JP2007277044A - ダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法 - Google Patents

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麻衣子 國田
Yuriko Kaino
由利子 貝野
Takahiro Kamei
隆広 亀井
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Abstract

【課題】大掛かりな成膜設備を必要とせずに、生産性が高く、複雑な表面形状を有する表面に対しても十分に表面被覆が行えるDLC膜の形成方法を提供する。
【解決手段】デカフェニルシクロペンタシランからなる側鎖としてフェニル基を有するポリシラン化合物を含む溶液11に光を照射して、溶液11中に高分子材料を生成する工程と、光照射後の溶液11を基板21上に塗布し、高分子膜22を形成する工程と、基板21に熱処理を行うことで、高分子膜22をDLC膜23に変化させる工程とを有することを特徴とするDLC膜の形成方法である。
【選択図】図5

Description

本発明は、ダイヤモンドライクカーボン(Diamond Like Carbon(DLC))膜の形成方法に関し、特に塗布法によりDLC膜を形成する方法に関する。
DLCの研究は、1970年に東京農工大学の難波らの研究グループによって始められ、1979年にはダイヤモンド状の薄膜を発表して話題となった。DLCの主な構造的特徴として、ラマン分光分析による構造解析などから、非晶質なsp3構造の中に非晶質のsp2構造を持つものが分散した形で含まれるものと考えられる。つまり、ダイヤモンド構造に対応するsp3結合を持ってはいるが、部分的にグラファイトの構造に対応するsp2結合やH結合を含むために、長距離秩序的には決まった形を持たない。薄膜状ダイヤモンドは、天然には存在しないものである。
一方、天然ダイヤモンドは、あらゆる物質の中でも最高の硬さを有し、熱的には絶縁性でありながら最も高い熱伝導性をもち、光学的にも屈折率が最も高い値を示すという極めて優れた性質をもつ材料である。DLCはそのダイヤモンドが非晶質な状態(アモルファス状)であると思われる。DLCは、I−カーボン、硬質炭素膜、非晶質炭素膜(a−C)、水素化炭素膜(a−C:H)などと呼ばれている。それぞれの呼び名は、作製プロセス、膜質、膜構造のどの面を重視するかで変わってくる。
だが、DLCの定義も、必ずしも明瞭ではなく、特に定量的に決められているわけではない。ダイヤモンド膜にしても、グラファイト状炭素が部分的に含まれていることが多いため、DLCとの明確な境ははっきりしていないが、DLCはsp2、sp3、ポリマーの各成分を含有していて、茶、もしくは黒色で表面平滑な硬い膜である。また、DLCは、特徴的には緻密なアモルファス構造をしている。炭素原子が、隣接する炭素原子とどのように結合しているかにより、構造の相違が変わってくる。
DLCの表面は非常に滑らかであり、結晶粒界がない。その際立った表面特性である平滑性のために、DLCは優れた摩耗、摩擦特性を示すのである。摩耗、摩擦試験において比べられた値をみても、DLCの数値は他の硬質な薄膜と比べて、圧倒的に低い摩擦係数と優れた耐摩耗性、低攻撃性を示す。こうしたことから、電子部品、精密金型、切削工具類、耐摩耗性機械部品、研磨剤、磁気・光学部品およびプリンタヘッド等の摺動部材等において、特に、耐摩耗性および表面平滑性が求められる部材の表面保護膜に適しており、幅広い分野に渡って実用化されている。
また、近年、DLCを可変バンドギャップにより次世代半導体と捉え、ディスプレイ等に用いられる電子放出素子として応用することが期待されている。このように優れた特性をもつDLC膜を形成するために、従来、物理的蒸着(Physical Vapor Deposition(PVD))法や、化学的気相成長(Chemical Vapor Deposition(CVD))法が用いられてきた。
上記PVD法としては、例えば、レーザーPVD法のように、成膜速度は速いが、大面積の薄膜形成が難しい方法や、鉄系材料からなる基材上に金属を含む中間層を介して、スパッタ法によりDLC膜を形成する方法(例えば、特許文献1参照)が報告されている。また、上記CVD法としては、プラズマCVD法のように、成膜速度は比較的遅いが大面積の薄膜形成が可能なものがあり、例えば、高分子基材表面に炭素中間層膜を介して、プラズマCVD法によりDLC膜を形成する方法が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2002−256415号公報 特開2005−2377号公報
しかし、上述したようなDLC膜の形成方法では、成膜させる対象物近傍を高真空度の環境にしなければならず、成膜設備が大掛かりになり、また生産性も高いとはいえなかった。また、複雑な表面形状を有する表面に対しては、上記PVD法やCVD法では、十分に表面被覆が行えないという問題点もあった。
そこで、本発明は、大掛かりな成膜設備を必要とせずに、生産性が高く、複雑な表面形状を有する表面に対しても十分に表面被覆が行えるDLC膜の形成方法を提供することを目的とする。
上述したような課題を解決するために、本発明におけるDLC膜の形成方法は、次のような工程を順次行うことを特徴としている。まず、側鎖としてフェニル基を有するポリシラン化合物を含む溶液に光を照射して、溶液中に炭素とシリコンを含有する高分子材料を生成する工程を行う。次に、光照射後の溶液を基板上に塗布し、高分子膜を形成する工程を行う。次いで、基板に熱処理を行うことで、高分子膜をダイヤモンドライクカーボン膜に変化させる工程とを有している。
このようなDLC膜の形成方法によれば、側鎖としてフェニル基を有するポリシラン化合物を含む溶液に、光を照射することで、ポリシラン化合物中のSi−Si結合が切断されて、Si−Si結合を有する複数の鎖状分子が生成し、各鎖状分子中のSi原子間が上記フェニル基由来のフェニレン基によって架橋された高分子材料が生成される。次いで、光照射後の溶液を基板の表面に塗布し、高分子膜を形成した後、この基板に熱処理を行うことで、発明の実施の形態において詳細に説明するように、上記高分子膜がDLC膜に変化する。
以上、説明したように、本発明のDLC膜の形成方法によれば、塗布法により、DLC膜を形成することができるため、大掛かりな成膜設備を必要とせず、生産性に優れている。また、塗布法により、DLC膜を形成することで、複雑な表面形状を有する表面に対しても、十分に表面被覆を行うことができる。
以下、本発明におけるDLC膜の形成方法の実施形態の一例について詳細に説明する。
(第1実施形態)
<ポリシラン化合物>
まず、原材料としては、側鎖としてフェニル基を有するポリシラン化合物を用いる。側鎖としてフェニル基を有するポリシラン化合物としては、例えば下記一般式(1)で示すように、フェニル基と結合したSi原子を構成単位とするポリシラン化合物が挙げられる。
Figure 2007277044
ここで、上記構造式(1)中のRとしては、水素、炭素、酸素、窒素、硫黄、りん、ホウ素、ハロゲン等の原子、またはヒドロキシル基、置換もしくは無置換のカルボニル基、置換もしくは無置換のエステル基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルコキシル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミド基、チオール基等の置換基が挙げられる。また、nは2以上の正の整数とする。
また、上記構造式(1)中のフェニル基としては、無置換のフェニル基を示すが、このフェニル基は、上記Rとして示したような置換基を有していてもよい。
ここでは、上記構造式(1)中のRが無置換のフェニル基で構成された下記構造式(2)に示す環状のデカフェニルシクロペンタシランを用いることとする。
Figure 2007277044
なお、本実施形態では、原材料として、環状のデカフェニルシクロペンタシランを用いた例について説明するが、本発明に用いるポリシラン化合物としては、側鎖にフェニル基を有していればよく、鎖状であってもよい。例えば、原材料のポリシラン化合物として、構造式(1)中のRがメチル基で構成された、直鎖状のポリ(フェニルメチルシラン)を用いた場合でも、本発明は適用可能である。
ここで、上記構造式(2)に示すデカフェニルシクロペンタシランは、合成したものをそのまま用いても、予め単離されたものを用いてもよい。上記デカフェニルシクロペンタシランを合成する場合には、リチウム金属を含む脱水THFをアルゴン(Ar)ガスでバブリングした状態で、ジフェニルジクロロシランを滴下し、滴下終了後、リチウム金属が完全に消失するまで、攪拌する。次に、この反応混合物を冷水中に滴下し、反応生成物を沈殿させて沈殿物を濾別し、シクロヘキサンで洗浄する。その後、エバポレーターを用いて別離し、酢酸エチルで再結晶させることで、デカフェニルシクロペンタシランを合成することができる。
この合成したデカフェニルシクロペンタシランを、Arガス雰囲気下で、溶媒に溶解させる。この溶媒としては、デカフェニルシクロペンタシランを溶解し、デカフェニルシクロペンタシランと反応しないものであれば、特に限定されるものではなく、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどの炭化水素系、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル系、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン溶媒などに可溶である。ここでは、デカフェニルシクロペンタシランを、例えば10mmol/Lの濃度でTHFに溶解させることとする。
<高分子材料の生成>
次に、上述したデカフェニルシクロペンタシランを含む溶液に光を照射して、炭素(C)とシリコン(Si)を含む高分子材料を生成する。
この場合には、まず、図1に示すように、Ar等の不活性ガス雰囲気下で、THFにデカフェニルペンタシランを溶解させた溶液11を、例えば石英からなるセル12に2ml充填する。そして、充填後は、酸化を防ぐためにキャップ13により蓋をして密閉状態とする。なお、ここでは、セル12の材質が石英であることとするが、ガラスやプラスチックであってもよい。ただし、本実施形態では、後述するように、セル12の側壁を介して光を照射することから、セル12の材質は照射する光に対して透過性の高いものであることが好ましい。セル12が石英からなる場合には、後工程で照射する200nm以上600nm以下の波長範囲の光を80%以上の透過率で透過させるため、好ましい。
次いで、上記セル12中の溶液11に200nm以上600nm以下の波長範囲の光Vを照射する。ここでは、光源として水銀キセノンランプを用いた、例えば浜松ホトニクス社製LC−5(03−フィルター付)からなるスポットUV照射器14を上記セル12の側壁に接触させて照射する。これにより、光Vがセル12の側壁を透過して、溶液11に照射される。この光Vを照射することで、光照射前は無色透明の溶液11が、照射時間が長くなるにつれて徐々に黄色に変色していく。
ここで、上記スポットUV照射器14の放射スペクトルを図2に示す。この図に示すように、照射する光の照射波長領域は200nm以上450nm以下であり、291nm付近、326nm付近、365nm付近および405nm付近にピーク波長を有している。ここで、上記光照射においては、200nm以上350nm以下の光と、350nmより大きく600nm以下の波長の光の両方を照射することが好ましい。これは、後述する高分子材料を得るためには、光の照射波長として、ポリシラン化合物のSi−Si結合を切断するエネルギーを有する例えば350nm以下の波長の光が必要であり、これに加えて350nmよりも大きい波長の光を照射することで、再結合が促進されるためと考えられる。
なお、ここでは、スポットUV照射器14に光の照射波長領域が200nm以上450nm以下の浜松ホトニクス社製LC−5(03−フィルター付)を用いた例について説明するが、照射波長領域は200nm以上600nm以下の波長領域の範囲内であればよく、ここでの放射スペクトルの図示は省略したが、照射波長領域が200nm以上600nm以下の浜松ホトニクス社製LC−5(フィルター無し)を用いてもよい。
また、上記光の光源としては、上述した水銀キセノンランプ以外にも低圧または高圧の水銀ランプ、重水素ランプ、アルゴン、クリプトン、キセノン等の希ガスの放電光の他、YAGレーザー、アルゴンレーザー、炭酸ガスレーザー、XeF、XeCl、XeBr、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーなどを使用することができる。
さらに、光Vの照射時間は、ポリシラン化合物の種類と濃度で規定されるが、ポリシラン化合物としてデカフェニルシクロペンタシランを10mmol/Lの濃度で溶解させた場合には、上記光Vを20分〜30分前後照射することで、デカフェニルシクロペンタシランが消失し、高分子材料を安定的に生成することが可能である。
ここで、図3に、上述したスポットUV照射器14を用いて、光Vを30分間照射した後の溶液11のUVスペクトル(1)と光未照射の溶液11のUVスペクトル(2)を示す。このグラフに示すように、未照射の溶液11のUVスペクトル(2)と比較して光照射後のUVスペクトル(1)は、長波長側にシフトし、ブロード化することが確認された。一般的に、UVスペクトルは、測定対象の共役の広がりを示す指標となり、共役長が長くなると、UVスペクトルは長波長シフトすることが知られている。よって、光照射により、共役長が長くなることが示唆された。
また、図4に示すPLスペクトルにおいても、未照射の溶液11のPLスペクトル(2)と比較して、光照射後の溶液11のPLスペクトル(1)は、長波長側にシフトし、高次化したSi−Si由来のブロードなピークが確認された。一般的に、Siネットワーク構造を持つ場合にもUVスペクトルとPLスペクトルの長波長シフトとブロード化が報告されており、(A. Watanabe, Macromolecules, vol.26, p.211 (1993年))、この光照射後の溶液11でもUVスペクトルとPLスペクトルの長波長シフトとブロード化が見られたことから、溶液11内にSiネットワークが形成されている可能性も考えられる。
以上の結果およびここでの図示を省略した1H−NMRの結果から、溶液11に光Vを照射することで、溶液11中のデカフェニルシクロペンタシランのSi−Si結合が切断されて、環状構造が開裂し、Si−Si結合を有する複数の鎖状分子が生成するとともに、デカフェニルシクロペンタシラン中のフェニル基由来のフェニレン基によって、各鎖状分子が鎖状分子中のSi原子間で架橋された高分子材料が生成されることが示唆された。この高分子材料は、Si−Si結合を有する鎖状分子を備えていることで、σ−σ*の共役系を有するためσ電子が鎖状分子を通って非局在化され、導電性が高くなる。また、上記鎖状分子のSi原子間がフェニレン基で架橋されることで、σ−πの共役系が広がることによっても、導電性が高くなる。さらに、高分子材料中で、Siとフェニル基またはフェニレン基との結合が占める割合が高いため、耐熱性が顕著に高くなる。
ここで、生成される高分子材料の一例として、2つの鎖状分子間の架橋部分を下記構造式(3)に示す。
Figure 2007277044
上記構造式(3)に示す鎖状分子は、主鎖がSi原子のみで構成された直鎖状分子で構成されており、各鎖状分子のSi原子間を架橋するフェニレン基は例えばパラ位の位置で結合されている。また、フェニレン基で架橋されたSi原子の結合部位を除く鎖状分子中のSi原子には、側鎖としてフェニル基を有している。
ただし、光Vの照射により生成される高分子材料の構造は上記に限定されるものではない。例えば、各鎖状分子は、直鎖状分子であっても分岐鎖状分子であってもよく、これらが混在していてもよい。また、鎖状分子の主鎖中にSi−Si結合を有していれば、主鎖中にSi原子とフェニレン基の結合を有していてもよく、各鎖状分子間を架橋するフェニレン基の結合位置は、パラ位、メタ位、オルト位のいずれであってもよい。
また、上記構造式(3)に示す高分子材料の架橋部分は、原材料のポリシラン化合物として、デカフェニルシクロペンタシランを用いた場合に生成される高分子材料の一例であり、原材料として用いるポリシラン化合物の側鎖により、この高分子材料の側鎖も適宜規定される。
<DLC膜の形成>
次に、上述した高分子材料を用いて、DLC膜を形成する。
まず、図5(a)に示すように、例えばアルゴン(Ar)等の不活性ガス雰囲気下で、上述した高分子材料を含む光照射後の溶液11を、例えばスピンコート法により基板21上に塗布し、図5(b)に示すように、基板21上に高分子膜22を形成する。
次いで、図5(c)に示すように、例えばAr等の不活性ガス雰囲気下で、この高分子膜22(前記図5(b)参照)が形成された基板21に熱処理を行う。ここで、図6に熱処理前の高分子膜22と熱処理後の高分子膜22’についてラマンスペクトルを測定した結果を示す。このグラフに示すように、熱処理後の高分子膜22’は、熱処理前の高分子膜22では検出されなかった1326cm-1と1600cm-1にピークを有することが確認された。これらのピークをガウス関数とローレンツ関数を用いてカーブフィッティングすることで、ピークを分離すると、DLC膜のsp3構造に帰属される1350cm-1(Dバンド)と、sp2構造に帰属される1600cm-1(Gバンド)であることが示唆された。なお、上記高分子膜22’の1326cm-1のピークが、DLC膜のDバンド(1350cm-1)のピークと若干ずれるのは、長距離秩序の損失ばかりでなくsp3炭素原子と結合することによって生じるグラファイト構造の結合角が乱れることにも起因すると考えられる。
また、熱処理後の高分子膜22’について、X線回折分析装置(X-ray diffractometer(XRD))により分析した結果、非晶質であることが確認された。これにより、熱処理を行うことで、高分子膜22がDLC膜23になることが確認された。さらに、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope(AFM))を用いてDLC膜23の表面粗さを確認したところ、表面が平坦なDLC膜23が形成されることが確認された。
これは、上述したように、高分子膜22中のSiとフェニル基またはフェニレン基との結合が占める割合が高いため、この高分子膜22は非常に耐熱性が高く、通常のポリシラン化合物では、分解・蒸発してしまう200℃以上の温度をかけた場合であっても、膜状を維持した状態で、フェニレン基が分解し、炭素鎖が形成されるためと考えられる。また、X線光電子分光分析(X-ray Photoelectron Spectroscopy(XPS))の解析結果により、DLC膜23中にはSiがSi−Oとして存在することが確認された。これは、成膜後、熱処理時にわずかに混入する酸素とSiが結合するためと考えられる。DLC膜23中のSi(SiO)は、例えば希フッ酸による洗浄など、通常行われる酸化性シリコンを除去する方法で除去することが可能である。また、Siが残存したDLC膜23をそのまま用いてもよく、この場合には、Siが残存することで、DLC膜23の密着性が向上する、という利点がある。
ここで、上記熱処理は、200℃以上1000℃以下で行うことが好ましく、さらに、400℃以上1000℃以下で熱処理を行うことで、上記DLC膜23を確実に形成することが可能であるため、好ましい。そして、上記温度範囲内で熱処理の温度を高くすると、ピーク分離したDバンドの面積比が増大し、DLC膜23がよりアモルファスに近づくことで硬度が高くなることが確認された。
以上説明したように、本発明のDLC膜の形成方法によれば、側鎖としてフェニル基を有するポリシラン化合物を含む溶液11に、光Vを照射することで、Si−Si結合を有する複数の鎖状分子が、各鎖状分子中のSi原子間でフェニレン基によって架橋された高分子材料が生成される。次いで、この高分子材料を含む溶液11を基板21上に塗布し、高分子膜22を形成した後、この基板21に熱処理を行うことで、DLC膜23が形成される。したがって、塗布法により、DLC膜23を形成することができるため、大掛かりな成膜設備を必要とせず、生産性に優れている。また、塗布法により、DLC膜23を形成することができるため、複雑な表面形状を有する表面に対しても、十分に表面被覆を行うことができる。
上述した実施形態の実施例について、具体的に説明する。
(実施例1)
ここでは、図1を用いて説明した実施形態と同様の方法により、原材料のポリシラン化合物にデカフェニルシクロペンタシランを用いて、DLC膜を形成する例について説明する。
まず、デカフェニルシクロペンタシランを以下に示す方法で合成した。Arガス雰囲気下にて、攪拌装置を取り付けた500mlの3つ口フラスコに、脱水THF150mlとリチウム金属2.74gを仕込み、Arガスでバブリングした。この懸濁液を−10℃前後で攪拌した状態で、滴下ロートからジフェニルジクロロシラン50gを滴下し、滴下終了後、リチウム金属が完全に消失するまで24時間攪拌した。次に、この反応混合物を1Lの冷水中に滴下し、反応生成物を沈殿させて沈殿物を濾別し、シクロヘキサンで洗浄した。その後、ロータリーエバポレーターにて別離すると透明で粘性の高いものが得られた。これを、酢酸エチルで再結晶させると、白色固体のものが得られた。この白色固体を、IR、1H−NMR、29Si−NMR、MS、高速液体クロマトグラフィーにて測定したところ、この白色固体はデカフェニルシクロペンタシランと同定された。
次に、Arガス雰囲気下にて、上記合成したデカフェニルシクロペンタシランを、テトラヒドロフラン中に10mmol/Lの濃度で溶解させた。この溶液11を、石英からなるセル12に2ml充填して、キャップ13により蓋をして密閉状態とした。次いで、上記石英セル12中の溶液11に、浜松ホトニクス社製LC−5(03−フィルター付)からなるスポットUV照射器14を上記セル12の側壁に接触させて、光Vを30分間照射した。そして、光照射後の溶液11中の生成物について、IR、1H−NMR、29Si−NMR、MS、高速液体クロマトグラフィーにて測定したところ、Si−Si結合を有する複数の鎖状分子が、当該各鎖状分子中のSi原子間でフェニレン基によって架橋されてなる高分子材料であることが確認された。
次いで、スピンコート法により、2000rpmで上記高分子材料を含む光照射後の溶液11を基板21上に塗布し、高分子膜22を200nmの膜厚で成膜した。その後、高分子膜22が成膜された基板21に、炉にて1000℃で熱処理を行うことで、DLC膜23を形成した。このDLC膜23について、ラマンスペクトルを測定したところ、1326cm-1と1600cm-1にピークを有し、これらのピークが、DLC膜のDバンド(1350cm-1)とGバンド(1600cm-1)に帰属されることが確認された。また、形成されたDLC膜23をXRDにより分析した結果、非晶質であることが確認された。さらに、AFMを用いて5nm角のタッピングモードでこのDLC膜23の表面粗さを確認したところ、表面粗さは1nm前後であり、表面が平坦なDLC膜23が形成されることが確認された。
(実施例2)
実施例2として、ポリシラン化合物にポリ(フェニルメチルシラン)を用いたDLC膜の形成方法について説明する。まず、Arガス雰囲気下にて、ポリ(フェニルメチルシラン)からなるポリシラン化合物を、THF中に10mmol/Lの濃度で溶解させた。この溶液11を、石英からなるセル12に2ml充填して、キャップ13により蓋をして密閉状態とした。次いで、上記石英セル12中の溶液11に、浜松ホトニクス社製LC−5(03−フィルター付)からなるスポットUV照射器14を上記セル12の側壁に接触させて、光Vを30分間照射した。光照射後の溶液11中の生成物について、IR、1H−NMR、29Si−NMR、MS、高速液体クロマトグラフィーにて測定したところ、Si−Si結合を有する複数の鎖状分子が、当該各鎖状分子中のSi原子間でフェニレン基によって架橋されてなる高分子材料であることが確認された。
次いで、スピンコート法により、2000rpmで上記高分子材料を含む光照射後の溶液11を基板21上に塗布し、高分子膜22を200nmの膜厚で成膜した。その後、高分子膜22が成膜された基板21に、炉にて1000℃で熱処理を行った。
熱処理後の高分子膜22について、ラマンスペクトルを測定したところ、1326cm-1と1580cm-1にピークを有し、実施例1と同様に、これらのピークが、DLC膜のDバンド(1350cm-1)とGバンド(1600cm-1)に帰属されることが確認された。また、実施例1と同様に、このDLC膜23について、XRDにより分析した結果、非晶質であることが確認された。さらに、AFMを用いて5nm角のタッピングモードでこのDLC膜23の表面粗さを確認したところ、表面粗さは1nm前後であり、表面が平坦なDLC膜23が形成されることが確認された。
本発明のDLC膜の形成方法に係る実施形態を説明するための断面図である。 実施形態で用いるスポットUV照射器の放射スペクトルである。 光照射後と光未照射のポリシラン化合物を含む溶液のUVスペクトルの変化を示すグラフである。 光照射後と光未照射のポリシラン化合物を含む溶液のUVスペクトルの変化を示すグラフである。 本発明のDLC膜の形成方法に係る実施形態を説明するための工程図である。 本発明のDLC膜の形成方法に係る実施形態において、生成されたDLC膜のラマンスペクトルである。
符号の説明
11…溶液、21…基板、22,22’…高分子膜、23…DLC膜、V…光

Claims (5)

  1. 側鎖としてフェニル基を有するポリシラン化合物を含む溶液に光を照射して、当該溶液中に炭素とシリコンを有する高分子材料を生成する工程と、
    光照射後の前記溶液を基板上に塗布し、高分子膜を形成する工程と、
    前記基板に熱処理を行うことで、前記高分子膜をダイヤモンドライクカーボン膜に変化させる工程とを有する
    ことを特徴とするダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法。
  2. 請求項1記載のダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法において、
    前記高分子材料は、Si−Si結合を有する複数の鎖状分子が、当該各鎖状分子中のSi原子間でフェニレン基によって架橋されてなる
    ことを特徴とするダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法。
  3. 請求項1記載のダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法において、
    前記光の照射波長範囲は200nm以上600nm以下である
    ことを特徴とするダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法。
  4. 請求項1記載のダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法において、
    前記光として、200nm以上350nm以下の波長の光と、350nmよりも大きく600nm以下の波長の光の両方を照射する
    ことを特徴とするダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法。
  5. 請求項1記載のダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法において、
    前記熱処理を200℃以上1000℃以下で行う
    ことを特徴とするダイヤモンドライクカーボン膜の形成方法。

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010155776A (ja) * 2008-12-04 2010-07-15 Canon Inc メソポーラスシリカ膜およびその製造方法
JP5464535B1 (ja) * 2013-07-23 2014-04-09 株式会社日立ハイテクノロジーズ Ebsd検出器で所望箇所を容易に分析できる荷電粒子線装置およびその制御方法

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JP5464535B1 (ja) * 2013-07-23 2014-04-09 株式会社日立ハイテクノロジーズ Ebsd検出器で所望箇所を容易に分析できる荷電粒子線装置およびその制御方法

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