以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。本実施形態に係る可変高周波回路は、パワーデバイダ、カプラ、フィルタ回路などの複数の高周波回路部品に適用される。以下の説明は、可変高周波回路の制御方法の説明および、制御ピンのピン構造の説明をも含む。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る可変高周波回路形成部3を表す斜視図である。図2は、制御ピン2の駆動部の要部を、ピン出退方向を含む仮想一平面で切断して見た断面図である。図3は、第1の実施形態に係る可変高周波回路1の電気的構成を表すブロック図である。第1の実施形態に係る可変高周波回路1を、「第1高周波回路1」と称す。第1高周波回路1は、回路形成部としての可変高周波回路形成部3と、制御手段としての高周波回路制御部4とを含む。可変高周波回路形成部3は、誘電体線路を形成するための誘電体線路形状を変更可能な回路形成部である。高周波回路制御部4は、回路形成部の誘電体線路形状を所期情報に基づいて変更するように制御する。先ず可変高周波回路形成部3について説明する。
可変高周波回路形成部3は、可変高周波回路部5と、複数の制御ピン2(可動体に相当する)とを有する。前記制御ピン2を制御誘電体という場合がある。可変高周波回路部5は、第1および第2導電体層6,7を含む。第1および第2導電体層6,7は、誘電体線路の一部を成す一対の導電体層であり、所定間隔a離隔して平行に配設されている。これら導電体層6,7はたとえば平面視矩形状に形成されている。第1および第2導電体層6,7の厚み方向をZ方向と定義し、第1導電体層6の一辺に平行な方向をX方向と定義する。XおよびZ方向に直交する第1導電体層6の他辺に平行な方向をY方向と定義する。図1において、X,Y,Z方向をそれぞれ矢符X,Y,Zで表記する。X方向およびY方向を含む仮想一平面を、「XY平面」と称す。第1高周波回路1またはその一部をZ方向に見ることを、「平面視」と称す。
第2導電体層7には、制御ピン2を変位させるための複数の貫通孔7aが形成され、これら複数の貫通孔7aは、第2導電体層7のXY平面に沿って、X方向一定間隔おきでかつY方向一定間隔おきに配設されている。制御ピン2と貫通孔7aとが一対一に対応するように構成されている。第2導電体層7の各貫通孔7aは、後述する制御ピン2の形状に対応するように矩形孔形状に形成されている。ただし各貫通孔7aは各制御ピン2に対し、制御ピン2を円滑に変位可能にルーズに形成されている。
複数の制御ピン2は、第1および第2導電体層6,7と協働して誘電体線路を形成し得るものである。各制御ピン2は、誘電体線路のいわゆる誘電体ストリップの一部分を成すダウン状態と、アップ状態とにわたって変位可能に構成されている。前記ダウン状態(図2、Z1参照)とは、誘電体線路の一部分を成すZ方向一方に下降した誘電体線路形成状態と同義であり、前記アップ状態(図2、Z2参照)とは、誘電体線路の一部分を成さないZ方向他方に上昇した誘電体線路非形成状態と同義である。各制御ピン2は誘電体から成り、Z方向に延びる四角柱に形成されている。各制御ピン2のZ方向長さは、第1導電体層6,第2導電体層7間の所定間隔aよりも所定小距離長くなるように形成されている。前記ダウン状態において、その制御ピン2の長手方向一端部2aは第1導電体層6に当接し、かつ該制御ピン2の長手方向他端部2bが第2導電体層7の一表面部からやや突出する。前記アップ状態において、その制御ピン2の長手方向一端部2aは第1導電体層6から離隔するとともに第2導電体層7のたとえば一表面に面一状になる。ただし必ずしも面一状に限定されるものではない。
複数の制御ピン2をXY平面に沿って連続的にダウン状態にすると、第1および第2導電体層6,7間に誘電体が形成された導波路いわゆるHガイドとなる。また第1および第2導電体層6,7間の所定間隔aを信号波長λの1/2以下に狭くすると、空気領域では遮断状態となり信号波は存在できない。これに対し、誘電体内では波長が短縮するので、前記遮断状態が解除され、信号波は伝播できるようになる。いわゆる非放射性誘電体線路(略称NRDガイド:Nonradiative Dielectric Waveguide)が形成できる。
前記第2導電体層7に形成される複数の貫通孔7aは、XY平面に沿ってメッシュ状になっているが、この貫通孔7aの間隔は、伝播する電磁波の波長に比べて充分に小さく(前記波長の1/2未満、望ましくは前記波長の1/4以下)なっている。したがって、この貫通孔7aから電磁波が漏れて伝播することはない。換言すれば、XまたはY方向に隣接する制御ピン2同士の距離であって、隣り合う制御ピン2の横断面の中心間距離δを、波長の1/2未満、望ましくは前記波長の1/4以下に規定することで、貫通孔7aから電磁波が漏れて伝播することを防止することができる。この性質を利用して、第1導電体層6、第2導電体層7およびダウン状態の複数の制御ピン2で、Hガイド又はNRDガイドの誘電体線路を形成し得る。しかも制御ピン2の状態をアップ状態にするかダウン状態にするかで、形成する誘電体線路形状を自在に変更可能になっている。
本実施形態では、各制御ピン2を四角柱に形成しているが四角柱だけに限定されるものではなく、円柱または四角柱以外の多角柱、具体的には三角柱、五角柱などに形成することも可能である。可変高周波回路において、複数の制御ピン2を複数種類の多角柱で構成することも可能であり、円柱および多角柱で構成してもよい。制御ピンを円柱で構成するほうが、角柱で構成するよりも導波路の曲線を形成しやすく多種多様な構造に対応することができ、汎用性を高めることができる。
制御ピン2の長手方向一端部2aには導体層が形成されており、アップ状態の時に第2導電体層7と面一になるのが好ましい。これにより、各制御ピン2のアップ状態において、各制御ピン2の長手方向一端部2aを第2導電体層7の一表面に面一状にする、換言すれば、各制御ピン2の長手方向一端部2aが第2導電体層7の貫通孔7aに蓋をして閉塞状態を実現し得るので、導体部での伝送損失を極力小さくすることができる。また、後述のピストン12の上面、内部、下面の少なくともいずれかに導体層が形成されているのが好ましい。これにより、制御ピン2のダウン状態にも同様に閉塞状態を実現し得る。
したがって、制御ピン2において、誘電体線路を成す誘電体線路形成状態であるダウン状態および誘電体線路を成さない誘電体線路非形成状態であるアップ状態のいずれの状態であっても、伝送損失を極力小さくすることができる。ピストン(シール部位)と導体層は同じ部位に形成されていなくてもよく、導体層が図に示す位置にあって、ピストン(シール部位)は制御ピンの上端面に設けられていてもよい(ピストンと導体層は別物)。
高周波回路制御部4について説明する。高周波回路制御部4は、回路パターン情報記憶部8と制御ピン駆動部9とを含み、これらは電気的に接続されている。回路パターン情報記憶部8には、誘電体線路を形成するための誘電体線路形状の情報、つまりパターン情報が格納される。当該第1高周波回路1に有線または無線などを通して送られるパターン情報PDは、回路パターン情報記憶部8に一旦格納される。その情報を再現するように、回路パターン情報記憶部8は制御ピン駆動部9(制御誘電体駆動部)に信号を送る。制御ピン駆動部9は、駆動源としてのポンプモータ、流体圧シリンダ10、配管11および図示外の制御弁(配管等と称す)を含み、これらは配管接続されている。第2導電体層7には、流体圧シリンダ10のシリンダ本体10Aが固着されている。
流体圧シリンダ10は、前記シリンダ本体10Aと、制御ピン2の長手方向他端部2bに一体的に固着されるピストン12とを備えている。この流体圧シリンダ10の作動流体はたとえばガスまたはオイルが適用される。作動流体としてガスを適用した場合には、オイルを適用する場合に比べて第1高周波回路1の軽量化を図ることができ、該第1高周波回路1を含む機器の携帯性向上を図ることができる。回路パターン情報記憶部8から制御ピン駆動部9に送られる信号に基づいて、駆動源から配管11等を介してシリンダ本体10A内に作動流体を注入することで、シリンダ本体10A内に正圧をかけてピストン12つまり制御ピン2をアップ状態からダウン状態に押し出す。
逆に前記信号に基づいて、シリンダ本体10A内の作動流体を吸引することで、シリンダ本体10A内に負圧をかけて制御ピン2をダウン状態からアップ状態に変位する構造になっている。その結果、各制御ピン2がアップ状態またはダウン状態となり、変更された高周波回路が形成される。この高周波回路に入力される高周波信号(略称RF信号:
Radio Frequency信号)は、可変高周波回路部5でたとえばフィルタ処理などがされた後
出力される。ただし前記フィルタ処理に限定されるものではない。
本実施形態では、シリンダ本体10A内に負圧をかけて制御ピン2をアップ状態に変位しているが、この形態に限定されるものではない。たとえばシリンダ本体10A内にかける作動流体の圧力を開放すると、ダウン状態からアップ状態に制御ピン2を変位させるコイルばねから成る付勢手段を設けてもよい。ただし該コイルばねは、たとえば合成樹脂などの非金属によって形成する必要がある。この場合には、シリンダ本体10A内に負圧をかける本実施形態よりも、制御ピン2を迅速に変位させることができる。仮に配管途中などに作動流体の漏れがあったとしても、制御ピン2を確実にかつ迅速に変位させることが可能となる。各制御ピン2を、モータおよび該モータ軸固着のカム、前述の付勢手段などを用いてアップ状態とダウン状態とにわたって変位可能に制御することも可能である。この場合にも、本実施形態と同様の効果を奏する。
図4は、回路パターンを表す平面図であり、図4(a)は、カプラの機能を有するように制御ピン2が配設された回路パターンを表す平面図、図4(b)は結合のギャップを図4(a)の回路パターンよりも広げた回路パターンを表す平面図である。制御ピン2は、X方向およびY方向に一定間隔おきに配設され、白抜きの四角は前記誘電体線路を形成しないアップ状態の制御ピン2を、黒四角は誘電体線路を形成するダウン状態の制御ピン2を表している。図4(a)に示す誘電体線路形状である回路パターンはたとえばデフォルトで規定されている。図4(a)に示す回路パターン情報は、回路パターン情報記憶部8に格納されている。操作者の操作指令によって、回路パターン情報記憶部8は制御ピン駆動部9に信号を送り、制御ピン駆動部9は駆動源を駆動制御する。これによってシリンダ本体10A内に正圧または負圧がかかり、制御ピン2をアップ状態またはダウン状態に変位し、図4(a)に示す回路パターンを得る。
図4(b)に示すように、図4(a)の回路パターンから、結合のギャップGPを広げた構造にすることも可能である。このように結合ギャップGPを調整することによって、電力の分配比がずれ、いわゆるパワーデバイダを形成することができる。該パワーデバイダを実現するパワーデバイダ用パターン情報も、回路パターン情報記憶部8に格納されている。操作者の操作指令によって、回路パターン情報記憶部8は制御ピン駆動部9に信号を送り、制御ピン駆動部9は前記パワーデバイダ用パターン情報に基づいて駆動源を駆動制御する。これによって、図4(b)に示す回路パターンを得る。
図5は、回路パターンを表す平面図であり、図5(a)は、直線的な誘電体線路構造の回路パターンを表す平面図、図5(b)は、フィルタ機能を持たせた回路パターンを表す平面図である。本実施形態では、たとえばデフォルトで格納される図5(a)に示す回路パターンから、操作者の操作指令によって、フィルタ機能を持たせた回路パターン(フィルタ回路)に変化させることができる。たとえばXおよびY方向に予め定める間隔おきに制御ピン2をダウン状態に変位することで、フィルタ回路を容易にかつ迅速に実現することができる。予め定める制御ピン2をアップ状態またはダウン状態に変位させることで、この回路パターンは自在に変化することができるので、そのフィルタ機能の中心周波数特性および通過帯域までも自在に変更することができる。
以上説明した第1高周波回路1によれば、高周波回路制御部4は、可変高周波回路形成部3の誘電体線路形状をパターン情報(所期情報に相当)に基づいて変更するので、可変高周波回路形成部3を自在にかつ簡単に変更することができる。複数種類の高周波回路部品を選択的に用いる従来技術に比べて、構造の簡単化および可変高周波回路形成部3の最適化を図ることが可能となる。したがって汎用性の高い高周波回路を実現することができる。
第1高周波回路1によれば、離隔して配設される第1および第2導電体層6,7と、複数の制御ピン2とで協働して誘電体線路を形成し得る。各制御ピン2をダウン状態とアップ状態とにわたって変位させることで、可変高周波回路形成部3を自在にかつ簡単に変更することが可能となる。可変高周波回路形成部3は、パワーデバイダ、フィルタ回路およびカプラの少なくともいずれか1つの誘電体線路形状に変更される。このように第1高周波回路1の汎用性を高めることができる。
図6は、第2の実施形態に係る可変高周波回路1Aの電気的構成を表すブロック図である。第2の実施形態に係る可変高周波回路1Aを、「第2高周波回路1A」と称す。第2高周波回路1Aは、回路形成部としての第2可変高周波回路形成部3Aと、制御手段としての第2高周波回路制御部4Aとを含む。第2可変高周波回路形成部3Aは、第2可変高周波回路部5Aと、複数の制御ピン2とを有する。第2可変高周波回路部5Aには、該第2可変高周波回路部5Aで処理された高周波信号を検出するための特性検出ポート18が形成されている。該特性検出ポート18から出力される高周波信号の一部を、後述するRF特性測定部19(RF:Rad io Frequency)に入力する。
第2高周波回路制御部4Aは、RF特性測定部19と、回路パターン生成部20と、回路パターン情報記憶部8と、制御ピン駆動部9とを含み、これらは電気的に接続されている。前記特性検出ポート18から出力される(最終的に出力される)高周波信号を、RF特性測定部19に入力する。ここで、所望のRF信号が出力されているか否か判断すべく測定する。この測定結果を表す情報を回路パターン生成部20に送り、該回路パターン生成部20は、第2可変高周波回路部5Aで処理された高周波信号が所望の特性が得られるように処理されているか否かを判断し、それを修正する機能を有する。
回路パターン生成部20は、記憶手段としてのメモリ21を備え、そのメモリ21には、所望の特性が得られるように処理されているか否かを判断する判断基準となる基準データが格納されている。メモリ21には、測定結果を表す情報が一時的に記憶され、この情報と基準データとが比較に供される。その情報は、回路パターン情報記憶部8に一旦格納される。その情報を再現するように、回路パターン情報記憶部8は制御ピン駆動部9に信号を送る。このように第2可変高周波回路部5Aで処理されるべき高周波信号を簡単にかつ確実に修正することが可能となる。このフィードバック制御を繰り返し実行することで、第2可変高周波回路部5Aで所期高周波信号を出力し得る。
たとえば図4に示すカプラ構造を、測定したい機能ブロックの出力信号付近に形成しておき、主信号を大きく乱さない程度に分波させて、特性検出ポート18に出力させることも可能である。これによって必要な機能ブロックだけを測定することができる。したがって全ての機能ブロックを測定する場合に比べて、中央演算処理装置(略称CPU:
Central Processing Unit)などの処理負荷を軽減することができる。その他第1高周波
回路1と同様の作用、効果を奏する。
図7は、回路パターン生成部20での処理フローを表すフローチャートである。図6も参照しつつ説明する。特に記載しない限り、本処理の制御主体は回路パターン生成部20である。たとえば第2高周波回路1Aの図示外の主電源を投入する条件で本処理フローが開始する。開始後ステップa1に移行し、初期の誘電体線路形状である初期パターンを設定する。次にステップa2に移行して、特性検出パターンを設定する。次にステップa3に移行して、基準データと検出されたデータとを比較するため、特性検出ポート18からの特性検出を取得(終了)したか否かを判断する。「否」との判断でステップa2に戻る。
前記特性検出が終了したとの判断で、ステップa4に移行する。このステップa4において、測定結果である対象データ(たとえば中心周波数など)と、メモリ21に格納される基準データとを比較し、該中心周波数でよいか否かを判断する。「否」との判断でステップa5に移行し、ステップa4における比較結果に基づいて、回路パターン情報記憶部8を介して制御ピン駆動部9に信号を送り、制御ピン2を調整する。その後ステップa2に戻る。ステップa4において、前記中心周波数でよいとの判断で、本フローを終了する。本実施形態では、対象データとして中心周波数を適用しているが、必ずしも中心周波数だけに限定されるものではない。複数の対象データを基準データと比較する工程(ステップ)を直列的に付加したフローチャートにすることも可能である。
以上説明したように、ステップa4のステップにおいて、測定結果である情報と基準データとを比較する。測定結果が当該回路パターンの条件を満たさないつまりNGであると判断されると、ステップa5のステップにおいて調整したうえでステップa2に戻る。このようなフィードバック制御を繰り返し実行することで、第2可変高周波回路部5Aで所期高周波信号を高精度に出力することができる。
本実施形態では、第2導電体層7のXY平面全体に複数の制御ピン2が配設されるが、第2導電体層7のXY平面のうちの要部だけに複数の制御ピン2を配設することも可能である。この場合には、可変高周波回路形成部3Aの構造を簡単化できるうえ、制御ピン2を変位させる制御系を簡単化できる。制御ピン2を変位させるための貫通孔を、第1および第2導電体層に形成する場合もある。この場合には、シリンダ本体の一部で第1および第2導電体層を保持することができ、高周波回路の剛性強度を高めることができる。第1導電体層に複数の貫通孔を形成する分、第1導電体層の軽量化を図ることが可能となる。
誘電体線路形成装置を、前述したフィルタ回路などの高周波回路部品以外の高周波回路部品にも適用し得る。本実施形態では、誘電体線路形成装置を高周波回路に適用しているが、低周波回路に適用することも可能である。この場合、構造の簡単化および可変低周波回路形成部の最適化を図ることが可能となる。したがって汎用性の高い低周波回路を実現できる。本発明の実施の他の形態として、たとえばユーザの要求に応じて、複数の制御ピンをアップ状態またはダウン状態に制御して以後全制御ピンを変位不可能に固着した所望の高周波回路を提供する場合もある。この場合には、複数種類の高周波回路部品を準備しておく必要がなく、それ故、高周波回路の汎用性を高めることができる。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を付加した形態で実施することも可能である。
図8は、本発明の第3の実施形態に係る可変高周波回路形成部3Bを表す斜視図である。図9は、制御ピン2Aの駆動部の要部を、ピン出退方向を含む仮想一平面で切断してみた断面図である。図10は、第3の実施形態に係る可変高周波回路1Bの電気的構成を表すブロック図である。第3の実施形態に係る可変高周波回路1Bを「第3高周波回路1B」と称す。第3高周波回路1Bは、回路形成部としての第3可変高周波回路形成部3Bと、制御手段としての第3高周波回路制御部4Bとを含む。第3可変高周波回路形成部3Bは、誘電体線路を形成するための誘電体線路形状を変更可能な回路形成部である。第3高周波回路制御部4Bは、第3可変高周波回路形成部3Bの誘電体線路形状を所期情報に基づいて変更するように制御する。先ず第3可変高周波回路形成部3Bについて説明する。
第3可変高周波回路形成部3Bは、第3可変高周波回路部5Bと、複数の制御ピン2A(可導体に相当する)とを有する。第3可変高周波回路形成部3Bは、導電体層6Aを含む。本実施形態で形成される誘電体線路はいわゆるイメージ線路であり、イメージ線路を形成する金属板は本実施形態では導電体層6Aに相当し、誘電体線路は本実施形態では制御ピン2A群で形成される。この導電体層6Aはたとえば平面視矩形状に形成されている。
導電体層6Aには、制御ピン2Aを変位させるための複数の貫通孔6aが形成され、これら複数の貫通孔6aは、導電体層6AのXY平面に沿って、X方向一定間隔おきでかつY方向一定間隔おきに配設されている。制御ピン2Aと貫通孔6aとが一対一に対応するように構成されている。導電体層6Aの各貫通孔6aは、後述する制御ピン2Aの形状に対応するように矩形孔形状に形成されている。ただし各貫通孔6aは各制御ピン2Aに対し、制御ピン2Aを円滑に変位可能にルーズに形成されている。
複数の制御ピン2Aは、導電体層6Aと協働して誘電体線路を形成し得るものである。各制御ピン2Aは、イメージ線路の誘電体線路の一部分を成すアップ状態と、ダウン状態とにわたって変位可能に構成されている。前記アップ状態(図9、Z1参照)とは、誘電体線路の一部分を成すZ方向一方に上昇した誘電体線路形成状態と同義であり、前記ダウン状態(図9、Z2参照)とは、誘電体線路を成さないZ方向他方に下降した誘電体線路非形成状態と同義である。各制御ピン2Aは誘電体から成り、Z方向に延びる四角柱に形成されている。各制御ピン2AのZ方向長さおよび、誘電体線路を形成する制御ピン2A群の幅は所望の周波数帯域に応じて決定される。この周波数帯域は制御ピン2Aの比誘電率にも関係する。
ところで金属壁に、誘電体線路を伝播する電磁波の波長の1/2未満の孔が開いていても、この孔から電磁波が漏れて伝播することはない。したがって、導電体層6Aに形成された貫通孔6aの大きさを信号波長の1/2未満に規定することで、導電体層6Aから電磁波が漏れて伝播することはなく、イメージ線路の金属板として機能する。そして、誘電体制御ピン2Aの変位位置をアップ状態にするかダウン状態にするかで、形成する誘電体線路構造を自在に形成または変形可能になっている。
本実施形態では、各制御ピン2Aを四角柱に形成しているが四角柱だけに限定されるものではなく、円柱または四角柱以外の多角柱、具体的には三角柱、五角柱などに形成することも可能である。各制御ピン2Aを円柱に形成した場合には、この円柱形状の制御ピン2Aに対応する導電体層6Aの貫通孔6aを円筒孔に形成することができる。
本実施形態では、導電体層6AのZ方向一方(矢符Zaにて表記する)には空気が介在しているが、必ずしもこの形態に限定されるものではない。導電体層6AのZ方向一方に、図示外の誘電体が介在してもよい。該誘電体には、制御ピン2Aの配設位置に対応する複数の孔が形成され、制御ピン2Aの変位を妨げないようになっている。前記誘電体を挿入した場合には、導電体層6Aと誘電体とでもって制御ピン2Aを保持することができる。導電体層6Aと誘電体とで制御ピン2Aを保持することで、誘電体がない形態に比べて、第3可変高周波回路形成部3Bの剛性強度を高めることができる。該剛性強度を高めることで、制御ピン2Aを円滑に変位させることができる。
第3高周波回路制御部4Bについて説明する。第3高周波回路制御部4Bは、回路パターン情報記憶部8と制御ピン駆動部9Aとを含み、これらは電気的に接続されている。当該第3高周波回路1Bに有線または無線などを通して送られるパターン情報PDは、回路パターン情報記憶部8に一旦格納される。その情報を再現するように、回路パターン情報記憶部8は制御ピン駆動部9Aに信号を送る。制御ピン駆動部9Aは、駆動源としてのポンプモータ、流体圧シリンダ10、配管11および図示外の制御弁(配管等と称す)を含み、これらは配管接続されている。導電体層6Aには、流体圧シリンダ10のシリンダ本体10Aが固着されている。
流体圧シリンダ10の作動流体としてガスを適用した場合には、オイルを適用する場合に比べて、第3高周波回路1Bの軽量化を図ることができ、該第3高周波回路1Bを含む機器の携帯性向上を図ることができる。回路パターン情報記憶部8から制御ピン駆動部9Aに送られる信号に基づいて、駆動源から配管等を介してシリンダ本体10A内に正圧をかけてピストン12つまり制御ピン2Aをダウン状態からアップ状態に押し出す。
逆に前記信号に基づいて、シリンダ本体10A内の作動流体を吸引することで、シリンダ本体10A内に負圧をかけて制御ピン2Aをアップ状態からダウン状態に変位する構造になっている。その結果、各制御ピン2Aがダウン状態またはアップ状態となり、変更された高周波信号が形成される。この高周波回路に入力される高周波信号(略称RF信号:Radio Frequency信号)は、第3可変高周波回路部5Bでたとえばフィルタ処理などがされた後出力される。ただし前記フィルタ処理に限定されるものではない。本実施形態でも、シリンダ本体10A内にかける作動流体の圧力を開放すると、アップ状態からダウン状態に制御ピン2Aを変位させるコイルばねをシリンダ本体10Aと制御ピンの間に設けてもよい。この場合には、シリンダ本体10A内に負圧をかける本実施形態よりも、制御ピン2Aを迅速に変位させることができる。仮に配管途中に作動流体の漏れがあったとしても、制御ピン2Aを確実にかつ迅速に変位させることが可能となる。
図11は、回路パターンを表す平面図であり、図11(a)および(b)は第1ポートPt1から入力され第2ポートPt2から出力される高周波信号の一部がカップリングして第4ポートPt4へも出力される構造の回路パターンを表す平面図である。ただし、図11(a)の状態は図11(b)の状態よりも、そのカップリング量が大きいときのパターンを示している。図11(a)および図11(b)のカプラ用パターン情報は、回路パターン情報記憶部8に格納されている。操作者の操作指令によって、誘電体線路を形成する制御ピン2Aの一部がアップ状態またはダウン状態に変位することで、図11(a)に示す回路パターンと、図11(b)に示す回路パターンとにわたって容易にかつ迅速に切換え得る。
図12は、回路パターンを表す平面図であり、図12(a)は、第2ポートPt2および第3ポートPt3に電力が等分配される回路パターンを表す平面図、図12(b)は、第2ポートPt2および第3ポートPt3への電力の分配比がずれた回路パターンを表す平面図である。
制御ピン2Aは、XおよびY方向に一定間隔おきに配設され、白抜きの四角は誘電体線路を形成しないダウン状態の制御ピン2Aを、黒四角は誘電体線路を形成するアップ状態の制御ピン2Aを表している。図12(a)は、等分岐の処理を行うように制御ピン2Aを配置するものである。この図12(a)に示す誘電体線路形状である回路パターンはたとえばデフォルトで規定されている。第1ポートPt1から入力された高周波信号は第2および第3ポートPt2,Pt3に電力が等分配される。図12(a)に示す等分岐の処理を行うパターン情報は、回路パターン情報記憶部8に格納されている。操作者の操作指令によって、回路パターン情報記憶部8は制御ピン駆動部9Aに信号を送り、制御ピン駆動部9Aは駆動源を駆動制御する。これによってシリンダ本体10A内に正圧または負圧がかかり、制御ピン2Aをアップ状態またはダウン状態に変位し、図12(a)に示す回路パターンを得る。
図12(b)に示すように、図12(a)に示す回路パターンから、分岐直後の誘電体線路の幅を不均一にした構造にすることも可能である。このように分岐直後の誘電体線路の幅を不均一にすることによって、電力の分配比がずれ、いわゆるパワーデバイダを形成することができる。該パワーデバイダを実現するパワーデバイダ用パターン情報も、回路パターン情報記憶部8に格納されている。操作者の操作指令によって、回路パターン情報記憶部8は制御ピン駆動部9Aに信号を送り、制御ピン駆動部9Aは前記パワーデバイダ用パターン情報に基づいて駆動源を駆動制御する。これによって、図12(b)に示すパワーデバイダを得る。
図12の例では、一つの分岐構造しかないが、可変高周波回路をXY方向に大きくして多数の分岐構造を形成しアンテナの給電回路とすることで、その先に結合されたアンテナ素子への給電比率を自在に変化することができる。したがって放射パターンを自由に変化させることができる。その結果、サイドローブ制御が自在にできるアレーアンテナを形成することも可能となる。
図13は、回路パターンを表す平面図であり、図13(a)は、直線的な誘電体線路構造の回路パターンを表す平面図、図13(b)は、フィルタ機能を持たせた回路パターンを表す平面図である。本実施形態では、たとえばデフォルトで格納される図13(a)に示す回路パターンから、操作者の操作指令によって、フィルタ機能を持たせた回路パターン(フィルタ回路)に変化させることができる。たとえば、誘電体線路を図のような島状のパターンとし、それぞれの島で誘電体共振器となるようなサイズに形成し、当該島のピッチを調整する。このような状態を、予め定める制御ピン2Aをアップ状態またはダウン状態に変位することで、フィルタ回路を容易にかつ迅速に実現することができる。予め定める制御ピン2Aをアップ状態またはダウン状態に変位させることで、この回路パターンは自在に変化することができるので、そのフィルタ機能の中心周波数特性および通過帯域までも自在に変更することができる。
図14は、独立した誘電体線路A、Bを含む回路パターン等を表す図であり、図14(a)は回路パターンを表す平面図、図14(b)は、この回路パターンのときのシミュレーション結果を示す図である。図14(a)において、制御ピン2Aの白四角はダウン状態、黒四角はアップ状態で誘電体線路を形成していることを示す。このときの、制御ピン2AのXおよびY方向のサイズは、0.6mm×0.6mm、そのピッチはXおよびY方向ともに0.8mmである。アップ状態の制御ピン2Aの導体層6Aからの高さつまりZ方向寸法は3.0mmであり、その比誘電率は9.0である。図14(b)、S21の値が示すようにポート1から入力された信号はほとんどポート2から出力され、誘電体線路Bのポート3およびポート4からは出力されていないことがわかる。制御ピン2Aを様々なパターンに制御することによって、誘電体線路Aから誘電体線路Bのポート4への結合量を自在に変更することができる。
図15は、独立した誘電体線路AおよびBを含む回路パターン等を表す図であり、図15(a)は回路パターンを表す平面図、図15(b)は、この回路パターンのときのシミュレーション結果を示す図である。制御ピン2Aのサイズおよびピッチは図14と同じ値に規定されている。図15(a)に示す回路パターンの場合、図15(b)に示すように、誘電体線路Aのポート1から入力された信号は、その多くが、ポート2から出力されているが、誘電体線路Bのポート4にも結合し、30GHzにおいて約-11dB結合していることが分かる。一方ポート3への結合は-20dB以下であり、ほとんど結合していない。これはすなわち、方向性結合器となっていることを意味する。制御ピン2Aを様々なパターンに制御することによって、誘電体線路Aから誘電体線路Bのポート4への結合量を自在に変更することができる。
図16は、独立した誘電体線路AおよびBを含む回路パターン等を表す図であり、図16(a)は回路パターンを表す平面図、図16(b)は、この回路パターンのときのシミュレーション結果を示す図である。制御ピン2Aのサイズおよびピッチは図14と同じ値に規定されている。図16(a)に示す回路パターンの場合、図16(b)に示すように、誘電体線路Aのポート1から入力された信号は、ポート2から多く出力されているが、誘電体線路Bのポート4にも結合し、30GHzにおいて約-8dB結合していることが分かる。一方ポート3への結合は-20dB以下であり、ほとんど結合していない。これはすなわち、方向性結合器となっていることを意味する。本例では、制御ピン2Aを様々なパターンに制御することによって、誘電体線路Aから誘電体線路Bのポート4への結合量を自在に変更することができる。
以上説明した第3高周波回路1Bによれば、第3高周波回路制御部4Bは、第3可変高周波回路形成部3Bの誘電体線路形状をパターン情報(所期情報に相当)に基づいて変更するので、第3可変高周波回路形成部3Bを自在にかつ簡単に変更することができる。複数種類の高周波回路部品を選択的に用いる従来技術に比べて、構造の簡単化および第3可変高周波回路形成部3Bの最適化を図ることが可能となる。したがって汎用性の高い高周波回路を実現することができる。
第3高周波回路1Bによれば、導電体層6Aと、複数の制御ピン2Aとで協働して誘電体線路を形成し得る。各制御ピン2Aをダウン状態とアップ状態とにわたって変位させることで、第3可変高周波回路形成部3Bを自在にかつ簡単に変更することが可能となる。第3可変高周波回路形成部3Bは、パワーデバイダ、フィルタ回路およびカプラの少なくともいずれか1つの誘電体線路形状に変更される。このように第3高周波回路1Bの汎用性を高めることができる。特に二つの導電体層を含む構造に比べて、構造を簡単化できる。伝播する電界の向きは導体に対して、垂直でも水平でも使うことができるので、誘電体線路形成装置の汎用性をさらに高めることができる。一つの導電体層6Aを含んで構成されるので、制御ピン2Aの挿入量を変えることが可能となる。該挿入量を変えることが可能になるので、たとえばカプラの結合量を前記挿入量に応じて変えることができる。また、二つの導電体層を含む構造の場合、その導体間隔で用いることのできる周波数範囲がある程度限定されるが、この一つの導電体層を含む構造の場合では、制御ピンの挿入量や幅により用いる周波数範囲を変更することができる。したがって汎用性の高い高周波回路を実現できる。
図17は、第4の実施形態に係る可変高周波回路1Cの電気的構成を表すブロック図である。第4の実施形態に係る可変高周波回路1Cを、「第4高周波回路1C」と称す。第4高周波回路1Cは、回路形成部としての第4可変高周波回路形成部3Cと、制御手段としての第4高周波回路制御部4Cとを含む。第4可変高周波回路形成部3Cは、第4可変高周波回路部5Cと、複数の制御ピン2Aとを有する。第4可変高周波回路部5Cには、該第4可変高周波回路部5Cで処理された高周波信号を検出するための特性検出ポート18が形成されている。該特性検出ポート18から出力される高周波信号の一部を、後述するRF特性測定部19(RF:Radio Frequency)に入力する。
第4高周波回路制御部4Cは、RF特性測定部19と、回路パターン生成部20と、回路パターン情報記憶部8と、制御ピン駆動部9Aとを含み、これらは電気的に接続されている。前記特性検出ポート18から出力される(最終的に出力される)高周波信号を、RF特性測定部19に入力する。ここで、所望のRF信号が出力されているか否か判断すべく測定する。この測定結果を表す情報を回路パターン生成部20に送り、該回路パターン生成部20は、第4可変高周波回路部5Cで処理された高周波信号が所望の特性が得られるように処理されているか否かを判断し、それを修正する機能を有する。
回路パターン生成部20は記憶手段としてのメモリ21を備え、このメモリ21には、所望の特性が得られるように処理されているか否かを判断する判断基準となる基準データが格納されている。メモリ21には、測定結果を表す情報が一時的に記憶され、この情報と基準データとが比較に供される。その情報は、回路パターン情報記憶部8に一旦格納される。その情報を再現するように、回路パターン情報記憶部8は制御ピン駆動部9Aに信号を送る。このように第4可変高周波回路部5Cで処理されるべき高周波信号を簡単にかつ確実に修正することが可能となる。このフィードバック制御を繰り返し実行することで、第4可変高周波回路部5Cで所期高周波信号を出力し得る。
たとえば図15(a)に示すカプラ構造を、測定したい機能ブロックの出力信号付近に形成しておき、主信号を大きく乱さない程度に分波させて、特性検出ポート18に出力させることも可能である。これによって、必要な機能ブロックだけを測定することができる。したがって全ての機能ブロックを測定する場合に比べて、CPUなどの処理負荷を軽減することができる。その他第3高周波回路1Bと同様の作用、効果を奏する。
図18は、回路パターン生成部20での処理フローを表すフローチャートである。図17も参照しつつ説明する。特に記載しない限り、本処理の制御主体は回路パターン生成部20である。たとえば第4高周波回路1Cの図示外の主電源を投入する条件で本処理フローが開始する。開始後ステップb1に移行し、初期の誘電体線路形状である初期パターンを設定する。次にステップb2に移行して特性検出パターンを設定する。次にステップb3に移行して、基準データと検出されたデータとを比較するため、第2ポート、第4ポートの特性検出が終了したか否かを判断する。「否」との判断でステップb2に戻る。
前記特性検出が終了したとの判断で、ステップb4に移行する。このステップb4における比較結果に基づいて、回路パターン情報記憶部8を介して制御ピン駆動部9Aに信号を送り、誘電体線路幅を調整する。その後ステップb2に戻る。ステップb4において、前記中心周波数でよいとの判断で、ステップb6に移行する。ここで測定結果のカップリング量と、メモリ21に格納される基準データとを比較し、該カップリング量でよいか否かを判断する。「否」との判断でステップb7に移行し、ステップb6における比較結果に基づいて、回路パターン情報記憶部8を介して制御ピン駆動部9Aに信号を送り、カプラーの結合量を調整する(図14、図15参照)。その後ステップb2に戻る。ステップb6においてカップリング量でよいとの判断で、本フローを終了する。
以上説明したように、ステップb4,b6の各ステップにおいて、測定結果である情報と基準データとを比較する。測定結果が当該回路パターンの条件を満たさないつまりNGであると判断されると、それぞれステップb5,b7の各ステップにおいて調整したうえでステップb2に戻る。このようなフィードバック制御を繰り返し実行することで、第4可変高周波回路部5Cで所期高周波信号を高精度に出力することができる。
本実施形態では、導電体層6AのXY平面全体に複数の制御ピン2Aが配設されるが、導電体層6AのXY平面のうちの要部だけに複数の制御ピン2を配設することも可能である。この場合には、可変高周波回路形成部の構造を簡単化できるうえ、制御ピン2Aを変位させる制御系を簡単化できる。
誘電体線路形成装置を、前述したフィルタ回路などの高周波回路部品以外の高周波回路部品にも適用し得る。本実施形態では、誘電体線路形成装置を高周波回路に適用しているが、低周波回路に適用することも可能である。この場合、構造の簡単化および可変低周波回路形成部の最適化を図ることが可能となる。したがって汎用性の高い低周波回路を実現できる。本発明の実施の他の形態として、たとえばユーザの要求に応じて、複数の制御ピン2をアップ状態またはダウン状態に制御して以後全制御ピンを変位不可能に固着した所望の高周波回路を提供する場合もある。この場合には、複数種類の高周波回路部品を準備しておく必要がなく、それ故、高周波回路の汎用性を高めることができる。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を付加した形態で実施することも可能である。