JP2007262306A - ポリ乳酸樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 成形性、耐熱性、耐衝撃性、柔軟性が良好なポリ乳酸樹脂組成物の提供。
【解決手段】 ポリ乳酸樹脂と、可塑剤と、ヒドロキシ脂肪酸エステルである有機核剤と、無機核剤とを含むポリ乳酸樹脂組成物、並びにこのポリ乳酸樹脂組成物を、ポリ乳酸樹脂の融点(Tm)以上で混合する工程(1)と、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上Tm未満の温度で熱処理する工程(2)とを有するポリ乳酸樹脂成形体の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリ乳酸樹脂組成物、及び該ポリ乳酸樹脂組成物を用いたポリ乳酸樹脂成形体の製造方法に関する。
生分解性樹脂の中でポリ乳酸樹脂は、トウモロコシ、芋などからとれる糖分から、発酵法によりL−乳酸が大量に作られ安価になってきたこと、原料が自然農作物なので総酸化炭素排出量が極めて少ない、また得られた樹脂の性能として剛性が強く透明性が良いという特徴があるので、現在その利用が期待されている。しかしポリ乳酸樹脂の場合、脆く、硬く、可撓性に欠ける特性のためにいずれも硬質成形品分野に限られ、フィルムなどに成形した場合は、柔軟性が不足したり、折り曲げたとき白化などの問題があり、軟質又は半硬質分野に使用されていないのが現状である。また、ポリ乳酸樹脂は結晶化速度が遅く、延伸などの機械的工程を行わない限り成形後は非晶状態である。しかし、ポリ乳酸樹脂のガラス転移温度(Tg)は60℃と低く耐熱性に劣るため、温度が55℃以上となる環境下では使用できない問題があった。
ポリ乳酸樹脂を軟質、半硬質分野に応用する技術として、可塑剤を添加する方法や、あるいは耐熱性を向上させるため結晶核剤を添加して結晶化させる方法が種々提案されている(例えば特許文献1)が、更なる成形性、耐熱性、耐衝撃性、柔軟性が良好なポリ乳酸樹脂組成物の開発が求められている。
国際公開第2005/108501号パンフレット
本発明の課題は、成形性、耐熱性、耐衝撃性、柔軟性が良好なポリ乳酸樹脂組成物を提供することにある。
本発明は、ポリ乳酸樹脂と、可塑剤と、ヒドロキシ脂肪酸エステルである有機核剤と、無機核剤とを含むポリ乳酸樹脂組成物を提供する。
また、本発明は、上記ポリ乳酸樹脂組成物を、ポリ乳酸樹脂の融点(Tm)以上で混合する工程(1)と、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上Tm未満の温度で熱処理する工程(2)とを有するポリ乳酸樹脂成形体の製造方法を提供する。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、成形性が良好で、耐熱性、耐衝撃性及び柔軟性に優れている。また、本発明の製造方法によると、成形性が良好で、優れた耐熱性、耐衝撃性及び柔軟性を有するポリ乳酸樹脂成形体を得ることができる。
[ポリ乳酸樹脂]
本発明に用いられるポリ乳酸樹脂としては、ポリ乳酸、又は乳酸とヒドロキシカルボン酸とのコポリマーが挙げられる。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸が好ましい。
好ましいポリ乳酸の分子構造は、L−乳酸又はD−乳酸いずれかの単位20〜100モル%とそれぞれの対掌体の乳酸単位0〜20モル%からなるものである。また、好ましい乳酸とヒドロキシカルボン酸とのコポリマーは、L−乳酸又はD−乳酸いずれかの単位85〜100モル%とヒドロキシカルボン酸単位0〜15モル%からなるものである。
これらのポリ乳酸樹脂は、L−乳酸、D−乳酸及びヒドロキシカルボン酸の中から必要とする構造のものを選んで原料とし、脱水重縮合することにより得ることができる。好ましくは、乳酸の環状二量体であるラクチド、グリコール酸の環状二量体であるグリコリド及びカプロラクトン等から必要とする構造のものを選んで開環重合することにより得ることができる。ラクチドにはL−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸とが環状二量化したメソ−ラクチド及びD−ラクチドとL−ラクチドとのラセミ混合物であるDL−ラクチドがある。本発明ではいずれのラクチドも用いることができる。但し、主原料は、D−ラクチド又はL−ラクチドが好ましい。
市販されているポリ乳酸樹脂としては、例えば、三井化学(株)製、商品名レイシア;ネイチャーワークス社製、商品名Nature works;トヨタ自動車(株)製、U’s等が挙げられる。
これらのポリ乳酸樹脂の中でも結晶化速度、物性の観点からL−乳酸高純度品である結晶グレードのもの、特に三井化学(株)製、LACEA H−400、LACEA H−100、LACEA H−440が好ましく、L−乳酸純度95%以上のポリ乳酸樹脂、特に三井化学(株)製、LACEA H−400、LACEA H−100がさらに好ましい。
[可塑剤]
本発明に用いられる可塑剤としては、グリセリンジアセトモノラウレート、ジグリセリンテトラアセテート、アセチルクエン酸トリブチル等や、分子中に2個以上のエステル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数が3〜9の化合物などが挙げられるが、ポリ乳酸樹脂成形体の成形性、耐衝撃性に優れる観点から、分子中に2個以上のエステル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数が3〜9の化合物が好ましい。尚、エチレンオキサイドの平均付加モル数は、1H−NMR法によって測定することができる。
本発明に用いられる可塑剤の平均分子量は耐ブリード性及び耐揮発性の観点から、好ましくは250〜700であり、より好ましくは300〜600であり、更に好ましくは350〜550であり、特に好ましくは400〜500である。尚、平均分子量は、JIS K0070に記載の方法で鹸化価を求め、次式より計算で求めることができる。
平均分子量=56108×(エステル基の数)/鹸化価
本発明に用いられる分子中に2個以上のエステル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数が3〜9の化合物としては、ポリ乳酸樹脂成形体の成形性、耐衝撃性に優れる観点から、酢酸とグリセリンのエチレンオキサイド平均3〜9モル付加物とのエステル、酢酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が4〜9のポリエチレングリコールとのエステル等の多価アルコールのアルキルエーテルエステル、コハク酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜4のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル等の多価カルボン酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル等が挙げられ、ポリ乳酸樹脂成形体の成形性、耐衝撃性及び可塑剤の耐ブリード性に優れる観点から、コハク酸、アジピン酸又は1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、及び酢酸とグリセリン又はエチレングリコールのエチレンオキサイド付加物とのエステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、酢酸とグリセリンのエチレンオキサイド平均3〜6モル付加物とのエステル、酢酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が4〜6のポリエチレングリコールとのエステル、コハク酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルがさらに好ましい。ポリ乳酸樹脂成形体の成形性、耐衝撃性及び可塑剤の耐ブリード性、耐揮発性及び耐刺激臭の観点から、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステルが特に好ましい。
尚、上記のエステルは、可塑剤としての機能を十分発揮させる観点から、全てエステル化された飽和エステルであることが好ましい。
[結晶核剤]
本発明は、結晶核剤として、有機核剤と無機核剤とを用いる。
本発明に用いられる有機核剤は、ポリ乳酸樹脂成形体の成形性、耐熱性、耐衝撃性及び有機核剤の耐ブルーム性の観点から、ヒドロキシ脂肪酸エステルである。有機核剤の融点は熱処理温度より高く、樹脂組成物の混練温度以下であると、混練時に有機核剤が溶解することによってその分散性が向上し、熱処理温度より高いと結晶核生成の安定化や熱処理温度が上げられるため、結晶化速度向上の観点でも好ましい。具体的には有機核剤の融点は、65℃以上が好ましく、70℃〜200℃がより好ましい。尚、有機核剤の融点は、JIS−K7121に基づく示差走査熱量測定(DSC)の昇温法による結晶融解吸熱ピーク温度より求められる。
ヒドロキシ脂肪酸エステルから選ばれる有機核剤によって、本発明の効果が向上する理由は定かではないが、水酸基、エステル基を有すると、ポリ乳酸樹脂との相互作用が良好となり、相溶性が向上する結果、樹脂中で微分散することによるものと考えられ、恐らく、水酸基を1つ以上、好ましくは2つ以上有することによりポリ乳酸樹脂への分散性が良好となり、エステル基を1つ以上、好ましくは2つ以上有することによりポリ乳酸樹脂への相溶性が良好となるものと考えられる。また、ヒドロキシ脂肪酸エステルから選ばれる有機核剤は、樹脂溶融状態から冷却過程で速やかに微細な結晶を多数析出するものと考えられ、結晶化速度向上の観点でも好ましい。
本発明の有機核剤の具体例としては、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、12−ヒドロキシステアリン酸ジグリセライド、12−ヒドロキシステアリン酸モノグリセライド、ペンタエリスリトール−モノ−12−ヒドロキシステアレート、ペンタエリスリトール−ジ−12−ヒドロキシステアレート、ペンタエリスリトール−トリ−12−ヒドロキシステアレート等のヒドロキシ脂肪酸エステルが挙げられる。ポリ乳酸樹脂成形体の成形性、耐熱性、耐衝撃性及び有機核剤の耐ブルーム性の観点から、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドが好ましい。
本発明に用いられる無機核剤としては、タルク、スメクタイト、カオリン、マイカ、モンモリロナイト等のケイ酸塩、シリカ、酸化マグネシウム等の無機化合物が挙げられる。無機核剤の平均粒径は、良好な分散性を得る観点から、0.1〜20μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。無機核剤の中でも、ポリ乳酸樹脂成形体の成形性及び耐熱性の観点からケイ酸塩が好ましく、タルク又はマイカがより好ましく、タルクが特に好ましい。また、ポリ乳酸樹脂成形体の成形性及び透明性の観点からは、シリカが好ましい。
尚、無機核剤の平均粒径は、回折・散乱法によって体積基準のメジアン系を測定することにより求めることができる。例えば市販の装置としてはコールター社製レーザー回折・光散乱法粒度測定装置LS230等が挙げられる。
本発明では、ヒドロキシ脂肪酸エステルから選ばれる有機核剤と無機核剤とを併用することにより、ポリ乳酸樹脂成形体の成形性、耐熱性及び耐衝撃性が良好となり、有機核剤の耐ブルーム性も良好となる。本発明の効果が向上する理由は定かではないが、無機核剤を単独で使用すると分散性が悪くなるところ、ヒドロキシ脂肪酸エステルから選ばれる有機核剤を併用することにより、樹脂中における無機核剤の分散性が向上することによって、ポリ乳酸樹脂が結晶化する起点が増加して微結晶化するものと考えられる。その結果、結晶化速度が向上するため、短い金型保持時間でポリ乳酸樹脂の結晶化が進んで 良好な成形性を示し、また、その成形体は結晶が緻密であるため、耐熱性及び耐衝撃性が良好となるものと考えられる。また、無機核剤の親水面とヒドロキシ脂肪酸エステルの極性基が相互作用することによって、ヒドロキシ脂肪酸エステルから選ばれる有機核剤が樹脂表面に析出(ブルーム)することを抑制しているため、金型汚染の防止にも有効であると考えられる。
[ポリ乳酸樹脂組成物]
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、ポリ乳酸樹脂、可塑剤、ヒドロキシ脂肪酸エステルである有機核剤及び無機核剤を含有するものである。本発明のポリ乳酸樹脂組成物における可塑剤、有機核剤及び無機核剤の特に好ましい組合せとしては、本発明の効果を発現する観点から、可塑剤がコハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、有機核剤が12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド、無機核剤がタルクである。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物中の、ポリ乳酸樹脂の含有量は、本発明の目的を達成する観点から、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは70重量%以上である。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物における可塑剤の含有量は、十分な結晶化速度と耐衝撃性を得る観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、5〜30重量部が好ましく、7〜30重量部より好ましく、10〜30重量部がさらに好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物における有機核剤の含有量は、十分な結晶化速度を得る観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.1〜5重量部が好ましく、0.3〜3重量部が更に好ましく、0.5〜2重量部が特に好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物における無機核剤の含有量は、十分な結晶化速度、成形性と耐熱性及び耐衝撃性を得る観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.1〜60重量部が好ましく、1〜40重量部が更に好ましく、1〜30重量部が特に好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物中における有機核剤と無機核剤との重量比は、十分な結晶化速度、成形性と耐熱性及び耐衝撃性を得る観点から、有機核剤/無機核剤=1/60〜5/1が好ましく、1/40〜3/1がより好ましく、1/30〜2/1が更に好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、上記の本発明の結晶核剤、可塑剤以外に、更に、加水分解抑制剤を含有することができる。加水分解抑制剤としては、ポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物が挙げられ、ポリ乳酸樹脂成形体の成形性の観点からポリカルボジイミド化合物が好ましく、ポリ乳酸樹脂成形体の耐熱性、耐衝撃性及び有機核剤の耐ブルーム性の観点から、モノカルボジイミド化合物が好ましい。
ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられ、モノカルボジイミド化合物としては、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。
上記カルボジイミド化合物は、ポリ乳酸樹脂成形体の成形性、耐熱性、耐衝撃性及び有機核剤の耐ブルーム性を満たすために、単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。また、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)はカルボジライトLA−1(日清紡績(株)製)を、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド及びポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミドはスタバクゾールP及びスタバクゾールP−100(Rhein Chemie社製)を、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドはスタバクゾールI(Rhein Chemie社製)をそれぞれ購入して使用することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物における加水分解抑制剤の含有量は、ポリ乳酸樹脂成形体の成形性の観点から、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.05〜3重量部が好ましく、0.1〜2重量部が更に好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、上記以外に、更にヒンダードフェノール又はフォスファイト系の酸化防止剤、又は炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤等の他の成分を含有することができる。酸化防止剤、滑剤のそれぞれの含有量は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対し、0.05〜3重量部が好ましく、0.1〜2重量部が更に好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、上記以外の他の成分として、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、無機充填剤、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、難燃剤等を、本発明の目的達成を妨げない範囲で含有することができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物の結晶化度は、本発明の効果を発現する観点から、30%以上であることが好ましく、30〜99%がより好ましく、40〜95%が更に好ましく、50〜90%が特に好ましい。また、本発明のポリ乳酸樹脂組成物の80℃における半結晶化時間(t1/2)は、十分な結晶化速度を得る観点から、好ましくは0.01〜1分、更に好ましくは0.01〜0.7分であり、95℃における半結晶化時間(t1/2)は、好ましくは0.01〜0.5分、更に好ましくは0.01〜0.4分であり、110℃における半結晶化時間(t1/2)は、好ましくは0.01〜1分、更に好ましくは0.01〜0.6分である。
尚、結晶化度及び半結晶化時間は実施例記載の方法により求めることができる。
本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、加工性が良好で、例えば200℃以下の低温で加工することができるため、可塑剤の分解が起こり難い利点もあり、フィルムやシートに成形して、各種用途に用いることができる。
[ポリ乳酸樹脂成形体の製造法]
本発明のポリ乳酸樹脂成形体の製造法は、本発明のポリ乳酸樹脂組成物を、ポリ乳酸樹脂の融点(Tm)以上で混合する工程(1)と、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上Tm未満の温度で熱処理する工程(2)とを有する。
また、工程(1)を経た後、冷却して非晶状態(すなわち広角X線回折法で測定される結晶化度が1%以下となる条件)とした後、工程(2)を行う方法や、工程(1)を経た後、冷却して直ちに工程(2)を行う方法が好ましく、本発明の結晶化速度向上効果発現の観点から、工程(1)を経た後、冷却して直ちに工程(2)を行う方法がより好ましい。
本発明のポリ乳酸樹脂成形体の製造法における、工程(1)の具体例としては、例えば、押出し機等を用いてポリ乳酸樹脂を溶融させながら、可塑剤、ヒドロキシ脂肪酸エステルである有機核剤及び無機核剤を混合する方法等が挙げられる。工程(1)の温度は、可塑剤、有機核剤及び無機核剤の分散性の観点から、ポリ乳酸樹脂の融点(Tm)以上であり、好ましくはTm〜Tm+100℃の範囲であり、より好ましくはTm〜Tm+50℃の範囲である。例えば、ポリ乳酸樹脂がレイシアH−400(三井化学(株)製)の場合のようなL−乳酸純度95%以上のポリ乳酸樹脂を用いた場合は、170〜250℃が好ましく、170〜230℃がより好ましく、170〜210℃がさらに好ましい。
本発明の成形体の製造法における、工程(2)の具体例としては、例えば、押出し機等により押し出されたポリ乳酸樹脂組成物を熱処理する方法や射出成形機等によりポリ乳酸樹脂組成物を金型に充填し、ポリ乳酸樹脂組成物を熱処理する方法等が挙げられる。工程(2)の温度は、結晶化速度向上の観点から、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上Tm未満であり、好ましくはTg〜Tg+100℃の範囲であり、より好ましくはTg+10〜Tg+80℃の範囲であり、特に好ましくはTg+20〜Tg+70℃の範囲である。例えば、ポリ乳酸樹脂がレイシアH−400(三井化学(株)製)のようなL−乳酸純度95%以上のポリ乳酸樹脂であるポリ乳酸樹脂組成物の場合は、50〜140℃が好ましく、60〜120℃がより好ましく、70〜110℃が特に好ましい。
尚、ポリ乳酸樹脂の融点(Tm)は、JIS−K7121に基づく示差走査熱量測定(DSC)の昇温法による結晶融解吸熱ピーク温度より求められる値である。また、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、JIS−K7198に基づいた動的粘弾性測定における損失弾性率(E'')のピーク温度より求められる値である。
本発明のポリ乳酸樹脂成形体の熱変形温度は、ポリ乳酸樹脂、可塑剤、結晶核剤の種類や添加量などによって適宜選定され、特にポリ乳酸の場合、本発明の効果を発現する観点から、70℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。尚、ここで本発明のポリ乳酸樹脂成形体の熱変形温度は、実施例に記載された測定法により測定される値である。
本発明のポリ乳酸樹脂成形体の耐衝撃性は、ポリ乳酸樹脂、可塑剤、結晶核剤の種類や添加量などによって適宜選定され、特にポリ乳酸の場合、本発明の効果を発現する観点から、60(J/m)以上が好ましく、70(J/m)以上がより好ましく、80(J/m)以上が更に好ましい。尚、ここで本発明のポリ乳酸樹脂成形体の耐衝撃性は、実施例に記載された測定法により測定される値である。
例中の部は、特記しない限り重量部である。
実施例1〜5
ポリ乳酸樹脂(三井化学(株)製、LACEA H−400)(以下PLAという)と、可塑剤(コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル)と、有機核剤[12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド(花王(株)製、カオーワックス85P)]と、無機核剤[タルク(日本タルク(株)製 、Micro Ace P−6)]、更に必要により加水分解抑制剤[カルボジライトLA−1(日清紡績(株)製)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)]を、表1に示す割合で、5L加圧型ニーダー((株)森山製作所製 DS3−20MWB−E)を用い、180〜200℃にて、10分間溶融混合し、その後直ちに80℃の8インチロール(日本ロール製造(株)製)で約5mm厚さに引き延ばし、裁断した後、粉砕して、ポリ乳酸樹脂組成物のフレークを得た。
比較例1〜2
PLA、可塑剤、有機核剤、無機核剤、加水分解抑制剤を、表1に示す割合で用いる以外は実施例1〜5と同様にしてポリ乳酸樹脂組成物のフレークを得た。
実施例及び比較例で得られたフレークは、70℃減圧下で1日乾燥し、水分量を500ppm以下とした。そのフレークを射出成形機(日本製鋼所製J75E型射出成形機)を用いて、スクリュー温度200〜160℃で射出成形し、生分解性樹脂成形体を作製した。
それぞれの生分解性樹脂成形体に対し、下記の方法で半結晶化時間、曲げ弾性率、熱変形温度、アイゾット衝撃強度、結晶化度を測定した。また、下記方法で射出成形性を評価した。これらの結果を表1に示す。
<半結晶化時間>
500μmのシート状にしたポリ乳酸樹脂組成物の試験片から7〜8mg秤量し、アルミパンに封入後、DSC装置(パーキンエルマー社製ダイアモンドDSC)を用い、200℃で5分間溶融し、−500℃/分の速度で保持温度(80℃、95℃、110℃)まで降温し、結晶飽和となる半分の時間(半結晶化時間;t1/2)を求めた。t1/2は、サンプル温度が保持温度に達したときの時間を0分として算出した。
<曲げ弾性率>
JIS K7171に基づいて、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を作製し、テンシロン(オリエンテック製テンシロン万能試験機RTC−1210A)を用いて曲げ弾性率を測定した。
<熱変形温度>
JIS K7191に基づいて、長さ80mm×幅10mm×厚さ4mmの試験片を作製し、熱変形温度測定装置(東洋精機製ヒートディステーションテスター)を用いて荷重たわみ温度を、荷重0.45MPaで測定した。
<アイゾット衝撃強度>
JIS K7110に基づいて、2号A(幅5mm)試験片を作製し、衝撃試験機(上島製作所製U−F INPACT TESTER)を用いてアイゾット衝撃強度を測定した。
<結晶化度>
成形後の試験片について、広角X線回折測定装置(理学電機製RINT2500VPC,光源CuKα,管電圧40kV,管電流120mA)を使用し、2θ=5〜30°の範囲の非晶及び結晶のピーク面積を解析して結晶化度を求めた。
<射出成形性>
射出成形機(日本製鋼所製J75E型射出成形機)にて、保圧時間15秒、冷却時間30秒で、温度80℃の金型での射出成形を行い、成形体の金型からの離型性を以下の基準で評価した。
○:変形もなく容易に離型できる
△:離型するが、変形する
×:離型しない(成形できない)
尚、比較例1〜2においては、得られた生分解性樹脂成形体は、半溶融状態のままであり金型から離型しなかった。これは、生分解性樹脂成形体の結晶化が十分でないことを意味する。物性比較を行うために、試験片を得る必要があるので、これらについては温度30℃の金型での射出を行い、非晶状態での試験片を得た。
Figure 2007262306
*1:ポリ乳酸樹脂(三井化学(株)製、LACEA H−400)
*2:コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル
*3:12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド(花王(株)製、カオーワックス85P)
*4:タルク(日本タルク(株)製 、Micro Ace P-6)
*5:ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)(日清紡績(株)製、カルボジライトLA−1)
以上の結果から、本発明のポリ乳酸樹脂組成物は、広い温度領域で優れた結晶化速度を有し、結果として低い金型温度で優れた成形性を示し、また、優れた耐熱性、耐衝撃性及び柔軟性を有することが分かる。

Claims (5)

  1. ポリ乳酸樹脂と、可塑剤と、ヒドロキシ脂肪酸エステルである有機核剤と、無機核剤とを含むポリ乳酸樹脂組成物。
  2. 可塑剤が、分子中に2個以上のエステル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数が3〜9の化合物である請求項1記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  3. 有機核剤が、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライドである請求項1又は2記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  4. 無機核剤が、タルクである請求項1〜3いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4いずれかに記載のポリ乳酸樹脂組成物を、ポリ乳酸樹脂の融点(Tm)以上で混合する工程(1)と、ポリ乳酸樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)以上Tm未満の温度で熱処理する工程(2)とを有するポリ乳酸樹脂成形体の製造方法。
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