JP2007264401A - 位相差板、偏光板、輝度向上フィルム、及び液晶表示装置 - Google Patents

位相差板、偏光板、輝度向上フィルム、及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】表示特性の改善に寄与し、特に斜め方向からの色味を改良できるλ/4板として好適な位相差板、該位相差板をλ/4板として用いた、偏光板、輝度向上フィルム、及び液晶表示装置の提供。
【解決手段】厚み方向のレタデーション(Rth)が0nm未満の支持体上に、液晶性化合物を固定化した光学異方性層を有し、下記式(1)で表されるNzが0未満である位相差板である。前記支持体の厚み方向のレタデーション(Rth)が−600〜−80nmである態様、前記支持体の面内のレタデーション(Re)が−10〜20nmである態様、前記支持体がセルロース誘導体フィルムである態様、などが好ましい。
式(1) Nz=0.5+Rth/Re
ただし、前記式(1)中、Reは位相差板の面内のレタデーション値を表し、Rthは厚み方向のレタデーション値を表す。
前記位相差板を用いた偏光板、輝度向上フィルム、及び液晶表示装置である。
【選択図】なし

Description

本発明は、λ/4板として好適な位相差板、該位相差板をλ/4板として用いた、偏光板、輝度向上フィルム、及び液晶表示装置に関する。
λ/4板は、非常に多くの用途を有しており、既に反射型Liquid Crystal Display(LCD)、半透過型LCD、輝度向上膜、光ディスク用ピックアップ、PS変換素子などに使用されている。それらに現在使用されている大部分のλ/4板は、ポリマーフィルムを延伸することで光学異方性を発現させた位相差板である。ポリマーフィルムの光学的な向きは、一般にシート状あるいはロール状フィルムの縦方向または横方向に相当するものであり、シートあるいはロールの斜め方向に光軸や遅相軸を有するポリマーフィルムは、製造が非常に困難である。
前記位相差板を使用する場合の多くは、偏光板の透過軸に対して、平行でも直交でもない角度に配置される。また、2枚以上の位相差板と偏光板との各々が平行でも直交でもない角度に配置される場合も多い。一般に、偏光板の透過軸はロール状フィルムに対して直交方向であるため、位相差板と偏光板とを貼り合わせるためには、それぞれのフィルムを所定の角度にカットして、得られるチップを貼り合わせる必要がある。
しかし、チップの貼り合わせで位相差板と偏光板との積層体を製造しようとすると、粘着剤の塗布工程や、チップカットあるいはチップの貼り合わせ工程が必要となり、処理が煩雑であって、軸ズレによる品質低下が起きやすく、歩留まりが低下し、コストが増大し、汚染による劣化も起きやすい。
また、ポリマーフィルムでは、三次元方向の屈折率異方性の発現が、延伸倍率、温度、延伸速度、ポリマーの分子量のような様々な条件に影響を受ける。そのため、ポリマーフィルムの光学異方性を精密に制御することも難しい。
また、前記λ/4板は、コレステリック液晶層と併用して、輝度向上フィルムとして使用することができる。前記コレステリック液晶層は製造するときに波長分散の制御が難しいため、それに合わせたλ/4板を作成しないと輝度向上や画質向上に寄与しない。特に、視角特性は影響を受けやすく、輝度向上フィルムを使用しない場合に比べて視角特性が悪いという問題がある。
これらの問題のうち、位相差板と偏光板とを組み合わせる場合の問題を解決するため、ロール状フィルムにディスコティック液晶性化合物や棒状液晶性化合物を含有する塗布液を塗布し、所定の方向に配向させることで光学異方性を発現させ、ロール状フィルムに対して平行でも直交でもない角度に遅相軸を有する位相差板が提案されている(特許文献1及び2参照)。また、ディスコティック液晶性化合物の円盤面がフィルム面に対して実質的に垂直になるように配向固定化された位相差板が提案されている(特許文献3〜6参照)。
しかし、これらの提案においても、配向欠陥が生じたり、配向時にはじきが出てしまうなどの問題があった。また、垂直配向性を付与するためにポリマーを修飾したり、あるいは特殊なモノマーを用いてポリマーを合成することが必要となり、結果として配向膜が高価になってしまうことから、工業的にはより安価な配向膜を用いてディスコティック液晶性化合物を実質的に垂直に配向させる技術が求められていた。更に、位相差板を液晶表示装置に用いる際に、ディスコティック液晶性化合物が実質的に垂直配向した層のみからなる位相差板では、それぞれの液晶モードで最適になるように三次元方向の屈折率異方性を発現させることが困難であり、三次元方向の屈折率異方性を任意に制御できる技術が求められていた。
一方、コレステリック液晶層と併用した輝度向上フィルムの斜め方向の色味変化が大きい問題については、コレステリック液晶層とλ/4板との間にホメオトロピック配向した液晶層を配置することが提案されている(特許文献7及び8参照)。
しかし、これらの提案においても、斜め方向から見たときの色味変化が十分ではないなどの問題があった。
このため、表示特性の改善に寄与し、特に斜め方向からの色味を改良できるλ/4板として好適な位相差板、該位相差板をλ/4板として用いた、偏光板、輝度向上フィルム、及び液晶表示装置は未だ提案されておらず、更なる改良開発が望まれているのが現状である。
特開2001−4837号公報 特開2004−53841号公報 特開平9−292522号公報 特開2000−56310号公報 特開2000−104073号公報 特開2000−105316号公報 米国特許第5731886号明細書 特開2003−279739号公報
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、表示特性の改善に寄与し、特に斜め方向からの色味を改良できるλ/4板として好適な位相差板、該位相差板をλ/4板として用いた、偏光板、輝度向上フィルム、及び液晶表示装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。即ち、
<1> 厚み方向のレタデーション(Rth)が0nm未満の支持体上に、液晶性化合物を固定化した光学異方性層を有し、下記式(1)で表されるNzが0未満であることを特徴とする位相差板である。
式(1) Nz=0.5+Rth/Re
ただし、前記式(1)中、Reは位相差板の面内のレタデーション値を表し、Rthは厚み方向のレタデーション値を表す。
<2> 支持体の厚み方向のレタデーション(Rth)が、−600〜−80nmである前記<1>に記載の位相差板である。
<3> 支持体の面内のレタデーション(Re)が、−10〜20nmである前記<2>に記載の位相差板である。
<4> 支持体が、セルロース誘導体フィルムである前記<3>に記載の位相差板である。
<5> 光学異方性層が、ディスコティック化合物を含む前記<1>から<4>のいずれかに記載の位相差板である。
<6> ディスコティック化合物における円盤面の配向状態が、光学異方性層面に対して実質的に垂直に固定されている前記<5>に記載の位相差板である。
<7> 光学異方性層が、含フッ素系化合物を含む前記<1>から<6>のいずれかに記載の位相差板である。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の位相差板と、偏光膜とを有することを特徴とする偏光板である。
<9> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の位相差板と、コレステリック液晶層とを有することを特徴とする輝度向上フィルムである。
<10> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の位相差板、請求項8に記載の偏光板、及び請求項9に記載の輝度向上フィルムのいずれかと、液晶セルとを有することを特徴とする液晶表示装置である。
本発明の位相差板は、厚み方向のレタデーション(Rth)が0nm未満の支持体上に、液晶性化合物を含む光学異方性層を有し、前記式(1)で表されるNzが0未満であることにより、表示特性の改善に寄与し、特に斜め方向からの色味を改良できる。
本発明の偏光板、輝度向上フィルム、及び液晶表示装置は、前記本発明の位相差板をλ/4波長板として用いることにより、表示特性が改善され、特に斜め方向からの色味を改良できる。
本発明によると、従来における前記問題を解決することができ、表示特性の改善に寄与し、特に斜め方向からの色味を改良できるλ/4板として好適な位相差板、該位相差板をλ/4板として用いた、偏光板、輝度向上フィルム、及び液晶表示装置を提供することができる。
以下、本発明の位相差板、偏光板、輝度向上フィルム、及び液晶表示装置の実施形態について順次説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「平行」、「直交」とは、厳密な角度±10°未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±5°未満であることが好ましく、±2°未満であることがより好ましい。また、「実質的に垂直」とは、厳密な垂直の角度よりも±20°未満の範囲内であることを意味する。この範囲は厳密な角度との誤差は、±15°未満であることが好ましく、±10°未満であることがより好ましい。また、「遅相軸」は、フィルム面内で屈折率が最大となる方向を意味する。さらに屈折率の測定波長は特別な記述がない限り、可視光域のλ=550nmでの値である。
本明細書において「偏光板」とは、特に断らない限り、長尺の偏光板及び液晶装置に組み込まれる大きさに裁断された偏光板の両者を含む意味で用いられる。本明細書において、「裁断」には「打ち抜き」及び「切り出し」等も含むものとする。また、本明細書では、「偏光膜」及び「偏光板」を区別して用いるが、「偏光板」は「偏光膜」の少なくとも片面に該偏光膜を保護する透明保護膜を有する積層体を意味するものとする。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、ある波長λnmにおける面内のレタデーション及び厚さ方向のレタデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)フィルム法線方向に対して法線方向から片側50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定したレタデーション値と、平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値とを基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレタデーションの値が0となる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレタデーション値は、の符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
なお、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフイルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレタデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(2)及び式(3)よりRthを算出することもできる。
式(3) Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
ただし、前記式(2)及び(3)中、Re(θ)は、法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレタデーション値を表す。nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレタデーション値と、平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値とを基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
ここで、前記平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する。
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)。
これらの平均屈折率の仮定値と膜厚とを入力することで、KOBRA 21ADH又はWRはnx、ny、及びnzを算出する。この算出されたnx、ny、及びnzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
(位相差板)
本発明の位相差板は、厚み方向のレタデーション(Rth)が0より小さい光学特性の支持体上に、液晶性化合物を含む組成物からなり、該液晶性化合物の分子を配向状態に固定して形成された光学異方性層を有する。該位相差板は、ある波長の面内のレタデーション値、厚み方向のレタデーション値をそれぞれRe、Rthとし、Nzを下記式(1)のように定義したときに、450nmから650nmにおける波長領域でNzが0未満である。
前記Nzは、−5〜−0.1であることが好ましく、−4.5〜−0.2であることがより好ましく、−4〜−0.3であることが更に好ましく、−4〜−1.0であることが特に好ましい。
式(1) Nz=0.5+Rth/Re
前記Rthは、前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで測定した値のうち、該位相差板平面の法線方向から測定したレタデーションの値をRe(0)、該位相差板の遅相軸を傾斜軸として、該位相差板を40°傾けて測定したレタデーションの値をRe(40)、該位相差板を前記傾斜方向と反対側に40°傾けて測定したレタデーションの値をRe(−40)としたとき、Re(0)、Re(40)、Re(−40)の3点の測定値及び該位相差板の厚さと平均屈折率から算出できる。
前記位相差板は、Reが50〜200nmであることが好ましく、70〜180nmであることがより好ましく、80〜160nmであることが更に好ましく、90〜160nmであることが特に好ましい。
また、前記Re(40)とRe(−40)とが実質的に等しいことが好ましい。前記Re(40)とRe(−40)との差は、0nmであるのがより好ましいが、測定誤差等を考慮して、本明細書ではその差が4nmの範囲を実質的に等しいというものとする。
また、前記Rthは、−1,000〜−20nmであることが好ましく、−800〜−30nmであることがより好ましく、−600〜−40nmであることが更に好ましく、−300〜−100nmであることが特に好ましい。
<光学異方性層>
前記光学異方性層は、少なくとも一種の液晶性化合物を含む。該液晶性化合物としては、上記光学的特性を満たす限り、特に制限はない。
前記光学異方性層としては、例えば、低分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、光架橋や熱架橋によって固定化して得られる光学異方性層や、高分子液晶性化合物を液晶状態においてネマチック配向に形成後、冷却することによって当該配向を固定化して得られる光学異方性層を用いることもできる。なお本発明では、光学異方性層に液晶性化合物が用いられる場合であっても、光学異方性層は、該液晶性化合物が重合等によって固定されて形成された層であり、層となった後は液晶性を示す必要はない。
重合性液晶性化合物としては、多官能性重合性液晶でもよいし、単官能性重合性液晶性化合物でもよい。
前記光学異方性層は、一層のみからなっていてもよいし、二層以上の光学異方性層の積層体であってもよい。三次元方向の屈折率異方性を任意に制御するために、二層以上の光学異方性層を積層してもよい。そして、Reを所望の値にするために、液晶性化合物を用いた光学異方性層を形成し、主としてRthを調整できる支持体上に形成することにより、上記式(1)を満たす位相差板を作製することができる。
前記光学異方性層に用いられる液晶性化合物は、ディスコティック液晶性化合物でもよいし、棒状液晶性化合物でもよい。
前記液晶性化合物の配向状態は、垂直配向、水平配向、ハイブリッド配向、及び傾斜配向のいずれでもよい。
視野角依存性が対称である位相差板を作製するためには、ディスコティック液晶性化合物の円盤面がフィルム面(光学異方性層面)に対して実質的に垂直であるか、棒状液晶性化合物の長軸がフィルム面(光学異方性層面)に対して実質的に水平であることが好ましい。
前記ディスコティック液晶性化合物が実質的に垂直とは、フィルム面(光学異方性層面)とディスコティック液晶性化合物の円盤面とのなす角度が70°〜90°の範囲内であることを意味する。前記円盤面の平均傾斜角がこの範囲内になるように傾斜配向させてもよいし、傾斜角が徐々に変化するハイブリッド配向させてもよい。
平均傾斜角は、傾斜配向、ハイブリッド配向いずれの場合でも、70°〜90°であることが好ましく、80°〜90°がより好ましく、85°〜90°が特に好ましい。
前記棒状液晶性化合物が実質的に水平とは、フィルム面(光学異方性層面)と棒状液晶性化合物のダイレクターとのなす角度が0°〜20°の範囲内であることを意味する。
前記棒状液晶性化合物の平均傾斜角がこの範囲内になるように傾斜配向させてもよいし、傾斜角が徐々に変化するようにハイブリッド配向させてもよい。
前記平均傾斜角は、傾斜配向、ハイブリッド配向いずれの場合でも、0°〜20°であることが好ましく、0°〜10°がより好ましく、0°〜5°が特に好ましい。
前記光学異方性層は、棒状液晶性化合物、ディスコティック液晶性化合物等の液晶性化合物と、必要に応じて、下記の重合開始剤、空気界面配向剤、他の添加剤を含む塗布液を、支持体上に塗布することで形成できる。
具体的には、支持体上に配向膜を形成し、該配向膜表面に前記塗布液を塗布して形成することが好ましい。
−ディスコティック液晶性化合物−
本発明では、ディスコティック液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成するのが好ましい。
前記ディスコティック液晶性化合物としては、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,page 111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,page 1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,page 2655(1994))に記載されている。
前記ディスコティック液晶性化合物の重合については、特開平8−27284号公報に記載がある。
前記ディスコティック液晶性化合物は、重合により固定可能なように、重合性基を有するのが好ましい。
具体的には、ディスコティック液晶性化合物の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させた構造が考えられるが、円盤状コアに重合性基を直結させると、重合反応において配向状態を保つことが困難になる。そこで、円盤状コアと重合性基との間に連結基を有する構造が好ましい。すなわち、重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、下記式で表わされる化合物であることが好ましい。
D(−L−P)
ただし、前記式中、Dは円盤状コアであり、Lは2価の連結基であり、Pは重合性基であり、nは4〜12の整数である。前記式中の円盤状コア(D)、2価の連結基(L)、及び重合性基(P)の好ましい具体例は、それぞれ、特開2001−4837号公報に記載の(D1)〜(D15)、(L1)〜(L25)、(P1)〜(P18)が挙げられ、同公報に記載の内容を好適に用いることができる。
前記重合性基を有するディスコティック液晶性化合物は、重合により固定化された後は、液晶性が失われてディスコティック化合物となっていることが好ましい。
なお、前記ディスコティック液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がより好ましい。
−棒状液晶性化合物−
本発明では、棒状液晶性化合物を用いて光学異方性層を形成することも好ましい。前記棒状液晶性化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好適に挙げられる。
前記棒状液晶性化合物としては、上記の低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
前記棒状液晶性化合物は、重合によって配向を固定することがより好ましい。前記液晶性化合物としては、活性光線、電子線、熱などによって重合や架橋反応を起こしうる部分構造を有するものが好適に用いられる。
前記部分構造の個数は、1〜6個が好ましく、1〜3個がより好ましい。重合性棒状液晶性化合物としては、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、特開2001−328973号公報などに記載の化合物が挙げられる。
−垂直配向促進剤−
前記ディスコティック液晶性化合物や棒状液晶性化合物を均一に垂直配向させるためには、配向膜を有し、該配向膜界面側及び空気界面側において液晶性化合物を垂直に配向制御することが好ましい。
この目的のために、配向膜に、排除体積効果、静電気的効果、又は表面エネルギー効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を添加した組成物を用いてもよい。
また、空気界面側の配向制御に関しては液晶性化合物の配向時に空気界面に偏在し、その排除体積効果、静電気的効果、又は表面エネルギー効果によって液晶性化合物を垂直に配向させる作用を及ぼす化合物を配合した組成物(以下、単に「液晶性組成物」と称することもある)を用いてもよい。
前記配向膜界面側で液晶性化合物の分子を垂直に配向させるのを促進する化合物(配向膜界面側垂直配向剤)としては、ピリジニウム誘導体が好適に用いられる。
前記空気界面側で液晶性化合物の分子を垂直に配向させるのを促進する化合物(空気界面側垂直配向剤)としては、該化合物が空気界面側に偏在するのを促進する、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}、及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含む化合物が好適に用いられる。また、これらの化合物を配合することによって、例えば、液晶性組成物を塗布液として調製した場合に、該塗布液の塗布性が改善され、ムラ、ハジキの発生が抑制される。以下に垂直配向剤に関して詳細に説明する。
−配向膜界面側垂直配向剤−
前記配向膜界面側垂直配向剤としては、下記式(I)で表されるピリジニウム誘導体(ピリジニウム塩)が好適に用いられる。該ピリジニウム誘導体の少なくとも1種を前記液晶性組成物に添加することによって、ディスコティック液晶性化合物の分子を配向膜近傍で実質的に垂直に配向させることができる。
前記式(I)中、Lは2価の連結基を表し、アルキレン基と−O−、−S−、−CO−、−SO−、−NR−、アルケニレン基、アルキニレン基、及びアリーレン基のいずれかとの組み合わせからなる炭素原子数が1〜20の2価の連結基であることが好ましい。前記アルキレン基は、直鎖であっても分岐であってもよい。前記Rは炭素原子数が1〜5のアルキル基及び水素原子のいずれかを表す。
前記式(I)中、Rは、水素原子、無置換のアミノ基、及び炭素原子数が1〜20の置換基で置換された置換アミノ基を表す。Xはアニオンを表す。Yは5員環又は6員環を部分構造として有する炭素数1〜30の2価の連結基を表す。Zは、ハロゲン置換フェニル基、ニトロ置換フェニル基、シアノ置換フェニル基、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素原子数が1〜12のアルキル基、炭素原子数が2〜20のアルキニル基、炭素原子数が1〜12のアルコキシ基、炭素原子数が2〜13のアルコキシカルボニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基、及び炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基のいずれかを表す。
前記Yに含まれる環状部分構造としては、シクロヘキシル環、芳香族環、及び複素環のいずれかがより好ましい。
前記Zとしては、シアノ置換フェニル基、ハロゲン置換フェニル基、炭素原子数が1〜10のアルキル基で置換されたフェニル基、炭素原子数が2〜10のアルコキシ基で置換されたフェニル基、炭素原子数が7〜26のアリールオキシカルボニル基、及び炭素原子数が7〜26のアリールカルボニルオキシ基のいずれかであるのが好ましい。
前記式(I)で表されるピリジニウム塩が、ピリジニウム化合物である場合には、下記式(Ia)で表されるピリジニウム化合物が好ましい。
前記式(Ia)中、Lは、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、−N=N−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−、及び−O−CO−AL−CO−O−のいずれかを表す。ALは、炭素原子数が1〜10のアルキレン基を表す。Lは、単結合、−O−、−O−AL−O−、−O−AL−O−CO−、−O−AL−CO−O−、−CO−O−AL−O−、−CO−O−AL−O−CO−、−CO−O−AL−CO−O−、−O−CO−AL−O−、−O−CO−AL−O−CO−、及び−O−CO−AL−CO−O−のいずれかであるのが好ましく、単結合もしくは−O−であるのがより好ましい。
前記式(Ia)中、Lは、単結合、−O−、−O−CO−、−CO−O−、−C≡C−、−CH=CH−、−CH=N−、−N=CH−、及び−N=N−のいずれかを表す。Rは、水素原子、無置換アミノ基、及び炭素原子数が2〜20のアルキル置換アミノ基のいずれかを表す。Y及びYは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい6員環からなる2価の基を表す。Xはアニオンを表す。前記Xとしては、一価のアニオンであることが好ましい。Zは水素原子、シアノ基、炭素原子数が1〜12のアルキル基、及び炭素原子数が1〜12のアルコキシ基のいずれかを表す。
前記アルキル基及びアルコキシ基は、それぞれ、炭素原子数が2〜12のアシル基又は炭素原子数が2〜12のアシルオキシ基で置換されてもよい。
前記式(Ia)中、mは1又は2であって、mが2の場合、2つのL及び2つのYは、異なっていてもよい。
前記mが2の場合、前記Zは、シアノ基、炭素原子数が1〜10のアルキル基、又は炭素原子数が1〜10のアルコキシ基であることが好ましい。
前記mが1の場合、前記Zは、炭素原子数が7〜12のアルキル基、炭素原子数が7〜12のアルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルキル基、炭素原子数が7〜12のアシル置換アルコキシ基、炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルキル基、又は炭素原子数が7〜12のアシルオキシ置換アルコキシ基であることが好ましい。
アシルオキシ基は−O−CO−Rで表され、Rは脂肪族基(アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基)、及び芳香族基(アリール基、置換アリール基)のいずれかを表す。
前記Rとしては、脂肪族基であることが好ましく、アルキル基又はアルケニル基であることがより好ましい。
前記式(Ia)中、pは、1〜10の整数を表す。C2pは、分岐構造を有していてもよい鎖状アルキレン基を表す。
前記C2pは、直鎖状アルキレン基であることが好ましい。また、pは1又は2であることがより好ましい。
以下に、式(I)及び式(Ia)の少なくともいずれかで表される化合物の具体例を示す。ここで、Meはメチル基を表す。
前記ピリジニウム誘導体は、一般にピリジン環をアルキル化(メンシュトキン反応)して得られる。
前記液晶性組成物中における前記ピリジニウム誘導体の含有量は、目的に応じて適宜選択することができるが、液晶性組成物(塗布液として調製した場合は溶媒を除いた液晶性組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
−空気界面側垂直配向剤−
本発明に使用可能な空気界面側垂直配向剤としては、含フッ素系化合物が好適に挙げられる。
前記含フッ素系化合物としては、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}、それらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを有するフルオロ脂肪族基含有ポリマー(以下、「フッ素系ポリマー」という)、又は下記式(III)で表される含フッ素化合物が好適に用いられる。
まず、フッ素系ポリマーについて説明する。
前記フッ素系ポリマーとしては、フルオロ脂肪族基と、カルボキシル基(−COOH)、スルホ基(−SOH)、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}、及びそれらの塩からなる群より選ばれる1種以上の親水性基とを含有する。
ポリマーの種類としては、「改訂 高分子合成の化学」(大津隆行著、発行:株式会社化学同人、1968)1〜4ページに記載があり、例えば、ポリオレフィン類、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリイミド類、ポリウレタン類、ポリカーボネート類、ポリスルホン類、ポリカーボナート類、ポリエーテル類、ポリアセタール類、ポリケトン類、ポリフェニレンオキシド類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリアリレート類、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)類、ポリビニリデンフロライド類、セルロース誘導体などが挙げられる。前記フッ素系ポリマーは、ポリオレフィン類であることが好ましい。
前記フッ素系ポリマーは、フルオロ脂肪族基を側鎖に有するポリマーである。前記フルオロ脂肪族基としては、炭素原子数1〜12であるのが好ましく、6〜10であるのがより好ましい。
前記脂肪族基は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状である場合は直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。中でも、直鎖状の炭素原子数6〜10のフルオロ脂肪族基が好ましい。
フッ素原子による置換の程度については特に制限はないが、脂肪族基中の50%以上の水素原子がフッ素原子に置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましい。
前記フルオロ脂肪族基は、エステル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、エーテル結合、チオエーテル結合、芳香族環などを介してポリマー主鎖と結合した側鎖に含まれる。
前記フッ素系ポリマーの一態様として、フルオロ脂肪族基含有モノマー(以下、「フッ素系モノマー」ということがある)より誘導される繰り返し単位と、下記式(II)で表される親水性基を含有する繰り返し単位とを有する共重合体が挙げられる。
前記式(II)中、R、R、及びR33はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。Qはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SOH)もしくはその塩、又は、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}もしくはその塩を表す。Lは下記の連結基群から選ばれる任意の基、又はそれらの2つ以上を組み合わせて形成される2価の連結基を表す。
(連結基群)
単結合、−O−、−CO−、−NR−(Rは水素原子、アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す)、−S−、−SO−、−P(=O)(OR)−(Rはアルキル基、アリール基、またはアラルキル基を表す)、アルキレン基、アリーレン基。
前記式(II)中、R、R、及びR33は、それぞれ独立に、水素原子又は下記に例示した置換基群から選ばれる置換基を表す。前記置換基を二つ以上有する場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに結合して環を形成してもよい。
(置換基群)
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基、置換基を有してもよいアミノ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基、シリル基。
前記フッ素系ポリマーは、前記式(II)で表される繰り返し単位を1種含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。また、前記フッ素系ポリマーは、上記各繰り返し単位以外の他の繰り返し単位を1種または2種以上有していてもよい。
前記他の繰り返し単位としては、特に制限はなく、通常のラジカル重合反応可能なモノマーから誘導される繰り返し単位が好ましい例として挙げられる。
前記フッ素系ポリマー中、フルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該ポリマーの構成モノマー総量の5質量%以上であるのが好ましく、10質量%以上であるのがより好ましく、30質量%以上であるのが特に好ましい。前記フッ素系ポリマーにおいて、前記式(II)で表される繰り返し単位の量は、該フッ素ポリマーの構成モノマー総量の0.5質量%以上であるのが好ましく、1〜20質量%であるのがより好ましく、1〜10質量%であるのが特に好ましい。
上記の質量百分率は使用するモノマーの分子量により、好ましい範囲の数値が変動し易いため、ポリマーの単位質量当たりの官能基モル数で表す方が、式(II)で表される繰り返し単位の含有量を正確に規定できる。この表記を用いた場合、前記フッ素系ポリマー中に含有される親水性基(式(II)中のQ)の量は、0.1〜10mmol/gが好ましく、0.2〜8mmol/gがより好ましい。
前記フッ素系ポリマーの質量平均分子量は、1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、100,000以下が特に好ましい。前記質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて、ポリスチレン(PS)換算の値として測定可能である。
前記フッ素系ポリマーの重合方法は、特に制限はないが、例えば、ビニル基を利用したカチオン重合やラジカル重合、又は、アニオン重合等の重合方法を採ることができ、これらの中ではラジカル重合が汎用に利用できる点で特に好ましい。
前記ラジカル重合の重合開始剤としては、ラジカル熱重合開始剤や、ラジカル光重合開始剤等の公知の化合物を使用することができるが、特に、ラジカル熱重合開始剤を使用することが好ましい。
なお、前記フッ素系ポリマーは、ディスコティック液晶性化合物の配向状態を固定化するために置換基として重合性基を有するものも好ましい。
以下に、前記フッ素系ポリマーとして好ましく用いられる具体例を示すが、本発明はこれらの具体例によってなんら限定されるものではない。ここで式中の数値(a、b、c、d等の数値)は、それぞれ各モノマーの組成比を示す質量百分率であり、MwはGPCにより測定されたPEO換算の質量平均分子量である。
前記フッ素系ポリマーは、公知慣用の方法で製造することができる。例えば、先に挙げたフッ素系モノマー、水素結合性基を有するモノマー等を含む有機溶媒中に、汎用のラジカル重合開始剤を添加し、重合させることにより製造できる。また、場合によりその他の付加重合性不飽和化合物を、更に添加して上記と同じ方法にて製造することができる。各モノマーの重合性に応じ、反応容器にモノマーと開始剤とを滴下しながら重合する滴下重合法なども、均一な組成のポリマーを得るために有効である。
前記光学異方性層等を形成する為の液晶性組成物(塗布液として調製した場合は、溶媒を除いた液晶性組成物)中における前記フッ素系ポリマーの含有量の好ましい範囲は、目的に応じて適宜選択することができるが、組成物(塗布液である場合は溶媒を除いた組成物)中、0.005〜8質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましく、0.05〜1質量%であるのが特に好ましい。前記フッ素系ポリマーの含有量が、0.005質量%未満では、効果が不十分なことがあり、8質量%より多くなると、塗膜の乾燥が十分に行われなくなるなど、光学フィルムとしての性能(例えばレタデーションの均一性等)に悪影響を及ぼすことがある。
次に、同様に空気界面側垂直配向剤として使用可能な、下記式(III)で表される含フッ素化合物について説明する。
式(III)
(Rmo−L−(W)no
ただし、前記(III)式中、Rはアルキル基、末端にCF基を有するアルキル基、又は末端にCFH基を有するアルキル基を表し、moは1以上の整数を表す。複数個のRは同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF基又はCFH基を有するアルキル基を表す。Lは(mo+no)価の連結基を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SOH)もしくはその塩、又はホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}もしくはその塩を表し、noは1以上の整数を表す。
前記式(III)中、Rは含フッ素化合物の疎水性基として機能する。Rで表されるアルキル基は、置換基を有してもよいアルキル基であり、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよく、炭素数原子1〜20のアルキル基が好ましく、炭素原子数4〜16のアルキル基がより好ましく、炭素原子数6〜16のアルキル基が特に好ましい。該置換基としては後述の置換基群Dとして例示する置換基のいずれかを適用できる。
前記Rで表される末端にCF基を有するアルキル基としては、炭素原子1〜20が好ましく、炭素原子数4〜16がより好ましく、炭素原子数4〜8が特に好ましい。前記末端にCF基を有するアルキル基は、該アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
前記末端にCF基を有するアルキル基は、該アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されているのが好ましく、60%以上が置換されているのがより好ましく、70%以上が置換されているのが特に好ましい。残りの水素原子は、さらに後述の置換基群Dとして例示された置換基によって置換されていてもよい。
前記Rで表される末端にCFH基を有するアルキル基としては、炭素原子数1〜20が好ましく、炭素原子数4〜16がより好ましく、炭素原子数4〜8が特に好ましい。
前記末端にCFH基を有するアルキル基は、該アルキル基に含まれる水素原子の一部又は全部がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
前記末端にCFH基を有するアルキル基は、該アルキル基中の水素原子の50%以上がフッ素原子で置換されていることが好ましく、60%以上が置換されていることがより好ましく、70%以上を置換されていることが特に好ましい。残りの水素原子は、更に後述の置換基群Dとして例示する置換基によって置換されもよい。
前記Rで表される末端にCF基を有するアルキル基、及び末端にCFH基を有するアルキル基の例を以下に示す。
R1:n−C17
R2:n−C13
R3:n−C
R4:n−C17−(CH
R5:n−C13−(CH
R6:n−C−(CH
R7:H−(CF
R8:H−(CF
R9:H−(CF
R10:H−(CF−(CH)−
R11:H−(CF−(CH)−
R12:H−(CF−(CH)−
前記式(III)中、Lで表される(mo+no)価の連結基としては、アルキレン基、アルケニレン基、芳香族基、ヘテロ環基、−CO−、−NR−(Rは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−からなる群より選ばれる基を少なくとも2つ組み合わせた連結基であることが好ましい。
前記式(III)中、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SOH)もしくはその塩、又はホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}もしくはその塩を表す。Wの好ましい範囲は、前記式(II)におけるQと同一である。
前記式 (III)で表される含フッ素化合物の中でも、下記式(III)−a又は式(III)−bで表される化合物が好ましい。
前記式(III)−a中、R及びRは各々アルキル基、末端にCF基を有するアルキル基、又は末端にCFH基を有するアルキル基を表すが、R及びRが同時にアルキル基であることはない。W及びWは各々水素原子、カルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SOH)もしくはその塩、ホスホノキシ{−OP(=O)(OH)}もしくはその塩、又は、置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有する、アルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルアミノ基を表すが、W及びWが同時に水素原子であることはない。
式(III)−b
(R−L−)m2(Ar)−W
前記式(III)−b中、Rはアルキル基、末端にCF基を有するアルキル基、又は末端にCFH基を有するアルキル基を表し、m2は1以上の整数を表し、複数個のRは同一でも異なっていてもよいが、少なくとも一つは末端にCF基又はCFH基を有するアルキル基を表す。Lは、アルキレン基、芳香族基、−CO−、−NR’−(R’は炭素原子数が1〜5のアルキル基または水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO−、及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる2価の連結基を表し、複数個のLは同一でも異なっていてもよい。Arは芳香族炭化水素環又は芳香族ヘテロ環を表し、Wはカルボキシル基(−COOH)もしくはその塩、スルホ基(−SOH)もしくはその塩、ホスホノキシ基{−OP(=O)(OH)}もしくはその塩、又は、置換基としてカルボキシル基、スルホ基もしくはホスホノキシ基を有する、アルキル基、アルコキシ基もしくはアルキルアミノ基を表す。
−塗布溶剤−
前記塗布液の調製に使用する塗布溶剤としては、有機溶媒が好ましく用いられる。前記有機溶媒としては、例えば、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が挙げられる。これらの中でもアルキルハライド及びケトンが好ましい。前記有機溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
前記塗布液の塗布は、例えば、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の公知の方法により行なうことができる。
−重合性開始剤−
垂直配向させた液晶性化合物は、配向状態を維持して固定する。該固定は、液晶性化合物に導入した重合性基(P)の重合反応により行なうことが好ましい。
前記重合反応としては、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。これらの中では光重合反応が好ましい。
前記光重合開始剤としては、例えは、米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書に記載のα−カルボニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載のアシロインエーテル、米国特許第2722512号明細書に記載のα−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書に記載の多核キノン化合物、米国特許第3549367号明細書に記載のトリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ、特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書に記載のアクリジン化合物及びフェナジン化合物、米国特許第4212970号明細書に記載のオキサジアゾール化合物が挙げられる。
前記光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがより好ましい。
前記ディスコティック液晶性化合物の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。前記光照射における照射エネルギーは、20〜50J/cmであることが好ましく、100〜800mJ/cmであることがより好ましい。光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を行ってもよい。
前記光学異方性層の厚さは、0.1〜10μmであることが好ましく、0.5〜5μmであることがより好ましく、1〜5μmであることが特に好ましい。
−他の添加剤−
上記の液晶性化合物と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等の他の添加剤を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶性化合物の配向性等を向上させることができる。これら他の添加剤は、液晶性化合物と相溶性を有し、配向を阻害しないことが好ましい。
前記重合性モノマーとしては、ラジカル重合性又はカチオン重合性の化合物が挙げられる。これらの中でも、多官能性ラジカル重合性モノマーが好ましく、上記の重合性基含有の液晶性化合物と共重合性のものが好ましい。
前記好ましい重合性モノマーとしては、例えば、特開2002−296423号公報[0018]〜[0020]に記載のものが挙げられる。
前記重合性モノマーの添加量は、上記ディスコティック液晶性化合物に対して、1〜50質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。
前記界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば、特開2001−330725号公報[0028]〜[0056]に記載の化合物、特願2003−295212号公報[0069]〜[0126]に記載の化合物が挙げられる。
前記液晶性化合物と共に使用するポリマーは、塗布液を増粘できることが好ましい。前記ポリマーとしては、例えば、セルロースエステルが挙げられる。
前記セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報[0178]に記載のものが挙げられる。
前記液晶性化合物の配向を阻害しないように、上記ポリマーの添加量は、前記液晶性化合物に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
前記液晶性化合物のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がより好ましい。
<配向膜>
前記位相差板は、配向膜の表面に前記液晶性組成物を塗布して、液晶性化合物の分子を配向させてもよい。
前記配向膜は、液晶性化合物の配向方向を規定する機能を有するため、本発明の好ましい態様を実現する上で利用するのが好ましい。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たすため、本発明の構成要素として必須のものではない。すなわち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。
前記配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、又はラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。更に、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。前記配向膜は、これらの中でも、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。
前記ポリマーとしては、例えば、特開平8−338913号公報[0022]に記載の、メタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が挙げられる。また、シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。これらの中でも、水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールがより好ましく、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。
前記ポリビニルアルコールのケン化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がより好ましい。前記ポリビニルアルコールの重合度は100〜5,000であることが好ましい。
前記配向膜では、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、液晶性化合物を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
前記配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。
前記架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、液晶性化合物を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。したがって、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償シートの強度を著しく改善することができる。
前記配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば、特開2000−155216号公報[0080]〜[0100]に記載のもの等が挙げられる。
前記配向膜ポリマーは、上記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。前記架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾール、ジアルデヒド澱粉が挙げられる。前記架橋剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
具体的には、例えば、特開2002−62426号公報[0023]〜[0024]に記載の化合物等が挙げられる。これらの中でも、反応活性の高いアルデヒドが好ましく、グルタルアルデヒドがより好ましい。
前記架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がより好ましい。
前記配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用し、又は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
前記配向膜は、例えば、配向膜形成材料である上記ポリマー、架橋剤、及び添加剤を含む溶液を支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。
架橋反応は、前記のように、支持体上に塗布した後、任意の時期に行なってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例えば、メタノール)と水との混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが、0:100〜99:1であることが好ましく、0:100〜91:9であることがより好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、更には光学異方性層の層表面の欠陥が著しく減少する。
配向膜の塗布方法としては、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましく、ロッドコーティング法がより好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。
前記加熱乾燥は、20℃〜130℃で行なうことができる。充分な架橋を形成するためには40℃〜120℃が好ましく、50℃〜110℃が特に好ましい。
乾燥時間は、1分〜36時間で行なうことができるが、1〜30分が好ましい。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5が好ましく、5がより好ましい。
前記配向膜は、透明支持体上に設けることが好ましい。該配向膜は、上記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。すなわち、配向膜の表面を、紙、ガーゼ、フェルト、ゴム、ナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さ及び太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行う。
前記配向膜のラビング処理面に前記液晶性組成物を塗布して、液晶性化合物の分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させることで、前記光学異方性層を形成することができる。前記配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
<支持体>
前記支持体は、厚み方向のレタデーション(Rth)が0より小さい光学特性を有する。本発明の位相差板は、前記支持体上に、液晶性組成物を塗布して光学異方性層を形成することにより、自己支持性のある位相差板を作製できる。前記支持体には光学異方性層を一層のみ形成してもよいし、支持体の一方の面に二層以上の光学異方性層を順次積層してもよいし、支持体の両方の面に光学異方性層を形成してもよい。
前記支持体の厚み方向のレタデーション(Rth)は、−600nm以上−80nm以下が好ましく、−300nm以上−80nm以下がより好ましい。
また、位相差板が上記式(1)を満たすように調整するため、面内レタデーション(Re)は、−10nm以上20nm以下が好ましく、−10nm以上0nm以下がより好ましい。
前記支持体としては、波長分散が小さいポリマーフィルムを用いることが好ましい。前記支持体は更に、光学異方性が小さいことが好ましい。前記波長分散が小さいとは、具体的には、Re(400)/Re(700)の比が1.2未満であることが好ましい。前記支持体は透明支持体、すなわち光透過率が80%以上であることが好ましい。
前記ポリマーとしては、例えば、セルロース誘導体、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、環状ポリオレフィンが挙げられる。この中でも、セルロース誘導体が好ましい。
−セルロース誘導体−
前記セルロース誘導体としては、該セルロース誘導体の構成単位であるβ−グルコース環上の3つの水酸基の内の少なくとも1つに連結する置換基として、後述する分極率異方性が特定の範囲内にある(分極率異方性が大きい)置換基を有する、セルロース誘導体であることが好ましい。
前記分極率異方性が大きい置換基を有するセルロース誘導体に対し、後述するレタデーション調節剤を組み合わせることにより、詳細な作用機構は不明だが、置換基の分極率異方性をよりフィルムの膜厚方向に分布させることができ、結果的にフィルムのRthをより低減させることができる。
前記分極率異方性が大きい置換基について詳しく説明する。
前記置換基の分極率は、分子軌道法又は密度汎関数法を用いた計算により求めることができ、前記セルロース誘導体は、分極率異方性が大きい置換基として、下記式(4)で表される分極率異方性が2.5×10−24cm以上である置換基を有する。また、実用上、前記置換基の分極率異方性は300×10−24cm以下であることが好ましい。前記分極率異方性が2.5×10−24cmより小さいと、置換基の分極率異方性によるRth低減効果が十分でなく、Rthが所望のマイナスの領域のフィルムを得るためには数式(11−1)を満たすレタデーション調節剤の使用量が膨大となり、フィルムのガラス転移温度(Tg)が低下して製造適性が問題となることがあり、またコスト上の懸念が生じてしまう。また、前記分極率異方性が300×10−24cm以下とすれば、分極率異方性を達成するための置換基の大きさが過大となってセルロース誘導体の溶解性が不足するといった問題や、得られるフィルムの剛性が不足して取り扱い性が悪くなるといった問題が生じず、好ましい。前記置換基の分極率異方性は、4.0×10-24cm3以上300×10-24cm3以下であることがより好ましく、6.0×10-24cm3以上300×10-24cm3以下であることが更に好ましく、8.0×10-24cm3以上300×10-24cm3以下であることが特に好ましい。
式(4):Δα=αx−(αy+αz)/2
ただし、前記式(4)中、αxは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最大の成分であり、αyは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、二番目に大きい成分であり、αzは、分極率テンソルを対角化後に得られる固有値の内、最小の成分である。
前記置換基の分極率異方性は、Gaussian03(Revision B.03、米ガウシアン社製ソフトウェア)を用いて計算することができる。
具体的には、前記分極率異方性は、B3LYP/6−31G*レベルで最適化された構造を用いて、B3LYP/6−311+G**レベルで分極率を計算し、得られた分極率テンソルを対角化した後、対角成分より算出する。
また、前記セルロース誘導体は、疎水性の大きい置換基を有することが好ましい。疎水的な置換基を有するセルロース誘導体を用いることでセルロース誘導体の平衡含水率を低減でき、光学部材に用いられた際の高温高湿時の性能変化を抑制することができる。
前記疎水的な置換基としては、セルロースの構成単位であるβ−グルコース環上の置換基を加水分解した−OH体の構造におけるlogP値が、1.0以上であることが好ましく、1.5以上であることがより好ましく、2.0以上であることが特に好ましい。前記logP値が1.0以上の置換基を含有することにより、高温高湿時の性能変化を抑制する効果が顕著となり、logP値がより大きい方がその効果も大きい。また、前記logP値は、10以下であることが好ましい。
前記分極率が大きい置換基としては、βグルコース上の水酸基に連結可能な置換基であれば特に制限はなく、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アルキルリン酸オキシ基、アリールリン酸オキシ基、アルキルホウ酸オキシ基、アリールホウ酸オキシ基、アルキル炭酸オキシ基、アリール炭酸オキシ基等が挙げられる。また、疎水性の大きい置換基としては、前記分極率が大きい置換基として例示した置換基を挙げることができる。
上記、分極率異方性が高く且つ疎水性が大きいという観点から特に好ましい置換基としては、芳香族を含む置換基が挙げられ、芳香族アシル基等がより好ましい。
前記分極率が大きい置換基の置換度及び前記疎水性の大きい置換基の置換度(SB)としては、ドープとしての溶媒への溶解性を維持しつつ、かつフィルムのRthを低減して所望の範囲内とする目的と、更にフィルムの平行含水率を低減して偏光板用の保護フィルムとして使用した場合の偏光板の耐久性を向上させる目的で、0.01以上3.0以下であることが好ましく、0.1以上2.7以下であることがより好ましく、0.3以上2.5以下であることが特に好ましい。
また、前記セルロース誘導体は、溶液製膜により製膜する場合の溶液への溶解性や、フィルムの取り扱い性の観点で製膜したフィルムの弾性率を好適な範囲内とするため、βグルコース上の水酸基に連結する置換基として、分極率異方性が2.5×10−24cmより小さい置換基を含むことが好ましい。
前記分極率異方性が2.5×10−24cmより小さい置換基の好ましい例としては、βグルコース上の水酸基に連結可能な置換基であれば特に制限はなく、アルキルオキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルキルリン酸オキシ、アリールリン酸オキシ、アルキルホウ酸オキシ、アリールホウ酸オキシ、アルキル炭酸オキシ、アリール炭酸オキシ、等が挙げられる。これらの中でも脂肪族アシル基、具体的にはアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基等が好ましく、アセチル基がより好ましい。
また、前記分極率異方性が小さい置換基の総置換度SSは、前記分極率が大きい置換基の総置換度SBに対し、下記式(S1)を満たす範囲内であることが好ましく、下記式(S2)を満たす範囲内であることがより好ましく、下記式(S3)を満たす範囲内であることが特に好ましい。
式(S1): 0≦SS≦3.0−SB
式(S2): 1.0≦SS≦3.0−SB
式(S3): 2.0≦SS≦3.0−SB
前記のとおり、分極率異方性が高く且つ疎水性が大きいという観点から特に好ましい置換基としては、芳香族を含む置換基が挙げられ、芳香族アシル基等がより好ましい。
前記セルロース誘導体としては、脂肪酸アシル基と前記分極率異方性の大きい置換基である置換を有してもよい芳香族アシル基とを有する混合酸エステルが好ましく用いられる。ここで、前記置換基を有してもよい芳香族アシル基としては、下記一般式で表される基が挙げられる。
ただし、前記一般式中、Xは置換基を表す。前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールオキシスルホニル基、−S−R、−NH−CO−OR、−PH−R、−P(−R)、−PH−O−R、−P(−R)(−O−R)、−P(−O−R)、−PH(=O)−R−P(=O)(−R)、−PH(=O)−O−R、−P(=O)(−R)(−O−R)、−P(=O)(−O−R)、−O−PH(=O)−R、−O−P(=O)(−R)−O−PH(=O)−O−R、−O−P(=O)(−R)(−O−R)、−O−P(=O)(−O−R)、−NH−PH(=O)−R、−NH−P(=O)(−R)(−O−R)、−NH−P(=O)(−O−R)、−SiH−R、−SiH(−R)、−Si(−R)、−O−SiH−R、−O−SiH(−R)、−O−Si(−R)が挙げられる。前記Rは脂肪族基、芳香族基、又はヘテロ環基を表す。
前記置換基の数は、0〜5個であることが好ましく、1〜4個であることがより好ましく、1〜3個であることが更に好ましく、1〜2個であることが特に好ましい。
前記置換基としては、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基が好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、カルボンアミド基がより好ましく、ハロゲン原子、シアノ、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基が更に好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基が特に好ましい。
前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
前記アルキル基としては、環状構造あるいは分岐を有してもよい。前記アルキル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。
前記アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシルが挙げられる。
前記アルコキシ基としては、環状構造あるいは分岐を有してもよい。前記アルコキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが特に好ましい。前記アルコキシ基は、更に別のアルコキシ基で置換されていてもよい。
前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ、エトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ、ブチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシが挙げられる。
前記アリール基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。前記アリール基としては、例えば、フェニル、ナフチルが挙げられる。
前記アリールオキシ基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。前記アリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ、ナフトキシが挙げられる。
前記アシル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。前記アシル基としては、例えば、ホルミル、アセチル、ベンゾイルが挙げられる。
前記カルボンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。前記カルボンアミド基としては、例えば、アセトアミド、ベンズアミドが挙げられる。
前記スルホンアミド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。前記スルホンアミド基としては、例えば、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミドが挙げられる。
前記ウレイド基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。前記ウレイド基としては、例えば、無置換ウレイドが挙げられる。
前記アラルキル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがより好ましい。前記アラルキル基としては、例えば、ベンジル、フェネチル。ナフチルメチルが挙げられる。
前記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましい。前記アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニルが挙げられる。
前記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は、7〜20であることが好ましく、7〜12であることがより好ましい。前記アリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニルが挙げられる。
前記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は、8〜20であることが好ましく、8〜12であることがより好ましい。前記アラルキルオキシカルボニル基としては、例えば、ベンジルオキシカルボニルが挙げられる。
前記カルバモイル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。前記カルバモイル基としては、例えば、無置換カルバモイル、N−メチルカルバモイルが挙げられる。
前記スルファモイル基の炭素原子数は、20以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましい。前記スルファモイル基としては、例えば、無置換スルファモイル、N−メチルスルファモイルが挙げられる。
前記アシルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましい。前記アシルオキシ基としては、例えば、アセトキシ、ベンゾイルオキシが挙げられる。
前記アルケニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましい。前記アルケニル基としては、例えば、ビニル、アリル、イソプロペニルが挙げられる。
前記アルキニル基の炭素原子数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましい。前記アルキニル基としては、例えば、チエニルが挙げられる。
前記アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。前記アリールスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。前記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。
前記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。前記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましい。前記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることがより好ましい。
次に、本発明におけるセルロース混合酸エステル中脂肪酸エステル残基において、脂肪族アシル基は、炭素原子数が2〜20で、具体的には、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブチリルが好ましく、アセチルが特に好ましい。本発明において前記脂肪族アシル基とは更に置換基を有するものも包含する意味であり、置換基としては例えば前記の一般式のXとして例示したものが挙げられる。
更に、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上の時、互いに同じでも異なっていてもよく、互いに連結して縮合多環化合物を形成してもよい。
前記縮合多環化合物としては、例えば、ナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリンなどが挙げられる。
セルロースの水酸基への芳香族アシル基の置換は、一般的には芳香族カルボン酸クラロイドあるいは芳香族カルボン酸から誘導される対称酸無水物、及び混合酸無水物を用いる方法等が挙げられる。特に芳香族カルボン酸から誘導した酸無水物を用いる方法(Journal of AppliedPolymer Science、Vol.29、3981−3990(1984)記載)が好適に挙げられる。
前記の方法として、前記セルロース混合酸エステル化合物の製造方法としては、(1)セルロース脂肪酸モノエステル又はジエステルを一旦製造した後、残りの水酸基に前記一般式で表される芳香族アシル基を導入する方法、(2)セルロースに直接に、脂肪族カルボン酸と芳香族カルボン酸の混合酸無水物とを反応させる方法、などが挙げられる。
前記(1)の前段においては、セルロース脂肪酸エステル又はジエステルの製造方法自体は周知の方法であるが、これに更に芳香族アシル基を導入する後段の反応は、該芳香族アシル基の種類によって異なる。反応温度は、0〜100℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。反応時間は、30分以上が好ましく、30〜300分がより好ましい。
また、前記(2)の混合酸無水物を用いる方法も、反応条件は混合酸無水物の種類によって変わる。反応温度は、0〜100℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。反応時間は、30〜300分が好ましく、60〜200分がより好ましい。
上記のいずれの反応も、反応を無溶媒又は溶媒中のいずれで行ってもよいが、溶媒を用いて行うのが好ましい。前記溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ジオキサンなどが挙げられる。
芳香族アシル基の置換度は、セルロース脂肪酸モノエステルの場合、残存する水酸基に対して0.01以上2.0以下が好ましく、0.1以上2.0以下がより好ましく、0.3以上2.0以下が特に好ましい。また、セルロース脂肪酸ジエステル(二酢酸セルロース)の場合、残存する水酸基に対して0.01以上1.0以下が好ましく、0.1以上1.0以下がより好ましく、0.3以上1.0以下が特に好ましい。
以下に前記一般式で表される芳香族アシル基の具体例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。これらの中でもNo.1、3、5、6、8、13、18、28が好ましく、No.1、3、6、13がより好ましい。
本発明で用いられるセルロース誘導体は、350〜800の質量平均重合度を有することが好ましく、370〜600の質量平均重合度を有することがより好ましい。
また、本発明で用いられるセルロース誘導体は、70,000〜230,000の数平均分子量を有することが好ましく、75,000〜230,000の数平均分子量を有することがより好ましく、78,000〜120,000の数平均分子量を有することが特に好ましい。
本発明で用いられるセルロース誘導体は、アシル化剤、アルキル化剤、アリール化剤として、酸無水物、酸塩化物、ハロゲン化物を用いて合成できる。
前記アシル化剤として前記酸無水物を使用する場合は、反応溶媒として有機酸(例えば、酢酸)や塩化メチレンが使用される。触媒としては、硫酸のようなプロトン性触媒が用いられる。前記アシル化剤として酸塩化物を使用する場合は、触媒として塩基性化合物が用いられる。
工業的に最も一般的な合成方法では、セルロースをアセチル基及び他のアシル基に対応する有機酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸)、又はそれらの酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸)を含む混合有機酸成分でエステル化してセルロースエステルを合成する。
また、アルキル基やアリール基を置換基として導入する場合の一般的な方法の一つとしては、セルロースをアルカリ溶液中に溶解した後、ハロゲン化アルキル化合物、ハロゲン化アリール化合物等でエーテル化して合成する。
この方法において、綿花リンターや木材パルプのようなセルロースは、酢酸のような有機酸で活性化処理した後、硫酸触媒の存在下で、上記のような有機酸成分の混合液を用いてエステル化する場合が多い。
有機酸無水物成分は、一般にセルロース中に存在する水酸基の量に対して過剰量で使用する。このエステル化処理では、エステル化反応に加えてセルロース主鎖β1→4−グリコシド結合)の加水分解反応(解重合反応)が進行する。主鎖の加水分解反応が進むとセルロースエステルの重合度が低下し、製造するセルロースエステルフイルムの物性が低下する。そのため、反応温度のような反応条件は、得られるセルロースエステルの重合度や分子量を考慮して決定することが好ましい。
重合度の高い(分子量の大きい)セルロースエステルを得るためには、エステル化反応工程における最高温度を50℃以下に調節することが重要である。最高温度は、35〜50℃に調節するのが好ましく、37〜47℃に調節するのがより好ましい。反応温度が35℃以上であれば、エステル化反応が円滑に進行するので好ましい。前記反応温度が50℃以下であれば、セルロースエステルの重合度が低下するなどの不都合が生じないので好ましい。
前記エステル化反応の後、温度上昇を抑制しながら反応を停止すると、さらに重合度の低下を抑制でき、高い重合度のセルロースエステルを合成できる。すなわち、反応終了後に反応停止剤(例えば、水、酢酸)を添加すると、エステル化反応に関与しなかった過剰の酸無水物は、加水分解して対応する有機酸を副成する。この加水分解反応は激しい発熱を伴い、反応装置内の温度が上昇する。反応停止剤の添加速度が大きすぎることがなければ、反応装置の冷却能力を超えて急激に発熱して、セルロース主鎖の加水分解反応が著しく進行し、得られるセルロースエステルの重合度が低下するなどの問題が生じることはない。また、エステル化の反応中に触媒の一部はセルロースと結合しており、その大部分は反応停止剤の添加中にセルロースから解離する。このとき反応停止剤の添加速度が大きすぎなければ、触媒が解離するために充分な反応時間が確保され、触媒の一部がセルロースに結合した状態で残るなどの問題は生じにくい。強酸の触媒が一部結合しているセルロースエステルは安定性が非常に悪く、製品の乾燥時の熱などで容易に分解して重合度が低下する。これらの理由により、エステル化反応の後、好ましくは4分以上、さらに好ましくは4〜30分の時間をかけて反応停止剤を添加して、反応を停止することが望ましい。なお、前記反応停止剤の添加時間が30分以下であれば、工業的な生産性の低下などの問題が生じないので好ましい。
前記反応停止剤としては、一般に酸無水物を分解する水やアルコールが用いられている。ただし、本発明では、各種有機溶媒への溶解性が低いトリエステルを析出させないために、水と有機酸との混合物が、反応停止剤として好ましく用いられる。
以上のような条件でエステル化反応を実施すると、質量平均重合度が350以上800以下である高分子量セルロースエステルを容易に合成することができる。
−レタデーション調節剤−
前記支持体には、フィルムにおける膜厚方向のレタデーションを低減させるために、レタデーション調節剤を添加してもよい。
前記レタデーション調節剤としては、例えば、以下の式(11−1)を満たす化合物であることが好ましい。
式(11−1):Rth(a)−Rth(0)/a≦−1.5
ただし、前記式(11−1)中、0.01≦a≦30であり、Rth(a)はアセチル置換度2.85のセルロースアシレート及びセルロースアシレート100質量部に対してa質量部のレタデーション調節剤とからなる、膜厚80μmのフィルムの波長589nmにおけるRth(nm)を表し、Rth(0)はレタデーション調節剤を含有しないアセチル置換度2.85のセルロースアシレートのみからなる膜厚80μmのフィルムの波長589nmにおけるRth(nm)を表す。aはセルロースアシレート100質量部に対するレタデーション調節剤の質量部を表す。
前記数式(11−1)を満たす化合物をレタデーション調節剤として使用することにより充分なRth低減性が得られ、レタデーション調節剤を過剰に使用することなく、所望のRthを示すフィルムを作製することができる。
本発明においては、分極率異方性の大きい(「分極率異方性の高い」とも言う)置換基を有するセルロース誘導体と、Rthを低減させる化合物を組み合わせることで、Rthをより低減させることができる。
前記レタデーション調節剤は、下記式(11−2)を満足することがより好ましく、下記式(11−3)を満足することが更に好ましい。
式(11−2):Rth(a)−Rth(0)/a≦−2.0
式(11−3):Rth(a)−Rth(0)/a≦−2.5
ただし、前記式(11−2)及び式(11−3)中、0.01≦a≦30である。
また、本発明において用いられるレタデーション調整剤は、アセチル置換度2.86のセルロースアシレートフィルムに添加した場合の波長589nmにおけるReが下記式(10)を満足する化合物であるのが好ましい。
式(10):|Re(a)−Re(0)|/a≧1.0
ただし、前記式(10)中、Re(a)はアセチル置換度2.85のセルロースアシレート及びセルロースアシレート100質量部に対してa質量部のレタデーション調節剤とからなる膜厚80μmのフィルムの波長589nmにおけるRe(nm)を表し、Re(0)はレタデーション調節剤を含有しないアセチル置換度2.85のセルロースアシレートのみからなる膜厚80μmのフィルムの波長589nmにおけるRe(nm)を表す。
本発明においては、前記分極率異方性の大きい(「分極率異方性の高い」とも言う)置換基を有するセルロース誘導体と、レタデーション調節剤とを組み合わせることで、Rthをより低減させることができる。Rthをより低減させる作用機構は明確になってはいないが、セルロース誘導体上の分極率の高い置換基に対し、置換基と相溶性の高い上記レタデーション調節剤を用いることで、製膜時の置換基の配向自由度を高め、膜厚方向へ配向する置換基の割合を高めることで、結果的にフィルムのRthを低減できるものと推定している。
以下に本発明で好ましく用いられる、前記レタデーション調節剤の例として、まず一般式(1)〜(21)を示すが、本発明はこれら化合物に限定されない。
ただし、前記一般式(1)中、R11〜R13はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭素原子数が1〜20の脂肪族基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。
ただし、前記一般式(2)及び(3)中、Zは炭素原子、酸素原子、硫黄原子、及び−NR25−のいずれかを表し、R25はZを含んで構成される5員環及び6員環のいずれかが置換基を有してもよい、水素原子及びアルキル基のいずれかを表す。Y21及びY22はそれぞれ独立に、炭素原子数が1〜20の、エステル基、アルコキシカルボニル基、アミド基及びカルバモイル基を表し、互いに連結して環を形成してもよい。mは1〜5の整数を表し、nは1〜6の整数を表す。
ただし、前記一般式(4)〜(12)中、Y31〜Y70はそれぞれ独立に、炭素原子数が1〜20のエステル基、炭素数が1〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数が1〜20のアミド基、炭素数が1〜20のカルバモイル基、及びヒドロキシ基のいずれかを表し、V31〜V43はそれぞれ独立に水素原子及び置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族基のいずれかを表す。L31〜L80はそれぞれ独立に、原子数0〜40かつ、炭素原子数0〜20の2価の置換基を有してもよい飽和の連結基を表す。ここで、L31〜L80の原子数が0であることは、連結基の両端にある基が直接に単結合を形成していることを意味する。
ただし、前記一般式(13)中、Rはアルキル基及びアリール基のいずれかを表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、並びに炭素原子数の総和は10以上であり置換基を有してもよいアルキル基及びアリール基のいずれかを表す。
ただし、前記一般式(14)中、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数の総和は10以上であり置換基を有してもよい、アルキル基及びアリール基のいずれかを表す。
ただし、一般式(15)中、Rは置換基を有してもよい、脂肪族基及び芳香族基のいずれかを表し、Rは水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族基及び芳香族基のいずれかを表す。Lは、2価〜6価の連結基を表し、nはLの価数に応じた2〜6の整数を表す。
ただし、前記一般式(16)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子及びアルキル基のいずれかを表す。Xは下記の連結基群1から選ばれる1つ以上の基から形成される2価の連結基を表す。Yは水素原子、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基のいずれかを表す。
(連結基群1)単結合、−O−、−CO−、−NR−、アルキレン基、アリーレン基。
ただし、前記連結基群中、Rは水素原子、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基のいずれかを表す。
ただし、前記一般式(17)中、Q、Q、及びQはそれぞれ独立に5員環及び6員環のいずれかを表す。XはB、C−R(Rは水素原子または置換基を表す。)、N、P、P=Oを表す。
前記一般式(17)中で表される化合物は、下記一般式(18)で表されることが好ましい。
ただし、前記一般式(18)中、XはB、C−R、Nを表す。Rは水素原子及び置換基のいずれかを表す。R11、R12、R13、R14、R15、R21、R22、R23、R24、R25、R31、R32、R33、R34、及びR35はそれぞれ独立に水素原子及び置換基のいずれかを表す。
ただし、前記一般式(19)中、Rは置換基を有してもよい、アルキル基及びアリール基のいずれかを表し、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、並びに置換基を有してもよいアルキル基及びアリール基のいずれかを表す。
ただし、前記一般式(21)中、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、並びに置換基を有してもよい脂肪族基及び芳香族基のいずれかを表す。X、X、X、及びXは、それぞれ独立に、単結合、−CO−、及び−NR5−からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。Rは置換基を有してもよい脂肪族基及び芳香族基のいずれかを表す。a、b、c、及びdは0以上の整数であり、a+b+c+dは2以上である。Qは(a+b+c+d)価の有機基を表す。
前記一般式(13)及び一般式(14)の化合物について説明する。
前記一般式(13)及び(14)において、R〜Rが有してもよい置換基としては、フッ素原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基、スルホンアミド基が好ましく、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、スルホン基、スルホンアミド基が特に好ましい。
前記アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数1〜25のものが好ましく、6〜25のものがより好ましく、6〜20のものが特に好ましい。
前記炭素原子数が6〜20のアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、イソアミル、t−アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、オクチル、ビシクロオクチル、ノニル、アダマンチル、デシル、t−オクチル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、ジデシルが挙げられる。
前記アリール基としては、炭素原子数6〜30のものが好ましく、6〜24のものが特に好ましい。
前記炭素原子数6〜24のアリール基としては、例えば、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、ナフチル、ビナフチル、トリフェニルフェニルが挙げられる。
一般式(13)または一般式(14)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
一般式(19)の化合物について説明する。
前記一般式(19)としては、下記一般式(20)で表される化合物が好ましい。
一般式(20)
ただし、前記一般式(20)中、R、R、及びRはそれぞれ独立にアルキル基又はアリール基を表す。ここで、アルキル基は直鎖であっても、分岐であっても、環状であってもよく、炭素原子数が1〜20のものが好ましく、1〜15のものがより好ましく、1〜12のものが特に好ましい。環状のアルキル基としては、シクロヘキシル基が特に好ましい。アリール基は炭素原子数が6〜36のものが好ましく、6〜24のものがより好ましい。
前記アルキル基及びアリール基は置換基を有してもよく、該置換基としてはハロゲン原子(例えば、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素)、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、スルホニルアミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、アシルアミノ基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、スルホニルアミノ基、アシルアミノ基がより好ましく、アルキル基、アリール基、スルホニルアミノ基、アシルアミノ基が特に好ましい。
以下に、前記一般式(19)又は一般式(20)で表される化合物の好ましい例を示すが、これらの具体例に限定されるものではない。
<<logP値>>
前記支持体としてのセルロース誘導体フィルムを作製するにあたっては、分極率異方性の高い置換基とレタデーション調節剤の相溶性が高くなることで、フィルム中のセルロース誘導体上の置換基が膜厚方向へ配向する割合をより高める目的で、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜10である化合物をレタデーション調節剤として使用することが好ましい。前記logP値が10以下であることにより、セルロース誘導体上の置換基との相溶性が良好であり、Rthを充分に低減させる効果を有し、またフィルムの白濁や粉吹きを生じるといった問題が起こらず、好ましい。また、logP値が0以上であることにより、親水性が高くなり過ぎず、セルロース誘導体フィルムの耐水性を悪化させるという問題が生じず、好ましい。logP値は、1〜6がより好ましく、1.5〜5が特に好ましい。
前記オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により測定することができる。また、前記オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。
計算方法としては、Crippen’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))、Viswanadhan’s fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989))、Broto’s fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.,19,71(1984))などが好ましく用いられるが、Crippen’sfragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987))がより好ましい。ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、その化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。
<<レタデーション調節剤の物性>>
前記レタデーション調節剤は、前述のとおり、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。また、レタデーション調節剤は、分子量が、3,000以下であることが好ましく、150以上3,000以下であることがより好ましく、170以上2,000以下であることが更に好ましく、200以上1,000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
前記レタデーション調節剤は、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であることが好ましく、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体であることがより好ましい。また、前記レタデーション調節剤は、セルロース誘導体フィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
前記レタデーション調節剤の添加量は、セルロース誘導体の0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることが特に好ましい。
前記レタデーション調節剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意の比で混合して用いてもよい。
前記レタデーション調節剤を添加する時期は、ドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
−セルロース誘導体溶液の有機溶媒−
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロース誘導体フィルムを製造することが好ましく、セルロース誘導体を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製
造される。
本発明では、セルロース誘導体溶液を後述する流延工程にて金属支持体上に流延して形成した未乾燥状態のドープ膜のゲル化を促進させ、剥離性を良化させる一方、作製するフィルムの弾性率を高くする目的で、セルロース誘導体を溶解する有機溶媒(溶剤)として、少なくとも2種類以上のアルコール系溶剤を含有することが好ましい。
前記アルコール系溶剤としては、炭素原子数1〜8のアルコールであれば特に制限はない。また、少なくとも1種類は炭素原子数3〜8のアルコールであることが好ましく、炭素原子数4〜6のアルコールであることがより好ましい。
前記溶剤組成中のアルコール含率は、0.1〜40%が好ましく、1.0〜30%がより好ましく、2.0〜20%が特に好ましい。
また、主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、及び炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。前記エステル、ケトン、及びエーテルは、環状構造を有していてもよい。
前記エステル、ケトン、及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−、及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、例えば、アルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。主溶剤としては、塩素系溶剤か、酢酸エステルであることが好ましく、メチレンクロライド、又は酢酸メチルであることがより好ましい。
以上、前記セルロース誘導体フィルムに対しては塩素系のハロゲン化炭化水素を主溶媒としてもよいし、発明協会公開技報2001−1745(12頁〜16頁)に記載されているように、非塩素系溶媒を主溶媒としてもよい。
その他、前記セルロース誘導体溶液及びフィルムについての溶媒は、その溶解方法も含めて以下の公開特許公報に開示されており、好ましい態様である。
特開2000−95876、特開平12−95877、特開平10−324774、特開平8−152514、特開平10−330538、特開平9−95538、特開平9−95557、特開平10−235664、特開平12−63534、特開平11−21379、特開平10−182853、特開平10−278056、特開平10−279702、特開平10−323853、特開平10−237186、特開平11−60807、特開平11−152342、特開平11−292988、特開平11−60752、特開平11−60752号。これらの公報によると、前記セルロース誘導体に好ましい溶媒だけでなく、その溶液物性や共存させる共存物質についても記載があり、本発明においても好ましい態様である。
−セルロース誘導体フィルムの製造方法−
−−溶解工程−−
前記セルロース誘導体溶液(ドープ)の調製は、その溶解方法は特に制限はなく、室温でもよく、冷却溶解法あるいは高温溶解方法、これらの組み合わせで行なってもよい。前記セルロース誘導体溶液の調製、更には溶解工程に伴う溶液濃縮、ろ過の各工程に関しては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている製造工程が好ましく用いられる。
<<ドープ溶液の透明度>>
前記セルロース誘導体溶液のドープ透明度としては、85%以上が好ましく、88%以上がより好ましく、90%以上が特に好ましい。
具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、島津製作所)で550nmの吸光度を測定する。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロース誘導体溶液の透明度を算出する。
−−流延、乾燥、巻き取り工程−−
前記セルロース誘導体フィルムには、従来のセルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロース誘導体溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば、回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。
得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて得られたフィルムを、乾燥装置のロール群で機械的に搬送し、乾燥を終了して巻き取り機でロール状に所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせは目的に応じて適宜選択することができる。
前記セルロース誘導体フィルムの主な用途である、電子ディスプレイ用の光学部材である機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらについては、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載されており、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離などに分類され、本発明においても好ましく用いることができる。
前記金属支持体としては、2つのドラムの間に張架したエンドレスのベルトを支持体とする方式か、ドラムそのものをエンドレスの支持体とする方式が一般的であるが、生産性を向上させる観点では、ドラムそのものをエンドレスの支持体として使用する方式を用い、ドープ溶液として2種類以上のアルコール系溶剤を含有する溶剤を含むセルロース誘導体溶液を使用し、更にドラムの温度を適温とすることで、ウェブのゲル化を促進し、支持体からのウェブの剥離性を向上させ、結果的により生産性を向上させることができる。
また、作製されるセルロース誘導体フィルムの厚さは、10〜200μmが好ましく、20〜150μmがより好ましく、30〜100μmが特に好ましい。
本発明の位相差板の好ましい態様としては、支持体の長手方向に対して、光学異方性層の遅相軸が平行でも直交でもない方向にある態様が挙げられる。具体的には、支持体の長手方向と光学異方性層の遅相軸とのなす角が5〜85°であることが好ましい。光学異方性層の遅相軸の角度は、ラビングの角度で調整できる。長尺状の支持体の長手方向に対して光学異方性層の遅相軸を平行でも直交でもない角度にすることで(例えば、支持体上に配向膜を形成し、該配向膜の表面を長手方向に対して5〜85°の方向にラビング処理することで)、楕円偏光板の製造において、長尺状の偏光膜とロールトゥロールによる貼り合せが可能になり、貼り合せの軸角度の精度が高く、生産性の高い楕円偏光板の製造が可能になる。
(偏光板)
本発明の偏光板は、本発明の前記位相差板と、偏光膜とが貼り合わされてなる。本発明の位相差板は偏光膜の保護膜としても機能できる。
前記支持体が偏光膜の保護膜として機能した、位相差板一体型偏光板であるのが好ましい。また、本発明の位相差板と保護膜を有する偏光板とが貼り合わされてもよい。
前記偏光膜としては、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜、ポリエン系偏光膜が挙げられる。
前記ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。前記偏光膜の吸収軸は、フィルムの延伸方向に相当する。したがって、縦方向(搬送方向)に延伸された偏光膜は、長手方向に対して平行に吸収軸を有し、横方向(搬送方向と垂直方向)に延伸された偏光膜は、長手方向に対して垂直に吸収軸を有する。
本発明の偏光板の好ましい製造方法としては、偏光膜と位相差板とが、それぞれ長尺の状態で連続的に積層される工程を含む。該長尺の偏光板は、用いられる液晶表示装置の画面の大きさに合わせて裁断される。
直線偏光膜と位相差板とを組み合わせて楕円偏光板として構成しておくと、容易に反射型及び半透過型液晶表示装置に組み込むことができる。また、有機EL表示装置の反射防止膜としても用いることができる。更に、長尺状の楕円偏光板に、別途作製した長尺状のコレステリック液晶性フィルムもさらに積層できるので、生産性の高い輝度向上膜の製造も容易になる。
偏光膜は、一般に保護膜を有する。本発明において、液晶性化合物からなる光学異方性層を支持体上に形成した場合、該支持体を保護膜として機能させることができる。その支持体とは別に偏光膜の保護膜を用いる場合は、保護膜として光学的等方性が高いセルロースエステルフィルムやノルボルネン系ポリマーフィルムを用いることが好ましい。
(輝度向上フィルム及び液晶表示装置)
本発明の輝度向上フィルムは、本発明の前記位相差板と、コレステリック液晶層とを有する。
本発明の液晶表示装置は、本発明の、前記位相差板、前記偏光板、及び前記輝度向上フィルムのいずれかと、液晶セルとを有する。前記液晶表示装置は、反射型、半透過型、透過型液晶表示装置等が含まれる。
なお、本発明の前記輝度向上フィルムは、本発明の前記液晶表示装置の説明を通じて明らかにする。
前記液晶表示装置は一般的に、偏光板、液晶セル、必要に応じて、位相差板、反射層、光拡散層、バックライト、フロントライト、光制御フィルム、導光板、プリズムシート、カラーフィルター等の部材から構成されるが、本発明においては、前記位相差板を使用することを必須とする点を除いて特に制限はない。
また、前記位相差板の使用位置は特に制限はなく、1箇所でも複数箇所でもよい。前記液晶セルとしては、特に制限はなく、電極を備える一対の透明基板で液晶層を狭持したもの等の一般的な液晶セルが使用できる。
前記液晶セルを構成する透明基板としては、液晶層を構成する液晶性を示す材料を特定の配向方向に配向させるものであれば特に制限はない。具体的には、基板自体が液晶を配向させる性質を有していている透明基板、基板自体は配向能に欠けるが、液晶を配向させる性質を有する配向膜等をこれに設けた透明基板等がいずれも使用できる。
また、前記液晶セルの電極は、公知のものが使用できる。通常、液晶層が接する透明基板の面上に設けることができ、配向膜を有する基板を使用する場合は、基板と配向膜との間に設けることができる。
前記液晶層を形成する液晶性を示す材料としては、特に制限はなく、各種の液晶セルを構成し得る通常の各種低分子液晶性化合物、高分子液晶性化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。また、これらに液晶性を損なわない範囲で色素やカイラル剤、非液晶性化合物等を添加することもできる。
前記液晶セルは、前記電極基板及び液晶層の他に、後述する各種の方式の液晶セルとするのに必要な各種の構成要素を備えていてもよい。前記液晶セルの方式としては、TN(Twisted Nematic)方式、STN(SuperTwisted Nematic)方式、ECB(Electrically Controlled Birefringence)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、VA(Vertical Alignment)方式、MVA(Multidomain Vertical Alignment)方式、PVA(Patterned Vertical Alignment)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、HAN(Hybrid Aligned Nematic)方式、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)方式、ハーフトーングレイスケール方式、ドメイン分割方式、あるいは強誘電性液晶、反強誘電性液晶を利用した表示方式等の各種の方式が挙げられる。
また、液晶セルの駆動方式も特に制限はなく、STN−LCD等に用いられるパッシブマトリクス方式、並びにTFT(Thin Film Transistor)電極、TFD(Thin Film Diode)電極等の能動電極を用いるアクティブマトリクス方式、プラズマアドレス方式等のいずれの駆動方式であってもよい。カラーフィルターを使用しないフィールドシーケンシャル方式であってもよい。
本発明における偏光板は、反射型、半透過型、及び透過型液晶表示装置に好ましく用いられる。また、本発明における偏光板は、コレステリック液晶フィルムと組み合わされることで、輝度向上フィルムとしても好ましく用いられる。
前記反射型液晶表示装置は、反射板、液晶セル、及び偏光板を、この順に積層した構成を有する。
前記位相差板は、反射板と偏光膜との間(反射板と液晶セルとの間又は液晶セルと偏光膜との間)に配置される。前記反射板は、液晶セルと基板を共有していてもよい。
前記半透過反射型液晶表示装置は、電液晶セルと、該液晶セルより観察者側に配置された偏光板と、前記偏光板と前記液晶セルの間に配置される少なくとも1枚の位相差板と、観察者から見て前記液晶層よりも後方に設置された半透過反射層とを少なくとも備え、更に観察者から見て前記半透過反射層よりも後方に少なくとも1枚の位相差板と偏光板とを有する。このタイプの液晶表示装置では、バックライトを設置することで反射モード及び透過モード双方の使用が可能となる。
前記液晶表示装置において、本発明の位相差板と組み合わされた偏光板は、楕円偏光板又は円偏光板等として機能する。
本発明の位相差板及び偏光板は、前記用途に限らず、その他の種々の用途に供することができる。例えば、ホスト−ゲスト型液晶表示装置、タッチパネル、エレクトロルミネッセンス(EL)素子などの反射防止膜、反射型偏光板などに用いることができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1及び2、並びに、比較例1及び2)
<セルロース誘導体フィルムの作製>
表1に記載の組成物を、耐圧性のミキシングタンクに投入し、6時間攪拌して各成分を溶解し、セルロース誘導体溶液(以下、ドープともいう)T−1〜T−4を調製した。なお、表1の置換度の欄の( )内には置換されたアシル基の基名を示し、更に各基名に続けて( )内に本文中に記載の方法により計算した各基の分極率異方性を示した。
調製したセルロース誘導体溶液をバンド流延機にて金属支持体上に流延した後、乾燥を行い、自己支持性のあるドープ流延膜をバンドより剥離した。剥離したドープ膜をテンターでフィルム幅が維持されるように把持しながら乾燥した後、ロールに巻き取り、厚み80μmのセルロース誘導体フィルム(支持体)を、幅方向が1.3mの長さとなるように作製した。
作製したセルロース誘導体フィルムについて、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、本明細書中〔0019〕〜〔0022〕で述べた方法により、589nmでの光学測定を行なった。結果を表2に示す。
表1中、単位は質量部である。また、C−416は下記構造式で表されるレタデーション調節剤である。
<位相差板の作製>
(配向膜の形成)
上記作製したセルロース誘導体フィルムを表面ケン化後、下記組成の配向膜塗布液を#14のワイヤーバーで連続的に塗布した。60℃の温風で60秒、更に100℃の温風で120秒乾燥し、膜を形成した。次に、形成した膜にフィルムの長手方向に対して45°の方向に連続的にラビング処理を施して配向膜を形成した。
配向膜塗布液の組成
下記の変性ポリビニルアルコール・・・10質量部
水・・・371質量部
メタノール・・・119質量部
グルタルアルデヒド・・・0.5質量部
変性ポリビニルアルコール
(光学異方性層の形成)
下記の組成のディスコティック液晶性化合物を含む光学異方性層塗布液Aを、上記作製した配向膜上に、#3.6のワイヤーバーで連続的に塗布した。塗布液における、溶媒の乾燥、及びディスコティック液晶性化合物の配向熟成のために、100℃の温風で30秒、更に130℃の温風で60秒間加熱した。続いて、UV照射により液晶性化合物の配向を固定化し光学異方性層を形成した。なお、前記ディスコティック液晶性化合物は、配向の固定化により、光学異方性層形成後は液晶性を失い、ディスコティック化合物となる。
上記のように作製した液晶性化合物を含む光学異方性層側に、一軸延伸したアートンフィルム(JSR製)を、遅相軸が60度で交差するように粘着剤で貼り合せ、それぞれ位相差板1〜4を作製した。このフィルムの光軸はフィルム平面と平行であり、前記方法により550nmで測定したRe値は260nmであった。
光学異方性層塗布液Aの組成
下記のディスコティック液晶性化合物・・・91質量部
エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)・・・9質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)・・・3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)・・・1質量部
フッ素系ポリマー P−19・・・0.4質量部
ピリジニム塩 I−30・・・0.5質量部
メタノール・・・30質量部
メチルエチルケトン・・・165質量部
ディスコティック液晶性化合物
(実施例3及び4、並びに、比較例3及び4)
<位相差板の作製>
上記作製したセルロース誘導体フィルムを表面ケン化後、実施例1と同様に連続的に配向膜を形成し、長手方向に対し45°の方向にラビング処理を施した。その配向膜上に、下記の組成の棒状液晶性化合物を含む光学異方性塗布液Bを、#2.0のワイヤーバーで連続的に塗布した。塗布液の溶媒の乾燥及び棒状液晶性化合物の配向熟成のために、90℃の温風で60秒間加熱した。続いて、UV照射により液晶性化合物の配向を固定化し光学異方性層を形成し、一軸延伸したアートンフィルム(JSR製)を貼合して、それぞれ位相差板5〜8を作製した。
光学異方性層塗布液Bの組成
下記棒状液晶性化合物A・・・100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)・・・3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)・・・1質量部
下記のフッ素系ポリマー(F)・・・0.4質量部
下記の水平配向剤(G)・・・0.2質量部
メチルエチルケトン・・・194質量部
棒状液晶性化合物
フッ素系ポリマー
水平配向剤
−評価−
KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50°から+50°まで10°ステップで測定した値のうち、位相差板平面の法線方向から測定したレタデーションの値をRe(0)、該位相差板の遅相軸を傾斜軸として、該位相差板より40°傾いたレタデーションの値をRe(40)、該位相差板が前記傾斜方向と反対側に40°傾いたレタデーションの値をRe(−40)としたときの、上記作製した位相差板の589nmにおけるRe(0)、Re(40)、及びRe(−40)を測定し、Rth、及び下記式(1)によりNzを求めた(ただし、比較例2及び4は、Re(0)を予め450nm、550nm、650nmに設定)。結果を表3に示す。
なお、これらの結果から、ディスコティック液晶性化合物の円盤面のフィルム面に対する平均傾斜角は90°であり、ディスコティック液晶性化合物がフィルム面に対して垂直に配向していることが確認できた。また、遅相軸の方向は配向膜のラビング方向と平行であり、支持体の長手方向となす角は45°であった。
更に、棒状液晶性化合物の長軸のフィルム面に対する平均傾斜角は0°であり、棒状液晶性化合物がフィルム面に対して水平に配向していることが確認できた。また、遅相軸の方向は配向膜のラビング方向と平行であり、支持体の長手方向となす角は45°であった。
式(1) Nz=0.5+Rth/Re
(実施例5〜8、及び比較例5〜8)
<偏光板の作製>
ヨウ素水溶液中で連続して染色した厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムを搬送方向に5倍延伸し、乾燥して長尺の偏光膜を得た。この偏光膜の一方の面に、上記作製した位相差板1の光学異方性層が形成されていない面を、他方の面に視野角拡大フィルム(WV FILM ワイドビューA WV SA 128)を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて連続して貼り合わせ、長尺の偏光板1を作製した。偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であり、ワイドビューフィルムの遅相軸はフィルム長手方向と直交していた。偏光膜の吸収軸と位相差板1の遅相軸とがなす角は45.0°であった。
同様にして、位相差板2〜8を用いて、それぞれ偏光板2〜8を作製した。いずれも偏光膜の吸収軸はフィルム長手方向に対して平行であり、ワイドビューフィルムの遅相軸はフィルム長手方向と直交していた。偏光膜の吸収軸と位相差板2〜8のそれぞれの遅相軸とのなす角はいずれも45.0°であった。
<輝度向上フィルムの作製>
トリアセテートフィルム(80μm)上に、400〜700nmの帯域において円偏光二色性を示す長尺状のコレステリック液晶フィルム(厚み5μm)を作製した。上記作製した偏光板1のワイドビューフィルムと反対側の面と、コレステリック液晶性フィルムを連続的に貼り合せ、長尺状の輝度向上フィルム1を作製した。
同様にして、偏光板2〜8とコレステリック液晶性フィルムとをそれぞれ連続的に貼り合せ、長尺状の輝度向上フィルム2〜8を作製した。
(比較例9)
<棒状液晶ホメオトロピック配向フィルム>
上記セルロース誘導体溶液T−3より作製したセルロース誘導体フィルムを表面ケン化後、上記作製した位相差板3の第1の光学異方性層の上に、上記と同様にして配向膜を形成した。下記組成の棒状液晶性化合物を含む光学異方性層塗布液Cを配向膜上に、#3.0のワイヤーバーで連続的に塗布した。塗布液の溶媒の乾燥及び棒状液晶性化合物の配向熟成のために、90℃の温風で60秒間加熱した。続いて、UV照射により液晶性化合物の配向を固定化した後、光学異方性層が形成された面の反対側のセルロース誘導体フィルム表面を連続的にケン化処理し、位相差板9を作製した。実施例1と同様に、位相差板9の589nmにおけるRe(0)、Re(40)、及びRe(−40)を測定した結果、Re=1nm、Rth=101nmであった。これらの結果から棒状液晶性化合物は、フィルム面に対する垂直に配向しているホメオトロピック配向していることが確かめられた。
光学異方性層塗布液Cの組成
下記の棒状液晶性化合物A・・・100質量部
光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)・・・3質量部
増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)・・・1質量部
フッ素系ポリマー P−22・・・0.2質量部
下記のフッ素系ポリマー(D)・・・0.2質量部
ピリジニム塩I−12・・・2質量部
メタノール・・・30質量部
メチルエチルケトン・・・168質量部
棒状液晶性化合物A
フッ素系ポリマー(D)
<輝度向上フィルムの作製>
上記で作製した偏光板3のワイドビューフィルムと反対側の面に、位相差板9の光学異方性層が形成されていない面を貼り合わせ、さらにその上に上記と同様にコレステリック液晶性フィルムを貼り合せ、輝度向上フィルム9を作製した。
−評価−
<液晶表示装置の作製>
TN型液晶セルを使用した液晶表示装置(AQUOS LC20C1S、シャープ(株)製)に設けられている一対の偏光板のうち、バックライト側の偏光板のみを剥がし、代わりに上記作製した輝度向上フィルム1〜9を、ワイドビューフィルムが液晶セル側となるように、粘着剤を介して貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸と、バックライト側の偏光板の透過軸とは、Oモードとなるように配置した。
<正面輝度及び色味変化の測定>
作製した液晶表示装置について、測定機(EZ−Contrast 160D、ELDIM社製)を用いて、黒表示(L1)から白表示(L8)までで視野角を測定した。具体的には、輝度向上フィルム3を用いた場合に対する白表示時の正面輝度を相対値として示した。
また、色味変化について、液晶表示装置の方位角0度(右側水平方向)における、極角0度の知覚色度指数と、80度の知覚色度指数との差Δu’及びΔv’を測定した。この差が小さい程、色味変化が小さいことを示す。これらの結果を表4に示す。
表4の結果から、厚み方向のレタデーション(Rth)が0nm未満の支持体上に、液晶性化合物を含む光学異方性層を有し、前記Nzが0未満の位相差板を用いた実施例5〜8では、厚み方向のレタデーション(Rth)が0nm以上の支持体上に、液晶性化合物を含む光学異方性層を有し、前記Nzが0以上の位相差板を用いた比較例5〜9に比べて、液晶表示装置において、正面輝度が向上し、色味変化が小さいことが判った。
本発明の位相差板は、表示特性の改善に寄与し、特に斜め方向からの色味を改良できるため、λ/4板として好適に用いられる。特に、本発明の偏光板、輝度向上フィルム、及び液晶表示装置におけるλ/4板として好適に用いられる。
本発明の偏光板及び輝度向上フィルムは、本発明の前記位相差板をλ/4板として用いるので、特に、本発明の液晶表示装置に好適に用いられる。
前記液晶表示装置は、本発明の前記位相差板、偏光板、及び輝度向上フィルムの少なくともいずれかを用いるので、液晶表示特性の改善に寄与し、特に斜め方向からの色味を改良でき、反射型、半透過型、及び透過型液晶表示装置において好適に用いられる。

Claims (10)

  1. 厚み方向のレタデーション(Rth)が0nm未満の支持体上に、液晶性化合物を固定化した光学異方性層を有し、下記式(1)で表されるNzが0未満であることを特徴とする位相差板。
    式(1) Nz=0.5+Rth/Re
    ただし、前記式(1)中、Reは位相差板の面内のレタデーション値を表し、Rthは厚み方向のレタデーション値を表す。
  2. 支持体の厚み方向のレタデーション(Rth)が、−600〜−80nmである請求項1に記載の位相差板。
  3. 支持体の面内のレタデーション(Re)が、−10〜20nmである請求項2に記載の位相差板。
  4. 支持体が、セルロース誘導体フィルムである請求項3に記載の位相差板。
  5. 光学異方性層が、ディスコティック化合物を含む請求項1から4のいずれかに記載の位相差板。
  6. ディスコティック化合物における円盤面の配向状態が、光学異方性層面に対して実質的に垂直に固定されている請求項5に記載の位相差板。
  7. 光学異方性層が、含フッ素系化合物を含む請求項1から6のいずれかに記載の位相差板。
  8. 請求項1から7のいずれかに記載の位相差板と、偏光膜とを有することを特徴とする偏光板。
  9. 請求項1から7のいずれかに記載の位相差板と、コレステリック液晶層とを有することを特徴とする輝度向上フィルム。
  10. 請求項1から7のいずれかに記載の位相差板、請求項8に記載の偏光板、及び請求項9に記載の輝度向上フィルムのいずれかと、液晶セルとを有することを特徴とする液晶表示装置。
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JP2009294261A (ja) * 2008-06-02 2009-12-17 Fujifilm Corp 液晶表示装置、アクリルフィルムおよびその製造方法
JP2023034954A (ja) * 2021-08-31 2023-03-13 シャープディスプレイテクノロジー株式会社 光学素子及びそれを備える液晶表示装置

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