以下,本発明の第一の実施例を,図面を用いて詳細に説明する。
図1は,本発明の健康管理支援方法の一例を説明する処理フロー図である。11は健康診断受診者の健診結果を取り込む健診結果入力手順であって,取り込まれた健診結果は電子データの形となる。具体的には,例えば,健診情報を電子データで管理している健診機関,保険者,事業所,データ管理請負サービス機関等からネットワークや媒体を介して取り込む,あるいは紙に印刷された健診結果報告書をイメージスキャナーで取り込んだ後,記載された文字や数値を認識した電子化データを取り込む,あるいは操作者が紙の健診結果報告書を見ながら記載内容をキーボード入力した結果を取り込むことで実現される。なお,保険者とは医療保険の運営機関(医療保険組織)であり,事業所とは受診者が勤務する会社や団体である。
12は,健診結果入力手順で取り込まれた受診者の健診結果を用いて,受診者個人の健康余命予測データを生成する個人健康余命予測データ生成手順である。
この生成は,様々な健診結果に対する健康余命予測の基礎データである健康余命予測データ19を予め用意し,この予測データを用いて実現される。本手順に関しては,後で詳細に説明する。
13は,個人健康余命予測データ生成手順で生成された個人健康余命予測データを用いて,受診者の健康余命の予測値を算出する個人健康余命予測手順である。15は,個人健康余命予測手順で算出された健康余命の予測値を,端末等の画面に表示する表示手順である。表示に際しては,パスワードによる操作者の認証やアクセス権管理等を用いて,受診者本人や特定の操作者のみ参照できるようにする。16は,個人健康余命予測手順で算出された健康余命の予測値を,紙に印刷する印刷手順である。印刷される紙は,例えば,健診結果が記載される健康診断結果報告書や,報告書とは別に通知される書面やはがきなどである。
17は,個人健康余命予測手順で算出された受診者の健康余命の予測値に基づいて,受診者に適した健康管理計画を生成する健康管理計画生成手順である。18は,個人健康余命予測手順で算出された受診者の健康余命の予測値に基づいて,今後の必要となる医療費の予測値を算出する医療支出予測手順である。この生成は,健康余命に対する医療支出予測の基礎データである医療支出予測データ20を予め用意し,この予測データを用いて実現される。201は,医療保険組織(保険者)全体の医療費支払総額を予測する保健経営支援手順である。
上記15〜18及び201の手順は,健康余命の予測値に利用して行われる処理であり,目的に応じて必要な手順を選択して進める,あるいは複数の手順を同時平行で進める。本実施例では,個人健康余命の予測値を算出して表示,印刷する手順(15,16)について説明し,他の手順(17,18,201)については他の実施例で詳細に説明する。
なお,健診結果とは,疾病の予防や早期発見早期治療のために行った検査や診断等の結果であって,例えば,基本情報,問診結果,検査結果,判定結果を有する。基本情報とは,健康診断の受診に関する基本的な情報で,受診者の氏名(漢字,読み仮名等),性別,生年月日,住所,電話番号,勤務先,従業員コード,保険者情報(保険者名,保険証記号番号等)の他,健診実施機関の名称,実施年月日,健診種別(職場定期検診,人間ドック等),受診者管理番号,担当医師等を含むものである。問診結果とは,主に受診者の問診票記入や医師から患者への質問により得られる受診者の健康状態に関する情報であって,既往症,治療中の疾病,自覚症状(動悸,むくみ,疲れやすい等)の他,食事(種類,摂取量,規則性等),運動(種類,強度,頻度等),喫煙(有無,喫煙量,喫煙年数,過去の喫煙歴,禁煙期間等),飲酒(頻度,種類,アルコール量等),仕事(仕事内容,勤務時間,帰宅時間等)等の日常生活習慣を含むものである。検査結果とは,主に検査機器や医師の診察で得られる判断であって,身体計測(身長,体重,肥満度等),視力,血圧,脈拍,尿検査,血液検査(白血球数,赤血球数,肝機能検査,脂質代謝,痛風検査,糖代謝等),胸部X線検査,消化器X線検査,心電図,腹部エコー検査,歯科検診等の結果を有する。判定結果とは,現在あるいは将来の疾病可能性を判定するもので,基本情報,問診結果,検査結果等から問診や検査の項目毎の判定結果,あるいは複数の項目を対象にした総合的な判定結果を含む。
次に,個人健康余命予測データ生成手順12について詳細に説明する。
図2は,健康余命の予測値を算出する方法を説明する図である。グラフ21は,生存者数22及び健常者数23を,0歳時点を100とする百分率で表したものである。横軸は年齢である。健常者とは,生存者であって心身とも自立した活動的な状態で生存している者であり,グラフ上,健常者数23より下の部分24に相当する。グラフ上,生存者数22と健常者数23で囲まれた部分25は,他人の援助を必要とするような疾病や障害と共存している状態に相当する。
健康余命とは,心身とも自立した活動的な状態で生存できる余命であり,グラフ21において,現在の年齢から健常者数23の曲線に達するまでの平均期間である。具体的には,現在,年齢がi歳である人の健康余命は,図2の26に示す式により算出される。ここでLxは,x歳時点での健常者数,Liは,i歳時点での健常者数である。
従来の健康余命は,国民全体や特定の地域住民全体を対象とした平均寿命や特定疾患の有病率等によって導出したグラフ21を用いて算出されていた。この場合,得られる健康余命は国民全体や地域住民全体としての平均値にすぎず,個々の健康状態の違いによる影響に関して,全く考慮されていなかった。本発明では,様々な健診結果に対する健康余命予測の基礎データである健康余命予測データ19を用いて,個人が受診した健康診断の健診結果から個人毎の健康余命の予測データを生成し,個人毎の健康状態の違いを考慮した健康余命予測を行う。
図3は,健康余命予測データ19の一例を説明する図である。図中のグラフ27は,健康余命の予測に用いる健常者数の変化(図2の23に相当)であり,健診結果別に用意されている。本例は,喫煙,飲酒,運動に関する日常生活習慣と肥満,高血圧,高脂血,高血糖,高尿酸等の判定結果の違いに応じたグラフ(以下,健診結果別健康余命予測データと称する)が格納されたものである。具体的には,例えば,各年齢に対する生存者数や健常者数が,表,近似式,式の定数や乗数などの形で格納されている。健診結果の違いとして,日常生活習慣の喫煙と及び飲酒はその有無(有,無)を,運動はその有無と量(無,小,大)を,判定結果は各々示した判定がある場合を表す。
なお,図3は,健康余命予測データが有する健診結果別健康余命予測データの一部であり,図3に記載されていない健診結果の組合せに対しても用意されている。例えば,喫煙と飲酒の習慣があり日常の運動量が多い場合,何れの判定結果も指摘されなかった場合,高血圧と高血糖などの複数の判定結果が指摘された場合等の予測データも存在する。
個人健康余命予測データ生成手順12における個人毎の健康余命予測データの生成は,例えば,図3の健康余命予測データ19から受診者個人の健診結果に対応した予測データを選択することにより実現される。具体的には,例えば,喫煙習慣無し,飲酒習慣有り,運動習慣少しありという日常生活習慣であって,高尿酸という判定結果であった受診者の健診結果に対しては,図3の28に示す健診結果別健康余命予測データが選択され,これが受診者個人の健康余命予測データとして出力される。
次に,図1に示した本発明の健康管理支援方法の一例を用いて,健康診断受診者の健康余命を算出して端末に表示及び紙に印刷する一連の手順について説明する。
先ず,健診結果入力手順11において,健康診断の受診者の健診結果が電子データ電子データの形で取り込む。次に,個人健康余命予測データ生成手順12において,取り込まれた健診結果から受診者個人に対する健康余命予測データを生成する。この手順は,例えば,図3に示す健康余命予測データ19から健診結果に対応する健診結果別健康余命予測データを選択することで実現される。
次に,個人健康余命予測手順13において,生成された受診者個人に対する健康余命予測データを用いて,受診者個人の健康余命の予測値を算出する。この算出は,生成された健康余命予測データから図2に示した算出式26を用いて行う。ここで,受診者の年齢が必要になるが,例えば,健診結果の基本情報に含まれる受診者の生年月日を利用して得るようにする。
最後に,表示手順15において,算出した受診者個人の健康余命の予測値を端末等に表示する。図4は,表示手順15において端末に表示された健康余命の一例である。例えば,健康診断の受診者がユーザ名とパスワードを入力した後(ユーザ認証),健康余命の表示させる操作を行うと,端末のモニタ31の画面32上にある表示ウィンドウ33上に,受診者個人の健康余命が表示される。また,アクセス権管理の設定により,医師,保健婦,事業所の従業員健康管理担当者等に対しては,担当患者,地域住民,事業所の従業員等,業務上必要な健康余命を表示させることもできる。
あるいは,印刷手順16を用いて,算出した受診者個人の健康余命の予測値を紙に印刷する。図5は,健康余命が印刷された紙の一例であって,例えば,はがき等の用紙に36に示す文面と受診者の住所を印刷して,発送できるようにする。なお,受診者への配達の過程で,印刷された健康余命が第三者に見られることがないように,印字面を隠す紙を付加したり,封書で送るようにしてもよい。受診者の住所は,例えば,健診結果の基本情報に含まれる受診者の住所を利用して得るようにする。あるいは,図5の37に示すように,健診終了後に受診者に配布する健康診断結果通知票に健康余命を印刷するようにする。印刷手順においても,表示手順と同様なユーザ認証やアクセス権管理を導入し,印刷業務担当者等の特定の操作者のみ印刷が可能なようにしてもよい。
以上のように,本発明の健康管理支援方法では,様々な健診結果に対する健康余命予測の基礎データである健康余命予測データを用いて,個人が受診した健康診断の健診結果から健康余命の予測値を個人毎に算出して表示,あるいは印刷するようにした。従って,受診者は,健康余命という指標を基づいて,自分自身の健康状態を定量的に把握できるようになり,健診受診者の疾病予防や健康管理の意欲を高めることができるようになるという著しい効果がある。あるいは,例えば「喫煙により肺癌発生率が10倍増加する」などの正確ではあるが受診者個人に与える影響として直感的に理解しにくい表現ではなく,「現在の日常生活習慣を続けた場合,あなたが健康に過ごせる期間(健康余命)は残り10年と予測されます」という個々の生活に密接した直感的に理解容易な指標で表現することができ,疾病予防や健康管理効果の高い健康管理支援が行えるようになるという著しい効果がある。
本実施例において,個人健康余命予測データ生成手順12で用いられる健康余命予測データ19は,日常生活習慣や判定結果の有無や大小の違いに応じた健診結果別健康余命予測データを用意するようにしたが,喫煙年数や飲酒量などの数値情報に対応したデータを用意し,個人健康余命を予測することもできる。例えば,喫煙年数に対する生存者数や健常者数の変化を表,数式,乗数,定数等で表現し,他の日常生活習慣や判定結果を元に選択された健診結果別健康余命予測データに対して,喫煙年数に対する補正を加え,これを個人健康余命予測データとする。これにより,数値情報をそのまま反映させた精度の高い健康余命予測が可能になる。
また,本実施例において,個人健康余命予測データ生成手順12は,健診結果の中で問診結果に含まれる日常生活習慣と判定結果とを用いて個人毎の健康余命を予測する例を示したが,より詳細な健診結果や他の情報を用いて予測することもできる。例えば,図3の日常生活習慣の喫煙項目を有無の2段階のみとしたが,喫煙量,喫煙年数,過去の喫煙歴,禁煙期間等を含めた項目と用意する。あるいは,基本情報に含まれる性別や職業,検査結果に含まれる肥満度や中性脂肪等の数値情報の違いに応じた健診結果別健康余命予測データを用意する。個人健康余命予測データ生成手順は,これらの健診結果も含めて対応する健診結果別健康余命予測データを選択する。これにより,より多くの情報を用いた精度の高い健康余命予測が可能になる。
また,本実施例において,個人健康余命予測データ生成手順12で用いられる健康余命予測データ19は,個々の健診結果の違い毎に健康余命予測データを格納する例を示したが,別の方法で実現することもできる。例えば,基準となるグラフ(表や数式等で表現される)を用意し,このグラフに対する補正や補間等の処理のための変形量(グラフに対する乗数や定数)を格納する手順を追加する。
個人毎の健康余命予測データの生成は,健診結果に対応した変形量を選択し,基準となるグラフに変形量に応じた処理を行うことで実現する。基準とするグラフを複数設けて適時使い分けたり,あるいは図3に示した方法と組み合わせることもできる。健診結果別健康余命予測データは,健診結果の詳細な違いを含めた場合に非常に多くの種別が必要となるが,本例ではこれを効率的に格納することができるようになる。
また,本実施例において,個人健康余命予測データ生成手順12で用いられる健康余命予測データ19は,個々の健診結果の違い毎に健康余命予測データを格納する例を示したが,健診結果の違いによる変化が小さい場合や他の健診結果の場合と同様な予測データである場合等は,単一の健康余命予測データを共有することもできる。データ格納領域の低減や処理の高速化が図れるようになる。
また,本実施例において,個人健康余命予測データ生成手順12は,健診結果入力手順で取り込まれた受診者の健診結果から受診者個人の健康余命予測データを生成するようにしたが,生成に際して,健診結果入力手順で取り込まれた健診結果に適時補正を行うこともできる。例えば,特定の健診機関における検査結果の検査方法や正常範囲,表現単位等が,他の検査機関や健康余命予測データでの表現と異なる場合,予め用意した変換手順に従って補正を行う手順を追加する。あるいは,問診票の違いにより一致する問診結果がない場合,その結果を類似する問診結果に反映させる手順を追加する。このような補正は,基本情報に含まれる健診実施機関に関する情報を用いて,あるいは問診結果や検査結果に必要な情報(単位や問診項目内容等)の追加により,自動的に補正することもできる。この補正により,健診機関毎に健診実施内容が異なる場合でも正確に個人健康余命予測データを生成でき,精度の高い健康余命の予測値を算出できるようになる。
また,本実施例において,個人健康余命予測データ生成手順12は,健康余命予測データ19から受診者個人の健診結果に対応した健診結果別健康余命予測データを選択することにより実現したが,複数の健診結果別健康余命予測データを選択,利用して,受診者個人の健康余命予測データを生成することもできる。例えば,健診機関毎あるいは受診者の事情による健診実施内容の違いや,問診票記入漏れや検査漏れ等による健診結果の欠落等,予め用意された健康余命予測データ上の健診結果の分類と受診者個人の健診結果とが一致しない。このような場合,受診者個人の健診結果から可能性のある複数の健診結果別健康余命予測データを選択して,選択されたデータに適切な補正処理(例えば平均化等)を行ったものを受診者個人の健康余命予測データとする手順を追加する。例えば,日常生活習慣の中で運動に関する情報が欠落している場合,運動を無視した全ての項目(例えば,図3のグラフ28,29,30の3種類全て)を選択,補正する。また,表示手順での健康余命の表示や印刷手順での健康余命の印刷の際,このような補正を行った旨を適時表示や印刷することもできる。この処理により,健診実施内容の違いや健診結果の欠落等が存在する場合でも,得られている健診結果を最大限利用して,精度の低下が少ない健康余命の予測値を算出できるようになる。
また,本実施例において,健康余命予測データ19は,健診結果別に健常者数の変化を格納するようにしたが,生存者数(図2のグラフ22)の変化も格納することもできる。生存者数を用いることで平均余命を算出する手順を追加することで,表示手順や印刷手順において健康余命と共に表示や印刷ができるようになる。さらに,平均余命から健康余命を引いた期間である疾病障害期間(疾病や障害と共存している状態の期間)を算出する手順を追加することで,平均余命と同様に表示や印刷ができるようになる。提示内容が充実し,健診受診者の疾病予防や健康管理の意欲をさらに高めることができるようになる。
また,本実施例において,個人健康余命算出手順13は受診者個人の健康余命の予測値を算出するようにしたが,健康余命だけでなく余命に達する年齢を算出することもできる。例えば,健診結果の基本情報に含まれる受診者の生年月日から算出した年齢を,健康余命に加える手順を設けることで,表示手順や印刷手順において健康余命と共に表示や印刷ができるようになる。提示内容が充実し,健診受診者の疾病予防や健康管理の意欲をさらに高めることができるようになる。
次に,本発明の第二の実施例を,図面を用いて詳細に説明する。
本実施例は,図1に示した健康管理計画生成手順17に関する実施例である。健康管理計画生成手順17は,個人健康余命予測手順で算出された受診者の健康余命の予測値に基づいて,受診者に適した健康管理計画を生成する手順である。
本実施例では,健康管理計画生成手順の例として,健康診断の実施計画を生成する健診計画作成手順と,食事,運動,喫煙等の生活習慣の改善を指導する実施計画を生成する生活指導計画作成手順について説明する。
図6は,本発明の健診計画作成手順の一例を説明する図である。受診者の健康余命の予測値に基づいて,今後の健康診断の実施時期(間隔や頻度等)や健診実施内容を決定する。例えば,健康余命の予測値が(1)5年未満,(2)5年以上10年未満,(3)その他(即ち10年以上)の何れの範囲であるかを判定する(図中手順41)。5年未満の場合,近いうちに疾病や障害になる確率が高いと判断し,通常の健康診断に加えて,特別な健康診断を半年毎に追加実施する計画を生成する(図中手順43)。また,健康余命が10年以上の場合は,近いうちに疾病や障害になる確率がまだ高くないと判断し,健康余命に達する年齢より5年前の時点から,特別な健康診断を追加実施する計画を生成する(図中手順44)。
受診者の健康余命が5年以上10年未満の場合,さらに受診者の年齢を判定する(図中手順42)。受診者の年齢が50歳未満の場合,早めの指導が必要と判断し,健康余命が5年未満の場合と同様な追加実施計画を生成する(図中手順43)。50歳未満でない場合,健康余命が10年以上の場合と同様な追加実施計画を生成する(図中手順44)。
図7は,本発明の生活指導計画作成手順の一例を説明する図である。受診者の健康余命の予測値に基づいて,今後の食事指導の必要性や指導内容を決定する。
例えば,健診結果の判定結果の指摘事項として,(1)高血糖が含まれる場合,(2)肥満が含まれる場合,(3)その他(高血糖も肥満も含まれない場合)の何れであるかを判断する(図中手順61)。高血糖で健康余命が8年未満の場合(図中手順62),または肥満で健康余命5年未満の場合(図中手順63),摂取カロリーの制限量が大きい食事指導を実施する計画を生成する(図中手順65)。また,健診結果の判定結果に高血糖も肥満も含まれない場合,食事指導の実施は不要とし,実施計画を生成しない(図中手順68)。
8年未満(高血糖)あるいは5年未満(肥満)でない場合,さらに受診者の過去の健診結果を含めて判定する(図中手順64)。同様な指摘や指導が過去3回以上でない場合は,摂取カロリーの制限量が小さい食事指導を実施する計画を生成する(図中手順67)。今までの食事指導内容では効果が不十分と判断し,摂取カロリーの制限量が大きい食事指導実施計画を生成する(図中手順65)。
また,摂取カロリーの制限量が大きい食事指導実施計画を生成した場合,その指導実施効果をより詳細かつ継続的に把握するために,健康診断を追加実施する(図中手順66)。健康診断の実施内容は,例えば,患者の異常項目(高血糖あるいは肥満,若しくは両方)に関する検査である。
また,健診結果の判定結果として,高血糖と肥満の両方を指摘された受診者の場合,高血糖の判定に従って実施計画を生成する。この場合,例えば,より厳しい指導内容を新たに設定して,実施計画を生成するようにしてもよい。
生成された健康診断や生活習慣改善指導の実施計画等の健康管理計画は,個人毎の健康余命と同様に表示手順で表示したり,印刷手段で印刷される。
図8は,健康管理計画生成手順で生成された,受診者に適した健康管理計画を表示した一例である。本例は,健診計画作成手順及び生活指導計画作成手順に従って,個人健康余命予測手順で算出された受診者の健康余命の予測値に基づいて作成された健康管理計画を示したものである。本例は,受診者の年齢が37.5歳,個人健康余命予測手順で算出された受診者の健康余命の予測値が12.5年,健診結果の判定結果として肥満を指摘(健康診断で同様な指摘が過去3回有り)されている場合と仮定した。
健診計画作成手順において,現在実施している定期的な健康診断に加えて,健康余命が10年以上であるので,健康余命に達する年齢より5年前の45歳から,特別な健康診断を追加実施する計画を生成する。また,生活指導計画作成手順において,肥満を指摘され,さらに同様な指摘が過去3回あるので,摂取カロリーの制限量が大きい食事指導実施計画と,指導実施効果を把握するための健康診断実施計画(指導効果調査)を生成する。ここでは,食事指導実施期間を健康余命に達する年齢(50歳)までとし,その後は摂取カロリーの制限量が小さい食事指導実施計画を生成した。
本例では,指導効果調査は肥満に対するものであって,受診者自身が体重や体脂肪測定を測定する形態を想定した。健診機関での実施が必要な場合など,必要に応じて,上述の健診計画作成手順で生成した健康診断の実施時期及び実施内容と,調整を行うようにする。
また,本例では,食事指導と同様な手順に従って,その他の生活習慣である運動や喫煙の指導に関する実施計画も生成している。
以上のように,本発明の健康管理支援方法では,個人健康余命予測手順で算出された受診者の健康余命の予測値に基づいて,受診者に適した健康管理計画を生成する健康管理計画生成手順を備えるようにした。従って,個々の受診者に最適化された健康管理の指導を実施できるようになり,疾病予防や健康管理効果が高い健康管理支援を効率的に実施できるようになるという著しい効果がある。
また,本発明の健康管理支援方法では,受診者の健康余命の予測値だけでなく,受診者の年齢,判定結果で指摘された異常項目,過去の健康診断での判定結果など,他の情報と組み合わせて健康管理計画を生成するようにした。従って,より受診者個人の適した計画を作成できるという効果もある。
本実施例では,健康管理計画生成手順において,図6や図7に示した手順に従って健康診断や生活習慣改善指導の実施計画を生成するようにしたが,この手順は特に固定されたものとする必要はなく,他の要因や場合や新しい知見が得られた場合など,生成手順や数値(例えば判定に用いている健康余命の値等)を逐次変更させるようにすることもできる。あるいは,図8に示したような健康管理計画生成手順で生成された健康管理計画を表示手順15や表示した後,保健婦などの専門家が表示された健康管理計画を画面上で対話的に修正する手順を設けるようにしてもよい。あるいは,健康管理計画を印刷手順で印刷した後,専門家が印刷された内容を参照しながら,修正した健康管理計画を作成する手順を設けるようにしてもよい。専門家は,健康管理計画生成手順で生成された健康余命を参考にしながら,自らが有する知見を加味することができ,より個々の受診者に適した健康管理計画を生成できるようになる。
次に,本発明の第三の実施例を,図面を用いて詳細に説明する。
本実施例は,図1に示した医療支出予測手順18に関する実施例である。医療支出予測手順18は,個人健康余命予測手順で算出された受診者の健康余命の予測値に基づいて,受診者個人が今後の必要となる医療費の予測値を算出する手順である。この生成は,健康余命に対する医療支出予測の基礎データである医療支出予測データ20を予め用意し,この予測データを用いて実現される。
図21は,医療支出予測データの一例を説明する図である。グラフ73は,年齢xに対する受診者一人当たりの年平均医療費Cxの変化である。一般に,医療支出は年齢毎に大きく異なる。医療支出予測データは,このような変化を,表,近似式,式の定数や乗数などの形で格納している。なお,このような予測データは,例えば,厚生省統計情報部が行う国全体の調査結果「国民医療費」を利用して,あるいは独自に医療支出に関する調査を行うなどして作成する。
図10は,本発明の医療支出予測手順の一例を説明する図である。以下,図10を用いて医療費の予測値を算出する手順を説明する。
先ず,個人健康余命予測手順で算出された受診者の健康余命の予測値に基づいて,疾病障害期間(疾病や障害と共存している状態の期間)の予測値を算出する(図中手順75)。これは,受診者の健康余命の予測値を,平均余命から引いた値として求められる。平均余命は,国全体の調査結果に基づく値を利用する。あるいは,第一の実施例で述べたように,健康余命予測データ19に生存者数の変化を格納して,受診者個人の平均余命を算出する手順を追加して求めた値を利用する。
次に,疾病障害による総医療支出の予測値を算出する(図中手順76)。これは,健康余命に達した時点の年齢(i歳)から疾病障害期間(j年)に対する年平均医療費の総和であり,図21の77の部分に相当する。具体的には,図中78で示す式によって算出される。
算出された総医療支出の予測値は,個人毎の健康余命と同様に表示手順で表示したり,印刷手段で印刷される。
以上のように,本発明の健康管理支援方法では,個人健康余命予測手順で算出された受診者の健康余命の予測値に基づいて,受診者個人が今後の必要となる医療費の予測値を算出する医療支出予測手順を備えるようにした。従って,受診者個人の健康状態を,医療支出という今後の生活設計への影響が大きい指標で表現することができ,疾病予防や健康管理効果の高い健康管理支援が行えるようになるという著しい効果がある。
本実施例では,医療支出予測手順において,個人の健康余命の予測値と疾病障害期間とを用いて総医療支出の予測値を算出したが,医療支出予測データに医療支出に影響を与える他の情報を追加し,医療支出予測手順での算出に利用することもできる。例えば,療養期間の長さが医療支出に与える影響を加味して算出することもできる。図21のグラフ74は,療養期間yが年平均医療費に与える影響を,補正係数Ayで表したものである。本例では,療養期間の延長に応じて年平均医療費が補正係数の割合で低下することを表す。このグラフを,表,近似式,式の定数や乗数などの形で,医療支出予測データに追加格納する。
医療支出予測手順では,この補正係数を用いて医療費の予測値を算出する。具体的には,各年齢毎の年平均医療費に対して,療養期間に応じた補正係数を乗じた上で総和を算出する。これは,図中78で示す式のかわりに図中79で示す式を用いることで実現される。医療支出に影響を与える様々な情報を利用して算出することができ,精度の高い医療支出予測ができるようになる。
次に,本発明の第四の実施例を,図面を用いて詳細に説明する。
第二の実施例において,受診者に適した健康管理計画を生成する健康管理計画生成手順に関して説明した。本実施例は,健康管理計画生成手順で生成された健康管理計画を実行した場合に期待される健康余命の変化の予測値を算出する健康管理効果予測手順に関する。
図9は,本発明の健康管理効果予測手順の一例を説明する図である。先ず,健康管理計画で目標とする健診結果に対する健康余命予測データを生成する。例えば,健診結果の判定結果として肥満が指摘されている場合,この指摘を解消することが健康管理計画の目標となる。本手順では,この目標を達成した場合の健康余命予測データを生成する。具体的には,第一の実施例で説明した個人健康余命予測データ生成手順12と同様な手順に従って,健康余命予測データに格納されている健診結果別健康余命予測データから,目標達成の場合の健診結果に対応する予測データを選択する。
次に,選択した予測データを用いて,目標とする健診結果の達成時点での健康余命の予測値を算出する。具体的には,第一の実施例で説明した個人健康余命予測手段13と同様な手順に従って実現できる。但し,健康診断受診者の現在の年齢ではなく,健診結果の達成時点での年齢を用いて算出する。
最後に,算出した健康余命の予測値に目標とする健診結果達成までの期間を加えた結果を,健康管理計画を実行した場合に期待される健康余命とする。
算出された健康余命の予測値は,個人毎の健康余命と同様に表示手順で表示したり,印刷手段で印刷される。
図11は,健康管理効果予測手順を用いて算出した健康余命の変化の予測値を表示した一例である。本例は,37.5歳に健康診断を受診して日常生活習慣の改善が必要と判断され,健康管理計画生成手順で生成された健康管理計画を実行している場合を示したものである。健康管理計画の実行開始時点の健康余命は12.5年で,これは第一の実施例で説明した個人健康余命予測手段13で算出された予測値である。健康管理計画の目標達成時点の健康余命は25.5年で,これは本実施例で説明した手順により算出したものである。図中72は,健診結果で指摘された問題点を解消する目標達成時点を示している。
以上のように,本発明の健康管理支援方法では,健康管理効果予測手順を用いて健康管理計画により期待される健康余命の変化の予測できるようにした。従って,食事指導や運動指導等の日常生活習慣の改善指導効果を,健康余命という指標を用いて定量的に算出し,改善指導の対象者や保健婦などの専門家等に提示できるようになり,健康管理計画を根拠に基づいて評価及び最適化が可能になるという著しい効果がある。あるいは,生活改善指導の実施効果を定量的に提示できるようになり,参加者の疾病予防や健康管理の意欲の高揚及び持続を図ることができるようになるという顕著な効果が得られる。
本実施例では,健康管理効果予測手順の一例として図9の手順を示したが,他の手順を用いて期待される健康余命を予測することもできる。例えば,図9では,目標とする健診結果の達成時点での健康余命の予測値を算出し,これに目標とする健診結果達成までの期間を加えた結果を期待される健康余命としたが,現時点での健康余命の予測値を算出し,その結果を期待される健康余命とすることもできる。あるいは,健診結果別健康余命予測データの誤差や予測データの不足などにより,期待される健康余命が正確に予測できない場合は,幾つかの算出方法を選択したり組み合わせたりし,適切な補正を行うことこともできる。以上の手順を用いることで,期待される健康余命の予測精度を向上させることができる。
また,本実施例では,健康管理効果予測手順を用いて,健康管理計画の実行により期待される健康余命を算出するようにしたが,健康管理計画の実行途中での健康余命を算出する手順を追加することもできる。例えば,健康管理計画の実行開始時点から1年が経過した時点で健康診断を受診し,その健診結果から健康余命の予測値を算出する。算出した予測値は,例えば,健康管理計画の実行開始時点からの経過分を加えて表示する。図11における現在の欄のその一例である。
本例では,健診結果からの健康余命の予測値が13.2年になったと仮定し,経過分1年を加えた14.2年を表示している。図中71は,健康管理計画の実行開始時点から1年が経過した現時点を示している。改善指導の対象者や専門家等は,生活改善指導の実施効果を逐次把握できるようになり,疾病予防や健康管理の意欲の高揚及び持続をさらに図ることができる。あるいは,日常生活習慣の改善指導効果が少ない場合,実施内容の見直しなどの改善や対策を早い段階から行うことができるようになる。
次に,本発明の第五の実施例を,図面を用いて詳細に説明する。
第四の実施例では,健康管理効果予測手順を用いて,健康管理計画を実行した場合に期待される健康余命の予測値を算出する方法を説明した。本実施例では,算出された予測値に基づいて,医療費の変化の予測値を算出する医療支出変化予測手順に関する。
医療費の変化の予測値は,健康管理効果予測手順で算出された健康余命の予測値に基づいて,受診者個人が今後の必要となる医療費の予測することで算出する。その手順は,第三の実施例で説明した医療支出予測手順と同様な手順に従う。
但し,第三の実施例では,個人健康余命予測手順で算出された受診者の健康余命の予測値に基づいて,疾病障害期間の予測値を算出したが(図10の手順75),本実施例では,健康管理計画を実行した場合に期待される健康余命の予測値に基づいて,疾病障害期間の予測値を算出する。
図11は,医療支出変化予測手順を用いて算出した医療費の変化の予測値を表示した一例である。健康管理計画の実行開始時点,現在(健康管理計画の実行途中),健康管理計画の目標達成時点での疾病障害期間と医療費の予測値を表示する。開始時及び現在の疾病障害期間と医療費の予測値は,図10の手順を用いて算出された値である。目標達成時点での値は,本実施例で説明した医療支出変化予測手順を用いて算出された値である。本例では,開始時は,1200万円の医療費が必要と予測されていたが,現在は1000万円,目標達成時には300万円になり,開始時と比較して各々200万円,900万円削減されると表示されている。
以上のように,本発明の健康管理支援方法では,健康管理計画を実行した場合に期待される医療費の変化の予測値を算出する医療支出変化予測手順を備えるようにした。従って,食事指導や運動指導等の日常生活習慣の改善指導効果を,医療支出という今後の生活設計への影響が大きい指標で表現することができ,疾病予防や健康管理効果の高い健康管理支援が行えるようになるという著しい効果がある。
本実施例では,疾病障害期間の予測を第三の実施例と同様な手順に従って算出したが,健康管理効果予測手順における健康余命の予測方法に応じた手順を用いることもできる。例えば,図9に示した健康管理効果予測手順の一例では,目標とする健診結果を達成した時点での健康余命を予測するようにしたが,同様に,この達成時点での疾病障害期間を予測して,医療費の予測に用いるようにする。
次に本発明の第六の実施例を,図面を用いて詳細に説明する。本実施例は,健康余命を用いて医療保険組織の経営を支援する保険経営支援手順201に関する。本例では,予め定めた特定の医療保険組織の経営支援を行う例を説明する。
保険経営支援手順201は,医療保険組織の加入者である被保険者各々の健康余命の予測値に基づいて,その医療保険組織の医療費支払の総額を予測する。図22は,保険経営支援手順における医療費支払総額の予測手順の一例を説明する図である。先ず,被保険者の健康余命の予測値を取り込む(図中手順202)。
これは,例えば,健診結果に含まれる保険者情報の内容に基づき取り込み対象か否かを判断することで実現する。あるいは,氏名,性別,生年月日等の個人識別情報を有する被保険者リストを予め用意して,健診結果の個人識別情報との一致を確認することで実現できる。
次に,健康余命から医療支出を予測する(図中手順203)。この手順は,第三の実施例で説明した手順を用いて行う。さらに,得られた医療支出の予測値の総和を求める(今までに算出した予測値に追加する)(図中手順204)。以上202から204の手順を,医療保険組織の被保険者全てに対して繰り返し行う(図中手順205)。
以上の手順により,医療費支払総額の予測値が得られる。図23は,得られた予測値の表示例である。表示例211は,健康管理計画を実施しなかった場合(212)と実施した場合(213)の医療費支払総額の予測値を棒グラフで表示した例である。これは,図22の手順において,医用支出算出に用いる健康余命の予測値を,健康管理計画実施前の値と実施後の値(第四の実施例で説明)のそれぞれについて算出することで実現する。なお,健康管理計画の実施内容や予測される効果は被保険者毎に異なる。従って,算出される医療費支払総額予測値は,ある被保険者一人の医療支出予測値に被保険者を乗じた値とは異なる。
以上のように,本発明の健康管理支援方法では,医療保険組織の加入者である被保険者各々の健康余命の予測値に基づいて,医療保険組織全体の医療費支払総額を予測する保険経営支援手段を備えるようにした。従って,保険者は,実データに基づいた将来の医療費支払総額を参照できるようになり,年齢構成,健康状態,医療支出状況など,保険者毎に異なる状況を反映したより正確な予算策定が可能になるという著しい効果が得られる。あるいは,保険者は,健康管理計画実施の効果を被保険者全体として把握でき,より正確な評価が行えるようになるという効果がある。
本実施例では,被保険者の医療費支出予測値の総和を算出して表示するようにしたが,年毎の平均医療費支払額を算出して表示することもできる。具体的には,被保険者の医療費支出を年別に予測し,得られた予測値の総和を算出して表示するようにする。図23の217において,被保険者Pのk年後の医療費支出の予測額をP(k)とすると,全ての被保険者に対するPの総和が年平均医療費支払額となる。P(k)は,第三の実施例で説明した手順を用いて予測する。但し図21の78若しくは79で示した式を,最初の1年間,次の1年間というように,1年毎に分けて算出するなど,1年単位の医療費を算出する。
図23の214は,年平均医療費支払額の表示例であって,縦軸が支払額,横軸が経過年数である。215は健康管理計画を実施しなかった場合,216は健康管理計画を実施しなかった場合の支払額である。年平均医療費支払額の推移が分かるのでより正確な予算立案や経営計画の策定ができるようになる,あるいは年単位の予算策定が容易になるという著しい効果が得られる。
次に,本発明の第七の実施例を,図面を用いて詳細に説明する。本実施例は,健診結果に対する健康余命予測の基礎データ(健康余命予測データ)を生成する健康余命予測データ生成方法に関する。複数の健康診断受診者の様々な健診結果と,健康診断受診者が医療機関等で受けた際の診療報酬明細データを用いて生成する。
診療報酬明細データは,医療機関等で医療サービスを受けた際,サービスを提供した医療機関が,そのサービス提供に対する対価を保険者に請求するために,保険者自身若しくは仲介者や審査機関に対して行う診療報酬請求に記載された情報を有するデータである。本データは,例えば,基本情報,疾病情報,診療行為情報,請求金額情報を有する。基本情報とは,医療サービス提供に関する基本的な情報で,例えば,受診者の氏名,性別,生年月日,保険者情報(保険者名,保険証記号番号等),医療機関情報(住所,名称,電話番号,診療科名称,医師名等),診療実施形態(外来患者,入院患者等),転帰情報(診療後の経過で,転院や死亡等)等を含むものである。疾病情報とは,受診者の疾病に関する基本的な情報で,例えば,疾病の名称(傷病名),診療開始日,診療日数,交通事故等の疾病原因(職務上の事由)等を含むものである。診療行為情報とは,患者に対して行った診療行為に関する情報で,例えば,実施した検査や投薬や注射等の処置の種類と回数等を含むものである。請求金額情報とは,医療機関が医療サービスの対価として請求する金額に関する情報で,例えば,診療行為毎の単価,薬剤費,請求金額の総計等を含むものである。
なお,診療報酬明細データは,患者に対するサービス料を保険者に請求する際のデータであるが,医療に関わるサービス提供者(事業者)からサービスの提供に関わる保険者への報酬請求に関わるデータであれば,利用することができる。
具体的には,現状の介護保険制度の介護保険請求データを利用する。あるいは,社会保障制度の変更に伴い,介護保険,障害保険,老人(高齢者)保険,地域保険,職域保険等,医療に関連した様々な枠組みが設けられた場合でも,これらサービス事業者と保険者との報酬請求に関わるデータを用いて実現する。
以下,本発明の健康余命予測データ生成方法を,図面を用いて詳細に説明する。
図13は,本発明の健康余命予測データ生成方法の一例を説明する処理フロー図である。91は,複数の健康診断受診者の様々な健診結果を収集する健診結果収集手順であって,収集した健診結果は電子データの形となる。基本的には,図1に示した健診結果入力手順と同様に,ネットワークや媒体,イメージスキャナー等を用いて実現される手順である。但し,健診結果収集手順では,複数の受診者の様々な健診結果を取り込むために,例えば,用意された全ての健診結果を繰り返し収集する手順等,特別な手順が備えられている。
92は,健康診断受診者が医療機関等で医療サービスを受けた際の医療サービス内容と請求金額とを含むデータである診療報酬明細データを収集する診療報酬明細データ収集手順であって,収集した診療報酬明細データは電子データの形となる。具体的には,例えば,診療報酬明細データを電子データで管理している健診機関,保険者,審査機関,データ管理請負サービス機関等からネットワークや媒体を介して収集する,あるいは紙に印刷された診療報酬明細書をイメージスキャナーで取り込んだ後,記載された文字や数値を認識した電子化データを用いる,あるいは操作者が紙の診療報酬明細書を見ながら記載内容をキーボード入力した結果を取り込むことで実現される。
93は,収集した診療報酬明細データを健診結果の内容に応じて分類する診療報酬明細データ分類手順である。即ち,受診者の健診結果の違い毎に診療報酬明細データを分類する。
図14は,診療報酬明細データ分類手順の一例である。先ず,診療報酬明細データの分類条件を設定する(図中手順101)。この分類条件は,健診結果の内容を用いて設定される。例えば,図3に示した健診結果のなかの問診結果(喫煙,飲酒,運動に関する日常生活習慣)及び判定結果(肥満,高血圧,高脂血,高血糖,高尿酸)に分類するとして,その有無(運動に関しては,無,小,大の3段階)の組合せ毎に分類するようにする。
次に,診療報酬明細データ収集手順で収集した複数の診療報酬明細データから1つ取り込み(図中手順102),さらに健診結果収集手順で収集した複数の健診結果から,手順102で取り込んだデータと同一者の健診結果を取り込む(図中手順103)。その後,手順101で設定した分類条件に従って,手順103で取り込んだ健診結果の内容に対応した分類場所(例えば,図3の健診結果の組合せの中のどの場所に該当するか)を決定する。例えば,喫煙,飲酒,運動の何れの習慣もなく,高尿酸の判定結果を含む検査結果の場合,図3のグラフ27が記載された部分に対応した分類となる。
最後に,手順102で取り込んだ診療報酬明細データを,手順104で決定されて分類場所に従って分類する(図中手順105)。本例では,診療報酬明細データに分類結果を格納するための記憶領域を追加し,分類場所を記憶するようにしている。そして,全ての診療報酬明細データの分類が完了したかを確認し(図中手順106),完了していない場合は,手順102で新たな診療報酬明細データを取り込み,手順105までの処理を自動的に繰り返す。
以上が,診療報酬明細データ分類手順の処理である。
94は,健診結果に対する健康余命予測の基礎データである健康余命予測データを生成する健康余命予測データ生成手順である。診療報酬明細データ分類手順によって健診結果の違い毎に分類された診療報酬明細データを用いて,死亡者数と疾病や障害との共存者数とを年齢別に算出する。そして,その算出結果を基に健康余命予測データ95を生成する。
図15は,健康余命予測データ生成手順の一例を説明する図である。先ず,死亡者と,他人の援助を必要とするような疾病や障害との共存者を各々判定する条件を設定する(図中手順111)。この判定条件は,死亡者に関しては,例えば診療報酬明細データの基本情報に含まれる転帰情報に死亡が含まれる場合を条件とする。疾病や障害との共存者に関しては,診療報酬明細データの基本情報,疾病情報,診療行為情報,請求金額情報などの様々な情報を用いて条件を設定する。
図16は,疾病や障害との共存者を判定する条件の一例である。基本情報の診療実施形態から入院患者か否かを判定し(図中手順121),疾病情報の傷病名から糖尿病か否かを判定し(図中手順122)し,診療行為情報の処置に関する情報から腎透析実施か否かを判定し(図中手順123),診療行為情報の投薬に関する情報からインシュリン薬処方か否かを判定する(図中手順124)。以上,手順121〜124のなかで,一つでも該当する項目がある場合は,疾病や障害との共存者と判定し,抽出の対象となる(図中手順126)。何れの項目にも該当しない場合,疾病や障害との共存者でないと判定し,抽出の対象外となる(図中手順125)。
次に,健診結果が同じ分類である診療報酬明細データから1つ取り込み(図中手順112),さらに手順112で取り込んだ診療報酬明細データを,手順111で設定した抽出条件に従って,医療機関の受診者が(1)死亡者であるか,(2)他人の援助を必要とするような疾病や障害との共存者であるかを判定する(図中手順113)。最後に,手順114の判定結果を記録する(図中手順114)。本例では,診療報酬明細データに判定結果を格納するための記憶領域を追加して記憶するようにしている。そして,全ての診療報酬明細データの判定が完了したかを確認し(図中手順115),完了していない場合は,手順112で新たな診療報酬明細データを取り込み,手順114までの処理を自動的に繰り返す。
また,健診結果が異なる他の分類の診療報酬明細データに対しても,同様な手順で処理を自動的に繰り返し行う。
以上の処理により,健診結果の違い毎に分類された診療報酬明細データ毎に,死亡者及び疾病や障害との共存者が得られる。また,診療報酬明細データの基本情報の生年月日から年齢を算出することができる。従って,これら死亡者及び共存者とその年齢情報から,死亡者数と疾病や障害との共存者数とを年齢別に得られる。
最後に,得られた年齢別死亡者数及び疾病や障害との共存者数から,図2のグラフ23に相当するデータ,即ち健康余命予測データを生成する。具体的には,健診結果の内容が異なる分類(即ち,図14の手順101で設定した分類)毎に,健康診断受診者総数に対する健常者数の割合を,各年齢毎に算出することで生成できる。ここで健常者数は,健康診断受診者総数から死亡者数及び疾病や障害との共存者数を引いた値である。
以上が,健康余命予測データ生成手順の処理である。
以上のように,本発明の健康余命予測データ生成方法は,複数の健康診断受診者の様々な健診結果と,健康診断受診者が医療機関等で受けた際の診療報酬明細データを用いて,健診結果に対する健康余命予測の基礎データ(健康余命予測データ)を生成するようにした。従って,生成のための特別な調査や作業を実施するなど,多くの労力と時間を要した健診結果別の健康余命予測データを,健康診断の受診や医療機関での診療を受けた際に得られる情報のみを利用して生成できるようになるという著しい効果がある。
あるいは,本発明の健康余命予測データ生成方法は,予め設定した健診結果の内容を用いた分類条件に従って,診療報酬明細データを自動的に分類するようにした。また,本発明の健康余命予測データ生成方法は,予め設定した疾病や障害との共存者か否かを判定する条件に従って,診療報酬明細データを自動的に判定して共存者数を算出するようにした。従って,多くの診療報酬明細データを,多くの人手をかけず,かつ高速に処理できるようになるという著しい効果がある。
また,複数の装置や分散処理する場合や長期にわたって処理する場合でも,常に同一の分類条件や判定条件を用いることができ,処理条件の装置間格差や経年変化がなく,精度よく共存者数を算出できるようになるという効果がある。
本実施例において,疾病や障害との共存者か否かの判定を,診療報酬明細データを用いて行うようにしたが,他の情報を利用したり,複数の情報を組み合わせて判定することもできる。例えば,健康診断の問診票に日常生活の自立度合いに関する項目がある場合,その問診結果を利用する。あるいは,介護保険制度などの介護サービスの提供に関する情報を利用する。あるいは,保健婦が自分で調べた結果を利用する。若しくは,複数の診療報酬明細データを用いて判定する。具体的には,例えば,診療時期が異なる複数の診療報酬明細データの疾病情報を利用し,特定に疾患名に対して長期間診療が行われている場合,疾病や障害との共存者であると判定する。疾病や障害との共存者か否かの判定精度が向上し,より正確な健康余命予測データを生成できるようになる。
また,本実施例では,年齢別死亡者数及び疾病や障害との共存者数から健康余命予測データを生成したが,他のデータも同時に生成することもできる。例えば,図2のグラフ22に相当するデータ(生存者数の年齢変化)を生成する。具体的には,健診結果の内容が異なる分類毎に,健康診断受診者総数に対する生存者数の割合を,各年齢毎に算出することで生成できる。ここで生存者数は,健康診断受診者総数から死亡者数を引いた値である。健康余命に加えて,平均余命や疾病障害期間(疾病や障害と共存している状態の期間)を算出できるようになる。
また,本実施例では,年齢別死亡者数及び疾病や障害との共存者数から健康余命予測データを生成したが,他の方法を用いて生成することもできる。例えば,診療報酬明細データの内容を追跡調査して,健常者のなかで疾病や障害との共存者になった人,死亡した人,健常者のままの人や,疾病や障害との共存者のなかで死亡した人,健常者になった人,共存者のままの人の推移を求める。そして,健常者のままの人と共存者のなかで健常者になった人の推移から,健常者数を算出して健康余命予測データを生成することもできる。健常者,共存者,死亡者の変化を元に算出できるので,疾病や障害の発生率や死亡率が大きく変化した場合にも,精度よく予測データを生成できる。
また,本実施例では,健康余命予測データは,健康余命予測データ生成時点での年齢別健常者数の割合のみに基づいて生成し,今後の年齢別健常者数の割合が不変であるという前提で作成したものであるが,誕生から疾病や障害発生までの追跡調査を行って作成する,あるいは両者の方法を利用して作成することもできる。断片的なデータでなく継続的な調査データを利用でき,より精度の高い予測データを生成できる。
次に,本発明の第八の実施例を,図面を用いて詳細に説明する。第七の実施例では,複数の健康診断受診者の様々な健診結果と,健康診断受診者が医療機関等で受けた際の診療報酬明細データを用いて,健康余命予測データ生成する例を説明した。この際,健診結果と診療報酬明細データは,健康診断や医療サービスの対象者である受診者毎に対応づけられている必要がある。本実施例は,この対応づけを行う手順(データ統合手順)の一例である。
本発明においては,この対応づけを,先ず健診結果に含まれる情報と診療報酬明細データに含まれる情報とを用いて行われる。この際,双方の情報に,受診者を識別して特定できる共通の内容が含まれている場合は問題ない。しかし実際には,健診結果と診療報酬明細データは,その生成機関や管理方法が異なることや,さらに健診機関は各々の業務内容に合わせた管理方法を用いる場合があるなどの理由により,共通の情報が存在しない場合もある。本実施例では,このような受診者を特定可能な共通した情報が存在しない(あるいは不足している)場合でも対応づけを可能とする。
図17は,本発明のデータ統合手順の一例を模式的に説明する図である。本手順では,個人識別マスタデータ131を用いて,健診結果と診療報酬明細データを受診者毎に対応づけする。個人識別マスタデータは,個人識別マスタデータに登録されている受診者を識別する個人識別ID(136,141,143),受診者に関する基本情報である個人識別情報(137,138),個人健診結果の格納位置を指し示す健診結果格納位置(139),個人診療報酬明細データの格納位置を指し示す診療報酬明細データ格納位置(140)を有している。健診結果格納位置や診療報酬明細データ格納位置は,実際に個人健診結果132や個人診療報酬明細データ133が格納されている位置を指し示すリンク情報の形で格納されている。
個人識別情報は,健診結果や診療報酬明細データの受診者を識別して特定するための情報であって,健診結果及び診療報酬明細データ各々の受診者の特定に利用可能な様々な情報(受診者個人の氏名,生年月日,住所,電話番号,所属する保険者に関する情報等)を格納する。また,住所変更や所属保険者の変更などの情報内容の変化に対応するために,個人識別ID1つに対して複数の個人識別情報を割り当て可能で,さらに個々の個人識別情報には有効期間が設けられている。
個人識別情報マスタデータは,例えば,保険者が管理している被保険者登録マスタデータ134(保険者に加入している被保険者に関する基本的な情報が格納されたマスタデータ)を用いた登録や更新が,適時行われる。あるいは,本発明のデータ統合手順の中で新規に追加される。なお,被保険者登録マスタデータには,被保険者各々の保険者番号,保険証番号記号,氏名,生年月日,住所,電話番号,資格取得年月日,資格失効年月日等が格納されている。
図18は,本発明のデータ統合手順の一例を説明する図である。本発明のデータ統合手順は,個人識別情報を用いて受診者が特定された健診結果及び診療報酬明細データを,個人識別IDで管理する。先ず,前処理として,被保険者登録マスタデータから個人識別マスタデータを構築する(151)。即ち,被保険者登録マスタデータにある各被保険者の情報を,個人識別マスタデータに登録する。
有効期間は,資格取得年月日と資格失効年月日とを用いて登録する。前処理の後,診療報酬明細データを受診者の個人識別IDに結びつける手順152と,健診結果を受診者の個人識別IDに結びつける手順153を行う。
診療報酬明細データに関する手順152は,先ず,診療報酬明細データを読み込む(154)。そして,個人識別マスタデータ内の個人識別情報を検索し,読み込んだ診療報酬明細データ上にある受診者を識別する情報(保険者番号,保険証記号番号,氏名,生年月日)と一致する個人識別情報が存在するか否かを調べる(155)。一致する情報が存在する場合,個人識別IDに診療報酬明細データを結びつける(157)。即ち,この個人識別情報と同一の個人識別IDに属する診療報酬明細データ格納位置に,読み込んだ診療報酬明細データへのリンク情報を格納する。一致する情報が存在しない場合,受診者を新規に登録する処理を行う。即ち,新たな個人識別IDと個人識別情報を生成し,個人識別マスタデータに格納する(156)。そして,読み込んだ診療報酬明細データを生成した個人識別IDに結びつける(157)。
なお,上記手順155において,同一の個人識別IDに有効期間が異なる複数の個人識別情報が存在する場合,例えば,診療報酬明細データの疾病情報に含まれる診療開始日を用いて選択する。
健診結果に関する手順153は,健診機関が異なる2種類の健診結果(健診結果Aと健診結果B)を処理する例を説明する。健診結果Aは基本情報に保険者情報を有し,健診結果Bは保険者情報を有さない。
先ず,健診結果を読み込み(158),基本情報に保険者情報を有するか否かを調べる(159)。有する場合(健診結果A)は,個人識別マスタデータ内の個人識別情報を検索し,読み込んだ健診結果にある受診者を識別する情報(保険者番号,保険証記号番号,氏名,生年月日)と一致する個人識別情報が存在するか否かを調べる(160)。一致する情報が存在する場合,診療報酬明細データでの手順157と同様に,健診結果を個人識別IDに結びつける(163)。
手順159で基本情報に保険者情報を有しない場合(健診結果B),あるいは手順160で一致する個人識別情報が存在しない場合は,保険者情報(保険者番号,保険証記号番号)を用いないで,個人識別マスタデータ内の個人識別情報を検索する。即ち,読み込んだ健診結果にある受診者を識別する情報(氏名,生年月日,住所,電話番号等)を用いて,手順160と同様に個人識別マスタデータ内の個人識別情報を検索する。
ここで,受診者の住所,電話番号に関する情報は,診療報酬明細データの基本情報に含まれておらず,同一受診者を特定する情報として利用できない。しかし,本発明では,個人識別マスタデータに,被保険者登録マスタデータに格納された住所,電話番号等の情報を,保険者番号,保険証記号番号,氏名,生年月日と共に登録させたので(151),特定が可能になる。
その結果,一致する情報が存在する場合,健診結果を個人識別IDに結びつける(163)。一致する情報が存在しない場合,受診者を新規に登録する処理を行う。即ち,新たな個人識別IDと個人識別情報を生成し,個人識別マスタデータに格納する(162)。そして,健診結果を生成した個人識別IDに結びつける(163)。
なお,上記手順160及び161において,同一の個人識別IDに有効期間が異なる複数の個人識別情報が存在する場合,例えば,健診結果の基本情報に含まれる実施年月日を用いて選択する。
以上,診療報酬明細データに関する手順152と健診結果に関する手順153を,健診結果収集手順91及び診療報酬明細データ収集手順92で収集された様々な健診結果及び診療報酬明細データに対して処理することで,健診結果と診療報酬明細データとを受診者毎に対応づけ可能になる。
以上のように,本発明の健康余命予測データ生成方法は,健診結果に含まれる受診者を識別して特定できる情報と,診療報酬明細データに含まれる受診者を識別して特定できる情報とを用いて,健診結果と診療報酬明細データとを受診者毎に対応づけするデータ統合手順を備えるようにした。従って,健康余命予測データの生成が可能になるという著しい効果がある。
あるいは,本発明の健康余命予測データ生成方法は,受診者の特定に利用可能な様々な情報を格納した個人識別情報を用意し,個人識別情報を用いて健診結果及び診療報酬明細データの受診者を特定し,その結果を個人識別IDで管理するデータ統合手順を備えるようにした。従って,受診者を特定可能な共通した情報が存在しない(あるいは不足している)場合でも,健診結果と診療報酬明細データの対応づけが可能になるので,より多くの健診結果及び診療報酬明細データを用いて健康余命予測データを生成でき,健康余命予測データの精度を向上させることができるようになるという著しい効果がある。
本発明では,個人識別マスタデータの個人識別情報に様々な情報を格納し,格納された情報と,健診結果及び診療報酬明細データに含まれる情報との一致によって,受診者の特定を行うようにしたが,単なる情報に含まれる氏名や住所の項目の一致だけでなく,一致判定のための手順を組み込むこともできる。例えば,保険制度の特例により資格失効後も診療を継続している場合,保険制度の規定に従って診療報酬明細データから診療開始日を選択して有効期間との判定を行う手順を組み込むこともできる。あるいは,個人識別情報と一部項目が一致しない健診結果及び診療報酬明細データは,予め用意したフラグを立てて,後から操作者が対話的に判定可能にすることもできる。健診結果と診療報酬明細データの対応づけをより正確に行うことが可能になり,健康余命予測データの精度をより向上できる。
次に,本発明の第九の実施例を,図面を用いて詳細に説明する。
図12は,本発明の健康管理支援装置の一例を説明する構成図である。81は健康余命予測データ格納装置であって,健診結果に対する健康余命予測の基礎データである健康余命予測データが格納された装置である。具体的には,データベース装置や磁気ディスクや記憶媒体,半導体メモリ等を用いて実現される。
82は健康管理支援サーバ装置であって,個人の健康余命の予測値を算出し,算出した予測値に基づいて健康管理に関する情報を生成する装置である。具体的には,汎用のコンピュータ装置等を用いて実現される。83,84,85は端末装置であって,健康管理支援サーバ装置で生成された健康管理に関する情報を表示する装置である。具体的には,CRTや液晶などの表示機器と制御装置等を用いて実現される。
86は個人健診結果入力装置であって,健康診断を受けた受診者個人の健診結果を電子データとして入力する装置である。具体的には,健診機関,保険者,事業所,データ管理請負サービス機関等を結ぶネットワーク装置,あるいは紙に印刷された健診結果報告書を電子化するOCR装置,あるいは紙の健診結果報告書をキー入力するキーボード入力装置等で実現される。
88は医療支出予測データ格納装置であって,健康余命に対する医療支出予測の基礎データである医療支出予測データが格納された装置である。健康余命予測データ格納装置81と同様な方法で実現できる。89は印刷装置であって,健康管理支援サーバ装置で生成された健康管理に関する情報を印刷する装置である。
87は情報ネットワークであって,健康管理支援サーバ装置82,各端末装置83〜85,印刷装置89を結んでいる。具体的には,専用回線やインターネット等を用いて実現される。
端末装置83〜85は,家庭等,健康診断支援の参加者が利用できる場所に配置する。また,健診機関,保健所,行政機関,保険者,事業所等,健康管理支援を提供する側である医師,保健婦,事業所の従業員健康管理担当者が利用できる場所に配置することもできる。
本装置は,本発明の健康管理支援方法が備える処理手順を実現することができる。具体的には,図1に示した各処理手順(10〜18)は,基本的に健康管理支援サーバ装置82で実現される。但し,健診結果入力手順11は個人健診結果入力装置86,表示手順15は端末装置83〜85,印刷手順16は印刷装置89も用いて実現される。また,健康余命予測データ19は健康余命予測データ格納装置81に,医療支出予測データ20は医療支出予測データ格納手段88に格納される。
次に,本発明に健康管理支援装置を用いた健康管理支援方法の実現例を説明する。本例では,第一の実施例で説明した個人の健康余命の予測値を表示または印刷する手順を実現する例を中心に説明する。
先ず,個人健診結果入力装置86を用いて,健診結果入力手順11に従って健康診断受診者の健診結果を入力する。入力された健診結果は,健康管理支援サーバ装置82に送られる。
次に,健康管理支援サーバ装置82において,健診結果に基づいて個人の健康余命の予測値を算出する。この算出は,個人健康余命予測データ生成手順12,個人健康余命予測手順13に従って行われる。個人健康余命予測データ生成手順12で必要となる健康余命予測データは,健康余命予測データ格納装置81に予め格納されたものを用いる。
最後に,健康管理支援サーバ装置82で算出した健康余命の予測値は,ネットワーク87を介して端末装置83〜85に伝送されて表示される。この表示は,表示手順15に従って行われる。また,ネットワーク87を介して印刷装置89に伝送されて印刷される。
その他,第二から第六の実施例で説明した健康余命の予測値を用いた健康管理支援の処理手順は,健康管理支援サーバ装置82で実現される。具体的には,健康管理計画作成手順14(健診計画作成手順(図6)及び生活指導計画作成手順(図7)),医療支出予測手段18,健康管理効果予測手順14,医療支出変化予測手順10である。医療支出予測手段18及び医療支出変化予測手順10で必要となる医療支出予測データは,医療支出予測データ格納装置88に予め格納されたものを用いる。また,図4,図5,図8,図11に示した表示例や印刷例は,端末装置及び印刷装置で表示や印刷する。
以上のように,本発明の健康管理支援装置は,個人健診結果入力装置を用いて入力された健康診断受診者の健診結果と,健康余命予測データ格納装置に格納された健康余命予測データとを用いて,個人毎の健康余命データの予測値を算出し,算出した予測値に基づいて健康管理に関する情報を生成する健康管理支援サーバ装置を備えるようにした。従って,受診者は,健康余命という指標に基づいて,自分自身の健康状態を定量的に把握でき,さらに健康余命に基づいた健康管理計画作成や健康管理効果予測が可能になるなど,疾病予防や健康管理の意欲を高めることができるようになるという著しい効果がある。
次に,本発明の第十の実施例について,図面を用いて詳細に説明する。
図19は,本発明の健康余命予測データ生成装置の一例を説明する構成図である。171は健診結果格納装置であって,複数の健康診断受診者の様々な健診結果が格納された装置である。172は診療報酬明細データ格納装置であって,複数の医療機関受診者の様々な医療サービス内容と請求金額とを含むデータである診療報酬明細データが格納された装置である。
173は健康余命予測データ生成装置であって,健診結果に対する健康余命予測の基礎データである健康余命予測データを生成する装置である。174は健康余命予測データ格納装置であって,健康余命予測データ生成装置で生成された健康余命予測データが格納された装置である。
175は個人識別マスタデータ格納装置であって,健診結果と診療報酬明細データとを受診者毎に対応づけする際に必要な情報が格納されている。
178は健診結果収集装置であって,健診機関,医療保険機関(保険者),事業者等の健診結果を保管や管理している機関やデータ管理請負サービス機関等から,健診結果を収集する装置である。179は診療報酬明細データ収集装置であって,医療機関,医療保険機関(保険者)等の診療報酬明細データを保管や管理している機関やデータ管理請負サービス機関等から,診療報酬明細データを収集する装置である。
171,172,174,175の各装置は,具体的には,データベース装置や磁気ディスクや記憶媒体,半導体メモリ等を用いて実現される。173の装置は,具体的には,汎用のコンピュータ装置等を用いて実現される。178及び179の装置は,専用回線やインターネット等を利用したコンピュータネットワークや制御装置等を用いて実現される。
本装置は,本発明の健康余命予測データ生成方法が備える処理手順を実現することができる。具体的には,図13に示した各処理手順(91〜94)は,健康余命予測データ生成装置173で実現される。また,健康余命予測データ95は健康余命予測データ格納装置174に格納される。
次に,本発明の健康余命予測データ生成装置を用いた健康余命予測データ生成方法の実現例を説明する。本例では,第七の実施例で説明した健康余命データを生成する手順を実現する例を中心に説明する。
先ず,健診結果収集装置178を用いて,健診結果収集手順91に従って様々な健診結果を収集する。収集された健診結果は,健診結果格納装置171に格納される。さらに,診療報酬明細データ収集装置179を用いて,診療報酬明細データ収集手順に従って様々な深慮報酬明細データを収集する。収集された診療報酬明細データは,診療報酬明細データ格納装置175に格納される。
次に,健康余命予測データ生成装置173を用いて,健康余命予測データを生成する。この生成は,診療報酬明細データ分類手順93及び健康余命データ生成手順94に従って行われる。手順93及び94で必要となる健診結果及び診療報酬明細データは,健診結果格納装置171及び診療報酬明細データ収集装置179に格納されたものを用いる。また,生成された健康余命予測データは,健康余命予測データ格納装置174に格納される。
その他,第八の実施例で説明したデータ統合手段は,健康余命予測データ生成装置を用いて実現できる。本手順で必要となる個人識別マスタデータ131は,個人識別マスタデータ格納装置175に格納されたものを用いる。
以上,健康余命予測データ生成装置を用いた健康余命予測データ生成方法の実現例を説明した。
以上のように,本発明の健康余命予測データ生成装置は,健診結果格納装置に格納された健診結果と,診療報酬明細データ格納装置に格納された診療報酬明細データとを用いて,健診結果に対する健康余命予測の基礎データである健康余命予測データを生成する健康余命予測データ生成装置を備えるようにした。従って,多くの労力と時間を要した健診結果別の健康余命予測データを,健康診断の受診や医療機関での診療を受けた際に得られる情報のみを利用して生成できるようになるという著しい効果がある。
本実施例において,診療報酬明細データ格納装置に格納された診療報酬明細データを用いて健康余命予測データを生成したが,他のデータを生成する装置を追加することもできる。例えば,健康余命に対する医療支出予測の基礎データである医療支出予測データを生成する医療支出予測データ生成装置176と,生成された医療支出予測データが格納される医療支出予測データ格納装置177を追加する。176の装置は,具体的には,汎用のコンピュータ装置等を用いて実現される。177の装置は,具体的には,データベース装置や磁気ディスクや記憶媒体,半導体メモリ等を用いて実現される。
医療支出予測データは,健康余命に対する医療支出予測の基礎データであって,例えば,図21に示すような年齢に対する受診者一人当たりの年平均医療費の変化(グラフ73)である。医療支出予測データ生成装置は,診療報酬明細データの基本情報(受診者の生年月日),請求金額情報(請求金額)を利用して,医療支出予測データを生成する。この生成は,例えば以下の手順により行う。
先ず,診療報酬明細データ格納装置から診療報酬明細データを取り込み,基本情報(受診者の生年月日)を用いて年齢を算出する。取り込む診療報酬明細データは請求1年分とする。次に,取り込んだ診療報酬明細データの請求金額情報(請求金額)の総和を,年齢毎に算出する。最後に,算出した年齢別の総和を,その年齢の受診者数で割ると受診者一人当たりの年平均医療費が得られる。即ち,医療支出予測データが得られる。得られた医療支出予測データは,医療支出予測データ格納装置に格納される。
以上のように,医療支出予測データ生成装置と医療支出予測データ格納装置を設けることにより,健康余命予測データと共に健康余命に対する医療支出予測の基礎データを生成することができるようになり,医療支出予測手順や医療支出変化予測手順での医療支出の予測に用いることで,疾病予防や健康管理の意欲を高めることができるようになるという著しい効果がある。
次に,本発明の第十一の実施例について,図面を用いて詳細に説明する。
図20は,本発明の健康管理支援装置の一例を説明する図である。本実施例は,第九の実施例で説明した健康管理支援装置(図12)に第十の実施例で説明した健康余命予測データ生成装置(図19)を組み合わせた,健康管理支援装置の一例である。
図20において,82〜87,89,171〜179は,第九及び第十の実施例で説明したものと同じである。181は医療保険機関(保険者),182〜184は健診機関,187はネットワーク,188は健康管理支援サーバ装置,189は個人健診結果入力装置,190は医療保険機関向けの端末である。健康余命予測データ格納装置174及び医療支出予測データ格納装置175は,図12の81及び88と同一のものである。即ち,第十の実施例により生成された健康余命予測データと医療支出予測データは,2つの格納装置(174及び175)を介して,第九の実施例で説明した健康管理支援装置で利用される。
図中185で示す破線枠は,健康管理支援装置の範囲を示すものである。実際には,この枠内の装置を医療保険機関,行政機関,健康管理支援サービスプロバイダ等の健康管理支援を行うサービス運営者が所有し,被保険者,医療保険機関,健診機関等が,健康余命等の健康管理支援に有益な情報や,健康管理計画の作成と計画に沿ったプログラムの提供等のサービスを行う。
具体的には,医療保険機関や健診機関から健診結果や診療報酬明細データを収集して健康余命予測データを生成する。そして,個人健診結果入力装置86で入力された健診結果を用いて,健康診断受診者の健康余命の予測値を算出し,端末装置83に表示する(受診者への提示)。また,医療支出予測データを用いて,健康余命の延伸による医療支出の変化を予測し,その結果を端末装置190に表示する(保険者への提示)。あるいは,医療保険組織全体の医療費支払総額を予測し,その結果を端末装置190に表示する。なお,個人健診結果入力装置86は,サービス運営者のサービスに参加している受診者の健診結果を健診機関から直接伝送する。例えば,サービス運営者と健診機関184との間で契約を結び,参加者が健診機関が健康診断を受けた場合,自動的に健診結果を伝送し,健康余命の表示やその他のサービスに反映させることができる。
図中186で示す破線枠は,他の健康管理支援装置の範囲を示すものである。
本装置は,185で示した健康管理支援装置で生成された健康余命予測データと医療支出予測データとを利用して,健康管理支援のための情報提供やサービスを行う。186の健康管理支援装置を運営するサービス運営者は,これら予測データを基に185のサービス運営者と異なる独自の予測手法や他の情報との複合処理等を行うことができ,例えば,特定の地域,職域,年齢層などにターゲットを絞った魅力的な情報提供や健康管理計画の作成のサービスを行うことができる。
また,185のサービス運営者は,自ら生成した予測データを提供することによって対価が得られるようにすることもできる。
なお,個人健診結果入力装置189は,ネットワーク87を経由して,受診者自身が直接健診結果を入力できるようにした装置である。例えば,受診者がキーボードで入力する,あるいは,健診機関から受け取った健診結果が格納された媒体(ICカードや光カード等)から読み込む。また,ネットワーク187は,付加価値の高いデータを伝送するための特別な情報保護機能を設けるようにしてもよい。
以上のように,本発明の健康管理支援装置は,医療保険機関や健診機関から収集した健診結果及び診療報酬明細データと健康診断受診者個人の健診結果とから,健康余命の予測値を算出して表示するようにした。従って,従って,受診者は,健康余命という指標に基づいて,自分自身の健康状態を定量的に把握でき,さらに健康余命に基づいた健康管理計画作成や健康管理効果予測が可能になるなど,疾病予防や健康管理の意欲を高めることができるようになるという著しい効果がある。
以上説明したように,本発明の健康管理支援方法及び装置は,受診者の健診結果に基づいて受診者個人の健康余命の予測値を算出し,健康管理支援のために利用しようとするものである。また,本発明の健康余命予測データ生成方法及び装置は,健康余命の予測に必要となる健診結果別の健診余命予測データを,様々な健診結果と診療報酬明細データとから生成しようとするものである。従って,これらの趣旨を超えない範囲内で様々な修正や変形等を行うことが可能である。
10…医療支出変化予測手順,11…健診結果入力手順,12…個人健康余命予測データ生成手順,13…個人健康余命予測手順,14…健康管理効果予測手順,15…表示手順,16…印刷手順,17…健康管理計画生成手順,18…医療支出予測手順,19…健康余命予測データ,20…医療支出予測データ,21…健康余命の予測に用いるグラフ,22…生存者数を表すグラフ,23…健常者数を表すグラフ,24…健常者に対応する部分,25…疾病や障害との共存者を示す部分,26…健康余命の予測値の算出式,27〜30…健康余命の予測に用いるグラフ(健診結果別健康余命予測データ)の例,31…端末のモニタ,32…画面,33…表示ウィンドウ,36,37…健康余命が印刷された紙の一例,71…現時点を示すマーク,72…目標達成時点を示すマーク,73…年平均医療費を表すグラフ,74…療養期間による年平均医療費への影響を表すグラフ,77…年平均医療費の総和に対応する部分,78,79…総医療支出の予測値の算出式,81…健康余命予測データ格納装置,82…健康管理支援サーバ装置,83〜85…端末装置,86…個人健診結果入力装置,87…情報ネットワーク,88…医療支出予測データ格納装置,89…印刷装置,91…健診結果収集手順,92…診療報酬明細データ収集手順,93…診療報酬明細データ分類手順,94…健康余命予測データ生成手順,95…健康余命予測データ,131…個人識別マスタデータ,132…個人健診結果,133…個人診療報酬明細データ,134…被保険者登録マスタデータ,135…個人識別マスタデータのデータ構造,136,141,143…個人識別ID,137,138…個人識別情報,139…健診結果格納位置,140…診療報酬明細データ格納位置,171…健診結果格納装置,172…診療報酬明細データ格納装置,173…健康余命予測データ生成装置,174…健康余命予測データ格納装置,175…個人識別マスタデータ格納装置,176…医療支出予測データ生成装置,177…医療支出予測データ格納装置,178…健診結果収集装置,179…診療報酬明細データ収集装置,181…医療保険機関(保険者),182〜184…健診機関,185,186…健康管理支援装置の範囲を示す破線枠,187…ネットワーク,188…健康管理支援サーバ装置,189…個人健診結果入力装置,190…医療保険機関向け端末,211…医療費支払総額予測値を示すグラフ,214…年平均医療費支払額を示すグラフ,215…健康管理計画を実施しなかった場合,216…健康管理計画を実施した場合,217…年毎の平均医療費支払額の算出式。