JP2007261609A - 浮き屋根式液体タンクの制振装置と方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】既存の液体タンクへの適用が可能であり、メンテナンスが容易であり、浮き屋根の下降制限がなく液体タンクの運用が制限されず、水平2方向に同時に加振される場合でも両方向の振動成分の抑制ができる浮き屋根式液体タンクの制振装置と方法を提供する。
【解決手段】上部が開口した中空円筒形のタンク本体2と、外周部に内部が中空のポンツーン3を有しタンク本体内に貯蔵された液体4の液面上に浮いて外気を遮断する浮き屋根5とを備えた浮き屋根式液体タンクの制振装置1。ポンツーン3上に周方向に分散して設置された複数の動吸振器10からなる制振デバイスを備え、水平2方向に同時に加振される場合に両方向の振動成分を抑制する。
【選択図】図1

Description

本発明は、中空のポンツーンを有しタンク本体内に貯蔵された液体の液面上に浮いて外気を遮断する浮き屋根を備えた浮き屋根式液体タンクの制振装置と方法に関する。
石油タンクには,液体を外気から遮断するために浮き屋根が用いられているものがあり、浮き屋根が貯蔵液の振動(スロッシング)と共に地震動の長周期成分に共振して大きく成長し、火災、溢流事故を引き起こすことがよく知られている。このため、スロッシングに関し、非特許文献1〜5の研究報告が既になされている。
非特許文献1は浮屋根を剛体とした定常応答解析、非特許文献2は浮屋根の弾性変形を考慮した自由振動解析、非特許文献3は地震応答解析、非特許文献4は地震シミュレータによる模型実験、非特許文献5はタンク側壁と浮屋根の間に滑車を介してワイヤロープを設置する制振法に関するものである。
また、最近では2003年の十勝沖地震で多発した事故が動機となって、非特許文献6の制振手段や、特許文献1のスロッシング抑制機構が提案されている。
非特許文献6の制振手段は、図7に示すように、タンク底部から立ち上げたヒンジ機構51を有する起倒式仕切りプレート52、仕切りプレートを拘束し仕切りプレートに作用する荷重を浮屋根53に伝達する連結用ロープ54、連結ロープの向きを変化させるプーリー機構55、及び仕切りプレートの引き起こし用ロープ56を備え、地震動によって仕切りプレート52に作用する流体力を、連結ロープ54を経由して浮屋根53に伝え、浮屋根に作用する回転モーメントを低減するものである。
特許文献1の「浮屋根式貯蔵タンクのスロッシング抑制機構」は、図8に示すように、タンク本体61内に貯蔵されている液体内に、ばね機構62を介した錘63を吊り下げた制振装置64を浮屋根65に設置するものである。
Nakagawa,K.,On the Vibration of an Elevated Water Tank−II,Tech.Rep.Osaka Univ.,5−170(1955),317−336. 近藤尚夫、浮屋根の上下自由振動解析、機論、44−380(1978)、1214−1223. 坂井藤一・西村正弘・小川浩、浮屋根式石油貯槽のスロッシング性状に関する研究、川崎重工技報、74(1980)、60−66. 清水作造・内藤潔・小山靖、3次元地震シミュレータによる浮屋根式燃料タンクのスロッシング挙動に関する研究、石川島播磨技報、24−6(1984)、379−384. 小林信之・松平精、ワイヤロープによる浮屋根式タンクのスロッシング防止法、石川島播磨技報、20−3(1980)、136−141. 土木学会関東支部、大型タンクのスロッシングに関する耐震・制振・免震等技術のミニシンポジウム講演概要集(2005−7).
特開2005−330011号公報、「浮屋根式貯蔵タンクのスロッシング抑制機構」
非特許文献6や特許文献1に開示された従来の制振装置には、以下の問題点があった。
(1)稼動中の既存の液体タンクへ適用できない。
(2)新設の場合でも、液中に設置された構成機器のメンテナンスが困難である。
(3)液中に構成機器があるため、浮き屋根の下降が制限され、液体タンクの運用が制限される。
(4)非特許文献6の装置の場合、水平2方向に同時に加振される場合に、両方向の振動成分の抑制は困難である。
本発明は上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、既存の液体タンクへの適用が可能であり、メンテナンスが容易であり、浮き屋根の下降制限がなく液体タンクの運用が制限されず、水平2方向に同時に加振される場合でも両方向の振動成分の抑制ができる浮き屋根式液体タンクの制振装置と方法を提供することにある。
本発明によれば、上部が開口した中空円筒形のタンク本体と、外周部に内部が中空のポンツーンを有し前記タンク本体内に貯蔵された液体の液面上に浮いて外気を遮断する浮き屋根とを備えた浮き屋根式液体タンクの制振装置であって、
前記ポンツーン上に周方向に分散して設置された複数の動吸振器からなる制振デバイスを備え、これにより水平2方向に同時に加振される場合に両方向の振動成分を抑制する、ことを特徴とする浮き屋根式液体タンクの制振装置が提供される。
本発明の好ましい実施例によれば、前記各動吸振器は、ポンツーンの上方に位置する質量maiの錘と、下端がポンツーン上に固定され鉛直に延び上端が錘に固定されているばね定数kaiのばねと減衰定数caiの減衰器とからなり、ここでi=1,2,…imax(8以上の整数)であり、ポンツーン上の外周位置に20〜45度ピッチで設置されている。
また、前記錘の総重量は、最大液深に相当する液体総重量の1〜2%に設定され、
前記各動吸振器の減衰比ζaiは、0.1〜0.3に設定され、
動吸振器の固有振動数ωa/2πは、タンク内液体の最大液深に対応する最低次の固有振動数又はこれより小さく設定されている。
また本発明によれば、上部が開口した中空円筒形のタンク本体と、外周部に内部が中空のポンツーンを有し前記タンク本体内に貯蔵された液体の液面上に浮いて外気を遮断する浮き屋根とを備えた浮き屋根式液体タンクの制振方法であって、
錘の総重量を最大液深に相当する液体総重量の1〜2%に設定し、
動吸振器の減衰比ζaiを、0.1〜0.3に設定し、
動吸振器の固有振動数ω/2πを、タンク内液体の最大液深に対応する最低次の固有振動数又はこれより小さく設定し、
前記動吸振器を、ポンツーンの上方に位置する質量maiの錘と、下端がポンツーン上に固定され鉛直に延び上端が錘に固定されているばね定数kaiのばねと減衰定数caiの減衰器とで構成し、
前記各動吸振器をポンツーン上の外周位置に20〜45度ピッチで設置して、所定の地震波に対し、水平2方向に同時に加振される場合に両方向の振動成分を抑制するように、シミュレーション解析により、質量mai,減衰定数cai,ばね定数kai、ポンツーン上の位置を決定し、
決定した複数の動吸振器を前記ポンツーン上に設置する、ことを特徴とする浮き屋根式液体タンクの制振方法が提供される。
上述した本発明の制振装置は、複数の動吸振器からなる制振デバイスを備えており、各動吸振器は質量をばねとダンパで支えた構造であるので、浮き屋根のピッチング運動に対し、速度フィードバック制振に対応するモーメントを及ぼして振動を低減するように動作して浮き屋根のピッチング運動を制振することができる。
また、本発明の制振デバイス(動吸振器)は、ポンツーン上に設置するので、既存の液体タンクへの適用が容易であり、メンテナンスが容易であり、浮き屋根の下降制限がなく液体タンクの運用が制限されない。
また、複数の動吸振器が周方向に分散して設置されるので、水平2方向に同時に加振される場合でも両方向の振動成分の抑制ができる。
さらに下記の効果が得られることが、実地震波を入力とした後述する過渡応答解析により検証された。
(1)動吸振器による減衰増強効果は液深の増加と共に増加するため、溢流事故の危険度の高い液が深い場合に、制振効果が大きい。
(2)液が深い範囲では固有振動数の液深に対する依存性が弱いため、動吸振器の固有振動数を一定としても液深変化に伴う制振効果の劣化は小さい。
(3)動吸振器の液体に対する慣性モーメント比を質量比より大きくできるため、液体の質量が膨大である負担を軽減できる。
以下本発明の好ましい実施例について、図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
1.浮き屋根上に動吸振器を設置することによる制振は、比較的メンテナンスが容易であり、液量の増減に伴う浮き屋根上下動の支障とならず、任意の加振方向に対して対処可能である、という利点がある。また、溢流防止の必要性の高い、液が深い場合には、浮き屋根に対する液の付加質量は液体全質量に比べて小さく有効性が期待できる。
この考えに基づき、動吸振器による振動低減の有効性を3波共振正弦波と実地震波形を入力とした応答解析により検証した結果と、解析方法の詳細について以下に説明する。
2.解析方法
2.1 解析モデル
図1(A)は、本発明が対象とする浮き屋根式液体タンクの解析モデル図である。この図において、浮き屋根式液体タンク1は、上部が開口した中空円筒形のタンク本体2と浮き屋根5を備える。浮き屋根5は、外周部に内部が中空のポンツーン3を有し、タンク本体2内に貯蔵された液体4の液面上に浮いて外気を遮断する。
図1(A)において、aはタンク本体2の半径、hは静的平衡時の液体4の深さ、bは浮き屋根5の半径である。浮き屋根5は、周囲に浮力を得るための中空部分3(ポンツーン、浮き室)を有する軸対称な弾性シェル構造とする。浮き屋根シェル構造の−z,φ,r方向の変位をそれぞれu,v,wとする。
浮き屋根5とタンク側壁の間の、液体4を外気から遮断するためのシール部6では、液面振動に対する拘束が弱いので自由表面の境界条件を採用し、この部分の液面波高ηが浮き屋根制振によってかえって成長することがないか調べることを解析目的のひとつとする。
図1(B)は、本発明の制振装置の構成図である。本発明の制振装置は、ポンツーン3上に設けられた制振デバイスであり、この制振デバイスは、周方向に分散して設置された複数の動吸振器10からなる。
各動吸振器10は、ポンツーン3の上方に位置する質量maiの錘12と、下端がポンツーン3上に固定され鉛直に延び上端が錘12に固定されているばね定数kaiのばね13と減衰定数caiの減衰器14とからなる。
質量mai,減衰定数cai,ばね定数kai(i=1,2,…imax)の動吸振器10がポンツーン3上の位置(r,φ)=(rai,φai)に設置されているとする。液体運動は非圧縮完全流体の渦なし流れとし、タンクの側壁と底は剛体とする。また、浮き屋根の変位、液面波高は小さいとして線形理論を適用する。
2.2 変分原理
式(1)のような変分原理を導入し、流体と構造体の連成振動系の基礎方程式系を導く。
まず、液体のラグランジュアンLfの項は、ラグランジュアン密度が液圧plに等しいことに基づき、式(2)のように表される。
液圧は、渦無し流れの場合の圧力方程式に基づき、式(3)のように表される。
式(3)を式(2)に代入し、変分計算を行うと式(4)のようになる。
式(4)で液体と浮き屋根との境界面、振動液面上での境界条件を線形化して、単位法線ベクトルをz方向の単位ベクトルで近似する。
Figure 2007261609
式(1)の浮き屋根のラグランジュアンの項は、浮き屋根シェル構造を円錐台FEM要素に分割した際の節点変位を用いて式(5)のように表される。
式(1)の動吸振器のラグランジュアンの項は、まず動吸振器の減衰を省略して式(6)のように変形される。
式(6)のδuaiの係数を零におくことによって得られる動吸振器の方程式を、減衰を導入することにより式(7)で表す。
ここで式(8)と修正し、式(7)を用いて式(6)中の動吸振器の絶対加速度を動吸振器の減衰力とばね力で表すことにより、式(6)を式(9)のように変形する。
Figure 2007261609
変分原理(1)は、式(4),(5),(9)を加え合わせ、式(3)の液圧を代入することにより、式(10)のようになる。
式(10)で変分は任意かつ独立であるから、これらの変分に関する係数が0となることが要求される。この要求条件が基礎方程式、境界条件を与える。すなわち、第1項は、液体領域内での連続条件に対応するラプラス方程式(11)、第2、3項は、剛と仮定されたタンクの側壁と底とでその法線方向の流速が0になる境界条件式(12)を満たす。
第4項は、液体と浮き屋根の境界面で双方の法線方向の振動速度が等しい条件;第5項は、液面振動速度が液体粒子速度の液面に垂直な方向の成分に等しい条件;第3〜5行目は、液圧と動吸振器からの力を受ける浮き屋根の運動方程式;最後から3行目は、液面で液圧が0になる条件;最後から2行目は、動吸振器の運動方程式;最後の行は、非圧縮性の仮定に基づく液体の体積一定条件を表す。なお、液体の体積一定条件は、他の運動学的境界条件より導けるので独立ではなく、これ以外の項を基礎式系を与える変分原理とみて以下の解析を進める。
Figure 2007261609
2.3 応答解析
変分原理(10)をガレルキン法により時間の常微分方程式に変換する。すなわち、未知量をモード関数で展開した形で表して式(10)に代入することにより、展開係数(一般化座標と呼ばれる未知の時間関数)に関する常微分方程式を導く。速度ポテンシャルを、境界条件(12)を満たすラプラス方程式(11)の解として式(13)のように表す。
浮き屋根の節点変位ベクトルは式(14)のようにモード展開表示される。
デッキ、ポンツーン上下面の任意位置での浮き屋根の変位は式(15)のように表せる。
浮き屋根とタンク側壁の間の液面幅はタンクの半径に比べて小さいので、液面波高は半径方向に一定として式(16)のように表す。
Figure 2007261609
式(13)〜式(16)を変分原理(10)に代入すると、一般化座標速度Anq,Epq,Cに関する常微分方程式が式(17)〜式(20)のように導かれる。
常微分方程式系の式(17)〜式(20)を数値計算することにより系の応答が決定できる。
Figure 2007261609
3. 数値計算例
数値計算のパラメータは以下の通り:
タンク半径a=27m;液体密度ρf=800kg/m;浮き屋根は鋼製で半径b=26.7m、デッキ部半径b1=23m、ポンツーン外周部の高さ0.89m、デッキ部の厚さ4.5mm、ポンツーンの厚さ7mm、デッキ部、ポンツーン下面、ポンツーン上面の傾斜tan−1(dz/dr)はそれぞれ1度、−1度、2度;補強材は高さ0.2m、幅0.2m、間隔3.82mである。
動吸振器の諸元は、mai=48000kg、ζai=0.2、rai=25.2 m、φai=(i−1)π/6(i=1,2,…,imax=12)である。
動吸振器の固有振動数は図題中に記す。動吸振器は、どの方向の加振、あるいは、x,y両方向成分を有する加振にも対処できるように30度ピッチで全周に配置している。
もし、φa1=0、φa2=π、imax=2とするとy方向の加振に対しては制振効果がなくなる。動吸振器設置状態でポンツーン外周面の液中に沈む部分は下端から0.35mまでで、ポンツーン外周面高さ0.89mの半分以下である。
浮き屋根のない場合のスロッシングモードに減衰比ζn=0.01を導入するため、式(17)の左辺に式(20a)の減衰項を付加した。
まず、系の最低次の固有振動数に共振する正弦波加振がx方向に3周期継続した、3波共振に対する応答解析結果を図2(A)(B)に示す。動吸振器の固有振動数ωa/2πは液深hに対応する最低次の固有振動数に同調させている。
図2(A)(B)において、横軸は時間、縦軸は浮き屋根の変位、図中の細い破線は、動吸振器なし、太い実線は動吸振器ありの場合である。
図2(A)(B)から動吸振器を設置することによる減衰増強効果が確認できる。
図2(A)(B)の応答波形が示す浮き屋根とスロッシングとの連成系の固有振動数は、浮き屋根がない場合の式(20b)のスロッシングの固有振動数に近い値となっている。この理由は以下のように説明される。
式(17)で液面が小さいため影響の無視できる左辺第3項を省略して(d/dt)Anqについて解き、この結果を式(18)に代入すると、支配的な浮き屋根の剛体運動モードp=1に関する振動方程式が式(21)のように導かれる。
式(17)〜式(19)における積分値は、式(A1)で表される。
ここで、式(A2)である。
式(21)より最低次の固有振動数の2乗は式(22)によって与えられる。式(22)中の積分値を与える式(A1)を、剛体運動のモード関数S(r)=rと、r=0,aでそれぞれ微分と値が0となる式(23)のベッセル関数の近似式を用いて計算すると、式(22)の分母は第2項が第1項に比べて支配的であることが分かり、式(24)が導かれる。
したがって、浮き屋根とスロッシングとの連成系の固有振動数は浮き屋根がない場合のスロッシングの固有振動数に近い値となる。
Figure 2007261609
図2において、(A)は液深が20mの場合、(B)は液深が10mの場合である。図2(A)(B)を比較して、溢流の危険度の高い液の深い場合(A)の方が、動吸振器の減衰増強効果が大きいことが分かる。この理由は、下記の手続きに従って、動吸振器の制振効果を表す減衰比を式(25)のように導くことによって説明できる。
まず、動吸振器の方程式(20)をラプラス変換領域で動吸振器の変位について解き、式(B1)を得る。
ここでは、支配的なp=1の剛体運動モードのみを考えている。次に、浮き屋根に作用する制振力を与える式(21)左辺第3項のラプラス変換に、式(B1)を代入すると式(B2)のようになる。
同調周波数近くのs→iωaiでは分母の第1,3項が相殺し、分子では第2項が支配的であるから、動吸振器から浮き屋根に作用する力は、粘性減衰付加と等価な浮き屋根の速度フィードバック制御より位相がわずかに進んだ制振力となる。このため、減衰増強による制振効果が得られる。1自由度系を考え、mck系の減衰比を与える公式(B3)に基づいて、式(B2)の速度フィードバックによる減衰比を評価し、動吸振器の質量、減衰比、固有振動数、r座標が動吸振器番号iによらないことと、式(B4)の直交性と式(B5)の剛体運動モードを考慮すると式(25)が導かれる。
同調時には式(25a)が成り立つため、式(25)の減衰比は式(A1)に与えられているαnq (1)を介してのみ液深に依存する。したがって、液深の大きい図2(a)の場合の方が、図2(b)の場合より式(25)の減衰比が大きく、減衰増強効果が強くなる。
式(25)の分子に現れる各動吸振器の式(25b)のy軸まわりの慣性モーメントの総和は、式(25c)であり、これより式(25d)と近似される。この値の液体の慣性モーメントは式(25e)であり、これに対する比は、動吸振器総質量の液体に対する式(25f)の質量比の2倍であり、動吸振器を浮き屋根の外周近くに設置することは制振対象との慣性比の面で効率的な制振法であることが示唆される。
Figure 2007261609
次に、加振加速度入力として2003年9月の十勝沖地震の記録波形(図3)を用いて応答解析を行い、動吸振器の減衰増強機能を確認した例を図4に示す。
図4において、(A)は浮き屋根外周部のz方向変位であり、細線は動吸振器がない場合である、(B1)は動吸振器がない場合の波面高さ、(B2)は動吸振器がある場合の波面高さ、(C)は動吸振器の浮き屋根に対する相対変位である。
図4から浮き屋根の制振によって浮き屋根とタンク側壁間の液面波高が大きくなる心配はなく、図4(B2)に示すように低減することが分かる。
図5は、動吸振器の固有振動数を液深に対応する浮き屋根―スロッシング系の固有振動数に完全に同調させず、一定とした場合の解析例である。この図において、(A)は液深が20mの場合、(B)は液深が10mの場合である。
溢流の危険度の高い液が深い範囲では、固有振動数の液深に対する依存性が弱いため、減衰増強効果が維持できることが分かる。ストロークは、図4(C)と同程度である。なお図5(B)の例では、入力地震波の卓越振動数の浮き屋根―スロッシング系の最低次固有振動数に対する比が図5(A)の場合と同じになるように、入力地震波の時間スケールを変えている。
図6は、貯蔵液体の密度を800kg/mから980kg/mに増した場合の例である。図4の場合と比較して減衰増強効果の劣化は小さく、制振効果が認められる。このように動吸振器の液体に対する質量比が非常に小さいにもかかわらず減衰増強効果が得られる一理由として、上の式(25)に関する説明で言及したように、本制振法では動吸振器の液体に対する慣性モーメント比が質量比の2倍に増幅される点が挙げられる。
上述したように本発明の制振装置は、複数の動吸振器からなる制振デバイスを備えており、各動吸振器は質量をばねとダンパで支えた構造であるので、浮き屋根のピッチング運動に対し、速度フィードバック制振に対応するモーメントを及ぼして振動を低減するように動作して浮き屋根のピッチング運動を制振することができる。
また、本発明の制振デバイス(動吸振器)は、ポンツーン上に設置するので、既存の液体タンクへの適用が容易であり、メンテナンスが容易であり、浮き屋根の下降制限がなく液体タンクの運用が制限されない。
また、複数の動吸振器が周方向に分散して設置されるので、水平2方向に同時に加振される場合でも両方向の振動成分の抑制ができる。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変更することができることは勿論である。
本発明の制振装置を備える浮き屋根式液体タンクの解析モデル図である。 系の最低次の固有振動数に共振する正弦波加振がx方向に3周期継続した、3波共振に対する応答解析結果である。 十勝沖地震の記録波形である。 動吸振器の減衰増強機能を確認した例である。 動吸振器の固有振動数を一定とした場合の解析例である。 貯蔵液体の密度を変化させた場合の例である 非特許文献6の制振手段の模式図である。 特許文献1の「浮屋根式貯蔵タンクのスロッシング抑制機構」の模式図である。
符号の説明
1 浮き屋根式液体タンク、2 タンク本体、3 ポンツーン、
4 液体、5 浮き屋根、6 シール部、
10 動吸振器、12 錘、13 ばね、14 減衰器

Claims (4)

  1. 上部が開口した中空円筒形のタンク本体と、外周部に内部が中空のポンツーンを有し前記タンク本体内に貯蔵された液体の液面上に浮いて外気を遮断する浮き屋根とを備えた浮き屋根式液体タンクの制振装置であって、
    前記ポンツーン上に周方向に分散して設置された複数の動吸振器からなる制振デバイスを備え、これにより水平2方向に同時に加振される場合に両方向の振動成分を抑制する、ことを特徴とする浮き屋根式液体タンクの制振装置。
  2. 前記各動吸振器は、ポンツーンの上方に位置する質量maiの錘と、下端がポンツーン上に固定され鉛直に延び上端が錘に固定されているばね定数kaiのばねと減衰定数caiの減衰器とからなり、ここでi=1,2,…imax(8以上の整数)であり、ポンツーン上の外周位置に20〜45度ピッチで設置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の浮き屋根式液体タンクの制振装置。
  3. 前記錘の総重量は、最大液深に相当する液体総重量の1〜2%に設定され、
    前記各動吸振器の減衰比ζaiは、0.1〜0.3に設定され、
    動吸振器の固有振動数ω/2πは、タンク内液体の最大液深に対応する最低次の固有振動数又はこれより小さく設定されている、ことを特徴とする請求項2に記載の浮き屋根式液体タンクの制振装置。
  4. 上部が開口した中空円筒形のタンク本体と、外周部に内部が中空のポンツーンを有し前記タンク本体内に貯蔵された液体の液面上に浮いて外気を遮断する浮き屋根とを備えた浮き屋根式液体タンクの制振方法であって、
    錘の総重量を最大液深に相当する液体総重量の1〜2%に設定し、
    動吸振器の減衰比ζaiを、0.1〜0.3に設定し、
    動吸振器の固有振動数ω/2πを、タンク内液体の最大液深に対応する最低次の固有振動数又はこれより小さく設定し、
    前記動吸振器を、ポンツーンの上方に位置する質量maiの錘と、下端がポンツーン上に固定され鉛直に延び上端が錘に固定されているばね定数kaiのばねと減衰定数caiの減衰器とで構成し、
    前記各動吸振器をポンツーン上の外周位置に20〜45度ピッチで設置して、所定の地震波に対し、水平2方向に同時に加振される場合に両方向の振動成分を抑制するように、シミュレーション解析により、質量mai,減衰定数cai,ばね定数kai、ポンツーン上の位置を決定し、
    決定した複数の動吸振器を前記ポンツーン上に設置する、ことを特徴とする浮き屋根式液体タンクの制振方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011143792A (ja) * 2010-01-13 2011-07-28 Ihi Corp タンク内スロッシングの減衰比予測方法
JP2016109214A (ja) * 2014-12-08 2016-06-20 三菱重工メカトロシステムズ株式会社 ガスホルダ及びガスホルダの改修方法

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