)、持続的な高血圧マウスモデルを作成した。TGM(n=6)においては、野生型(n=8)と比較して、アンジオテンシンI持続注入により30mmHg程度の昇圧反応が確認され、同時にキマーゼ阻害剤(化合物番号33、0.1% diet、n=7)、ACE阻害剤(塩酸テモカプリル2.0mg/kg/day、n=6)、アンジオテンシン受容体拮抗剤(ARB)(Valsartan、14mg/kg/day、n=7)およびキマーゼ阻害剤とACE阻害剤の同時投与群(化合物33;0.1% diet、塩酸テモカプリル;2.0mg/kg/day、n=6)における降圧作用を検討した。なお、nとは個体数である。その結果、キマーゼ阻害剤単独およびACE阻害剤単独投与群ではコントロール群と比較して大幅な昇圧効果の抑制を認めず、本動物モデルがACE阻害剤で血圧低下作用が認められにくい高血圧患者と類似のモデルであると推察した。本モデルにおいては同様にキマーゼ阻害剤単独においても昇圧効果の抑制を認められなかったが、ACE阻害剤とキマーゼ阻害剤の併用群においては10日目以降の血圧をほぼ正常値までもどし、統計的に有意な抑制結果を得た(P<0.05)。また、本動物モデルにおいては、持続的な昇圧によって同時に心肥大が起こるが、本モデルにおける心肥大は、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤(n=7)、キマーゼ阻害剤でそれぞれ単独での大幅な抑制は認められなかったが、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤の併用群でのみ統計的に有意な抑制が認められた。
これらの実験結果から、ACE阻害剤およびキマーゼ阻害剤の併用によって初めて、従来の薬剤では有効性を発揮し得ない循環器疾患に有効である可能性を示した。
アンジオテンシンII産生機能を有するヒトキマーゼ遺伝子を受精卵に導入して作成したヒトキマーゼ過剰発現マウス(以下TGM)を動物モデルとして用いた。すなわち、8−10週齢のTGMを使用し、マウス皮下に埋め込まれたマイクロオスモテッィクポンプにより、アンジオテンシンIを持続注入することにより(700ng/kg/分)、持続的な高血圧マウスモデルを作成した。TGM(n=6)においては、野生型(n=8)と比較して、アンジオテンシンI持続注入により30mmHg程度の昇圧反応が確認され、同時にキマーゼ阻害剤(化合物番号33、0.1% diet、n=7)、ACE阻害剤(塩酸テモカプリル2.0mg/kg/day、n=6)、アンジオテンシン受容体拮抗剤(ARB)(Valsartan、14mg/kg/day、n=7)およびキマーゼ阻害剤とACE阻害剤の同時投与群(化合物33;0.1% diet、塩酸テモカプリル;2.0mg/kg/day、n=6)における降圧作用を検討した。なお、nとは個体数である。その結果、キマーゼ阻害剤単独およびACE阻害剤単独投与群ではコントロール群と比較して大幅な昇圧効果の抑制を認めず、本動物モデルがACE阻害剤で血圧低下作用が認められにくい高血圧患者と類似のモデルであると推察した。本モデルにおいては同様にキマーゼ阻害剤単独においても昇圧効果の抑制を認められなかったが、ACE阻害剤とキマーゼ阻害剤の併用群においては10日目以降の血圧をほぼ正常値までもどし、統計的に有意な抑制結果を得た(P<0.05)。また、本動物モデルにおいては、持続的な昇圧によって同時に心肥大が起こるが、本モデルにおける心肥大は、ACE阻害剤、アンジオテンシンII受容体拮抗剤(n=7)、キマーゼ阻害剤でそれぞれ単独での大幅な抑制は認められなかったが、キマーゼ阻害剤とACE阻害剤の併用群でのみ統計的に有意な抑制が認められた。
これらの実験結果から、ACE阻害剤およびキマーゼ阻害剤の併用によって初めて、従来の薬剤では有効性を発揮し得ない循環器疾患に有効である可能性を示した。
実施例8 ハムスター心筋梗塞(MI)モデルにおけるキマーゼ阻害剤およびACE阻害剤との併用効果
8週齢雄シリアンハムスターを用い、ペントバルビタール麻酔下(50mg/kg、i.p.)にて四肢心電図装着および気管内挿管を行い、レスピレーター管理下(volume:10ml/kg、RR:60/分)にて開胸し、起枝部2−3mmにて、Left main coronary artery(LAD)を絹糸による完全結紮を行った。LAD結紮後、35日間、キマーゼ阻害剤(化合物番号33、0.1% diet)、ACE阻害剤(塩酸テモカプリル、10mg/kg/day)、又はアンジオテンシン受容体拮抗剤(オルメサルタン、10mg/kg/day)をそれぞれ単独で投与した群と、ACE阻害剤およびキマーゼ阻害剤を同時投与した群において、生存率および心機能の解析を行った。
8週齢雄シリアンハムスターを用い、ペントバルビタール麻酔下(50mg/kg、i.p.)にて四肢心電図装着および気管内挿管を行い、レスピレーター管理下(volume:10ml/kg、RR:60/分)にて開胸し、起枝部2−3mmにて、Left main coronary artery(LAD)を絹糸による完全結紮を行った。LAD結紮後、35日間、キマーゼ阻害剤(化合物番号33、0.1% diet)、ACE阻害剤(塩酸テモカプリル、10mg/kg/day)、又はアンジオテンシン受容体拮抗剤(オルメサルタン、10mg/kg/day)をそれぞれ単独で投与した群と、ACE阻害剤およびキマーゼ阻害剤を同時投与した群において、生存率および心機能の解析を行った。
その結果を第2図に示す。LAD結紮後30日間の生存率は、偽薬投与群が48%であるのに対してキマーゼ阻害剤、ACE阻害剤、又はアンジオテンシン受容体拮抗剤(ARB)投与群においては60−70%以上の生存率を示し、それぞれの薬剤が単独で心筋梗塞後の予後改善に有効であることを示した。特にキマーゼ阻害剤は単独でも71%程度の生存率を示し、既に臨床においてその効果が実証されているACE阻害剤、アンジオテンシン受容体拮抗剤と同等以上の効果を示すことが確かめられた。更に、ACE阻害剤とキマーゼ阻害剤の併用群においては、これらの単独の薬剤投与群と比較して統計的に有意な生存率の上昇を示した。LAD結紮後2日目以降−35日までの間ではACE阻害剤およびキマーゼ阻害剤の併用投与群に死亡例が発生せず、本実験において臨床でACE阻害剤およびキマーゼ阻害剤を併用することにより、心筋梗塞の治療に対して単剤での有効性と比較しても劇的に高い有効性を示すことが明らかとなった。
本発明のキマーゼ阻害剤とACE阻害剤の併用による薬剤又は治療方法又は予防方法は、循環器系疾患治療剤又は治療法は、心疾患(心肥大、心不全、心筋梗塞など)、脳卒中、PTCA後の再狭窄などの血管障害、動脈硬化、腎不全、腎炎、肺高血圧症における心血管系疾患、一部の高血圧症等の循環器系疾患等に対して効果的である。
Claims (16)
- キマーゼ阻害剤及びACE阻害剤を有効成分として含有する薬剤。
- 前記キマーゼ阻害剤及び前記ACE阻害剤を同時にあるいは時間を置いて別々に投与する請求項1に記載の薬剤。
- 循環器系疾患の予防剤又は治療剤である請求項1又は請求項2に記載の薬剤。
- 前記循環器系疾患が、高血圧症、心臓病、脳卒中、血管障害、動脈硬化、腎炎、又は腎不全である請求項3に記載の薬剤。
- 前記心臓病が、心肥大、心不全、又は心筋梗塞である請求項4に記載の薬剤。
- アンジオテンシンII産生抑制剤である請求項1又は請求項2に記載の薬剤。
- 前記キマーゼ阻害剤と前記ACE阻害剤が、合剤を構成する請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の薬剤。
- 前記キマーゼ阻害剤と前記ACE阻害剤が、それぞれ独立した単剤である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の薬剤。
- 前記キマーゼ阻害剤と前記ACE阻害剤とを含むキットの形態にある請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の薬剤。
- 前記キマーゼ阻害剤が下記式(I)で表される化合物である請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の薬剤。
Aは、置換もしくは無置換の炭素数1〜7の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキレン基またはアルケニレン基を表し、途中に−O−、−S−、−SO2−、−NR3−(ここで、R3は水素原子または直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を一つもしくは複数個含んでいてもよい。これらの基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルチオ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、アルキレン基またはアルケニレン基の任意の場所で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。;
Eは、−COOR3、−SO3R3、−CONHR3、−SO2NHR3、テトラゾール−5−イル基、5−オキソ−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル基、または5−オキソ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル基(ここで、R3は前記定義に同じである。)を表す。;
Gは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6の直鎖または分岐状のアルキレン基を表し、途中に−O−、−S−、−SO2−、−NR3−(ここで、R3は前記定義に同じである。これらの原子あるいは原子団が含まれる場合は、それらは直接ベンズイミダゾール環に結合することはない。)を一つもしくは複数個含んでいてもよい。かかるアルキレン基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、またはオキソ基である。;
Mは、単結合または−S(O)m−を表し、mは0〜2の整数である。;
Jは、置換もしくは無置換の、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子からなる群から選ばれたひとつ以上のヘテロ原子を環上にもつ炭素数4〜10のヘテロアリール基を表す。ただし、ピリジン環は除く。かかるヘテロアリール基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルチオ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、置換もしくは無置換のアニリド基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、COOR3基(ここで、R3は前記定義に同じである。)、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、環の任意の位置で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。;またJは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数4〜10のアリール基{これらの基がもちうる置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、−COOR4(ここで、R4は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)、直鎖、環状、もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルチオ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、アルキレン基またはアリール基の任意の場所で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。また、これらの置換基は、さらにハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アシル基、トリハロメチル基、フェニル基、オキソ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基で置換されていてもよい。}を表す。;
Xは、メチン(−CH=)または窒素原子を表す。] - 前記ACE阻害剤が、アラセプリル、塩酸イミダプリル、塩酸キナプリル、塩酸テモカプリル、塩酸デラプリル、塩酸ベナゼプリル、カプトプリル、シラザプリル、トランドラプリル、ペリンドプリルエルブミン、マレイン酸エナラプリル、又はリシノプリルである請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の薬剤。
- キマーゼ阻害剤を有効成分として含有する循環器系疾患の予防剤又は治療剤。
- 前記循環器系疾患が、高血圧症、心臓病、脳卒中、血管障害、動脈硬化、腎炎、又は腎不全である請求項12に記載の予防剤又は治療剤。
- 前記心臓病が、心肥大、心不全、又は心筋梗塞である請求項13に記載の予防剤又は治療剤。
- キマーゼ阻害剤を有効成分として含有するアンジオテンシンII産生抑制剤。
- 前記キマーゼ阻害剤が下記式(I)で表される化合物である請求項12項から請求項15のいずれか1項に記載の予防剤又は治療剤或いは抑制剤。
Aは、置換もしくは無置換の炭素数1〜7の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキレン基またはアルケニレン基を表し、途中に−O−、−S−、−SO2−、−NR3−(ここで、R3は水素原子または直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基を表す。)を一つもしくは複数個含んでいてもよい。これらの基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルチオ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、アルキレン基またはアルケニレン基の任意の場所で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。;
Eは、−COOR3、−SO3R3、−CONHR3、−SO2NHR3、テトラゾール−5−イル基、5−オキソ−1,2,4−オキサジアゾール−3−イル基、または5−オキソ−1,2,4−チアジアゾール−3−イル基(ここで、R3は前記定義に同じである。)を表す。;
Gは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6の直鎖または分岐状のアルキレン基を表し、途中に−O−、−S−、−SO2−、−NR3−(ここで、R3は前記定義に同じである。これらの原子あるいは原子団が含まれる場合は、それらは直接ベンズイミダゾール環に結合することはない。)を一つもしくは複数個含んでいてもよい。かかるアルキレン基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、またはオキソ基である。;
Mは、単結合または−S(O)m−を表し、mは0〜2の整数である。;
Jは、置換もしくは無置換の、酸素原子、窒素原子、および硫黄原子からなる群から選ばれたひとつ以上のヘテロ原子を環上にもつ炭素数4〜10のヘテロアリール基を表す。ただし、ピリジン環は除く。かかるヘテロアリール基がもちうる置換基は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルチオ基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、置換もしくは無置換のアニリド基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、COOR3基(ここで、R3は前記定義に同じである。)、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、環の任意の位置で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。;またJは、置換もしくは無置換の炭素数1〜6の直鎖、環状、もしくは分岐状のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数4〜10のアリール基{これらの基がもちうる置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、−COOR4(ここで、R4は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。)、直鎖、環状、もしくは分岐状の炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基(隣接する2個がアセタール結合を形成している場合を含む。)、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルチオ基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐状のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアシル基、直鎖もしくは分岐状の炭素数1〜6のアシルアミノ基、トリハロメチル基、トリハロメトキシ基、フェニル基、オキソ基、または一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基である。これらの置換基は、アルキレン基またはアリール基の任意の場所で一つもしくは複数個それぞれ独立に置換していてもよい。また、これらの置換基は、さらにハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アシル基、トリハロメチル基、フェニル基、オキソ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェノキシ基で置換されていてもよい。}を表す。;
Xは、メチン(−CH=)または窒素原子を表す。]
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2007
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