JP2007294303A - 熱電子放出型電子銃 - Google Patents

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Abstract

【課題】熱電子放出型電子銃の外形寸法を大きくすることなく放熱や伝熱による熱損失を低減して、電子銃全体の系の熱的安定性を保つ。また、フィラメント電流を低減してフィラメント寿命の短命化を抑制し、フィラメント寿命を延ばす。
【解決手段】熱電子放出型電子銃の各部分の表面に断熱塗料を塗布し、この断熱塗料層によって外部との間の熱伝達を低減する。断熱塗料層は、熱電子放出型電子銃の各部分に設けることができ、例えば、熱電子放出型電子銃を構成する外筒部の大気側、磁気シールド部材の片面あるいは両面、排気管の大気側等の設ける他に、熱伝達経路となる部材の一部あるいは全部とすることができる。この断熱塗料を塗布することで、各外筒部からの放熱、磁気シールド部材からの放熱および加熱、外部との間に熱の出入りを抑制する。
【選択図】図1

Description

本発明は、フィラメントの加熱により熱電子を放出する熱電子放出型電子銃に関する。
電子線を1次ビームとして用いる装置として、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、等の観察装置、低速電子線回折法(LEED)、高速反射電子線回折法(RHEED)、オージェ電子分光法(AES)、電子エネルギー損失分光法(ELS)等を利用した分析装置、電子ビーム露光装置等の加工装置、電子線高速アレイ検査装置等の検査装置などが知られている。
これらの装置に用いられる電子銃として、熱電子放出型や電界放出型が知られている。熱電子放出型電子銃は、フィラメントに電流を流すことで加熱し、この加熱により放出される熱電子を1次ビームとして用いる電子銃であり、安定した電子線電流が得られるため、広く利用されている。
例えば、走査電子顕微鏡は、一端に電子銃を備えた鏡筒部を有し、電子銃で発生した電子を鏡筒部の筒部を通して試料に照射する。この鏡筒部では、電子銃による電子線の発生、集束レンズによる電子プローブの形成や非点補正、走査コイルによる電子線の観察領域での走査等が行われ、対物レンズや対物レンズ絞りを経て試料に照射される。
試料への電子線照射によって試料からは二次電子や反射電子が放出される。二次電子は検出器に印加された正電位に引かれ、また、反射電子は自らのエネルギーで検出器に取り込まれて検出される。検出器で検出された信号は映像増幅器で信号増幅されると共に、走査回路からの走査信号で走査されて表示装置に表示される。
図4は、従来の熱電子放出型電子銃の一構成例を説明するための図である。図4において、電子銃101は、加熱によって熱電子を放出するフィラメント(カソード)111と、フィラメント111からの熱電子放出を集束して電子線束の電子密度を高めるウェーネルト112、及び集束した電子線を加速するアノードを備える。アノードはアース電位とし、フィラメント111には負電圧を印加し、ウェーネルト112にはフィラメント電圧よりも多少低い負電圧を印加してバイアス電圧とする。これによって、フィラメント111から放出された電子は、ウェーネルト112に印加されたバイアス電圧が作る電界によって軌道が修正され、ウェーネルト112の下方位置で一度集束した後、アノードによる加速電圧が作る電界によりアノードに向かって加速する。
アノードに向かって加速された電子は、アノードに開口されたアノードアパーチャ113を通過して、鏡筒部108の下流側の筒体に進む。鏡筒部108は、フィラメント111を内側に囲む第1の筒体102と、内部にレンズ系を収納する第3の筒体104と、第1の筒体102と第3の筒体104との間を繋ぐ第2の筒体103とを備える。ここで、第1の筒体102はフィラメント周辺部を形成し、第2の筒体103の外周部にはアライメントコイル131が設けられる。第3の筒体104内には、電子の下流側に向かって、集光レンズ132,収差補正レンズ133,対物レンズ134,補正レンズ135、およびデフレクタ136が設けられる。また、鏡筒部106の最外周部分には、磁気シールド105が設けられている。
熱電子放出型電子銃ではフィラメント電流を流してフィラメントを加熱することで行われる。この加熱されたフィラメントは、フィラメント全体から熱電子を放出するのではなく、主にフィラメントの先端部分から熱電子を放出する。そのため、電子放出源であるフィラメント先端部分の温度が重要である。
通常、フィラメント電流によって加熱されたフィラメントの熱は、輻射によってウェーネルトやウェーネルト取り付け部に放熱されるため、電子放出源であるフィラメント先端部分の温度が上昇しにくくなる。
図5はフィラメントの発熱熱量と放熱熱量との関係を説明するための図である。図5において、フィラメント111の発熱熱量Q0および外部から入射する熱量Qxは、各部を加熱するに必要な熱量Qmと各部から放熱される熱量Qrとにより消費される。加熱するに必要な熱量Qmとしては、例えば、ウェーネルト112を加熱するに必要な熱量Qm1、第1の筒体102を加熱するに必要な熱量Qm2、第2の筒体103を加熱するに必要な熱量Qm3、第1の筒体102と第3の筒体103との間の機械的結合を高める連結部材107を加熱するに必要な熱量Qm4、磁気シールド105を加熱するに必要な熱量Qm5があり、また、放熱熱量Qrとしては、例えば、112からの放熱熱量Qr1、第1の筒体102からの放熱熱量Qr2、第2の筒体103からの放熱熱量Qr3、連結部材107からの放熱熱量Qr4、磁気シールド105からの放熱熱量Qr5がある。
フィラメントに定電流を流したとき、フィラメント先端温度が所定温度で安定するためには、フィラメントの発熱熱量Q0および外部から入射される熱量Qxの和と、外周部での加熱熱量Qmと放熱熱量Qrとが熱的な平衡状態にある必要がある。この熱的な平衡状態は、Q0=(Qm1+Qr1)+(Qm2+Qr2)+(Qm3+Qr3)+(Qm4+Qr4)+(Qm5+Qr5)−Qxで表される。
したがって、フィラメントの発熱は、輻射によりウェーネルトやウェーネルト周辺の外筒を加熱し、さらに外筒全体へ熱が伝達されていく。そのため、電子放出源であるフィラメント先端部分の温度が上がりにくく、熱平衡に達するまでに長時間を必要とする。フィラメント先端の温度があがりにくいため、必要以上に大きなフィラメント電流を流さなければならない。フィラメント電流を大きくしてフィラメント先端部分の温度を上げると、フィラメント自体に大きな電流が流れることでフィラメント寿命が短くなるという問題がある。
また、フィラメントからの伝熱で加熱されたウェーネルトやウェーネルト取り付け部は、さらにその外側の大気に熱を放熱して熱損失が発生するため、電子銃全体の系の熱的な安定が得にくいという問題もある。
また、加熱される外筒体の表面積が大きい構成では、外筒体の表面から大気側に放出される放熱量が大きくなり、電子銃の系全体が熱平衡に達するまで長時間を要するという問題がある。また、大きな放熱面積は、雰囲気温度、気流などの外乱の影響を受けやすくなり、熱平衡に達するまでの時間が大きく変動するという問題もある。
また、外部から入射される熱量Qxが変動した場合には、上記した熱平衡式が成立しなくなるため、熱平衡状態を保持することが困難となり、放出される電子線が変動するおそれがあるという問題もある。
ここで、熱電子放出型電子銃と外部との間に既存の断熱材料を装着し、この断熱材料によって外部との間の熱伝達を遮断することが考えられる。しかしながら、既存の断熱材料によって熱伝達を遮断するには、ある程度の厚さが必要であり、外筒体や磁気シールドの大気側に断熱材料を装着した場合には、その断熱材料の厚みの分だけ熱電子放出型電子銃の外形寸法が大きくなるという問題がある。
また、外筒体と磁気シールドとのに間は断熱材料を装着するに十分な隙間がないため、断熱材料を装着することができないという問題がある。仮に、外筒体と磁気シールドとのに間の隙間を、断熱材料が装着できる程度に広げた場合には、熱電子放出型電子銃の外形寸法が更に大きくなることになる。
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、熱電子放出型電子銃の外形寸法を大きくすることなく、放熱や伝熱による熱損失を低減して、電子銃全体の系の熱的安定性を保つことを目的とする。
また、フィラメント電流を低減してフィラメント寿命の短命化を抑制し、フィラメント寿命を延ばすことを目的とする。
また、印加電力に対するエミッション電流の利用効率を向上させることを目的とする。
本発明は、熱電子放出型電子銃の各部分の表面に断熱塗料を塗布し、この断熱塗料層によって外部との間の熱伝達を低減する。この断熱塗料層の厚さは、既存の断熱材料と比較して十分に薄くすることができるため、熱電子放出型電子銃の外形寸法が大きくなることはない、また、外筒体と磁気シールドとのに間の隙間に設けることも容易である。
断熱塗料層を形成する断熱塗料は、例えば、セラミック粒子、又はセラミック中空粒子を含む塗料を用いることができる。
本発明の断熱塗料層は、熱電子放出型電子銃の各部分に設けることができ、例えば、熱電子放出型電子銃を構成する外筒部の大気側、磁気シールド部材の片面あるいは両面、排気管の大気側等の設ける他に、熱伝達経路となる部材の一部あるいは全部とすることができる。この断熱塗料を塗布することで、各外筒部からの放熱、磁気シールド部材からの放熱および加熱、外部との間に熱の出入りを抑制することができる。
外筒部の大気側に断熱塗料層を設ける態様は、フィラメント周辺部を覆う第1の外筒部と、熱電子を外部に放出するレンズ系を収納する第3の外筒部と、第1の外筒部と第3の外筒部とを接続すると共に、外周部分にアライメントコイルを有する第2の外筒部とを備え、フィラメントの加熱により熱電子を放出する熱電子放出型電子銃において、第1〜第3の外筒部の少なくとも何れか一つの外筒部の大気側に断熱塗料層を備える。この断熱塗料層によって、外筒部から外部への放熱、および外部から当該外筒部への吸熱を抑制する。
この態様によれば、フィラメントから発熱する熱の周囲への放熱と外部から流入する熱を抑制することで、金属外筒の放熱量を減らし、系全体が熱平衡の達するまでの時間を短縮すると共に、フィラメント電流の電流量を抑制し、フィラメントの寿命を延ばすことができる。
また、磁気シールド部材の片面あるいは両面に断熱塗料層を設ける態様は、上述した態様と同様に、フィラメント周辺部を覆う第1の外筒部と、熱電子を外部に放出するレンズ系を収納する第3の外筒部と、第1の外筒部と第3の外筒部とを接続すると共に、外周部分にアライメントコイルを有する第2の外筒部とを備え、フィラメントの加熱により熱電子を放出する熱電子放出型電子銃において、第1〜第3の外筒部の外周部分を覆う磁気シールド部材とを備え、磁気シールド部材の少なくとも一方の面に断熱塗料層を備える。この断熱塗料層によって、磁気シールド部材から外部への放熱、又は外部から磁気シールド部材への吸熱、あるいはその両方を抑制する。
この態様によれば、磁気シールド部材の加熱と磁気シールド部材からの放熱および外部からの熱の流入を抑制することで、従来磁気シールド部材から放熱していた熱量または磁気シールド部材から流入する熱量を遮断することで、外乱に影響を少なくすることができる。
上述した熱電子放出型電子銃が備える他の部材に断熱塗料層を設ける態様は、第2の外筒部の外側において、第1の外筒部と第3の外筒部とを接続する連結部材を備え、この連結部材の少なくとも一方の面に断熱塗料層を備える。この断熱塗料層によって、連結部材から外部への放熱、又は外部から連結部材への吸熱、あるいはその両方を抑制する。
また、排気管に断熱塗料層を設ける態様は、フィラメント周辺部を覆う第1の外筒部を備え、フィラメントの加熱により熱電子を放出する熱電子放出型電子銃において、フィラメント周辺部内を排気するための排気管を第1の外筒部に有し、この排気管の大気側に断熱塗料層を備える。この断熱塗料層によって、排気管から外部への放熱、および外部から排気管への吸熱を抑制する。
断熱材として断熱塗料を用いることによって、熱電子放出型電子銃の細部にも隙間なく断熱材を設ける処理を行うことができ、また、その処理作業も安価とすることができる。また塗布によるため、断熱材料からの発塵がなく、クリーンルームなどのクリーン環境での使用に適している。また、断熱材のためのスペースを確保するために熱電子放出型電子銃の構造を改変する必要がないため、従来の構造のままで断熱塗料層を形成することができる。また、断熱塗料は、各種の色を選択することができるため、意匠性の向上も図ることができる。
本発明によれば、熱電子放出型電子銃の外形寸法を大きくすることなく放熱や伝熱による熱損失を低減して、電子銃全体の系の熱的安定性を保つことができる。また、フィラメント電流を低減してフィラメント寿命の短命化を抑制し、フィラメント寿命を延ばすことができる。また、印加電力に対するエミッション電流の利用効率を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の熱電子放出型電子銃の概略構成を説明するための図であり、図2は本発明の熱電子放出型電子銃のフィラメント周辺部および外筒部を説明するための図である。
図1、図2において、熱電子放出型電子銃1は前述した図4に示す構成と共通する構成を備える。熱電子放出型電子銃1は、加熱によって熱電子を放出するフィラメント(カソード)11と、フィラメント11からの熱電子放出を集束して電子線束の電子密度を高めるウェーネルト12、及び集束した電子線を加速するアノードを備える。図1では、アノードは第1の外筒2の一部で構成され、フィラメントから放出された電子を通すアノードアパーチャ13が形成されている。
アノードはアース電位とし、フィラメント11には負電圧を印加し、ウェーネルト12にはフィラメント電圧よりも多少低い負電圧を印加してバイアス電圧とする。これによって、フィラメント11から放出された電子は、ウェーネルト12に印加されたバイアス電圧が作る電界によって軌道が修正され、ウェーネルト12の下方位置で一度集束した後、アノードによる加速電圧が作る電界によりアノードに向かって加速する。
アノードに向かって加速された電子は、アノードに開口されたアノードアパーチャ13を通過して、鏡筒部8の下流側の筒体(第2の外筒3および第3の外筒4)に進む。鏡筒部8は、フィラメント11を内側に囲む第1の外筒2と、内部にレンズ系を収納する第3の外筒4と、第1の外筒2と第3の外筒4との間を繋ぐ第2の外筒3とを備える。ここで、第1の外筒2はフィラメント周辺部を形成し、第2の外筒3の外周部にはアライメントコイル31が設けられる。第3の外筒4内には、電子の下流側に向かって、集光レンズ32,収差補正レンズ33,対物レンズ34,補正レンズ35、およびデフレクタ36が設けられる。また、鏡筒部8の最外周部分には、磁気シールド5が設けられている。
第1の外筒2には、フィラメント11が収納される内部を排気するための排気管6が設けられ、この排気管6を通して外部に備えた真空ポンプによって真空排気が行われる。
また、第1の外筒2と第3の外筒4との間には、上述した第2の外筒3の外側に連結部材7が設けられる。この連結部材7は、第1の外筒2と第3の外筒4との機械的な結合強度を高めるものである。この連結部材の形状は、必ずしも筒体である必要はなく、第1の外筒2と第3の外筒4とを機械的な結合する構成であれば、一部に切り欠き部分を有して構成としてもよい。
本発明の熱電子放出型電子銃1は、各部分の表面に断熱塗料を塗布することによって形成される断熱塗料層を有する。
この断熱塗料層は、例えば、鏡筒部8を構成する第1の外筒〜第3の外筒の大気側、磁気シールド部5の片面あるいは両面、排気管6の大気側、連結部材の片面あるいは両面、あるいは、熱電子放出型電子銃を構成する各部において、外部との間で熱の出入りが行われる部分に形成することができる。
図1、図2において、第1の外筒2の大気側に断熱塗料層22を設け、第2の外筒3の大気側に断熱塗料層23を設け、第3の外筒4の大気側に断熱塗料層24を設ける構成と示している。これらの各断熱塗料層22,23,24は、各筒体2〜4の熱を大気側に逃がすことを抑制する他、大気側から各筒体2〜4に対して熱が入り込むことを抑制する。
なお、ここで、第1〜第3の各外筒2〜4の真空側には断熱塗料層を設けない構成とすることにより、塗料に含まれる成分が真空側に浮遊して真空状態を悪化させることを抑制することができる。
鏡筒部8の外周を覆う磁気シールド5には、その片面あるいは両面に断熱塗料層25を設ける。図1,図2では、磁気シールド5の外側の面に断熱塗料層25aを設け、内側の面に断熱塗料層25bを設ける構成を示している。磁気シールド部5の内側の面に設けた断熱塗料層25bは、磁気シールド5の内側の鏡筒8からの熱が磁気シールド部5に伝達することを抑制し、また、外部からの熱が磁気シールド5を通して内部に伝達することを抑制する。また、磁気シールド部5の外側の面に設けた断熱塗料層25aは、磁気シールド5の熱が外部に伝達すること、外部からの熱が磁気シールド5を介して内部に伝達することを抑制する。
排気管6には、その大気側に断熱塗料層26を設ける。排気管6は第1の外筒2と接触しているため、排気管6は第1の外筒2と大気側との間の熱伝達の経路となる。そこで、この排気管6の大気側に断熱塗料層26を設けることによって、排気管6と大気側との間の熱伝達を抑制し、延いては、大気側と第1の外筒2との間において排気管6を経路とする熱伝達を抑制する。
連結部材7には、その片面あるいは両面に断熱塗料層27を設ける。図1,図2では、連結部材7の外側の面に断熱塗料層27aを設け、内側の面に断熱塗料層27bを設ける構成を示している。連結部材7の内側の面に設けた断熱塗料層27bは、第1の外筒3との間における熱伝達を抑制し、連結部材7の外側の面に設けた断熱塗料層27aは、磁気シールド5との間における熱伝達を抑制する。
また、上記した各部分の他に、熱伝達経路なる部材の一部あるいは全部に断熱塗料を塗布して断熱塗料層を形成し、熱伝達経路を遮断する。
図3は、本発明の熱電子放出型電子銃の他の構成例を説明するための図である。図3において、第2の外筒3の内壁部に薄肉の金属膜41を設けて導電体とする。第2の外筒3は、石英ガラスや硬質ガラスのガラス管による誘電体を用いる他に、アルミナセラミックやプラスチック等の誘電体を用いることができる。このように、第2の外筒3として誘電体を用いる場合には、第2の外筒3の内壁に電気的にチャージされる場合がある。このように内壁にチャージされた電荷は、第2の外筒3の内部を通る電子ビームに影響して軌道を変化させるおそれがある。そこで、本発明の第2の外筒3の内壁を導電体として、電気的なチャージが発生しない構成とする。この構成として、ガラス管等の誘電体からなる筒体の内壁側にニッケル無電界めっき処理を施し、1ミクロン程度の金属膜をコーティングすることが望ましい。
このとき、第2の外筒3の少なくとも一方の端部にも金属めっき処理を施す。第2の外筒3を第1の外筒2と第3の外筒4との間に設置して鏡筒8を構成した際には、この第2の外筒3の両端部は、第1の外筒2および第3の外筒4と接触する。このとき、第2の外筒3の少なくとも一方の端部にも金属膜を設けることによって、第1の外筒2あるいは第3の外筒4と物理的に接触すると同時に電気的に接触させることができる、第2の外筒3を例えばアース電位に保持することができる。
なお、この第2の外筒3の全面を無電界めっきする他、一部の面のみを無電界めっきしてもよい。
また、第2の外筒3と金属外筒との接続部は、Oリングシール42を用いた簡易な挿入構造とすることができる。図3は、第2の外筒3を金属外筒である第1の外筒2に取り付ける構成例を示している。第1の外筒2において、第2の外筒3が接触する位置に、第2の外筒3を挿入可能な径を有する凹部を形成して、この凹部の外周部分にOロング42を配置する。これによって、第2の外筒3を金属外筒に取り付けることができる。
なお、図2では第1の外筒2と第2の外筒3との接続部分を示しているが、第2の外筒2と第3の外筒4との接続部分にも同様の接続構造を適用することができる。
上記した構成において、断熱塗料としてセラミック粒子、セラミック中空粒子を含む塗料を用いることができる。この断熱塗料を塗布して形成される断熱塗料層の膜厚は、例えば、0.5mm程度で十分な断熱効果を得ることができる。この断熱塗料として、例えば、シスタコートと呼ばれる塗料を用いてもよい。
本発明の熱電子放出型電子銃は、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)、等の観察装置、低速電子線回折法(LEED)、高速反射電子線回折法(RHEED)、オージェ電子分光法(AES)、電子エネルギー損失分光法(ELS)等を利用した分析装置、電子ビーム露光装置等の加工装置、電子線高速アレイ検査装置等の検査装置などに適用することができる。
本発明の熱電子放出型電子銃の概略構成を説明するための断面図である。 本発明の熱電子放出型電子銃のフィラメント周辺部および外筒部を説明するための図である。 本発明の熱電子放出型電子銃の他の概略構成を説明するための断面図である。 従来の熱電子放出型電子銃の一構成例を説明するための図である。 フィラメントの発熱熱量と放熱熱量との関係を説明するための図である。
符号の説明
1…熱電子放出型電子銃、2…第1の外筒、3…第2の外筒、4…第3の外筒、5…磁気シールド、6…排気管、7…連結部材、8…鏡筒部、11…フィラメント、12…ウェーネルト、13…アノードアパーチャ、22,23,24a,24b,25a,25b,26,27a,27b…断熱塗料層、31…アライメントコイル、32…集光レンズ、33…収差補正レンズ、34…対物レンズ、35…補正レンズ、36…デフレクタ41…薄肉金属膜、42…Oリング。

Claims (5)

  1. フィラメントの加熱により熱電子を放出する熱電子放出型電子銃において、
    フィラメント周辺部を覆う第1の外筒部と、
    前記熱電子を外部に放出するレンズ系を収納する第3の外筒部と、
    前記第1の外筒部と第3の外筒部とを接続すると共に、外周部分にアライメントコイルを有する第2の外筒部とを備え、
    前第1〜第3の外筒部の少なくとも何れか一つの外筒部の大気側に断熱塗料層を備え、当該外筒部から外部への放熱、および外部から当該外筒部への吸熱を抑制することを特徴とする、熱電子放出型電子銃。
  2. フィラメントの加熱により熱電子を放出する熱電子放出型電子銃において、
    フィラメント周辺部を覆う第1の外筒部と、
    前記熱電子を外部に放出するレンズ系を収納する第3の外筒部と、
    前記第1の外筒部と第3の外筒部とを接続すると共に、外周部分にアライメントコイルを有する第2の外筒部と、
    前記第1〜第3の外筒部の外周部分を覆う磁気シールド部材とを備え、
    前記磁気シールド部材の少なくとも一方の面に断熱塗料層を備え、当該磁気シールド部材から外部への放熱、又は外部から当該磁気シールド部材への吸熱、あるいはその両方を抑制することを特徴とする、熱電子放出型電子銃。
  3. フィラメントの加熱により熱電子を放出する熱電子放出型電子銃において、
    フィラメント周辺部を覆う第1の外筒部と、
    前記第1の外筒部に設けてフィラメント周辺部内を排気するための排気管とを備え、
    前記排気管の大気側に断熱塗料層を備え、当該排気管から外部への放熱、および外部から当該排気管への吸熱を抑制することを特徴とする、熱電子放出型電子銃。
  4. 前記第2の外筒部の外側において、前記第1の外筒部と第3の外筒部とを接続する連結部材を備え、
    前記連結部材の少なくとも一方の面に断熱塗料層を備え、当該連結部材から外部への放熱、又は外部から当該連結部材への吸熱、あるいはその両方を抑制することを特徴とする、請求項1又は2に記載の熱電子放出型電子銃。
  5. 前記断熱塗料層を形成する断熱塗料は、セラミック粒子、又はセラミック中空粒子を含む塗料であることを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか一つに記載の熱電子放出型電子銃。
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