本発明は、ムチン型糖鎖合成系遺伝子が導入された酵母形質転換体、該形質転換体を用いたムチン型糖鎖結合タンパク質の製造方法に関する。
タンパク質に結合した糖鎖構造は、そのタンパク質の生物活性における機能に重要な役割を果たしていることがこれまでの数多くの研究から明らかになっている。また糖鎖は「細胞の顔」とも呼ばれ、細胞表面上で発現した糖鎖が細胞間相互作用やシグナル伝達、発生・分化、受精、ガン転移などに関与することが知られている。哺乳類の糖鎖修飾は主にAsn結合型、ムチン型、プロテオグリカン型などがよく知られており、それぞれに異なった生合成経路を経て固有の糖鎖構造を形成している。こうした糖鎖の合成経路についてはすでに多くの知見があり、詳しく解析されているものもある。
Asn型糖鎖については、まず小胞体(ER)で酵母から哺乳類までグルコース3残基、マンノース9残基とN-アセチルグルコサミン2残基からなる共通の中間体が作られ、オリゴサッカリルトランスフェラーゼによって糖タンパク質の特定の配列(Asn-X-SerまたはThr)に転移される。次にプロセシング(グルコース残基と特定のマンノース残基の切断)を受け、マンノース8残基とN-アセチルグルコサミン2残基からなるM8ハイマンノース型糖鎖(Man8GlcNAc2)が合成される。このハイマンノース型糖鎖を含有するタンパク質はゴルジ体に輸送されて、種々の修飾を受けるが、このゴルジ体での修飾は酵母と哺乳類で大きく異なっている(非特許文献1)。
一方、タンパク質のSerまたはThrに付加する糖鎖も、哺乳類から酵母まで種によって大きく異なる。酵母ではタンパク質:O-マンノース転移酵素(Pmtタンパク質)によりDol-P-Manを基質としてまずER内で1つ目のマンノースが転移される。例えばSaccharomyces cerevisiaeにおいては、Pmtタンパク質は少なくともPMT1〜6遺伝子によってコードされており、それぞれがホモ二量体やヘテロ二量体を形成して活性を有する(非特許文献2)。さらに小胞体からゴルジ体へと輸送されたタンパク質は、ゴルジ体内のマンノース転移酵素によって最大5分子のマンノースが直鎖状に結合した糖鎖構造を付加する。2つ目と3つ目のマンノースはα-1,2-結合で付加しており、この転移はKTR1, KTR3, KRE2などにコードされるα-1,2-マンノース転移酵素により起こる。また4つ目と5つ目のマンノースは主にMNN1遺伝子にコードされるα-1,3-マンノース転移酵素によって起こることが報告されている(非特許文献3)。
これに対して、哺乳類では臓器や細胞内オルガネラで異なる様々な糖鎖修飾が起こる。例えば核内ではO-GlcNAc型の糖鎖が見られるが、このO-GlcNAcは翻訳後修飾によるタンパク質の機能制御機構の一つであり、シグナル伝達の重要な調節因子でもある(非特許文献4)。脳や神経系などでは酵母と同様にマンノースが付加するが、その後ゴルジ体でGlcNAc、Gal、シアル酸などが付加したユニークな糖鎖構造となる(非特許文献5)。プロテオグリカンなどではセリン残基の側鎖にキシロースがはじめに付加し、その後ガラクトース2残基とグルクロン酸が付加した四糖からなるコア構造が形成される。その後種々の糖転移酵素が作用して、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、およびヘパリンなどが生成する(非特許文献6)。
しかし哺乳類で最もポピュラーに見られるのは、ムチンなどのSerやThrにN-アセチルガラクトサミンが付加し、その後様々な糖転移酵素によって複雑なバリエーションを形成するO-GalNAc型(ムチン型)糖鎖である。ムチンは、気管、胃腸などの消化管、生殖腺などの内腔を覆う粘液の主要な糖タンパク質である。ムチン型糖鎖の母核領域は、N-アセチルガラクトサミンと直接それに結合している糖からなる。N-アセチルガラクトサミンのC3の水酸基にβ1-3結合でガラクトースあるいはN-アセチルグルコサミンが結合すると、それぞれコア1とコア3構造となる。コア1とコア3構造にN-アセチルグルコサミンがβ1-6で結合すると、それぞれコア2とコア4になる。また、N-アセチルガラクトサミンにα1-3結合でN-アセチルガラクトサミンが結合するとコア5に、β1-6結合でN-アセチルグルコサミンが結合すると、コア6となる。これらの組み合わせで様々な母核構造がつくられる(図1)。これらのコア構造からラクトサミンの繰り返し配列で延びる基幹領域は二糖:Gal(β1-3)GlcNAc(タイプ1)とGal(β1-4)GlcNAc(タイプ2)からなる。タイプ1とタイプ2の糖鎖は、さらにガラクトースにβ1-6とβ1-3結合でN-アセチルグルコサミンが結合することにより枝分かれする。基幹領域の糖鎖は、末梢の糖、すなわち通常α結合したガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、フコース、あるいはシアル酸で終結する。
癌細胞膜の糖脂質やムチン、ならびに癌患者血清中のムチンに見出される糖鎖抗原は、血液型抗原に代表されるような末梢の糖鎖に抗原性を有するものと、Tn、Tおよびそれらにシアル酸が結合したシアリルTn、シアリルTのような母核構造に抗原性を有するものがある。構造的にも機能的にも詳細に検討されている癌関連糖鎖抗原は、シアリルルイスA抗原とその異性体であるシアリルルイスX抗原であり、これらは癌細胞の転移に関与しているとされているセレクチンファミリーのリガンドであることもよく知られている。
多くの臨床的研究が、これらの糖鎖抗原の存在と長期間の生存率との間に明確な相関関係があることを示している。そして、その結果は、ムチン型糖鎖上の特定の構造が癌マーカーとなりうることや、また癌細胞の転移能に関与することを強く示唆するものである。
癌細胞が血行性転移をする場合、血流中に侵入した癌細胞のほとんどは速やかに死滅し、血管外に脱出して再び二次臓器で増殖可能なのは0.01%以下と考えられている。癌細胞は血行性転移の際、血流中で血小板凝集を誘導し、凝集塊を形成することによりこれらの攻撃から逃れると考えられている。実際、多くの癌細胞により血小板凝集が誘導されることが知られており、転移能が高い癌細胞では血小板凝集能も高い傾向にある。また、癌細胞による血小板凝集は、血流中の癌細胞が二次臓器の微小血管にトラップされることを容易にすると考えられている。このように、癌細胞による血小板凝集が転移形成に重要であることは示唆されているものの、癌細胞により誘導される血小板凝集因子の同定はこれまでなされていなかった。近年、癌細胞表面に発現するAggrus/podoplaninというタンパク質が血小板凝集因子であることが報告された(非特許文献7)。さらにこのAggrusに付加したコア1構造のシアル酸が欠損することにより血小板凝集活性が消失することも報告された(非特許文献8)。
これらのことは、癌転移抑制の一つの方法として、特定のムチン型糖鎖構造を有する糖タンパク質を血中で競合的に作用させたり、また抗原として供給することで免疫能を強化する「免疫療法」への応用が可能なことを示唆する。さらに、癌細胞特有のムチン型糖鎖構造を含む糖タンパク質を抗原として得られる特異的な糖鎖抗体を用いて、癌細胞を標的とした抗体医薬を開発することも期待できる。こうした応用の実現には、均一の構造を有するムチン型糖タンパク質を大量に生産することが要求される。
ムチン型糖鎖自体の生産に関しては、有機化学的に大量合成が可能である。またGalNAc-SerやGalNAc-Thrを供与体とした化学的なペプチド合成法によりO-GalNAc含有ペプチドの生産も可能である。しかし、高分子のタンパク質を化学的に合成する方法は確立されておらず、仮にO-GalNAc含有ペプチドをつなぎあわせることができたとしても、それは非常に高価な生産法であり、またタンパク質本来の高次構造が再現される可能性も低い。さらに、動物細胞などを利用したムチン型糖タンパク質の生産は、生産量や生産物の不均一性、培養のコスト、ウイルスのコンタミネーション、安定な生産細胞の取得にかかる時間を考慮すると多くの問題がある。特に哺乳類細胞は元来様々な糖鎖構造を生産するために数多くの糖転移酵素を有しているため、均一なムチン型糖鎖構造を生産するためには、糖転移酵素活性の低下した変異株の取得やRNAiなどを利用した糖転移酵素活性の制御が必要となる。
発明者らは、これまで遺伝子導入や各種変異株により、Asn結合型のハイマンノース型糖鎖や酸性糖鎖、O-フコース含有糖鎖を酵母で合成させる方法について報告してきたが(特許文献1〜10)、ムチン型糖鎖を酵母で発現させる方法について報告したことはない。また発明者ら以外にも国内外の研究者が、遺伝子導入や各種変異株により、Asn結合型の混成型・複合型糖鎖を酵母で合成させる方法について報告してきている(特許文献11〜14)が、やはりムチン型糖鎖を酵母で発現させる方法について報告したことはない。
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本発明の課題は、上記の現状に鑑み、酵母においてムチン型糖鎖結合ペプチドやタンパク質を大量生産するための手段を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、本来酵母に存在しないムチン型糖鎖結合タンパク質の合成系遺伝子を酵母に新たに導入することにより、酵母において、ムチン型糖鎖結合タンパク質を効率よく生産することが可能になることを実証し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、O-GalNAcを有するムチン型糖鎖結合タンパク質を産生するための、形質転換された酵母の製造方法であって、酵母に対して、UDP-GalNAc合成酵素をコードする遺伝子、UDP-GalNAc輸送体をコードする遺伝子、またはpolypeptide:O-GalNAc転移酵素をコードする遺伝子のいずれかを導入する工程を含む方法を提供する。
前記方法は、酵母に対して、UDP-GalNAc合成酵素をコードする遺伝子を導入する工程と、UDP-GalNAc輸送体をコードする遺伝子を導入する行程の両方を含んでいてもよい。
あるいは、酵母に対して、UDP-GalNAc合成酵素をコードする遺伝子を導入する工程と、polypeptide:O-GalNAc転移酵素をコードする遺伝子を導入する行程の両方を含んでいてもよい。
あるいは、酵母に対して、UDP-GalNAc輸送体をコードする遺伝子を導入する行程と、polypeptide:O-GalNAc転移酵素をコードする遺伝子を導入する行程の両方を含んでいてもよい。
また前記方法は、酵母に対して、UDP-GalNAc合成酵素をコードする遺伝子を導入する工程と、UDP-GalNAc輸送体をコードする遺伝子を導入する行程と、polypeptide:O-GalNAc転移酵素をコードする遺伝子を導入する行程のすべてを含んでいてもよい。
さらに前記方法は、取得された酵母に対して、さらにムチン型糖鎖結合タンパク質をコードする遺伝子を導入する行程を含んでいてもよい。
本発明の方法において、前記polypeptide:O-GalNAc転移酵素は、酵母ゴルジ体に局在するタンパク質の膜貫通領域を有することが好ましく、前記ムチン型糖鎖結合タンパク質をコードする遺伝子は、酵母由来の分泌シグナル配列を有することが好ましい。
本発明はまた、コア1構造を有するムチン型糖鎖結合タンパク質を産生するための、形質転換された酵母の製造方法も提供する。この方法は、上記の方法で取得されたO-GalNAcを有するムチン型糖鎖結合タンパク質を産生するための酵母に対して、さらにcore1 β1-3 Gal転移酵素をコードする遺伝子を導入する行程を含む。
本発明はまた、コア2構造を有するムチン型糖鎖結合タンパク質を産生するための、形質転換された酵母の製造方法も提供する。この方法は、上記の方法で取得されたコア1構造を有するムチン型糖鎖結合タンパク質を産生するための酵母に対して、さらにcore2 β-1,6-GlcNAc転移酵素をコードする遺伝子を導入する行程を含む。
本発明はまた、コア3構造を有するムチン型糖鎖結合タンパク質を産生するための、形質転換された酵母の製造方法も提供する。この方法は、上記の方法で取得されたO-GalNAcを有するムチン型糖鎖結合タンパク質を産生するための酵母に対して、さらにcore3 β-1,3-GlcNAc転移酵素をコードする遺伝子を導入する行程を含む。
前記core1 β1-3 Gal転移酵素は、酵母ゴルジ体に局在するタンパク質の膜貫通領域を有することが好ましい。
また前記方法は、UDP-GalNAc合成酵素がUDP-Gal合成活性を有していない場合は、前記酵母に対してUDP-Gal合成酵素をコードする遺伝子を導入する行程を含んでいてもよく、UDP-GalNAc輸送体がUDP-Gal輸送活性を有していない場合は、前記酵母に対してUDP-Gal輸送体をコードする遺伝子を導入する行程を含んでいてもよい。
さらに前記方法は、取得された酵母に対して、さらにムチン型糖鎖結合タンパク質をコードする遺伝子を導入する行程を含んでいてもよい。
前記ムチン型糖鎖結合タンパク質をコードする遺伝子は、酵母由来の分泌シグナル配列を有することが好ましい。
本発明で用いられる酵母としては、メタノール資化性酵母、たとえばOgataea minutaを好適に用いることができる。また、Saccharomyces cerevisiaeも好適に用いることができる。
本発明はまた、上記したいずれかの方法により取得される、形質転換された酵母も提供する。
本発明は、前記酵母を培養し、その培養物からムチン型糖鎖結合タンパク質を採取する行程を含む、ムチン型糖鎖結合タンパク質の製造方法も提供する。この方法は、さらにO-mannosylation酵素の活性を阻害する化合物を作用させる行程を含んでいてもよい。
本発明はさらに、前記方法によって取得されるムチン型糖鎖結合タンパク質も提供する。
O-mannosylation酵素の活性を阻害する化合物を作用させる代わりに、形質転換された酵母を製造する過程において、当該酵母のO-mannosilation 活性を有する酵素を破壊する行程を含んでいてもよい。本発明は、そのような方法によって作製された酵母や、当該酵母を用いて製造されたムチン型糖鎖結合タンパク質とその製造方法も提供する。
本発明によれば、酵母を用いて、ムチン型糖鎖結合タンパク質を効率よく安価に大量生産することができる。本発明の技術は、ムチン型糖ペプチドを抗原とした癌の免疫療法や、癌細胞表面に存在するムチン型糖鎖結合タンパク質特異抗原に対する抗体作製とその抗体を利用した抗体医薬への応用など、種々の治療法開発や医薬品開発に大いに貢献しうる。
1.定義
本発明にかかる「ムチン型糖鎖」とは、タンパク質またはペプチドのSerまたはThrの水酸基にGalNAc(N-アセチルガラクトサミン)が付加したO-GalNAc構造を少なくとも有する糖鎖である(O-GalNAcのムチン型糖鎖は、一般的にTn抗原(Tn-antigen)と呼ばれることもある)。ムチン型糖鎖例としては、以下が挙げられる。N-アセチルガラクトサミンのC3の水酸基にβ1-3結合でガラクトースあるいはN-アセチルグルコサミンが結合した糖鎖構造は、それぞれコア1(Ser/Thr-O-α1GalNAc3-β1Gal)とコア3(Ser/Thr-O-α1GalNAc3-β1GlcNAc)と呼ばれる。このコア1とコア3に、さらにグルコサミンがβ1-6結合した構造を、それぞれコア2とコア4、N-アセチルガラクトサミンのC3の水酸基にN-アセチルガラクトサミンがα1-3結合した構造をコア5、N-アセチルガラクトサミンのC3の水酸基にN-アセチルグルコサミンがβ1-6結合した構造をコア6という。一方、コア構造からラクトサミンの繰り返し構造が延びた基幹領域は二糖構造:Gal(β1-3)GlcNAc(タイプ1)とGal(β1-4)GlcNAc(タイプ2)からなる。これらタイプ1とタイプ2の糖鎖は、さらにガラクトースにβ1-6とβ1-3結合でN-アセチルグルコサミンが結合することにより枝分かれし、通常α結合したガラクトース、N-アセチルガラクトサミン、フコース、あるいはシアル酸で終結する。
本発明にかかる「ムチン型糖鎖結合タンパク質」とは、前記したムチン型糖鎖を有するタンパク質またはペプチドである。ムチン型糖鎖結合タンパク質を、ムチン型糖タンパク質/ペプチド、ムチン型糖鎖付加タンパク質/ペプチドとも記載する。ムチン型糖鎖結合タンパク質の例としては、MUC1a[配列番号7]、MUC1[Genbank:P15941]、MUC3[Genbank:AF016694], MUC4[Genbank:AJ000281], MUC5B[Genbank:AF107890], MUC6[Genbank:AK096772], MUC7[Genbank:BC025688], MUC8[Genbank:AF335495], MUC9(Lapensee et al., Fertil. Steril. 68, 702-708 (1997)) , MUC11[Genbank:AF147791]およびこれらムチンの機能的断片、抗体およびその機能的断片、エリスロポエチンが挙げられる。ムチンの機能的断片とは、ムチン配列の一部分(部分断片)であって、ムチンを構成する繰り返し配列(タンデムリピート)の全長または抗原性を有する部分配列を意味する。抗体の機能的断片とは、抗体の一部分(部分断片)であって、抗体の抗原への作用を1つ以上保持するものを意味し、具体的にはF(ab')2、Fab'、Fab、Fv、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、及びこれらの重合体等が挙げられる(D.J.King., Applications and Engineering of Monoclonal Antibodies.,1998 T.J.International Ltd)。
本発明にかかる「ムチン型糖鎖結合タンパク質合成系遺伝子」とは、酵母細胞内でムチン型糖鎖結合タンパク質の合成に関与している遺伝子の総称である。例えば、ムチン型糖鎖を形成する上で必要となる糖供与体であるUDP-N-アセチルガラクトサミン(UDP-GalNAc)、UDP-ガラクトース(UDP-Gal)、UDP-N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)あるいはGDP-フコース(GDP-Fuc)を合成し、これを糖転移反応の場に輸送し、糖転移反応を行ってムチン型糖鎖結合タンパク質を合成し、細胞外に分泌させる過程で必要とされる遺伝子である(中田博、ムチンおよびムチン型糖鎖の多様性とその意義、「ポストゲノム時代の糖鎖生物学がわかる」(谷口直之編)、羊土社、pp. 37-44)。
ムチン型糖鎖結合タンパク質合成系遺伝子の例としては、UDP-GalNAc合成酵素、UDP-GalNAc輸送体、Polypeptide:O-GalNAc転移酵素、core1 β1-3 Gal転移酵素、core2 β-1,6-GlcNAc転移酵素およびcore3 β-1,3-GlcNAc転移酵素が挙げられる。
本発明にかかる「UDP-GalNAc合成酵素」とは、UDP-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)をUDP-アセチルガラクトサミン(UDP-GalNAc)に変換する活性(本明細書において、UDP-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)をUDP-アセチルガラクトサミン(UDP-GalNAc)に変換する活性を「UDP-GalNAc合成活性」ということがある)を有するタンパク質である。UDP-GalNAc合成酵素の例としては、ヒトGalE、ブタGalE、Bacillus subtilis GalE[Genbank:P55180]、Yersinia enterocolitica GalE、Escherichia coli GNE、Streptococcus gordonii GalE2およびPseudomonas aeruginosaが挙げられる(Schulz et al., J. Biol. Chem., 279, 32796-32803 (2004))。なお、UDP-GalNAc合成酵素の一部には、UDP-グルコース(UDP-Glc)をUDP-ガラクトース(UDP-Gal)に変換する活性(本明細書において、UDP-グルコース(UDP-Glc)をUDP-ガラクトース(UDP-Gal)に変換する活性を「UDP-Gal合成活性」ということがある)を有するものもある(本明細書において、UDP-Gal合成活性を有するタンパク質を「UDP-Gal合成酵素」ということがあり、これはUDP-GalNAc合成酵素に限定されない)。このようなタンパク質として、例えばヒトGalE、ブタGalE、Bacillus subtilis GalE[Genbank:P55180]、Yersinia enterocolitica GalE、Escherichia coli GNEおよびStreptococcus gordonii GalE2が挙げられる。
本発明にかかる「UDP-GalNAc輸送体」とは、UDP-GalNAcをゴルジ体内腔に輸送する能力(本明細書において、UDP-GalNAcをゴルジ体内腔に輸送する能力を「UDP-GalNAc輸送活性」ということがある)を有するタンパク質である。UDP-GalNAc輸送体の例としては、ヒトUDP-Gal輸送体(UGT2)[Genbank:D87969]、ヒトUDP-GlcA/UDP-GalNAc(UGTrel7)[FEBS Lett., 495, 87-93 (2001)]が挙げられる。なお、UDP-GalNAc輸送体の一部には、UDP-Galをゴルジ体内腔に輸送する能力(本明細書において、UDP-Galをゴルジ体内腔に輸送する能力を「UDP-Gal輸送活性」ということがある)を有するものもある(本明細書において、UDP-Gal輸送活性を有するタンパク質を「UDP-Gal輸送体」ということがあり、これはUDP-GalNAc輸送体に限定されない)。このようなタンパク質として、例えばヒトUDP-Gal輸送体(UGT2)遺伝子 [Genbank:D87969]、および酵母由来UDP-Gal輸送体 [Glycobiology, 9, 133-141 (1999)]が挙げられる。
本発明にかかる「Polypeptide:O-GalNAc転移酵素」とは、UDP-GalNAcを糖供与体とし、タンパク質またはペプチドのSerまたはThrにGalNAcを転移する活性を有するタンパク質である。Polypeptide:O-GalNAc転移酵素の例としては、ヒトppGalNAcT-1 [Genbank:X85018]、ヒトppGalNAcT-2、ヒトppGalNAcT-3、ヒトppGalNAcT-4〜13、マウスppGalNAcT-1(Ten Hagen et al., Glycobiology, 13, 1R-16R (2003))、およびDrosophila ppGalNAcT(Tian & Ten Hagen, Glycobiology, 16, 83-95 (2006))が挙げられる。
本発明にかかる「core1 β1-3 Gal転移酵素」とは、UDP-Galを糖供与体とし、GalNAcが付加したムチン型糖鎖結合タンパク質のGalNAc残基に β1-3 結合でGal を転移し、コア1構造のムチン型糖鎖(コア1構造のムチン型糖鎖は、一般的にT抗原(T-antigen)と呼ばれることもある)を形成させる活性を有するタンパク質である。core1 β1-3 Gal転移酵素の例としては、ヒトβ3-GalT-1 [Genbank:E07739, AF117222]、ヒトβ3-GalT-2 [Genbank:CAA75245, CAA75344]およびDrosophilaβ-1,3-GalT[[Genbank:CG9520]が挙げられる。core1 β1-3 Gal転移酵素は、core1合成酵素あるいはcore1GalTとも呼ばれる。
本発明にかかる「core2 β-1,6-GlcNAc転移酵素」とは、UDP-GlcNAcを糖供与体とし、コア1構造のムチン型糖鎖を有するムチン型糖鎖結合タンパク質のGalNAc残基にβ-1,6結合でGlcNAcを転移し、コア2構造のムチン型糖鎖を形成させるタンパク質である。core2 β-1,6-GlcNAc転移酵素の例としては、ヒトβ6-GnT-1[Genbank:M97347]、ヒトβ6-GnT-2 [Genbank:AF03865, AF102542]およびヒトβ6-GnT-3[Genbank:AF132035]が挙げられる。core2 β-1,6-GlcNAc転移酵素は、core2合成酵素あるいはcore2GnTとも呼ばれる。
本発明にかかる「core3 β-1,3-GlcNAc転移酵素」とは、UDP-GlcNAcを糖供与体とし、GalNAcが付加したムチン型糖鎖結合タンパク質のGalNAc残基にβ-1,3結合でGlcNAcを転移し、コア3構造のムチン型糖鎖を形成させるタンパク質である。core3 β-1,3-GlcNAc転移酵素の例としては、ヒトβ3-GnT-6[Genbank:AW182889]が挙げられる。core3 β-1,3-GlcNAc転移酵素は、core3合成酵素あるいはcore3GnTとも呼ばれる。
本発明にかかる「Protein-O-Mannosyltransferase(またはPMT)」とは、Dol-P-Manを糖供与体とし、ER内でタンパク質またはペプチドのSerまたはThrにマンノース(Man)を転移する活性(本明細書において、タンパク質またはペプチドのSerまたはThrにマンノース(Man)を転移する活性を「O-mannosylation活性」とうことがあり、O-mannosylation活性を有するタンパク質を「O-mannosylation酵素」ということがある)を有するタンパク質である。PMTの例としては、S.cerevisiaeのPMT1(遺伝子) [Genbank:L19169]、PMT2(遺伝子) [Genbank:L05146]、PMT3(遺伝子) [Genbank:X83797]、PMT4(遺伝子) [Genbank:X83798]、PMT5(遺伝子) [Genbank:X95644]およびPMT6(遺伝子) [Genbank:Z72984]が挙げられる、またはO.minutaのPMT1〜5が挙げられる。
本発明にかかる「メタノール資化性酵母」とは、メタノールを唯一の炭素源として生育可能な酵母群を指し、Pichia pastoris、Ogataea minuta、Pichia methanolica、Hansenula polymorpha(Pichia angusta)などが挙げられる。
2.ムチン型糖鎖結合タンパク質合成系遺伝子
図2は、本発明のムチン型糖鎖結合タンパク質合成系遺伝子を酵母に導入した場合の、酵母におけるムチン型糖鎖結合タンパク質合成過程を示す図である。図中のTn-antigenとはペプチド上のSer/Thrに付加したGalNAc構造を意味する。
(1)UDP-GalNAc合成酵素をコードする遺伝子
ムチン型糖鎖結合タンパク質を酵母で生産させるためには、まず、酵母細胞質内でUDP-N-アセチルガラクトサミン(UDP-GalNAc)を合成させる必要がある。このためにUDP-GalNAc合成酵素をコードする遺伝子を酵母に導入する。なお、一部のUDP-GalNAc合成酵素をコードする遺伝子はUDP-ガラクトース(UDP-Gal)合成活性も併せ持っている。
本発明の実施例においては、UDP-GalNAc合成酵素をコードする遺伝子としてBacillus subtilis GalEを導入したが、その塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号1および2にそれぞれ示す。
なお、酵母の生産するUDP-GlcおよびUDP-GlcNAcを、それぞれUDP-GalやUDP-GalNAc変換することなく、ガラクトース(Gal)やN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を細胞内にとり込ませた後、UDPとこれらの糖を縮合することによりUDP-GalやUDP-GalNAcを生産することもできる。したがって、UDP-GalNAc合成酵素をコードする遺伝子およびUDP-Gal合成酵素をコードする遺伝子の代わりに、前記の縮合活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を酵母に導入してもよい。UDPと糖を縮合する酵素としては、例えば、GAL7(UTP:galactose-1-phosphate uridylyltransferase)[Genbank:NC_001134]を挙げることができる。本発明の方法は、そのようなUDPと糖を縮合する酵素の使用を排除するものではない。
なおUDP-GlcNAcは、細胞壁キチン合成のため酵母内で合成されており、特にUDP-GlcNAc合成酵素の遺伝子を導入しなくとも良いが、本願実施例に示す通り、外部から導入することも可能である。また、出芽酵母でのUDP-GlcNAc合成に関与するGFA1[Genbank:Z28104]、GNA1[Genbank:AB017626]、PCM1 [Genbank:X75816]、QRI1[Genbank:X79380]などを導入することで発現量を向上できることが知られている。
(2)UDP-GalNAc輸送体をコードする遺伝子
次に、酵母細胞質内に蓄積したUDP-GalNAcを糖転移反応の場となる適切なオルガネラに輸送する必要がある。そのため、これらの糖ヌクレオチドを糖タンパク質合成の場となるゴルジ体内腔に輸送する能力を酵母に付与する遺伝子として、UDP-GalNAc輸送体(UDP-GalNAc transporter)をコードする遺伝子を酵母に導入する。なお、一部のUDP-GalNAc輸送体はUDP-ガラクトース(UDP-Gal)を輸送する能力も併せ持っている。
例えば、UGT2の遺伝子産物はUDP-GalのみならずUDP-GalNAcを輸送する能力を有していることがin vitro活性測定の結果から報告されている(Segawa et al., Eur. J. Biochem., 269, 128-138 (2002))。よってUGT2遺伝子は、これを導入することにより、酵母にUDP-GalNAcとUDP-Galの両方をゴルジ体内腔に輸送する能力を一度に付与することができるという点で好ましい。このUGT2の塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号3および4にそれぞれ示す。
さらに酵母内にはUDP-Galを輸送するトランスポーター活性が見いだされており(Roy et al., J. Biol. Chem., 273, 2583-2590 (1998))、これらを活用することも可能であるが、本願実施例に示す通り、外部から導入することも可能である。
なお、UDP-GlcNAcの輸送体についても同様に酵母内での発現が必要とされているが、これについては特許文献9や12に記載されている方法を利用することが可能である。すなわちヒトUGTrel2遺伝子 [Genbank:AB021981]やKluyveromyces lactis MNN2 [Genbank:AF106080] 遺伝子などを導入することで酵母内での発現が可能である。
(3)polypeptide:O-GalNAc転移酵素(またはppGalNAcT)をコードする遺伝子
さらに、UDP-GalNAcを糖供与体として利用するために、polypeptide:O-GalNAc転移酵素をコードする遺伝子を酵母に導入する。
polypeptide:O-GalNAc転移酵素をコードする遺伝子は、現在哺乳類において20種類弱知られているが、これまでのところ酵母ではこれらの糖転移酵素は確認されていない。polypeptide:O-GalNAc転移酵素を酵母ゴルジ体内腔で首尾よく機能させるために、例えば、酵母ゴルジ体に局在するタンパク質の膜貫通領域とpolypeptide:O-GalNAc転移酵素の少なくとも触媒領域を含む領域が融合したタンパク質をコードする塩基配列を含むよう遺伝子設計することが好ましい。本発明の実施例では、polypeptide:O-GalNAc転移酵素としてヒトppGalNAcT-1を、また酵母ゴルジ体に局在するタンパク質としてMnn9タンパク質を選択した。Mnn9タンパク質の膜貫通領域とppGalNAc T1の触媒領域を融合したタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号5および6に、Mnn9タンパク質の膜貫通領域とppGalNAc T2の触媒領域を融合したタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号76および77に、Mnn9タンパク質の膜貫通領域とppGalNAc T3の触媒領域を融合したタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号78および79それぞれ示す。
(4)ムチン型糖鎖結合タンパク質をコードする遺伝子
本発明の実施例では、ムチン型糖鎖結合タンパク質としてMUC1aペプチドをコードする遺伝子を導入している。
ムチン型糖鎖結合タンパク質をコードする遺伝子には、さらに酵母由来の分泌シグナル配列を付加することが望ましい。これにより、例えば、リボゾームにおいて合成されたムチン型糖鎖付加タンパク質が小胞体内腔、ゴルジ体内腔から分泌経路を経て培地中へ運ばれることとなり、結果的にムチン型糖鎖付加タンパク質を高効率で生産することが可能となる。
酵母由来の分泌シグナルとしては、従来公知、周知のものが使用でき、例えば、出芽酵母のαファクター前駆体[ポストシークエンスタンパク質実験法2、試料調製法]、大島泰郎他編、東京化学同人、pp.45-55]、インベルターゼ(SUC2) [GenBank Accession No. V01311] 、酸性フォスファターゼ(PHO5) [GenBank Accession No. Z35962]、α-1,2マンノース転移酵素(KRE2) [GenBank Accession No. X62647]およびKAR2[GenBank Accession No.M25064]遺伝子産物由来のシグナル配列が挙げられるが、これに限定されるものではない。αファクター前駆体を利用した場合、酵母αファクターのプレプロ配列の下流にムチン型糖鎖付加タンパク質が融合したタンパク質として発現されるが、この融合体におけるプレプロ配列は、酵母外に分泌される際に酵母細胞内でシグナルペプチダーゼやKex2タンパク質により除去されるため、目的のムチン型糖鎖結合タンパク質のみが得られる。MUC1aペプチドの塩基配列および対応するアミノ酸配列は、配列表の配列番号7の塩基番号253〜288および配列番号8のアミノ酸番号85〜96(αファクタープレプロ配列の下流で、かつヒスチジンタグの前)にそれぞれ示される。
(5)core1 β1-3 Gal転移酵素をコードする遺伝子
core1 β1-3 Gal転移酵素はこれまでのところ酵母では確認されていない。
糖鎖の転移反応は主にゴルジ体内腔で行なわれるが、酵母のゴルジ体で上記の糖転移酵素を発現させるためには、酵母ゴルジ体に局在するタンパク質の膜貫通領域を付加することがより好ましい。酵母ゴルジ体に局在するタンパク質としては、従来公知、周知のものが使用でき、例えば出芽酵母の糖転移酵素であるOch1タンパク質[GenBank Accession No.D11095]、Mnn9タンパク質[GenBank Accession No.L23752]およびKre2タンパク質[GenBank Accession No. X62647]が挙げられるが、これらに限定されるものではない。core1 β1-3 Gal転移酵素を酵母ゴルジ体内腔で首尾よく機能させるために、例えば、酵母ゴルジ体に局在するタンパク質の膜貫通領域とcore1 β1-3 Gal転移酵素の少なくとも触媒領域を含む領域が融合したタンパク質をコードする塩基配列を含むよう遺伝子設計する。本発明の実施例では、core1 β1-3 Gal転移酵素としてDrosophila β-1,3-Gal転移酵素を、また酵母ゴルジ体に局在するタンパク質としてMnn9タンパク質を選択した。Mnn9タンパク質の膜貫通領域とDrosophilaβ-1,3-Gal転移酵素の触媒領域を融合したタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号9および10にそれぞれ示す。
(6)core2 β-1,6-GlcNAc転移酵素をコードする遺伝子
core2 β-1,6-GlcNAc転移酵素はこれまでのところ酵母では確認されていない。
糖鎖の転移反応は主にゴルジ体内腔で行なわれるが、酵母のゴルジ体で上記の糖転移酵素を発現させるためには、酵母ゴルジ体に局在するタンパク質の膜貫通領域を付加することがより好ましい。酵母ゴルジ体に局在するタンパク質としては、従来公知、周知のものが使用でき、例えば出芽酵母の糖転移酵素であるOch1タンパク質[GenBank Accession No.D11095]、Mnn9タンパク質[GenBank Accession No.L23752]およびKre2タンパク質[GenBank Accession No. X62647]が挙げられるが、これらに限定されるものではない。core2 β-1,6-GlcNAc転移酵素を酵母ゴルジ体内腔で首尾よく機能させるために、例えば、酵母ゴルジ体に局在するタンパク質の膜貫通領域とcore2 β-1,6-GlcNAc転移酵素の少なくとも触媒領域を含む領域が融合したタンパク質をコードする塩基配列を含むよう遺伝子設計する。例えば、core2 β-1,6-GlcNAc転移酵素としてヒトβ6-GnT-2を、また酵母ゴルジ体に局在するタンパク質としてMnn9タンパク質を選択することができる。
本発明の実施例では、core2 β-1,6-GlcNAc転移酵素としてCore2GnT1(C2GnT1)を、また酵母ゴルジ体に局在するタンパク質としてMnn9タンパク質を選択した。Mnn9タンパク質の膜貫通領域とFLAG抗原とC2GnT1遺伝子の触媒領域を融合したタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号80および81にそれぞれ示す。
(7)core3 β-1,3-GlcNAc転移酵素をコードする遺伝子
core3 β-1,3-GlcNAc転移酵素は、これまでのところ酵母では確認されていない。
糖鎖の転移反応は主にゴルジ体内腔で行なわれるが、酵母のゴルジ体で上記の糖転移酵素を発現させるためには、酵母ゴルジ体に局在するタンパク質の膜貫通領域を付加することがより好ましい。酵母ゴルジ体に局在するタンパク質としては、従来公知、周知のものが使用でき、例えば出芽酵母の糖転移酵素であるOch1タンパク質[GenBank Accession No.D11095]、Mnn9タンパク質[GenBank Accession No.L23752]およびKre2タンパク質[GenBank Accession No. X62647]が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
core3 β-1,3-GlcNAc転移酵素を酵母ゴルジ体内腔で首尾よく機能させるために、例えば、酵母ゴルジ体に局在するタンパク質の膜貫通領域とcore3 β-1,3-GlcNAc転移酵素の少なくとも触媒領域を含む領域が融合したタンパク質をコードする塩基配列を含むよう遺伝子設計する。例えば、core3 β-1,3-GlcNAc転移酵素としてヒトβ3-GnT-6を、また酵母ゴルジ体に局在するタンパク質としてMnn9タンパク質を選択することができる。本発明の実施例では、core3 β-1,3-GlcNAc転移酵素としてヒトβ3-GnT-6(β3GnT6)を、また酵母ゴルジ体に局在するタンパク質としてMnn9タンパク質を選択した。Mnn9タンパク質の膜貫通領域とβ3GnT6遺伝子を融合したタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列およびアミノ酸配列を配列表の配列番号80および81にそれぞれ示す。
3.酵母
宿主として用いられる酵母は、従来公知、周知のものを使用できる。そのような酵母としては、例えば出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeやメタノール資化性酵母が挙げられる。特にメタノール資化性酵母は、1)メタノールにより誘導される強力なプロモーターを有するためムチン型糖鎖結合タンパク質を高生産できる、2)ムチン型糖鎖結合タンパク質が酵母細胞にとって有害なものであった場合、選択的に誘導生産を行うことができる、3)メタノール添加時に酵母特有のO型糖鎖形成を阻害できるような仕組みを用いた場合に、ムチン型糖鎖結合タンパク質への酵母特有のO型糖鎖の付加を抑制することができるという点で好ましい。メタノール資化性酵母としては、例えば、Pichia pastoris、Ogataea minutaのほか、Pichia methanolica、Hansenula polymorpha(Pichia angusta)が挙げられる。しかし、メタノール資化性酵母以外の酵母も使用可能であり、そのような酵母としては、Saccharomyces cerevisiaeの他、Shizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces lactis、Yarrowia lipolyticaが挙げられる。
異種タンパク質を遺伝子組み換え法によって生産する場合、目的産物が宿主由来のプロテアーゼによって分解され、目的とするタンパク質の生産量が減少したり、不均一なタンパク質が生成したり、タンパク質分解産物の混入により目的タンパク質の精製が困難になることがある。このような問題を回避するために、組換え体を培養する培地のpHを適宜調整してプロテアーゼ作用を阻害する等の、目的タンパク質を分解するプロテアーゼ活性を阻害するような培養方法が検討されている。しかしながらこの方法は宿主酵母の増殖に影響を与える。
これに対し、プロテアーゼ欠損株は、プロテアーゼ感受性の高い抗体などの異種タンパク質を、その分解を抑制して効率的に生産しうるという点で優れている。
例えば、Saccharomyces cerevisiae, Pichia pastoris, Candida boidiniiにおいてプロテイナーゼA、プロテイナーゼBを不活性化させたプロテアーゼ欠損株を用いることにより、菌体内および菌体外タンパク質生産を増加させたという例が示されている(特表平6−506117、Weis,H.m.ら, FEBS Lett., 377, 451(1995), Inoue,K.ら、Plant Cell Physiol.,38(3),366(1997)、特開2000−78978)。また、Saccharomyces cerevisiaeにおいてYapsin1を不活性化した株をプロテアーゼ欠損株として用いることにより、菌体内および菌体外タンパク質生産を増加させたという例が示されている(M. Egel-Mitaniら, Enzyme and Microbial Technology, 26, 671 (2000),Bourbonniais, Y. ら, Protein Expr. Purif., 20, 485 (2000))。
また宿主である酵母特有の糖鎖合成系の遺伝子等を適宜破壊した破壊株も、導入遺伝子の発現を向上させ、ムチン型糖鎖を効率よく合成させるという点で好ましい。そのような破壊株としては、例えばpmt破壊株(Gentzsch and Tanner, EMBO J., 15, 5752-5759 (1996))、kre2破壊株[GenBank Accession No. X62647]、ktr破壊株(Lussier et al., Biochim. Biophys. Acta, 1426, 323-334 (1999))を挙げることができる。
標的遺伝子の破壊は、例えば、Rothstein, Methods Enzymol., 101, 202-211 (1983)等に開示された方法に従って実施することができる。具体的には、上記の方法で得られた標的遺伝子を分断あるいは部分欠失させ、そこに適当な選択マーカー遺伝子を挿入して標的遺伝子の上流部と下流部の間に選択マーカーがサンドイッチされたDNA構造体を作製し、次にこの構造体を酵母細胞に導入すればよい。以上の操作により、導入断片(選択マーカーを挟み込んだDNA構造体)の両端と染色体上の標的遺伝子との相同部分の間で2回の組み換えを起こし、染色体上の標的遺伝子が導入断片で置換される。ここでの遺伝子破壊に用いる選択マーカーは下記に示すような栄養要求性マーカーや薬剤耐性マーカーが用いられる。この場合1つの遺伝子を破壊するために一般的には1つの選択マーカーを要することになるが、URA3遺伝子を利用した場合、ura3形質を効率的に再生することができるので、本目的にしばしば利用される。
具体的には、以下の通りである。構造遺伝子の前後に反復構造を持ったURA3遺伝子を有するプラスミドを構築し、この遺伝子カセットを制限酵素で切りだし、プラスミド上の標的遺伝子に挿入し、破壊された対立遺伝子を構築する。このプラスミドを用いて染色体の標的遺伝子と置換して遺伝子破壊株を得る。染色体に挿入されたURA3遺伝子は前後に反復構造を有するため、反復配列間での相同的組み換えによりURA3遺伝子が染色体から脱落する。この脱落株の選択は5−フルオロオロト酸(5-FOA)により行うことができる。Ura3変異株は5-FOAに耐性であり(Boeke et al., mol. Gen. Genet., 197, 345-346(1984);Boeke et al., Methods Enzymol., 154, 165-174 (1987))、Ura+表現型を持つ細胞株は5-FOA培地に生育できなくなる。よって、5-FOAを加えた培地で耐性形質を持つ株を分離すれば、再びURA3遺伝子マーカーを用いた操作が可能である。したがって、該手法により人為的に遺伝子破壊を行った「人為破壊株」では、元の酵母株の有する栄養要求性変異形質が遺伝子破壊操作により損なわれない。なお、人為的破壊によらず、遺伝子破壊を自然に起こした「自然変異株(突然変異株)」を用いることもでき、その場合は栄養要求性変異形質の数は増減しない。
以上のような破壊株のほか、酵母特有の糖鎖合成系の遺伝子等を抑制する適当な条件下で培養することにより、酵母特有のムチン型糖鎖の合成を抑制することもできる。そのような方法としては、例えばO-mannosylation酵素の活性を阻害する化合物の共存下での培養が挙げられる。O-mannosylation酵素の例としてはPMTが挙げられる。また、PMTの活性を阻害する化合物の例としてはローダミン-3-酢酸誘導体が挙げられる((Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,14,3975-3978(2004))。
Ogataea minuta等のメタノール資化性酵母は、メタノールを炭素源として生育することが可能であるが、メタノール代謝時に使われる代謝系遺伝子のプロモーターが強力であり、このプロモーターを利用することによりタンパク質の大量発現が可能となるという点で優れている。また比較的低温な培養条件下でも生育可能であるため、タンパク質を低温で発現させれば、プロテアーゼが働かずに分解が抑制されることが期待できる。
4.形質転換された酵母(酵母形質転換体)
前記したムチン型糖鎖結合タンパク質合成系遺伝子を、適当なベクターを用いて宿主である酵母に導入して、本発明の酵母形質転換体を作製する。
酵母にムチン型糖鎖結合タンパク質合成系遺伝子を導入し、発現させるためのベクターは、プラスミド等の公知のベクターに前記ムチン型糖鎖合成系遺伝子を連結(挿入)して得ることができる。用いるベクターは酵母で複製可能なものであれば特に限定されず、例えばプラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。
プラスミドDNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えば pBR322, pBR325, pUC18, pUC19, pTrcHis, pBlueBacHis 等)、枯草菌由来のプラスミド(例えば pUB110, pTP5 等)、酵母由来のプラスミド(例えば YEp13, YEp24, YCp50, pYE52 等)などが、ファージ DNAとしてはλファージ等が挙げられる。
前記ベクターへのムチン型糖鎖結合タンパク質合成系遺伝子の挿入は、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、ベクターDNAの適当な制限酵素部位またはマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法が採用される。導入する各遺伝子は、例えば、該遺伝子領域を含むゲノム遺伝子あるいはcDNAライブラリーを鋳型として、目的とする遺伝子断片が得られるようなセンス・アンチセンスプライマーを設計し、PCR等の遺伝子増幅反応を行うことによって調製することができる。増幅された遺伝子は、必要であればDNAリガーゼなどによって各断片をつなぎあわせて、目的とする遺伝子断片を作製してもよい。また、調製された遺伝子の両端に適宜制限酵素サイトを付加すれば、適切な制限酵素とDNAリガーゼを用いることにより目的のプラスミドを構築することが可能である。
宿主内で外来遺伝子を発現させるためには、構造遺伝子の前に、適当なプロモーターを配置させる必要がある。用いられるプロモーターは特に限定されず、宿主とする酵母内で機能することが知られている任意のものを用いることができる。例えば、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、AOXプロモーター等を挙げることができる。また、必要であればエンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、リボソーム結合配列(SD配列)、ターミネーター配列等をベクターに配置させてもよい。
酵母へのベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法(Becker, D.M. et al. : Methods. Enzymol., 194 : 180 (1990))、スフェロプラスト法(Hinnen, A. et al. : Proc Natl. Acad. Sci. USA, 75 : 1929 (1978))、酢酸リチウム法(Itoh, H. : J. Bacteriol., 153 : 163 (1983))等を挙げることができる。
なお、プラスミド等に一度導入されたDNAは大腸菌を用いることで容易に増幅、単離、精製が可能である。また、遺伝子のDNA配列の決定等も通常の方法、例えばジデオキシ法などにより行うことができる。さらには市販のシークエンスキットなどを用いることでも簡便に行い得る。
5.ムチン型糖鎖結合タンパク質の製造方法
本発明は、本発明の酵母形質転換体を用いたムチン型糖鎖結合タンパク質の製造方法も提供する。すなわち、本発明の酵母形質転換体を適当な培地で培養し、その培養物からムチン型糖鎖結合タンパク質を採取することができる。ここで、「培養物」とは、培養上清、あるいは培養細胞若しくは培養菌体または細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。本発明の形質転換体を培地に培養する方法は、酵母の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
培地としては、酵母が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類などを含有し、酵母形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプンなどの炭水化物、酢酸、プロピオン酸などの有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類が用いられる。窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウムなどの無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩またはその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカーなどが用いられる。
無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウムなどが用いられる。培養は、通常、振盪培養または通気攪拌培養などの好気的条件下、30〜37℃位で6時間〜3日間程度行う。培養期間中、pHは4.5〜6.0程度に保持する。pHの調整は、無機または有機酸、アルカリ溶液などを用いて行う。
培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリンなどの抗生物質を培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した酵母を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、GALプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した酵母を培養するときにはガラクトースなどを、CUP1プロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した酵母を培養するときには硫酸銅などを、メタノール誘導性プロモーター(AOX、MOX、DASなど)を用いた発現ベクターで形質転換した酵母を培養するときにはメタノールを培地に添加してもよい。
培養は、通常、20〜30℃位で1日〜20日間程度行う。培養後、ムチン型糖鎖結合タンパク質が菌体内に生産される場合には、菌体を破砕することにより該タンパク質を抽出する。また、本発明のタンパク質が菌体外に分泌される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離などにより菌体を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを単独でまたは適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中からムチン型糖鎖結合タンパク質を単離精製することができる。
6.酵母産生ムチン型糖鎖結合タンパク質の利用
本発明の酵母形質転換体に、各種有用糖タンパク質をコードする遺伝子を導入すれば、ヒトをはじめとする哺乳動物で産生されるムチン型糖鎖結合タンパク質を安価に効率よく大量生産することができる。得られたムチン型糖鎖結合タンパク質は、癌の免疫療法に用いられるヒト型抗原またはヒト型糖鎖を有する抗体医薬など、ヒト型糖鎖を有用タンパク質として利用される。
導入する遺伝子としては、ムチン型糖鎖を有する有用タンパク質、例えば、CD34やCD43や、各種抗原や抗体をコードする遺伝子等が挙げられる。特に、後述するように、抗原や抗体等の医療用タンパク質の場合、本発明の技術は極めて有用性が高い。なお、本発明にかかる抗原や抗体には、完全な抗原や抗体分子のほか、その機能的断片も含まれる。
上記のような異種タンパク質生産のための有用な発現系は、種々の方法により作製することができる。タンパク質発現ベクターは、転写の読み枠の方向に、少なくともプロモーター領域、タンパク質をコードするDNAおよび転写ターミネーター領域を有するものである。これらのDNAは、所望の糖タンパク質をコードするDNAがRNAに転写されるように配列される。用いられるベクターとしては、YRp系、YIp系、YCp系などの出芽酵母用ベクターにTDH3、GAL1やCUP1などのプロモーターを有したベクターや栄養要求性マーカー遺伝子とAOXプロモーターなどを含む大腸菌、メタノール酵母シャトルベクター等が例示される。
ベクターには、異種構造遺伝子に酵母細胞で機能する分泌シグナル配列をコードするDNAを付加してもよく、これにより分泌産生が可能となり、所望の糖タンパク質を容易に単離精製することができる。分泌シグナル配列としては、Saccharomyces cerevisiae由来α−接合因子(αMF)の分泌シグナル配列、Saccharomyces cerevisiae由来インベルターゼ(SUC2)の分泌シグナル配列、ヒト由来α−ガラクトシダーゼの分泌シグナル配列、ヒト由来抗体軽鎖の分泌シグナル配列、などが挙げられる。さらに、分泌効率を向上させるために分子シャペロンなどを導入してもよい。
発現ベクターは染色体組み込み型のベクターであり、染色体へ組み込むことによって目的の遺伝子が導入される。栄養要求マーカー型のベクターの場合は、該マーカー遺伝子部分を制限酵素により切断し一本鎖にし、形質転換を行い、一般的には染色体上の対立遺伝子の部分に導入される。また薬剤耐性マーカーの場合、対立遺伝子が存在しないため、発現プロモーターまたはターミネーター領域を制限酵素により切断し一本鎖にし、形質転換を行い、一般的には染色体上の該領域の部分に導入される。一旦導入された遺伝子は染色体上に存在するので、安定的に保持される。
〔実施例1〕S. cerevisiaeでのムチン型糖ペプチド生産酵母株の作製
Bacillus subtilis由来GalE遺伝子はBacillus subtilisゲノム上に存在しており、そのcDNA配列は公共のデータベースであるGenBankにAccession No.P55180として登録されている。まず、このGalE遺伝子のcDNA全長をBacillus subtilis168株のゲノムを鋳型とし、プライマーA [配列番号11]とプライマーB [配列番号12] を用いPCRで増幅した。
配列番号11:GGAATTCATGTTAATTAACGCAATACTTGTTACT
配列番号12:GCTCTAGATTATTCCGCACTCTTATA
得られたPCR産物をEcoRI部位とXbaI部位で切断し、大腸菌のクローニング用プラスミドpBluescript II(SK-)(Stratagene社)のEcoRI/XbaI部位に組み込み、プラスミドpBluescript II(SK-)-GalEを構築した。次にプライマーC [配列番号13]とプライマーD [配列番号14]を用いPCRで、PacI部位を付加したmyc抗原発現のためのDNA塩基配列を作製しPacI部位にて切断した後に、pBluescriptII (SK-)-GalEをPacI部位にて切断しGalEの5’領域にmyc抗原発現のためのDNA塩基配列を挿入することでpBluescriptII (SK-)-myc/GalEを作製した。
配列番号13:CCTTAATTAActctgaacaaaaactcatctcagaagaggatctgaatggatctgaacaaaaac
配列番号14:CCTTAATTAAcgatccattcagatcctcttctgagatgagtttttgttcagatccattcaga
このプラスミドからEcoRI部位とXbaI部位でmyc抗原を含むGalE遺伝子を切り出し、酵母の発現用プラスミドYEp352GAPII(Abe et al, Glycobiology, 13, 87-95 (2003))にEcoRI部位とXbaI部位で挿入しYEp352GAPII-myc/GalEを構築した。さらにこのプラスミドからBamHIで酵母GAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、大腸菌のクローニング用プラスミドpUC19のBamHI部位に挿入しpUC19-GAPDH/myc/GalEを構築した。この構築したプラスミドからHindIII部位とSacI部位にてGAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、インテグレーションベクターであるpRS306(Clontech社)のHindIII部位とSacI部位に挿入しpRS306-myc/GalEを作製した。このプラスミドpRS306-myc/GalEをEcoRVにて切断後、S. cerevisiae W303-1A株(Kainuma et al., Glycobiology, 9, 133-141 (1999))を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Ura(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ウラシルをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-1株とした。
UGT2遺伝子はヒト第10番染色体に位置しており、そのcDNA塩基配列は公共のデータベースであるGenBankにAccession No. D87969として登録されている。まず、このUGT2遺伝子全長をプライマーE [配列番号15]とF [配列番号16]を用いてPCRで増幅した。
配列番号15:GGAATTCATGGCAGCGGTTGGGGC
配列番号16:GCTCTAGACTAGTTAATTAAGGAACCCTTCACCTT
鋳型となる遺伝子は東京都臨床医学総合研究所の石田信宏博士より御供与頂いた。このPCR産物をEcoRI部位とXbaI部位にて切断し、大腸菌のクローニング用プラスミドpBluescript II(SK-)のEcoRI/XbaI部位に組み込み、プラスミドpBluescript II(SK-)-UGT2を構築した。次にプライマーG [配列番号17]とプライマーH [配列番号18]を用いPCRで、PacI部位を付加したHA抗原発現のためのDNA塩基配列を作製しPacI部位にて切断した後に、pBluescriptII (SK-)-UGT2をPac I部位にて切断しUGT2の3’領域にHA抗原発現のためのDNA塩基配列を挿入することでpBluescriptII (SK-)-HA/UGT2を作製した。
配列番号17:CCTTAATTAActacccatacgatgttcc
配列番号18:CCTTAATTAATCgtcgacaccaagccgaat
このプラスミドからEcoRI部位とXbaI部位でHA抗原を含むUGT2遺伝子を切り出し、酵母の発現用プラスミドYEp352GAPIIにEcoRI部位とXbaI部位で挿入しYEp352GAPII-HA/UGT2を構築した。さらにこのプラスミドからBamHIで酵母GAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、大腸菌のクローニング用プラスミドpUC19のBamHI部位に挿入しpUC19-GAPDH/HA/UGT2を構築した。この構築したプラスミドからHindIII部位とSacI部位にてGAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、インテグレーションベクターであるpRS305のHindIII部位とSacI部位に挿入しpRS305-HA/UGT2を作製した。このプラスミドpRS305-HA/UGT2をEcoRVにて切断後、KAY-1株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Leu(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ロイシンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-2株とした。
ppGalNAc-T1遺伝子は、ヒト第18番染色体に位置しており、そのcDNA塩基配列は公共のデータベースであるGenBankにAccession No. X85018として登録されている。まず、このppGalNAc-T1遺伝子の触媒ドメインをプライマーI [配列番号19]とJ [配列番号20]を用いてPCRで増幅した。
配列岩頭19:CGAGCTCATGTCACTTTCTCTTGTATC
配列番号20:GCGTGTCGACTCAGAATATTTCTGGCAGG
鋳型にはNEDO「糖鎖遺伝子ライブラリーの構築」プロジェクト(平成15年度産業科学技術研究開発事業 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託 糖鎖合成関連遺伝子ライブラリーの構築(健康増進・維持のためのバイオテクノロジー基盤研究プログラム)成果報告書、独立行政法人産業技術総合研究所・バイオテクノロジー開発技術研究組合(2004))ですでにクローン化されているppGalNAc-T1遺伝子の組み込まれたプラスミドを使用した(Shimma and Jigami, Glycoconj. J., 21, 75-78 (2004))。このPCR産物をSpeI部位とBamHI部位にて切断し、すでにS. cerevisiaeのゴルジ体のマンノース転移酵素のサブユニットであるMNN9の膜貫通ドメインの遺伝子配列が挿入してある大腸菌のクローニング用プラスミドpUC19(タカラバイオ社)のSpeI/BamHI部位に組み込み、プラスミドpUC19-MNN9/ppGalNAc-T1を構築した。次にプライマーK [配列番号21]とプライマーL [配列番号22]を用いPCRでSpeI部位を付加したFLAG抗原発現のためのDNA塩基配列を作製し、SpeI部位にて切断した後にpUC19-MNN9/ppGalNAc-T1をSpeI部位にて切断し、ppGalNAc-T1の触媒ドメインの5’領域にFLAG抗原発現のためのDNA塩基配列を挿入することでpUC19-MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1を作製した。
配列番号21:GACTAGTGACTACAAAGACCATG
配列番号22:GACTAGTCTTGTCATCGTCATC
このプラスミドからBamHI部位でFLAG抗原を含むppGalNAc-T1遺伝子をSalI部位とSacI部位で切断し、酵母の発現用プラスミドYEp352GAPIIにSalI/SacI部位で挿入しYEp352GAPII- MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1を構築した。さらにこのプラスミドからBamHIで酵母GAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、両端の平滑化を行った後インテグレーションベクターであるpRS304のSmaI/Hinc II部位に挿入しpRS304-MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1を作製した。このプラスミドpRS304-MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1をEcoR Vにて切断後、KAY-2株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Trp(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、トリプトファンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-3株とした。
〔実施例2〕ムチン型糖ペプチド生産S. cerevisiae株へのMUC1aペプチド遺伝子の導入および生産
MUC1遺伝子はヒト第1染色体に位置しており、MUC1a遺伝子はこのMUC1遺伝子内部繰り返し配列由来の塩基配列[配列番号7の塩基番号253〜288]である。このMUC1a遺伝子をプライマーM[配列番号23]とプライマーN[配列番号24]でPCRにて合成した。
配列番号23:CGGGATCCGGTCTAGATAAAAGAGCTCATGGTGTTACTTCTGCTCCAGACACTAG
配列番号24:ACTTCTGCTCCAGACACTAGACATCACCATCACCATCACTAATCTAGAGGATCCCG
この際、MUC1a遺伝子の3’領域に精製のためのHis6タグが融合するようにアミノ酸配列 [配列番号8]を設計した。このPCR産物をXbaIで切断し、外分泌用シグナル配列であるα-ファクター配列を含む酵母発現用プラスミドYEp352GAPII-α-factor(Abe et al, Glycobiology, 13, 87-95 (2003))のXbaI部位に組み込みYEp352GAPII-alfaMUC1aHisを作製した。このプラスミドからBamHI部位でGAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、インテグレーションベクターであるpRS303にBamHI部位で挿入しpRS303-alfaMUC1aHisを構築した。このプラスミドpRS303-alfaMUC1aHisをNheIにて切断後、KAY-3株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-His(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ヒスチジンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-4株とした。
次に、コントロールあるいは後述の実施例で使用する株として、KAY-5株〜KAY-9株を以下の手順で作製した。
KAY-5株は、前記したpRS303-alfaMUC1aHisをNheIにて切断後、KAY-2株を形質転換したものを作製した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-His(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ヒスチジンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-5株とした。
KAY-6株は、前記したpRS304-MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1をEcoRVにて切断後、KAY-1株を形質転換して作製した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Trp(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、トリプトファンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-6株とした。
KAY-7株は、前記したpRS303-alfaMUC1aHisをNheIにて切断後、KAY-6株を形質転換して作製した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-His(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ヒスチジンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-7株とした。
KAY-8株は、前記したpRS304-MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1をEcoRVにて切断後、W303-1A株を形質転換して作製した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Trp(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、トリプトファンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-8株とした。
KAY-9株は、前記したpRS303-alfaMUC1aHisをNheIにて切断後、KAY-8株を形質転換して作製した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-His(2%グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ヒスチジンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-9株とした。
〔実施例3〕ムチン型糖ペプチド生産S. cerevisiae株でのUDP-GalおよびUDP-GalNAc生成の確認
S. cerevisiae KAY-1株とS. cerevisiae W303-1A株でのUDP-GalおよびUDP-GalNAcの生成を確認するために、逆相HPLCでUDP-sugarの分析を行った。カラムはコスモシルC18(4.6 x 250mm:ナカライテスク社)を使用し、溶媒は2mM テトラブチルアンモニウムホスフェイトを含む100 mM リン酸水素2カリウム緩衝液(pH 6.2)を用いた。予め溶媒を流速0.6 ml/min.で流すことでカラムを平衡化し、試料を注入し分析を行った。検出はUV検出器(検出波長262nm)にて行った。その結果を、図3に示す。コントロールであるW303-1A株では見られなかったピークが、KAY-1株では27.5分付近にUDP-GalNAcに対応するピークが見られた。また、KAY-1株では14分付近にUDP-Galに対応するピークが見られ、コントロールであるW303-1A株ではこれに対応するピークは見られなかった。このことは導入したBacillus subtilis由来GalE遺伝子が酵母細胞内で正常に機能し、UDP-GlcNAcからUDP-GalNAcへ、またUDP-GlcがUDP-Galに変換されたことを示唆している。この結果から、酵母細胞内でUDP-GalNAcおよびUDP-Galが生成されていることを確認した。
〔実施例4〕ムチン型糖ペプチド生産S. cerevisiae株での各遺伝子の発現の確認
S. cerevisiae KAY-4株とS. cerevisiae W303-1A株を5 mlのYPAD培地(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、2%グルコース、アデニン(40 mg/L))にて30℃で24時間培養後、遠心分離により菌体を回収した。この菌体をグラスビーズにて破砕し破砕液に界面活性剤を加え不溶性タンパク質を可溶化した後、遠心分離によって上清を得た。得られた上清を粗酵素液としてSDSサンプルバッファーにて変性後、常法にてウエスタンブロット解析を行った。ウエスタンブロット解析は、一次抗体にマウス抗HA抗体16B12、マウス抗FLAG抗体M2、マウス抗myc抗体4A6を用い、二次抗体には抗マウスIg抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体を用い検出はECL plusシステム(アマシャム)を用いて、化学発行検出器(富士フィルム)にて行った。結果を図4に示す。
図4によれば、コントロール株であるW303-1A株ではシグナルは全く見られないのに対し、形質転換株では抗HA抗体ではUGT2遺伝子産物、抗FLAG抗体ではppGalNAc-T1遺伝子産物、抗myc抗体ではGalE遺伝子産物に相当する分子量の位置にそれぞれシグナルが確認された。
〔実施例5〕ムチン型糖ペプチド生産S. cerevisiae株におけるMUC1aペプチド遺伝子の発現と解析
S. cerevisiae KAY-4株を100 mlのYPAD培地(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、2%グルコース、アデニン(40 mg/L))にて30 ℃で48 時間培養後、遠心分離により培養上清を得た。コントロールとしてKAY-5株をS. cerevisiae KAY-4株と同様に培養し培養上清を得た。培養上清のpHを7.0に調整した後、TALON metal affinity resins(クローンテック社)を添加し、0.5 M NaClを含むリン酸緩衝液(pH 7.4)にて洗浄した後、溶出は0.5 M NaClと0.5 M イミダゾールを含むリン酸緩衝液(pH 7.4)にて行った。得られた溶出液を精製MUC1a標品とした。
得られたMUC1a標品についてGalNAcの結合量を定量するために逆相カラムを用いたHPLC解析による純度検定を行った。カラムはコスモシル5C18-ARII(4.6 x 250mm:ナカライテスク社)を使用し、溶媒は0.05%トリフルオロ酢酸(A液)と0.05%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル(B液)を用いた。予め溶媒Aを0.05%で流速0.1 ml/min.で流すことでカラムを平衡化し、試料注入後10分は溶媒Aを0.05%で流速0.1 ml/min.で流し、その後溶媒Bの割合を20分かけて20%まで直線的に増加させMUC1aを溶出した。検出はUV検出器(検出波長210 nm)にて行った。その結果を図5に示す。クロマトグラム上の各ピークを検証するためにそれぞれのピークを分取した。
HPLCから分取した各ピークをそれぞれ凍結乾燥品とした後、MALDI TOF-MSによる分子量測定を行った。その結果を図6に示す。HPLCにおける溶出時間約25.5 min.のピークは約1934、約24.5 min.は約2137の位置にそれぞれ分子量を示すピークが検出された。約25.5 min.のピークの分子量は設計したMUC1aの理論値と一致した。また、それに対して約24.5 min.のピークの分子量はMUC1aにN-アセチルヘキソサミン分の分子量の増加が見られる分子量と一致した。以上からMUC1aにN-アセチルヘキソサミン分子が一つ結合していることが明らかになった。
MUC1aに付加されたものがGalNAcであるか否かを検討するためにレクチンアレイ(Kuno et al., Nat. Methods, 2, 851-856 (2005))での解析を行った。HPLCで精製したMUC1aペプチド1μgに100μgのCy3-SEと0.05%でTween-20を含むPBSを加え室温で一時間反応し、MUC1aをCy3で標識した。Cy3で標識したMUC1aを10μg/mlの濃度でレクチンアレイでの解析を行った。その結果を図7に示す。レクチンアレイでの解析の結果、GalNAc特異的レクチンであるBPL(オーキッドツリー由来レクチン)、Jacalin(バラミツ由来レクチン)、WFA(フジ由来レクチン)、MPA(オセージオレンジ由来レクチン)、HPA(エスカルゴ由来レクチン)、VVA(へアリーベッチ由来レクチン)でシグナルが観察された。この結果からペプチドにGalNAcが付加されていることが明らかになった。一方、コントロールとして作製したKAY-5由来のペプチドではこれらのレクチンでシグナルが観察されなかった。
〔実施例6〕遺伝子破壊可能なムチン型糖ペプチド生産S. cerevisiae株の作製
hisG-URA3-hisGのカセットを利用してムチン型糖ペプチド生産株にて遺伝子の破壊を行うため、遺伝子破壊のための株を作製した。
pRS305-HA/UGT2をEcoRVにて切断後、KAY-8株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Leu(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ロイシンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30℃にて2日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-10株とした。
次に、YEp352GAPII-myc/GalEからBamHIで酵母GAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、インテグレーションベクターであるpRS303にBamHI部位で挿入しpRS303-myc/GalEを構築した。このプラスミドpRS303-myc/GalEをNheIにて切断後、KAY-10株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-His(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ヒスチジンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-11株とした。
〔実施例7〕遺伝子破壊可能なムチン型糖ペプチド生産S. cerevisiae株へのMUC1aペプチド遺伝子の導入
〔実施例2〕で作製されたYEp352GAPII-alfaMUC1aHisからHindIII部位とSacI部位にてGAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、インテグレーションベクターであるpRS306(Clontech社)のHindIII部位とSacI部位に挿入しpRS306-alfaMUC1aHisを得た。pRS306-alfaMUC1aHisをEcoRVにて切断後、KAY-11株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Ura(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ウラシルをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-12株とした。
〔実施例8〕遺伝子破壊可能なムチン型糖ペプチド生産S. cerevisiae株におけるMUC1aペプチド遺伝子の発現と解析
S. cerevisiae KAY-11株を100 mlのYPAD培地(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、2%グルコース、アデニン(40 mg/L))にて30 ℃で48 時間培養後、遠心分離により培養上清を得た。コントロールとしてKAY-5株をS. cerevisiaeKAY-12株と同様に培養し培養上清を得た。培養上清のpHを7.0に調整した後、TALON metal affinity resins(クローンテック社)を添加し、0.5 M NaClを含むリン酸緩衝液(pH 7.4)にて洗浄した後、溶出は0.5 M NaClと0.5 M イミダゾールを含むリン酸緩衝液(pH 7.4)にて行った。得られた溶出液を精製MUC1a標品とした。
得られたMUC1a標品についてGalNAcの結合量を定量するために逆相カラムを用いたHPLC解析による純度検定を行った。カラムはコスモシル5C18-ARII(4.6 x 250mm:ナカライテスク社)を使用し、溶媒は0.05%トリフルオロ酢酸(A液)と0.05%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル(B液)を用いた。予め溶媒Aを0.05%で流速0.1 ml/min.で流すことでカラムを平衡化し、試料注入後10分は溶媒Aを0.05%で流速0.1 ml/min.で流し、その後溶媒Bの割合を20分かけて20%まで直線的に増加させMUC1aを溶出した。検出はUV検出器(検出波長210 nm)にて行った。図5の結果と同様、N-アセチルヘキソサミンが付加したMUC1aの位置にピークが溶出されたことから、栄養要求性マーカーを交換してムチン型糖鎖結合タンパク質合成系遺伝子を導入してもムチン型糖鎖結合タンパク質が生産されることが確認された。
〔実施例9〕ムチン型糖ペプチド生産S. cerevisiae株でのPMT遺伝子の破壊
出芽酵母S. cerevisiae株のO-マンノース転移酵素(PMT)遺伝子は1〜6までが知られている(PMT7は機能未知)。そこでKAY-11株を親株とし、PMT1〜6の遺伝子破壊を行なう。
すでに報告のあるpNK51(Alani et al., Genetics,116, 541-545 (1987))より、URA3遺伝子の両端にサルモネラ菌hisG遺伝子がダイレクトリピートで結合しているカセット(HUH)をBglIIとBamHIで切断し、大腸菌プラスミドpSP73(プロメガ社)のBamHI部位に挿入する。このプラスミドをpSP73-HUHと命名する。
S. cerevisiae株のPMT1〜6遺伝子の cDNA配列は、公共のデータベースであるGenBankにそれぞれAccession No. L19169、L05146、X83797、X83798、X95644、Z72984として登録されている。常法によりS. cerevisiae W303-1A株から抽出したゲノムDNAをテンプレートとし、それぞれの遺伝子の5’側と3’側を下記のプライマー(配列番号25〜48)で増幅する。
配列番号25:pmt1 5’側増幅プライマー 1-5S: GCTTCAGCTGCTCGAGATCTTTGCTTCAATTACGC
配列番号26:pmt1 5’側増幅プライマー 1-5A: GGAGACCGGCCTCGACCGTGCTTGTAGCTGTTAGC
配列番号27:pmt1 3’側増幅プライマー 1-3S: GAGTCGACCTGCAGGAATTTCCCAGTACTCTCCAC
配列番号28:pmt1 3’側増幅プライマー 1-3A:AGCAGCTGAAGCTTGATGTACTACGCTTCTGTTCC
配列番号29:pmt2 5’側増幅プライマー 2-5S: GCTTCAGCTGTCGAACTGTACATACCGAAACGCC
配列番号30:pmt2 5’側増幅プライマー 2-5A:GGAGACCGGCCTCGAACATGATTGCTGGACCACGG
配列番号31:pmt2 3’側増幅プライマー 2-3S: GAGTCGACCTGCAGGGCCGACAAGCAAGAAGCATG
配列番号32:pmt2 3’側増幅プライマー 2-3A:AGCAGCTGAAGCTTGGGTGGGCTAAAGGGTTCAAG
配列番号33:pmt3 5’側増幅プライマー 3-5S: GCTTCAGCTGCTCGAAGCTAAAAGGAACCTGTCCC
配列番号34:pmt3 5’側増幅プライマー 3-5A:GGAGACCGGCCTCGACGCCACTCTGTACGGCATTG
配列番号35:pmt3 3’側増幅プライマー 3-3S: GAGTCGACCTGCAGGACTTGGCATGGCTACCTACG
配列番号36:pmt3 3’側増幅プライマー 3-3A:AGCAGCTGAAGCTTGTCTGATCAATAAGCAAACCC
配列番号37:pmt4 5’側増幅プライマー 4-5S:GCTTCAGCTGCTCGAGCGATACACATCCTCTAACC
配列番号38:pmt4 5’側増幅プライマー 4-5A:GGAGACCGGCCTCGAAGACATCTGTACTTCTGTGG
配列番号39:pmt4 3’側増幅プライマー 4-3S:GAGTCGACCTGCAGGCGGAAGTTGTTTCTAGAGAG
配列番号40:pmt4 3’側増幅プライマー 4-3A:AGCAGCTGAAGCTTGACATGGCTACATCACTCCAG
配列番号41:pmt5 5’側増幅プライマー 5-5S:GCTTCAGCTGCTCGAGACTATATTGTCCATCTGCG
配列番号42:pmt5 5’側増幅プライマー 5-5A:GGAGACCGGCCTCGAGATCCACCTTCAGCAAATGC
配列番号43:pmt5 3’側増幅プライマー 5-3S:GAGTCGACCTGCAGGAATCATGATCCATCCACCCG
配列番号44:pmt5 3’側増幅プライマー 5-3A:AGCAGCTGAAGCTTGTCCTTTTACCGGTTCAATCC
配列番号45:pmt6 5’側増幅プライマー 6-5S:GCTTCAGCTGCTCGATGGGCGCAAGTATATTCTGG
配列番号46:pmt6 5’側増幅プライマー 6-5A:GGAGACCGGCCTCGAGAAAATCCCGTTCCCTTGGC
配列番号47:pmt6 3’側増幅プライマー 6-3S:GAGTCGACCTGCAGGTCTACTTGGGATATCGCACC
配列番号48:pmt6 3’側増幅プライマー 6-3A:AGCAGCTGAAGCTTGAATAACGCAGCTAAACGAGG
次に、pSP73-HUHをSphIで切断後、各遺伝子の3’側増幅断片をBD In-fusion Dry-Down PCR Cloning Kit(タカラバイオ社)を利用しSphI部位に挿入する。大腸菌を形質転換後、プラスミドを抽出、挿入された塩基配列を確認し、目的の方向に正しく連結されているプラスミドを得る。次に得られたプラスミドをXhoIで切断後、各遺伝子の5’側増幅断片を同様にXhoI部位に挿入する。大腸菌を形質転換後、プラスミドを抽出、挿入された塩基配列を確認し、目的の方向に正しく連結されているプラスミド(pSP73-HUH-Dpmt1〜pSP73-HUH-Dpmt6)を得る。得られたpSP73-HUH-Dpmt1〜pSP73-HUH-Dpmt6PvuIIで切断後、それぞれを用いてKAY-11株を形質転換する。形質転換後、SD-Ura(2%グルコース、0.67 % Yeast NitrogenBase w/o amino acids (Difco社製)、ウラシルを除く核酸塩基、およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地のプレートにまいて、30℃で2日間培養し、形質転換体を得る。
得られる形質転換体を、5-FOAを含有したYSD 培地(1%酵母抽出液、2%グルコース、アデニン (40 mg/L)、ウラシル(20mg/L)) にて選抜を行ない、URA3遺伝子脱落株を得る。PCR法を用いてURA3遺伝子を脱落させた破壊株を確認する。得られたDpmt1::hisG、Dpmt2::hisG、Dpmt3::hisG、Dpmt4::hisG、Dpmt5::hisG、Dpmt6::hisGを含む株を、それぞれKAY-13株、KAY-14株、KAY-15株、KAY-16株、KAY-17株、KAY-18株とする。
〔実施例10〕PMT遺伝子破壊ムチン型糖ペプチド生産S. cerevisiae株でのMUC1aペプチド遺伝子の導入および発現
〔実施例9〕で得られたKAY-13株からKAY-18株に対し、〔実施例7〕と同様にしてMUC1aペプチド遺伝子の導入を行なう。KAY-13株からKAY-18株から得られた形質転換体をそれぞれKAY-19株からKAY-24株とする。
各KAY-19からKAY-24株をYPAD培地(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、2%グルコース、アデニン(40 mg/L))にて30 ℃で48 時間培養後、遠心分離により培養上清を得る。培養上清のpHを7.0に調整した後、TALON metal affinity resins(クローンテック社)を添加し、0.5 M NaClを含むリン酸緩衝液 (pH 7.4)にて洗浄した後、溶出は0.5 M NaClと0.5 M イミダゾールを含むリン酸緩衝液(pH 7.4)にて行う。得られた溶出液を精製MUC1a標品とする。
精製標品は逆相カラムを用いたHPLC解析による純度検定を行う。カラムはコスモシル5C18-ARII(4.6 x 250mm:ナカライテスク社)を使用し、溶媒は0.05%トリフルオロ酢酸(A液)と0.05%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル(B液)を用いる。予め溶媒Aを0.05%で流速0.1 ml/min.で流すことでカラムを平衡化し、試料注入後10分は溶媒Aを0.05%で流速0.1 ml/min.で流し、その後溶媒Bの割合を20分かけて20%まで直線的に増加させMUC1aを溶出する。検出はUV検出器(検出波長210 nm)にて行う。
なお、酵母のPMTがホモ/ヘテロ二量体で活性を有することが報告されている(Girrbach and Strahl, J. Biol. Chem., 278, 12554-12562 (2003))。従って、上記と同様の手法により、適宜PMT2重破壊株、3重破壊株などを作製することによっても、マンノースの付加を抑制することができると考えられた。
〔実施例11〕O-mannosylation活性を阻害する化合物(ローダミン-3-酢酸誘導体)共存下でのムチン型糖ペプチド生産S. cerevisiae株におけるMUC1aペプチド遺伝子の発現と解析
KAY-4株を、ローダミン-3-酢酸誘導体1c(Orchard et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 14, 3975-3978 (2004))を終濃度10μMになるよう加えたYPAD培地(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、2%グルコース、アデニン(40 mg/L))にて30 ℃で48 時間培養後、遠心分離により培養上清を得た。培養上清のpHを7.0に調整した後、TALON metal affinity resins(クローンテック社)を添加し、0.5 M NaClを含むリン酸緩衝液 (pH 7.4)にて洗浄した後、溶出は0.5 M NaClと0.5 M イミダゾールを含むリン酸緩衝液(pH 7.4)にて行った。得られた溶出液を精製MUC1a標品とした。
精製標品は逆相カラムを用いたHPLC解析による純度検定を行った。カラムはコスモシル5C18-ARII(4.6 x 250mm:ナカライテスク社)を使用し、溶媒は0.05%トリフルオロ酢酸(A液)と0.05%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル(B液)を用いた。予め溶媒Aを0.05%で流速0.1 ml/min.で流すことでカラムを平衡化し、試料注入後10分は溶媒Aを0.05%で流速0.1 ml/min.で流し、その後溶媒Bの割合を20分かけて20%まで直線的に増加させMUC1aを溶出した。検出はUV検出器(検出波長210 nm)にて行った。その結果を図8に示す。MUC1aペプチドにGalNAcだけでなくマンノースが付加されたペプチドは溶出時間23.5分に溶出することが分かっている。この溶出時間23.5分のピークは阻害剤を加えていない時には全体の6.7%存在しているが、阻害剤を加えて培養することでその割合は1.7%まで低下する。このことからローダミン3酢酸誘導体Icを加えて培養をおこなうことで酵母特有のO-マンノシル化がMUC1aの発現において抑えられることが分かった。
〔実地例12〕ムチン型糖鎖付加株でのFGFタンパク質の発現
線維芽細胞成長因子(FGF)のカルボキシル末端にATPAPという5つのアミノ酸からなるpentapeptide glycosylation unit(以下ムチンボックスと記載)が付加されているタンパク質をコードしている遺伝子をもつプラスミド(Yoneda et al., Glycoconj. J., 18, 291-299 (2001))を鋳型として、プライマーY[配列番号49]とプライマーAA[配列番号50]を用いPCRでムチンボックスを1つ含むFGFの遺伝子(Cm1)とムチンボックスを10含むFGF遺伝子(Cm10)を増幅した。また、プライマーYとプライマーZ[配列番号51]を用い、コントロールとしてい用いるためにFGF遺伝子のみも増幅した。
配列番号49:GCTCTAGATAAAAGAgctaattacaagaagcccaaac
配列番号50:GCTCTAGAtggatcggaattcttta
配列番号51:GCTCTAGAttcttaatcagaagagactgg
これらPCR産物をXbaIで切断し、pRS303-GAPDH/alfaのXbaI部位にα-ファクターの下流にFGF断片を組み込み、プラスミドpRS303/GAPDH-alfa-FGF、pRS303/GAPDH-alfa-Cm1、pRS303/GAPDH-alfa-Cm10を作製した。このプラスミドをNheIにて切断後、KAY-3株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-His(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ヒスチジンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、FGF遺伝子を導入した株をKAY-25株、Cm1遺伝子を導入した株をKAY-26株、Cm10遺伝子を導入した株をKAY-27株とした。
次に、コントロールとして用いる株を以下の手順で作製した。プラスミドpRS303/GAPDH-alfa-FGF、pRS303/GAPDH-alfa-Cm1、pRS303/GAPDH-alfa-Cm10を作製した。このプラスミドをNheIにて切断後、KAY-2株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-His(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ヒスチジンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、FGF遺伝子を導入した株をKAY-30株、Cm1遺伝子を導入した株をKAY-28株、Cm10遺伝子を導入した株をKAY-29株とした。
FGFの発現と精製は高松らの方法(Takamatsu et al., Glycoconj. J., 20 385-397 (2004))に従った。糖鎖の検出はFGFをSDS-PAGE後、PVDF膜に転写し、レクチンブロッティング法により行なった。なおレクチンはJacalin(バラミツ由来レクチン)を市販のキット(sulfo-NHS-Biotinylation Kit, EZ-link;Pierce社)を用いてビオチン化し、二次反応としてはストレプトアビジンーパーオキシダーゼ複合体を反応させた。検出はMillipore社Immobilon Western peroxidase chemilumnescence Kitを用いた。
その結果を図9に示す。抗FGFマウス抗体で蛋白質量を確認し、等量のサンプルをレクチンブロットにて解析したところ、KAY-27株由来のCm10はJacalinで検出することができたが、KAY-29株由来のCm10はJacalinで検出することができなかった。これは、KAY-27株由来のCm10にはGalNAcの付加が細胞内で行なわれているのに対し、KAY-29株由来のCm10には細胞内でのGalNAcの付加が起こっていないことによると考えられる。この結果より、KAY-27株で蛋白質(Cm10)を発現することにより、細胞内での蛋白質へのGalNAcの付加が行なわれたことを確認した。
〔実施例13〕コア1構造を有するムチン型糖鎖を有するペプチド生産S. cerevisiae株の作製
Drosophila melanogaster core1 β1-3 GalT(DmGalT)遺伝子はDrosophila melanogastermRNAからクローニングされ、そのcDNA配列は公共のデータベースであるGenBankにAccession No. CG9520として登録されている。まず、すでにクローニングされているcore1 β1-3 GalT遺伝子の触媒ドメインをプライマーW [配列番号52] とプライマーX [配列番号53]を用いPCRで増幅した。
配列番号52:CCCACTAGTTCCACGCCGGAGCGAAGTG
配列番号53:CGGGGTACCTTATTGCGTCTTTGTCTCGG
このPCR産物をKpnIとSpeIで切断し、すでにS. cerevisiaeのゴルジ体のマンノース転移酵素のサブユニットであるMNN9の膜貫通ドメインの遺伝子配列が挿入してある大腸菌のクローニング用プラスミドpUC19(前掲)のSpeI/KpnI部位に組み込み、プラスミドpUC19-MNN9/DmGalTを構築した。次にプライマーK [配列番号21]とプライマーL [配列番号22]を用いPCRで、SpeI部位を付加したFLAG抗原発現のためのDNA塩基配列を作製しSpeI部位にて切断した後に、pUC19-MNN9/DmGalTをSpeI部位にて切断しDmGalTの触媒ドメインの5’領域にFLAG抗原発現のためのDNA塩基配列を挿入することでpUC19-MNN9/FLAG/DmGalTを作製した。このプラスミドからBamHI部位とKpnI部位でFLAG抗原を含むppGalNAc-T1遺伝子を切断し末端の平滑化を行ったのち、同様に末端を平滑化した酵母の発現用プラスミドYEp352GAPIIにEcoRI/SalI部位で挿入しYEp352GAPII-MNN9/FLAG/DmGalTを構築した。さらにこのプラスミドからBamHIで酵母GAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し両端の平滑化を行った後、同様に末端を平滑化したpRS304-MNN9/FLAG/ppGlaNAc-T1のApaI部位に挿入した。このプラスミドpRS304-MNN9/FLAG/ppGlaNAc-T1, MNN9/FLAG/DmGalTをEcoRVにて切断後、KAY-2株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Trp(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、トリプトファンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-31株とした。
〔実施例14〕コア1構造を有するムチン型糖鎖を有するペプチド生産S. cerevisiae株でのDmGalT遺伝子発現の確認
S. cerevisiae KAY-31株とS. cerevisiae W303-1A株を5 mlのYPAD培地(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、2%グルコース、アデニン(40 mg/L))にて30℃で24時間培養後、遠心分離により菌体を回収した。この菌体をグラスビーズにて破砕し、破砕液に界面活性剤を加え不溶性タンパク質を可溶化した後、遠心分離によって上清を得た。得られた上清を粗酵素液としてSDSサンプルバッファーにて変性後、常法にてウエスタンブロット解析を行った。ウエスタンブロット解析は、一次抗体にマウス抗FLAG抗体M2を用い、二次抗体には抗マウスIg抗体ホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体を用い検出はECL plusシステム(アマシャム)を用いて、化学発行検出器(富士フィルム)にて行った。結果を図10に示す。
図10に示されるよう、コントロール株であるW303-1A株ではシグナルは全く見られないのに対し、形質転換株では抗FLAG抗体ではDmGalT遺伝子産物に相当する分子量の位置にそれぞれシグナルが確認された。
〔実施例15〕コア1構造を有するムチン型糖鎖を有するペプチド生産S. cerevisiae株へのMUC1a遺伝子の導入
作製したpRS304-alfaMUC1aHisをNheIにて切断後、KAY-30株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-His(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ヒスチジンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-31株とした。
〔実施例16〕コア1構造を有するムチン型糖鎖を有するペプチド生産S. cerevisiae株におけるMUC1a遺伝子の発現と解析
S. cerevisiae KAY-32株を100 mlのYPAD培地(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、2%グルコース、アデニン(40 mg/L))にて30 ℃で72 時間培養後、遠心分離により培養上清を得た。コントロールとしてKAY-5株をS. cerevisiae KAY-4株と同様に培養し培養上清を得た。培養上清のpHを7.0に調整した後、TALON metal affinity resins(クローンテック社)を添加し、0.5 M NaClを含むリン酸緩衝液 (pH 7.4)にて洗浄した後、溶出は0.5 M NaClと0.5 M イミダゾールを含むリン酸緩衝液(pH 7.4)にて行った。得られた溶出液を精製MUC1a標品とした。
得られたMUC1a標品についてGalNAcおよびGalの結合量を定量するために逆相カラムを用いたHPLC解析による純度検定を行った。カラムはコスモシル5C18-ARII(4.6 x 250mm:ナカライテスク社)を使用し、溶媒は0.05%トリフルオロ酢酸(A液)と0.05%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル(B液)を用いた。予め溶媒Aを0.05%で流速0.1 ml/min.で流すことでカラムを平衡化し、試料注入後10分は溶媒Aを0.05%で流速0.1 ml/min.で流し、その後溶媒Bの割合を20分かけて20%まで直線的に増加させMUC1aを溶出した。検出はUV検出器(検出波長210 nm)にて行った。その結果を図11に示す。クロマトグラム上の各ピークを検証するためにそれぞれのピークを分取した。
HPLCから分取した各ピークをそれぞれ凍結乾燥品とした後、MALDI TOF-MSによる分子量測定を行った。その結果を図12に示す。HPLCにおける溶出時間約25.5 min.のピークは約1934、約24.5 min.は約2137、約24.0 min.は2298の位置にそれぞれ分子量を示すピークが検出された。約25.5 min.のピークの分子量は設計したMUC1aの理論値と一致する。また、それに対して約24.5 min.のピークの分子量はMUC1aにGalNAc分の分子量の増加が見られる分子量と一致する。また、約24.0 min.のピークはMUC1aにGalNAcとGalがついた分の分子量の増加に一致する。このことから、MUC1aにGal-GalNAcという糖鎖が付加されたことが確認された。
HPLC上での溶出時間約24 min.のピークを分取し、精製標品とした。この精製標品について、βーガラクトシダーゼで処理することによりその糖鎖構造の解析を行った(図13)。その結果、Xhantomonas由来β-1,3ガラクトシダーゼ(Wong-Madden, S.T. and Landry, D. Glycobiology 5, 19-28 (1995))では糖鎖が切断され、GalNAc-MUC1aの位置に溶出されたのに対し、Jack Bean由来β-1,4ガラクトシダーゼでは溶出位置に変化が見られなかった。
また、レクチンアレイ(Kuno et al., Nat. Methods, 2, 851-856 (2005))においてその糖鎖構造を解析した。[実施例5]と同様に、MUC1aをCy3で標識し、10μg/mlの濃度でレクチンアレイでの解析を行った。その結果を図14に示す。レクチンアレイでの解析の結果、core1特異的レクチンであるPNA(ピーナッツ由来レクチン)、ABA(アガリクス由来レクチン)、ACA(ヒモゲイトウ由来レクチン)でシグナルが観察され、またcore1/Tn特異的レクチンであるJacalin(バラミツ由来レクチン)、MPA(オセージオレンジ由来レクチン)、BPL(オーキッドツリー由来レクチン)でシグナルが観察された。この結果からペプチドにcore1構造(Galβ1,3GalNAc)が付加されていることが明らかになった。一方、コントロールとして作製したKAY-4由来のペプチドではTn特異的レクチンではシグナルが観察されたものの、core1特異的レクチンでは検出されなかった。
〔実施例17〕メタノール資化性酵母O. minutaでのムチン型糖ペプチド生産株の作製
メタノール資化性酵母O. minutaでのムチン型糖ペプチド生産株の作製を以下のように行った。
まず、実施例1で作製したpBluescriptII (SK-)-myc/GalEを鋳型とし、プライマーO [配列番号54]とプライマーP [配列番号55]を使用しPCR法で増幅した。
配列番号54:ACGCGTCGACATGTTAATTAACTCTGAACAAAAACTC
配列番号55:TCCCGTCGACTTATTCCGCACTCTTATACC
このPCR産物をSalI部位にて切断し、pOMEGPUIのSal I部位に挿入し、pOMEGPUI-myc/GalEを作製した。また、同様にpBluescriptII (SK-)-HA/UGT2を鋳型として、プライマーQ [配列番号56]とプライマーR [配列番号57]を使用しPCR法で増幅した。
配列番号56:AAAAAGTCGACAAAATGGCAGCGGTTGGGGCTGG
配列番号57:GCGTGTCGACTTAccaagccgaattaacagcagc
このPCR産物をSalI部位にて切断し、pOMEGPUIのSalI部位に挿入し、pOMEGPUI-HA/UGT2を作製した。次にpOMEGPUI-HA/UGT2をHindIII部位で切断し、両端の平滑化を行った。同様にpOMEGPUI-myc/GalEをHind III部位とKpnI部位で切断しO. minutaのGAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し両端の平滑化を行ったあとに、平滑化を行ったpOMEGPUI-HA/UGT2にHindIII部位で挿入し、pOMEGPUI-myc/GalE, HA/UGT2を作製した。このプラスミドpOMEGPUI-myc/GalE, HA/UGT2をNotIで切断後、国際公開03/091431号に記載のO. minuta TK5-3株(Δoch1Δura3Δade1)に形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Ura(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ウラシルをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAM-1株とした。
O. minutaでppGalNAc-T1を発現させるために、pUC19-MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1を鋳型としてプライマーS [配列番号58]とプライマーT [配列番号59]を用いてPCR法にて増幅した。
配列番号58:ACGATGCATATGTCACTTTCTCTTGTATC
配列番号59:ACGATGCATTCAGAATATTTCTGGCAGGG
このPCR産物をEcoT22Iにて切断しpOMEGPA1のEcoT22I部位に挿入することで、pOMEGPA1-MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1を作製した。このプラスミドpOMEGPA1-MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1をNotIで切断後、KAM-1株に形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Ade(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、アデニンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAM-2株とした。
〔実施例18〕メタノール資化性酵母O. minutaでのムチン型糖ペプチド生産株へのMUC1aペプチド遺伝子の導入
まず、実施例1で作製したYEp352GAPII-alfaMUC1aHisを鋳型としプライマーU [配列番号60]とプライマーV [配列番号61]でα-factorを含むMUC1aをPCR法で増幅した。
配列番号60:ACGCGTCGACATGAGATTTCCTTCAATTTT
配列番号61:CATCACCATCACCATCACTAAGTCGACGCGA
このPCR産物をSalIで切断し、pOMZeoのSalI部位に挿入し、pOMZeo- alfaMUC1aHisを作製した。このプラスミドをNotIで切断後、KAM-2株を形質転換した。形質転換後、YPAD-Zeocine(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、2%グルコース、アデニン(40 mg/L)、100μg/ml Zeocine)培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAM-3株とした。
〔実施例19〕メタノール資化性酵母O. minutaでのムチン型糖ペプチド生産株へのMUC1aペプチド遺伝子の生産と解析
O. minuta KAM-3株を100 mlのYPAD培地(2%ポリペプトン、1%酵母抽出液、2%グルコース、アデニン(40 mg/L)、protease inhibitor cocktail(Roche社製))にて30 ℃で72 時間培養後、遠心分離により培養上清を得た。培養上清のpHを7.0に調整した後、TALON metal affinity resins(クロンテック社)を添加し、0.5 M NaClを含むリン酸緩衝液 (pH 7.4)にて洗浄した後、溶出は0.5 M NaClと0.5 M イミダゾールを含むリン酸緩衝液(pH 7.4)にて行った。得られた溶出液を精製MUC1a標品とした。
得られたMUC1a標品についてGalNAcの結合量を定量するために逆相カラムを用いたHPLC解析による純度検定を行った。カラムはコスモシルC18(4.6 x 250mm:ナカライテスク社)を使用し、溶媒は0.05%トリフルオロ酢酸(A液)と0.05%トリフルオロ酢酸含有アセトニトリル(B液)を用いた。予め溶媒Aを0.05%で流速0.1 ml/min.で流すことでカラムを平衡化し、試料注入後10分は溶媒Aを0.05%で流速0.1 ml/min.で流し、その後溶媒Bの割合を20分かけて20%まで直線的に増加させMUC1aを溶出した。検出はUV検出器(検出波長210 nm)にて行った。その結果を図15に示す。まず、KAM-3株由来の標品について、HPLC上の溶出時間が24.5 min.の位置のピークと25.5 min.の位置のピークを分取し、MALDI TOF-MSによる分子量測定を行なった。
HPLCから分取したMUC1a標品をそれぞれ凍結乾燥品とした後、MALDI TOF-MSによる分子量測定を行った。その結果を図16に示す。HPLC上の溶出時間が25.5 min.のピークは分子量約1934の位置にピークが観察され、これはMUC1aの理論値と一致した。また24.5 min.のピークは約2137の位置にピークが観察され、これはMUC1aにGalNAc分の分子量の増加が見られる位置と一致した。以上からMUC1aにGalNAc分子が一つ結合していることが明らかになった。
〔実施例20〕ppGalNAc-T2導入ムチン型糖鎖生産酵母株の作製
ppGalNAc-T2遺伝子は、ヒト第1染色体に位置しており、そのcDNA塩基配列は公共のデータベースであるGenBankにAccession No. X85019として登録されている。まず、この遺伝子の触媒ドメインをプライマーW〔配列番号62〕とプライマーX〔配列番号63〕で増幅した。鋳型にはNEDO「糖鎖遺伝子ライブラリーの構築」プロジェクト(平成15年度産業科学技術研究開発事業 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託 糖鎖合成関連遺伝子ライブラリーの構築(健康増進・維持のためのバイオテクノロジー基盤研究プログラム)成果報告書、独立行政法人産業技術総合研究所・バイオテクノロジー開発技術研究組合(2004))(Shinma and Jigami, Glycoconj, J., Vol. 21, 75-78 (2004))ですでにクローン化されているppGalNAc-T2遺伝子の組み込まれているプラスミド(pENTR/D-TOPO-ppGalNAc-T2)を用いた。このPCR産物をSpeI部位とKpnI部位にて切断し、すでにS. cerevisiaeのゴルジ体のマンノース転移酵素のサブユニットであるMNN9の膜貫通ドメインの遺伝子配列が挿入してある大腸菌のクローニング用プラスミドpUC19のSpeI, KpnI部位に組み込み、プラスミドpUC19-MNN9/ppGalNAc-T2を作製した。
配列番号62 CCCACTAGTgccggcaggaaggaggactg
配列番号63 CGGGGTACCttactgctgcaggttgagcgtg
このプラスミドを鋳型としプライマーY〔配列番号64〕とプライマーZ〔配列番号65〕を用いてMNN9膜貫通ドメインの遺伝子を含むppGalNAc-T2遺伝子を増幅し、さらに5’側にEcoRI部位を3’側にSalI部位を付加した。増幅したMNN9-ppGalNAc-T2断片をEcoRIとSalIで切断し、さらに両酵素で切断したpRS304-MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1のEcoRI部位とSalI部位に挿入し、pRS304-MNN9/ppGalNAc-T2を作製した。このプラスミドpRS304-MNN9/ppGalNAc-T2をEcoRVで切断後、KAY-2株に形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いておこなった。形質転換後、SD-Trp(2%グルコース、0.17% Yeast Nitrogen base w/o amino acids (Difco社製)、トリプトファンをのぞく核酸塩基及びアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30℃にて2日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認しKAY-33株とした。
配列番号64 ccggaattcatgtcactttctcttgtatc
配列番号65 acgcgtcgacttactgctgcaggttgagcg
また、pRS304-MNN9/ppGalNAc-T2をApaI部位で切断し両端を平滑化したプラスミドに、実施例13で使用したGAPDHプロモーター, ターミネーター配列を含むMNN9/FLAG/DmGalT遺伝子断片の両端を平滑化したものを挿入し、これをpRS304-MNN9 /ppGlaNAc-T2, MNN9/FLAG/DmGalTとした。このプラスミドpRS304-MNN9/ppGlaNAc-T2, MNN9/FLAG/DmGalTをEcoRVで切断後、KAY-2株に形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いておこなった。形質転換後、SD-Trp(2%グルコース、0.17% Yeast Nitrogen base w/o amino acids (Difco社製)、トリプトファンをのぞく核酸塩基及びアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30℃にて2日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認しKAY-34株とした。
〔実施例21〕ppGalNAc-T3導入ムチン型糖鎖生産酵母株の作製
ppGalNAc-T3遺伝子は、ヒト第2染色体に位置しており、そのcDNA塩基配列は公共のデータベースであるGenBankにAccession No. X92689として登録されている。まず、この遺伝子の触媒ドメインをプライマーAA〔配列番号66〕とプライマーAB〔配列番号67〕で増幅した。鋳型にはNEDO「糖鎖遺伝子ライブラリーの構築」プロジェクト(平成15年度産業科学技術研究開発事業 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託 糖鎖合成関連遺伝子ライブラリーの構築(健康増進・維持のためのバイオテクノロジー基盤研究プログラム)成果報告書、独立行政法人産業技術総合研究所・バイオテクノロジー開発技術研究組合(2004))ですでにクローン化されているppGalNAc-T3遺伝子の組み込まれているプラスミド(pENTR/D-TOPO-ppGalNAc-T3)を用いた。このPCR産物をSpeI部位とKpnI部位にて切断し、すでにS. cerevisiaeのゴルジ体のマンノース転移酵素のサブユニットであるMNN9の膜貫通ドメインの遺伝子配列が挿入してある大腸菌のクローニング用プラスミドpUC19のSpeI, KpnI部位に組み込み、プラスミドpUC19-MNN9/ppGalNAc-T3を作製した。
配列番号66 CCCACTAGTcaaagagaagtaagtgttc
配列番号67 CGGGGTACCttaatcattttggctaagtatc
このプラスミドを鋳型としプライマーAC〔配列番号68〕とプライマーAD〔配列番号69〕を用いてMNN9膜貫通ドメインの遺伝子を含むppGalNAc-T3遺伝子増幅し、さらに5’側にMfeI部位を3’側にSalI部位を付加した。増幅したMNN9-ppGalNAc-T3断片をMfeIとSalIで切断し、さらに両酵素で切断したpRS304-MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1のEcoRI部位とSalI部位に挿入し、pRS304-MNN9/ppGalNAc-T3を作製した。このプラスミドpRS304-MNN9/ppGalNAc-T3をEcoRVで切断後、KAY-2株に形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いておこなった。形質転換後、SD-Trp(2%グルコース、0.17% Yeast Nitrogen base w/o amino acids (Difco社製)、トリプトファンをのぞく核酸塩基及びアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30℃にて2日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認しKAY-35株とした。
配列番号68 ccgcaattgatgtcactttctcttgtatc
配列番号69 acgcgtcgacttaatcattttggctaagtatc
また、pRS304-MNN9/ppGalNAc-T3をSmaI部位で切断したプラスミドに、実施例13で使用したGAPDHプロモーター, ターミネーター配列を含むMNN9/FLAG/DmGalT遺伝子断片の両端を平滑化したものを挿入した。これをpRS304-MNN9/ppGlaNAc-T3, MNN9/FLAG/DmGalTとした。このプラスミドpRS304-MNN9/ppGlaNAc-T3, MNN9/FLAG/DmGalTをEcoRVで切断後、KAY-2株に形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いておこなった。形質転換後、SD-Trp(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen base w/o amino acids (Difco社製)、トリプトファンをのぞく核酸塩基及びアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30℃にて2日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認しKAY-36株とした。
〔実施例22〕core 2構造生産酵母株の作製
Kluyveromyces lactis由来MNN2-2遺伝子はKluyveromyces lactisゲノム上に存在しており、そのcDNA配列は公共のデータベースであるGenBankにAccession No. U48413として登録されている。このMNN2-2遺伝子のcDNA全長(配列番号84)をKluyveromyces lactis株のゲノムを鋳型とし、プライマーAG〔配列番号70〕とプライマーAH〔配列番号71〕を用いPCR法で増幅した。
配列番号70 CTAGAGCTCATGAGTTTTGTATTGATTTTGTC
配列番号71 TCGCGTCGACTCAGCGAGGCAGTGCAGTTTTGAC
得られたPCR産物をSacI部位とSalI部位で切断し、酵母の発現用プラスミドYEp352GAPIIのSacI部位とSalI部位で挿入しYEp352GAPII-MNN2-2を取得した。さらにこのプラスミドからBamHIで酵母GAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し、両端を平滑化した。さらに実施例1で作製したpRS305-HA/UGT2をSacI部位で切断し、両端を平滑化しpRS305-HA/UGT2/MNN2-2を作製した。このプラスミドpRS305-HA/UGT2/MNN2-2をEcoRVで切断後、S. cerevisiae W303-1Aを形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いておこなった。形質転換後、SD-Leu(2%グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen base w/o amino acids (Difco社製)、ロイシンをのぞく核酸塩基及びアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30℃にて2日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-37とした。
実施例13で作製したpRS304-MNN9/ppGalNAc-T1,MNN9/FLAG/DmGalTをEcoRVにて切断後、KAY-37株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Trp(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、トリプトファンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-38とした。
Core 2 GnT-1 (C2GnT1)遺伝子は、core 2構造合成酵素であり、そのcDNA塩基配列は公共のデータベースであるGenBankにAccession No. BC074885で登録されている。鋳型にはNEDO「糖鎖遺伝子ライブラリーの構築」プロジェクト(平成15年度産業科学技術研究開発事業 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託 糖鎖合成関連遺伝子ライブラリーの構築(健康増進・維持のためのバイオテクノロジー基盤研究プログラム)成果報告書、独立行政法人産業技術総合研究所・バイオテクノロジー開発技術研究組合(2004))ですでにクローン化されているC2GnT1遺伝子の組み込まれているプラスミド(pENTR/D-TOPO-C2GnT1)を用い、このC2GnT1遺伝子の触媒ドメインをプライマーAI〔配列番号72〕とプライマーAJ〔配列番号73〕を用いPCR法で増幅した。
配列番号72 CCCACTAGTagacacttggagcttgctg
配列番号73 CGGGGTACCtcagtgttttaatgtctc
このPCR産物をSpeI部位とKpnI部位にて切断し、すでにS. cerevisiaeのゴルジ体のマンノース転移酵素のサブユニットであるMNN9の膜貫通ドメインの遺伝子配列が挿入してある大腸菌のクローニング用プラスミドpUC19のSpeI, KpnI部位に組み込み、プラスミドpUC19-MNN9/C2GnT1を作製した。次にプライマーK [配列番号21]とプライマーL [配列番号22]を用いPCRで、SpeI部位を付加したFLAG抗原発現のためのDNA塩基配列を作製しSpeI部位にて切断した後に、pUC19-MNN9/C2GnT1をSpeI部位にて切断しC2GnT1の触媒ドメインの5’領域にFLAG抗原発現のためのDNA塩基配列を挿入することでpUC19-MNN9/FLAG/C2GnT1を作製した。このプラスミドからBamHI部位とKpnI部位でFLAG抗原を含むC2GnT1遺伝子を切断し末端の平滑化を行ったのち、同様に末端を平滑化した酵母の発現用プラスミドYEp352GAPIIにEcoRI/SalI部位で挿入しYEp352GAPII-MNN9/FLAG/C2GnT1を構築した。さらに実施例1で作製したpRS306-myc/GalEをSacI部位で切断し両端を平滑化したものに、YEp352GAPII-MNN9/FLAG/C2GnT1からBamHIで酵母GAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し両端の平滑化を行ったものを挿入し、pRS306-myc/GalE, MNN9/FLAG/C2GnT1を作製した。このプラスミドpRS306-myc/GalE/, MNN9/FLAG/C2GnT1をEcoRVにて切断後、KAY-38株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Ura(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ウラシルをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-39株とした。
実施例2で作製したプラスミドpRS303-alfaMUC1aHisをNheIにて切断後、KAY-39株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-His(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ヒスチジンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-40株とした。
〔実施例23〕core 3構造生産酵母株の作製
β3GnT6はcore 3構造合成酵素であり、そのcDNA塩基配列は公共のデータベースであるGenBankにAccession No. AB073740で登録されている。鋳型にはNEDO「糖鎖遺伝子ライブラリーの構築」プロジェクト(平成15年度産業科学技術研究開発事業 新エネルギー・産業技術総合開発機構委託 糖鎖合成関連遺伝子ライブラリーの構築(健康増進・維持のためのバイオテクノロジー基盤研究プログラム)成果報告書、独立行政法人産業技術総合研究所・バイオテクノロジー開発技術研究組合(2004))ですでにクローン化されているβ3GnT6遺伝子の組み込まれているプラスミド(pENTR/D-TOPO-β3GnT6)を用い、このβ3GnT6遺伝子の触媒ドメインをプライマーAK〔配列番号74〕とプライマーAL〔配列番号75〕を用いPCR法で増幅した。
配列番号74 GACTAGTcaggaggagacgccagaggg
配列番号75 GGAATTCttaggagacccggtgtccccgg
このPCR産物をSpeI部位とEcoRI部位にて切断し、すでにS. cerevisiaeのゴルジ体のマンノース転移酵素のサブユニットであるMNN9の膜貫通ドメインの遺伝子配列が挿入してある大腸菌のクローニング用プラスミドpUC19のSpeI, EcoRI部位に組み込み、プラスミドpUC19-MNN9/β3GnT6を作製した。このプラスミドからBamHI部位とEcoRI部位でβ3GnT6遺伝子を切断し末端の平滑化を行ったのち、同様に末端を平滑化した酵母の発現用プラスミドYEp352GAPIIにEcoRI/SalI部位で挿入しYEp352GAPII-MNN9/β3GnT6を構築した。さらにこのプラスミドからBamHIで酵母GAPDHプロモーター、ターミネーターを含む領域を切り出し両端の平滑化を行った後、実施例1で作製したpRS304-MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1のApaI部位で切断し末端平滑化したものに挿入した。このプラスミドpRS304-MNN9/FLAG/ppGalNAc-T1, MNN9/β3GnT6をEcoRVにて切断後、KAY-37株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Trp(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、トリプトファンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-41株とした。
実施例1で作製したpRS306-myc/GalEをEcoRVにて切断後、KAY-41株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-Ura(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ウラシルをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-42株とした。
実施例2で作製したプラスミドpRS303-alfaMUC1aHisをNheIにて切断後、KAY-42株を形質転換した。形質転換は酢酸リチウム法を用いて行った。形質転換後、SD-His(2 %グルコース、0.17 % Yeast Nitrogen Base w/o amino acids (Difco社製)、ヒスチジンをのぞく核酸塩基およびアミノ酸混合物(20-400 mg/L))培地にまいて、30 ℃にて2 日間培養し形質転換体を得た。形質転換体をプレートから掻きとり、PCR反応液に懸濁する簡易法PCRにて染色体上への組み込みを確認し、KAY-43株とした。
本発明によれば、ムチン型糖鎖を有する糖タンパク質を安価に大量生産することができる。本発明は、ムチン型糖ペプチドを抗原とした癌の免疫療法や、癌細胞表面に存在するムチン型糖鎖結合タンパク質特異抗原に対する抗体作製とその抗体を利用した抗体医薬など、種々の治療法開発や医薬品開発に利用しうる。
図1は、さまざまな母核構造を有するムチン型糖鎖の生合成経路を示す模式図である。
図2は、ムチン型糖鎖の生合成を示す模式図である。
図3は、逆相HPLCによるS. cerevisiae KAY-1株とS. cerevisiae W303-1A株におけるUDP-Gal及びUDP-GalNAc生合成を確認した結果を示す。
図4は、ウエスタンブロッティングによるS. cerevisiae KAY-4株とW303-1A株における遺伝子発現の確認結果を示す。
図5は、S. cerevisiae KAY-4株とKAY-5株由来精製産物の逆相HPLC解析結果を示す。
図6は、S. cerevisiae KAY-4株とKAY-5株由来MUC1aペプチドの、MALDI TOF-MSによる質量分析結果を示す。
図7は、S. cerevisiae KAY-4株由来MUC1aペプチドのレクチンアレイによる分析結果を示す。
図8は、阻害剤(ローダミン-3-酢酸誘導体)共存下でのムチン型糖ペプチド生産S. cerevisiae株由来MUC1aペプチドの純度検定結果を示す。
図9は、レクチンブロットによるS. cerevisiae KAY-27株とKAY-29株におけるCm10へのGalNac付加の確認結果を示す。
図10は、ウエスタンブロッティングによるS. cerevisiae KAY-30株とW303-1A株におけるショウジョウバエ由来Core1 GalTの発現の確認結果を示す。
図11は、S. cerevisiae KAY-13株由来精製産物の逆相HPLC解析結果を示す。
図12は、S. cerevisiae KAY-13株由来MUC1aペプチドの、MALDI TOF-MSによる質量分析結果を示す。
図13は、S. cerevisiae KAY-13株由来精製標品(質量分析24minピーク)のβ−ガラクトシダーゼ処理による糖鎖構造解析結果を示す。
図14は、S. cerevisiae KAY-13株由来MUC1aペプチドのレクチンアレイによる分析結果を示す。
図15は、O. minuta KAM-3株由来精製産物の逆相HPLC解析結果を示す。
図16は、O. minuta KAM-3株由来MUC1aペプチドの、MALDI TOF-MSによる質量分析結果を示す。
配列番号5−人工配列の説明:Mnn9タンパク質の膜貫通領域とppGalNAc T1の触媒領域を融合したタンパク質をコードする遺伝子
配列番号6−人工配列の説明:Mnn9タンパク質の膜貫通領域とppGalNAc T1の触媒領域を融合したタンパク質
配列番号9−人工配列の説明: Mnn9タンパク質の膜貫通領域とDrosophila β-1,3-Gal転移酵素の触媒領域を融合したタンパク質をコードする遺伝子
配列番号10−人工配列の説明: Mnn9タンパク質の膜貫通領域とDrosophila β-1,3-Gal転移酵素の触媒領域を融合したタンパク質
配列番号11〜75−人工配列の説明:プライマー
配列番号76−人工配列の説明:Mnn9タンパク質の膜貫通領域とppGalNAc T2の触媒領域を融合したタンパク質をコードする遺伝子
配列番号77−人工配列の説明:Mnn9タンパク質の膜貫通領域とppGalNAc T2の触媒領域を融合したタンパク質
配列番号78−人工配列の説明:Mnn9タンパク質の膜貫通領域とppGalNAc T3の触媒領域を融合したタンパク質をコードする遺伝子
配列番号79−人工配列の説明:Mnn9タンパク質の膜貫通領域とppGalNAc T3の触媒領域を融合したタンパク質
配列番号80−人工配列の説明:Mnn9タンパク質の膜貫通領域とFLAG抗原とC2GnT1遺伝子の触媒領域を融合したタンパク質をコードする遺伝子
配列番号81−人工配列の説明:Mnn9タンパク質の膜貫通領域とFLAG抗原とC2GnT1遺伝子の触媒領域を融合したタンパク質
配列番号82−人工配列の説明:Mnn9タンパク質の膜貫通領域とβ3GnT6遺伝子を融合したタンパク質をコードする遺伝子
配列番号83−人工配列の説明:Mnn9タンパク質の膜貫通領域とβ3GnT6遺伝子を融合したタンパク質
配列番号84−MNN2-2遺伝子の全長cDNA
配列番号85−Mnn2-2