JP2007267727A - 細胞解析用チップ、細胞解析用システム及び細胞解析方法 - Google Patents

細胞解析用チップ、細胞解析用システム及び細胞解析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】培養中の細胞1個ないし細胞集団からの経時的な情報を逐次得ることが可能な細胞解析用チップを提供する。
【解決手段】本発明の細胞解析用チップは、基板と、細胞培養槽と、前記細胞培養槽中の細胞の活動に由来する物質を検出する検出部と、を有し、前記細胞培養槽と、前記検出部とは、前記基板上に形成されており、前記検出部は、検出する物質に応じた光学吸収特性を示す検出用成分が固定されている少なくとも2種以上の検出用プローブを有し、同種の前記検出用プローブを複数有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、細胞の活動の解析に用いられる細胞解析用チップ、当該細胞解析用チップを組み込んだ細胞解析用システム及び細胞解析方法に関する。
ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、メタボローム、セロームといったオミックス解析技術は、生命現象をそれぞれ遺伝子、転写、タンパク質、代謝の総体として解析し、生体そのものを解析しようとする技術体系である。オミックスの技術や思想は、生命現象の記述という最も基礎的な学問分野から、医学、産業分野で利用されるようになっている。
ゲノム解析では、高速DNAシーケンサを用いた配列解析技術の発達により可能となったが、最近では、次世代のゲノム配列解析技術として固体表面上に数多くのDNAプローブを種類毎に区分けして固定したDNAマイクロアレイ(DNAチップ)を用いたシーケンシング バイ ハイブリダイゼーションやマイクロリアクタービーズを用いたハイスループットパイロシーケンシングが現実のものとして研究されるようになっている。トランスクリプトーム解析では、すでにDNAマイクロアレイ(DNAプローブアレイやDNAチップも同一目的のための技術)が実用化され、多くの研究者に用いられている。プロテオーム解析には、種々のタンパク質をプローブとして(一般的には抗体をプローブ)アレイ状に固定したプロテインアレイチップが用いられるようになっている。
DNAマイクロアレイやプロテインアレイチップを作るには光化学反応と半導体工業でよく用いられるリソグラフィーを用いて区画された多数のセルに設計された配列のオリゴマーを一塩基づつ合成して行く方法(非特許文献1参照),あるいはDNAプローブやタンパク質プローブを各区画に一つ一つ植え込んでいく方法(非特許文献2参照)がある。
これらのマイクロアレイは、いずれもスライドガラスやシリコン平面状に区画を区切り、多数のプローブをアレイ状に整列させた構造をしている。いずれの方法も、試料としては、細胞や組織を破砕して細胞内に存在するDNA(ゲノム解析用)、RNA(トランスクリプトーム解析用)あるいはタンパク質(プロテオーム解析用)を抽出し、プローブチップと反応させ、チップ上に捕捉した物質を何らかの方法で標識して検出するのが一般的である。特にDNAやRNAの分析には、一旦抽出したDNAやRNAをPCRなどで増幅する前処理を行い、この段階で、試料DNA或いはRNAを転写したcDNAに蛍光標識を行う。タンパク質を増幅することができないので、イムノアッセイと同じように標識物に酵素を用いて信号増幅するケースがある。
検出に関しては、チップ基板上のプローブに蛍光標識したDNA断片やmRNAやこれを逆転写したcDNAなどの試料ポリヌクレオチド(以下単に試料ポリヌクレオチド)をハイブリダイズさて基板上に導入される蛍光体を蛍光スキャナーで検出する。あるいは、試料ポリヌクレオチドをハイブリダイズさせた後に、プローブと隣接して試料ポリヌクレオチドに相補的な蛍光標識オリゴをライゲーション反応で連結したり、DNAポリメラーゼを用いて蛍光標識dNTP基質を反応させたりして、基板上に導入する蛍光体を検出する。最近では、酸化還元反応を利用した電気化学的な検出を行う方法も実用になっている。
タンパク質の場合は抗原抗体反応のようなアフィニティー反応を利用して、基板上に特定タンパク質などを捕捉した後、質量分析機で分析したり、蛍光標識抗体や酵素標識抗体でサンドイッチ反応をおこない、基板上に残る蛍光体や酵素活性を検出したりする方法、電気化学発光を用いる検出法がある。電気化学発光法の一例では、電極表面に抗原捕捉用の抗体でタンパク質を捕捉する。捕捉したタンパク質に対してルテニウム錯体標識した抗体でサンドイッチ反応を行う(非特許文献3参照)。電極表面ではルテニウムが酸化され、TPAのレドックス反応とカップルさせて還元するときに励起状態となったルテニウムの電子が基底状態に落ちる時に光を発する。高感度で定量的な検出を目的とした検出法としては、通常の顕微鏡検出が可能な700 mm程度の粒子を標識に用いて、基板上で反応した粒子数をカウンターでカウントして目的物質を定量検出するイムノアッセイの報告がある(非特許文献4参照)。
メタボロームやセロームでは生体や細胞の代謝状況や活動状況を解析するのであるが、実質的に代謝産物を網羅的に解析する方法は、現状では質量分析法がもっとも現実的な方法である。個別の物質に対して細胞内の特定物質の局在化や量の経時変化を測定する方法も開発されている。たとえば、カルシウムやマグネシウムといったイオンを測定する材料としては各種イオントラッカーが開発され、イオンチャンネルの研究に多用されていることは周知の事実である。これは細胞内に存在するイオンに配位する蛍光化合物を用いて、当該イオンの細胞内空間的分布を測定する技術である。他の例としてはグリーン フルオレッセイン プロテイン(GFP)を用いて、細胞内特定タンパク質の局在化を経時的に追跡する方法をあげることができる。
他方、細胞を基板上のマイクロストラクチャーで培養しながら光学的あるいは電気化学的に計測する研究が行われている。これらは、細胞の形状観察や細胞電位の変化を計測するため、細胞を連続的に生きたまま情報を得ることが出来る(特許文献1〜4参照)。
Science 251, 767-773(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 4613-4918(1996) Clin. Chem., 37, 1534-1539 (1991) Anal. Biochem. 202, 120-125 (1992) 特開2006−42671号公報 特開2006−94703号公報 特開2006−112846号公報 特開2006−115723号公報
DNAマイクロアレイやプロテインアレイチップあるいは質量分析法を用いて生体、特に細胞の情報を得る上での最大の問題となるのは、これらの解析手法を行うためには細胞や組織を破壊して含まれるDNAなりRNAなりタンパク質、そして代謝産物を分析しなくてはならない点にある。そもそも、生命現象を記述するには、各種マイクロアレイや質量分析を用いてある瞬間の情報を得るだけでは不十分で、連続した時間の中で物質がどのように変化するかを捉える必要がある。また、細胞はお互いに相互作用しているのであるから、細胞間の空間的な位置関係を考慮して各細胞の生理的挙動を記述することが必要である。
もちろん、従来の方法でも、いろいろな空間に存在する細胞群を刻々の時間で破壊して空間的時間的な連続性を持たせる解析が行われているが、同一の細胞ないし細胞群を用いるわけではないので、統計的な処理による平均化したデータが得られることになる。このため、たとえば、多細胞系の組織の特定細胞を刺激したときに、離れた位置の細胞(ここではレポーター細胞ということにする)の反応がどのようになるかを計測することを考えると、明らかに問題になる。すなわち、経時測定のため、刺激細胞とレポーター細胞のセットを多数得て、刺激後のレポーター細胞のレスポンスを測定計測したとしても、各細胞の状態を正確にコントロールすることが困難なために、多くの実験を繰り返して、統計処理することになり、重要な信号がノイズに埋もれてしまう。たとえ、統計処理によりノイズに埋もれないデータが得られ、見かけ上連続して解析した結果が得られても、実際は同一の細胞や組織の状態を経時的に追いかけているわけではない。
昨今の生物学では、個々の細胞が外界や隣接する細胞とどのような影響を与え合いながら機能しているかを調べる研究が盛んになりつつあるが、このような目的には、上記のように従来の細胞を破壊してその成分を調べる方法は適切ではないことが多い。また、再生医療に用いるエンブリオニックステムセルのような基本的に1細胞の取り扱いが必要な場合は、細胞を分析のために破壊することはできない。これらは分化誘導して利用するわけであるが、分裂初期の段階からの細胞状態の追跡とコントロールが必要となる。
イオントラッカーやGFPを用いる方法では、細胞内の当該イオンや特定タンパク質の局在を経時的に計測できるが、その利用範囲は限られたものである。なぜなら、イオントラッカーでは、カルシウムやマグネシウムなどのイオンに利用が限られる。GFPあるいはその類似のフルオレッセインプロテインを用いる方法では、遺伝子組み換えの技術を用いて標的タンパク質にフルオレッセインプロテインを組み替えたフュージョンタンパク質を生産させて、蛍光測定することになる。したがって、本来のタンパク質のサイズが異なり、また、活性に影響している可能性があり、必ずしもネイティブの細胞と同じ情報が得られるのと保障は無い。さらに、これらの方法では、測定できる物質が無機イオンやフュージョン可能なタンパク質に限られるため、糖や脂肪酸や核酸やタンパク質の代謝にかかわる物質、特に低分子有機物を追跡することは困難である。質量分析を用いる方法としては、従来から、呼気マススペクトログラムのように、揮発性成分を質量分析機で一網打尽に計測する方法が研究されているが、個別細胞や細胞集団レベルでの計測を行うには、測定下限限界の点で、現状では現実性が低いといわざるをえない。
本発明では、培養中の細胞1個ないし細胞集団(組織の特定機能を行っていると思われる同一機能の細胞群)からの経時的な情報を逐次得る手段を提供することにある。さらに、細胞は使いきりではなく生きた状態のまま、逐次解析ができる方法を提案することを目的とする。
本発明の細胞解析用チップは、基板と、細胞培養槽と、前記細胞培養槽中の細胞の活動に由来する物質を検出する検出部と、を有し、前記細胞培養槽と、前記検出部とは、前記基板上に形成されており、前記検出部は、検出する物質に応じた光学吸収特性を示す検出用成分が固定されている少なくとも2種以上の検出用プローブを有し、同種の前記検出用プローブを複数有する。本発明の細胞解析用チップでは、各検出用プローブを異なる位置に配置することができ、それぞれに異なる情報を取得することが可能となる。前記検出用プローブの種類は、前記検出用成分の種類に対応するように構成することができる。
好ましくは、前記検出用プローブが前記細胞培養槽内に添加される培養液に接触するように構成されている。さらに好ましくは、前記検出用プローブの全数の内、少なくとも一部は、前記細胞培養槽内の細胞に接触するように構成されている。前記細胞の活動に由来する物質としては、例えば有機化合物を含む。この場合、前記検出用成分の一例として、金属配位ポルフィリン誘導体が挙げられる。前記検出用プローブは、好ましくは前記検出用成分が固定されている表面にガス透過性膜を備える構成とする。
前記細胞培養槽は、少なくとも一つの細胞を保持可能な複数の細胞保持部と、互いに隣接する前記細胞保持部を連結する連結部とを有し、隣接する前記細胞保持部に保持されている細胞同士が前記連結部にてギャップジャンクションを形成可能であるように構成することができる。
前記検出部の一態様として、2種以上の検出用プローブが所定のパターンで配列している検出用小領域を複数含むように構成することができる。この場合、前記検出用小領域は、好ましくは、一辺の長さが1〜500μmの矩形である。
また、前記検出部の一態様として、前記検出用プローブが粒子からなるように構成することができる。この場合、前記検出用プローブの蛍光特性、核磁気共鳴特性、磁気特性、光吸収スペクトル特性、またはこれらの組み合わせに基づき、前記検出用プローブに固定されている前記検出用成分の種類が識別可能とすることが好ましい。また、前記検出用プローブの粒径は0.1〜10μmとすることが好ましい。
さらに本発明は、上述の細胞解析用チップと、前記細胞解析用チップの前記検出部における前記検出用成分の光吸収スペクトルを測定する測定装置とを備える、細胞解析用システムである。
さらに本発明は、基板と、細胞培養槽と、前記細胞培養槽中の細胞の活動に由来する物質を検出する検出部と、を有し、前記細胞培養槽と、前記検出部とは、前記基板上に形成されており、前記検出部は、検出する物質に応じた光学吸収特性を示す検出用成分が固定されている少なくとも2種以上の検出用プローブを有する、細胞解析用チップを用いて、細胞の活動状況を解析する細胞解析方法であって、前記細胞培養槽に細胞を付着させる付着工程と、前記検出用成分の光学吸収特性を検出する検出工程と、前記検出工程の検出結果に基づいて、細胞の活動状況を解析する解析工程とを有する。
本発明は、細胞や組織を一定期間培養する細胞培養チップの機能と細胞が放出する物質で特に揮発性の分子群を計測する機能を実現することができるため、細胞を殺さずに経時的に解析することができる。このため、真に同一細胞の生化学的な変化を連続してモニターすることが可能となる。したがって、生命現象の中核をなす物質の代謝状況を連続して追跡することが可能となる。
本発明の細胞解析用チップは、基板と、細胞培養槽と、前記細胞培養槽中の細胞の活動に由来する物質を検出する検出部と、を有し、前記細胞培養槽と、前記検出部とは、前記基板上に形成されており、前記検出部は、検出する物質に応じた光学吸収特性を示す検出用成分が固定されている少なくとも2種以上の検出用プローブを有し、同種の前記検出用プローブを複数有する。
前記検出部は、例えば、細胞の活動により細胞が放出する物質を検出することができるように構成する。物質の検出としては、例えば、物質の種類を特定する検出、さらには量を特定する検出、放出される物質の種類の変化の検出、着目した物質の放出量の変化の検出等が挙げられる。また、微小な検出用プローブを用いることにより、細胞の細分化された部位に由来する物質を検出することが可能となる。
本発明においては、細胞培養槽中の細胞が検出対象となるので、多細胞系で個別の細胞を生きたままで解析することが可能となる。さらに、複数細胞を一細胞毎培養しながら細胞間のインタラクション形成が可能な構成とすることにより、細胞の細分化された部位に由来する物質や、インタラクション形成に由来する物質の検出が可能となる。本発明では、細胞が放出する種々の物質を同時に検出する必要性や、物質の検出の精度向上のため、複数種類の検出用プローブを検出部に配置するようにする。さらには、同種の検出用プローブを複数配置するようにする。このように構成することにより、複数の隣接する細胞に複数種類の検出用プローブが少なくても1セットを各細胞の接触する部分に配置することが出来き、各細胞が放出する種々の物質を細胞毎に検出できるようになる。
検出用プローブの種類は、固定されている検出用成分の種類に対応する。検出用成分としては、生体物質親和性化合物を用いることができる。検出する物質としては、例えば、細胞が放出する有機化合物が挙げられ、かかる有機化合物を検出する検出用成分として、例えば金属配位ポルフィリン誘導体を用いることができる。その他に、Richardtの色素として知られるSolvatochromicsや、水素イオン検出用のメチルレッドやキシレノールブルー等を用いることができる。
金属配位ポルフィリン誘導体の場合には、中心部の金属配位座とその周辺の疎水性ポルフィリン残基とポルフィリン残基の側鎖と物質のインタラクションから、特定の分子群ないし残基群を配位することができる(Nature 406, 710- 713(1990)、Angew. Chem. Int. Ed. 44, 4528-4532(2005))。特定分子群が配位した金属配位ポルフィリン誘導体は、特定分子群が配位していない金属配位ポルフィリン誘導体(以下フリーの金属配位ポルフィリン誘導体)と光吸収スペクトルが異なる。このため、インタラクションした特定分子群の量を光学的に測定することができる。ポルフィリンの側鎖と配位金属を変えると、異なる分子群ないし残基群がインタラクションするようになるので、種々金属配位ポルフィリン誘導体を用意することでいろいろな有機化合物分子群や有機化合物中の残基群を検出することができる。
検出用プローブは、細胞解析用チップの検出部を構成する基板表面に検出用成分を固定して形成されるドットであってもよいし、粒子に検出用成分を固定して形成されるものであってもよい。後者の場合、例えば、検出用成分を固定した粒子を混合したものを基板上にばらまき、ランダムに検出用プローブを配置した検出部を形成することができる。好ましくは、細胞1個当たり複数の検出用プローブが接触するように構成することとする。細胞のサイズは一般的に動物細胞で10〜30μm、植物細胞で10〜100μm程度である。複数種の検出用プローブを用いて一つの細胞からの情報を検出するためには、各検出用プローブのサイズは細胞のサイズに比べて十分小さい必要がある。直径0.5μmのドットあるいは粒径0.5μmの粒子であれば、10μmの細胞に対して300個程度の検出用プローブをチップ上に配置できる。
検出用プローブに固定された金属配位ポルフィリン誘導体の光学吸収特性の測定には、例えば、回折格子で波長分散させた単一バンドの光をチップにあてて、チップの透過光や反射光を対物レンズで集光し、CCD2次元センサーを用いて吸収スペクトルを得る方法を採用することができる。この場合、検出用プローブの直径又は粒径の下限値は、対物レンズの開口数と波長λにより決定される次式の分解能で決定される。
分解能=0.61λ/開口数
金属配位ポルフィリン誘導体の吸収波長は400〜600nmの可視光領域であるので、開口数が0.64のレンズを用いれば、検出用プローブとして使用できる大きさの一応の下限値は直径又は粒径375〜572nmとなる。一応と述べたのは、通常の対物レンズで透過光や反射光計測を行った場合である。エバネッセンス波を用いるニアフィールド顕微光学系を用いれは、さらに分解能をあげることができることは、一般に知られた事実で、したがって上記で示したサイズより小さな検出用プローブ、たとえば直径又は粒径100nmの検出用プローブを用いた場合でも各検出用プローブを区別して吸収波長を測定する上ではさしたる技術的障害にはならない。より多数種の金属配位ポルフィリン誘導体を用いる上でも、ドットや粒子が小さいほうが1種あたりの投入できる粒子数が増えるので限られた空間しかない細胞培養エリアに対応する検出部のエリアで複数の有機化合物を計測する上で有利となる。また、固定されている金属配位ポルフィリン誘導体の種類が異なる粒子をランダムに固定して検出部とする場合には、後に述べるように、各粒子に固定されている金属配位ポルフィリン誘導体の種類を識別するために、例えば粒子の粒径に違いを持たせてインデックスとして用いることができる。この場合、吸収波長の短い金属配位ポルフィリン誘導体を用いる場合は小さい粒子、波長の長い金属配位ポルフィリン誘導体を用いる場合は大きい粒子を用いるのが有利である。
さらに、金属配位ポルフィリン誘導体、Solvatochromics、メチルレッド、キシレノールブルー等の生体物質親和性化合物である検出用成分の細胞毒性や細胞に与える活性を防ぐために、細胞がこれらの検出用成分と直接接触しないように、金属配位ポルフィリン誘導体を固定した基板表面にガス透過性膜を形成する。ガス透過性膜としては、箔層テフロン(登録商標)シート、箔層シリコンシート、さらにはシリコンポリマー系分子膜やポリフルオロカーボン系(いわゆるテフロン(登録商標))分子膜や細胞膜と同種の2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンと疎水性基質のコポリマー(以下単にMPCポリマー)膜等が好ましく用いられる。
基板上に直接金属配位ポルフィリン誘導体を固定し、検出用プローブであるドットを形成するには、例えば、シリコンのような疎水性基板を用い、これにインクジェットやピンにより、有機溶媒に溶解した金属配位ポルフィリン誘導体を塗布した後、溶媒を蒸発させる方法を採用することができる。検出用プローブとして粒子を用いる場合は、粒子のコアとなる部分がポリスチレンを用いる。ポリスチレン粒子表面は疎水性なので、これに金属配位ポルフィリン誘導体を吸着させる。このほかコア粒子として、シリコンやガラスの無機質を用いることもできる。シリコンの場合は、粒子表面に直接金属配位ポルフィリン誘導体を吸着させてもよいし、粒子表面をシラン処理して表面に疎水性有機層を設け、そこに金属配位ポルフィリン誘導体を共有結合させてもよい。
細胞が産生する有機化合物が金属配位ポルフィリン誘導体の性質にしたがってインタラクションし、検出用プローブの光吸収スペクトルが変化する。顕微分光法を用いて、顕微画像として捕らえた金属配位ポルフィリン誘導体を固定したドットや粒子のスペクトルを解析することで、細胞が発する特定の分子群(あるいは分子中の特定残基群)の量を測定することができる。一定時間間隔でスペクトル変化を測定することにより、同一細胞からの情報を連続して得ることができる。
単一の金属配位ポルフィリン誘導体からなる粒子を用いる場合、あるいは基板上の決められた位置に金属配位ポルフィリン誘導体をドット状に固定する場合は金属配位ポルフィリン誘導体の種類を特定できるので金属配位ポルフィリン誘導体の種類を特定するためのインデックスは不要であるが、異なる種類の粒子をランダムに配置して検出部を形成する場合は、粒子にインデックスをつけて粒子位置と固定した金属配位ポルフィリン誘導体の種類を判別できるようにした方が好ましい。金属配位ポルフィリン誘導体の種類が少ない場合は、金属配位ポルフィリン誘導体自身のスペクトル、特に配位金属原子団の吸収極大に基づき識別することが可能となる。しかし、使用する金属配位ポルフィリン誘導体の種類が多くなると、自身のスペクトルだけでは区別できなくなるので、他のインデックスが必要となる。
このインデックスを付与した粒子の第1例として、種々蛍光体を粒子に混入させ、この種々蛍光体の蛍光波長の違いをインデックスとして用いる粒子が挙げられる。インデックス用の蛍光体は、フルオレッセイン系やローダミン系、フタロシアニン系、BODIPYなどを用いることができるが、金属配位ポルフィリン誘導体の吸収極大バンドと異なる波長域の蛍光色素を用いるようにする。金属配位ポルフィリン誘導体と同一波長の蛍光体を用いると、消光が起きる可能性があり、不都合が生じるからである。異なる2種又は3種の蛍光色素の量比を違えた組み合わせの粒子群を作製して識別可能としてもよい。いずれにせよ、ある特定のインデックスを付した粒子群とある特定の金属配位ポルフィリン誘導体とを対応するように組み合わせることで、識別可能な金属配位ポルフィリン誘導体が固定された検出用プローブである粒子を得ることができる。例えば、400nm〜800nmの波長領域に8種程度のお互いに識別可能な蛍光体を得ることができる。これら蛍光体の励起には複数のレーザー光源を用いる。エネルギートランスファーを利用することで、複数蛍光体の励起用レーザー光源の数を少なくすることもできる。
インデックスを付与した粒子の第2例として、核磁気共鳴特性の違いにより識別可能な粒子が挙げられる。数T/mmの傾斜磁場を持つ顕微NMRを用いることで検出部に配置されている粒子の位置と種類を識別することができる。
インデックスを付与した粒子の第3例として、磁気特性の違いにより識別可能な粒子が挙げられる。磁場検出としてはSQUIDを利用することができる。
本発明の細胞解析用チップは、生きた細胞を扱うために、チップには培養機能を持たせている。すなわち、細胞培養槽を設けている。本発明の細胞解析用チップの一態様においては、細胞培養槽において細胞一個ずつの培養を可能にするために、細胞培養槽中に細胞を実質1個ずつ保持する大きさの細胞保持部を複数設け、さらに細胞間の情報交換が可能なように細胞から出る突起で細胞同士のギャップジャンクションを形成できるように隣接する細胞保持部間をつなぐ連結部を設けることができる。これにより、細胞を培養しながら、なおかつ、細胞間に任意にギャップジャンクションを形成し、細胞の放出する有機化合物を解析することができる構成としている。
本発明の細胞解析用チップにおいて、検出用プローブである粒子を基板上にランダムに配置することにより検出部を形成する態様においては、各粒子の位置が必ずしも一定ではない。したがって、これら二次元平面状の多点からのスペクトルを得る分光装置が必要となる。例えば、細胞解析用チップをメカニカルに移動させて、各粒子に光ビームをあてて測定する方法を採用することができる。ただし、この方法では、各粒子位置の確認後、一箇所ずつスペクトルを逐次測定する必要があるために、多点のスペクトルを得るのに時間がかかるし、高精度の電動2次元ステージが必要になる。よって、以下に説明する二次元分光装置を採用することがより好ましい。
この二次元分光装置は、細胞解析用チップ平面に波長を可変させながら単一波長幅のバンドを照射する光源と分光装置からなる光学系を用いて、チップ平面全体に360nmから900nmの範囲の単一バンド(例えば、2nm幅)を長波長側から短波長側に波長を変えながら照射する。一旦分光した光を、光拡散ボックスで散乱光として、チップ平面をカバーする領域(たとえば10×10mm)に照射する。これで、単一バンドの光を二次元平面に照射することができる。照射光の一部は微小なダイクロイックミラーをアレイ状に配置した構造のビームスプリッターを拡散ボックスの出口の窓と細胞解析チップの間の一部に配置し、二次元の窓からの光の10%程度を1次元情報に置き換えて、分けて一次元の入射光センサーで照射光強度Iを測定する。細胞解析チップを通過した光、あるいは反射した光は、光学系を通して光検出用の二次元センサーに取り込まれる。チップと二次元センサーを結ぶ光学系は、一系統のレンズを用いてチップ平面像を二次元センサー上に投影する。レンズ中心部と周辺部での光量が異なるシェーディングにより、周辺光量が低下するので、演算装置で二次元センサーからの出力を補正する。照射光バンドに対する二次元センサーの各ピクセルからの出力をチップ全体で得ることで、二次元に配置された検出用プローブの各金属配位ポルフィリン誘導体に由来するスペクトルを得ることができる。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の細胞解析用チップの上面の概略図である。細胞解析用チップ10は、基板1と、基板1上に形成されている検出部4と、細胞培養槽5とを有する。細胞培養槽5は、基板1上の外周部に設けられている隔壁部材6によって囲まれている内部領域である。図1においては、細胞培養槽5内で神経細胞7a、7b、7c、7dが培養されている様子(実施例1)を模式的に示す。尚、神経細胞は、実際には細胞解析用チップ10の大きさと比べると格段に小さく、図1に示すような相対的大きさを有するものではなく、図1は相対的大きさの点で実際とは異なる。
細胞解析用チップ10は、まず基板1上に検出部4を形成し、その後隔壁部材6を基板1上に設けることにより細胞培養槽5を形成する。図2は、基板1上に検出部4のみが形成されている状態の上面図を示す。検出部4は、基板1上に規則的に形成されている検出用プローブである複数のドット2からなる。本実施形態においては、検出用成分として金属配位ポルフィリン誘導体を用いる。金属配位ポルフィリン誘導体の種類に応じて種類の異なるドット2が形成される。検出部4において、ドット2は、縦4個×横4個の同一のパターン3が繰り返されるように配列されている。尚、ドット2の配列の最小繰り返し単位となるパターン(検出用小領域)3は、縦4個×横4個の配列に限定されることはない。図2では、ドット2の配列の最小繰り返し単位となるパターン3を、便宜的に実線で区画している。最小繰り返し単位3毎の区画は、実際に存在しても良いが、区画がされていなくてもドット2のパターンから区画を判別することが可能である。区画が実際に存在する場合は、予めリソグラフィーなどを用いて区画をパターニングした後に、各区画上に最小繰り返し単位のドット配列を形成することにより形成することができる。パターン3の形状は本実施形態では矩形であり、1個の細胞に対して複数のパターン3で検出可能なことが好ましいことより、正方形の一辺の長さは1〜500μm、特に1〜100μmであることが好ましい。
本実施形態においては、基板1として、直径9mm、厚さ0.2mmのポリスチレン円形状板をプラズマ処理したものを用いる。基板1の材質としてはガラスやシリコンでもよいが、ドット2を構成する金属配位ポルフィリン誘導体が一般的に疎水性のため、基板1の材質も疎水性に改質して用いることが好ましい。
ドット2は、金属配位ポルフィリン誘導体を1mMの濃度でエタノールに溶解した溶液を、インクジェットで基板1に塗布することにより形成する。ドット2の形成は、大気中に含まれる硫化物やアミン類の影響を防ぐため、99.999%以上の窒素雰囲気やアルゴンやヘリウムなどの不活性ガス雰囲気で行う。ドット2は、直径が約500nm、各ドット2の間隔が約600nmとなるように形成する。
ドット2の色調は、使用する金属配位ポルフィリン誘導体の種類に依存し、例えば、青系の色調、赤系の色調のものがある。尚、ドット2を形成しても基板1の色調が変化しない場合は、金属配位ポルフィリン誘導体の吸着量が少ないことを示す。これはポリスチレンからなる基板1の表面の状態に依存する。基板1をプラズマ処理して時間が経過すると吸着量が減る傾向にあるので、好ましくは、プラズマ処理後直ちにドット2を形成する。
本実施形態で用いる金属配位ポルフィリン誘導体として、例えば、H2T(2,6-OHPh)P、H2T(3,5-pyrimidyl)P、H2TPP、H2T(2-pyridyl)P、H2T(3-pyridyl)P、H2T(4-pyridyl)P、H2tris(4-pyridyl)P、H H2trans-bis(4-pyridyl)P、H2cis-bis(4-pyridyl)P、H2mono(4-pyridyl)P、5,10,15,20-tetrakis(2’,6’-bis(tert-butyldimethylsilyloxyl)phenyl)porphylyne等の化合物に、金属が配位した化合物を用いることができる。配位金属としては、Fe3+、Sn4+, Co3+, Cr3+, Mn3+, Co2+, Cu2+, Ru2+,Zn2+,Ag2+、ユーロピウム、ルテニウム等の3A、4A、5A、6A、7A族、8族、1B、2Bに属する遷移金属イオン、Al, Ga, In, Tl, Si, Ge, Sn, Pb, As, Sb, Bi, Se, Te, Pr等のイオンを用いることができる。これらのアポポルフィリンと種々金属(半金族も含む)配位化合物の組み合わせから、任意の配位化合物を選択しドット2を形成する溶液に添加する金属配位ポルフィリン誘導体として用いる。
例えば、パターン3の1行1列の位置のドット2には配位化合物Aを用い、1行2列の位置のドット2には配位化合物Bを用い、・・・・・、というように、最小繰り返し単位であるパターン3において、各ドット2に用いる金属配位ポルフィリン誘導体が異なるようにする。そして、パターン3が繰り返され検出部4が構成されるようにする。
ドット2が乾燥した後、基板1表面に、好ましくはガス透過性膜を形成する。ガス透過性膜により、細胞培養槽5内で培養される細胞が直接ドット2を構成する成分である金属配位ポルフィリン誘導体等に直接接触することがなく、これらの成分が仮に細胞に対する毒性を有するものであったとしても、その影響が生じない。また、ガス透過性膜は、細胞が放出するガスを透過するので、これらのガスがドット2に到達することを妨げることはない。ガス透過性膜としては、細胞膜を構成する成分である2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、疎水性基質のコポリマー(以下単にMPCポリマー)等が好ましく使用される。MPCポリマーを25重量%エタノール溶液に0.125重量%となるように溶解した溶液100μlを基板1上に添加し、15分間放置した後スピンコーターで基板1上のMPCポリマー溶液を除去する。かかる工程により、基板1の表面が親水性でガス透過性のあるMPC分子膜で覆われることになり、ガス透過性膜が形成される。
ガス透過性膜としては、この他にシリコンポリマー、ポリフルオロカーボン系樹脂等を用いることができる。シリコンポリマー又はポリフルオロカーボン系樹脂は、撥水処理剤として市販されているスプレーを使用することができる。これを使用する場合、基板1表面にスプレーした後、水洗することにより、基板1の表面が親水性でガス透過性のあるシリコンポリマー膜又はポリフルオロカーボン膜で覆われた細胞解析用チップ1を得ることができる。
ガス透過性膜が形成されている基板1上に、好ましくはさらにコラーゲン層を形成する。コラーゲン層は、細胞がこれを介して基板1上に付着しやすくなる。コラーゲン層は温水(80℃)に溶解したコラーゲン溶液50μlを基板1上に塗布し、スピンコーターで50rpm5秒間回転させ、続いて200rpmで15秒間回転させる。一旦室温まで冷却し、コラーゲンを基板表面に固定する。コラーゲンは製品により素性が異なるので、塗布温度とスピンコーターの回転条件はコラーゲンのロットごとに適宜調整する。
基板1上に、検出部4、さらに好ましくはガス透過性膜、コラーゲン層を形成し、その後、基板1上の外周部に、隔壁部材6を設ける。隔壁部材6には、例えば、厚さ200μmのポリエステルテープを用いることができる。ポリエステルテープは撥水性なので、内側の領域に水溶液を保持することができる。この内側の領域が細胞培養槽5となる。
上述のようにして製造した細胞解析用チップ1において、細胞培養槽5内で細胞を培養し、細胞が基板1上に固着し、細胞が放出する物質を検出部4で検出することができる。
検出する物質に応じて、各ドット2の色が変化する。例えば、変化後の最小繰り返し単位のドット2の色パターンを、基準となる色パターンと比較することにより、検出された物質の種類を特定することが可能となる。または、最小繰り返し単位のドット2の色パターン同士を比較することにより、検出されている物質の種類が異なることと等細胞の活動に由来する種々の情報を取得することができる。
(第2の実施形態)
本実施形態の細胞解析用チップは、第1の実施形態とは検出部4の構成のみが異なるので、この点のみ説明し他の説明は省略する。図3は、本実施形態の細胞解析用チップの製造工程において、基板1上に検出部4が形成されている状態の上面図を示す。
本実施形態においては、粒径400nmの粒子に予め金属配位ポルフィリン誘導体を固定して検出用プローブである検出用粒子を作製し、これを基板1上に並べて検出部4とする。検出部4は、固定されている金属配位ポリフィリン誘導体の種類が異なる検出用粒子36,37,38,39からなる。図3においては、異なる4種類の検出用粒子36,37,38,39からなる検出部4を示すが、検出用粒子の種類は勿論4種類に限定されることはない。
検出用粒子は、粒径500μmのポリスチレン粒子の表面に金属配位ポルフィリン誘導体を1種類ごと吸着させて作製する。尚、検出用粒子の粒径は、検出対象である物質を放出する細胞の大きさを考慮すると、0.1〜10μmであることが好ましい。
図4は、検出用粒子の作製方法を模式的に示す工程図である。まず、図4のSt10に示すように、4つの容器36a、37a、38a、39a内で、それぞれ異なる種類の金属配位ポルフィリン誘導体を溶解したエタノール溶液と、同じくポリスチレン粒子36b、37b、38b、39bを0.5%(w/v)となるようにエタノールに懸濁した液を等容量混合する。
30分間穏やかに撹拌した後、St11にて10000Gで30分間遠心してポリスチレン粒子36b、37b、38b、39bを回収する。沈殿物は、金属配位ポルフィリン誘導体が吸着することにより、色調が変化している。吸着する金属配位ポルフィリン誘導体の構造や配位金属にもよるが、例えば青系の色調のものや、赤系の色調のものがあり得る。金属配位ポルフィリン誘導体が吸着していない場合は、ポリスチレン粒子の沈殿は、白色なのではっきり識別できる。この場合は、使用したポリスチレン粒子が界面活性剤などでコーティングされている可能性があるので、あらかじめ、純水とエタノールで洗浄しておく。それでも吸着量が少ないときは、混合液のアルコール濃度を下げる。St12で、回収した金属配位ポルフィリン誘導体が固定されたポリスチレン粒子36、37、38、39を20%エタノールでリンス後、純水でリンスし乾燥する。なお、金属配位ポルフィリン誘導体の吸着が十分ではない場合は、St13にてさらに金属配位ポルフィリン誘導体のエタノール溶液とともに再懸濁し、遠心、洗浄の工程を行う。
このようにして調製した金属配位ポルフィリン誘導体を吸着したポリスチレン粒子36、37、38、39を、St14でそれぞれ20%エタノールに懸濁させ、St15でかかる懸濁液を一つの容器30内で一定量ずつ混合する。そして、St16で、粒子懸濁液100μlを直径9mmのポリスチレン基板1上に添加し、放置する。ポリスチレン粒子36、37、38、39は比重1.05であるので、20%エタノール中では沈殿し、ポリスチレン基板1上に吸着する。この状態で3時間放置すると、金属ポルフィリン誘導体が吸着しているポリスチレン粒子36、37、38、39は基板1上で自己集合し、ほぼ細密に配列する。複数種の金属ポルフィリン誘導体吸着ポリスチレン粒子36、37、38、39はこの時点でランダムにポリスチレン基板1上に固定される。
溶媒を乾燥させた後、好ましくは、St17にてシリコンポリマースプレーかフルオロカーボンスプレーを用いて、ポリスチレン粒子36、37、38、39が固定された基板1上にガス透過膜32を形成する。あるいは、シリコンポリマースプレーやフルオロカーボンスプレーの代わりに、0.2%のMPCポリマーの25%エタノール溶液を基板1表面に100μl添加し、15分間放置した後、25%アルコールで洗浄して真空乾燥することにより、基板1表面に親水性でガス透過性のある分子膜を形成してもよい。ガス透過膜32により、第1の実施形態と同様、細胞培養槽5内で培養される細胞がポリスチレン粒子36、37、38、39に被覆されている金属配位ポルフィリン誘導体に直接接触することがなく、これらの成分が仮に細胞に対する毒性を有するものであったとしても、その影響が生じない。また、ガス透過性膜32は、細胞が放出するガスを透過するので、これらのガスがポリスチレン粒子36、37、38、39に到達することを妨げることはない。
さらに、好ましくはSt18にて、細胞付着を促進するための細胞付着促進層33をガス透過性膜32上に形成する。細胞付着促進層33の形成には、例えば、コラーゲンを用いることができる。以上の工程により、基板1上に、検出用粒子からなる検出部4、ガス透過性膜32、細胞付着促進層33を形成することができる。
本実施形態の細胞解析用チップにおいて、細胞培養槽内で細胞を培養した際の細胞40と検出部4との関係を、図3に模式的に示す。検出用粒子36、37、38、39の大きさは、細胞40に比して小さく、各細胞40の下には、通常全種類の検出用粒子36、37、38、39が一定の確率で存在する。したがって、各細胞40が発する低分子化合物(実質的に揮発性の物質)が各細胞40の下にある検出用粒子36、37、38、39まで到達し反応するので、細胞40毎に発する低分子化合物を計測することが出来る。
上述の通り、本実施形態において、検出用粒子36、37、38、39は基板1上にランダムに固定される。したがて、どの検出用粒子36、37、38、39がどこに固定されているかを知ることが必要である。本実施形態では、検出用粒子36、37、38、39の製造工程において、材料として用いたポリスチレン粒子36b、37b、38b、39bに予めインデックスを組み込んでおき、これを使用する。
蛍光のインデックスを用いる例を示す。インデックス用蛍光体としてはsulphorhodamin 101(λex=594nm、λem=515nm)、Alexa Fluor 633(λex=630nm、λem=660nm)の2種類を用いる。sulphorhodamin 101とAlexa Fluor 633の2種類の蛍光体の量を8段に変化させた組み合わせのポリスチレン粒子を用いる。すなわち、sulphorhodamin 101の相対量を0、14、28、43、57、71、86、100とした8種に対し、各々Alexa Fluor 633の相対量が0、14、28、43、57、71、86、100の8種を含むすべての組み合わせ64種のポリスチレン粒子を得る。これに種々金属ポルフィリン誘導体を固定すれば、どの金属ポルフィリン誘導体が固定された粒子であるか蛍光インデックスに基づいて決定できる。蛍光インデックスの数から、使用できる金属ポルフィリン誘導体の種類は64種である。
さらに、金属ポルフィリン誘導体の種類、すなわち検出用粒子の種類を増やしたい場合は、蛍光インデックスに加え、金属ポルフィリン誘導体自体の持つソーレー(Soret)バンドの吸収波長をインデックスに利用する。たとえば400nm以下帯、400〜430nm帯、430nm以上帯の3段に分類する。金属ポルフィリン誘導体のソーレーバンドの吸収波長をインデクシングに追加することで、全体の組み合わせは64×3=192段の粒子センサーの識別が可能であるが、ソーレーバンドは400〜450nm帯に集中しているため、この帯域をさらにサブ帯域に分類して用いる。いずれにせよ、蛍光、ソーレー帯の組み合わせを工夫することで、基板1上に固定した検出用粒子の種類の識別が可能となる。
[実施例1]
実施例1は、第2の実施形態の細胞解析用チップを用いて細胞内の複数有機化合物の分布を調べる例について述べる。検出用成分として、64種の検出用粒子を用いた。すなわち、検出用粒子の作製において、それぞれ異なる64種の金属配位ポルフィリン誘導体を用いた。64種の検出用粒子を、直径9mmのポリスチレン基板1に細密吸着させ、フルオロカーボンで表面をコーティングし、コラーゲン層を形成し、さらにポリエステルテープを外周部に固定することで細胞培養槽5を形成した細胞解析用チップ10を用いる。
本実施例で用いる金属配位ポルフィリン色素の中には、Sn(TPP)Cl2, Co(TPP)Cl, Cr(TPP)Cl, Mn(TPP)Cl, Co(TPP), Cu(TPP), Ru(TPP), Zn(TPP), Ag(TPP), Fe(TFPP)Clなどが含まれる。各々sulphorhodamin 101とAlexa Fluor 633の蛍光インデックスと粒径405nm、450nmの粒径インデックスで128段にインデクシングしたもののうち、sulphorhodamin 101とAlexa Fluor 633の相対量を0、14、43、71、86、100と100、14、43、71、86、0とした36種の組み合わせ×粒径2段の64段となるように選んで使用する事とする。
細胞試料の調製法を述べる。ヒトの鼻腔から採取した神経細胞をマイクロスフェアー法で培養する。マイクロスフェアーをホッピングによりばらばらにして神経幹細胞懸濁液を得る。
まず、細胞培養槽5に所定の培養液を添加する。次に、神経幹細胞懸濁液からキャピラリーピペットで細胞を吸い上げて、培養液内に細胞を放出し、5%CO雰囲気37℃で培養を続けると、図1に示すように、基板1の表面に細胞7a、7bが固着する。固着した細胞7bは分化し、アクソン49とデンドローム50を伸ばし始め、分化した神経細胞同士のアクソン49とデンドローム50によるギャップジャンクション51、52を形成した神経細胞回路を得る。神経細胞回路を形成していない単独の神経細胞7aもある。培養中、連続して、すべての検出用粒子の380〜900nmのスペクトルを1時間間隔で測定する。ギャップジャンクションを形成する前と後では、ジャンクション形成部分の近傍にある検出用粒子の金属配位ポルフィリン誘導体の吸光度が急激に変化するものがあることがわかるはずである。
図5は、図1の64種の検出用粒子のうち4種の検出用粒子のスペクトルの時間変化をその吸収極大の差スペクトル強度(ΔA)で表す。横軸は時間を表す。本実施例においては、細胞7bと細胞7cとが第一のギャップジャンクション51を時間T1において形成し、次に細胞7bと細胞7dが第二のギャップジャンクション52を時間T2において順次形成した。図5の測定曲線41は、ギャップジャンクションが形成されるとそのつど生成し蓄積される物質があることを示す。測定曲線42は、産出量の変動の大きくない物質があることを示す。測定曲線43は、ギャップジャンクション形成時に現れる物質があることを示す。測定曲線44は、ギャップジャンクション形成の前に産出され、ギャップジャンクション形成時には産出量が低下する物質があることを示す。
このような結果が得られれば、変化のあった金属配位ポルフィリン誘導体に結合する物質の量に変化があったと考えることができるはずである。同様に、着床分化した神経細胞本体部分近傍に存在する金属配位ポルフィリン誘導体のいくつかにも変化があるはずである。
(第3の実施形態)
本実施形態の細胞解析用チップは、第1の実施形態の細胞解析用チップとは、細胞培養槽5内に細胞保持部を有する点のみが異なるので、この点のみを説明し、他の構成の説明は省略する。
図6は本実施形態の細胞解析用チップの断面図であり、図7はその上面図である。本実施形態の細胞解析用チップ11は、細胞培養槽5内にて、周辺より窪んでいる円形状の細胞保持部65を二つ有する。細胞解析用チップ11は、ガラス基板61上に、検出部4、ガス透過性膜、コラーゲン層33が形成され、さらにこの上に細胞保持部65を形成する層となるアガロースゲル膜63が形成されている。そして、隔壁部材6を設けることにより細胞培養槽5が形成されている。
以下、細胞保持部65の形成方法について説明する。コラーゲン層33を形成した基板1をスピンコーターに装着し、温度を50℃に保持する。1%アガロース水溶液1mlをガラス基板に塗布し直ちに50rpmで5秒間回転させ、続いて200rpmで15秒間回転させる。ガラス基板を一旦湿度70%以上の室温に放置し、アガロース膜のゲル化を促進する。この状態で膜厚10μm以下のアガロース膜が形成される。
アガロースゲル膜63を形成したガラス基板1のアガロースゲル膜63上の外周部に隔壁部材64である200μm厚ポリエステルテープを貼り、細胞培養槽を形成する。その後、細胞培養槽内に純水を添加し、ガラス基板1を介してアガロースゲル膜に1480nmのレーザーを照射することにより二つの細胞保持部65を形成する。細胞培養槽内の水が1450nmの光を吸収して局所的に発熱する。これによりほぼ光を当てた領域のみのアガロースゲル膜63を融解除去できる。すなわち、レーザー照射部のアガロースゲル膜63を部分的に除去することにより二つの細胞保持部65を形成する。二つの細胞保持部65の間隔は100μmである。細胞保持部65ではコラーゲン層33がむき出しになる。そして、そのほかの部位にはアガロースゲル膜63が形成されていることになる。以上のようにして、細胞解析用チップ11を作製する。
このようにして作製した細胞解析用チップを用いて細胞の活動を解析する際には、細胞培養槽5内に培養液を添加する。次に、神経幹細胞懸濁液からキャピラリーピペットで細胞を吸い上げて、細胞を1個ずつ基板上の細胞保持部65に放出し、5%CO雰囲気37℃で培養を続けると細胞保持部65の底面に細胞が固着する。あるいは、所定の濃度の神経幹細胞懸濁液を細胞培養槽内に均一に塗布して培養しても、アガロースゲル膜領域には細胞が固着することが無いので、実質的には細胞保持部65に細胞を固着させることができる。アガロース部分に落下した細胞は基板に固着できずに死滅する。
固着した神経幹細胞は分化し、いずれアクソンとデンドロームを伸ばし始める。任意のアクソンとデンドロームを誘導するために細胞保持部65間に連結部を設けてもよい。図8は、細胞保持部65間に連結部を設けた細胞解析用チップの上面図を示す。連結部66は、細胞保持部65の作製と同様に1450nmレーザーを照射することにより形成することができる。レーザーを照射すると、溶媒である水が1450nmの光を吸収して局所的に発熱する。これによりほぼ光を当てた領域のみのアガロースゲル膜を融解除去できる。発熱はレーザーを当てた局所領域に限られ、しかも、対流により熱融解したアガロースと水は上方の培養液の方向に上昇するため、細胞に熱の影響は及ばない。すなわち、この方法をとれば、細胞培養中に、細胞の生育状況に応じて自在にマイクロウェルパターンや溝を加工できる。このようにしてアガロースゲル膜63を除去した連結部66を形成し、特定の神経細胞7e、7f同士のアクソン74とデンドローム75を連結部66に誘導し、ギャップジャンクション76を形成した神経細胞アレイ回路を得る。連結部66の幅は、本実施形態においては、5〜7μmとする。尚、連結部66は、細胞の培養を開始する前に予め設けておくようにしてもよい。
(第4の実施形態)
本実施形態の細胞解析用チップは、第1の実施形態の細胞解析用チップとは、ガラス基板表面にあらかじめマイクロ加工技術を用いて細胞保持部及び連結部からなるマイクロストラクチャーを構成し、その後マイクロストラクチャーにのみ検出部4を形成している点が異なるので、この点のみを説明し、他の構成の説明は省略する。
図9は本実施形態の細胞解析用チップの上面図、図10はマイクロストラクチャー91部分の上面図である。マイクロストラクチャー91は、あらかじめリソグラフィーの技術を用いて作成する。すなわち、定法に従い10×10×0.1mmのガラス基板92上にSU−8のような紫外線硬化樹脂を塗布して、パターニングしたい構造のポジパターンを通して紫外線を照射する。硬化しなかったところに残る樹脂を除去する。複数の円形状細胞保持部81と、隣接する細胞保持部81を連結する連結部82と、中央の細胞保持部81につながる溝83が形成されるようなポジパターンを採用し、マイクロストラクチャー91が形成される。ポジパターン以外の部分には、SU−8層が残る。マイクロストラクチャーの深さは30μm、細胞保持部81は直径100μm、連結部82の幅は20μmである。
このようにして加工した基板92上に検出部4を形成する。ガラス基板92上に金属配位ポルフィリン誘導体のドットを作成する。ここで用いる金属配位ポルフィリン誘導体はSn(TPP)Cl2, Co(TPP)Cl, Cr(TPP)Cl, Mn(TPP)Cl, Co(TPP), Cu(TPP), Ru(TPP), Zn(TPP), Ag(TPP), Fe(TFPP)Cl等であり、第1の実施形態と同様に金属配位ポルフィリン誘導体のドットの繰り返しパターンを各マイクロウェル表面に固定する。インクジェットディスペンサーで数十ピコリットルの各金属配位ポルフィリン誘導体の溶液をドット状に塗布する。窒素雰囲気下で16時間放置する。この状態で金属配位ポルフィリン誘導体は細胞保持部81の底面に吸着する。次に、金属配位ポルフィリンが表面に吸着したガラス基板92を真空蒸着装置に入れ、シリコンポリマーを蒸着重合する。蒸着重合膜の厚みはガス透過しやすいように20nm程度に制御する。このようにして、ガス透過性膜を形成する。
この細胞解析用チップ12の表面に第3の実施形態と同様に、アガロース薄膜層で細胞培養用パターンを形成する。必要に応じて、一旦アガロース薄膜やMPCポリマー層を形成し、細胞保持部81の部分のみレーザーで除去する。図10では、培養する細胞として心筋拍動細胞を用いた場合を示している。
本実施形態の細胞解析用チップを用いて心筋拍動細胞の細胞解析を行う場合について説明する。まず、心筋拍動細胞84を図10に記載の9個の細胞保持部81すべてに1細胞ずつ挿入する。心筋拍動細胞84はお互いに連結部82を介して突起を伸ばし接触して、いずれギャップジャンクションを形成し、すべての心筋拍動細胞は同期した状態の拍動を行うようになる。
ここで、細胞保持部81に細胞84を入れる方法は特に限定されることはなく、例えば以下のような方法によることができる。細胞84を入れた溶液中にマイクロキャピラリーを挿入し、先端に細胞を一つ捕らえて、これを細胞保持部81に入れる方法を採用することができる。マイクロキャピラリーのほかにレーザーピンセットを用いて細胞84を搬送してもよい。この状態で吸着した心筋拍動細胞84の下には、ガス透過性膜を介して金属配位ポルフィリン誘導体を含む検出用ドットが存在する。細胞は直接金属配位ポルフィリン誘導体に接触することは無いが、シリコンポリマーからなるガス透過性膜はほとんどの揮発性成分を透過するので、細胞の生育により発生する有機化合物を検出することができる。
尚、上記作製方法に限定されることはなく、例えば、あらかじめ各金属ポルフィリン誘導体のドットからなる検出部をガラス基板表面に作成しておき、マイクロストラクチャーを形成することも出来る。こうして作成したチップでは、溝の部分にも金属ポルフィリン誘導体センサー粒子が存在するので、心筋細胞の突起やギャップジャンクションの部分で発生する有機化合物の検出も行うことができる。
たとえば、複数の心筋拍動細胞がギャップジャンクションを形成する前は、個々の心筋細胞は異なるリズムで振動しているが、ギャップジャンクションを形成すると細胞振動リズムが同期することが知られている。また、単独細胞では振動にバラつきがあるが、複数の細胞がギャップジャンクションを形成すると、振動のバラつきが低下することが知られている。これらは、主に、画像観察や細胞電位計測で明らかになった事実であるが、細胞生理学的にも物質代謝的に変化があることが考えられる。本実施形態の細胞解析用チップを用いることで、ギャップジャンクションの前後での細胞の発する物質に関する情報を取得することが可能になる。
また、心筋拍動細胞は神経細胞と並び、薬剤投与に敏感に反応する細胞である。本実施形態の細胞解析用チップ12を用いた心筋拍動細胞の解析において、薬剤投与に係る細胞生理の有機化合物レベルでの変動を追跡することもでき、投与薬剤の安全性や細胞に与える影響をモニターすることが可能になる。本実施形態の細胞解析用チップにおいては、溝83を介して細胞刺激用の薬剤を1度、あるいは連続的に、あるいは完結的に投与できる構成となっている。刺激を直接受けるのは中心の細胞保持部81の細胞84であり、刺激応答は左右の細胞84にひろがる。したがって、各細胞保持部81に対応する金属ポルフィリン誘導体等のドットのスペクトル変化を追うことで、薬剤による細胞応答の伝播を調べ得る。
本実施形態では心筋拍動細胞を用いた場合を例示しているので、拍動ペースの揺らぎと各金属配位ポルフィリン誘導体等のドットのスペクトル変化を同時に測定し、比較解析することで、心筋に与える薬剤の影響を拍動と生化学的代謝の面で同時に調べ得る。薬剤刺激用の溝83が中央の細胞保持部81に接続されているのは、信号が左右に伝播する様を測定することで、測定の再現性を同時に得るためである。
(第5の実施形態)
本実施形態は、第1〜第4の実施形態の細胞解析用チップの各金属ポルフィリン誘導体のスペクトルを測定する2次元分光器に関する。上述の各実施形態の細胞解析用チップは直径9mmでその中にはいろいろな種類の金属ポルフィリン誘導体が直径又は粒径400nm程度のドットあるいは粒子として固定されている。本実施形態は、このような微小領域のスペクトルをマルチで得るための測定装置である。
図11は、本実施形態の2次元分光器の構成を示すブロック図である。2次元分光器109では、広範囲の2次元平面からのスペクトルを得るために、試料ステージ110にのせた試料に対して光源111をスキャニングする光学系112と、各光学画像の画像内の位置情報毎のスペクトルを得るスペクトル取得部113を有する。光学系の試料に対する相対移動には、ステージを移動させる方法、fθレンズを用いて光源入射角を変化させて、比較的広い範囲の照明を行いながら画像を取り込む光学系のいずれかが採用できる。しかしながら、全体をこれらメカニカルな動きでカバーしようとすると、1枚の2次元スペクトルを取るのに時間がかかる問題がある。
したがって、2次元分光器109では、マイクロアレイレンズ114をアレイ状に組み込んだニッポウデスク115を用いて試料をスキャニングできるようにしている。光源111には高照度の面発光白色LEDを用い、これをリレー光学系116で導き、シリンドリカルレンズ117を用いて矩形に整形し、マイクロアレイレンズ114に白色光を挿入する、あるいは各マイクロアレイレンズ114に個別の高照度白色LEDをあてがい、ファイバーカップリングで光を挿入する方法のいずれかを採用する。いずれの方法もマイクロアレイレンズ114に高効率で光を導く工夫である。各マイクロアレイレンズ114はニッポウデスク115の各ホールに取り付けられているので、ニッポウデスク115を回転させることにより、ニッポウデスク115の放射方向に若干ずつずれた状態で並ぶマイクロアレイレンズ114に時間差をつけて順次光が導きられることになる。
マイクロアレイレンズ114を通過した白色光は、一方向からは光を透過するが、反対方向からの光は反射するミラー118を通過し、対物レンズ120によりステージ110上の試料を照射する。試料からの反射光をミラー118で折り返し、2次元分光素子121でスペクトルに分解し、2次元光検出器122で検出する。この方法で、ニッポウデスク115上の各マイクロアレイレンズ114からの光は、試料上を時間差でスキャンすることになり、2次元平面の各位置での分光スペクトルをほぼ実時間で得る事が出来るようになる。もちろん反射スペクトルの代わりに、2次元分光素子と2次元検出器とからなる位置情報毎のスペクトルを得るスペクトル取得手段を照射光に対して試料と対象方向に設置することで、吸光スペクトルを得るように構成してもよい。上記試料ステージ110に上述の各実施形態の細胞解析用チップを載置することにより、各検出用プローブのスペクトルを得ることができる。
(第6の実施形態)
本実施形態は、第5の実施形態とは異なる形態の、第1〜第4の実施形態の細胞解析用チップの各金属ポルフィリン誘導体のスペクトルを測定する2次元分光器に関する。図12は、本実施形態の2次元分光器のブロック図である。
図12に示す2次元分光器129においては、白色光源111をあらかじめ分光器125で分光し、得られる単色光をエキスパンダーを含む照射光学系126で2次元に広げ、ステージ110上の試料表面を照射し、試料を透過する単色光を集光レンズ127で集光し、2次元光検出器128で検出するように構成されている。この場合は、各スポット位置での透過光強度を一度に測定する。ある波長での測定が終了したら、分光器125の角度を変えて異なる波長の単色光を得て、同様に試料の透過光強度を測定する。各波長の単色光における試料透過光測定を繰り返す。視野に入りきらない場合は、ステージ110を移動させる。
たとえば第4の実施形態で示した9個の細胞保持部が構成されている細胞解析用チップが試料となる場合、まず、細胞のいる位置を確認しておき、コンピュータに記憶させる。次に、細胞に照射する光の波長を380nm〜700nmにおける単色光を試料チップに照射する。透過する光強度あるいは反射光強度を2次元光検出器128のピクセル毎に記録する。特定の波長の2次元データが得られたら、次の単色光の光強度あるいは反射光強度を測定する。この操作を繰り返し、1枚の細胞の下にある金属ポルフィリン等の検出用プローブのスペクトルを1ドットずつに分解して得る。1枚の細胞の計測が終わったら、次の細胞に移動し、同様な計測を繰り返す。380nm〜700nmの波長を2nmの分解能で測定すると、1細胞あたり160回波長を変えながら2次元画像を得ることになるが、ビデオレートでの撮像を行えば、6秒程度で終了する。9細胞を測定しても1分以内に計測を終了することが出来る。
[実施例2]
本実施例は、マイクロストラクチャーが形成されている第4の実施形態の細胞解析用チップ、すなわち図9及び図10に記載の細胞解析用チップを用いて細胞の活動を解析した例である。ここで用いる細胞は神経細胞である。マイクロストラクチャーの細胞保持部81すべてに神経細胞を挿入し一定期間培養することで、各細胞からアクソンが伸びて右隣の細胞のデンドロンと必ずギャップジャンクションを形成する神経細胞回路を得る。すなわち、各細胞の神経伝達情報は図10に示すマイクロストラクチャー91上、左側の細胞から右側の細胞に流れる。このような神経細胞回路作製は、すでに第3の実施形態で示したように、培養中に、アクソンとデンドロンの伸長を見計らって1450 nmレーザーを細胞保持部の間に照射して溝わたしすることによる。以下、図10のすべての細胞を神経細胞に置き換えた系で説明する。神経細胞アレイ回路の基板側5には、金属ポルフィリン誘導体センサアレイが位置している。
神経細胞回路の中心部の細胞に溝83を介して、刺激物質として、たとえばハロペリドールを添加する。すると、ハロペリドール分子を配位する金属配位ポルフィリン誘導体センサアレイのうちスペクトルが変化するものが現れる。
図13は、ハロペリドールの添加前後における、特定の細胞に由来する特定の金属配位ポルフィリン誘導体のスペクトル変化を示した図である。図13に示すスペクトル変化から細胞の活動状況を解析する。個別の細胞由来有機化合物の同定も可能であるが、同定できない場合でも、各検出用プローブに固定されている金属配位ポルフィリン誘導体のスペクトル変化パターンを得ることにより、細胞の活動状況を捉えることができる。図13の曲線131はハロペリドールを添加した細胞の特定の金属配位ポルフィリン誘導体の信号の経時変化、曲線132は一番右端(図10上)の細胞における同じ金属配位ポルフィリン誘導体の信号変化を表し、T3はハロペリドールを添加したポイントである。曲線132は、曲線131よりタイミングが遅れるもののほぼ同じスペクトル変化を示し、時間差で同種の活動が行われていることが予想される。
各細胞について各検出用成分の差吸光度測定し、値が大きかった検出用成分について、図14に結果を示す。図14(a)はハロペリドール添加前の、図14(b)はハロペリドール添加後の、マイクロストラクチャー内の細胞(横軸)毎の特定の検出用成分に関する差吸光度(縦軸)を示す図である。ハロペリドール添加前では差吸光度がどれも一定の範囲内に収まっているが、ハロペリドール添加後においては、差吸光度がピークとなるような細胞位置が存在する。
図15は神経細胞アレイ回路における差吸光度のピーク位置を経時的に評価した場合に予想されるピーク位置を示す図である。図15に示すようにピーク位置が9細胞からなる神経細胞アレイ回路の両端で反射して振動しているようなパターンが得られると予想される。本神経細胞アレイにおいては、電気的な信号は一方向に流れるが、このような結果が得られるとすれば、物質レベルの解析では双方向に信号が伝達する機構があることが示唆されることになる。ハロペリドールの影響が一時的に収まるのではなく、繰り返し細胞に影響していることが示唆されることとなる。
本発明によると、組織のように複数の細胞から成り立っている系においても、個別の細胞における特定分子群の量的変動の数値的評価が可能となり、組織内の、分子群の経時的マッピングが可能となる。したがって、組織における細胞の役割分担やコミュニケーションが物質レベルで数値化できるようになる。
本発明は生細胞の解析用チップを提供するため、有機化合物の効果や毒性特性を代謝面から数値評価できるようになり、特に創薬における新しい解析手段となり、従来の動物個体を用いた薬剤評価に取って代わることのできる要素技術として有用である。
第1の実施形態の細胞解析用チップの上面の概略図。 第1の実施形態において、基板と検出部との構成を示す上面図。 第2の実施形態において、基板と検出部との構成を示す上面図。 第2の実施形態において、検出用粒子の作製方法を模式的に示す工程図。 実施例1において、4種の検出用粒子のスペクトル変化を示す図。 第3の実施形態の細胞解析用チップの断面図。 第3の実施形態の細胞解析用チップの上面図。 連結部を有する第3の実施形態の細胞解析用チップの上面図。 第4の実施形態の細胞解析用チップの上面図。 第4の実施形態のマイクロストラクチャー部分の上面図。 第5の実施形態の2次元分光器の構成を示すブロック図。 第6の実施形態の2次元分光器の構成を示すブロック図。 特定の細胞に由来する特定の金属配位ポルフィリン誘導体の差吸光度の経時変化を示した図。 ハロペリドール添加前(a)、及びハロペリドール添加後(b)の、マイクロストラクチャー内の細胞(横軸)毎の特定の検出用成分に関する差吸光度(縦軸)を示した図。 差吸光度のピーク位置の経時変化を予想した図。
符号の説明
1 基板
2 ドット
3 検出用小領域(パターン)
4 検出部
5 細胞培養槽
6 隔壁部材
10,11,12 細胞解析用チップ
32 ガス透過性膜
33 細胞付着促進層(コラーゲン層)
36,37,38,39 検出用粒子
65,81 細胞保持部
66,82 連結部
91 マイクロストラクチャー
109,129 2次元分光器
110 試料ステージ
111 光源
114 マイクロアレイレンズ
115 ニッポウデスク
121 2次元分光素子
122,128 2次元光検出器
125 分光器

Claims (15)

  1. 基板と、細胞培養槽と、前記細胞培養槽中の細胞の活動に由来する物質を検出する検出部と、を有し、
    前記細胞培養槽と、前記検出部とは、前記基板上に形成されており、
    前記検出部は、検出する物質に応じた光学吸収特性を示す検出用成分が固定されている少なくとも2種以上の検出用プローブを有し、同種の前記検出用プローブを複数有する、細胞解析用チップ。
  2. 前記検出用プローブの種類は、前記検出用成分の種類に対応する、請求項1に記載の細胞解析用チップ。
  3. 前記検出用プローブは、前記細胞培養槽内に添加される培養液に接触するように構成されている、請求項1又は2に記載の細胞解析用チップ。
  4. 前記検出用プローブの全数の内、少なくとも一部は、前記細胞培養槽内の細胞に接触するように構成されている、請求項1乃至3いずれかに記載の細胞解析用チップ。
  5. 前記細胞の活動に由来する物質が有機化合物を含む、請求項1乃至4いずれかに記載の細胞解析用チップ。
  6. 前記検出用成分が、金属配位ポルフィリン誘導体を含む、請求項1乃至5いずれかに記載の細胞解析用チップ。
  7. 前記検出用プローブは、前記検出用成分が固定されている表面にガス透過性膜を備える、請求項1乃至6いずれかに記載の細胞解析用チップ。
  8. 前記細胞培養槽は、少なくとも一つの細胞を保持可能な複数の細胞保持部と、互いに隣接する前記細胞保持部を連結する連結部とを有し、隣接する前記細胞保持部に保持されている細胞同士が前記連結部にてギャップジャンクションを形成可能である、請求項1乃至7いずれかに記載の細胞解析用チップ。
  9. 前記検出部は、2種以上の検出用プローブが所定のパターンで配列している検出用小領域を複数含む、請求項1乃至8に記載の細胞解析用チップ。
  10. 前記検出用小領域は、一辺の長さが1〜500μmの矩形である、請求項9に記載の細胞解析用チップ。
  11. 前記検出用プローブは粒子である、請求項1乃至8いずれかに記載の細胞解析用チップ。
  12. 前記検出用プローブの蛍光特性、核磁気共鳴特性、磁気特性、光吸収スペクトル特性、またはこれらの組み合わせに基づき、前記検出用プローブに固定されている前記検出用成分の種類が識別可能である、請求項11に記載の細胞解析用チップ。
  13. 前記検出用プローブの粒径は、0.1〜10μmである、請求項11又は12に記載の細胞解析用チップ。
  14. 請求項1乃至13いずれかに記載の細胞解析用チップと、前記細胞解析用チップの前記検出部における前記検出用プローブ毎の検出用成分の光吸収スペクトルを測定する測定装置とを備える、細胞解析用システム。
  15. 基板と、細胞培養槽と、前記細胞培養槽中の細胞の活動に由来する物質を検出する検出部と、を有し、
    前記細胞培養槽と、前記検出部とは、前記基板上に形成されており、
    前記検出部は、検出する物質に応じた光学吸収特性を示す検出用成分が固定されている少なくとも2種以上の検出用プローブを有し、同種の前記検出用プローブを複数有する、細胞解析用チップを用いて、細胞の活動状況を解析する細胞解析方法であって、
    前記細胞培養槽に細胞を付着させる付着工程と、
    前記検出用成分の光学吸収特性を検出する検出工程と、
    前記検出工程の検出結果に基づいて、細胞の活動状況を解析する解析工程とを有する、細胞解析方法。
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