[実施の形態1]
図1は本発明の実施の第1の形態に係るバランス訓練装置1の全体構成を示す側面図であり、図2はその平面図であり、図3はその透視側面図であり、図4は図3の切断面線A−Aから見た断面図であり、図5はその分解斜視図である。このバランス訓練装置1は、大略的に、馬の背や鞍を模した形状で被験者が着座する座席2と、前記座席2内に設けられ、座席2を揺動させる揺動機構3と、それらを支える脚部4とを備えて構成される。前記座席2は、前記揺動機構3に取付けられるシート2a上に、クッション台2bが積層されて成る。
前記座席2の前方両側には、鐙7が垂下して取付けられている(図2〜図5では、図面の簡略化のために省略している)。鐙7は、被験者が足を掛ける足掛け部7aと、前記シート2aにねじ止め固定される取付け片7bと、それらを連結する連結片7cとを備えて構成されており、取付け片7bの下端に立設されたピン7dに連結片7cの上端に形成された孔7eが嵌め込まれることで該連結片7cが揺動自在となり、その連結片7cの下端に立設されたピン7fに、足掛け部7aの上端に複数形成された孔7gの何れかが嵌め込まれることで、該鐙7の長さ(足掛け部7aの高さ)調整が可能となっている。
前記座席2の前方には、たづな8が設けられている。このたづな8は、半円弧状の持ち手8aの両端8b,8cが内方に(直径線方向に)折り返され、その両端8b,8cが座席2の前部で枢支されることで、前記持ち手8aが被験者から遠い側で前記座席2から起こして使用可能になり、倒すことで収納可能に構成されている。
また、前記座席2の前方において、前記たづな8の収納状態で内周側となる部分には、陥没した支持台が形成されており、該支持台上には、操作器ケースで覆われた操作器回路基板9aが搭載された後、さらにフロントパネル9bで覆われることで、操作部が設けられている。
前記脚部4は、床面5に設置される脚台4aと、その脚台4aから立設される脚柱4bと、前記脚台4aの前後を覆うカバー4c,4dと、前記脚柱4bを覆うカバー4eとを備えて構成される。脚台4aは、大略的に、左右のフレーム4f,4gが前端側で連結フレーム4hによって連結されるとともに、中央部が連結棒4iによって連結されることで構成されている。フレーム4f,4gの各端部には、前記床面5に合わせた高さ調整を可能にする螺子込み式の基台4jがそれぞれ取付けられており、またフレーム4f,4gの後端部には、所定高さにキャスター4kがそれぞれ取付けられている。
したがって、後端側の基台4jの突出高さを低くし、前端側の連結フレーム4hを持ち上げることで該バランス訓練装置1を床面5上を滑走させての移動が可能になり、基台4jをキャスター4kよりも突出させることで、該バランス訓練装置1を床面5に対してずれなく、かつ水平に保持するとともに、被験者を載せての揺動によっても、前記揺動機構3から座席2を安定して支持することができる。
前記脚柱4bは、前記揺動機構3から座席2および被験者による荷重を支持するために、側面視で略三角形状に形成される左右一対の支持柱4m,4nから成り、その底部は前記左右のフレーム4f,4gの略中央部に固定され、頂部には軸受け4pが嵌め込まれている。また、支持柱4m,4nの少なくとも一方において、前記三角形の中央部には凹所4qが形成されており、この凹所4q内には、該バランス訓練装置1の電源供給から駆動制御を行う本体側回路基板4rが収納される。この脚柱4b部分の構成は、前記カバー4eによって覆われ、そのカバー4eの上端と前記シート2aの底面との間は、伸縮自在のカバー6によって覆われている。
図6は、上述のように構成されるバランス訓練装置1において、座席2、カバー4c,4d,4eを取外した状態を示す斜視図である。この図6はバランス訓練装置1を左後方から見た図であり、前述の図5は右後方から見た図である。また、図7は前記揺動機構3の分解斜視図であり、図8はその右側面である。これらの図5〜図8を参照して、揺動機構3付近の構成について詳述する。
前記揺動機構3は、保持部材11を介して前記脚部4に支持されている。前記保持部材11は、側面視で略くの字状に形成される左右一対の回転板11a,11bと、前記回転板11a,11bの後端側を連結する傾斜軸支持板11cと、略中央部を連結する傾斜軸支持板11dと、底部を連結するリフト支持板11eとを備えて構成され、前記各支持板11c,11d,11eが各回転板11a,11bに溶接固定されて構成される。前記回転板11a,11bの前端側には、雌ねじが刻設されたブッシュ11fが圧入固定されており、このブッシュ11fには、前記左右の支持柱4m,4nの頂部に設けられた軸受け4pを挿通したボルト4sが螺着されることで、該保持部材11は前記軸受け4pによって左右の軸線回りに枢支される。また、前記リフト支持板11eの略中央部には、ブラケット11hが取付けられており、このブラケット11hと前記脚台4aの連結棒4iとの間には伸縮自在リフト12が挿入され、その伸縮自在リフト12の伸縮によって保持部材11、したがって揺動機構3の前後(x)方向での傾斜角が変化可能となっている。一方、前記傾斜軸支持板11c,11dは、所定の間隔を開けて相互に対向配置され、その中央部には軸受け11i,11jがそれぞれ圧入固定されており、この軸受け11i,11jによって、後述するように前記揺動機構3が揺動変位自在に支持される。
前記伸縮自在リフト12は、筒体12aと、その筒体12aから伸縮自在の作動片12bと、筒体12aの上部に取付けられるギアボックス12cと、前記ギアボックス12cを駆動するモータ12dと、高さ検知ユニット12eとを備えて構成される。前記筒体12aの下端は、前記連結棒4iによって脚台4aに左右の軸線回りに揺動自在に枢支される。前記作動片12bは、ボールねじなどから成り、その上端が前記保持部材11のブラケット11hとピン12kによって左右の軸線回りに揺動自在に枢支されている。前記ボールねじにはギアボックス12c内の図示しない歯車の内周面に形成された内ねじが噛合し、その歯車がモータ12dの出力軸に固着されたウォームギアで駆動されることで前記作動片12bが筒体12a内から伸長/縮小し、前記保持部材11、したがって揺動機構3の前後(x)方向での傾斜角が変化可能となる。
前記高さ検知ユニット12eは、図6で示すように、連結片12fによって作動片12bの下端部7dに連結されたスリット板12gの変位を、センサ12hで読取ることで、前記リフト支持板11eの高さ、したがって前記保持部材11の傾斜角を検知する。前記連結片12fは、筒体12aに形成されたスリット12iからその内部に入り込み、ビス12jによって作動片12bの下端部7dと連結される。
前記揺動機構3は、保持部材11の回転板11a,11bおよび支持板11c,11d,11eによって区画された空間内に、図7の状態では左右揺動自在に収納されるコンパクトな構造となっている。図7および図8を参照して、この揺動機構3は、前面歯車ケース3aおよび後面歯車ケース3bに、左右両側から側板3c,3dが、ビス3eによってねじ止め固定されることで形成される箱体3f内に、モータ13、第1駆動歯車14、第2駆動歯車15および規制軸16が収納されて構成されている。
前記第1駆動歯車14、第2駆動歯車15および規制軸16は、左右の側板3c,3dにそれぞれ形成され、中央に軸孔3g,3h,3iを有する凹所3j,3k,3lに嵌め込まれる軸受け3m,3n,3oによって、左右(y)方向の回転軸回りに回転自在に枢支される。
前記第1駆動歯車14の大径のウォームホイール14aには、前記モータ13の出力軸13aに圧入されたウォーム13bが噛合する。このモータ13にはブラケット13cが溶接等で固定されており、このブラケット13cの左右両側板13d,13eに形成されたねじ孔13fに、前記側板3c,3dに対応して形成された挿通孔3pを挿通した前記ビス3eが螺着されることによって、モータ13が揺動機構3に固定される。
このとき、モータ13の側面において、重心Gから遠い位置にピン13gが立設されており、前記箱体3fが、前記第1駆動歯車14、第2駆動歯車15、規制軸16およびモータ13を収納して組立てられる際に、先ずこのピン13gが前記側板3c,3dに対応して形成されたピン孔3qに嵌り込む。箱体3fがビス3eによって組立てられた後、モータ13は前記ピン13gおよびピン孔3qによって、第1駆動歯車14と規制軸16との間の範囲で揺動自在であり、図8で示すように第1駆動歯車14の下方に規制軸16が位置するように、その組立てられた箱体3fが治具などで位置決めされ、作業者がモータ13の支持を解除すると、その自重F1に対応した力F2によって、ウォーム13bがウォームホイール14aに噛合する(この揺動機構3では、ウォームホイール14aの下からウォーム13bが当る)。この状態で、作業者がビス3eを螺着し、モータ13を側板3c,3dに固定することによって、バックラッシュが自動的に最適に調整されるようになっている。
前記ピン13gおよびピン孔3qの位置は、モータ13の自重F1に、バックラッシュを低減するために必要な力F2および組立て時の箱体3fの姿勢などに対応して設定される。たとえば、モータ13が水平の状態で組立てられる場合、ピン孔3qから、重心Gまでの距離をD1とし、出力軸13aにおいてウォーム13bがウォームホイール14aに噛合する位置に対応した地点までの距離をD2とすると、F1×D1=F2×D2である。
これによって、煩雑なバックラッシュ調整を不要にすることができるとともに、バックラッシュ調整のための調整ねじや与圧のためのコイルばね等の特別な部品も不要になり、低コスト化を図ることもできる。さらにまた、前記ビス3eの緩みや輸送中の振動などによって、また駆動すべき負荷が増大して噛合いを開く方向に力が発生しても、モータ13の自重F1によって、常にバックラッシュを低減する方向に力F2が加わるので、バックラッシュ音の発生を抑えることができる。
前記ピン13gとピン孔3qとは、相互に入替えて設けられてもよく、すなわち左右両側板13d,13eにピン13gが立設され、モータ13にピン孔3qが形成されてもよく、ピン孔3qはピン13gを、その軸線回りに回動可能に支持すればよい。また、前記ピン13gは、重心Gよりも出力軸13a側に設けられたけれども、ウォーム13bがウォームホイール14aの上方から噛合う場合、重心Gから出力軸13aとは反対側に設けられれば、同様にバックラッシュ調整を不要にすることができる。
そして、ウォーム13bによって前記第1駆動歯車14に伝達されたモータ13の回転力は、その両端部に形成された偏心軸14c,14dから、箱体3fの外側に配置される昇降レバー17,18の中央部付近に形成された軸孔17a,18aに伝達される。この昇降レバー17,18は、図8で示すように、基端側の略「L」字状の部分17b,18bの上方に、斜め外方に延びる遊端側の部分17c,18cが連なる略「し」の字状に形成され、前記偏心軸14c,14dは基端側の部分17b,18bを支持する。
前記昇降レバー17,18の基端側の部分17b,18bはまた、第1駆動歯車14の下方に位置する規制軸16によって、後述するようにして前記偏心軸14c,14d回りの回転(転倒)が阻止されており、これによって該昇降レバー17,18は、前記第1駆動歯車14によって、側面視で楕円運動を行うようになる。前記軸受け3mから昇降レバー17,18の軸孔17a,18aを挿通した前記第1駆動歯車14の両端部には、そこに形成される外ねじ14eにナット3rが螺着されて抜け止めが行われる。
一方、前記規制軸16は、前記軸受け3oに対応した外径に形成されており、この軸受け3o内で、すなわち左右(y)方向の軸線回りに角変位可能である。この規制軸16の両端部には、一直径線方向に延びる連結突起16a,16bが形成されている。この連結突起16a,16bは、前記昇降レバー17,18の基端側の略「L」字状の部分17b,18bにおいて、軸孔17a,18aの下方で、上下方向に延びて形成された長孔17d,18dに嵌め込まれるスライド軸受け17e,18e内に嵌り込み、抜け止めされている。したがって、偏心軸14c,14dによる前記昇降レバー17,18の水平方向の動きが規制され、上下方向の動きが許容され、水平方向のストローク(揺動の幅)を、上下方向のストロークより大きくすることができ、座席2に、上述のような側面視で楕円状の動きを行わせることができる。
規制手段としては、規制軸16のように、前記昇降レバー17,18を往復移動させられる構成であればよく、往復のリンク構造などが用いられてもよい。また、座席2に求める揺動の軌跡によって、前記長孔17d,18dの形状や形成方向が変化されればよい。すなわち、長孔17d,18dは直線状に限らず、円弧状や、複数の半径(曲率)が組合わせられた円弧状などであってもよく、また水平方向や傾斜した方向に形成されてもよい。
さらにまた、後述の図25で示すように、前記規制軸16に対する座席2および第1駆動歯車14の距離をそれぞれH1,H2とし、偏心軸14c,14dの偏心量(ストローク)をH3とするとき、前記偏心量H3は、H1/H2倍に拡大され、それらの配列ラインH4が傾くと、後述するように、水平方向のストロークと上下方向のストロークとの配分が変化し、前記ストロークを拡大または縮小することができる。
前記「し」の字状の昇降レバー17,18の遊端には、内ねじが刻設されたブッシュ17f,18fが圧入されており、そのブッシュ17f,18fには、前記座席2を搭載する台座19の後端部に垂下して形成されているブラケット19a,19bに圧入された軸受け19c,19dを挿通したボルト19e,19fが螺着され、こうして台座19の後端部が左右(y)方向の軸線回りに枢支される。これに対して、台座19の前端部にはブラケット19gが取付けられており、そのブラケット19gと前記しの字状の昇降レバー17,18の前端との間は、伸縮自在リフト20によって連結されている。
前記伸縮自在リフト20は、前述の伸縮自在リフト12と同様に構成され、筒体20aと、その筒体20aから伸縮自在の作動片20bと、筒体20aの上部に取付けられるギアボックス20cと、前記ギアボックス20cを駆動するモータ20dと、高さ検知ユニット20eとを備えて構成される。前記筒体20aの下端には、左右両側に内ねじが刻設されたブッシュ20fが圧入されており、そのブッシュ20fには、前記「し」の字状の昇降レバー17,18の前端に圧入されている軸受け17g,18gを挿通したボルト17h,18hが螺着されることで、伸縮自在リフト20の下端部が左右(y)方向の軸線回りに枢支される。
前記作動片20bは、ボールねじなどから成り、その上端にはブラケット20gが固着されている。このブラケット20gはピン20hによって前記台座19のブラケット19gに左右の軸線回りに揺動自在に枢支されている。前記ボールねじにはギアボックス20c内の図示しない歯車の内周面に形成された内ねじが噛合し、その歯車がモータ20dの出力軸に固着されたウォームギアで駆動されることで前記作動片20bが筒体20a内から伸長/縮小し、前記台座19、したがって座席2の前後(x)方向での傾斜角が変化可能となる。前記高さ検知ユニット20eは、前記ブラケット20gに連結されたスリット板20iの変位を、センサ20jで読取ることで、前記台座19の前端の高さ、したがって該台座19の傾斜角を検知する。
前記揺動機構3において、ウォーム13bによって前記第1駆動歯車14に伝達されたモータ13の回転力はまた、小径の歯車14bから第2駆動歯車15の歯車15aに伝達される。第2駆動歯車15の一端側には偏心軸15bが形成されており、この偏心軸15bは、前記側板3cに設けられた軸受け3nを挿通した後、偏心ロッド21の一端に設けられた自在軸受け21aに嵌め込まれ、その先端に形成された外ねじ15cにナット21bが螺着されることで抜け止めが行われる。第2駆動歯車15の他端側は、前記側板3dに設けられた軸受け3nを挿通した後、その先端に形成された外ねじ15dにナット3sが螺着されることで抜け止めが行われる。
前記自在軸受け21aは、軸受け面が球面に形成されており、同様の自在軸受け21cが偏心ロッド21の他端にも設けられる。その自在軸受け21cには、軸22の一端側に形成された偏心軸22aが挿通し、Eリング22bによって抜け止めが行われている。軸22の中央部22cは、前記保持部材11を構成する一方の回転板11aの後端側に形成された孔11mに圧入された軸受け11nによって回転自在に支持され、その他端側には歯車22dが刻設される。
前記歯車22dは、回転板11aの外側に配置される歯車23の内周面に刻設された内歯23aと噛合し、さらにその歯車22dの先端に刻設された外ねじ22eに抜け止め用のナット22fが螺着されることで、前記軸22は歯車23と一体となり、連動して回転する。前記歯車23の外周面に刻設された外歯23bには、モータ24の出力軸24aに圧入されたウォーム24bが噛合する。モータ24は、前記回転板11aの外側から形成された収納凹所に、取付け部材25によって取付けられる。前記軸22と一体となった歯車23の回転角は、エンコーダ26によって検出される。エンコーダ26は、図6で示すように、歯車23の端面に形成された基準ピット23cを検出し、歯車23の回転に伴い、等間隔に形成されたピット23dをカウントすることで、前記歯車の回転角、したがって後述する偏心ロッド21の揺動基点の位置を検出することができる。
一方、前記揺動機構3において、前面歯車ケース3aおよび後面歯車ケース3bの下端側は相互に平行に形成され、その中央部には、内ねじが刻設されたブッシュ3x,3yが圧入されており、そのブッシュ3x,3yには、前記傾斜軸支持板11d,11cに取付けられた軸受け11j,11iを挿通したボルト11x,11yが螺着される。これによって、前記揺動機構3が、前記軸受け11j,11iを結ぶ線11zを回転軸線として回転可能となる。したがって、前記第2駆動歯車15が回転すると、その偏心軸15bから偏心ロッド21の作用によって、揺動機構3が、回転軸線11z回りに揺動する。このとき、偏心ロッド21は、側板3cに対して近接・離反変位することになるが、前記自在軸受け21a,21cによって、第2駆動歯車15および軸22からそれぞれ外れることなく、駆動力が伝達可能となっている。
また、前記モータ24が歯車23を回転駆動すると、前記偏心ロッド21の他端が連結される偏心軸22a、したがって前記偏心ロッド21の揺動基点を昇降変位することができる。これによって、後に詳述するように、保持部材11に対する揺動機構3の前記回転軸線11z回りの位置にオフセットを持たせることができ、前記回転軸線11z回りに所定の角度だけ傾いた位置を基準として、前記回転軸線11z回りに、揺動機構3、したがって座席2を揺動することができる。また、偏心軸22aをウォーム24bおよび歯車23によって駆動することで、負荷によって傾き角度が変化してしまうことを防止することができる。
上述のように構成されるバランス訓練装置1において、モータ13が回転すると、第1駆動歯車14の偏心軸14c,14、昇降レバー17,18および規制軸16によって、座席2は、前後(x)方向および上下(z)方向に往復運動し、側面視で、図9で示すように、楕円の軌跡R1を描くことになる。このように、座席2を搭載する台座19を支持する昇降レバー17,18を、1本の第1の駆動歯車14によって駆動することで、コンパクトな構成で、前後(x)方向の揺動(往復動)に、上下(z)方向の揺動(往復動)を加えて前記楕円の軌跡R1を描かせることができ、動きのパターンを拡げることができる。また、従来の前後(x)方向の揺動に、新たに上下(z)方向の揺動(往復動)を加えることで、被験者の自律神経を活性化させるとともに、脚回りの筋力アップを図ることができる。さらにまた、側面視で円から楕円の軌道を描かせることで、揺動による人体への負荷を滑らかに連続的に変化させることができ、人体へのダメージを小さくしつつ、運動効果を高めることができる。
ここで、第1駆動歯車14の歯車14bと第2駆動歯車15の歯車15aとの周期の比、したがって歯数比が、たとえば1:1に設定されると、回転数比も1:1となる。そして、原点のタイミングが0°で一致していると、座席2は、図10で示すように、平面視で斜め前方から後方への直線の軌跡L11を描くことになる。このときの第1の駆動歯車14(x軸方向)と第2の駆動歯車15(y軸方向)との噛合わせの変化、すなわち座席2の各軸方向での位置の変化を、図11で示す。そして、第1の駆動歯車14に対して、第2の駆動歯車15の位相が180°遅れている場合は、揺動の方向が変化するだけで、同様の直線の軌跡となる。
これに対して、前記第1の駆動歯車14(x軸方向)と第2の駆動歯車15(y軸方向)との噛合わせタイミングが、1/4周期、すなわち90°ずれていると、前記偏心ロッド21による揺動によって、座席2は、図12で示すように、平面視で円の軌跡L12を描くことになる。このときの第1の駆動歯車14と第2の駆動歯車15との噛合わせの変化を、図13で示す。図12および図13は、第1の駆動歯車14に対して、第2の駆動歯車15の位相が90°遅れている場合の例を示している。90°進み、すなわち270度の遅れの場合も同様の円の軌跡となり、始点が異なるだけである。他の位相のずれの場合は、上記変位を、そのずれの割合で合成した軌跡となる。
一方、第1駆動歯車14の歯車14bと第2駆動歯車15の歯車15aとの歯数比が、1:2に設定されると、回転数比は2:1となり、原点のタイミングが0°で一致していると、前記偏心ロッド21による揺動によって、座席2は、図14で示すように、平面視で横8の字(内周から描かれる)の軌跡L21を描くことになる。このときの第1の駆動歯車14と第2の駆動歯車15との噛合わせの変化を、図15で示す。
また、原点のタイミングが180°ずれていると、座席2は、図16で示すように、横8の字(外周から描かれる)の軌跡L22を描くことになる。このときの第1の駆動歯車14と第2の駆動歯車15との噛合わせの変化を、図17で示す。
さらにまた、第1の駆動歯車14に対して、第2の駆動歯車15の位相が90°遅れていると、座席2は、図18で示すように、平面視で逆V字の軌跡L23を描くことになる。このときの第1の駆動歯車14と第2の駆動歯車15との噛合わせの変化を、図19で示す。また、第1の駆動歯車14に対して、第2の駆動歯車15の位相が90°進んでいると(270°の遅れ)、座席2は、図20で示すように、平面視でV字の軌跡L24を描くことになる。このときの第1の駆動歯車14と第2の駆動歯車15との噛合わせの変化を、図21で示す。
さらに、第1駆動歯車14の歯車14bと第2駆動歯車15の歯車15aとの歯数比が、2:1に設定されると、回転数比は1:2となり、原点のタイミングが0°で一致していると、前記偏心ロッド21による揺動によって、座席2は、図22で示すように、平面視で縦8の字の軌跡L3を描くことになる。
ただし、偏心ロッド21の揺動基点である偏心軸22aは、揺動機構3に回転軸線11z回りのオフセットを生じさせない位置にあるものとする。前記オフセットが生じていると、後述するように、前記各軌跡L1,L21,L22,L23,L3は、そのオフセット方向にずれて現れる。また、回転軸線11zは、水平であるものとする。該回転軸線11zが傾斜した場合の軌跡についても、後述する。
以上の状態は、長孔17b,18bの長径方向が鉛直方向となるようにした状態での軌跡である。そこで、伸縮自在リフト20を伸縮させず、伸縮自在リフト12を伸縮させて上述のような揺動を行わせた場合、たとえば伸縮自在リフト12を伸長させると、保持部材11から座席2が前傾し、第1駆動歯車14の偏心軸14c,14d、昇降レバー17,18および規制軸16によって、描かれる座席2の軌跡は、側面視で、図23で示すように前傾した楕円の軌跡R2となる。そしてこの場合、前後(x)方向の成分と鉛直(z)方向の成分とが相互に入替わってゆき、或る角度以上傾斜すると、図24で示すように、前記図9で示す軌跡R1に比べて、楕円の水平方向のストロークW1はW1’に減少するものの、鉛直方向のストロークW2は、W2’で示すように増加する。こうして、軌跡R1,R2の大きさを変化することもできる。
また、伸縮自在リフト20を伸縮することでも、図25で示すように、座席2の傾斜が変化する。この場合、揺動機構3(揺動の基点となる前記規制軸16の中心)から座席2(台座19の揺動中心)までの距離H1が、H1’へ変化し、図25で示すように長孔17d,18dの長径方向が鉛直方向の状態では、鉛直方向のストロークW2は変わらず、水平方向のストロークW1がW1”に変化する。また、左右(y)方向についても、揺動の基点となる回転軸線11zから座席2(台座19の揺動中心)までの距離も変化し、ストロークが変化する。
このようにして、伸縮自在リフト12,20を伸縮することで、揺動のストロークを変化することができる。また、伸縮自在リフト20を伸長する程、座席2の前部側が前記回転軸線11zから離反してゆくことになり、その回転軸線11z回りの揺動(後述するロール〜ヨー)のストロークを大きくすることができる。これによって、従来では、高齢者や体力のない被験者は揺動の速度を落として使用していたのに対して、本実施の形態では、揺動のストロークの変化で対応することができ、安心して利用することができる。また、ストロークを大きくすることもできる。このようにして、被験者の体格、体調、年齢、性別、体力等に合った運動を付与することができ、運動効果の優れたバランス訓練装置を実現することができる。
また、伸縮自在リフト12,20を相互に連動して伸縮させることで、前述のように座席2の運動軌跡やストロークを変えながら、座席2を上下に昇降できるので、バランス運動のバリエーションや臨場感が増加し、飽きの来ない運動メニューを実現することができる。
一方、伸縮自在リフト12,20を相互に連動して伸縮させることで、図26で示すように、座席2(台座19)の角度を変化することなく、前記回転軸線11zの傾斜角を、前後(x)方向から鉛直(z)方向の面内で変化することができる。すなわち、図26において、前記回転軸線11zの床面5に対する傾斜角θが45°の状態を基準状態とし、その状態から伸縮自在リフト12を縮小すると、回転軸線11zは水平状態に近付き、伸縮自在リフト12を伸長すると、回転軸線11zは鉛直状態に近付く(起立する)ように変位する。図26では、前記基準状態の保持部材11、揺動機構3、昇降レバー17,18および台座19を実線で示し、回転軸線11zが鉛直状態に傾いた状態を仮想線で示し、各部の参照符号に’を付して示している。
前記回転軸線11zが前後(x)方向から鉛直(z)方向に近付く(起立する)ように変位される程(前記傾斜角θが大きくなってゆく程)、前記第2駆動歯車15および偏心ロッド21などによる前記回転軸線11z回りの揺動を、左右(y)方向の揺動(ロール)から、略鉛直(z)軸線回りの揺動(捻れ(座席2の揺動中心が前記回転軸線11z上に位置するとヨー))の間で変化させることができるとともに、揺動機構3による前後(x)方向の往復動の成分を、鉛直(z)方向の往復動の成分に切替えることができる。これによって、動きのパターンを変化させ、さらにその動きのパターンの変化に伴い、それぞれのストロークの幅を変化させてゆくことができ、被験者の鍛えるべき部位に合わせた運動パターンを得ることができるとともに、運動パターンを多様にして、飽きの来ない継続使用性に優れたバランス訓練装置を実現することができる。
表1に、前記傾斜角θの変化に伴う揺動角度の変化の一例を示す。この揺動角度は、前記第2駆動歯車15における偏心軸15bの偏心量、偏心ロッド21の長さ、回転軸線11から軸22までの距離などによって変化する。
また、前記回転軸線11zが、水平状態(θ=0°)から、起立してゆく程、上述のように左右(y)方向の揺動(ロール)から鉛直(z)軸線回りの揺動に切替わってゆくので、第1駆動歯車14の歯車14bと第2駆動歯車15の歯車15aとの歯数比が、たとえば1:2の場合、座席2は、平面視では、前記図14で示すような横8の字の軌跡L21が、図27において、参照符号L21’で示すように小さくなり、代りに、参照符号V1,V2で示すような捻れが加わる。この捻れは、第1駆動歯車14と第2駆動歯車15との噛合わせタイミングによって異なり、共に基準位置P0(変位0)の状態でタイミングを合わせる(第2駆動歯車15の0°の位置を、第1駆動歯車14の0°の位置に合わせる)と、左右にロールしてゆく程、参照符号V1で示すように、そのロールしてゆく方向に座席2が捻れることになり、基準位置P0に復帰する程、参照符号V2で示すように、座席2の捻れが解消してゆく。これによって、運動効果を一層増進することができる。
これに対して、前記1:2の歯数比で、第1駆動歯車14の180°の位置に、第2駆動歯車15の0°の位置を合わせると、同じ横8の字でも、前記図16で示すような軌跡L22となり、この場合は上述の場合とは逆に、左右にロールしてゆく程、参照符号V2で示すように、そのロールとは反対(カウンター)方向に座席2が捻れることになり、基準位置に復帰する程、参照符号V1で示すように、座席2の捻れが解消してゆく。この場合、ソフトな運動を行うことができる。
また、前記図20で示すV字の場合には、左右にロールしてゆく程、参照符号V1で示すように、そのロールしてゆく方向に座席2が捻れることになる。
さらにまた、伸縮自在リフト12,20が相互の伸縮による傾きを打ち消すように連動して傾斜することで、座席2の床面5からの高さを変化することができ、座席を昇降する手段を別途設けなくても、被験者の身長に合わせたり、被験者の乗り降りをし易くすることができる。
なお、座席2を傾斜したままとすることで局所的な運動効果を高める場合などでは、伸縮自在リフト12の伸縮による座席2の傾きの変化の総てを、伸縮自在リフト20が打ち消さなくてもよく、所望の角度だけ傾斜したままとされてもよい。また、座席2が台座19に対して90°回転して取付けられる場合には、前記揺動機構3の揺動は、左右(y)方向の揺動(往復動)に、鉛直(z)方向の往復動となり、前後から見た座席2の軌跡が前記楕円となる。そして、前記第2駆動歯車15および偏心ロッド21などによる揺動は、左右(y)軸線回りの前後(x)の揺動(ピッチ)となる。また、座席2は、台座19に対して180°回転して、すなわち前後逆に取付けられてもよい。このように、揺動機構3に対する座席2の取付け方向は、該バランス訓練装置1に要求される用途に応じて適宜定められればよい。
一方、モータ24によって歯車23が回転されるが、該歯車23に一体の偏心軸22a、したがって前記偏心ロッド21の揺動基点が、偏心軸22aに最も引き付けられるとき、すなわち偏心ロッド21が下死点にあるとき、および偏心軸22aに最も押し上げられるとき、すなわち偏心ロッド21が上死点にあるときには、前記揺動機構3は、前記回転軸線11z回りに最大のオフセットを生じる。これによって、θ≒0°で、前記捻れ(ヨー)の成分を有する場合、図28や図29で示すように、揺動の基準位置が、前記P0からP0’に変化する。図28は、偏心ロッド21の揺動基点が偏心軸22aに引き付けられる場合であり、揺動機構3は左側にオフセットしている。これに対して、図29は、偏心ロッド21の揺動基点が偏心軸22aに押し上げられる場合であり、揺動機構3は右側にオフセットしている。なお、θ=0°で、前記捻れ(ヨー)の成分が無い場合には、前後揺動の軸線が、図27において参照符号V11からV11’で示すように、左右にシフトする。
これによって、座席2の軌跡を、前記回転軸線11z回りに傾けることができ、左右のロール角、左右の捻り角、左右の直進移動量を、左側と右側とで差を持たせることができる。これによって、たとえば側筋や内転筋などを部分的に強化することができ、効率のよい体力造りが可能になるとともに、被験者のバランス感覚を養うこともできる。また、モータ24を連続的に回転させると、揺動機構3の前記回転軸線11z回りの傾きを連続的に変化させることができ、運動パターンを多様化して、被験者が飽きの来ない継続使用性の優れたバランス訓練装置を実現することができる。
さらにまた、前記第1駆動歯車14と第2駆動歯車15との噛合わせタイミングは、上述のように、第2駆動歯車15の0°の位置に、第1駆動歯車14の0°の位置を合わせているけれども、さらに、第1駆動歯車14の0°の位置では、前記偏心軸14c,14dは、下死点となるように設定されている。そして、ウォーム13bの歯形の傾斜角は、モータ13が電力付勢されていない状態で、負荷となる台座19側からの荷重の入力に対して、逆転可能な角度に設定されている。
このように構成することで、第1駆動歯車14が前記0°以外の任意の角度にある状態で前記モータ13の電力付勢が停止されても、前後(x)および上下(z)方向の揺動を発生する該第1駆動歯車14は、座席2や被験者などの荷重によって逆転し、モータ13および左右(y)方向の揺動を発生する第2駆動歯車15を逆転させることになる。そして、前述のように偏心軸14c,14dが下死点、したがって座席2が最下位置に達した時点で、前後(x)および左右(y)方向に対しても中点となるように第1駆動歯車14と第2駆動歯車15との噛合わせタイミングが設定されていると、電源を切るだけで、自然に座席2は沈み込み、前記最下位置で停止し、前後(x)および左右(y)方向に対しても、中点に復帰するようになる。
これによって、センサや複雑な制御を用いることなく、中点での停止を行うことができ、被験者の乗り降りがし易くなるとともに、被験者が正しい姿勢で騎乗するようになり、バランスの良い運動を付与することができる。
さらにまた、ウォーム13bの歯形は、モータ13および駆動歯車14,15の回転方向に対応して、右回りまたは左回りの何れの方向に刻設することも可能であるが、本実施の形態では、上述のように荷重で座席2が沈み込む(逆転駆動される)際に、ウォームホイール14aから該ウォーム13bに、前記出力軸13aに圧入される方向(モータ13方向)に力が加わる方向に刻設されている。これによって、被験者の体重などによって座席2が沈み込んでいる際に、ウォーム13bが出力軸13aから脱落してしまい、該座席2が急激に降下しないようになっている。
図30は、このバランス訓練装置1の電気的構成を示すブロック図である。前記操作回路基板9aからの操作に応答して、前記本体側回路基板4rは、直流ブラシレスモータなどから成る揺動用のモータ13、直流モータなどから成る座席傾斜用のモータ20d、直流モータなどから成るメカ機構前後傾斜(昇降)用のモータ12dおよび直流モータなどから成るメカ機構左右傾斜用のモータ24を駆動する。前記座席傾斜用のモータ20dによる台座19(座席2)の揺動機構3に対する傾斜量は高さ検知ユニット20eによって検知されており、前記メカ機構前後傾斜(昇降)用のモータ12dによる脚柱4bに対する保持部材11(揺動機構3)の傾斜量、すなわち回転軸線11zの前記傾斜角θは高さ検知ユニット12eによって検知されており、前記メカ機構左右傾斜用のモータ24による保持部材11に対する揺動機構3の傾斜量はエンコーダ26によって検知されており、それらの検知結果は前記本体側回路基板4rに入力される。
図31は、前記本体側回路基板4rの電気的構成を示すブロック図である。先ず電源プラグ51から入力された商用交流は、電源回路52において、たとえば140V、100V、15V、12Vおよび5Vの各直流に変換されて、該本体側回路基板4r内の各回路へ供給される。この本体側回路基板4rでは、マイクロコンピュータ53aを備える制御回路53が動作を制御しており、操作器駆動回路54を介して、前記操作器回路基板9aに表示出力を行わせるとともに、操作器回路基板9aからの入力を受付ける。その入力や、センサ信号処理回路55を介して入力される揺動用のモータ13の回転角度位置および回転速度、センサ駆動回路56,57,58を介して入力される高さ検知ユニット20e,12eおよびエンコーダ26の検知結果に応答して、前記制御回路53は、駆動回路59を介して揺動用のモータ13を駆動し、駆動回路60を介して傾斜用のモータ20d,12d,24を駆動する。
そして、駆動面で注目すべきは、図32で示すように、制御回路53は、モータ12dによって回転軸線11zの傾斜角θを変化すると、揺動用のモータ13の回転方向を切換えることである。また注目すべきは、図32で示すように、制御回路53は、センサ信号処理回路55を介して入力される揺動用のモータ13の回転角度から、座席2が上昇に向うときは回転速度が相対的に遅くなるように制御し、下降に向うときは回転速度が相対的に速くなるように制御することである。
したがって、先ず回転軸線11zの傾斜角θ変化に対応してモータ13の回転方向を切換えることで、被験者が前後方向を乗替えしなくても、逆軌道での揺動を体験することができ、普段使わない、鍛えることが少ない筋肉を鍛えることができる。
また、揺動用のモータ13の回転速度を、座席2が上昇に向うときは遅くし、下降に向うときは速くすることで、モータ13に要求される最大トルクを抑え、該モータ13、したがって揺動機構3を小型化することができる。また、運動効果の点では、同じ上下のストロークであっても、鐙7に載せた脚への体重負荷を大きくすることができ、被験者の脚力を向上することができる。