本発明に関わる液晶表示装置の実施形態によれば、入力映像信号の特徴量として、映像信号の1フレームにおける平均輝度レベル(APL;Average Picture Level)を使用する。そして、APLに応じてバックライト光源の発光輝度を制御するための輝度制御テーブルを保持する。液晶表示装置では、表示すべき映像信号のAPLを検出し、輝度制御テーブルの輝度制御特性を用いて、検出したAPLに対応した発光輝度となるようにバックライトを制御する。このとき、APLがきわめて小さい映像信号やきわめて大きい映像信号が入力されたときには、バックライト光源の発光輝度を適宜制御することにより、表示映像の表示品位(輝度、コントラスト、メリハリ感など)を維持しつつ、バックライトの消費電力を低減させる。
さらに液晶表示装置の調光モードに従って、もしくは液晶表示装置周囲の明るさに応じて、APLに対するバックライト光源の発光輝度の制御特性を変化させることにより、表示映像の表示品位(輝度、コントラスト、メリハリ感など)を維持しつつ、バックライトの消費電力を低減させる。
以下に添付された図面を参照しながら、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明による液晶表示装置の一実施形態の構成を説明するためのブロック図である。液晶表示装置1のチューナ12は、アンテナ11により受信した放送信号を選局する。デコーダ13は、チューナ12で選局された放送信号をデコード処理して多重分離し、液晶パネル20を駆動するための映像信号を出力する。
デコーダ13で分離された映像信号は、映像処理部18で各種の映像処理が行われた後、液晶パネル20を駆動制御するLCDコントローラ19に入力する。LCDコントローラ19では、入力した映像信号に基づいて液晶パネル20の図示しないゲートドライバ及びソースドライバに対して液晶駆動信号を出力し、これにより映像信号に従う映像が液晶パネル20に表示される。
また、デコーダ13で分離された上記映像信号は、APL測定部14にも出力される。APL測定部14では、デコーダ13から出力された映像信号の1フレームごとのAPLを測定する。測定されたAPLはフィルタ15に送られる。APLは、本発明における映像信号の特徴量の一つに該当し、以下では最大輝度レベルに対する割合(%)として表記することとする。本実施形態においては、輝度制御テーブル23の輝度制御特性に基づき、APLに応じたバックライトユニット17の発光輝度制御が行われる。
なお、図1に示す例では、デコーダ13でデコード処理された映像信号によりAPLを測定しているが、映像処理部18による映像処理の後にAPLを測定するようにしてもよい。ただし、映像処理部18では、例えばOSD(オンスクリーンディスプレイ)表示を行う処理や、スケーリング処理、あるいはレターボックス表示(黒マスク等による画面領域の制限)処理を行う場合がある。ここで、デコーダ13から出力された(すなわち映像処理部18による映像処理を行っていない)映像信号からAPLを測定することにより、映像処理部18による映像処理の影響を受けることなく、入力映像信号に対応したバックライト輝度の制御を行うことができる。従って図1のように映像処理を行う前の映像信号からAPLを測定する方がより好ましい。
バックライトユニット17は、例えば図2に示すように、液晶パネル20の背面に取り付けられる筐体30内に、細管形状の複数の蛍光管31を等間隔に配設して構成される。また拡散板32によって蛍光管31から発光された照明光を均一拡散する。
この場合、例えばバックライトユニット17は、バックライト制御部16から入力するバックライト輝度調整信号に応じて、矩形波の高電位レベルと低電位レベルの信号期間比(デューティ)が変化するパルス幅変調出力を調光信号として出力する調光制御回路と、調光制御回路からの調光信号を受けてその調光信号に応じた周期及び電圧の交流電圧を発生し、これを蛍光管31に印加して点灯駆動するインバータ(いずれも図示せず)とを含んでいる。インバータは、上記調光制御回路の出力が高電位レベルの時に動作し、低電位レベルの時は動作を停止して、調光制御回路の出力デューティに応じて間欠動作を行うことにより、光源の輝度が調節される。
また、バックライトユニット17は、図3に示すように、液晶パネル20の背面に取り付けられる筐体30内に、赤色,緑色,青色の3原色からなる複数色のLED光源、すなわち赤色光源41,緑色光源42,及び青色光源43を配設して構成してもよい。LED光源の発光輝度は、個々のLED光源に対するLED電流によって制御することができる。また、図示はしないが、バックライトユニット17として上記のような蛍光管とLEDとを併用した方式のものを適用することもできる。更に、蛍光管やLED等の光源からの光を、導光板を用いて面均一化とする、いわゆるサイドエッジ型と呼ばれる構成によって液晶パネル20を照明するようにしてもよい。
輝度制御テーブル23は、入力映像信号の1フレーム単位の映像信号の特徴量(ここではAPL)に応じたバックライト光源の発光輝度の関係を定めるものである。そして予めROM等のテーブル格納メモリ22に輝度制御テーブル23を記憶させておき、表示すべき入力映像信号から検出されたAPLに応じて、輝度制御テーブル23によりバックライトユニット17の発光輝度を制御する。
フィルタ15は、APLの測定値に応じてバックライト輝度を制御する際に、フレーム間のAPL変化に対するバックライト光源の発光輝度の追従性を規定するもので、例えば多段式のデジタルフィルタより構成されている。
フィルタ15は、APL測定部14で測定された各フレームごとのAPLを入力し、各フレームに対してその過去の1または複数のフレーム分のAPLとの間で、それぞれの重み付けに応じて加重平均演算を行って、出力APLを算出する。ここでは、フレームに対して反映させる過去のフレーム段数を可変設定可能とし、現在フレームとその過去のフレーム(設定された段数分)のそれぞれに対して重み付けを設定しておく。そして現在フレームのAPLと使用段数分の遅延フレームのAPLをそれぞれの重み付けに応じて加重平均し出力する。これにより、実際のAPL変化に従う出力APLの追従性を適宜設定することができる。
フィルタ15から出力されたAPLは、バックライト制御部16に入力する。バックライト制御部16は、使用する輝度制御テーブル23に基づき、入力APLに応じてバックライト輝度を調整するためのバックライト輝度調整信号を出力し、バックライトユニット17の光源発光輝度を制御する。
また液晶表示装置1は、リモコン装置27から送信されるリモコン制御信号を受光するためのリモコン受光部25を備えている。リモコン受光部25は、例えば、赤外線によるリモコン操作信号を受信するための受光LEDにより構成されている。
リモコン受光部25によって受信したリモコン操作信号は、マイコン21に入力され、マイコン21では入力したリモコン操作信号に応じて所定の制御を行う。
また液晶表示装置1は、上記リモコン装置27などの所定の操作手段に対するユーザ操作に応じて、液晶パネル20の表示画面の明るさを調光する調光モード機能を有している。調光モード機能は、ユーザ操作に応じてバックライトユニット17の光源発光輝度を変化させることにより、液晶パネル20の表示画面の明るさを調光する。
具体的には、マイコン21は、所定の操作に対するユーザ操作に応じて輝度調整係数を出力する。輝度調整係数は、ユーザ操作に応じて画面全体の明るさ設定を行うために使用される。例えば、液晶表示装置1が保持するメニュー画面等において、画面の明るさ調整項目が設定されている。ユーザは、その設定項目を操作することによって、任意の画面明るさを設定することができる。マイコン21は、その明るさ設定を認識して、その設定された明るさに応じて乗算器26に対して輝度調整係数を出力する。乗算器26では、現在使用している輝度制御テーブル23による輝度制御値に対して、輝度調整係数を乗算することにより、明るさ設定に応じた明るさでバックライトユニット17を点灯させる。
あるいは、テーブル格納メモリ22に調光モードの明るさ設定に応じた複数の輝度制御テーブル23を用意しておき、マイコン21は、調光モードによる明るさ設定を認識して、バックライトユニット17の制御に使用する輝度制御テーブルを選択するようにしてもよい。さらに輝度制御テーブルを変更する場合、演算等によって変更後の輝度制御テーブルとの間に複数の輝度制御テーブルを得るようにし、段階的に変更するようにしてもよい。
また液晶表示装置1は、液晶表示装置1の周囲の明るさ(周囲の照度)を検出するための明るさ検出手段として明るさセンサ24を備えている。明るさセンサ24としては、例えばフォトダイオードが適用できる。そして明るさセンサ24では、検出した周囲光に応じた直流電圧信号が生成され、マイコン21に対して出力される。
マイコン21は、乗算器26に対して輝度調整係数を出力する。乗算器26では、現在使用している輝度制御テーブル23による輝度制御値に対して、輝度調整係数を乗算することにより、装置周囲の明るさに応じた明るさでバックライトユニット17を点灯させる。
あるいは、テーブル格納メモリ22に装置周囲の明るさに応じた複数の輝度制御テーブル23を用意しておき、マイコン21は、液晶表示装置周囲の明るさを認識して、バックライトユニット17の制御に使用する輝度制御テーブルを選択するようにしてもよい。さらに輝度制御テーブルを変更する場合、演算等によって変更後の輝度制御テーブルとの間に複数の輝度制御テーブルを得るようにし、段階的に変更するようにしてもよい。
図4は、輝度制御テーブルを用いたバックライト光源の輝度制御特性の一例を示すものである。図4において横軸はAPLを百分率で表したものであり、表示映像が画面全体で全て黒の場合APLは0%で、全て白である場合APLは100%である。また縦軸はバックライト光源の発光輝度比を表すもので、バックライト光源の発光輝度を最も明るくしたときが100%、バックライト光源を消灯したときが0%である。
図4に示す輝度制御特性は、Aで示すAPLが低い信号領域と、B,Cで示すAPLが中間レベルである信号領域と、Dで示すAPLが高い信号領域とに応じて、APLに対するバックライト光源の輝度制御特性を変更することを表している。そしてここでは、映像信号の特徴量(本例ではAPL)に対するバックライト光源の輝度制御特性の傾きが変わる点を特性変更点と定義する。図4においては、4つの領域A〜Dの各直線の交点p1,p2,p3が特性変更点となり、p1のAPL値を第1の所定の値C1及び第2の所定の値C2とし、p3のAPL値を第3の所定の値C3とする。ここで本発明の所定の値は、第3の所定の値C3に該当する。なお、図4では特徴変更点p1が設定されるAPL値(=C1)の1点でバックライト光源の発光輝度が最大になる輝度制御特性を表しているが、例えば図7に示す輝度制御特性のように、バックライト光源の発光輝度が最大値で一定となるAPL領域(C1〜C2)が存在する場合には、そのAPL領域における最も低APL側のAPL値を第1の所定の値C1とし、最も高APL側のAPL値を第2の所定の値C2とする。すなわち、図4の輝度制御特性の場合は、バックライト光源の発光輝度が最大値を示すAPLは1点のみであるので、C1=C2となる。
映像信号の特徴量が極めて小さい領域(領域A)では、後述するようにバックライト光源の輝度を低下させても映像の表示品位を維持できる映像が多数存在する。これは、画面全体としてコントラスト感が低くバックライト輝度の影響を受け難い映像が多いためである。また、そのような映像は映像信号の特徴量が小さくなるほど増える傾向にある。よって、映像信号の特徴量が小さいほどバックライト光源の輝度を低下させることが可能となる。そして領域Aでは、バックライト光源の最大輝度の特性変更点p1から、APLが小さくなるほど発光輝度を減少させている。
次に、映像信号の特徴量が極めて大きい領域(領域D)では、後述するようにバックライト光源の輝度を低下させても映像の表示品位を維持できる映像が多数存在する。また、そのような映像信号の特徴量が大きくなるほど増える傾向にある。これは、映像信号の特徴量が増えるほど映像全体の明るさが増し、バックライト光源の輝度を低下させても十分な映像の表示品位を維持することが可能となるからである。よって、APLが大きいほどバックライト光源の輝度を低下させることが可能となる。そして領域Dでは、バックライト光源の輝度の特性変更点p3から、APLが大きくなるほど発光輝度を減少させている。
次に、領域B,Dでは、上述した従来技術と同様、特徴変更点p1付近でバックライト光源の発光輝度を増大して、コントラスト感を向上させ、特徴変更点p3付近でバックライト光源の発光輝度を低減して、不要なまぶしさ感を軽減できるようにする。特徴変更点p1、p3の間はコントラスト感等によって適宜バックライト光源の輝度特性を決定する。
特性変更点p1及びp3を決定するにあたり、バックライト光源の発光輝度と映像の表示品位との関係についての主観実験を行い、バックライト光源の輝度制御特性と消費電力との関係について検討を行った。主観実験は、入力映像信号のAPL値とその入力映像信号を表示出力する際におけるバックライト光源の発光輝度の影響との関係を数値化した。
具体的には、各APL値の映像を任意に複数用意し、それぞれの映像を表示しながら、バックライト光源の発光輝度を高輝度、低輝度に切り替えた場合の映像表示品位を観測し、バックライト光源の発光輝度を高輝度にする必要があるか否かを5段階評価で判断した。5段階評価の基準は、以下の通りとし、実験は5人の被験者により行い、その平均を取った。
5 明らかに高輝度が必要
4 ある程度高輝度が必要
3 どちらともいえない
2 あまり高輝度は必要ない
1 明らかに高輝度は不必要
上記実験の結果を図12に示す。X軸は映像のAPL値、Y軸は映像評価値であり、映像表示品位に関する主観評価値の平均値である。Y軸の値が高くなるほど映像の表示品位を維持するために、バックライト光源の発光輝度を高輝度にする必要があることを示している。
まず、APLが2%以下、90%以上の領域では映像評価値1で、評価上明らかに高輝度は不必要であると判断された。つまり、この範囲に属するすべての映像で高輝度は不必要ということである。これは、APLが2%以下は映像として認識されず、APLが90%以上の映像はほぼ全画面真っ白のため、高輝度の必要が感じられないと判断されたためと思われる。
次に、APLが2%から25%までの領域はAPL値の増加に従い、ほぼ直線状に高輝度の必要性が増大し、APLが12%付近で、高輝度の必要性のある映像が半分程度となった。これは、APLが12%付近以下では、高輝度を必要とする映像が少なく、APLが12%付近以上では、高輝度を必要とする映像が多いためと思われる。
そして、APLが25%付近では、ほぼすべての映像が高輝度の必要性がある。これは、映像として細部までコントラストが必要であるため、ほとんどすべての映像が高輝度を必要とするためと思われる。
次に、APLが30%から90%までの領域は、徐々に高輝度の必要性が減少する。APLが30%付近の映像もAPLが25%付近の映像と同じく、ほとんどの映像が高輝度の必要性があるが、APLが30%から90%に推移すると、徐々に画面の眩しさが気になる映像が増大し、APLが68%付近では約半分の映像が高輝度の必要が無くなり、APLが90%ではほとんどの映像が高輝度の必要がなくなり、逆に眩しさの点から低輝度にする必要性が高くなるためと思われる。また、APLが68%付近以上かどうかによって高輝度を必要とする映像か否かの判断が変わってくると考えられる。
次に、低APL領域と高APL領域とにおける映像表示品位に関する評価結果を直線又は2次曲線で近似した。APL25%以下を1次の直線で近似すると、
y=0.20x+0.61
となり、映像評価値3の時のAPL値は12.2%である。すなわち、第1の所定値C1を12.2%以下に設定すれば、最低限の映像表示品位を維持することができると言える。
APL30%から90%までを2次曲線で近似すると、
y=−0.0008x^2+0.030x+4.71
となり、映像評価値3の時のAPL値は68.2%である。すなわち、第3の所定値C3を68.2%以上に設定すれば、最低限の映像表示品位を維持することができると言える。
次に、バックライト光源の輝度制御特性と消費電力との関係について説明する。任意の映像から抽出したAPLの分布を基に、バックライト光源の輝度制御特性における特徴変更点p1の値を0から25まで変化させたときの電力削減量を算出した。特徴変更点p1より低APL側(領域A)におけるバックライト光源の輝度減少量はAPL10%変化あたり15%とした。これは、APL10%変化あたりのバックライト光源の輝度変化が15%を超えると輝度変化が急激となり、視聴者に違和感を与える恐れがあるからである。測定対象の映像は映画とした。映画は、視聴者が最も映像品位を気にする映像コンテンツであり、低APLの頻度が他のコンテンツよりも大きいからである。
上記測定の結果を図13に示す。X軸は特徴変更点p1のAPL値であるC1の値、Y軸はC1の値が0の場合を基準にした電力削減量である。図13から、C1=0の時は削減量ゼロ、C1が大きくなるに応じて電力削減量も増大し、C1の値を10%にすると電力削減量が約1%となり、C1の値をさらに高APL側にすることで、非線形に電力削減量は増大し、C1の値が25%のとき、電力削減量は約7.7%程度となることが分かる。
上述の実験及び電力算出結果について考察する。この種の製品において、消費電力の削減、映像の表示品位の向上は共に重要な課題である。そこで、映像の表示品位を落とすことなく消費電力の削減を図るためには、映像の表示品位を維持するためにバックライト光源の発光輝度を低下させるべきでない映像が多い領域である、映像評価値が3以上の領域については、バックライト光源の発光輝度を低下させず、バックライト光源の発光輝度を低下させても映像の表示品位上問題がない領域である、映像評価値が3以下の領域については、バックライト光源の発光輝度を低下させればよい。
具体的には、APLが12.2%以下、68.2%以上の映像に対しては、バックライト光源の発光輝度をより低下させることにより、映像の表示品位を維持しつつ消費電力を削減することが可能となる。
ところで、映像の表示品位と電力削減量との優先度は状況によって変化する。映像の表示品位が最優先であることもあるし、電力削減量が最優先であることもある。そこで、C1及びC3の値をどの程度変更できるかについて検討する。
上述のように、最低限の映像表示品位を維持しつつ電力削減量を最大化することが可能なC1の最適値は12.2%である。一方、映像評価値が3以下の領域にも少数ではあるが、バックライト光源の発光輝度を低下させると映像の表示品位が低下する映像が存在する。従って、C1の値を小さくすることによって、より多くの映像の表示品位を維持することができる。具体的には、C1の値を12.2%から小さくしていくことで、映像の表示品位を維持できる映像が増え、C1の値を2%とした場合に、すべての映像について表示品位を維持することができる。従って、C1の値は2%から12.2%の範囲内で設定することが好ましい。
以上のように、C1の値は2%から12.2%の範囲をとることができ、値が小さいほど映像全体の表示品位はよくなる。それに対して、電力削減量はC1の値を大きくするほど増大する。つまり、映像の表示品位と電力削減量とはトレードオフの関係になる。従って、実際の製品としては、映像の表示品位に重きを置くか、省電力に重きを置くかを決定し、それに応じてC1の値を設定する必要がある。
今日では、電子機器の省電力化は必須事項であり、製品として省電力の効果を主張する場合、少なくとも1%以上の効果が必要であると考えられるため、本実施例では電力削減量を1%以上と設定した。例えば、省エネ法での毎年の工場の効率改善目標が1%とされているのも1%をボーダーとしているためと考えられる。電力削減量を1%以上に設定した場合、C1の値は10%となる。よって、本実施例ではC1の値を10%に設定することとして、以下説明する。
ここで、上述の内容を明確にするために、図13に映像表示品位の値を重ねたものを図14に示す。映像表示品位は映像評価値を反転した値であり、5はすべての映像の表示品位を維持することができ、1は映像の表示品位を維持することができる映像が最も少ないことを表している。従って、C1の値が25%に設定された場合は、すべての映像の表示品位を維持できない。
また、C1の値を25%から低下することで徐々に映像の表示品位を維持できる映像が増加し、C1の値が2%に設定された場合は、すべての映像の表示品位を維持することができることを表している。特に、映像評価値が3以上となるのは、C1の値が2%から12.2%の範囲内に設定されたときであり、一方、電力削減量を1%以上にするためには、C1の値を10%以上に設定する必要があることを表している。
C3についても、C1と同様に検討する。C3の最適値は68.2である。また、映像評価値が3以下の領域にも少数ではあるが、バックライト光源の発光輝度を低下させると映像の表示品位が低下する映像が存在する。従って、C3の値を大きくすることによって、より多くの映像の表示品位を維持することができる。
具体的には、C3の値を68.2%から大きくしていくことで、映像の表示品位を維持できる映像が増え、C3の値を90%とした場合に、すべての映像について表示品位を維持することができる。従って、C3の値は68.2%から90%の範囲内で設定することが望ましい。
上述のように、最低限の映像表示品位を維持しつつ電力削減量を最大化することが可能なC3の最適値は68.2%である。しかしながら、高APL側では低APL側に比べて電力削減の効果が少ないなどの理由から、本実施例では最大限に映像の表示品位を維持することとし、C3の値を90%に設定することとして、以下説明する。
上述のように、本実施形態の例では、輝度制御特性において最も低APL側に存在する特性変更点p1を、APLが10%の位置に設定し、最も高APL側に存在する特性変更点p3をAPLが90%の位置に設定する。
また、上述した従来技術と同様、より低いAPL値で光源発光輝度を上げ、コントラスト感を向上させ、より高いAPL値で光源発光輝度を下げ、不要なまぶしさ感を軽減するために、APLが40%の位置に特性変更点p2を設定し、APLが10%の特性変更点p1を、バックライト光源の発光輝度が最大となる特性変更点とする。
以上のように、本実施形態では、上記のように映像信号の特徴量が極めて小さい映像と、極めて大きい映像とのいずれかまたは両方におけるバックライト光源の発光輝度を低く抑えて、画質を維持しながら消費電力を低減させることを特徴としている。
このような特徴を満足できるのであれば、輝度制御特性が上記の例に限定されることはない。例えば、図7に示すように、最も低APL側の特性変更点p1よりAPLが大きい信号領域で、バックライト光源の発光輝度値が一定となる信号領域qが存在してもよい。信号領域qを広げることは、バックライト光源の発光輝度がより高い領域を増やすことになり、よりコントラスト感の高い映像を得ることができる領域を増やすことになる。よって、映像の表示品位を向上させることができる。図7の輝度制御特性においては、特性変更点p1を設定したAPLの値(10%)が第1の所定の値C1に該当し、特性変更点p4を設定したAPLの値(20%)が第2の所定の値C2に該当し、特性変更点p3を設定したAPLの値(90%)が第3の所定の値C3に該当する。なお、図4の例と同様に、本発明の所定の値は、第3の所定の値C3に該当する。
また輝度制御特性は、上記のような線形のみならず、非線形の特性であってもよい。輝度制御特性が非線形である場合、非線形の輝度制御特性を線形の輝度制御特性に近似し、近似した線形の輝度制御特性における特性変更点を想定することによって、上述した線形の輝度制御特性と同様にバックライト光源の輝度制御を規定することができる。
さらに、APLが第1の所定の値C1と第3の所定の値C3との間における輝度制御特性として、APLが小さくなるほどバックライト光源の発光輝度を小さくするものを用いて光源発光輝度を制御するとともに、映像信号の振幅を大きくすることにより、黒浮きを抑えてコントラストを向上させるようにしてもよい。
次に、液晶表示装置の調光モード、及び液晶表示装置周囲の明るさに応じてバックライト光源の発光輝度特性を変更するための制御例について説明する。
上述のように、液晶表示装置1は、リモコン装置27などの所定の操作手段に対するユーザ操作に応じて、液晶パネル20に表示する表示画面の明るさを調光する調光モード機能、及び液晶表示装置1の周囲の明るさ(周囲の照度)を検出する機能を備えている。
ここでは、上記調光モードの設定に伴って、もしくは周囲の明るさの変化に伴って、バックライト光源の発光輝度を制御するための輝度制御特性を変更する。これにより、これらの条件の変化に応じて、適切な画質でかつ低消費電力で画像表示を可能とする。このような輝度制御特性の変更は、上記の調光モードにのみ応じて実行してもよく、また周囲の明るさの変化にのみ応じて実行してもよい。また調光モードと装置周囲の明るさの両方の条件に依存させて実行するようにしてもよい。さらには、調光モードと装置周囲の明るさとの各条件において、別々の輝度制御特性となるようにしてもよい。
またこのときの輝度制御特性の変更は、上述したように、輝度調整係数によって輝度制御テーブルに基づく輝度制御値を補正する構成であってもよく、また複数の輝度制御テーブル23を用意して、条件に応じて使用する輝度制御テーブルを選択するようにしてもよい。さらに輝度制御テーブルを変更する場合、演算等によって変更後の輝度制御テーブルとの間に複数の輝度制御テーブルを得るようにし、段階的に変更するようにしてもよい。
図8は、調光モードの設定もしくは周囲の明るさに応じて使用される輝度制御特性の設定例を説明するための図である。
上記複数の輝度制御テーブルの輝度制御特性は、図8のように設定される。図8の例では、7種類の輝度制御特性(I)〜(VII)が設定されている。
ここでは、基本的にユーザーによる調光モードの設定操作に連動して、画面の明るさを暗くする設定では、バックライト光源の発光輝度を減少させる。あるいは液晶表示装置周囲の明るさが暗くなるに応じて、バックライト光源の発光輝度を減少させる。これにより画面の眩しさ及び目への刺激を低減させて、映像を適切な輝度で表示させ、また消費電力を低減させることができる。
図8において、輝度制御特性(IV)は、標準設定値(初期値)を示す。この輝度制御特性(IV)は、上記図4に示した輝度制御特性を用いている。従ってこの標準輝度制御特性の思想は上述したごとくのもので、画質を維持しつつ低消費電力化を実現した制御特性となっている。
ここでまず、APLに応じたバックライト光源の発光輝度制御を行なわない場合を考えるものとする。APLに応じた発光輝度制御がない場合、一般的に調光モードによる制御や、装置周囲の明るさに応じた制御では、単純にバックライト光源をある発光輝度に上げたり下げたりする。ここでその発光輝度値(調光レベル)をd2とおく。またその中で初期値(標準値)をd0とし、バックライト光源の最大発光可能輝度をdmaxとし、最小発光可能輝度をdminとする。
そして上記の仕様に対して、APLに応じた発光輝度制御が追加されたものとする。そして輝度制御特性のカーブから求まった発光輝度値をd1とする。その場合、次式により調光モード/装置周囲の明るさに基づく制御を加え、最終的なバックライト光源の発光輝度Dが求められる。
調光レベルd2が初期値d0よりも大きい場合
D=d1+(d2-d0){(dmax-d1)/(dmax-d0)} ・・・(1)
調光レベルd2が初期値d0よりも小さい場合
D=d1-(d0-d2){(d1-dmin)/(d0-dmin)} ・・・(2)
上記の式(1),(2)に応じて、横軸をAPLとし、縦軸をバックライト光源の発光輝度とすることで、図8のような輝度制御特性が得られる。
すなわち、輝度制御特性(I)は、バックライト光源の最大発光可能輝度に設定される。この場合は、輝度制御特性(I)は、映像信号の特徴量であるAPLに依存することなく一定となる。また輝度制御特性(VII)は、バックライト光源の最小発光可能輝度に設定される。この場合にも、輝度制御特性(VII)は、映像信号の特徴量であるAPLに依存することなく一定となる。
そして、標準の輝度制御特性(IV)の各特性変更点と、輝度制御特性(I)との距離が3等分されて、それぞれ輝度制御特性(II)、(III)の特性変更点が定められる。また同様に、標準の輝度制御特性(IV)の各特性変更点と、輝度制御特性(VII)との距離が3等分されて、それぞれ輝度制御特性(V)、(VI)の特性変更点が定められる。
これらの輝度制御特性(I)〜(VII)のうちから、調光モードの設定に応じて、もしくは周囲の明るさに応じて、バックライト光源の発光輝度制御に使用する輝度制御特性が選択(もしくは演算により算出)される。
輝度制御特性を設定することにより、最大/最小発光可能輝度に設定される輝度制御特性(I),(VII)を除いては、一つの輝度制御特性における特性変更点間で常に傾きが形成され、ユーザは、APL変化に従う画面の明るさ変化を感じることができる。例えば、標準の輝度制御特性(IV)を発光輝度方向に平行移動させた場合、最大発光可能輝度または最小発光可能輝度に近くなると、輝度制御特性の突出部分が最大発光可能輝度または最小発光可能輝度に当たってしまって平坦部分ができてしまう。
この場合には、APLが変化してもバックライト光源の発光輝度が変化しなくなる。またこのときに複数の輝度制御特性において、発光輝度レベルが重複する部分が生じることになる。このような場合、特に調光モードに輝度制御特性を連動させると、調光を行ってもバックライト光源の発光輝度が変化しないケースが生じて好ましくない。
上記のように、初期値とバックライト光源の最大発光可能輝度との間、及び初期値とバックライト光源の最小発光可能輝度の間で、それぞれ等間隔の複数段階で発光輝度を変化させることにより、ユーザが調光レベルを調整する際、もしくは装置周囲の明るさに応じて画面の明るさを調整する際に、どのような映像を見ながらでも明るさの変化を感じながら調整することができる。
図9は、輝度制御テーブルを複数用意し、そのテーブルNo.を変更することにより、バックライト光源の急激な輝度変化を防止する動作例を示すフローチャートである。ここでは、液晶表示装置周囲の明るさに応じた輝度制御テーブルの変更処理例を説明する。
まず現在参照している輝度制御テーブルのNo.がMである場合において(S1)、明るさセンサにより液晶表示装置周囲の明るさが変化したとき(S2)、その明るさに基づく輝度制御テーブルの使用テーブルのNo.が「N」に決定される(S3)。
そして、上記S3で決定された輝度制御テーブルNと、現在の輝度制御テーブルMとの間で、中間の輝度制御特性を有する複数の輝度制御テーブルのうち、現在の輝度制御テーブルMの輝度制御特性に最も近い輝度制御テーブルnを選択し、それを現在の輝度制御テーブルnとして更新する(S4)。
そして、現在の輝度制御テーブルnが、目的の輝度制御テーブルNと同じテーブルであるかどうかを判断する(S5)。ここで同じテーブルでない場合は、一定時間(例えば5フレーム)待機した後(S6)、輝度制御特性が輝度制御テーブルnの次に輝度制御テーブルNに近い輝度制御テーブルn+1を選択する(S7)。そして選択したn+1の輝度制御テーブルを現在のテーブルn(n+1が更新されたもの)として更新する(S4)。
上記のような処理により、現在の輝度制御テーブルが目的の輝度制御テーブルNになるまで、輝度制御特性の段階的な変化を繰り返し、現在の輝度制御テーブルがNとなった時点で、周囲の明るさの変化に応じた輝度制御テーブルの切り換え選択処理が終了する。
なお、上記の例では、液晶表示装置の周囲の明るさに応じた輝度制御テーブルの切り換え選択処理例について説明したが、調光モード時のユーザ操作に応じて輝度制御テーブルを切り換える場合、上記S2で、調光モードによる画面の明るさの変更があったかどうかを判別し、上記ステップS3でこれらの変更条件に基づいて使用すべき輝度制御テーブルのNo.を決定する。これにより、目的の使用すべき輝度制御テーブルに到るまでに段階的に輝度制御特性を切り換えることができるようになる。
図10は、輝度制御テーブルNo.を変更したときに、演算によって徐々に変更後の輝度制御テーブルに移行する動作例を示すフローチャートである。ここでは、図1に示す輝度制御テーブルの選択部分のループRが使用される。
まず現在参照している輝度制御テーブルNo.がSである場合において(S11)、明るさセンサにより液晶表示装置周囲の明るさが変化したとき(S12)、その明るさに基づく輝度制御テーブルの使用テーブルのNo.が決定される(S13)(ここでは、使用テーブルのNo.が「T」に決定されたものとする)。
そして、現在の輝度制御テーブルSと、決定された輝度制御テーブルTとの、入力映像信号の映像信号の特徴量(ここではAPL)に対する輝度(バックライト光源の発光輝度を制御するための制御値)の差分を抽出し、抽出した差分が予め定められた閾値mより小さいかどうかを判断する(S15)。ここでは、輝度制御テーブルSとTについて、バックライト光源の発光輝度を制御するための制御値を全て比較し、個々の比較結果について差分をとる。
そして上記差分が閾値m以上であると判断したときは、現在の輝度制御テーブルSの発光輝度特性を、目的の輝度制御テーブルTの発光輝度特性に所定値だけ近づけるように修正しSをS'とする(S17)。そして一定時間(例えば5フレーム)待機した後(S18)、再びS14に戻って修正後の現在テーブルS(S'に更新後のS)と、目的の輝度制御テーブルTとの差分を抽出し、抽出した差分と閾値mとを比較する。
上記のように、輝度制御特性の段階的な変化を繰り返し、現在の輝度制御テーブルSと、目的の輝度制御テーブルとの差分が、閾値mより小さくなった時点で、現在の輝度制御テーブルSを輝度制御テーブルTに変更し(S16)、周囲の明るさの変化に応じた輝度制御テーブルの切り換え選択処理が終了する。
なお、上記の例でも同様に、調光モードにより輝度制御テーブルを切り換える場合、上記S12で調光モードによる画面の明るさの変更があったかどうかを判別し、上記ステップS13でこれらの変更条件に基づいて使用すべき輝度制御テーブルのNo.を決定する。これにより、目的の使用すべき輝度制御テーブルに到るまでに段階的に輝度制御特性を切り換えることができるようになる。
図11は、テーブルNo.を変更したときに、ある既定回数輝度を変更することによって徐々に変更後のテーブルの輝度制御特性に移行する動作を示すフローチャートである。以下では、図11を参照し、256フレームかけて輝度制御特性を変更する動作を説明する。
現在参照しているテーブルNo.がPである場合において(S21)、明るさセンサにより液晶表示装置周囲の明るさが変化したことを検知したとき(S22)、それに伴って変更後のジャンルコードに対応した使用テーブルのNo.が決定される(ここでは、テーブルのNo.がQに決定されたとする)。同時に、変更回数cを1に設定する(S23)。そして以下の式(3)に応じて、現在のテーブルPと前記決定された使用テーブルQとの重み付けによる変更輝度を算出し、輝度を修正する(S24)。
修正輝度P’=(Q・c+P(256−c))/256 … (3)
そして、c=256であるか(設定回数である256回輝度を修正したか)を確認し(S25)、設定回数に達していないときは、カウント値cを1回更新し(S27)、再度上記式1によって、現在輝度をP’に修正する。そしてS24→S25→S27の動作を、所定回数だけ繰り返し、設定回数である256回修正を行った場合は、最終的に現在のテーブルPを使用テーブルQに変更する。上記例では256フレームかけて輝度テーブルを徐々に修正する例を示したが、256フレームに限らず、所定回数を設定することにより、変化のゆるやかさの度合い(遷移時間)を調整することができる。こうして、液晶表示装置の周囲の明るさが変化したときに、光源の発光輝度の急激な切り替わりを防止することができる。
なお、上記の例でも同様に、調光モードにより輝度制御テーブルを切り換える場合、上記S22で調光モードによる画面の明るさの変更があったかどうかを判別し、上記ステップS23でこれらの変更条件に基づいて使用すべき輝度制御テーブルのNoを決定する。これにより、目的の使用すべき輝度制御テーブルに到るまでにゆるやかに輝度制御特性を切り換えることができるようになる。
なおAPLに基づいてバックライト光源の発光輝度を抑制するときに、APLを求めるために1フレーム全ての映像信号の輝度レベルの平均値を求める必要はなく、例えば、表示映像の端部を除外した中央付近の映像信号の輝度レベルの平均値を求めて、これを映像信号の特徴量として用いるようにしてもよい。例えば、放送受信信号から分離・取得されたジャンル情報に基づいて、予め設定された(文字・記号等が重畳されている可能性が高い)画面領域を除外するようにゲート制御して、所定の一部領域のみの映像信号の特徴量を測定するようにしてもよい。
以上、本発明に関して図面を参照しながら例示してきたが、上述した各例では入力映像信号の特徴量としてAPLを使用し、APLに応じてバックライトの発光輝度の制御を行っているが、上記映像信号の特徴量はAPLに限ることなく、例えば、入力映像信号の1フレームのピーク輝度の状態(有無または多少)を利用するようにしてもよい。
同様に、入力映像信号の特徴量として、1フレーム内の所定領域(期間)における最大輝度レベルや最小輝度レベル、輝度分布状態(ヒストグラム)を用いたり、これらを組み合わせて求めた映像信号の特徴量に基づき、バックライトの発光輝度を可変制御するようにしてもよい。
なお、上記のような輝度制御は、図2あるいは図3に示すようなバックライトユニット17を備えた直視型の液晶表示装置のみならず、液晶プロジェクタのような投影型表示装置に対しても適用できる。この場合も液晶パネルの背面側から光源光を照射することによって、映像表示が行われ、この光源光の発光輝度を上記の輝度制御特性に応じて制御すればよい。
1…液晶表示装置、10…APL、11…アンテナ、12…チューナ、13…デコーダ、14…APL測定部、15…フィルタ、16…バックライト制御部、17…バックライトユニット、18…映像処理部、19…LCDコントローラ、20…液晶パネル、21…マイコン、22…テーブル格納メモリ、23…輝度制御テーブル、24…明るさセンサ、25…リモコン受光部、26…乗算器、27…リモコン装置、30…筐体、31…蛍光管、32…拡散板、41…赤色光源、42…緑色光源、43…青色光源。