ところでタイヤチェーンに要求される性能としては、耐久性と、氷雪上での制動性能及び登坂性能がある。この点に関し例えば特許文献1記載のロープ製タイヤチェーンでは、従来の金属チェーンや樹脂チェーンの形状をそのままに、ロープに変更したものであり、繊維製タイヤチェーンとして特有の耐久性や制動性能等の関係については検討されていない。また織物製タイヤチェーンにおいても織物素材の粘着性に頼って制動性能を確保しており、更なる検討、改善の余地がある。
そこで本発明においては、繊維製タイヤチェーンが軽量で収納性にも優れるものであることからこの利点を生かしつつ、更なる改善を行って耐久性や制動性能,登坂性能に優れた繊維製タイヤチェーンを提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、繊維製タイヤチェーンを編物製のタイヤチェーンとし、下記の如く所定の要件を満たすことで優れたタイヤチェーンを得ることができることを見出し、本発明に至った。
斯様な本発明に係る編物製タイヤチェーンは、タイヤに着脱自在に装着される繊維製タイヤチェーンであって、少なくともタイヤ接地面を密着状態で覆う筒状体が編物構造を有し、タイヤに装着した状態における前記編物構造の目合いの空隙面積(S)と、該編物構造のストランドの幅(W)との関係が下記式(1)を満足すると共に、前記編物構造の節部における厚みが、該編物構造の網脚部における厚みの3倍以下であることを特徴とする。
2≦S1/2/W≦15 …(1)
なお「節部」とは編物製タイヤチェーンでの編み目における交差点部のことであり、「網脚部」とは非交差点部のことである。例えば図4(本発明の一例である編物製タイヤチェーンをタイヤに装着した状態における編物構造の様子を表す部分拡大概略図)を例にとって説明すると、「網脚部」とは、符号「16」で示す如く、格子状(図4(a))や亀甲状(図4(b))等に形成されたタイヤ接地面上部分(タイヤ接地面を覆う部分)の編物構造において網糸が伸びている部分であり、「節部」とは、符号「15」で示す如く、網脚部16が連結した部分のことを言う。なお亀甲型の場合では(図4(b)、図6:亀甲型の編み目の様子を表す拡大図)、亀甲目を形作る6辺のうち1組の対向する2辺は、交差点部が長く伸びることで形成されていることから、亀甲目の2辺が節部15により構成され、亀甲目の4辺が網脚部16により構成されたものとなる。
「ストランド」とは、編み上げた状態における編み目を形作る線状部分(網糸部分)のことであり、例えば無結節菱目の編物の場合は網脚部が対応することとなり(例えば図4(a)に示すE参照)、無結節亀甲目の編物の場合は、網脚部と長く伸びた節部とが対応することとなる(例えば図4(b)に示すE参照)。また「ストランドの幅」とは網脚部や長く伸びた節部における幅を言う(例えば図4に示すW参照)。但し、目の一辺中において見かけ上太い箇所と細い箇所を有する場合には太い箇所における幅を言う(図5:ストランド幅(W)を説明する為の図)。「目合い」とは編物構造を構成するストランド間の空隙を言い、「目合いの空隙面積」とは編物製タイヤチェーンにおいてストランドの内側で取り囲まれる面積を言う(例えば図4に示すPの部分)。
また上記「タイヤ接地面を密着状態で覆う」とは、タイヤの接地面に対してタイヤチェーンが大きく離れて位置し、タイヤチェーンとしての機能を充分に果たし得ない状態を排除するという意味であり、本発明においては、両者が完璧に密着している場合に限るものではなく、多少隙間を形成しつつもタイヤチェーンとしての機能を発揮し得る程度に、タイヤをタイヤチェーンが覆っている状態を言う。
上記の如く本発明の各要件を満足することにより耐久性や制動性能,登坂性能に優れたタイヤチェーンとなるものである。
詳しく説明すると、まず式(1)を満足することにより、良好な制動性能,登坂性能を発揮させる上で、目合いの大きさと使用ストランド繊度の関係が最適となる。つまりS1/2/Wが2以上であれば、氷雪で覆われた路面に対してストランドのくい込み効果が十分に発揮され、良好な制動性能や登坂性能を示すこととなる。逆にS1/2/Wが2未満の場合には、ストランド太さに比べて空隙面積が小さ過ぎることとなり、雪道へのストランドのくい込み効果が十分でなくなる懸念がある。他方、S1/2/Wが15超の場合には、ストランド太さに比べて空隙面積が大き過ぎることとなり、編物製タイヤチェーンのストランド間からタイヤ表面が路面に接する面積が大きくなって、制動性能や登坂性能を損ねることになりかねず、従って上記の如くS1/2/Wを15以下とする。好ましくはS1/2/Wが4以上、10以下であり、より好ましくは5以上、8以下である。
上記目合いの空隙面積(S)としては、タイヤ接地面を覆う部分の編物構造における個々の目合いの空隙面積(S)がそれぞれ上記式(1)を満たす必要がある。たとえ目合いの空隙面積の平均値が式(1)を満足していても、目合いが大き過ぎるものと小さ過ぎるものを合わせた平均であれば、大き過ぎる箇所では上記の如くストランド間からタイヤ表面が路面に接する面積が大きくなって制動性能等を損ね兼ねず、小さ過ぎる箇所では雪道へのストランドのくい込み効果が十分でなくなる懸念がある。これに対して個々の目合いが上記式(1)を満足すれば、いずれの箇所で接地しても良好な制動性能,登坂性能を発揮し得るからである。
尤もタイヤ接地面を覆う部分の全ての面積範囲において、前記式(1)を満足した編物構造である必要はなく、幾つかの目合いにおいて上記式(1)を満足しない箇所があっても、或いは極一部に織物が設けられていても、左程制動性能や登坂性能に影響するものではない。タイヤは車重により偏平して接地するものであり、この接地箇所(タイヤがタイヤチェーンを介して地面と接触する箇所)としてはある程度の大きさがあるので、この接地箇所において上記式(1)を満足した編物構造が含まれていれば、制動性能,登坂性能を発揮し得るからである。具体的にはタイヤ接地面を覆う部分のうち少なくとも面積割合で8割が前記式(1)を満足していれば良く、より好ましくは9割以上である。尚最も好ましくはタイヤ接地面を覆う部分の全てが前記式(1)を満足するものである。
なお上記式(1)のS1/2/Wを算出するにあたっては、算出対象の目合いについてのS(目合いの空隙面積)と、当該目合いを形作るストランドにおけるW(ストランドの幅)を用いることとする。また複数種のストランドにより目合いが形作られている場合には各ストランド幅を平均した値をWとして用いることとする(例えば亀甲形の目合いを形作る6辺におけるストランドが、図4(b)や図6の様に2辺と4辺とで太さが異なる場合に、各ストランド幅Wを平均して式(1)のWとして用いる。また例えば菱形の目合いを形作る4辺におけるストランドが、2辺ずつで太さが異なる場合に、各ストランド幅Wを平均して式(1)のWとして用いる)。
本発明の編物製タイヤチェーンとしては、タイヤ接地面を覆う部分以外の部分も編物で構成されたものも包含するが、上記式(1)はタイヤ接地面を覆う部分(タイヤ接地面上部分)の編物(編物構造)について満足していれば良く、タイヤ接地面を覆う部分以外の例えばタイヤ側面上の部分に編物が配置されたものであっても、このタイヤ側面上部分の編物については上記式(1)を満足する必要はない。制動性能等に関係のない部分だからである。
また本発明においてはタイヤ接地面を覆う部分の全部が編物の1層構造である場合だけでなく、タイヤ接地面を覆う部分の全部または一部が積層構造となったもの、例えば路面側に編物を配置して裏側(反路面側)にゴム製シートを積層したもの等であっても良い。この様な積層部分においても編物が路面側に配置されているものであれば、上述の様に編物のストランドのくい込み効果によって良好な制動性能,登坂性能を発揮する。
ストランド繊度としては、耐久性を考慮すると、5,000〜120,000dtexとすることが好ましい。より好ましくは20,000〜100,000dtexである。更に好ましくは40,000〜80,000dtexである。ストランドがあまりに細いと、走行時の摩耗によって切れ易くなる懸念があり、一方であまりに太いと雪道へのストランドのくい込み効果が十分でなくなる懸念があり、また太すぎると編物製タイヤチェーン全体の重量が重くなって繊維製タイヤチェーンの特徴である軽量化が損なわれて好ましくないからである。
なお菱目の編物においては、網脚部における繊度がストランド繊度に相当する。具体例を挙げて説明すると、例えば1100dtex/24フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸を原料糸としてそれを6本引き揃えたものを、更に6本合わせて下撚りし、この撚糸を2本用いて無結節編み機に仕掛け、撚りながら上撚りしたものは、最終的には網脚部の繊度が1100×6×6×2=79200dtexとなり、これがストランド繊度となる。また無結節亀甲目の編物について具体例を挙げて説明すると、例えば1100dtex/24フィラメントのポリエステルマルチフィラメント糸を原料糸としてそれを6本引き揃えたものを、更に6本合わせて下撚りし、この撚糸を2本用いて無結節編み機に仕掛け、撚りながら上撚りしたものは、最終的な網脚部(亀甲目の4辺を構成)の繊度が1100×6×6×2=79200dtexとなり、長く伸びた節部(亀甲目の2辺を構成)の繊度が1100×6×6×2×2=158400dtexとなり、これらを平均した{(79200×4)+(158400×2)}÷6=105600dtexがストランド繊度となる。
ここで編物製タイヤチェーンと織物製タイヤチェーンを比べると、下記に述べるように氷雪路面上における制動性能,登坂性能で編物製タイヤチェーンの方が優れている。つまり制動性能,登坂性能を考慮すれば上述の様にストランド太さ(ストランド幅W)と空隙面積(S)の関係を最適にする必要があり、これを織物に適用して織物の空隙面積(S’)とストランドの幅(W’)との関係を2≦S’1/2/W’≦15を満足させようとした場合に、織物組織としては空隙が大き過ぎるので目ずれを生じ易く、この為に少し走行しただけで目がずれて非常に目の詰んだ箇所や疎な箇所を生じる。その結果ストランド太さと空隙面積の関係が不良となって(上記式を満足しなくなって)、良好な制動性能,登坂性能を発揮し得なくなる。これに対し本発明の編物製タイヤチェーンの如く編物構造であれば、その構造上目ずれを生じ難く有利である。
尤も織物製タイヤチェーンであっても、織組織に樹脂を付着させて固定すれば目ずれを生じ難くなるが、この場合は該織物製タイヤチェーンが非常に硬いものとなり、折り畳み難くなって収納性を低下させる上、タイヤへの装着時の密着性にも劣るものとなる。この為、繊維製タイヤチェーンの利点を活かせなくなる。
次に本発明においては上記の如く編物(編物構造)の節部における厚みが網脚部における厚みの3倍以下であることが必要である。仮に3倍を超えると、路面走行時に節部が主に路面に接してその部分から摩耗が始まり、該節部が集中的に破損しやすくなって耐久性に劣るものとなるからである。好ましくは2倍以下であり、この様に2倍以下とすることで、節部とこれ以外の箇所(網脚部)との摩耗の程度の差がかなり少なくなり、編物製タイヤチェーン全体の耐久性が向上するからである。より好ましくは1.5倍以下であり、更に好ましくは1.2倍以下である。
尚上記「節部における厚み」,「網脚部における厚み」とは編物厚み方向の厚みである。厚みの測定は、後述する測定方法により行うこととする。
また上記の如くの節部の厚みと網脚部の厚みの関係については、タイヤ接地面を覆う部分(タイヤ接地面上部分)の編物(編物構造)について満足していれば良く、タイヤ接地面を覆う部分以外の例えばタイヤ側面上の部分に編物が配置された編物製タイヤチェーンであっても、このタイヤ側面上部分の編物については上記の厚みの関係を満足する必要はない。路面と接触しない部分だからである。
前記編物(編物構造)としては、節部(交差点部)に結び目のない編物(例えば無結節網、ラッセル網)や、結び目のある編物(例えば蛙股網、本目網)のいずれでも良く、特に限定するものではないが、上記節部(交差点部)に結び目のない編物で構成されたものであることがより好ましい。結び目のない編物であれば、上記の如く節部での厚みを網脚部(非節部)での厚みに比べてあまり厚くならない様にすることが容易にできるからである。
因みに、節部に結び目のある編物の例えば蛙股網の場合では、網脚部より先に節部が地面に接して上述した様に該節部に応力が集中し、その部分から摩耗が始まって破損までの時間が短くなる虞がある。
更に上記節部に結び目のない編物のうちでも無結節網がより好ましい。つまり節部に結び目のない編物の代表例として無結節網とラッセル網が挙げられるが、無結節網がより好ましい。ストランドの耐摩耗性を上げる為にはストランドを構成する繊維同士が収束していることが好ましく、この点において無結節網の方がラッセル網よりも収束性が上がり易いからである。尚無結節網としては、貫通型(図5)、千鳥型、亀甲型等の無結節網が挙げられる。このうちでも殊に亀甲型の無結節網の場合においては、亀甲目を形作る6辺のうちの2辺を車の走行方向と直交する方向(以下、走行直交方向と称することがある)に配置する構成に容易にすることができ(例えばリング状に製編してこのリングがタイヤトレッドに対応する様にする)、斯様に辺(ストランド)が走行直交方向に配置されたものであれば、制動性能や登坂性能に優れたものとなるので好ましい。更に亀甲型の無結節網における節部で構成された2辺は、他の網脚部で構成された4辺に比べて分厚いので、この節部の2辺を走行直交方向に配置すれば(上記の如くリング状に製編すれば、節部の2辺が走行直交方向に配置される構成となる)、氷雪で覆われた路面に対してストランドのくい込み効果が上がるため、制動性能や登坂性能により優れたものとなり、好ましい。
加えて本発明に係る編物製タイヤチェーンにおいては、前記編物構造に使用される主たる原料糸の単糸繊度が、5dtex以上、90dtex未満であることが好ましい。尚上記「主たる原料糸」とは、質量比率で編物製タイヤチェーン本体を構成するストランド全体の50mass%超を占める繊維種のことを言う。換言すると、本発明においては編物製タイヤチェーン本体を構成するストランドにおいて、単糸繊度が5dtex以上、90dtex未満の線維種が50mass%超を占めることが好ましい。
装着タイプであるタイヤチェーンに要求される性能としては、上記の如く氷雪上での制動性能及び登坂性能が挙げられる他、氷雪のない濡れた道路や乾燥路での耐久性に優れることである。この理由は、一般に氷雪上を走行するときには、左程タイヤチェーンに劣化を生じることはないが、氷雪で覆われていない通常路面を走行するときは、摩擦等が大きくなる為にタイヤチェーンに与えるダメージが大きい。氷雪路走行時であっても路面が全て氷雪で覆われているとは限られず、例えばトンネルに入ると通常のアスファルト路面が現れるので、タイヤチェーンに優れた耐久性が要求されるのである。
この点に関し、上記の如くタイヤ接地面上部分(タイヤ接地面を覆う部分)を構成する編物(編物構造)の単糸繊度が5dtex以上であれば、単糸1本当りの強度が良好であるので、濡れた路面や乾燥路であっても路面との摩擦に対しての抵抗性を示して切れ難いから好ましい。この様に単糸の強度の観点からより好ましくは10dtex以上であり、更に好ましくは20dtex以上である。
上記の様に繊維の繊度を太くすると耐久性が向上するものの、あまりに太いもの、即ち単糸繊度が90dtex以上の場合は、繊維が剛直になることから、タイヤチェーン製品としての折畳み性にやや劣るものとなって、収納性が悪くなる虞がある。また単糸繊度が太すぎると、タイヤへの装着状態においてタイヤ表面に対するタイヤチェーンの馴染み性に劣る傾向にあり、走行時に外れ易くなる懸念がある。この様な収納性やタイヤ表面への馴染みの観点から、上記の如く単糸繊度が90dtex未満であることが好ましく、より好ましくは60dtex未満であり、更に好ましくは50dtex未満である。
なお上記単糸繊度は、編物構造を構成しているストランドから解反した糸について求められる値を言う。
ところで、走行中にタイヤチェーンがタイヤから脱落しないことは、基本的要求特性の一つである。編物製タイヤチェーンに限ったことではないが、タイヤが回転したときには、タイヤチェーンはタイヤと一緒に回転して遠心力を受け、膨らもうとする。このとき、タイヤチェーンを固定している固定部材に伸縮性がある場合に、上記遠心力が非常に大きいと、該伸縮性固定部材が伸びて、最悪の場合には脱落に至る懸念がある。
例えば図17〔タイヤ固定部材の課題を説明するためのタイヤチェーンの斜視図〕に示すように、タイヤチェーン着脱操作性を考慮したものとして、タイヤ接地面上部分61に続けてタイヤ内側側面(裏側面)にドーナツ状の内側布63を設け、この内側布63の開口縁部分全周にゴムバンド64を設けたものが考えられる。このものでは、内側布63のゴムバンド64を伸ばして開口68を広げつつ、タイヤに外側(表側)方向から装着する手法をとることができ、着脱が簡便に行える。しかしこのタイヤチェーンの場合は、車の走行時にタイヤの回転による遠心力で、開口68を広げるように(矢印D)ゴムバンド64が伸び、開口縁がタイヤトレッド部に乗り上げ、ついには脱落に至る懸念がある。
上記ゴムバンド64の伸びを防止するため、タイヤにタイヤチェーンを装着した後にワイヤー等の緊縛体を用いて固定する手法が考えられる。しかしながらワイヤーの使用は、繊維製タイヤチェーンの利点である軽量性を損なう虞がある。
そこでこの点に関して発明者らは鋭意検討した結果、次の如く構成とすることで、軽量性を保ちつつ、タイヤ回転による遠心力を受けてもタイヤチェーンの脱落には至り難いものにしうる知見を得た。
即ち、斯様な本発明の好ましい態様における編物製タイヤチェーンは、タイヤ内側側面に対応する内側側面部を有するものであって、この内側側面部がその外周縁部分で前記編物構造(タイヤ接地面を覆う部分)と連続すると共に、中央に開口部が形成されたものであり、また該内側側面部が、前記開口部の周縁に沿って配設される着脱のための開口面積拡張・復元用の第1の紐部材と、該第1の紐部材の少なくとも1点Xから、前記内側側面部の外周縁或いはその近傍の少なくとも1点Yを結び、タイヤの駆動回転時に前記第1の紐部材に作用する遠心力を抑制する第2の紐部材とを備えたものである。換言すると、中央に開口部が形成された内側側面部を有し、該内側側面部は第1の紐部材と第2の紐部材を備え、前記第1の紐部材は上記開口部の周縁に沿って配設され、タイヤへのタイヤチェーンの着脱のために開口面積を拡張・復元可能とするものであり、点Xが前記第1の紐部材の少なくとも1点に設けられ、点Yが前記内側側面部の外周縁或いは外周縁近傍の少なくとも1点に設けられ、前記第2の紐部材は点Xと点Yに繋がる(点Xと点Yを結ぶ)ものであって、この第2の紐部材がタイヤの駆動回転時に前記第1の紐部材に作用する遠心力を抑制するものであることが好ましい。
これによれば、開口部において伸び易い箇所と伸び難い箇所が存在する様になるので、タイヤ回転による遠心力を受けても、前記開口部が円形ではなく非円形に広がり、この非円形な広がりであればその狭い部分がタイヤ側面に引っ掛かって、遠心力でタイヤチェーンが外れる事態に至り難い。
因みに図18〔タイヤチェーンの内側側面部についての参考例を示す側面図〕に示すように、開口部の周縁のうちの半分を弾性糸条66、残りの半分を非弾性糸条67で構成したタイヤチェーンでは、タイヤ回転による遠心力が作用すると、非弾性糸条67は伸びないものの弾性糸条66が伸びることで、開口68はほぼ放射状に広がり、タイヤチェーンが脱落する場合がある。因みにこのタイヤチェーンでは、自動車の時速100kmに相当するタイヤ回転数で、タイヤからタイヤチェーンが脱落することを、実験により確認している(実験での使用車:普通自動車アリオン(トヨタ自動車株式会社製))。
これに対して上述の様に、内側側面部の外周縁或いは外周縁近傍の点Yと、開口部の周縁の第1の紐部材上の点Xとを結ぶ第2の紐部材を設けたものであれば、たとえ遠心力が加わってもタイヤチェーンの脱落に至り難いのである。
更に上記点Yを前記筒状体(編物構造)の端部に位置させ、第2の紐部材がこの編物構造に接続される様にしたものであることがより好ましい。この構成であれば、上記編物構造(筒状体)がタイヤ回転による遠心力で放射状に広がる力を受けたときに、この広がる力が第2の紐部材に直接伝わり、続いてこの力が第1の紐部材に伝わって、該第1の紐部材の拡がりを強く抑えることができるからである。斯様な構成として具体的には、タイヤチェーンの製造にあたり、前記内側側面部をその外周縁部分で前記筒状体(編物構造)の端部と接続(例えば縫着)することとし、この際、第2の紐部材を上記編物構造の端部に直接接続(縫着)するようにしたもの等が挙げられる(接続点が点Yとなる)。
また本発明での内側側面部において、前記第1の紐部材としては、全てを弾性糸条で構成したものであっても良いし、一部を非弾性糸条で構成して残りを弾性糸条で構成したものであっても良い。いずれにせよ、第1の紐部材にあっては、開口部周縁に配置されてタイヤへのタイヤチェーンの着脱のために開口面積を拡張・復元し得るものであることから、少なくともその一部に弾性糸条を備えるものである。
前記第2の紐部材としては弾性糸条、非弾性糸条のいずれであっても良い。内側側面部において、専ら第1の紐部材の全部または一部が伸縮して開口面積を拡張・復元するものであるが、第2の紐部材が弾性糸条で構成されたものであれば、タイヤにタイヤチェーンを着脱する際に、この第2の紐部材も伸ばすことができるので、着脱操作がし易くなる。一方、第2の紐部材が非弾性糸条で構成されたものであれば、開口部の均等拡大を抑制して非円形の開口にする力が大きく、この非円形に膨らむことをコントロールし易くなるので、走行時のタイヤチェーン脱落阻止の観点から好ましい。また第2の紐部材が非弾性糸条で構成されたものであっても、後述の実施形態の如くその配置態様を工夫することで、タイヤへのタイヤチェーン着脱を容易にすることも可能である。
ここで上記非弾性糸条とは、伸びのほとんど見られない織物や紐状体を指し、細幅織物や組紐等が挙げられる。非弾性糸条の素材や構造については特定するものではない。なお伸びがほとんど見られないとは、切断伸度で50%以下、好ましくは30%以下のものを言う。
また上記弾性糸条とは、初期長50mmで100%伸張時(倍の長さにした時)の応力が5N以上であり、200%伸張時に10N以上の応力を発生するものを言うこととする。
弾性糸条としては、天然ゴムや合成ゴムのみで構成された糸条の他、天然ゴムや合成ゴムを芯材としてその外側をポリエステルやレーヨンで組紐状に覆ったコールゴム等が挙げられる。また弾性糸条の形態としては、太い1本の弾性紐、複数本の弾性紐を束ねたもの、或いは弾性繊維を撚糸や組紐状にしたもの(例えばポリウレタン弾性繊維を撚糸したもの)等が挙げられる。なお耐光性を考慮すると、上記の如くゴムを被覆保護した構造のものが好ましい。
上述の様に繊維製タイヤチェーンの装着操作としては開口部を伸ばし広げながらタイヤに取り付ける手法が専ら採用されると考えられ、この開口部の拡張・復元の観点から、上記弾性糸条の引張強力については、実際に使用される繊維製タイヤチェーンの質量によって、その強力を決めることが望ましい。つまり繊維製タイヤチェーンの質量によって、同じ回転速度でタイヤが回転しても遠心力が異なるため、脱落のし易さが違ってくるからである。第1の紐部材に用いる弾性糸条としては、初期長50mmのものの100%伸張時(倍の長さにした時)に5N以上の応力を発生するものが好ましく、より好ましくは10N以上、更に好ましくは15N以上の応力を発生するものである。脱落防止作用の観点からは、より強力なタイプの方が伸び難いので好ましいが、繊維製タイヤチェーンをタイヤに着脱する操作を考慮すると、強力になればなるほど装脱着し難くなることから、100%伸張時の応力が100N以下であることが好ましく、より好ましくは70N以下である。
更に本発明では上記内側側面部において、前記第1の紐部材の一部が非弾性糸条で構成され、この非弾性糸条の一部に前記点Xがあることも好ましい一態様である(なお以下、この構成のものをα1型と称することがある)。
具体的には、例えば図8の(a)〔本発明のタイヤチェーンの内側側面部におけるα1型の態様の一例を示した図〕に示すように、開口部の周縁に沿って弾性糸条製の第1の紐部材部分36と非弾性糸条製の第1の紐部材部分37が配設され、この紐部材部分37の点X(図示例では、第1の紐部材部分37の一方端が点Xとなる)から内側側面部33の外周縁33b近くの点Yを結ぶように非弾性糸条製の第2の紐部材35を配設したものが挙げられる(なお点Xで第1の紐部材部分36と第2の紐部材35が接続される)。
このものの場合は、遠心力で開口68が放射状に広がろうとしても、連接された非弾性糸条製の第2の紐部材35と非弾性糸条製の第1の紐部材部分37が設けられているので、これらの部分(35,37)が点Yを支点に引っ張られるようになり、開口68が放射状に円形には広がらず、タイヤチェーンの内側側面部がタイヤ内側面を覆うように引っ掛かった状態を保つ。従ってタイヤチェーンの脱落が生じ難い。因みに上記非弾性糸条製の第2の紐部材35と上記非弾性糸条製の第1の紐部材部分37は、別体の紐状部材を縫着等により接続して構成しても良いし、或いは1本の紐状部材により構成しても良い。
なおα1型において、非弾性糸条製の第1の紐部材部分37の他方端(点Z)の位置が点Xとあまりにも近いと、タイヤチェーン脱落防止効果に乏しいものとなるので、或る程度離れて位置させたものとするのが良い。具体的には図8の(b)〔点Xと点Zの位置関係を示すための図〕に示すように、タイヤチェーンの筒状体が形成する円筒Fの中心軸Gと前記点Yとを結ぶ線を線H、前記円筒の中心軸と前記点Zとを結ぶ線を線Iとしたときに、線Hと線Iのなす角度(θ1)が90°以上であることが好ましい。
また上記の態様では、前記第1の紐部材の非弾性糸条の部分と前記第2の紐部材とが対応する対が1つのものを示したが、これが複数対あり、それぞれの上記非弾性糸条の一部に前記点Xがあるものであっても良い(なお以下、この構成において3対有するものをα3型と称することがある)。
具体的には、例えば図9〔本発明のタイヤチェーンの内側側面部におけるα3型の態様の一例を示した図〕に示すように、弾性糸条製の第1の紐部材部分46aと非弾性糸条製の第1の紐部材部分47aが配設され、この紐部材部分47aの点X(図示例では、第1の紐部材部分47aの一方端が点Xとなる)から内側側面部43の外周縁43b近くの点Yを結ぶように非弾性糸条製の第2の紐部材45aを配設したものからなる組が3組(45a,47a,46aの組、45b,47b,46bの組、45c,47c,46cの組)、この第1の紐部材が開口部の周縁に沿う様にして約120°ずつずれて配設されたものが挙げられる(なお点Xで第1の紐部材部分47a,47b,47cと第2の紐部材45a,45b,45cがそれぞれ接続される)。
このものの場合も、遠心力で開口68が放射状に広がろうとしても、連接された非弾性糸条製の第2の紐部材45a,45b,45cと非弾性糸条製の第1の紐部材部分47a,47b,47cが設けられているので、これらの部分が点Yを支点に引っ張られるようになり、開口68が放射状に円形には広がらず、タイヤ内側面を覆うように引っ掛かった状態を保つ。従ってタイヤチェーンの脱落が生じ難い。
更に本発明においては、前記第1の紐部材の非弾性糸条の部分と前記第2の紐部材が対応した対を2つ備えたものとしても良い。
加えて本発明では上記内側側面部において、前記点Xにリング状物が備えられ、前記第1の紐部材の一方端が前記リング状物に接続されると共に、前記第1の紐部材の他方端と第2の紐部材が繋がった状態で前記リング状物に挿通されるものであることが好ましい。この態様は上記α1型,α3型の変形態様であり、図8(a)を用いて説明すると、第2の紐部材35と第1の紐部材部分37が繋がった状態の紐状物(これを、紐状物35−37と称することがある)であって、第1の紐部材部分36の点Xの箇所においてリング状物が接続され、このリング状物のリング内を上記紐状物35−37が挿通されたものである。本態様としては、紐状物35−37も弾性糸条で構成(即ち第1,2の紐部材の全てを弾性糸条で構成)しても良い。
また本発明では上記内側側面部において、前記第1の紐部材が弾性糸条と非弾性糸条で構成され、この弾性糸条の2点に前記点Xが存在し、この各点Xから各1本の前記第2の紐部材が互いにクロスする方向で存在する様に連結されているものであることが好ましい(なお以下、この構成のものをQ型と称することがある)。
具体的には、例えば図10の(a)〔本発明のタイヤチェーンの内側側面部におけるQ型の態様の一例を示した図〕に示すように、開口部の周縁に沿って弾性糸条製の第1の紐部材部分56と非弾性糸条製の第1の紐部材部分57が配設され、弾性糸条製の第1の紐部材部分56に2つの点Xが存在し、また内側側面部53の外周縁53b近くに2つの点Yが存在し、この点Xと点Yをそれぞれ結ぶ非弾性糸条製の第2の紐部材54,55が配設されたものであって(なお点Xで第1の紐部材部分56と第2の紐部材54,55がそれぞれ接続される)、且つこの2本の第2の紐部材54,55が交叉して配置されたものが挙げられる。また図10の(b)〔本発明のタイヤチェーンの内側側面部におけるQ型態様の他の例を示した図〕に示すように、上記非弾性糸条製の第2の紐部材54,55に換えて弾性糸条製の第2の紐部材58,59が配設されたものが挙げられる。
これらQ型のタイヤチェーンの場合も、遠心力で開口68が放射状に広がろうとしても、非弾性糸条製の第1の紐部材部分57及び第2の紐部材54,55(図10の(a))、或いは非弾性糸条製の第1の紐部材部分57及び第2の紐部材58,59(図10の(b))が設けられているので、第1の紐部材部分57が伸びず且つ第2の紐部材54,55,58,59において点Yを支点に引っ張られるようになることから、開口68が放射状に円形には広がらず、タイヤ内側面を覆うように引っ掛かった状態を保つ。従ってタイヤチェーンの脱落が生じ難い。
なおクロスに配置された第2の紐部材のそれぞれの点Xと点Yの位置としては、これらの点X−点Yがあまりにも近いとタイヤチェーン脱落防止効果に乏しいものとなるので、或る程度離れて位置させたものとするのが良い。具体的には図10の(c)〔点Xと点Yの位置関係を示すための図〕に示すように、タイヤチェーンの筒状体が形成する円筒Fの中心軸Gと前記点Yとを結ぶ線を線H、前記円筒の中心軸と前記点Xとを結ぶ線を線Jとしたときに、線Hと線Jのなす角度(θ2)が45°以上であることが好ましい。
また2つの点X同士の位置としては、これらの点X−点Xがあまりにも近いとタイヤチェーン脱落防止効果に乏しいものとなるので、或る程度離れて位置させたものとするのが良い。具体的には図10の(d)〔2つの点Xの位置関係を示すための図〕に示すように、タイヤチェーンの筒状体が形成する円筒Fの中心軸Gと一方の点Xとを結ぶ線を線R1、前記円筒の中心軸と他方の点Xとを結ぶ線を線R2としたときに、線R1と線R2のなす角度(θ3)が45°以上であることが好ましい。
加えて本発明では上記内側側面部において、前記第1の紐部材が全て弾性糸条で構成され、この第1の紐部材の4点に前記点Xが存在し、2組の隣り合った2つの上記点Xから、各1本の前記第2の紐部材が互いにクロスする方向で存在する様にそれぞれ連結されているものであることが好ましい(なお以下、この構成のものをXO型と称することがある)。
具体的には、例えば図11の(a)〔本発明のタイヤチェーンの内側側面部におけるXO型の態様の一例を示した図〕に示すように、開口部の全周縁に沿って弾性糸条製の第1の紐部材76が配設され、この第1の紐部材76に4つの点Xが存在し、また内側側面部73の外周縁73b近くに4つの点Yが存在するものとする。そして隣り合った2つの点X、点Yが組となり、それぞれの組において、点Xと点Yをそれぞれ結ぶ非弾性糸条製の第2の紐部材74a,75a(74b,75b)が交叉して配置されたものが挙げられる。この2本クロス配置された第2の紐部材の組同士の位置関係としては、図11の(a)の如く対向した位置(180°の位置)の他、図11の(b)〔本発明のタイヤチェーンの内側側面部におけるXO型態様の他の例を示した図〕の如く120°(240°)の位置(2本クロス配置された第2の紐部材74c,75cの組と、2本クロス配置された第2の紐部材74d,75dの組とが120°の位置となっている)や150°(210°)の位置等であっても良く、様々な位置関係にすることができる。この組同士の好ましい位置関係としては90°〜270°である。
更に図11の(c)〔本発明のタイヤチェーンの内側側面部におけるXO型態様の更に他の例を示した図〕に示すように、上記非弾性糸条製の第2の紐部材74a,75a,74b,75bに換えて弾性糸条製の第2の紐部材78,79を用いても良い。またこの2本クロス配置された弾性糸条製の第2の紐部材78,79の組同士の配置としても、180°の位置に限らず、120°(240°)の位置等であっても良い。90°〜270°の位置関係であることが好ましい。
これらXO型のタイヤチェーンの場合も、遠心力で開口68が放射状に広がろうとしても、クロス配置された第2の紐部材が設けられているので、この第2の紐部材が点Yを支点に引っ張られるようになることから、開口68が放射状に円形には広がらず、タイヤチェーンの内側側面部がタイヤ内側面を覆うように引っ掛かった状態を保つ。従ってタイヤチェーンの脱落が生じ難い。
なおXO型においてもクロス配置された第2の紐部材のそれぞれの点Xと点Yの位置として、これらがあまりにも近いとタイヤチェーン脱落防止効果に乏しいものとなるので、或る程度離れて位置させたものとするのが良い。具体的には図10の(c)に示すように、タイヤチェーンの筒状体が形成する円筒Fの中心軸Gと前記点Yとを結ぶ線を線H、前記円筒の中心軸と前記点Xとを結ぶ線を線Jとしたときに、線Hと線Jのなす角度(θ2)が45°以上であることが好ましい。
またクロスを形作る組となっている2本の第2紐部材におけるそれぞれの点X同士の位置としては、これら点X−点Xがあまりにも近いとタイヤチェーン脱落防止効果に乏しいものとなるので、或る程度離れて位置させたものとするのが良い。具体的には図10の(d)〔2つの点Xの位置関係を示すための図〕に示すように、タイヤチェーンの筒状体が形成する円筒Fの中心軸Gと一方の点Xとを結ぶ線を線R1、前記円筒の中心軸と他方の点Xとを結ぶ線を線R2としたときに、線R1と線R2のなす角度(θ3)が45°以上であることが好ましい。
また本発明においては、タイヤ内側側面に対応する内側側面部を有するものであって、この内側側面部がその外周縁部分で前記筒状体(タイヤ接地面を覆う部分)と連続すると共に、中央に開口部が形成されたものであり、該内側側面部が、弾性糸条のみで構成された、もしくは弾性糸条と非弾性糸条が連接して構成された紐部材を、2本以上備え、これらの紐部材が、U字状で(以下、この紐部材をU字状紐部材と称することがある)、且つ少なくとも90°交叉するように配置されて、その曲面部が前記開口部の周縁に位置し、該各紐部材の両端が前記内側側面部の外周縁或いはその近傍に接続(以下、この接続箇所を点Lと称することがある)されたものであることが好ましい(なお以下、この構成のものをU型と称することがある)。
具体的には例えば図12の(a)〔本発明のタイヤチェーンの内側側面部におけるU型の態様の一例を示した図〕に示すように、弾性糸条部84cを介して2本の非弾性糸条部84a,84bが連接されたU字状紐部材84と、弾性糸条部85cを介して2本の非弾性糸条部85a,85bが連接されたU字状紐部材85とを備え、これらU字状紐部材84,85が90°以上(図12(a)の例では180°)の位置となって交叉して配置される。そしてU字状紐部材84,85の曲面部である弾性糸条部84c,85cの部分が開口部の周縁に位置し、U字状紐部材84,85のそれぞれ両端が内側側面部の外周縁或いはその近傍に接続(点L)されたものである。
更に図12の(b)〔本発明のタイヤチェーンの内側側面部におけるU型態様の他の例を示した図〕に示すように、U字状紐部材88,89として、弾性糸条のみで構成された紐部材を用いても良い。つまり、U字状の弾性糸条2本(U字状紐部材88,89)を対向させるように逆向きに配置し、これらが形成する円形部分が開口周縁部に位置するようにしたものであっても良い。
なお上記「少なくとも90°交叉するように配置され」るとは、図12(a)を用いて説明すると、U字状紐部材84自身の縦方向中心線V1とU字状紐部材85自身の縦方向中心線V2との線のなす角度(θ4)が90°以上であるという意味である。尚図示例では中心線V1,V2のいずれもタイヤチェーンの筒状体が形成する円筒Fの中心軸Gを通る。
図12(a),(b)の例では角度θ4が180°のものを示したが、これに限らず、120°(240°)の位置等であっても良い(例えば図12の(c)参照)。
本発明に係る編物製タイヤチェーンは、繊維製であることによる利点、即ち軽量で、コンパクトに折り畳めて収納性に優れることに加えて、冬季氷雪路面を走行する際の制動性能や登坂性能に優れ、また良好な耐久性を示すという効果がある。
<実施形態1,2>
図1,2は本発明の実施形態1に係る編物製タイヤチェーン10をタイヤ60に装着した様子を表す斜視図であり、図1はタイヤ60の表側から見た図で、図2はタイヤ60の裏側から見た図である。
上記編物製タイヤチェーン10は、タイヤ接地面上に対応してリング状(筒状)に形成された編物部11(タイヤチェーン本体)(図3:実施形態1の編物製タイヤチェーン10における編物部11を示す概略図)に、タイヤ表側(外側)側面に対応した外側布12と、タイヤ裏側(内側)側面に対応した内側布(内側側面部)13とを取り付けた構成である。編物部11(タイヤチェーン本体)は無結節網(菱目)で構成されている。この編物部11の製編にあたって編機としては無結節編網機を使用すると良い。
内側布13は、長方形に切り出した布の一方の長辺(内周端部分13aに対応)を収縮させ、他方の長辺を上記リング状編物部11の一方端に縫い付けると共に、短辺同士を縫い合わせることによって、外観がドーナツ状を呈する様になったものである。上記内周端部分(開口部周縁)13aにはゴムバンド等の弾性部材(図示せず)が設けられており、開口68の大きさを拡張・復元できるようになっている。編物製タイヤチェーン10をタイヤ60に装着するにあたっては、上記弾性部材を伸ばして内周端部分13aを伸ばし広げ、タイヤ60に滑り込ませ、次いで該弾性部材の収縮力によりタイヤ60へ固定されることとなる。外側布12及び内側布13としては編物、織物、不織布のいずれであっても良い。
図15は本発明の実施形態2に係る編物製タイヤチェーン20をタイヤ60に装着した様子を表す斜視図であり、タイヤ60の周面をやや表側から見た図である。
この実施形態2のタイヤチェーン20は、上記実施形態1における無結節菱目の編物部11に換えて、無結節亀甲目の編物部26を用いたものであり、他の構成は実施形態1と同じである。この無結節亀甲目の編物部26の製編にあたって、編機として無結節編網機を使用すると良い。
尚上記実施形態1,2では、タイヤ表・裏側側面の外側布12,内側布13として、接地面(タイヤトレッド)上の編物部11,26とは別の布を配したものを示したが、これに限るものではなく、例えば接地面上の編物部11,26と同じ編構成の編物により編物製タイヤチェーン全体を構成しても良い。
上記実施形態1,2において編物部11,26はタイヤ接地面上の部分(タイヤ接地面を覆う部分)に対応した接地面上編物部11a,26aと、タイヤ表側面の外周付近に対応した側面編物部11b,26bとからなる。尤もこれら接地面上編物部11a,26aと側面編物部11b,26bは明確に区別されるものではなく、製造に際して編物部11,26を製編するときに、タイヤ接地面上の部分を覆い尽くせる様に余裕を持ってやや広めに製編することにより、側面編物部11b,26bが形作られるのである。尚、図示例ではタイヤ裏側面の外周付近には編物部がないが、上記と同様に該タイヤ裏側面外周付近に対応した側面編物部が形成されたものであっても良い。
編物部11,26はタイヤ60に装着した状態において、その接地面上編物部11a,26aの目合いの空隙面積(S)と、該編物のストランドの幅(W)との関係が下記式(1)を満足する。
2≦S1/2/W≦15 …(1)
また接地面上編物部11a,26aの節部における厚みが、該編物の網脚部における厚みの3倍以下である。
編物部11,26のストランド(菱目の編物部11では網脚部16、亀甲目の編物部26では網脚部16及び長く伸びた節部)の繊度は、5,000〜120,000dtexであることが好ましく、良好な耐久性を発揮する。より好ましくは20,000〜100,000dtexで、更に好ましくは40,000〜80,000dtexである。
使用するストランド繊度によって、目合いの大きさ(1辺の長さ、図4に示すC1,C2)が同じであっても目合いの空隙面積(S)が変わる。軽量化やコンパクト化に優れたものとするには、ストランド繊度を小さくし、目合いを大きくすることが好ましいが、制動性の観点では不利になる。また制動性を向上させる為にはストランドの路面での接地面積を大きくしつつ、一方では車両自重による雪上へのストランドのくい込み効果を最適にするための適正なストランド繊度と目合いの大きさが存在する。この点に関し、上記式(1)を満足することにより、良好な制動性能、登坂性能が発揮され得る。
因みに目合いの大きさは、編物製タイヤチェーンをタイヤに装着した状態における目合いでの1辺の長さで評価することができ、目合い1辺の長さとはストランド幅中心線から中心線までの長さを言う(例えば図4に示すC1,C2,C3)。
目合い1辺長(図4に示すC1,C2,C3)は、付着した氷雪の剥がれ易さの観点から、5mm以上とするのが好ましく、より好ましくは15mm以上である。目合いを構成する網脚部16の長さとしては、目合いを構成する各箇所の網脚部16の長さが同じ(例えば図4のC1,C2,C3が同じ)でも良く、或いは異なって(例えば図4のC1,C2,C3が異なる)いても良い。また目の形は正方形(菱目形)、長方形の他、亀甲形のように節部15が長く伸びた形でも良く、特に限定するものではない。
編物部11,26のストランドを構成する原料糸は、撚糸や加工糸であっても良い。またマルチフィラメント、モノフィラメントのいずれであっても構わないが、編加工のし易さや糸強度の観点からマルチフィラメントが好ましい。またマルチフィラメントの場合において、その断面形状としては丸断面、扁平断面、三角断面等、いずれであっても良く、限定されるものではない。
またこの主たる原料糸の繊維の種類については特に限定されないが、例えば、ポリアミド繊維やポリエステル繊維が挙げられる。これらの繊維は、汎用して使用されていることから経済的であるので好ましい。また主たる原料糸とはストランド全体の50mass%以上を占めるものを言うが、例えばポリエステル繊維100mass%や、ポリアミド繊維100mass%で編物部11を構成しても良い。
主たる原料糸の強度としては、走行時の耐摩耗性を考慮すると、解反糸強度で4cN/dtex以上が好ましく、より好ましくは5cN/dtex以上である。尚上記「解反糸強度」とは、編物を構成しているストランドをほぐし、ゴムや樹脂が付着している場合には、原料糸に付着しているゴムや樹脂を除去した後に測定した糸の強度を意味する。
上記ストランドを構成する原料糸のうちの上記主たる原料糸以外の糸として、高強力繊維を使用しても良い。この様にストランドを構成する一部に高強力繊維を使用すれば、ストランド全体の耐摩耗性を向上させることができるので、好ましい一態様である。具体的には、例えばポリエステル繊維が主体の編物製タイヤチェーンの場合、乾燥路であまりに長時間走行すると、ポリエステル繊維自体が磨耗してフィラメント切れを起こし、毛羽立ちを生じ、最終的に穴が開き、その部分が拡大する懸念がある。タイヤチェーンを使用するにあたっての一般的な使用頻度,使用状態を考慮すると、急速な穴拡大は考え難いが、極端な使用を行うドライバーを仮に想定すると、耐摩耗性を向上させる観点から高強力繊維を含有させることがより好ましい。高強力繊維を含有したものであると、上記の如くの破壊に至る過程で、高強力繊維がポリエステル繊維を包み込み、編物製タイヤチェーン全体の耐摩耗性を有効に向上させ得る。
高強力繊維の使用量(含有量)としては、編物部11のストランド全体の2mass%以上、50mass%未満含有していることが好ましい。より好ましくは10mass%以上40mass%未満、更に好ましくは20mass%以上30mass%未満である。高強力繊維の使用量があまりにも少ないと、上述の高強力繊維による耐摩耗性の効果を活かし難く、一方あまりに多いと、耐摩耗性は向上するものの、製品コストが上がり経済的に好ましくないからである。
上記高強力繊維の繊維種としては高強力ポリエチレン繊維、高強力アラミド繊維等が挙げられるが、タイヤチェーンは専ら屋外で使用され、雪による照り返しも大きいことから、耐候性(耐光性)に優れる高強力ポリエチレン繊維がより好ましい。また高強力ポリエチレン繊維は比重がポリエステル繊維やポリアミド繊維に比べ小さい為、軽量化にも有効に働く。尤も高強力ポリエチレン繊維は比較的熱に弱いので、乾燥路を長時間走行した場合にはタイヤチェーンの温度が非常に上昇することが考えられる為、タイヤチェーンとしての耐久性が懸念される。従ってこの観点からも主たる原料糸としては上記の如くポリエステル繊維等が好ましく、このポリエステル繊維を補助する様に従たる原料糸として高強力ポリエチレン繊維を含有させるのが良い。
高強力繊維の繊度としては100dtex以上が好ましい。100dtex未満の場合には、適度な繊度とするために合糸回数が多くなり、経済的に好ましくない。また高強力繊維の単糸はポリアミド繊維やポリエステル繊維とは異なり、細い場合が多く、細いが故に強力に劣ると懸念されるむきもあるが、高強力繊維にあってはたとえ細くても単糸繊維の強力が十分大きく、またストランド全体に占める割合が小さいため、特に単糸繊度には拘らなくても良い。
ところで前述の如く単糸繊度、解反糸強度を有する糸で構成されるストランドを得るに当たっては、原料糸として、単糸繊度、強度が解反糸と同じ範囲内にある糸を用いるのが好ましい。
また、ストランドを構成する繊維に撚りを掛けることが望ましく、撚りを掛けることによってストランドの耐摩耗性が向上するからである。撚りを掛ける際の撚係数kは使用する繊度によらず適切な範囲内に収めるのが良い。使用する撚糸としてはS撚或いはZ撚の片撚品を使用しても良いが、撚方向を逆にした下撚,上撚で構成しても良く、下撚,上撚を逆の撚で構成した撚糸の場合はストランドの直線性が良好であり、引張方向での強度低下を抑えられるという観点から好ましい。尚、撚方向が逆とは、下撚がZ撚のときは上撚をS撚、下撚がS撚のときは上撚をZ撚とした撚糸である。
この場合において、各下,上撚の撚係数kはともに30以上、600未満にすることが好ましい。ここで、kの値は下記式(2)より求める。
k=[1cm当りの撚数(回/cm)]×[繊度(dtex)]1/2 …(2)
尚kの値が30未満の場合には、繊維の収束性が十分でないことから、ストランドを構成する繊維が路面、特に乾燥路と接触するときに、繊維が集合体としてその摩擦に耐えられないために繊維が切れ易く耐久性に乏しくなる虞がある。一方、kが600以上になる場合には、撚角度が大きくなり過ぎてストランドに直線性が無くなり、これによってタイヤ装着時にチェーンがタイヤ表面形状に密着し辛くなり、この為、走行時に部分的に応力集中して破れが発生し易くなったり、外れ易くなったりする懸念があるので好ましくない。kの値としてより好ましくは50以上、400未満であり、更に好ましくは100以上、300未満である。
路面に接触する編物はタイヤにも接するため、乗り心地の点からは繋ぎがない方が好ましい。そのために、例えば図3に示す様に、筒状になるよう製品を編み、輪切りにして編物製タイヤチェーンを作製することが好ましい一形態である。尚図7(本発明の他の実施形態における編物製タイヤチェーンでの編物部を示す概略図)に示す様に、平らに編んだ編物21を筒状に繋いだもの(タイヤチェーン本体25)であっても良い。尚図7中、22は当て布、23は縫製糸である。
なお本発明の編物製タイヤチェーンには、耐摩耗性の向上や、ネット切断防止の目止め効果の目的で、樹脂、ゴム等の処理を施しても良い。この樹脂,ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ネオプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、シリコーンゴム、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーなどが挙げられる。樹脂、ゴムの付着量としては編物本体重量に対し、100mass%未満とすることが好ましい。100mass%以上になると重量が大きく、剛直になり、軽量コンパクト化の観点より好ましくないからである。より好ましくは70mass%以下、更に好ましくは50mass%以下である。
<実施形態3>
図13は本発明の実施形態3に係る編物製タイヤチェーン30をタイヤ60に装着した様子を表す斜視図であり、タイヤ60の裏側から見た図である。なお図2,8と同一の符号を付した箇所は、図2,8の例と同じ構成部分である。
本実施形態3の内側側面部33はα1型のリング状物付きの態様である。第2の紐部材35と第1の紐部材部分37とは、一体となった非弾性の紐(例えばポリエチレン製紐)(以下これを、非弾性紐35−37と称することがある)であり、このうちの第1の紐部材部分37の他方端と第1の紐部材部分36(例えば天然ゴムを芯にしてポリエステルで組紐状に覆ったもの)の一方端が縫着され(点Z)、繋がっている。また第1の紐部材部分36の他方端には合成樹脂製リング(リング状物)38が取り付けられており、このリング38に上記非弾性紐35−37が挿通された状態となっている。なおリング38の位置が点Xとなる。
第2の紐部材35の一方端(第1の紐部材部分37に連なっていない方)は、内側側面部33における内側布39及び編物部11に、縫着により留められている。この縫着位置(点Y)は内側布39の外周縁部分であり、かつ編物部11の端部位置である。
なお内側布39により開孔周縁にチューブ状空間を形成し、このチューブ状空間に第1の紐部材部分37,第1の紐部材部分36を挿通して形成する。
本実施形態3のタイヤチェーンにおいて、遠心力で開口68が放射状に広がろうとしても、非弾性紐35−37が点Yを支点に引っ張られるようになり、開口68が放射状に円形には広がらず、タイヤチェーン30の内側側面部33がタイヤ60内側面を覆うようにして引っ掛かった状態を保つ。従ってタイヤチェーン30の脱落が生じ難い。
また上記リング38を内側布39に固定した方が、編物部(編物構造)11がタイヤ回転による遠心力で放射状に広がる力を受けた際に、この広がる力を第2,第1の紐部材に伝えるときの伝達効率を良くすることから好ましい。
なお上記リング38としては、上記合成樹脂製のものに限らず、細幅織物や組紐等であっても良く、これを輪状にして用いると良い。
尚上記実施形態1〜3においてタイヤチェーンの外側側面部として、タイヤ外側面の全面を覆う布帛で構成したものを示したが、これに限るものではなく、タイヤチェーンの質量を過度に高くするものでなければ、いずれの構成であっても良い。例えば中央に開口を有するもの等であっても良い。或いはタイヤチェーンの外側側面部を複数の非弾性の紐で構成して、これがタイヤ外面の外周に対角に配置する様にしたものであっても良い。
以下、例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
先ず下記実験例における各種測定法について説明する。
繊度:
JIS L1013(1999)8.3.1 A法で行った。
糸強度:
JIS L1013(1999) 8.5.1で行った。
撚り数:
JIS L1013(1999)8.13.1で行った。
厚み:
JIS L1096(1999)8.5.1に準拠して測定した。ここで言う厚みとは、測定対象のタイヤチェーンを車両用タイヤに装着した状態での厚み方向を言い、タイヤチェーンを平面上に静置し、このタイヤチェーンにおけるストランドの節部(交差点部)及び網脚部(非交差点部)をそれぞれ3箇所切り出し、初荷重23.5kPa下で10秒間放置し、そのときの厚みを測定した。この厚み測定を上記3箇所でそれぞれ3回ずつ行い、その平均値(3箇所×3回=9個の測定値を平均した値)を厚みとした。
空隙面積(S):
編物製タイヤチェーンを車両タイヤに取り付け(この際、タイヤチェーンとタイヤ接地面との間に隙間がないように取り付ける)、このときのストランドの内側で取り囲まれる面積(図4にPで示す面積(ドットで表した部分))をいう。また織物製タイヤチェーンの場合は、該織物製タイヤチェーンを車両タイヤに取り付け(この際、タイヤチェーンとタイヤ接地面との間に隙間がないように取り付ける)、このときの糸で囲まれる面積を言う。
ストランド幅(W):
編物製タイヤチェーンや織物製タイヤチェーンを、上記と同様に車両タイヤに隙間がないように取り付け、このときのタイヤチェーンのストランド幅をノギスで測定した時の幅(図4にWで示す幅)を言う。但しストランドが、図5[ストランド幅(W)の測定箇所を説明する為の図]で示す如く太い箇所と細い箇所を有する場合には、太い箇所をノギスで測定した。この様にして3箇所測定してその平均値をストランド幅とした。
また亀甲目のようにストランド幅が同一目の中で異なるものがある場合には、全辺で幅を測定し、その平均値を算出し、これを3箇所の目で行い、この3箇所の平均値をストランド幅(W)とする。
S1/2/Wの算出:
編物における各目合いが基本的に均一なもの(同形状の目合いを1種類のストランドにより形成する様に製編したもの、また目合いの空隙面積Sとストランド幅W(なお例えば亀甲目の場合は全辺の平均)が各目において基本的に均一なもの)にあっては、任意の3箇所を選択して算出し、この平均値をS1/2/Wの値とした。因みに本発明においては個々の目合いの空隙面積(S)がそれぞれ上記式(1)を満たす必要があるが、編み目が基本的に均一な編物においては、任意の3箇所を代表として算出すれば、各目合いの値が反映されるから、上記の通りの測定法とした。
また各目合いが基本的に均一でないもの、例えば大小異なる大きさの目合いで構成されたものや、各目合いによって目の辺を形作るストランドの太さが違うものの場合は、個々の目合いについてそれぞれS1/2/Wを算出することとする。尚そのときのストランド幅Wの値としては、当該算出対象の目合いを形作るストランドにおけるストランド幅Wを用いる。
制動性能評価:
前輪駆動方式の普通自動車アリオン(トヨタ自動車株式会社製)を使用し、この4輪全部のタイヤとして185/70−14インチの夏タイヤ(株式会社ブリヂストン製 B391)を履き、評価用繊維製タイヤチェーン(下記実験例1〜14のタイヤチェーン)を前輪(駆動輪)2本に取り付けた。前席に大人2名(それぞれ体重70kg)が乗車し、天候晴れ、気温−3℃の環境下にて、長野県大町市大町温泉郷周辺の圧雪路面上を40km/時の定速にて走行し、この走行中に急ブレーキをかけた時に車が停止するまでの距離を測定した。この測定を3回繰り返しその平均値を制動性能評価の値として採用した。
登坂性能評価:
前輪駆動方式の普通自動車アリオン(トヨタ自動車株式会社製)を使用し、この4輪全部のタイヤとして185/70−14インチの夏タイヤ(株式会社ブリヂストン製 B391)を履き、評価用繊維製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本に取り付けた。前席に大人2名(それぞれ体重70kg)が乗車し、天候晴れ、気温−2℃の環境下にて、長野県大町市青木湖畔道路の圧雪路面上で、停止状態から斜度4度、距離30mの登坂を移動する時に要する時間を測定した。この測定を3回繰り返しその平均値を登坂性能評価の値として採用した。
耐久性能評価:
前輪駆動方式の普通自動車アリオン(トヨタ自動車株式会社製)を使用し、この4輪全部のタイヤとして185/70−14インチの夏タイヤ(株式会社ブリヂストン製 B391)を履き、評価用繊維製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本に取り付けた。前席に大人2名(それぞれ体重70kg)が乗車し、天候晴れ、気温6℃の環境下にて、静岡県引佐町引佐湖湖畔道路の1周約13kmの周回コースの乾燥路面上を、40〜50km/時にて走行し、穴が開き始めるまでの距離を測定した。この測定を3回繰り返しその平均値を耐久性能評価の値として採用した。尚ここで言う「穴」とは、編物製タイヤチェーン(実験例1〜12,14)の場合はストランド交差点で破れが生じ、編組織が壊れたときにできる穴を言い、織物製タイヤチェーン(実験例13)の場合は織組織が壊れ始めたときにできる穴を言う。
脱落防止性能評価:
第1の試験としては、上記耐久性試験実施時に、評価用繊維製タイヤチェーン内側布部がタイヤトレッド面に乗る、あるいはタイヤから脱落するか否かを目視観察により評価した。耐久性試験終了時までにタイヤチェーンが全くタイヤトレッドに乗ることがなかった場合に○、一度でもトレッドに乗った場合には△、脱落が一度でも発生した場合には×と評価した。
第2の試験としては、まず普通自動車アリオン(トヨタ自動車株式会社製)を使用し、このタイヤとして185/70−14インチの夏タイヤ(株式会社ブリヂストン製 B391)を履き、評価用繊維製タイヤチェーンを駆動輪(前輪)2本に取り付け、ジャッキで駆動輪を地面から浮かせた状態に固定した。次いでエンジンをかけて駆動輪を回転させ、徐々にスピードを上げてタイヤチェーンがトレッドに乗り始めたタイヤ回転数により評価した。タイヤの回転数が900rpmを示したとき(即ち約100km/hr.相当のとき)タイヤチェーンが全くタイヤトレッドに乗ることがなかった場合に○、タイヤチェーンがトレッドに乗った場合には△、タイヤチェーンが脱落した場合には×と評価した。
<実験例1>
強度6.1cN/dtexの1100dtex/24fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプ534)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントを使用して、6本引き揃えた6600dtexの合糸を更に6本合わせてZ(Z撚)100回/mで下撚した。この39,600dtex撚糸2本を使用して無結節編網機で上撚でS(S撚)100回/mになるように製網し、目合いの1辺長が25.6mmの結節形態が無結節菱目の網地を得た。ストランド繊度は79,200dtexであった。
この網地を7目分で編み方向(図7での矢印M方向)でカットし(網地長さ22cmとなる)、網地の耳同士を縫製して、周長が180cmの筒状となるようにした。この際、縫製部にはポリエステル1100dtex使いの平織物(織密度 タテ、ヨコ方向とも28本/2.54cm)10cm×44cm(当て布22)を用いて上記網地の突き合わせ箇所の表裏を当て布し、縫製した(図7、タイヤチェーン本体25)。更に、このタイヤチェーン本体(筒状に縫製した網地)におけるタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。またタイヤ内側に使用する内側布として幅6cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を使用し、この内側布の一方の長辺を、上記タイヤチェーン本体におけるタイヤ内側に縫製した。次いで自然状態(伸張させない状態)で幅2cm、長さ90cmのゴムバンドを用い、このゴムバンドを伸張状態で上記内側布の他方の長辺(内周端部分13a)に沿って縫い付けた(図14:編物製タイヤチェーン本体とタイヤ外側布,内側布,ゴムバンドを縫製して組み付ける様子を説明する部分図(この図示例ではタイヤ幅方向に7目分切り取ったものである))。尚上記ゴムバンドについて、初期長50mmの100%伸張時の応力は14Nである。また上記構成により内側布(内側布13)は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈することとなる。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例1の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の94.4%(面積比)が編物となったものである。
その後、この実験例1の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/70−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表1に示す。また実験例1の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例2>
強度6.1cN/dtexの1100dtex/24fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプ534)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントを使用して、6本引き揃えた6600dtexの合糸を更に6本合わせてZ(Z撚)100回/mで下撚した。この39,600dtex撚糸2本を使用して無結節編網機で上撚でS(S撚)100回/mになるように製網し、目合いの1辺長が25.6mmの結節形態が無結節菱目の網地を得た。ストランド繊度は79,200dtexであった。
この網地を7目分で編み方向でカットし(網地長さ22cmとなる)、網地の耳同士を縫製して、周長が180cmの筒状となるようにした。この際、縫製部にはポリエステル1100dtex使いの平織物(織密度 タテ、ヨコ方向とも28本/2.54cm)10cm×44cm(当て布22)を用いて上記網地の突き合わせ箇所の表裏を当て布し、縫製した(図7、タイヤチェーン本体25)。
更に、このタイヤチェーン本体(筒状に縫製した網地)におけるタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。
また図11の(c)に示す如くのXO型の内側側面部を作製するべく、次の様に行った。つまりまずタイヤ内側に使用する内側布として幅12cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を用い、これを幅方向で半分に折り、一方の長辺が開口した袋状にした。自然状態で幅2cm、長さ103cmのゴムバンド(このゴムバンドは初期長50mmの100%伸張時の応力が14Nである)を準備し、このゴムバンドの一方端と他方端を3cm重ねて縫着し、円周100cmの輪状のゴムバンド(第1の紐部材76)とした。この輪状のゴムバンド(第1の紐部材76)に40cm離して2つの点Xの印を付けると共に、この2つの点Xと対向する位置(ゴムバンドを円形にしたときに対向する位置(180°の位置))に、同じく40cm離して2つの点Xの印を付けた。次いでこの輪状のゴムバンド(第1の紐部材76)を上記内側布の袋の中に入れた。他方、上記と同種のゴムバンド、70cmを4本準備し(第2の紐部材78,79)、この一方端をそれぞれ上記点Xに縫い付けた。そしてこの70cmのゴムバンド(第2の紐部材78,79)を2本一組としてクロスさせ、このゴムバンドを自然状態(伸張させない状態)で且つだぶつかない様にしつつ内側側面部外周縁73bに向かわせ、他方端をそれぞれタイヤチェーン本体の側縁部に縫着した(点Y)。次いで、上記袋状にした内側布の開口側長辺を、タイヤチェーン本体の側縁部の全周にわたって縫着した(図16〔編物製タイヤチェーン本体とタイヤ外側布,内側側面部(内側布,ゴムバンド+細幅織物)の組み付け方を説明する部分図〕の(a),(b))。尚こうして得られた内側側面部は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈し、XO型(180°タイプ)のゴムバンドを備えたものとなる(図16(c))。なお図16における内側側面部は、ゴムバンド+細幅織物で構成されたXO型(180°タイプ)のものであるが、この細幅織物の部分をゴムバンドに換えたものが実験例2の内側側面部に相当する。また図16(c)においてゴムバンド+細幅織物を実線で表しているが、実際には内側布の中に入っているため、外部からは見えない。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例2の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の94.4%(面積比)が編物となったものである。
その後、この実験例2の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/70−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表1に示す。またこの実験例2の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例3>
強度9.3cN/dtexの1100dtex/190fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプH02)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントと、強度29.0cN/dtexの1760dtex/1560f−SK60の高強力ポリエチレンマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 ダイニーマ(登録商標))を使用して、次の如く片糸Aと片糸Bを作製した。つまり片糸Aとしては、ポリエステル4本合糸を更に6本合わせたものと、ポリエステル:ダイニーマ=2:1の3本合糸を更に2本合わせたものとを使用し、これらをZ(Z撚)120回/mで下撚して得た(34320dtex)。片糸Bとしては、ポリエステル4本合糸を更に7本合わせたものと、ポリエステル:ダイニーマ=2:1の3本合糸を1本とを使用し、上記と同様にZ(Z撚)120回/mで下撚して得た(34760dtex)。これら片糸A,片糸Bを使用して無結節編網機で上撚S(S撚)100回/mになるように製網し、52口、目合いの長さが網脚部21mm、節部18mmの結節形態が無結節亀甲目の筒状の網地を得た。ストランド繊度は69,080dtexであった。その時のダイニーマ混率は、7.6mass%であった。
この網地を5目分で編み方向(図7での矢印M方向)でカットした(網地長さ25cmとなる)(タイヤチェーン本体)。更に、このタイヤチェーン本体(5目分の網地)におけるタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。
また図11の(a)に示す如くのXO型の内側側面部を作製するべく、次の様に行った。つまりまずタイヤ内側に使用する内側布として幅12cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を用い、これを幅方向で半分に折り、一方の長辺が開口した袋状にした。自然状態で幅2cm、長さ103cmのゴムバンド(このゴムバンドは初期長50mmの100%伸張時の応力が14Nである)を準備し、このゴムバンドの一方端と他方端を3cm重ねて縫着し、円周100cmの輪状のゴムバンド(第1の紐部材76)とした。この輪状のゴムバンド(第1の紐部材76)に40cm離して2つの点Xの印を付けると共に、この2つの点Xと対向する位置(ゴムバンドを円形にしたときに対向する位置(180°の位置))に同じく40cm離して2つの点Xの印を付けた(図16(c)参照)。次いでこの輪状のゴムバンドを上記内側布の袋の中に入れた。他方、幅2cm×長さ80cmの細幅織物を4本準備し(第2の紐部材74a,75a,74b,75b)、この一方端をそれぞれ上記点Xに縫い付けた。そしてこの80cmの細幅織物を2本一組としてクロスさせ(第2の紐部材74aと75aのクロス、第2の紐部材74bと75bのクロス)、この細幅織物をだぶつかない様にしつつ内側側面部外周縁73bに向かわせ、他方端をそれぞれタイヤチェーン本体の側縁部に縫着した(点Y)。次いで、上記袋状にした内側布の開口側長辺を、タイヤチェーン本体の側縁部の全周にわたって縫着した。尚こうして得られた内側側面部は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈し、XO型(180°タイプ)のゴムバンド+細幅織物を備えたものとなる(図16の(c))。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例3の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の94.4%(面積比)が編物となったものである。
その後、この実験例3の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/70−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表1に示す。またこの実験例3の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例4>
強度9.3cN/dtexの1100dtex/190fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプH02)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントと、強度29.0cN/dtexの1760dtex/1560f−SK60の高強力ポリエチレンマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 ダイニーマ(登録商標))を使用して、次の如く撚糸を作製した。つまり、ポリエステル4本合糸を更に6本合わせたものと、ポリエステル:ダイニーマ=2:1の3本合糸を更に2本合わせたものとを使用し、これらをZ(Z撚)120回/mで下撚して得た(34320dtex)。この34320dtexの撚糸2本を使用して、無結節編網機で上撚、S(S撚)100回/mになるように製網し、36口、目合いの長さが網脚部30mm、節部15mmの結節形態が無結節亀甲目の筒状の網地を得た。ストランド繊度は68,640dtexであった。その時のダイニーマ混率は、10.3mass%であった。
この網地を4目分で編み方向(図7での矢印M方向)でカットした(網地長さ24cmとなる)(タイヤチェーン本体)。更に、このタイヤチェーン本体(4目分の網地)におけるタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。
また図12の(a)に示す如くのU型の内側側面部を作製するべく、次の様に行った。つまりまずタイヤ内側に使用する内側布として幅12cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を用い、これを幅方向で半分に折り、一方の長辺が開口した袋状にした。自然状態で幅2cm、長さ34cmのゴムバンド(このゴムバンドは初期長50mmの100%伸張時の応力が14Nである)を準備し、このゴムバンドの両端にそれぞれ幅2cm×長さ40cmの細幅織物を縫い付けた。この細幅織物におけるゴムバンドと縫着していない端をそれぞれ、上記タイヤチェーン本体の側縁部に20cmの間をあけて縫着した(点Y)。また同じものを対向する位置(逆向きのU字となる位置)に設置した。次いで、上記袋状にした内側布の開口側長辺を、タイヤチェーン本体の側縁部の全周にわたって縫着した。尚こうして得られた内側側面部は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈し、U型(180°タイプ)のゴムバンド+細幅織物を備えたものとなる。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例4の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の94.4%(面積比)が編物となったものである。
その後、この実験例4の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/70−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表1に示す。またこの実験例4の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例5>
強度9.3cN/dtexの1670dtex/285fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプH02)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントを使用して、3本引き揃えた5010dtexの合糸を更に6本合わせてZ(Z撚)120回/mで下撚した。その30,060dtex撚糸2本を使用して無結節編網機で上撚、S(S撚)100回/mになるように製網し、52口、目合いの1辺長が25.6mmの結節形態が無結節菱目の筒状の網地を得た。ストランド繊度は60,120dtexであった。
この筒状網地を7目分で編み方向(図3での矢印M方向)でカットし(図3、タイヤチェーン本体(編物部11))、このタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。
またタイヤ内側に使用する内側布として幅6cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を使用し、この内側布の一方の長辺を、上記タイヤチェーン本体におけるタイヤ内側に縫製した。次いで自然状態(伸張させない状態)で幅2cm、長さ90cmのゴムバンドを用い、このゴムバンドを伸張状態で上記内側布の他方の長辺(内周端部分13a)に沿って縫い付けた(図14:編物製タイヤチェーン本体とタイヤ外側布,内側布,ゴムバンドを縫製して組み付ける様子を説明する部分図(この図示例ではタイヤ幅方向に7目分切り取ったものである))。尚上記ゴムバンドについて、初期長50mmの100%伸張時の応力は14Nである。また上記構成により内側布(内側布13)は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈することとなる。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例5の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の全てが編物となったものである。
その後、この実験例5の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/65−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表1に示す。またこの実験例5の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例6>
強度6.1cN/dtexの1100dtex/24fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプ534)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントと、強度29.0cN/dtexの1320dtex/1170f−SK60の高強力ポリエチレンマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 ダイニーマ(登録商標))を使用して、ポリエステル:ダイニーマ=2:1になるよう3本合糸し、引き揃えた3520dtexの合糸を更に6本合わせZ(Z撚)120回/mで下撚した。その21,120dtex撚糸2本を使用して無結節編網機で上撚S(S撚)100回/mになるように製網し、52口、目合いの1辺長が25.6mmの結節形態が無結節菱目の筒状の網地を得た。ストランド繊度は42,240dtexであった。その時のダイニーマ混率は、37.5mass%であった。
この筒状網地を7目分で編み方向でカットし(図3、タイヤチェーン本体(編物部11))、このタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。またタイヤ内側に使用する内側布として、幅6cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を使用し、この内側布の一方の長辺を、上記タイヤチェーン本体におけるタイヤ内側に縫製した。次いで自然状態で幅2cm、長さ90cmのゴムバンド(このゴムバンドは初期長50mmの100%伸張時の応力が14Nである)を用い、このゴムバンドを伸張状態で上記内側布の他方の長辺(内周端部分13a)に沿って縫い付けた(図14:編物製タイヤチェーン本体とタイヤ外側布,内側布,ゴムバンドを縫製して組み付ける様子を説明する部分図(この図示例ではタイヤ幅方向に7目分切り取ったものである))。尚これにより内側布(内側布13)は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈することとなる。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例6の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の全てが編物となったものである。
その後、この実験例6の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/65−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表1に示す。またこの実験例6の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例7>
強度6.1cN/dtexの1100dtex/24fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプ534)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントを使用して、6本引き揃えた6600dtexの合糸を更に6本合わせZ(Z撚)100回/mで下撚した。その39,600dtex撚糸2本を使用して無結節編網機で上撚S(S撚)100回/mになるように製網し、目合いの1辺長が61.2mmの結節形態が無結節菱目の網地を得た。ストランド繊度は79,200dtexであった。
この網地を4目分で編み方向でカットし、網地の耳同士を縫製して、周長が180cmの筒状となるようにした。この際、縫製部にはポリエステル1100dtex使いの平織物(織密度 縦、横方向とも28本/2.54cm)10cm×44cm(当て布22)を用いて上記網地の突き合わせ箇所の表裏を当て布し、縫製した(図7、タイヤチェーン本体25)。更にこのタイヤチェーン本体(筒状に縫製した網地)におけるタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。またタイヤ内側に使用する内側布として、幅6cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を使用し、この内側布の一方の長辺を、上記タイヤチェーン本体におけるタイヤ内側に縫製した。次いで自然状態で幅2cm、長さ90cmのゴムバンド(このゴムバンドは初期長50mmの100%伸張時の応力が14Nである)を用い、このゴムバンドを伸張状態で上記内側布の他方の長辺(内周端部分13a)に沿って縫い付けた。尚これにより内側布(内側布13)は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈することとなる。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例7の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の94.4%(面積比)が編物となったものである。
その後、この実験例7の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/65−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表2に示す。またこの実験例7の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例8>
強度9.3cN/dtexの1670dtex/285fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプH02)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントを使用して、3本引き揃えた5010dtexの合糸を更に6本合わせてZ(Z撚)20回/mで下撚した。その30,060dtex撚糸2本を使用して無結節編網機で上撚、S(S撚)10回/mになるように製網し、52口、目合いの1辺長が25.6mmの結節形態が無結節菱目の筒状の網地を得た。ストランド繊度は60,120dtexであった。
この筒状網地を7目分で編み方向(図3での矢印M方向)でカットし(図3、タイヤチェーン本体(編物部11))、このタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。またタイヤ内側に使用する内側布として、幅6cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を使用し、この内側布の一方の長辺を、上記タイヤチェーン本体におけるタイヤ内側に縫製した。次いで自然状態で幅2cm、長さ90cmのゴムバンド(このゴムバンドは初期長50mmの100%伸張時の応力が14Nである)を用い、このゴムバンドを伸張状態で上記内側布の他方の長辺(内周端部分13a)に沿って縫い付けた(図14)。尚これにより内側布(内側布13)は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈することとなる。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例8の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の全てが編物となったものである。
その後、この実験例8の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/65−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表2に示す。またこの実験例8の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例9>
強度6.1cN/dtexの1100dtex/288fポリエステルマルチフィラメントで、その単糸が丸断面を有するフィラメントを使用して、6本引き揃えた6600dtexの合糸を更に6本合わせてZ(Z撚)100回/mで下撚した。その39,600dtex撚糸2本を使用して無結節編網機で上撚、S(S撚)100回/mになるように製網し、52口、目合いの1辺長が25.6mmの結節形態が無結節菱目の筒状の網地を得た。ストランド繊度は79,200dtexであった。
この筒状網地を7目分で編み方向でカットし(図3、タイヤチェーン本体(編物部11))、このタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。またタイヤ内側に使用する内側布として、幅6cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を使用し、この内側布の一方の長辺を、上記タイヤチェーン本体におけるタイヤ内側に縫製した。次いで自然状態で幅2cm、長さ90cmのゴムバンド(このゴムバンドは初期長50mmの100%伸張時の応力が14Nである)を用い、このゴムバンドを伸張状態で上記内側布の他方の長辺(内周端部分13a)に沿って縫い付けた(図14)。尚これにより内側布(内側布13)は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈することとなる。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例9の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の全てが編物となったものである。
その後、この実験例9の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/65−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表2に示す。またこの実験例9の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例10>
強度6.1cN/dtexの1100dtex/24fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプ534)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントを使用して、6本引き揃えた6600dtexの合糸を更に6本合わせてZ(Z撚)100回/mで下撚した。その39,600dtex撚糸2本を使用して無結節編網機で上撚でS(S撚)100回/mになるように製網し、目合いの1辺長が10.0mmの結節形態が無結節菱目の網地を得た。ストランド繊度は79,200dtexであった。
この網地を28目分で編み方向でカットし、網地の耳同士を縫製して、周長が180cmの筒状となるようにした。この際、縫製部にはポリエステル1100dtex使いの平織物(織密度 タテ、ヨコ方向とも28本/2.54cm)10cm×44cm(当て布22)を用いて上記網地の突き合わせ箇所の表裏を当て布し、縫製した(図7、タイヤチェーン本体25)。更にこのタイヤチェーン本体(筒状に縫製した網地)におけるタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。またタイヤ内側に使用する内側布として、幅6cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を使用し、この内側布の一方の長辺を、上記タイヤチェーン本体におけるタイヤ内側に縫製した。次いで自然状態で幅2cm、長さ90cmのゴムバンド(このゴムバンドは初期長50mmの100%伸張時の応力が14Nである)を用い、このゴムバンドを伸張状態で上記内側布の他方の長辺(内周端部分13a)に沿って縫い付けた(図14:編物製タイヤチェーン本体とタイヤ外側布,内側布,ゴムバンドを縫製して組み付ける様子を説明する部分図(この図示例ではタイヤ幅方向に7目分切り取ったものである))。尚これにより内側布(内側布13)は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈することとなる。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例10の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の94.4%(面積比)が編物となったものである。
その後、この実験例10の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/65−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表2に示す。またこの実験例10の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例11>
強度6.8cN/dtexの1100dtex/96fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプ654)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントを使用して、3本引き揃えた3300dtexの合糸を更に6本合わせてZ(Z撚)120回/mで下撚した。その19,800dtex撚糸2本を使用して無結節編網機で上撚、S(S撚)100回/mになるように製網し、26口、目合いの1辺長が51.2mmの結節形態が無結節菱目の網地を得た。ストランド繊度は39,600dtexであった。
この筒状網地を4目分で編み方向でカットし(図3、タイヤチェーン本体)、このタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。またタイヤ内側に使用する内側布として、幅6cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を使用し、この内側布の一方の長辺を、上記タイヤチェーン本体におけるタイヤ内側に縫製した。次いで自然状態で幅2cm、長さ90cmのゴムバンド(このゴムバンドは初期長50mmの100%伸張時の応力が14Nである)を用い、このゴムバンドを伸張状態で上記内側布の他方の長辺(内周端部分13a)に沿って縫い付けた(図14)。尚これにより内側布(内側布13)は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈することとなる。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例8の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の全てが編物となったものである。
その後、この実験例11の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/65−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表2に示す。またこの実験例11の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例12>
強度6.1cN/dtexの1100dtex/24fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプ534)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントを使用して、6本引き揃えた6600dtexの合糸を更に6本合わせてZ(Z撚)100回/mで加撚した。その39,600dtex撚糸を使用して蛙股編網機を用いて製網し、目合いの1辺長が25.6mmの蛙股網地を得た。ストランド繊度は39,600dtexであった。
この網地を7目分で編み方向でカットし、周長が180cmになるように筒状に縫製した。この際、縫製部にはポリエステル1100dtex使いの平織物(織密度 タテ、ヨコ方向とも28本/2.54cm)10cm×44cm(当て布22)を用いて上記網地の突き合わせ箇所の表裏を当て布して縫製した(図7、タイヤチェーン本体25)。更にこのタイヤチェーン本体(筒状に縫製した網地)におけるタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。またタイヤ内側に使用する内側布として、幅6cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を使用し、この内側布の一方の長辺を、上記タイヤチェーン本体におけるタイヤ内側に縫製した。次いで自然状態で幅2cm、長さ90cmのゴムバンド(このゴムバンドは初期長50mmの100%伸張時の応力が14Nである)を用い、このゴムバンドを伸張状態で上記内側布の他方の長辺(内周端部分13a)に沿って縫い付けた(図14:編物製タイヤチェーン本体とタイヤ外側布,内側布,ゴムバンドを縫製して組み付ける様子を説明する部分図(この図示例ではタイヤ幅方向に7目分切り取ったものである))。尚これにより内側布(内側布13)は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈することとなる。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例12の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の94.4%(面積比)が編物となったものである。
その後、この実験例12の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/65−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表2に示す。またこの実験例12の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例13>
強度7.5cN/dtexの1100dtex/192fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプ634)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントを使用して、織密度がタテ、ヨコ共に28本/2.54cmになるように平織物を製織した。この織物の幅が20cmになるようにして、長さ190cmに裁断し、その後筒状で周長が180cmになるように縫製した。
この筒状織物のタイヤ外側にあたる部分に直径58cmの円形の側布(外側布)を縫製した。またタイヤ内側に使用する内側布として、幅6cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を使用し、この内側布の一方の長辺を、上記タイヤチェーン本体におけるタイヤ内側に縫製した。次いで自然状態で幅2cm、長さ90cmのゴムバンド(このゴムバンドは初期長50mmの100%伸張時の応力が14Nである)を用い、このゴムバンドを伸張状態で上記内側布の他方の長辺に沿って縫い付けた。尚これにより内側布は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈することとなる。
以上の様にして織物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例10の織物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の全てが織物となったものである。
その後、この実験例13の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/70−14インチの夏用タイヤを使用した。
その織物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表2に示す。またこの実験例13の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
<実験例14>
強度9.3cN/dtexの1670dtex/285fポリエステルマルチフィラメント(東洋紡績株式会社製 タイプH02)で、その単糸が丸断面を有するフィラメントを使用して、3本引き揃えた5010dtexの合糸を更に6本合わせてZ(Z撚)120回/mで下撚した。その30,060dtex撚糸2本を使用して無結節編網機で上撚、S(S撚)100回/mになるように製網し、52口、目合いの1辺長が25.6mmの結節形態が無結節菱目の筒状の網地を得た。ストランド繊度は60,120dtexであった。
この筒状網地を7目分で編み方向(図3での矢印M方向)でカットし(図3、タイヤチェーン本体(編物部11))、このタイヤ外側に直径58cmの円形の側布(外側布12)を縫製した。
また図11の(b)に示す如くのXO型の内側側面部を作製するべく、次の様に行った。つまりまずタイヤ内側に使用する内側布として、幅12cm、長さ220cmの短冊状に切り出した織物(ポリエステル560dtex使いの平織物(織密度タテ、ヨコ方向とも50本/2.54cm))を用い、これを幅方向で半分に折り、一方の長辺が開口した袋状にした。自然状態で幅2cm、長さ103cmのゴムバンド(このゴムバンドは初期長50mmの100%伸張時の応力が14Nである)を準備し、このゴムバンドの一方端と他方端を3cm重ねて縫着し、円周100cmの輪状のゴムバンド(第1の紐部材76)とした。この輪状のゴムバンド(第1の紐部材76)に40cm離して2つの点Xの印を付けると共に、この2つの点Xの組に対して120°の位置(ゴムバンドを円形にしたときの中心からの角度が120°となる位置)に、同じく40cm離して2つの点Xの印を付けた。次いでこの輪状のゴムバンド(第1の紐部材76)を上記内側布の袋の中に入れた。他方、幅2cm×長さ80cmの細幅織物を4本準備し(第2の紐部材74c,75c,74d,75d)、この一方端をそれぞれ上記点Xに縫い付けた。そしてこの80cmの細幅織物を2本一組(上記点Xの組と対応する)としてクロスさせ(第2の紐部材74cと75cのクロス、第2の紐部材74dと75dのクロス)、この細幅織物をだぶつかない様にしつつ内側側面部外周縁73bに向かわせ、他方端をそれぞれタイヤチェーン本体の側縁部に縫着した(点Y)。次いで、上記袋状にした内側布の開口側長辺を、タイヤチェーン本体の側縁部の全周にわたって縫着した。尚こうして得られた内側側面部は外経58cm、幅5cmのドーナツ型を呈し、XO型(120°タイプ)のゴムバンド+細幅織物を備えたものとなる。
以上の様にして編物製タイヤチェーンを得た。尚本実験例14の編物製タイヤチェーンは、タイヤ接地面を覆う部分の全てが編物となったものである。
その後、この実験例14の編物製タイヤチェーンを前輪(駆動輪)2本のタイヤに被せた。尚前輪(2本),後輪(2本)いずれもサイズ185/65−14インチの夏用タイヤを使用した。
この編物製タイヤチェーン付きタイヤで乾燥路と圧雪道での走行テストを行った。その結果を表2に示す。またこの実験例14の編物製タイヤチェーンをタイヤに取り付ける際の操作性は良好なものであった。また走行テスト後に編物製タイヤチェーンタイヤから取り外す際の操作性についても良好なものであった。
尚、実験例1〜12,14のいずれも、編物が同形状の目合いを形成する様に製編したものであるから、S1/2/Wの算出にあたっては、タイヤ接地面上の任意の3箇所の目合いを選択し、この平均値によりS1/2/Wの値とした。また実験例13については、糸で囲まれた空隙が小さすぎた為、測定できなかった。
表1,2から分かるように、実験例1〜3の編物製タイヤチェーンは冬季路面走行時において十分な制動性能や登坂性能を発揮し、また耐久性にも優れている。実験例4〜6の編物製タイヤチェーンにおいても実験例1〜3と同様に十分な制動性能や登坂性能を有している。また実験例2〜4,14は他の実験例と比べて脱落防止性能においても優れている。実験例7の編物製タイヤチェーンは、目合いの大きさが若干大きい為に、実験例1〜6に比べると制動性能や登坂性能が若干劣るものの、実際走行においては特に問題のあるレベルではない。実験例8の編物製タイヤチェーンは、実験例1〜6に比べて制動性能や登坂性能は同等であり、耐久性においては若干劣るものの問題のあるレベルではない。実験例9の編物製タイヤチェーンは耐久性においてやや劣る傾向にある。実験例10の編物製タイヤチェーンは制動性能と登坂性能において劣る。実験例11の編物製タイヤチェーンは制動性能と登坂性能、更に耐久性が劣る。実験例12の編物製タイヤチェーンは耐久性において問題がある。実験例13の織物製タイヤチェーンは制動性能と登坂性能において問題がある。