JP2007303622A - 摺動部材 - Google Patents

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Nobuo Sakate
宣夫 坂手
Yoshio Tanida
芳夫 谷田
Akio Wakasaki
章夫 若崎
Yasuo Uosaki
靖夫 魚崎
Masahiko Shibahara
雅彦 芝原
Shinji Kadoshima
信司 角島
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Abstract

【課題】低温から高温にわたって摺動部材の摩擦係数を低下させることができる摺動部材を提供する。
【解決手段】潤滑油を介して相手部材と摺接する摺動部材1は、前記相手部材と摺接する摺接面5に前記潤滑油を溜める油溜用凹部10を備え、該油溜用凹部は、温度の上昇に伴って前記油溜用凹部の容積が小さくなるように構成されている。前記油溜用凹部は、前記摺動部材を構成する母材の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する材料30を前記摺接面に設けられた下穴20に前記摺接面から凹状に窪んだ状態で埋設することにより形成されている。
【選択図】図3

Description

この発明は、潤滑油を介して相手部材と摺接する摺動部材に関する。
例えば自動車用エンジンに用いられるピストンリング及びシリンダライナなど多くの機械部品の摺動部に使用される摺動部材は、潤滑油を介して相手部材と摺接されることが多い。例えばシリンダライナなどの摺動部材では、摺動抵抗の低下、焼付きの防止あるいは摺動部に発生する熱の除去等のために、摺動部材と相手部材との間に潤滑油が供給されている。
このように、潤滑油を介して相手部材と摺接する摺動部材においては、相手部材と摺接する摺接面に潤滑油を溜める油溜用凹部を形成し該油溜用凹部に潤滑油を保持して摩擦抵抗を低下させることが知られている。例えば特許文献1には、摺接面に形成された微小くぼみの面積割合を規定する機械部品の摺接面構造が開示され、例えば特許文献2には、摺接面に設けられた微細な凹部の断面形状が摺動方向前端のみ略直角な壁面を有する略直角三角形状である摺動部材が開示されている。
特開2005ー24050号公報 特開2005ー249194号公報
しかし、前記特許文献1及び特許文献2では、摺動部材の摺接面に形成された油溜用凹部について潤滑油の特性を充分に考慮して形成されているものではない。すなわち、潤滑油は、温度の上昇に伴ってその粘度が一般に低下するが、この潤滑油の粘度−温度特性を考慮して形成されているものではない。
本願発明者等は、種々の試験研究を重ねた結果、摺動部材の摺接面に設けられた油溜用凹部について、潤滑油の温度が低い場合には油溜用凹部の容積が大きいほうが摺動部材の摩擦抵抗を下げる効果があり、潤滑油の温度が高い場合には油溜用凹部の容積が小さいほうが摺動部材の摩擦抵抗を下げる効果があることを見出した。
かかる知見に基づいて、潤滑油を介して相手部材と摺接する摺動部材において、該摺動部材が低温から高温にわたって使用される際に、摺接面に形成された油溜用凹部の容積を温度に応じて変化させることができれば、低温から高温にわたって摺動部材の摩擦抵抗を低下させることができると考えられる。
そこで、この発明は、潤滑油を介して相手部材と摺接する摺動部材において、摺接面に形成された油溜用凹部の容積を温度に応じて変化させ、低温から高温にわたって摺動部材の摩擦係数を低下させることができる摺動部材を提供することを目的とする。
このため、本願の請求項1に係る摺動部材は、潤滑油を介して相手部材と摺接する摺動部材であって、前記相手部材と摺接する摺接面に前記潤滑油を溜める油溜用凹部を備え、該油溜用凹部は、温度の上昇に伴って前記油溜用凹部の容積が小さくなるように構成されていることを特徴としたものである。
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記油溜用凹部は、前記摺動部材を構成する母材の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する材料を前記摺接面に設けられた下穴に前記摺接面から凹状に窪んだ状態で埋設することにより形成されていることを特徴としたものである。
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記摺接面に設けられた下穴に埋設される材料の線膨張係数が、前記摺動部材を構成する母材の線膨張係数の2倍以上であることを特徴としたものである。
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項2又は3に係る発明において、前記摺動部材を構成する母材が、鋼材、鋳鉄材又はアルミニウム合金材であり、前記摺接面に設けられた下穴に埋設される材料が、樹脂材であることを特徴としたものである。
潤滑油の粘度に応じた油溜用凹部の容積の最適値が存在する理由は必ずしも明らかになっていないが、以下のメカニズムを推察している。
本願の請求項1に係る摺動部材によれば、油溜用凹部は、温度の上昇に伴って油溜用凹部の容積が小さくなるように構成されることにより、温度の上昇に伴って粘度が低下する潤滑油を、温度の上昇に伴って油溜用凹部から摺接面に流出させることができ、低温から高温にわたって摺動部材の摩擦係数を低下させることができる。
すなわち、高温時には、低温時に比して油溜用凹部の容積を小さくすることで、低温時に比して粘度の小さい潤滑油を油溜用凹部から摺接面に流出させ、摺動部材の摩擦係数を低下させることができる。一方、低温時には、高温時に比して油溜用凹部の容積を大きくすることで、高温時に比して粘度の大きい潤滑油が油溜用凹部から摺接面に流出することを抑制し、潤滑油が高粘度であるが故の抵抗を下げ、摺動部材の摩擦係数を低下させることができる。
また、本願の請求項2の発明によれば、油溜用凹部は、摺動部材を構成する母材の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する材料を摺接面に設けられた下穴に摺接面から凹状に窪んだ状態で埋設して形成されることにより、複雑な機構を用いることなく、材料の特性、具体的には材料の線膨張係数を利用して、比較的簡便に前記効果を奏することができる。
更に、本願の請求項3の発明によれば、摺接面に設けられた下穴に埋設される材料の線膨張係数が、摺動部材を構成する母材の線膨張係数の2倍以上であることにより、温度の上昇に伴って油溜用凹部の容積を確実に小さくすることができ、前記効果を確実に奏することができる。
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、摺動部材を構成する母材が、鋼材、鋳鉄材又はアルミニウム合金材であり、摺接面に設けられた下穴に埋設される材料が、樹脂材であることにより、前記効果を有効に実現し得る、摺動部材を構成する母材と該摺動部材の摺接面に設けられた下穴に埋設される材料との組み合わせを特定することができる。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
本実施形態では、ピンオンディスク式摩擦試験を用いて本実施形態に係る摺動部材の摩擦特性を評価した。図1は、ピンオンディスク式摩擦試験に用いるディスク及びピンを模式的に示す平面説明図である。図1に示すように、前記摩擦試験では、試験片として、円盤状に形成されたディスク1と、該ディスク1上に配置された3個の円柱状のピン2とが用いられる。該ピン2は、ディスク1の中心軸Xの周囲においてそれぞれ120度の等間隔で配置されている。なお、ディスク1及びピン2の材料としてはともに鋼材を用いた。
前記摩擦試験では、固定されたディスク1上に配置されたピン2がそれぞれ、ディスク1の表面5に所定の加圧力で加圧されながらディスク1の中心軸Xを中心として回転されることにより、ディスク1とピン2との間の摩擦特性を評価することができる。本実施形態では、ディスク1とピン2とが摺接するディスク1の表面5に潤滑油(不図示)を供給し、潤滑油を介してピン2と摺接するディスク1の摩擦特性を評価した。
前記摩擦試験に用いた試験片の形状及び材質を以下に示す。
A)摩擦試験に用いた試験片の形状及び材質
・ピン :φ10mm円柱×3個
・ディスク:φ60mm円盤
・ピン及びディスクの材質:S25C(鋼)
図2は、図1におけるA部を拡大した拡大平面説明図である。図2に示すように、本実施形態に係る摺動部材としてのディスク1の表面5には、ディスク1とピン2とが摺接する際に潤滑油を溜める油溜用凹部10が形成されている。該油溜用凹部10は、後述するように、円状に形成されるとともにディスク1の表面5から凹状に窪んで形成されている。
前記油溜用凹部10は、図2に示すように、ディスク1の表面5において横方向(図2におけるY方向)及び縦方向(図2におけるZ方向)にそれぞれ互い違いに設けられており、横方向及び縦方向においてそれぞれ所定の間隔Lを隔てて設けられている。なお、本実施形態では、油溜用凹部10の直径が1mmに設定され、間隔Lが2mmに設定されており、ディスク1の表面5における油溜用凹部10の面積率が9.8%である。
次に、本実施形態に係る摺動部材としてのディスク1の表面5に設けられる油溜用凹部10の作製方法について図3を参照しながら説明する。図3は、本実施形態に係る摺動部材に設けられる油溜用凹部の作製工程を示す説明図である。なお、図3では、ディスク1に形成された1つの油溜用凹部10についてのみ示す。
図3の(a)は、ディスク1の表面5に下穴20が形成された状態を示す説明図である。図3の(a)に示すように、先ず、本実施形態に係る摺動部材としてのディスク1に、例えばNCボール盤等によって所定の下穴深さDまでドリル加工を行ない、ディスク1の表面5に略円柱状の下穴20を形成する。この下穴20は、円柱状に形成されるとともにその先端側がドリル形状に応じて円錐状に形成されている。
前記ディスク1の表面5に下穴20が形成されると、該下穴20に対して樹脂材を擦り込ませる。図3の(b)は、前記ディスク1に形成された下穴20に樹脂材が擦り込まれる状態を示す説明図である。図3の(b)に示すように、ディスク1の表面5に形成された下穴20に対して、250℃に加熱溶融された樹脂材30をディスク1の表面5から擦り込ませる。なお、下穴20に樹脂材30が擦り込まれる際には、下穴20内に気体が残存する、あるいは樹脂材30内に気泡が存在する場合がある。
そこで、ディスク1に形成された下穴20に樹脂材30が擦り込まれると、ディスク1に対して脱気処理を行う。図3の(c)は、前記ディスク1に対して脱気処理が行われた状態を示す説明図である。下穴20に樹脂材30が擦り込まれた状態にあるディスク1を真空加熱炉において250℃に加熱して脱気処理を行う。この脱気処理によって、図3の(c)に示すように下穴20内に樹脂材30が埋め込まれ、下穴20内に残存する気体や樹脂材30内に存在する気泡が取り除かれる。
ディスク1の下穴20に樹脂材30が埋め込まれると、次に、所定の加熱温度Tにディスク1を加熱した状態で樹脂材30を平坦に加工する。図3の(d)は、前記ディスク1に埋め込まれた樹脂材30が所定の加熱温度Tで加工された状態を示す説明図である。脱気処理後のディスク1を所定の加熱温度Tに加熱した状態で、下穴20に埋め込まれた樹脂材30を平坦に加工し、図3の(d)に示すように、樹脂材30の表面35がディスク1の表面5と面一になるように加工する。
そして、加熱温度Tで樹脂材30の表面35がディスク1の表面5と面一になるように加工されると、ディスク1を加熱温度Tから冷却する。図3の(e)は、前記ディスク1が加熱温度Tから冷却された状態を示す説明図である。ディスク1を加熱温度Tから冷却すると、ディスク1の表面5と面一になるように加工された樹脂材30の表面35が、図3の(e)に示すようにディスク1の表面5から凹状に湾曲して窪み、深さDを有する油溜用凹部10が形成される。
前記油溜用凹部10は、加熱温度Tから冷却される際に、ディスク1を構成する鋼材と樹脂材30との線膨張係数の差に基づいて形成され、ディスク1を構成する鋼材の線膨張係数より大きい線膨張係数を有する樹脂材30を用いることにより形成される。また、油溜用凹部10は、加熱温度Tから温度が低下するにつれてその深さDが大きくなる。すなわち、油溜用凹部10は、加熱温度Tより低い温度では、温度の上昇に伴ってその深さDが小さくなるように形成されている。
このようにして、ディスク1の表面5に潤滑油を溜める油溜用凹部10が設けられ、該油溜用凹部10は、温度の上昇に伴って油溜用凹部10の深さDが小さくなるように、すなわち油溜用凹部10の容積が小さくなるように構成される。また、前記油溜用凹部10は、ディスク1を構成する母材の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する樹脂材30を下穴20にディスク1の表面5から凹状に窪んだ状態で埋設することにより形成される。
本実施形態では、下穴20に埋め込まれる樹脂材30として、実施例1ではポリプロピレン(PP)を用い、実施例2ではフッ素樹脂(PTFE)を用いた。また、ディスク1を構成する母材としては、上述したように実施例1及び実施例2ともに鋼材を用いた。実施例1及び実施例2について、ディスクを構成する母材と樹脂材の材質及びその線膨張係数並びにその成形条件等を以下の表1に示す。なお、樹脂材の加工温度とは、ディスク1の下穴20に埋め込まれた樹脂材30を加工する際の加熱温度Tを表す。
Figure 2007303622
また、比較例として、ディスク1に油溜用凹部を設けないもの(比較例1)と、ディスク1に所定の深さを有する油溜用凹部を設けたもの(比較例2及び比較例3)を作製した。図4は、比較例として用いたディスクの断面構造を示す断面説明図であり、図4の(a)は、比較例1のディスクの断面構造を示す断面説明図、図4の(b)は、比較例2及び比較例3のディスクの断面構造を示す断面説明図である。
図4の(a)に示すように、ディスク40の表面45に油溜用凹部が形成されていないディスク40を比較例1として用いた。また、図4の(b)に示すように、ディスク50の表面55に円柱状に窪む油溜用凹部52をフォトエッチングにより形成したディスク50を比較例2及び比較例3として用いた。比較例2及び比較例3では、油溜用凹部52の直径を1mmに設定し、比較例2では油溜用凹部52の深さDを6μmに設定し、比較例3では油溜用凹部52の深さDを11μmに設定した。なお、比較例として用いたディスク40、50の材料としては鋼材を用いた。
以上のようにして得られたディスクについて、ピンオンディスク式摩擦試験を用いて、潤滑油を介してピン2と摺接する前記ディスクの摩擦特性を評価する試験を行った。ピンオンディスク式摩擦試験に用いた試験条件等を以下に示す。なお、試験温度については、供給される潤滑油の温度を試験温度として試験温度25℃及び90℃で行った。
B)ピンオンディスク式摩擦試験に用いた試験条件等
・面圧 :10MPa (荷重 2356N)
・摺速 :0.5m/s(回転速度 239rpm)
・摩擦軌跡の中心直径:40mm
・潤滑油 :タービン油 (給油量 500ml/min)
・試験温度:25℃、90℃
図5は、ピンオンディスク式摩擦試験の試験結果を示すグラフである。図5では、試験温度を横軸にとり、摩擦係数を縦軸にとって表示している。なお、図5では、比較例1を□印で表し、比較例2を×印で表し、比較例3を○印で表し、実施例1を◆印で表し、実施例2を▲印で表している。
図5に示すように、潤滑油を介してピンと摺接するディスクの摩擦特性について、ディスクに油溜用凹部を設けない比較例1が、試験温度25℃及び90℃においてともに最も摩擦係数が高くなっている。これに対し、ディスクに所定の大きさを有する油溜用凹部を設けた比較例2及び比較例3では、比較例1に比して試験温度25℃及び90℃においてともに摩擦係数が低くなっている。
また、比較例2及び比較例3に関して、試験温度25℃では、比較例2に比してディスクに設けられる油溜用凹部の容積が大きい比較例3が、比較例2に比して摩擦係数が低くなっており、試験温度90℃では、比較例3に比してディスクに設けられる油溜用凹部の容積が小さい比較例2が、比較例3に比して摩擦係数が低くなっている。
このことは、上述したように、摺動部材であるディスクの摺接面に設けられた油溜用凹部について、潤滑油の温度が低い場合には油溜用凹部の容積が大きいほうが摺動部材の摩擦抵抗を下げる効果があり、潤滑油の温度が高い場合には油溜用凹部の容積が小さいほうが摺動部材の摩擦抵抗を下げる効果があることを示している。
これに対し、実施例1は、比較例1、比較例2及び比較例3に比して試験温度25℃及び90℃においてともに摩擦係数が低くなっている。また、実施例2においても、比較例1、比較例2及び比較例3に比して試験温度25℃及び90℃においてともに摩擦係数が低くなっている。更に、実施例2は、実施例1よりも試験温度25℃及び90℃においてともに摩擦係数が低くなっている。
このように、潤滑油を介してピン2と摺接するディスク1において、該ディスク1に設けられる油溜用凹部10を、温度の上昇に伴って油溜用凹部10の容積が小さくなるように構成することにより、低温から高温にわたってディスク1の摩擦係数を低下させることができる。
また、本実施形態では、実施例1及び実施例2のディスク1に設けられた油溜用凹部10について、試験温度25℃及び90℃における油溜用凹部10の穴の深さを算出した。具体的には、試験温度25℃又は90℃において油溜用凹部10の形状を測定し、測定された油溜用凹部10の形状から算出される油溜用凹部の容積と同一容積を有する円柱に換算して、油溜用凹部10の穴の深さを算出した。
図6は、油溜用凹部10の穴の深さの算出方法を模式的に示す説明図である。図6の(a)は、油溜用凹部10の形状測定を示す説明図である。ディスク1に設けられた油溜用凹部10の穴の深さの算出に際し、先ず、試験温度25℃又は90℃にディスク1を保持した状態で、形状測定手段60を用いてディスク1の下穴20に埋め込まれた樹脂材30の表面35を形状測定した。
図6の(b)は、油溜用凹部10の形状を示す説明図である。形状測定手段60によって形状測定された樹脂材30の表面35とディスク1の表面5とから形作られる油溜用凹部10は、図6の(b)に示すように球の一部を切り取った形状をしており、その直径がLでありその深さがDである。なお、上記直径Lは1mmに設定されている。
図6の(c)は、油溜用凹部10の形状から算出される前記油溜用凹部10の容積と同一容積を有する円柱を示す説明図である。形状測定手段60によって形状測定された油溜用凹部10についてその容積を算出し、図6の(c)に示すように、油溜用凹部10の容積と同一容積を有しその直径がLである円柱15に置き換えることにより、円柱の高さ、すなわち油溜用凹部10の穴の深さDを算出した。
図7は、油溜用凹部10の穴の深さと温度との関係を示すグラフである。図7では、温度を横軸にとり、上記算出した油溜用凹部10の穴の深さDを縦軸にとって表示しており、実施例1を◆印で表し、実施例2を□印で表している。なお、比較例2及び比較例3における油溜用凹部の深さDを二点鎖線により示している。
図7に示すように、実施例1においては、ディスク1に設けられた油溜用凹部10の穴の深さDが、試験温度25℃では約11μmであり、試験温度90℃では約6μmであり、温度の上昇に伴って小さくなっている。また、実施例2においては、油溜用凹部10の穴の深さDが、試験温度25℃では約13μmであり、試験温度90℃では約4μmであり、温度の上昇に伴って小さくなっている。即ち、実施例1及び実施例2では、温度上昇に伴って油溜用凹部10の容積が小さくなっていることが分かる。
図7において、実施例1及び実施例2についてそれぞれ、温度25℃及び90℃における油溜用凹部の穴の深さDを結ぶ直線を横軸まで延長すると、実施例1では約160℃で横軸と交わり、実施例2では約120℃で横軸と交わる。このことは、加熱温度T、すなわち実施例1では160℃、実施例2では120℃に加熱した状態で樹脂材30の表面35がディスク1の表面5と面一になるように加工されたことを表している。
本実施形態では、摺動部材としてのディスク1を構成する母材として鋼材が用いられ、樹脂材30としてポリプロピレン又はフッ素樹脂(PTFE)が用いられているが、摺動部材を構成する母材として鋳鉄又はアルミニウム合金を用いるようにしてもよく、また、樹脂材としてその他のナイロン等を用いることも可能である。摺動部材を構成する母材及び樹脂材についてその材質及びその線膨張係数を以下の表2に示す。
Figure 2007303622
表2に示すように、その他のナイロン等としては、線膨張係数が50〜100×10−6/℃の範囲のものが使用可能である。また、ディスク1を構成する母材の線膨張係数に対する樹脂材の線膨張係数としては、母材としてアルミニウム合金を用い樹脂材としてその他のナイロン等を用いた場合を含め少なくとも2倍以上として設定可能である。
また、本実施形態に係る摺動部材として、ピンオンディスク摩擦試験用のディスク1について記述しているが、例えばシリンダライナやカムなど、機械部品の摺動部に用いられるその他の摺動部材においても、温度の上昇に伴って油溜用凹部の容積が小さくなる油溜用凹部を前記摺動部材に設けることにより、低温から高温にわたって摺動部材の摩擦係数を低下させることができる。なお、本実施形態では、ディスク1が摺動部材に相当し、ピン2が相手部材に相当し、ディスク1の表面5が、潤滑油を介して相手部材と摺接する摺接面に相当する。
潤滑油の粘度に応じた油溜用凹部の容積の最適値が存在する理由は必ずしも明らかになっていないが、以下のメカニズムを推察している。
このように、本実施形態に係る摺動部材1によれば、油溜用凹部10は、温度の上昇に伴って油溜用凹部10の容積が小さくなるように構成されることにより、温度の上昇に伴って粘度が低下する潤滑油を、温度の上昇に伴って油溜用凹部から摺接面に流出させることができ、低温から高温にわたって摺動部材の摩擦係数を低下させることができる。
すなわち、高温時には、低温時に比して油溜用凹部の容積を小さくすることで、低温時に比して粘度の小さい潤滑油を油溜用凹部から摺接面に流出させ、摺動部材の摩擦係数を低下させることができる。一方、低温時には、高温時に比して油溜用凹部の容積を大きくすることで、高温時に比して粘度の大きい潤滑油が油溜用凹部から摺接面に流出することを抑制し、潤滑油が高粘度であるが故の抵抗を下げ、摺動部材の摩擦係数を低下させることができる。
また、油溜用凹部10は、摺動部材1を構成する母材の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する材料30を摺接面5に設けられた下穴20に摺接面5から凹状に窪んだ状態で埋設して形成されることにより、複雑な機構を用いることなく、材料の特性、具体的には材料の線膨張係数を利用して、比較的簡便に前記効果を奏することができる。
更に、摺接面5に設けられた下穴20に埋設される材料30の線膨張係数が、摺動部材1を構成する母材の線膨張係数の2倍以上であることにより、温度の上昇に伴って油溜用凹部の容積を確実に小さくすることができ、前記効果を確実に奏することができる。
また更に、摺動部材1を構成する母材が、鋼材、鋳鉄材又はアルミニウム合金材であり、摺接面5に設けられた下穴20に埋設される材料が、樹脂材であることにより、前記効果を有効に実現し得る、摺動部材を構成する母材と該摺動部材の摺接面に設けられた下穴に埋設される材料との組み合わせを特定することができる。
なお、摺動部材の摺接面に設けられた下穴に埋設される材料として樹脂材を用いることにより、樹脂材の弾性を利用し、摺動部材が相手部材と摺動する際に油溜用凹部に流入される潤滑油を該油溜用凹部から動的に流出させる効果も得ることができると考えられる。
本実施形態では、ディスク1の表面5にドリル加工によって下穴20が形成され、該下穴20に樹脂材30を埋設してディスク1に油溜用凹部10が形成されているが、温度の上昇に伴ってその容積を小さくするように構成されるその他の油溜用凹部をディスク1に設けることも可能である。また、油溜用凹部10は、略円状に形成されているが、これに限定されるものではなく、矩形状などその他の形状であってもよい。
以上のように、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
本発明は、低温から高温にわたって摺動部材の摩擦係数を低下させることができる摺動部材であり、例えば内燃機関において低摩擦及び耐摩耗が要求されるシリンダライナの内周面あるいは動弁系部品等において有利に利用可能である。
ピンオンディスク式摩擦試験に用いるディスク及びピンを模式的に示す平面説明図である。 図1におけるA部を拡大した拡大平面説明図である。 前記ディスクに設けられる油溜用凹部の作製工程を示す説明図である。 比較例として用いたディスクの断面構造を示す断面説明図である。 ピンオンディスク式摩擦試験の試験結果を示すグラフである。 油溜用凹部の穴の深さの算出方法を模式的に示す説明図である。 油溜用凹部の穴の深さと温度との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 ディスク
2 ピン
5 ディスクの表面
10 油溜用凹部
20 下穴
30 樹脂材

Claims (4)

  1. 潤滑油を介して相手部材と摺接する摺動部材であって、
    前記相手部材と摺接する摺接面に前記潤滑油を溜める油溜用凹部を備え、
    該油溜用凹部は、温度の上昇に伴って前記油溜用凹部の容積が小さくなるように構成されている、
    ことを特徴とする摺動部材。
  2. 請求項1に記載の摺動部材において、
    前記油溜用凹部は、前記摺動部材を構成する母材の線膨張係数よりも大きい線膨張係数を有する材料を前記摺接面に設けられた下穴に前記摺接面から凹状に窪んだ状態で埋設することにより形成されていることを特徴とする摺動部材。
  3. 請求項2に記載の摺動部材において、
    前記摺接面に設けられた下穴に埋設される材料の線膨張係数が、前記摺動部材を構成する母材の線膨張係数の2倍以上であることを特徴とする摺動部材。
  4. 請求項2又は3に記載の摺動部材において、
    前記摺動部材を構成する母材が、鋼材、鋳鉄材又はアルミニウム合金材であり、
    前記摺接面に設けられた下穴に埋設される材料が、樹脂材である、
    ことを特徴とする摺動部材。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2015183796A (ja) * 2014-03-25 2015-10-22 大豊工業株式会社 すべり軸受
JP2015183797A (ja) * 2014-03-25 2015-10-22 大豊工業株式会社 軸受
WO2016088976A1 (ko) * 2014-12-04 2016-06-09 중앙대학교 산학협력단 저마찰 미끄럼 접촉 구조체

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