JP2007310943A - 磁気転写用マスター担体、磁気転写方法、及びこれにより作製された磁気記録媒体、磁気記録再生装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 磁気転写に用いるマスター記録媒体の耐久性を向上させる。
【解決手段】 磁気記録媒体に情報を転写するための凹凸パターンが表面に形成され、前記凹凸パターンの形成された領域と前記磁気記録媒体を密着させて、磁界を印加することにより前記凹凸パターンにより記録されている情報を前記磁気記録媒体に転写するために用いられるマスター記録媒体において、前記マスター記録媒体の磁性層上に保護層が形成されており、前記保護層が窒素含有炭素膜からなるものであることを特徴とするマスター記録媒体を提供することにより上記課題を解決する。
【選択図】 図9
【解決手段】 磁気記録媒体に情報を転写するための凹凸パターンが表面に形成され、前記凹凸パターンの形成された領域と前記磁気記録媒体を密着させて、磁界を印加することにより前記凹凸パターンにより記録されている情報を前記磁気記録媒体に転写するために用いられるマスター記録媒体において、前記マスター記録媒体の磁性層上に保護層が形成されており、前記保護層が窒素含有炭素膜からなるものであることを特徴とするマスター記録媒体を提供することにより上記課題を解決する。
【選択図】 図9
Description
本発明は、磁気転写用マスター担体、磁気転写方法、及びこれにより作製された磁気記録媒体、磁気記録再生装置に関するものであり、特に、コンタミネーションの発生の少ない磁気転写用マスター担体、この磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法、及び、この磁気転写方法により作製された磁気記録媒体並びに磁気転写方法に関するものである。
近年、磁気記録再生装置は、小型でかつ大容量を実現するために、記録密度の高密度化の傾向にあり、特に、代表的な磁気記憶装置であるハードディスクドライブの分野では、技術の進歩が急激である。
このような情報量の増加に伴い、多くの情報を記録することができる大容量で、安価で、かつ、好ましくは短時間で必要な箇所が読み出せる、いわゆる高速アクセスが可能な高密度磁気記録媒体が望まれている。これらの高密度磁気記録媒体は、情報記録領域が狭トラックで構成されており、狭いトラック幅において正確に磁気ヘッドを走査させて高いS/Nで信号を再生するために、いわゆるトラッキングサーボ技術が大きな役割を担っている。このトラッキングサーボを行うために、従来よりセクターサーボ方式が広く採用されている。
セクターサーボ方式とは、磁気ディスク等の磁気記録媒体のデータ面に、一定角度等で正しく配列されたサーボフィールドに、トラック位置決めのためのサーボ信号や、そのトラックのアドレス情報信号、再生クロック信号等のサーボ情報を記録しておき、磁気ヘッドが、このサーボフィールドを走査してサーボ情報を読み取り自らの位置を確認しつつ修正する方式である。
サーボ情報は、磁気記録媒体の製造時にプリフォーマットとして予め磁気記録媒体に記録する必要があり、現在は専用のサーボ記録装置を用いてプリフォーマットが行われている。現在用いられているサーボ記録装置は、例えばトラックピッチの75%程度のヘッド幅を有する磁気ヘッドを備え、磁気ヘッドを磁気ディスクに近接させた状態で、磁気ディスクを回転させつつ、1/2トラック毎に磁気ディスクの外周から内周に移動させつつサーボ信号を記録する。そのため、1枚の磁気ディスクのプリフォーマット記録に長時間を要し、生産効率の点で問題があり、コストアップの要因となっている。
このため、特許文献1、2では、プリフォーマットを正確にかつ効率的に行う方法として、サーボ情報に対応したパターンが形成されている磁気転写用マスター担体の情報を磁気記録媒体に磁気転写する方法が開示されている。
この磁気転写は、転写用磁気ディスク等の磁気記録媒体(スレーブ媒体)に転写すべき情報に応じて凹凸パターンからなる転写パターンを有する磁気転写用マスター担体を用い、この磁気転写用マスター担体と磁気記録媒体とを密着させた状態で、記録用磁界を印加することにより、磁気転写用マスター担体の凹凸パターンからなる情報(例えばサーボ情報)に対応する磁気パターンを磁気記録媒体に磁気的に転写するものである。この方法では、磁気転写用マスター担体と磁気記録媒体との相対的な位置を変化させることなく静的に記録を行うことができ、正確なプリフォーマット情報の記録が可能であり、しかも記録に要する時間も極めて短時間であるという利点を有している。磁気転写の方法としては、転写される磁化情報が、磁気記録媒体に垂直磁化により記録される垂直磁気記録の磁気転写と、磁気記録媒体に平行な面内磁化により記録される面内磁気記録の磁気転写の2種類が存在している。
特開平10−40544号公報
特開平10−269566号公報
ところで、上記磁気転写方法には、コンタミネーションの問題がある。即ち、磁気転写用マスター担体と磁気記録媒体を密着させ磁気転写を行う場合、少なくともどちらか一方に粉塵等が付着した状態では、磁気転写用マスター担体と磁気記録媒体とが完全に密着しないため、粉塵等の付着している領域の情報の一部が磁気転写されず、転写情報が欠落するといった問題が生じる。
このようなコンタミネーションの発生原因として、磁気転写用マスター担体に形成された磁性層等の膜の剥離、磁気記録媒体から持ち込み、周囲に浮遊している粉塵の付着等が挙げられる。このうち、磁気転写用マスター担体に形成されている磁性層等の膜の剥離に起因するものについては、一枚の磁気転写用マスター担体によって多数の磁気記録媒体について磁気転写を行うために、磁気転写用マスター担体と磁気記録媒体とを繰り返し密着させるため、磁気転写用マスター担体の磁性層等の膜の一部が剥離してしまう。この膜の剥離した物が磁気転写用マスター担体に付着し、磁気記録媒体との密着不良が生じることにより、磁気転写される情報の一部が欠落し、磁気転写の信頼性が低下することになる。
上記磁気転写用マスター担体の磁性層等の膜の剥離を防止するために、一般に磁性層の上に更に保護膜を形成することが行われているが、この保護膜の膜質や形成される状態によっては、磁気転写用マスター担体の耐久性を高めることができず、膜の剥離を有効に防止することができない場合があり、この場合、コンタミネーションの問題に充分対処することができない。また、この保護膜が、表面に粉塵等が付着しやすい特性の材料により形成されているとすると、磁性膜の剥離を防止することが可能であっても、周囲に浮遊する粉塵等を付着させてしまいコンタミネーションの問題が生じる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、耐久性が高く、膜の剥離が生じ難い磁気転写用マスター担体、この磁気転写用マスター担体を用いた磁気転写方法、及び、この磁気転写方法により作製される歩留まりの高い磁気記録媒体、磁気記録再生装置を提供するものである。
請求項1に記載の発明は、磁気記録媒体に情報を転写するための凹凸パターンが表面に形成され、前記凹凸パターンの形成された領域と前記磁気記録媒体を密着させて、磁界を印加することにより前記凹凸パターンにより記録されている情報を前記磁気記録媒体に転写するために用いられる磁気転写用マスター担体において、前記磁気転写用マスター担体の磁性層上に保護層が形成されており、前記保護層が窒素含有炭素膜からなるものであることを特徴とする磁気転写用マスター担体である。
請求項2に記載の発明は、前記保護層は、減圧下において、原料ガスとして、ハイドロカーボンガス、窒素、アルゴンを導入し、イオンビームガンを用いて成膜した窒素含有炭素膜からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の磁気転写用マスター担体である。
請求項3に記載の発明は、前記保護層の厚さは、3〜30〔nm〕であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気転写用マスター担体である。
請求項4に記載の発明は、前記保護層の成膜時に導入するハイドロカーボンガスと窒素ガスの和に対する窒素ガスの流量比率が、50〔%〕以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体である。
請求項5に記載の発明は、前記保護層の成膜時のガス圧が、0.5〜1.2〔Pa〕であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体である。
請求項6に記載の発明は、前記保護層の成膜時に導入するハイドロカーボンガスと窒素ガスの和に対する窒素ガスの流量比率が、67〔%〕以上であることを特徴とする請求項5に記載の磁気転写用マスター担体である。
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれかに記載した磁気転写用マスター担体と、磁気転写媒体を密着させる工程と、密着させた前記磁気転写用マスター担体と前記磁気転写媒体に、磁界を印加することにより前記磁気転写媒体に前記磁気転写用マスター担体に記録されている情報を磁気転写する工程と、からなることを特徴とする磁気転写方法である。
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載された磁気転写方法により、情報が磁気転写されたことを特徴とする磁気記録媒体である。
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載された磁気記録媒体を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置である。
以上のように、本発明による磁気転写用マスター担体によれば、耐久性が高く、膜の剥離が生じ難いため、磁気転写を行った場合に、磁気転写用マスター担体に形成されている情報が、磁気記録媒体に、情報の欠落等がなく、高い歩留まりで転写される。また、磁気転写用マスター担体の耐久性が高いため、使用回数が向上するため、磁気記録媒体の製造コストを低下することができる。更には、本発明に係る磁気転写方法により作製された磁気記録媒体、磁気記録再生装置は、磁気転写の際のコンタミネーションの問題が殆どないため、不良や故障が少ないという効果を有している。
本発明は、発明者が磁気転写用マスター担体の磁性層上に、窒素を添加した炭素膜かならなる保護層を形成することにより、磁気転写を行う際の密着工程において、コンタミネーション抑制に非常に有利であることを見出した研究結果に基づくものである。
以下、本発明の第1の実施の形態に係る磁気転写方法について説明する。
〔転写用磁気ディスク〕
図1(a)に示すように、最初に磁気記録媒体である転写用磁気ディスク40の初期磁化を行うが、まず、これに用いられる転写用磁気ディスク40について説明する。
図1(a)に示すように、最初に磁気記録媒体である転写用磁気ディスク40の初期磁化を行うが、まず、これに用いられる転写用磁気ディスク40について説明する。
転写用磁気ディスク40は円盤状の基板の表面の片面或いは、両面に面内磁化膜からなる磁性層が形成されたものであり、高密度ハードディスク等が挙げられる。
円盤状の基板は、ガラスやAl(アルミニウム)等の材料から構成されており、この基板上に非磁性層を形成した後、磁性層を形成する。
非磁性層は、後に形成する磁性層の面内方向の磁気異方性を大きくする等の理由により設けられる。非磁性層に用いられる材料は、Ti(チタン)、Cr(クロム)、CrTi、CoCr、CrTa、CrMo、NiAl、Ru(ルテニウム)、Pd(パラジウム)等が好ましい。非磁性層は、スパッタリング法により上記材料を成膜することにより形成される。非磁性層の厚さは、10nm〜150nmであることが好ましく、20nm〜80nmであることが更に好ましい。
磁性層は、面内磁化膜により形成されており、磁性層に情報が記録される。磁性層に用いられる材料は、Co(コバルト)、Co合金(CoPtCr、CoCr、CoPtCrTa、CoPtCrNbTa、CoCrB、CoNi等)、Fe、Fe合金(FeCo、FePt、FeCoNi等)等が好ましい。これらの材料は、磁束密度が大きく、成膜条件や組成を調整することにより面内の磁気異方性を有している。磁性層は、スパッタリング法により上記材料を成膜することにより形成される。磁性層の厚さは、10nm〜500nmであることが好ましく、20nm〜200nmであることが更に好ましい。
尚、必要に応じて、基板と非磁性層との間に、軟磁性層を設ける場合がある。磁性層の面内磁化状態を安定させ、記録再生時の感度を向上させるためである。軟磁性層の厚さは、50nm〜2000nmであることが好ましく、80nm〜400nmであることが更に好ましい。
本実施の形態では、転写用磁気ディスクの基板として、外形2.5インチの円盤状のガラス基板を用い、スパッタリング装置のチャンバー内にガラス基板を設置し、1.33×10−5Pa(1.0×10−7Torr)まで減圧した後、チャンバー内にAr(アルゴン)ガスを導入し、CrTiターゲットを用い、基板温度が200℃の条件の下で放電させることによりスパッタリング成膜をおこなう。これによりCrTiからなる非磁性層を60nm成膜する。
この後、上記と同様にArガスを導入し、同じチャンバー内にあるCoCrPtターゲットを用い、同じく基板温度が200℃の条件の下で放電させることによりスパッタリング成膜をおこなう。これによりCoCrPtからなる磁性層を25nm成膜する。
以上のプロセスにより、ガラス基板に、非磁性層と磁性層が成膜された転写用磁気ディスク40を作製した。
〔転写用磁気ディスクの初期磁化〕
次に、形成した転写用磁気ディスク40の初期磁化を行う。図1(a)に示すように、転写用磁気ディスク40の初期磁化(直流磁化)は、磁界印加手段30により行う。磁界印加手段30は、不図示の電磁石により矢印の方向に初期化磁界Hiを発生させることができるものであり、コア32による転写用磁気ディスク40の半径方向に延びるギャップ31を有している。このギャップ31より漏れる初期化磁界Hiにより、図2(a)に示すように、転写用磁気ディスク40の磁性層40Mをトラック方向(円周方向)の一方向に初期磁化を行う。具体的には、この初期磁化は、転写用磁気ディスク40の保磁力Hc以上の強度の磁界をギャップ31に発生させ、転写用磁気ディスク40を回転させることにより、転写用磁気ディスク40の全トラックの初期磁化を行う。図3に初期化磁界Hiの印加方法を示す。初期化磁界Hiは転写用磁気ディスク40のトラック40Aと略平行に矢印の方向に印加する。尚、初期磁化は、転写用磁気ディスク40を回転させるのではなく、磁界印加手段30を転写用磁気ディスク40に対し相対的に回転させることにより行ってもよい。
次に、形成した転写用磁気ディスク40の初期磁化を行う。図1(a)に示すように、転写用磁気ディスク40の初期磁化(直流磁化)は、磁界印加手段30により行う。磁界印加手段30は、不図示の電磁石により矢印の方向に初期化磁界Hiを発生させることができるものであり、コア32による転写用磁気ディスク40の半径方向に延びるギャップ31を有している。このギャップ31より漏れる初期化磁界Hiにより、図2(a)に示すように、転写用磁気ディスク40の磁性層40Mをトラック方向(円周方向)の一方向に初期磁化を行う。具体的には、この初期磁化は、転写用磁気ディスク40の保磁力Hc以上の強度の磁界をギャップ31に発生させ、転写用磁気ディスク40を回転させることにより、転写用磁気ディスク40の全トラックの初期磁化を行う。図3に初期化磁界Hiの印加方法を示す。初期化磁界Hiは転写用磁気ディスク40のトラック40Aと略平行に矢印の方向に印加する。尚、初期磁化は、転写用磁気ディスク40を回転させるのではなく、磁界印加手段30を転写用磁気ディスク40に対し相対的に回転させることにより行ってもよい。
〔マスターディスク〕
次に、磁気転写用マスター担体であるマスターディスクについて説明する。
次に、磁気転写用マスター担体であるマスターディスクについて説明する。
図4に示すように、マスターディスク46は、石英ガラス(SiO2)等各種組成のガラス、各種組成のセラミックス、金属、合成樹脂等の非磁性体からなる基板47上に、磁性層48を形成したものであり、初期磁化を行った転写用磁気ディスク40と密着させる密着工程、その後の磁気転写工程において用いる。
マスターディスク46の形成方法は、フォトファブリケーション法や、フォトファブリケーション法により作製した原盤を用いたスタンパー法等により作製する。
以下、図5に基づき、スタンパー法によりマスターディスク46を形成方法について説明する。スタンパー法では、プレス原盤を用いるが、まず、プレス原盤の作製工程について説明する。図5(a)に示すように、表面が平滑なシリコン、ガラスや石英ガラスからなる円形の基板50上に、フォトレジスト層をスピンコーター等により塗布し、プリベーク後に、この円形の基板50を回転させながら、記録する信号に対応して変調したレーザ光(或いは電子ビーム)をフォトレジスト層に照射し、フォトレジスト層の略全面に所定のパターンを露光する。その後、露光した基板50を現像液に浸漬することにより、フォトレジスト層の露光された部分が除去され、基板50上の所定の領域にフォトレジスト層51が形成されたガラス原盤52が作製される。
次に、図5(b)に示すように、ガラス原盤52上のフォトレジスト層51が形成されている面の表面に、Niメッキ(電鋳)を行うことにより、表面にポジ状の凹凸パターンを有するNi原盤53を所定の厚さまで形成する。この後、このNi原盤53をガラス原盤52から剥離する。このNi原盤53をスタンパー用のプレス原盤(金型)として用いることも可能であるが、必要に応じてこのNi原盤53に凹凸バターン上に軟磁性層、保護膜等を被覆してスタンパー用のプレス原盤(金型)とする。このように軟磁性層、保護膜等を形成することにより、その後に作製する転写用磁気ディスク40の磁気特性が向上するからである。
尚、現像後所定の領域にフォトレジスト層の形成されたガラス原盤の表面にメッキを施して、第2の原盤を作製し、第2の原盤の表面に更にNiメッキを施して、ネガ状の凹凸を有するNi原盤を作製してもよい。更に、第2の原盤の表面にメッキを施すか、低粘度の樹脂を押し付けて硬化させることにより第3の原盤を作製し、第3の原盤の表面にNiメッキを施すことにより、ポジ状の凹凸を有するNi原盤を作製してもよい。
Ni原盤53を構成する材料としては、Ni及びNi合金が主に用いられる。このNi原盤53を形成する方法としては、先に説明した無電解メッキ等によるメッキ法の他、スパッタリングやイオンプレーティングといった真空成膜法によっても作製することが可能である。尚、基板50上に塗布されるレジストはポジ型、ネガ型のどちらでも使用可能であるが、ポジ型とネガ型では、露光パターンが反転することに注意する必要がある。
次に、図5(c)に示すように、剥離したNi原盤53をプレス原盤として、射出成型等により樹脂基板47を作製する。樹脂基板47の樹脂材料としては、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体などの塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、アモルファスポリオレフィン及びポリエステルなどが挙げられる。これらの樹脂材料の中では、耐湿性、寸法安定性及び価格などの点から、現在のところポリカーボネートが好ましい。
射出成型により樹脂基板47を形成した場合、成型品である樹脂基板47にバリ等が生じる場合があるが、このようなバリ等はバーニシュ又は研磨加工により除去する。
また、射出成型以外の方法により樹脂基板47を形成する方法として、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂などを使用する方法もある。この場合、プレス原盤に紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂をスピンコート、バーコート等の手法により塗布した後、紫外線或いは電子線を照射することにより硬化させた後、プレス原盤より剥離することにより樹脂基板47が形成される。
以上の工程により作製された樹脂基板47の表面には、突起状のパターンが形成される。この突起状パターンは、後述する転写用磁気ディスク40に転写されるバーストパターンに対応しているものである。
本実施の形態では、図4に示すように、突起状のパターンは、長さb:80mm、長さl:200mmのパターンが形成されており、形成される突起状のパターンの高さ(深さ)tは、80nm〜800nmの範囲が好ましく、100nm〜600nmがより好ましい。
この後、樹脂基板47の突起状パターンの形成されている面に軟磁性体からなる磁性層48の成膜をおこなう。これによりマスターディスク46が作製される。磁性層48を構成する材料は、保磁力Hcが48kA/m(≒600Oe)以下の軟磁性材料により構成されていることが好ましい。具体的には、Co、Co合金(CoNi、CoNiZr、CoNbTaZr等)、Fe、Fe合金(FeCo、FeCoNi、FeNiMo、FeAlSi、FeAl、FeTaN)、Ni、Ni合金(NiFe)等が挙げられる。特に好ましいのは、磁気特性からFeCo、FeCoNiである。又、磁性層48の厚さは、40nm〜320nmの範囲が好ましく、特に、100nm〜300nmの範囲が更に好ましい。磁性層48は、上記材料のターゲットを用いスパッタリング等により行われる。
〔マスターディスクの保護層〕
次に、図5(d)に示すように、磁性層48上に保護層49を形成しマスターディスク46を作製する。後述するように、マスターディスク46は、転写用磁気ディスク40と密着させるが、密着させた際に磁性層48が傷つきやすく、マスターディスク46として使用できなくなってしまうことを防止するためである。更に、保護層49上に潤滑剤層を設けてもよい。潤滑剤層は、転写用磁気ディスク40との接触の際に生じる摩擦による傷の発生などを防止し、耐久性を向上させる効果があるからである。
次に、図5(d)に示すように、磁性層48上に保護層49を形成しマスターディスク46を作製する。後述するように、マスターディスク46は、転写用磁気ディスク40と密着させるが、密着させた際に磁性層48が傷つきやすく、マスターディスク46として使用できなくなってしまうことを防止するためである。更に、保護層49上に潤滑剤層を設けてもよい。潤滑剤層は、転写用磁気ディスク40との接触の際に生じる摩擦による傷の発生などを防止し、耐久性を向上させる効果があるからである。
次に、本実施の形態における保護層49の形成方法について説明する。本実施の形態における保護層49は、窒素含有炭素からなる膜であり、排気可能な減圧チャンバー内に、エチレン(C2H4)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)のガスを導入し、イオンビームガンを用いプラズマを発生させ、化学反応を生じさせることにより形成する。
このとき減圧チャンバー内に導入するガスの流量は、エチレン(C2H4)が20〔sccm〕、窒素(N2)が20〜80〔sccm〕、アルゴン(Ar)が40〔sccm〕であり、加速電圧は、90〔V〕である。保護層49は、3〜30〔nm〕の厚さ形成することが好ましい。
以上のプロセスにより、図6に示すように、各トラックに回転中心から半径方向に線状に延びるサーボ信号55に相当する突起状のパターンが形成されたマスターディスク46が出来上がる。
〔密着工程〕
次に、図1(b)に示すように密着工程において、上記工程により作製したマスターディスク46の突起状パターンの形成されている面と、転写用磁気ディスク40の磁性層40Mの形成されている面とを所定の押圧力で密着させる。
次に、図1(b)に示すように密着工程において、上記工程により作製したマスターディスク46の突起状パターンの形成されている面と、転写用磁気ディスク40の磁性層40Mの形成されている面とを所定の押圧力で密着させる。
転写用磁気ディスク40には、マスターディスク46に密着させる前に、グライドヘッド、研磨体等により、表面の微少突起又は付着塵埃を除去するクリーニング処理(バーニッシング等)が必要に応じて施される。
尚、密着工程では、図1(b)に示すように、転写用磁気ディスク40の片面にマスターディスク46を密着させる場合と、両面に磁性層40Mが形成された転写用磁気ディスク40について、両面からマスターディスク46を密着させる場合とがある。後者の場合では、両面を同時転写することができる利点がある。
〔磁気転写工程〕
次に、図1(c)に基づき磁気転写工程を説明する。
次に、図1(c)に基づき磁気転写工程を説明する。
上記密着工程により転写用磁気ディスク40とマスターディスク46とを密着させたものについて、磁界印加手段30により初期磁化の向きと反対方向に磁界を発生させる。磁界を発生させることにより生じた磁束はコア32内において矢印の向きに生じ、ギャップ31より漏れた記録用磁界Hdの磁束が転写用磁気ディスク40とマスターディスク46に進入することにより磁気転写が行われる。
図7は、磁気転写に用いられる磁気転写装置について、更に詳細に示したものである。磁気転写装置10は、コア32にコイル33が巻きつけられた電磁石34からなる磁界印加手段30を有するものであり、このコイル33に電流を流すことによりギャップ31に磁界が発生する構造になっている。発生する磁界の向きは、コイル33に流す電流の向きによって変えることができる。従って、磁気転写を行う場合には、磁界印加手段30のコイル33に、初期磁化したときにコイル33に流した電流の向きと逆向きの電流を流す。尚、図7では、磁界印加手段30は、密着させた転写用磁気ディスク40とマスターディスク46を介し上下に設けられており、上下に設けられた磁界印加手段30により、ギャップ31に同じ方向に磁界を発生させることができる構成のものである。
磁気転写は、転写用磁気ディスク40及びマスターディスク46を密着させたものを回転させつつ、磁界印加手段30によって記録用磁界Hdを印加し、マスターディスク46に形成されている突起状のパターンからなる情報を転写用磁気ディスク40の磁性層40Mに磁気転写するため、不図示の回転手段が設けられている。尚、この構成以外にも、磁界印加手段30を回転させる機構を設け、転写用磁気ディスク40及びマスターディスク46に対し、相対的に回転させる手法であってもよい。
磁気転写工程における、転写用磁気ディスク40とマスターディスク46に磁界が印加されている時の断面の様子を図2(b)に示す。
図2(b)に示すように、基板47表面に突起状のパターンが形成され、その上に磁性層48が形成されたマスターディスク46と転写用磁気ディスク40とが密着した状態では、マスターディスク46の凸領域は、マスターディスク46の磁性層48と転写用磁気ディスク40の磁性層40Mとが接触している。
このため、記録用磁界Hdを印加すると、磁束は、マスターディスク46の凸領域、即ち、マスターディスク46の磁性層48が保護層49を介し、転写用磁気ディスク40の磁性層40Mと接触している領域では、磁束はマスターディスク46の磁性層48を貫くこととなる。これは、マスターディスク46に形成された磁性層48が軟磁性材料に形成されているためである。一方、マスターディスク46の凹領域、即ち、マスターディスク46の磁性層48が保護層49を介し、転写用磁気ディスク40の磁性層40Mが接触していない領域では、磁束は、マスターディスク46の磁性層48、及び転写用磁気ディスク40の磁性層40Mを貫くこととなる。
従って、記録用磁界Hdを印加することにより生じた磁束は、マスターディスク46の凹領域に対応する転写用磁気ディスク40の磁性層40Mに進入し、この領域の磁化向きを記録用磁界Hdと同一の磁化向きに反転させる。一方、マスターディスク46の凸領域では、磁束は転写用磁気ディスク40の磁性層40Mへは殆ど進入しないため、この領域において磁化向きは反転することなく、初期磁化された向きを保っている。
これにより、転写用磁気ディスク40の磁性層40Mに、マスターディスク46に設けられた突起状のパターンによる情報が、面内の磁気パターンとして記録される。
更に、この様子を立体的に示したものが図8である。図に示すように記録用磁界Hd(太矢印)を印加することにより、マスターディスク46の凸領域に接している転写用磁気ディスク40の磁性層40Mのみ記録用磁界Hdにより磁化反転し、マスターディスク46の凹領域の磁性層40Mは、反転されることなく初期磁化された状態を保ったままとなる。
この後、転写用磁気ディスク40をマスターディスク46から取り外す。これにより、図2(c)に示すように、転写用磁気ディスク40の磁性層40Mには、サーボ信号等の磁気パターンが情報として記録されたものが作製される。
尚、マスターディスク46の基板47に形成された突起状のパターンは、図4に示すポジパターンと反対のネガパターンであってもよい。この場合、初期化磁界Hiの方向及び記録用磁界Hdの方向を各々逆方向にすることにより、転写用磁気ディスク40の磁性層40Mに、同様の磁化パターンを磁気転写することができるからである。
尚、本実施の形態では、磁界印加手段30は、電磁石の場合について説明したが、同様に磁界が発生する永久磁石を用いても良い。
〔保護層の実験、評価〕
次に、保護層49である窒素含有炭素膜の物性値、膜の特性等について、成膜条件の依存性に関し、膜の評価を行った結果について説明する。
次に、保護層49である窒素含有炭素膜の物性値、膜の特性等について、成膜条件の依存性に関し、膜の評価を行った結果について説明する。
最初に、表面硬度の測定方法について説明する。本実施の形態における表面硬度の測定は、微小硬度で表現したものである。これは、通常のビッカース、ヌーブ硬度測定のように大きな荷重でマスターディスク46に圧力を印加することにより行う測定方法では、好ましい硬度範囲を見出すことができないという経験に基づくものである。具体的に、測定装置としてTRIBOSCOPE(HYSITRON社)を用い、2枚の電極板の中間に圧子が設置されたピックアップ電極が置かれた電極の動きに伴う静電容量の変化より、力と変位を高感度に検出する方法で測定を行った。
基板47上に磁性層48を100〔nm〕形成し、更にその上に保護層49として窒素含有炭素膜を10〔nm〕成膜したマスターディスク46について、ダイヤモンド先端稜角90〔度〕、先端曲率半径35〜50〔nm〕の三角錐型を用いて押し込み加重100〔μN〕、押し込み速度2〜4〔nm/秒〕で押し込み、最大押し込み深さに基づき表面硬度を算出した。
次に、膜の内部応力(膜応力)Sの測定方法について説明する。膜の内部応力(膜応力)Sは、フックの法則を適用し、以下の手順で測定を行った。
S=δEsD2/3L2t(1−χs)
ここで、δ:変位量、t:膜厚、Es:基板のヤング率、D:基板厚、L:基板長、χs:基板ポアソン比である。
ここで、δ:変位量、t:膜厚、Es:基板のヤング率、D:基板厚、L:基板長、χs:基板ポアソン比である。
ガラス上に、基板として用いられる短冊状(10〔mm〕×40〔mm〕)にしたポリイミドフィルムを貼り付け、基板端面1点を保持する。保護層49成膜後、ポリイミドフィルムの自由端の変位量δを測定し、上記式より内部応力Sの値を算出した。
尚、ポリイミドフィルムのヤング率Es=7.6×109〔Pa〕、ポリイミドフィルムの厚D=5×10−5〔m〕、ポリイミドフィルム長L=0.4〔m〕、ポリイミドフィルムのポアソン比χs=0.33、保護層厚t=25×10−9〔m〕とした。
次に、マスターディスク46の耐久性の評価について説明する。マスターディスク46の耐久性は、マスターディスク46と転写用磁気ディスク40を所定の回数密着させた後、転写用磁気ディスク40の表面を観察することにより行った。
この評価では、マスターディスク46として、窒素含有炭素膜からなる保護層49を10〔nm〕形成したものを用い、転写用磁気ディスク40としては、2.5インチ、保磁力Hc=4600〔Oe〕である一般的なハードディスク媒体を用いた。このマスターディスク46と転写用磁気ディスク40とを4.9〔kg/cm2〕の力で、1万回密着した後、ハロゲン光観察(分解能:0.5〔μm〕以上)により転写用磁気ディスク40の表面におけるキズの有無を調べた。
表1並びに図9に、マスターディスク46の窒素含有炭素膜からなる保護層49を成膜する際の窒素(N2)流量を変化させた場合において、膜応力、表面硬度、転写用磁気ディスク40における表面のキズの有無について調べた結果を示す。保護層49の成膜条件は、排気可能な減圧チャンバー内に、エチレン(C2H4)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)のガスを導入し、イオンビームガンを用いプラズマを発生させ、化学反応を生じさせることにより形成した。
このとき減圧チャンバー内に導入するガスは、エチレン(C2H4)が20〔sccm〕、アルゴン(Ar)が40〔sccm〕において、窒素(N2)の流量を変化させた。この状態で成膜の際の加速電圧90〔V〕とし、保護層49を10〔nm〕成膜した。
窒素ガス流量が0〔sccm〕である場合、即ち減圧チャンバーに導入するガスが、エチレンとアルゴンのみである場合、エチレンと窒素の流量の和に対する窒素の流量比は、0〔%〕である。この時の膜の内部応力は0.74〔GPa〕、表面硬度は18.4〔GPa〕であり、一万回密着を繰り返した後の転写用磁気ディスク40の表面にはキズが発生した。尚、このキズの原因は、ラマン分光解析の結果、マスターディスク46より剥離した保護層49の膜がマスターディスク46に付着したものであることが確認された。
次に、窒素ガス流量が10〔sccm〕である場合、エチレンと窒素の流量の和に対する窒素の流量比は、33〔%〕である。この時の膜の内部応力は0.56〔GPa〕、表面硬度は15.2〔GPa〕であり、一万回密着を繰り返した後の転写用磁気ディスク40の表面にはキズが発生した。
次に、窒素ガス流量が20〔sccm〕である場合、エチレンと窒素の流量の和に対する窒素の流量比は、50〔%〕である。この時の膜の内部応力は0.38〔GPa〕、表面硬度は13.9〔GPa〕であり、一万回密着を繰り返した後の転写用磁気ディスク40の表面にはキズは確認されなかった。
次に、窒素ガス流量が40〔sccm〕である場合、エチレンと窒素の流量の和に対する窒素の流量比は、67〔%〕である。この時の膜の内部応力は0.30〔GPa〕、表面硬度は11.2〔GPa〕であり、一万回密着を繰り返した後の転写用磁気ディスク40の表面にはキズは確認されなかった。
次に、窒素ガス流量が60〔sccm〕である場合、エチレンと窒素の流量の和に対する窒素の流量比は、75〔%〕である。この時の膜の内部応力は0.22〔GPa〕、表面硬度は10.7〔GPa〕であり、一万回密着を繰り返した後の転写用磁気ディスク40の表面にはキズは確認されなかった。
次に、窒素ガス流量が80〔sccm〕である場合、エチレンと窒素の流量の和に対する窒素の流量比は、80〔%〕である。この時の膜の内部応力は0.15〔GPa〕、表面硬度は9.8〔GPa〕であり、一万回密着を繰り返した後の転写用磁気ディスク40の表面にはキズは確認されなかった。
以上より、窒素ガスの流量を増やすに従って、保護層49の内部応力並びに、表面硬度が低下し、転写用磁気ディスク40の表面に傷が生じない、即ち、マスターディスク46の膜の剥離がなく、耐久性が高くなる傾向にあることが解った。
具体的には、エチレンガスの流量が20〔sccm〕であって窒素ガスの流量が20〔sccm〕以上である場合(この場合の流量比は50〔%〕以上である。)、マスターディスク46における膜の剥離は確認されず耐久性は高いことが解った。尚、この時のマスターディスク46の保護層49の内部応力は0.38〔GPa〕以下であり、表面硬度は13.9〔GPa〕以下である。また、膜の内部応力は、窒素を含まない炭素膜と比べて窒素含有炭素膜では最大1/5程度低減させることができ、表面硬度については、窒素を含まない炭素膜と比べて窒素含有炭素膜では最大1/2程度低減させることができた。尚、成膜時の窒素流量の多い窒素含有炭素膜を保護層49として用いたマスターディスク46において、キズの発生がないのは、保護層49である窒素含有炭素膜の表面硬度が低下していること、窒素含有炭素膜の内部応力が低下していることによるものと考えられる。保護層49である窒素含有炭素膜の表面硬度が高いと、マスターディスク46と転写用磁気ディスク40を密着させた場合、転写用磁気ディスク40の表面にダメージを与えやすく、結果としてキズが発生するものと考えられ、保護層49である窒素含有炭素膜の内部応力が高いと、マスターディスク46と転写用磁気ディスク40を密着させた場合、保護層49である窒素含有炭素膜にも応力がかかるため、膜の内部応力が高いと密着の際に生じる応力の影響により、膜が剥れやすくなるものと考えられる。
表2に、マスターディスク46の窒素含有炭素膜からなる保護層49を成膜する際の成膜時における圧力を変化させた場合における膜応力、表面硬度、転写用磁気ディスク40における表面のキズの有無について調べた結果を示す。
保護層49は、減圧チャンバー内にエチレン(C2H4)と窒素(N2)の流量比を0.67とした状態で、アルゴン(Ar)を40〔sccm〕とともに導入し、加速電圧90〔V〕で成膜を行った。尚、保護層49の厚さは、10〔nm〕である。
減圧チャンバー内の成膜時の圧力が、0.16〔Pa〕である場合、膜の内部応力は0.52〔GPa〕、表面硬度は12.3〔GPa〕であり、一万回密着を繰り返した後の転写用磁気ディスク40の表面にキズが発生した。尚、このキズの原因は、ラマン分光解析の結果、マスターディスク46より剥離した保護層49の膜がマスターディスク46に付着したものであることが確認された。
次に、減圧チャンバー内の成膜時の圧力が、0.30〔Pa〕である場合、膜の内部応力は0.38〔GPa〕、表面硬度は11.6〔GPa〕であり、一万回密着を繰り返した後の転写用磁気ディスク40の表面にキズが発生した。
次に、減圧チャンバー内の成膜時の圧力が、0.50〔Pa〕である場合、膜の内部応力は0.30〔GPa〕、表面硬度は11.2〔GPa〕であり、一万回密着を繰り返した後の転写用磁気ディスク40の表面においてキズは確認されなかった。
次に、減圧チャンバー内の成膜時の圧力が、0.75〔Pa〕である場合、膜の内部応力は0.18〔GPa〕、表面硬度は10.8〔GPa〕であり、一万回密着を繰り返した後の転写用磁気ディスク40の表面においてキズは確認されなかった。
以上より、成膜時における減圧チャンバー内の圧力が高くなるに従って、保護層49の内部応力並びに、表面硬度が低下し、転写用磁気ディスク40の表面に傷が生じない、即ち、マスターディスク46からの膜の剥離がなく、耐久性が高くなる傾向にあることがわかった。
具体的には、エチレンと窒素の和に対する窒素の流量が67〔%〕である場合、成膜時における減圧チャンバー内の圧力が少なくとも0.5〔Pa〕以上であれば、マスターディスク46における膜の剥離は確認されず耐久性は高いことが解った。尚、この時のマスターディスク46の保護層49の内部応力は、0.30〔GPa〕以下であり、表面硬度は10.8〔GPa〕以下である。
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態について、図10に基づき説明する。
次に、第2の実施の形態について、図10に基づき説明する。
第2の実施の形態は、磁気転写工程における磁界の印加が、面内方向ではなく垂直方向のものである。なお、転写用磁気ディスク60の磁性層60Nには、垂直磁化膜が用いられている。
最初に、図10(a)に示すように、初期化磁界Hiを転写用磁気ディスク60に対し垂直に印加し、転写用磁気ディスク60の磁性層60Nの初期磁化を行う。これにより、図11(a)に示すように、転写用磁気ディスク60の磁性層60Nでは、磁化は一方向に垂直に初期磁化Piされる。
次に、図10(b)に示すように、マスターディスク66の突起状のパターンの形成されている面と、転写用磁気ディスク60の磁性層60Nの形成されている面とを所定の押圧力で密着させる。
尚、図11(b)に示すように、マスターディスク66は、基板67上の凸部においてのみ磁性層68を形成し、更に、突起状のパターンの形成されている面の全体を窒素含有炭素膜からなる保護層69を成膜したものである。本実施の形態における保護層69は、窒素含有炭素からなる膜であり、排気可能な減圧チャンバー内に、エチレン(C2H4)、窒素(N2)、アルゴン(Ar)のガスを導入し、イオンビームガンを用いプラズマを発生させ、化学反応を生じさせることにより形成する。
このとき減圧チャンバー内に導入するガスの流量は、エチレン(C2H4)が20〔sccm〕、窒素(N2)が20〜80〔sccm〕、アルゴン(Ar)が40〔sccm〕であり、加速電圧は、90〔V〕である。保護層69は、3〜30〔nm〕の厚さ形成することが好ましい。これにより、耐久性が高いマスターディスク66を得ることができる。
この後、図10(c)に示すように、磁気転写工程により、記録用磁界Hdを垂直に印加しつつ、マスターディスク66及び転写用磁気ディスク60を回転させることにより、マスターディスク66に記録されている情報を転写用磁気ディスク60に磁気転写を行う。尚、この他、磁界印加手段を回転させる機構を設け、転写用磁気ディスク60及びマスターディスク66に対し、相対的に回転させる手法であってもよい。具体的には、永久磁石や電磁石からなる磁界印加手段により、マスターディスク66、転写用磁気ディスク60に対し垂直な磁界を印加する。
この状態を図11(b)に示す。基板67表面に突起状のパターンが形成され、その上に磁性層68が形成されたマスターディスク66と転写用磁気ディスク60とが密着した状態においては、マスターディスク66の凸領域では、マスターディスク66の磁性層68は保護層69を介し、転写用磁気ディスク60の磁性層60Mと接触している。
このため、記録用磁界Hdを印加すると磁束Gは、マスターディスク66の凸領域、即ち、マスターディスク66の磁性層68と転写用磁気ディスク60の磁性層60Mと接触している領域では、記録用磁界Hdにより磁束Gが発生し、マスターディスク66の磁性層68の磁化向きが記録用磁界Hdの方向に揃い、転写用磁気ディスク60の磁性層60Mに磁気情報が転写される。一方、マスターディスク66の凹領域、即ち、マスターディスク66の磁性層68が形成されていない領域では、マスターディスク66の磁性層68が存在しないため、記録用磁界Hdの印加によって、転写用磁気ディスク60の磁性層60Mの磁化向きが変わることはなく、磁気転写は行われず初期磁化の状態を保ったままである。尚、保護層69は極めて薄いため磁気転写に影響を与えることはない。
図11(c)に示すように、転写用磁気ディスク60の磁性層60Nには、磁化向きが記録磁化Pdの向きに揃えられた情報が記録される。一方、マスターディスク66の磁性層60Nの形成されていない領域は、転写用磁気ディスク60の磁性層60Nの磁化向きは初期磁化Piの状態を保ったままである。また、情報の記録された磁化Pdと初期磁化された状態を保った磁化Piの境界には、磁壁Dが形成される。このようにして、転写用磁気ディスク60の磁性層60Nに、マスターディスク66の情報が磁気転写される。これにより、低コストで情報の欠落等のない信頼性の高い転写用磁気ディスク60を得ることができる。
マスターディスク66より情報が磁気転写された転写用磁気ディスク60は、ハードディスク等の磁気記録装置に組み込まれて使用される。これにより、歩留まりが高く、故障や不良の少ない磁気記録装置を得ることができる。
以上、本発明の磁気転写方法、磁気記録媒体等について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行うことは可能である。
10…磁気転写装置、30…磁界印加手段、31…ギャップ、32…コア、33…コイル、34…電磁石、40…転写用磁気ディスク(スレーブディスク)、40M…磁性層、46…マスターディスク、47…基板、48…磁性層、G…磁束、Hi…初期化磁界、Hd…記録用磁界
Claims (9)
- 磁気記録媒体に情報を転写するための凹凸パターンが表面に形成され、前記凹凸パターンの形成された領域と前記磁気記録媒体を密着させて、磁界を印加することにより前記凹凸パターンにより記録されている情報を前記磁気記録媒体に転写するために用いられる磁気転写用マスター担体において、
前記磁気転写用マスター担体の磁性層上に保護層が形成されており、前記保護層が窒素含有炭素膜からなるものであることを特徴とする磁気転写用マスター担体。 - 前記保護層は、減圧下において、原料ガスとして、ハイドロカーボンガス、窒素、アルゴンを導入し、イオンビームガンを用いて成膜した窒素含有炭素膜からなるものであることを特徴とする請求項1に記載の磁気転写用マスター担体。
- 前記保護層の厚さは、3〜30〔nm〕であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気転写用マスター担体。
- 前記保護層の成膜時に導入するハイドロカーボンガスと窒素ガスの和に対する窒素ガスの流量比率が、50〔%〕以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体。
- 前記保護層の成膜時の圧力が、0.5〜1.2〔Pa〕であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の磁気転写用マスター担体。
- 前記保護層の成膜時に導入するハイドロカーボンガスと窒素ガスの和に対する窒素ガスの流量比率が、67〔%〕以上であることを特徴とする請求項5に記載の磁気転写用マスター担体。
- 請求項1から6のいずれかに記載した磁気転写用マスター担体と、磁気転写媒体を密着させる工程と、
密着させた前記磁気転写用マスター担体と前記磁気転写媒体に、磁界を印加することにより前記磁気転写媒体に前記磁気転写用マスター担体に記録されている情報を磁気転写する工程と、
からなることを特徴とする磁気転写方法。 - 請求項7に記載された磁気転写方法により、情報が磁気転写されたことを特徴とする磁気記録媒体。
- 請求項8に記載された磁気記録媒体を備えたことを特徴とする磁気記録再生装置。
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EP2063421A2 (en) | 2007-11-21 | 2009-05-27 | FUJIFILM Corporation | Master carrier for magnetic transfer and magnetic recording medium manufactured using the same |
-
2006
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