JP2007289518A - 床ずれ防止用介護用具 - Google Patents

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Abstract

【課題】寝たきり者に安心感を与えつつ確実な体位変更を可能とし、介護者の手間や負担を軽減する床ずれ防止用介護用具を提供する。
【解決手段】 本発明の床ずれ防止用介護用具1は、膨張と収縮が可能な第1の袋体2と第2の袋体3が結合部4により結合され、第1の袋体2と第2の袋体3のそれぞれに給排気管5の一端が接続され、給排気管5を介して、第1の袋体2と第2の袋体3のそれぞれに対して給気もしくは排気を行う給排気装置6が給排気管5の他端が接続され、第1の袋体2と第2の袋体3のそれぞれは、結合部4に比べて、外縁部7の方が膨張後の体積が大きいことを特徴とする
【選択図】 図1

Description

本発明は、寝たきりの病人や老人の床ずれを防止する床ずれ防止用介護用具に関するものである。
病気や怪我、あるいは加齢により、寝たきりとなる病人や高齢者にとっては、長時間同じ姿勢で寝たきりとなるために、床ずれを生じさせることが多い。
この床ずれが生じる原因は、寝たきりにより、身体の下側(一般的には背中側)の同一部位が長時間にわたり寝具に接し、この部位の血液の循環が不良となることである。
このため、寝たきり者の床ずれを防止するためには介護者が頻繁に、その体位を変えてあげるなどの重労働が必要であった。
このような寝たきり者の体位変更のために、二つの空気袋への空気の給排気を時間間隔により行って、寝たきり者の体重バランスを変化させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。二つの空気袋のそれぞれは、寝たきり者の背中において、背骨を中心に左右に配置され、一方の空気袋が膨張すると、この膨張に合わせて背中の半分が持ち上げられ、身体が、縦軸を基準に傾けられる。
しかしながら、特許文献1に代表される従来の技術では次のような問題点があった。
特許文献1に開示される二つの空気袋のそれぞれは、楕円形に近い形状を有しており、給気されて膨張した場合でも、そのままの形状で大きくなる。このため、二つの空気袋の境界から外縁部における中で、略中央の位置の膨張が最も大きくなる。このため膨張後の体積に対して、寝たきり者の傾き角度を決める高さが低く、寝たきり者に対する体位の傾きを十分に生じさせることができない。一方、寝たきり者の傾きを大きくするためには、空気袋の膨張を非常に大きくする必要がある。この場合には、非膨張時との差が大きくなりすぎるため、空気袋への負担が大きい上、膨張に要する時間やコストも大きくなる。膨張させすぎることによる空気袋の破損も生じうる。
また、傾きの角度の割には、空気袋の膨張後の体積が大きい上、背骨と外縁の略中央(背中全体の横軸におけるおよそ4分の1となる位置)から背中が押し上げられるために、膨張時には、寝たきり者は安定感を失った感覚を持ちやすい。すなわち、背中が抱きかかえられる状態で持ち上げられるのではなく、背中の一部に押上げが加わって宙に浮いたように持ち上げられるので、まるで細い柱でジャッキアップされた感じを受け、寝たきり者は不安を持ちかねない。
すなわち、介護者による場合には、介護者の腕で背中全体が支えられて持ち上げられるので、たとえ体位が背骨を軸に傾けられたとしても、寝たきり者は安心していられるが、背中の一部だけが突出して押し上げられると、不安定感から寝たきり者は不安になり、精神衛生上もよくない。
この背中の一部だけが突出して押し上げられる特許文献1に開示の技術では、空気袋の膨張後の形状が楕円に近い形状であるので、背中と接する部分は滑りやすい。このため空気袋の一方が膨張して背中が傾けられた場合に、寝たきり者が空気袋の上から滑り落ちてしまうこともあり、非常に危険である。
あるいは、寝たきり者が空気袋の上から滑り落ちてしてしまっても、寝たきり者は自分では動くことができず、状態を矯正できない。この状態で放置されていては、体位変更はなされず、自動で体位変更がされるものと安心しきっている介護者による観察もされずに、寝たきり者の床ずれ防止は果たせない問題も生じる。
特開2002−45404号公報
そこで本発明は、寝たきり者に安心感を与えつつ確実な体位変更を可能とし、介護者の手間や負担を軽減する床ずれ防止用介護用具を提供することを目的とする。
第1の発明に係る床ずれ防止用介護用具は、膨張と収縮が可能な第1の袋体と第2の袋体が結合部により結合され、第1の袋体と第2の袋体のそれぞれに給排気管の一端が接続され、給排気管を介して、第1の袋体と第2の袋体のそれぞれに対して給気もしくは排気を行う給排気装置が給排気管の他端が接続され、第1の袋体と第2の袋体のそれぞれは、結合部に比べて、外縁部の方が膨張後の体積が大きいことを特徴とする。
この構成により、第1の袋体と第2の袋体の上面が、寝たきり者の背中の幅方向の前面に接した状態で、寝たきり者を押し上げる。結果として、押し上げられた寝たきり者が宙に浮いたような不安感を持つことなく体位変更できる。この体位変更は、給排気装置により自動で行われるので、介護者の手間が不要であって、しかも寝たきり者が安心して使用できるので、介護者の負担が更に低減できる。自動で体位変更ができることで、床ずれが防止され、加えて適度な運動刺激が与えられるので、寝たきり者の自立支援に役立つ。
第2の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、第1の袋体と第2の袋体のそれぞれは、底面と上面と側面を有した袋体であって、第1の袋体と第2の袋体のそれぞれは、結合部に比べて、外延部の方が膨張後における、底面から上面までの高さが高いことを特徴とする。
この構成により、第1の袋体と第2の袋体の上面が、寝たきり者の背中の幅方向の前面に接した状態で、寝たきり者を押し上げる。結果として、押し上げられた寝たきり者が宙に浮いたような不安感を持つことなく体位変更できる。この体位変更は、給排気装置により自動で行われるので、介護者の手間が不要であって、しかも寝たきり者が安心して使用できるので、介護者の負担が更に低減できる。自動で体位変更ができることで、床ずれが防止され、加えて適度な運動刺激が与えられるので、寝たきり者の自立支援に役立つ。
第3の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、第1の袋体及び第2の袋体の少なくとも一方は、膨張時にその上面が円弧を有することを特徴とする。
この構成により、体位変更のために膨張した第1の袋体と第2の袋体は、寝たきり者の背中やお腹が抱きかかえられるように押し上げられる。このため、体位変更時に、寝たきり者が不安感を抱くことが少ない。
第4の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、第1の袋体及び第2の袋体の少なくとも一方は、じゃばら構造を有していることを特徴とする。
この構成により、外縁部ほど高さが高くなる膨張が可能となる。
第5の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、第1の袋体と第2の袋体の少なくとも一方は、内部に複数の空気袋を有しており、複数の空気袋は、結合部から離れるほどに膨張時の大きさが大きくなることを特徴とする。
第6の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、給排気管は、複数の空気袋に接続されていることを特徴とする。
これらの構成により、外縁部ほど高さが高くなる膨張が可能となる。加えて、内部に備えられた空気袋により第1の袋体や第2の袋体が膨張するので、衝撃に強い。
第7の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、第1の袋体及び第2の袋体の少なくとも一方の内部には、補助袋体が備えられており、第1の袋体及び第2の袋体の少なくとも一方に設けられた開閉可能な蓋から、補助袋体の膨張時には、補助袋体は開放された蓋から突出することを特徴とする。
この構成により、2段構成で寝たきり者を傾けることができ、身体をほぼ横向きにすることも、反転させることもできる。
第8の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、結合部は、第3の袋体を備えることを特徴とする。
この構成により、身体の体位変更だけでなく、人体と寝具との接触時間を減少させることができ、床ずれの防止が更に図られる。
第9の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、結合部は、人体に臨む面が凹面であることを特徴とする。
この構成により、床ずれ防止用介護用具を寝たきり者が背中に配置した場合には、凹面を有する結合部が脊椎の出っ張りにフィットして、使用感が高まる。
第10の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、人体に装着可能な装着部を更に備えることを特徴とする。
第11の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、装着部は、装着バンドを有することを特徴とする
これらの構成により、身体が傾けられても、寝たきり者が床ずれ防止用介護用具からずり落ちる心配が少なく、安全性が高い。
第12の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、第1の袋体と第2の袋体のそれぞれの上面は、人体に臨むことを特徴とする。
この構成により、人体をやさしく押し上げる。
第13の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、給排気装置は、一定時間毎に給気と排気を行うことを特徴とする。
第14の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、給排気装置は、第1の袋体と第2の袋体を、交互に膨張させることを特徴とする。
これらの構成により、身体の右方向への傾きと、左方向への傾きを、自動で交互に繰り返すことができるので、介護者の負担無く、自動で体位変更が実現できる。
第15の発明に係る床ずれ防止用介護用具では、給排気装置は、制御端末を備えていることを特徴とする。
この構成により、寝たきり者が自らの好みに応じて、体位変更を実現できる。
本発明によれば、寝たきり者に不安感や不安定感を与えることなく、寝たきり者の体位を自動で変更できる。この結果、姿勢が変更され、人体の同じ部位が寝具に長時間接することがなくなるので、血流が向上し、床ずれが防止される。
特に、袋体が外縁ほど高さを有するように膨張するので、身体が押し上げられるときに、背中全体が支えられて、寝たきり者の体位変更時の安定性が高い。
また、人体に床ずれ防止介護用具が装着されるので、使用時に介護用具が外れることがなく、寝たきり者に不測の事態を生じさせない。
また、補助袋体による二段式の押し上げにより、寝たきり者の身体を反転させることもできる。例えば介護者が寝たきり者の洗浄を行う場合に、背中が反転することで、介護者が片手で寝たきり者を持ち上げる手間が無くなり、高齢、あるいは体力のない介護者にとっての介護が容易となる。
また、制御装置により、一定時間間隔で袋体を交互に膨張させることで、介護者の手間なく、自動で寝たきり者の体位変更が行える。
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
(実施の形態1)
まず、図1〜図4を用いて実施の形態1について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1における床ずれ防止用介護用具のブロック図である。
床ずれ防止用介護用具1は、第1の袋体2と第2の袋体3、給排気管5、給排気装置6を備えている。
(全体概略)
まず、全体の概要を説明する。
第1の袋体2と第2の袋体3は、それぞれ気体や液体により膨張と収縮が可能であり、結合部4により、第1の袋体2と第2の袋体3が結合されている。
第1の袋体2と第2の袋体3のそれぞれには、空気の供給と排気を行う給排気管5が接続されており、給排気装置6は、給排気管5を介して、第1の袋体2と第2の袋体3に空気の供給と排出を行う。第1の袋体2と第2の袋体3は、給排気装置6からの空気の供給により膨張し、空気の排出により収縮する。
寝たきり者は、ベッドや布団などの寝具に寝ている場合に、この床ずれ防止用介護用具1を背中に配して使用する。詳細は後述するが、寝たきり者の背中の軸方向の中心となる脊椎に結合部4があてがわれ、第1の袋体2と第2の袋体3は、脊椎を軸に左半分と右半分の背中部分にあてがわれる。
第1の袋体2と第2の袋体3の一方のみが膨張し、他方が収縮することで、寝たきり者の背中の半分が押し上げられて、体位を傾けることができる。膨張する袋体を交互に切り替えることで、傾く方向を変えることができ、自動で体位変更が可能となる。
この自動で行われる体位変更により、介護者の手間無く、床ずれを防止でき、寝たきり者の自立を支援できる。
(詳細説明)
各部の詳細と動作について説明する。
図2を用いて、第1の袋体2と第2の袋体3の膨張と収縮について説明する。
図2(a)は、本発明の実施の形態1における床ずれ防止用介護用具の斜視図であり、図2(b)、図2(c)は、本発明の実施の形態1における床ずれ防止用介護用具の側面図である。
第1の袋体2と第2の袋体3は、ゴム、ビニルなどの樹脂でできており、人体に柔らかく接することができるように、表面が柔らかく加工されていることが好適である。また、第1の袋体2と第2の袋体3は、膨張と圧縮が可能であるように、内部は中空になっている。
図2(a)に示されるように、第1の袋体2と第2の袋体3のそれぞれには、給排気管5が接続されている。第1の袋体2と第2の袋体3は、給排気管5より給気を受けると膨張し、排気をうけると収縮する。結合部4は、人体の脊椎にそってあてがわれるので、脊椎の出っ張りに合わせて凹面を有している。
図2(b)に示されるように、第1の袋体2と第2の袋体3は、結合部4付近に比べて、外縁部7の方が、膨張後の体積が大きくなる。すなわち、第1の袋体2と第2の袋体3は、底面20と上面21と側面22を有する袋体であるので、第1の袋体2と第2の袋体3は、膨張後においては、底面20から上面21までの高さは、結合部4付近よりも、外縁部7における方が高くなる。
すなわち、寝たきり者の背中に床ずれ防止用介護用具1が設置された場合には、脊椎付近よりも、両腕に近い人体の端部の方が押し上げられることになる。
このような外縁部7ほど高くなる(大きくなる)膨張が実現されるために、第1の袋体2と第2の袋体3のそれぞれは、図2に示されるようにじゃばら構造を有している。
なお、じゃばら構造は一例であり、これに限られるものではない。
また、図2(c)に示されるように、第1の袋体2と第2の袋体3の少なくとも一方は、膨張時にその上面21が円弧を有していることが好ましい。上面21が、膨張時に円弧を有することで、寝たきり者の背中が押し上げられるときに、抱きかかえられるようにして押し上げられるからである。このように押し上げられることで、寝たきり者は、身体の横半分が押し上げられるときに、不安定感を感じず、安心できる。
図3を用いて、寝たきり者が使用する状態について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1における床ずれ防止用介護用具の使用状態の説明図である。
図3(a)には、人体30の背面に床ずれ防止用介護用具1が敷かれている状態が示されている。人体30の背面のいずれの場所に敷かれても良いが、体位変更を効率的に行うために、腰から肩甲骨くらいにかけて敷かれるのが好適である。また、第1の袋体2と第2の袋体3の大きさは、人体30の横幅を超えるくらいの幅と、腰の上から肩甲骨くらいにかけての長さを有していることが好適である。
また、図3(a)から明らかな通り、結合部4が人体30の脊椎に沿ってあてがわれることが、脊椎を軸とした人体30の左右を傾かせることで体位変更する上で好適である。すなわち、結合部の長手方向が脊椎の長手方向に沿うように、床ずれ防止用介護用具1があてがわれる。
次に、図3(b)に示されるように、第2の袋体3に給気されると、第2の袋体3が膨張し、第1の袋体2はそのままである。これにより、人体30の図3(b)の頭部から見た右半分が押し上げられる。すなわち、人体30の右半分が押しあげられて傾く。
次に、図3(c)に示されるように、第2の袋体3は排気されて収縮し、逆に第1の袋体2は給気されて膨張すると、人体30の左半分が押し上げられて図3(b)と逆方向に傾けられる。
第1の袋体2と第2の袋体3は、じゃばら構造を有し、結合部4付近から外縁部7にかけて次第に高くなるように膨張する。このため図3から明らかな通り、脊椎から両腕付近にかけて斜めに袋体の上面21が接するように人体30が押し上げられる。このため、従来の技術のように、人体30の外縁部である両腕付近の下には袋体が存在しないことがなく、人体30は、脊椎から両腕にかけて全体的に抱きかかえられるように押し上げられる。
このため、寝たきり者は身体が傾けられているときに、宙に浮いたような不安定な感覚にとらわれることがなく、寝たきり者は、不安感を持つことなく、体位変更に身を委ねることができる。また、脊椎から両腕付近にかけて徐々に高くなるように押し上げられるので、寝たきり者が誤って床ずれ防止用介護用具の外に押し出される心配もない。従来の技術における介護用具では、袋体が交互に膨張して、自動で体位変更できるといっても、寝たきり者に不安感を与えたり、悪くすると介護用具から押し出されて、ベッドから落下するなどの心配もあったが、本発明の床ずれ防止用介護用具1では、この心配もない。このため、介護者は安心して介護用具に体位変更を任せることができるのである。
このように、図3(a)から図3(c)の動作が繰り返されることで、寝たきり者であっても、身体の向きが交互に傾けられ、特定の部位が寝具に長時間接することが防止される上に、身体への適度な刺激と運動が付与されて、床ずれや運動不足が防止される。
特に、給排気装置6が、第1の袋体2と第2の袋体3を一定期間毎に交互に膨張と収縮を行うことで、介護者の手間を必要とせずに、自動で寝たきり者の体位変更を実現できる。
また、体位変更がなされることで、寝たきり者は適度な運動刺激を得ることができ、寝たきりであっても、筋肉の衰えを防止できる。
給排気装置6は、床ずれ防止用介護用具のヒューマンインターフェースを高めるための種々の工夫を備えている。
図4を用いて説明する。図4(a)は、制御装置の斜視図、図4(b)は、給排気装置の模式図である。
給排気装置6は、給排気の圧力を出すコンプレッサー8と制御装置9を備えており、更に、使用者が容易に設定できるように制御端末11を備えている。
制御端末11は、寝たきり者が自ら設定できるようにしてあり、例えば、息苦しさを感じて身体を横に向けたいときや、飲み物を飲むために身体を傾けたいときに、寝たきり者が介護者の介護を待たずに、自ら体位を変更できる。もちろん、好みに応じた寝返りの実現にも効果的である。
制御装置9は、第1の袋体2と第2の袋体3の膨張、収縮の時間間隔や膨張率などを制御する。以下に制御例を説明する。なお、制御装置9は、プログラムなどを格納するメモリとマイコンにより、自動制御を行う。プログラムは必要に応じて書き換えられれば良く、ユーザ設定などによるフレキシブルなプログラム設定が可能である。
(制御例1)
制御装置9は、第1の袋体2と第2の袋体3の膨張と収縮の時間間隔を制御する。
例えば、最初の20分間においては、第1の袋体2と第2の袋体3のいずれも膨張させない状態とし、次の20分間は第1の袋体2を膨張させ、次の20分は第2の袋体3を膨張させるように制御する。このように1時間の中で、正常状態、右傾き状態、左傾き状態を生じさせて、床ずれを防止できる。勿論、この時間間隔は寝たきり者の状態に応じて設定を変えればよく、医師や療法士の処方に従って、設定されればよい。第1の袋体2と第2の袋体3のいずれかの膨張時間が長くなるように設定しても良い。
(制御例2)
制御装置9は、第1の袋体2と第2の袋体3の膨張率を制御する。
寝たきり者の病状や年齢、健康状態、あるいは寝たきりの期間によっては、寝たきり者の身体の押し上げ量を変える必要が生じる。
第1の袋体2と第2の袋体3は、給気する量によって膨張後の大きさが変化する。例えば、床ずれがひどい寝たきり者であれば、体位変更量を大きくする必要があるので、制御装置9は、膨張率を高くする。あるいは、寝たきり者が高齢で、体位変更量を大きくすると、身体に負担がかかる場合には、制御装置9は、膨張率を低く抑える。
また、身体の左右の押し上げ量を変えたい場合には、制御装置9は、第1の袋体2と第2の袋体3の膨張率を異ならせても良い。
給排気装置6は、制御装置9の種々の制御により、寝たきり者の体位変更を自動で様々に制御できる。結果として、床ずれを防止できると共に、適度な運動刺激を与えることができ、寝たきり者の社会復帰の支援もできる。
また、寝たきり者が自ら制御端末11を用いて袋体を膨張、収縮させて、寝返りをうつことができる。このような点でも寝たきり者の主体的な行動の支援となる。
以上のように、実施の形態1における床ずれ防止用介護用具1により、寝たきり者に不安感を与えることなく、介護者の手間を要さずに寝たきり者の体位変更を自動で行うことができる。また、寝たきり者が主体的に、自己の身体の体位を変更できる。
結果として、床ずれを防止でき、寝たきり者の支援に役立つ。
なお、実施の形態1においては、寝たきり者の背面に床ずれ防止用介護用具1を敷くことを例に説明したが、寝たきり者がうつぶせの場合には、腹側に敷いても良いのは勿論である。
(実施の形態2)
次に、図5、図6を用いて実施の形態2について説明する。
実施の形態2における床ずれ防止用介護用具は、第1の袋体2と第2の袋体3の膨張に、それぞれの内部に設けられた複数の空気袋が用いられる形態を有している。
図5、図6は、本発明の実施の形態2における床ずれ防止用介護用具の斜視図である。
第1の袋体2と第2の袋体3の内部には、膨張、収縮が可能な複数の空気袋40を備えており、複数の空気袋40のそれぞれには、給排気管5が接続されている。すなわち、複数の空気袋40のそれぞれは、給排気管5を介して、給気と排気が行われる。
複数の空気袋40は、第1の袋体2、第2の袋体3の内部で、結合部4から外縁部に向けて順に配置されており、それぞれの膨張後の大きさは、結合部4から離れるにつれて(すなわち外縁部に向かうにつれて)大きくなる。このような複数の空気袋40が膨張することで、第1の袋体2、第2の袋体3のそれぞれは、効果的に膨張し、しかも、膨張時には、結合部4付近よりも、外縁部の方が体積が大きくなる(高さが高くなる)。
このような膨張により、寝たきり者を抱きかかえるような体位変更が実現され、寝たきり者に不安感を与えることなく、自動で体位変更が実現される。
また、複数の空気袋40の内、結合部4と外縁部の間において真ん中付近に位置する空気袋40の膨張率を下げ、残りの空気袋40の膨張率を高めることで、第1の袋体2と第2の袋体3の上面21に凹面を形成できる。
この凹面により、寝たきり者の背中(あるいは腹の)曲線に適切に対応できる。更に、よりやさしく押し上げることができ、寝たきり者の不安感を極力まで軽減できる。
なお、図6に示されるように、第1の袋体2と第2の袋体3は、それぞれ結合部4で分離可能とされても良い。
以上のように実施の形態2における床ずれ防止用介護用具1は、実施の形態1の床ずれ防止用介護用具の効果に加えて、第1の袋体2と第2の袋体3を容易かつ確実に膨張させることができる。
特に、袋体の内部に複数の空気袋40が備えられているので、破損にも強いメリットがある。
なお、図6に示されるように、第1の袋体2と第2の袋体3が分離、結合できることで、例えば、使用する寝たきり者の体系に合わせた床ずれ防止用介護用具1を実現できる。また、第1の袋体2と第2の袋体3の一方のみが破損、汚損した場合に、低コストで取り替えることができる。
(実施の形態3)
次に、図7、図8を用いて実施の形態3について説明する。
実施の形態3においては、寝たきり者の左右の傾きをつけることによる体位変更に加えて、寝たきり者の身体を反転させる場合について説明する。例えば、介護において寝たきり者を仰向けからうつぶせに変える(あるいは逆)必要がある場合に、女性や身体の弱い介護者では困難な場合が多い。このような場合でも、実施の形態3における床ずれ防止用介護用具1であれば、介護者の負担が少なく、寝たきり者の身体を反転できる。
図7は、本発明の実施の形態3における床ずれ防止用介護用具の斜視図であり、図8は、本発明の実施の形態3における床ずれ防止用介護用具の使用説明図である。
実施の形態3における床ずれ防止用介護用具1は、第1の袋体2と第2の袋体3の少なくとも一方の内部に、補助袋体を備えている。
図7に示されるように、第1の袋体2と第2の袋体3は、ファスナーや面ファスナーなどにより開閉可能な蓋50を備えており、図示されていない補助袋体が、第1の袋体2と第2の袋体3の内部に備えられている。補助袋体は、蓋50が開放されている場合には、開放面から突出することが可能であり、補助袋体が膨張すると膨張に伴って、開放面から突出する。
図8を用いて説明する。
図8(a)に示されるように、まず第2の袋体3が膨張し、頭部から見た人体30の右半分を押し上げて傾かせる。
次に、図8(b)に示されるように、補助袋体51に給気され、開放された蓋50の開放面から、膨張した補助袋体51が突出する。これにより、人体30は、ほぼ横向きになるほどまでに傾く。この状態から介護者が受け止めるように腹側を下に導けば仰向けの状態からうつぶせの状態に寝たきり者を反転させることができる。
勿論、反転させるだけではなく、寝たきり者の身体の洗浄や治療などの必要により、身体を横向きになるほどに傾けたい場合にも、第2の袋体3と補助袋体51の2段階による押し上げにより、大きな傾きを容易に実現できる。
同様に、図8(c)に示されるように、第1の袋体2と補助袋体51の2段階の押し上げにより、人体30をほぼ横向きに傾けることができる。介護者は、食事の世話や洗浄、治療などを、容易に行うことができる。
なお、補助袋体51は、蓋50が閉じている場合には外部に突出できないので、介護者が蓋50を開放しない限りは、補助袋体51による押し上げができない。このため、身体が横向きになるほどの体位変更を、寝たきり者が勝手に行うことができないようにでき、寝たきり者の安全が図られる。勿論、補助袋体51の膨張、収縮の制御が、介護者にしかできないように設定することも、寝たきり者の安全面から好適である。
以上のように、実施の形態3における床ずれ防止用介護用具1によれば、食事や洗浄の世話、あるいは治療のために、寝たきり者の身体を横方向にまで傾けたい場合や、仰向けとうつぶせの反転させたい場合に有効である。
なお、補助袋体51を収納するための蓋50は、開放時には人体3の前に回して、蓋50を閉じるために使用するファスナーや面ファスナー等を、人体30の前面で止めることで、人体30への床ずれ防止用介護用具1の固定に用いることができる。すなわち、第1の袋体2と第2の袋体3のそれぞれに設けられている蓋50を開放し、二つの蓋50を人体30の前面に回して、ファスナーや面ファスナー同士を接続して、装着バンドの代わりにできる。この装着バンド代わりにすることで、身体が横向きになる場合でも、寝たきり者は安心でき、更に、介護者も、余分な手間を要さずに寝たきり者の洗浄や治療などを行うことができる。
(実施の形態4)
次に図9、図10を用いて実施の形態4について説明する。
実施の形態4における床ずれ防止用介護用具は、人体に装着できる装着部を備えている。
図9は、本発明の実施の形態4における床ずれ防止用介護用具の斜視図である。図10は、本発明の実施の形態4における床ずれ防止用介護用具の装着に関する説明図である。
床ずれ防止用介護用具1は、装着部を備えており、図9では、装着部は、装着バンド60で実現されている。装着バンド60は、第1の袋体2と第2の袋体3のそれぞれに取り付けられており、面ファスナー61やボタンなどで人体30へ装着できる。人体30へ装着されるので、装着バンド60は、繊維などの柔らかく肌に優しい素材が用いられる。特に、装着バンド60の内側は、肌に直接触れることもありうるので、抗菌処理や柔軟処理がなされていることが好ましい。
また、図9に示されるように、面ファスナー61での装着により、人体30の大きさの違いにも柔軟に対応できる。
この装着バンド60を用いて、人体30に床ずれ防止用介護用具1を装着した状態が、図10に示されている。床ずれ防止用介護用具1は、装着バンド60を用いて、ベッド65に横たわる人体30の腰部付近に装着されている。第1の袋体2と第2の袋体3は、実施の形態1などで説明されたように、給排気装置6での制御により、所定の時間毎に、膨張と収縮を行う。第1の袋体2が膨張し、第2の袋体3が収縮すると、人体30は、一方に傾き、第1の袋体2が収縮し、第2の袋体3が膨張すると、人体30は、逆方向に傾く。この交互の傾きは、給排気装置6の自動制御(給排気装置6は、制御装置を備えており、制御装置はプログラミングされた指令に基づき動作する)により実現される。
このような人体30が傾けられた場合でも、装着バンド60により、床ずれ防止用介護用具1は、人体30に固定されているので、人体30は、床ずれ防止用介護用具1からずり落ちる心配がない。更に言えば、傾きを形成されることで人体30がベッド65からもずり落ちる心配がない。このような装着バンド60による、床ずれ防止用介護用具1の人体30への固定により、体位変更が行われても、寝たきり者がベッドから転落したりする心配がない。人体30の脊椎から外縁に至るまでなだらかに斜めに押し上げることと、人体への固定とがあいまって、寝たきり者が、不安感を持つことなく安心して、床ずれ防止用介護用具1を使用できる。
また、実施の形態3で説明した補助袋体51により寝たきり者を横向きにまで傾けるときに、この装着バンド60で人体30に床ずれ防止用介護用具を固定することで、寝たきり者が不安を覚えることなく、横向きにできる。
特に、寝たきり者を横向きに傾けるのは、介護者が、寝たきり者を洗浄したり、治療したりするときであるので、介護者の両手が自由であることが望ましい。袋体と補助袋体51の2段階による傾きの実現と、装着バンド60による傾いた人体30の固定により、介護者が手を添えることなく寝たきり者の横向きの姿勢が維持される。この結果、介護者は、自由である両手を用いて寝たきり者の洗浄や治療などの介護を行うことができる。
(実施の形態5)
次に図11、図12を用いて実施の形態5について説明する。
図11は、本発明の実施の形態5における床ずれ防止用介護用具の側面図であり、図12は、本発明の実施の形態5における床ずれ防止用介護用具の使用状態の説明図である。
実施の形態5における床ずれ防止用介護用具1は、結合部4に第3の袋体70を備えている。第3の袋体70は、第1の袋体2と第2の袋体3に挟まれる位置に存在し、図12に示されるように、人体30の脊椎付近にあてがわれる。
第3の袋体70にも給排気管が接続され、給排気装置6による給気と排気を受け、収縮と膨張を行う。但し、第3の袋体70は、第1の袋体2と異なり傾きをもって膨張しない。第3の袋体70は、脊椎を押し上げるように膨張する。
この、脊椎を押し上げるような膨張により、背中全体が上に押し上げられ、背中と寝具の間に隙間を作ることができる。第1の袋体2と第2の袋体3の膨張と収縮による体位変更による床ずれ防止機能に加えて、背中と寝具との接触時間を減少させることができ、血流の向上が更に図られ、床ずれが更に防止される。
なお、実施の形態1から5においては、床ずれ防止用介護用具1を寝たきり者の背面に配置することを例に説明したが、腹側に配置してもよい。使用方法については、寝たきり者の健康状態や使用要求に応じて、適宜決められればよい。
また、本発明の主旨を逸脱しない限り、形態や構造においては種々の変更が可能である。
本発明は、寝たきり者の床ずれを防止できる介護用具等の分野に好適に利用できる。
本発明の実施の形態1における床ずれ防止用介護用具のブロック図 (a)本発明の実施の形態1における床ずれ防止用介護用具の斜視図 (b)本発明の実施の形態1における床ずれ防止用介護用具の側面図 (c)本発明の実施の形態1における床ずれ防止用介護用具の側面図 (a)本発明の実施の形態1における床ずれ防止用介護用具の使用状態の説明図 (b)本発明の実施の形態1における床ずれ防止用介護用具の使用状態の説明図 (c)本発明の実施の形態1における床ずれ防止用介護用具の使用状態の説明図 (a)制御装置の斜視図 (b)給排気装置の模式図 本発明の実施の形態2における床ずれ防止用介護用具の斜視図 本発明の実施の形態2における床ずれ防止用介護用具の斜視図 本発明の実施の形態3における床ずれ防止用介護用具の斜視図 (a)本発明の実施の形態3における床ずれ防止用介護用具の使用説明図 (b)本発明の実施の形態3における床ずれ防止用介護用具の使用説明図 (c)本発明の実施の形態3における床ずれ防止用介護用具の使用説明図 本発明の実施の形態4における床ずれ防止用介護用具の斜視図 本発明の実施の形態4における床ずれ防止用介護用具の装着に関する説明図 (a)本発明の実施の形態5における床ずれ防止用介護用具の側面図 (b)本発明の実施の形態5における床ずれ防止用介護用具の側面図 本発明の実施の形態5における床ずれ防止用介護用具の使用状態の説明図
符号の説明
1 床ずれ防止用介護用具
2 第1の袋体
3 第2の袋体
4 結合部
5 給排気管
6 給排気装置
7 外縁部
8 コンプレッサ
9 制御装置
10 切り替え弁
11 制御端末

Claims (15)

  1. 膨張と収縮が可能な第1の袋体と第2の袋体が結合部により結合され、
    前記第1の袋体と前記第2の袋体のそれぞれに給排気管の一端が接続され、
    前記給排気管を介して、前記第1の袋体と第2の袋体のそれぞれに対して給気もしくは排気を行う給排気装置が前記給排気管の他端が接続され、
    前記第1の袋体と第2の袋体のそれぞれは、前記結合部に比べて、外縁部の方が膨張後の体積が大きいことを特徴とする床ずれ防止用介護用具。
  2. 前記第1の袋体と前記第2の袋体のそれぞれは、底面と上面と側面を有した袋体であって、前記第1の袋体と前記第2の袋体のそれぞれは、前記結合部に比べて、前記外延部の方が膨張後における、前記底面から前記上面までの高さが高いことを特徴とする請求項1記載の床ずれ防止用介護用具。
  3. 前記第1の袋体及び前記第2の袋体の少なくとも一方は、膨張時にその上面が円弧を有することを特徴とする請求項2記載の床ずれ防止用介護用具。
  4. 前記第1の袋体及び前記第2の袋体の少なくとも一方は、じゃばら構造を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか記載の床ずれ防止用介護用具。
  5. 前記第1の袋体と前記第2の袋体の少なくとも一方は、内部に複数の空気袋を有しており、前記複数の空気袋は、前記結合部から離れるほどに膨張時の大きさが大きくなることを特徴とする請求項1から4のいずれか記載の床ずれ防止用介護用具。
  6. 前記給排気管は、前記複数の空気袋に接続されていることを特徴とする請求項5記載の床ずれ防止用介護用具。
  7. 前記第1の袋体及び前記第2の袋体の少なくとも一方の内部には、補助袋体が備えられており、前記第1の袋体及び前記第2の袋体の少なくとも一方に設けられた開閉可能な蓋から、前記補助袋体の膨張時には、前記補助袋体は開放された前記蓋から突出することを特徴とする請求項1から6のいずれか記載の床ずれ防止用介護用具。
  8. 前記結合部は、第3の袋体を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか記載の床ずれ防止用介護用具。
  9. 前記結合部は、人体に臨む面が凹面であることを特徴とする請求項1から8のいずれか記載の床ずれ防止用介護用具。
  10. 人体に装着可能な装着部を更に備えることを特徴とする請求項1から9のいずれか記載の床ずれ防止用介護用具。
  11. 前記装着部は、装着バンドを有することを特徴とする請求項10記載の床ずれ防止用介護用具。
  12. 前記第1の袋体と前記第2の袋体のそれぞれの上面は、人体に臨むことを特徴とする請求項1から11のいずれか記載の床ずれ防止用介護用具。
  13. 前記給排気装置は、一定時間毎に給気と排気を行うことを特徴とする請求項1から12のいずれか記載の床ずれ防止用介護用具。
  14. 前記給排気装置は、前記第1の袋体と前記第2の袋体を、交互に膨張させることを特徴とする請求項13に記載の床ずれ防止用介護用具。
  15. 前記給排気装置は、制御端末を備えていることを特徴とする請求項1から14のいずれか記載の床ずれ防止用介護用具。
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