JP2007257924A - 光電変換材料、半導体電極、およびそれを用いた光電変換素子、並びに半導体電極の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、光電変換材料、半導体電極、およびそれを用いた光電変換素子、並びに半導体電極の製造方法に関するものである。
大量の化石燃料の使用で引き起こされるCO2濃度増加による地球温暖化、更に人口増加に伴うエネルギー需要の増大は、人類の存亡にまで関わる問題と認識されている。そのため近年、無限で有害物質を発生しない太陽光の利用が精力的に検討されている。このクリーンエネルギー源である太陽光利用として現在実用化されているものは住宅用の単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンおよびテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の無機系太陽電池が挙げられる。
しかしながら、これらの無機系太陽電池にも欠点がある。例えばシリコン系では、非常に純度の高いものが要求され、当然精製の工程は複雑でプロセス数が多く、製造コストが高い。それ以外にも軽量化等の要求もあり、特に、ユーザーへのペイバックが長い点でも不利であり、普及には問題があった。
その一方で、有機材料を使う太陽電池も多く提案されている。有機太陽電池としては、p型有機半導体と仕事関数の小さい金属を接合させるショットキー型光電変換素子、p型有機半導体とn型無機半導体、あるいはp型有機半導体と電子受容性有機化合物を接合させるヘテロ接合型光電変換素子等があり、利用される有機半導体は、クロロフィル、ペリレン等の合成色素や顔料、ポリアセチレン等の導電性高分子材料、またはそれらの複合材料等である。これらを真空蒸着法、キャスト法、またはディッピング法等により、薄膜化し電池材料が構成されている。有機材料は低コスト、大面積化が容易等の長所もあるが、変換効率は1%以下と低いものが多く、また耐久性も悪いという問題もあった。
こうした状況の中で、良好な特性を示す太陽電池がスイスのグレッツェル博士らによって報告された(非特許文献1参照)。この文献には電池作製に必要な材料および製造技術も開示されている。提案された電池は色素増感型太陽電池、あるいはグレッツェル型太陽電池と呼ばれ、ルテニウム錯体で分光増感された酸化チタン多孔質薄膜を作用電極とする湿式太陽電池である。この方式の利点は酸化チタン等の安価な酸化物半導体を高純度まで精製する必要がないこと、従って安価で、更に利用できる光は広い可視光領域にまでわたっており、可視光成分の多い太陽光を有効に電気へ変換できることである。
反面、資源的制約があるルテニウム錯体が使われているため、この太陽電池が実用化された場合に、ルテニウム錯体の供給が危ぶまれている。また、このルテニウム錯体は高価なため、安価な有機色素へ変更することが出来れば、この問題は解決出来る。この電池の色素としてメロシアニン色素、シアニン色素、9−フェニルキサンテン系色素が報告されている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、これらの色素は高い増感効果が得られず、また、酸化チタンへの吸着安定性が低いことなどから、経時安定性にも問題がある。
特開平11−238905号公報
特開2001−76773号公報
特開平10−92477号公報
Nature,353,737(1991)
本発明の目的は増感効果及び吸着安定性に優れた増感色素を用いた光電変換材料を得ること、及びそれを用いた高性能の光電変換素子を提供することである。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、一般式(1)で示される色素の少なくとも1種を光電変換材料として用い、これを半導体層に吸着後、物理的または化学的手段により化学反応を起こさせて、より吸着性を高めることにより目標を達成する事が出来た。
一般式(1)において、SDは増感色素残基を示し、Xは物理的または化学的手段により化学反応を起こして吸着性基に変化する性質を有する置換基を示す。nは1以上の整数を示す。
光電変換材料とは、例えば導電性支持体を構成する材料、半導体電極を構成する材料、電解質、対極を構成する材料等、光を電気エネルギーに変換する素子を構成する全ての部分の事を意味する。可視領域に光電変換能を持たない半導体電極上に可視領域の光を吸収する色素を吸着担持させる事により、半導体電極の光電変換能を可視領域にまで拡大する事が出来るが、このような目的で使用される色素は増感色素と呼ばれる。本発明における色素とは、この増感色素の事を意味する。
本発明で使用される一般式(1)の化合物を用い、これを半導体電極に吸着後、物理的または化学的手段により化学反応を起こさせてより吸着性を高めることにより、優れた変換効率を示し、かつ半導体電極に対する色素の吸着安定性に優れた光電変換素子を得ることが出来る。
一般式(1)におけるSDの増感色素残基としては、一般に知られる光電変換素子用の増感色素なら、いずれを用いても効果が得られるが、好ましくは下記一般式(2)の構造を有する増感色素からn個の水素原子を除いて得られる残基が挙げられる。
一般式(2)において、HTU(Hole Transport Unit)はホール輸送性を有するユニットを示し、SDU(Sensitizing Dye Unit)は、増感色素ユニットを示す。
HTUとしては、一般に電子写真感光体や有機EL等の分野で、電荷輸送性化合物(CTM,Charge Transport Material)またはホール輸送性化合物(HTM,Hole Transport Material)として知られる化合物から得られる残基が用いられ、その具体例としては、下記に示すホール輸送性化合物から、接続するSDUの数だけ水素原子を除いて得られる残基等が挙げられる。
一般式(3)〜(8)において、R1〜R17は水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、またはハロゲン原子を示し、Yは二価の接続基を示す。
SDUとしては、一般に写真感光材料の分野で、メロシアニン色素として知られる色素から得られる一価の残基が用いられ、その具体例としては、下記に示す増感色素残基等が挙げられる。
一般式(9)〜(11)において、A1〜A6は酸素原子、硫黄原子、またはNR25を表し、R25は置換基を有していても良いアルキル基を表す。B1〜B9は酸素原子または硫黄原子を表す。R19〜R24は置換基を有していても良いアルキル基を表す。
一般式(3)〜(8)におけるR1〜R17の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、ブチル基等の低級アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等の低級アルコキシ基、またはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子が挙げられる。また、二価の接続基Yの具体例としては、酸素原子、硫黄原子、NR18(R18は水素原子またはメチル基、エチル基、ブチル基等の低級アルキル基を表す)、1,4−フェニレン基、4,4′−ビフェニレン基、1,6−ピレニレン基、1,8−ピレニレン基等のアリーレン基、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等のアルキレン基、あるいは、これらの基を組み合わせて出来るオキシエチレン基、エチレンジオキシ基、1,2−エチレンジチオ基、1,4−ブチレンジチオ基、3−チアペンタン−1,5−ジイル基、1,2−ジフェニルエチレン−4,4′−ジイル基、1,2−ジフェノキシエチレン−4,4′−ジイル基、トランススチルベン−4,4′−ジイル基、1,4−キシリレン基、1,3−キシリレン基等の二価基が挙げられる。
一般式(9)〜(11)におけるA1〜A6の具体例としては、酸素原子、硫黄原子、またはNR25を表し、R25はメチル基、エチル基、2,2−ジメチルプロピル基、3−メトキシブチル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、フェネチル基、3−(3−メトキシフェニル)プロピル基、4−(2−クロルフェニル)ブチル基等の、置換基を有していても良いアルキル基を表す。B1〜B9の具体例としては、酸素原子または硫黄原子を表す。R19〜R24はメチル基、エチル基、2,2−ジメチルプロピル基、3−メトキシブチル基、オクチル基、ドデシル基、オクタデシル基、ベンジル基、4−メチルベンジル基、フェネチル基、3−(3−メトキシフェニル)プロピル基、4−(2−クロルフェニル)ブチル基等の、置換基を有していても良いアルキル基を表す。
本発明の一般式(1)において、物理的または化学的手段により化学反応を起こして吸着性基に変化する性質を有する置換基Xとしては、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アミノスルホニル基等の、加水分解、酸化、還元等の化学反応により開裂して、カルボン酸基やスルホン酸基のような、半導体層への吸着作用が強い置換基に変化する基が挙げられる。
一般式(1)におけるXの具体例としては、カルボン酸メチル基、カルボン酸エチル基、カルボン酸イソプロピル基、カルボン酸ブチル基、カルボン酸t−ブチル基、カルボン酸ベンジル基、カルボン酸フェネチル基、カルボン酸フェニル基、カルボン酸2,4−ジニトロフェニル基、カルボン酸2,4,6−トリニトロフェニル基等のカルボン酸エステル基、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸t−ブチル基、スルホン酸ベンジル基、スルホン酸フェニル基、スルホン酸p−ニトロフェニル基等のスルホン酸エステル基、またはアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ベンジルアミノスルホニル基等のアミノスルホニル基が挙げられるが、好ましくは、カルボン酸t−ブチル基、カルボン酸ベンジル基、カルボン酸2,4−ジニトロフェニル基等の、加水分解を受けて切れやすい基が挙げられる。
一般式(1)におけるnは、1以上の整数を示すが、好ましくは2以上6以下の整数が挙げられる。また、一般式(1)におけるXは一般式(2)のHTUおよびSDUの何れのユニットに置換されていても良いが、好ましくはSDUに置換されたものが挙げられる。
一般式(1)におけるXに化学反応を起こさせて吸着性基に変化させる具体的な手段としては、加熱、超音波照射、電磁波照射等の物理的手段、あるいは、酸との接触、アルカリとの接触、酸化剤との接触、還元剤との接触等の化学的手段が挙げられ、またこれらの手段のうちの2種以上を同時に作用させて、化学反応を促進させる手段も挙げられる。より具体的には、一般式(1)の化合物を半導体電極に吸着後、オーブン等で加熱する、電子レンジで電磁波照射する、或いは、吸着処理液中でそのまま超音波照射を行う等の、物理的手段、あるいは吸着後、塩酸や希硫酸等の酸性溶液、水酸化ナトリウム水溶液やトリエチルアミンのアルコール溶液等のアルカリ性溶液、過酸化水素水等の酸化性溶液、または水素化ホウ素ナトリウムメタノール溶液等の還元性溶液に浸漬させたり、塩化水素や二酸化窒素等の酸性ガス、アンモニア、トリメチルアミン等の塩基性ガス、オゾンや塩素ガス等の酸化性ガス、または硫化水素等の還元性ガス雰囲気下に置いたりしてXに化学反応を起こさせることができ、さらには、塩酸溶液に浸浸しながら加熱する、塩素ガス密閉容器中で電磁波照射を行う等、2種以上の手段を併用することもできる。但し、加熱の場合、一般式(1)の化合物自体が分解しない程度の温度に抑える必要があり、好ましくは200℃以下での加熱処理が挙げられ、また酸およびアルカリ処理においても、好ましくはpHが1以上14以下の条件が挙げられる。
次に、本発明の一般式(1)の化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の光電変換素子は、導電性支持体と、その導電性表面上を被覆した半導体層と、その半導体層の表面に吸着した色素からなる半導体電極、電荷移動層及び対極からなる。半導体層は単層構成でも積層構成でもよく、目的に応じて設計される。また、導電性支持体の導電層と半導体層の境界、半導体層と移動層の境界等、この素子における境界においては、各層の構成成分は相互に拡散、または混合していてもよい。
導電性支持体は、金属のように支持体そのものに導電性があるもの、または表面に導電剤を含む導電層を有するガラスあるいはプラスチックの支持体を用いることができる。後者の場合、導電剤としては白金、金、銀、銅、アルミニウム等の金属、炭素、あるいはインジウム−スズ複合酸化物(以降「ITO」と略記する)、フッ素をドーピングした酸化スズ等の金属酸化物(以降「FTO」と略記する)等が挙げられる。導電性支持体は、光を10%以上透過する透明性を有していることが好ましく、50%以上透過することがより好ましい。この中でも、ITOやFTOからなる導電層をガラス上に堆積した導電性ガラスが特に好ましい。
透明導電性支持体の抵抗を下げる目的で、金属リード線を用いてもよい。金属リード線の材質はアルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が挙げられる。金属リード線は、透明支持体に蒸着、スパッタリング、圧着等で設置し、その上にITOやFTOを設ける方法、あるいは透明導電層上に金属リード線を設置する。
半導体としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、あるいは金属のカルコゲニドに代表される化合物半導体、またはペロブスカイト構造を有する化合物等を使用することができる。金属のカルコゲニドとしてはチタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、あるいはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物、カドミウム、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム、等のリン化物、ガリウム砒素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物等が好ましい。また、ペロブスカイト構造を有する化合物としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が好ましい。
本発明に用いられる半導体は、単結晶でも多結晶でもよい。変換効率としては単結晶が好ましいが、製造コスト、原材料確保等の点では多結晶が好ましく、その半導体の粒径は2nm以上、1μm以下であることが好ましい。
導電性支持体上に半導体層を形成する方法としては、半導体微粒子の分散液またはコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法、ゾル−ゲル法等がある。その分散液の作製方法としては、前述のゾル−ゲル法、乳鉢等で機械的に粉砕する方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させ、そのまま使用する方法等が挙げられる。
機械的粉砕、あるいはミルを使用して粉砕して作製する分散液の場合、少なくとも半導体微粒子単独、あるいは半導体微粒子と樹脂の混合物を水あるいは有機溶剤に分散して形成される。使用される樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等によるビニル化合物の重合体や共重合体、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
半導体微粒子を分散する溶媒としては、水、メタノール、エタノール、あるいはイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、あるいはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらは単独、あるいは2種以上の混合溶媒として用いることができる。
得られた分散液の塗布方法としては、ローラ法、ディップ法、エアーナイフ法、ブレード法、ワイヤーバー等、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、あるいはスプレー法を挙げることができる。
更に半導体層は、単層であっても多層であってもよい。多層の場合、粒径の異なる半導体微粒子の分散液を多層塗布したり、種類の異なる半導体や、樹脂、添加剤の組成が異なる塗布層を多層塗布することもできる。また、一度の塗布で膜厚が不足する場合には多層塗布は有効な手段である。
一般的に、半導体層の膜厚が増大するほど単位投影面積当たりの担持色素量も増えるため光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離も増えるために電荷の再結合も多くなってしまう。従って、半導体層の膜厚は0.1〜100μmが好ましく、1〜30μmがより好ましい。
半導体微粒子は導電性支持体上に塗布した後、加熱処理してもしなくともよいが、粒子同士の電子的コンタクト及び塗膜強度の向上や支持体との密着性向上の点から、加熱処理をした方が好ましい。更に、マイクロ波照射、プレス処理あるいは電子線照射を行ってもよく、これらの処理は単独で行っても二種類以上行っても構わない。加熱処理の際、加熱温度は40〜700℃が好ましく、80〜600℃がより好ましい。また、加熱時間は5分〜50時間が好ましく、10分〜20時間がより好ましい。マイクロ波照射は、半導体電極の半導体層形成側から照射しても、裏側から照射しても構わない。照射時間には特に制限が無いが、1時間以内で行うことが好ましい。プレス処理は、107N以上が好ましく、108Nが更に好ましい。プレスする時間は特に制限が無いが、1時間以内で行うことが好ましい。
半導体微粒子は多くの色素を吸着できるように表面積の大きなものが好ましい。このため半導体層を支持体上に塗設した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。
本発明の光電変換素子は、一般式(1)で示される化合物を、色素として半導体層に吸着させた後、(1)の色素に物理的または化学的手段により化学反応を起こさせて、Xを吸着性基に変化させることを特徴とする半導体電極を用いた、光電変換材料である。
半導体層に色素を吸着させる方法としては、色素溶液中あるいは色素分散液中に半導体微粒子を含有する作用電極を浸漬する方法、色素溶液あるいは分散液を半導体層に塗布して吸着させる方法を用いることができる。前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等を用いることができ、後者の場合は、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等を用いることができる。
色素を吸着する際、縮合剤を併用してもよい。縮合剤は、無機物表面に物理的あるいは化学的に色素を結合すると思われる触媒的作用をするもの、または化学量論的に作用し、化学平衡を有利に移動させるものの何れであってもよい。更に、縮合助剤としてチオール、あるいはヒドロキシ化合物を添加してもよい。
色素を溶解、あるいは分散する溶媒は、水、メタノール、エタノール、あるいはイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいはジオキサン等のエーテル系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、あるいはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒を挙げることができ、これらは単独、あるいは2種以上の混合として用いることができる。
これらを用い、色素を吸着する際の温度としては、−50℃以上、200℃以下が好ましい。また、この吸着は攪拌しながら行っても構わない。攪拌する場合の方法としては、スターラー、ボールミル、ペイントコンディショナー、サンドミル、アトライター、ディスパーザー、あるいは超音波分散等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。吸着に要する時間は、5秒以上、1000時間以下が好ましく、10秒以上、500時間以下がより好ましく、1分以上、150時間が更に好ましい。
本発明では、一般式(1)で示される色素を吸着する際、ステロイド系化合物を併用しても構わない。
そのステロイド化合物の具体例としては、(S−1)〜(S−10)に示すものが挙げられる。ステロイド系化合物の量は、色素1質量部に対して0.01〜1000質量部が好ましく、0.1〜100質量部がより好ましい。
色素を吸着した後、あるいは色素と上記ステロイド系化合物を共吸着した後、t−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物、あるいはリン酸、リン酸エステル、アルキルリン酸、酢酸、プロピオン酸等の酸性化合物を含有する有機溶媒に浸漬処理しても構わない。
本発明の電荷移動層としては、酸化還元対を有機溶媒に溶解した電解液、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリックスに含浸したゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩、固体電解質、有機正孔輸送材料等を用いることができる。
本発明で使用される電解液は、電解質、溶媒、及び添加物から構成されることが好ましい。好ましい電解質はヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウム等の金属ヨウ化物−ヨウ素の組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物のヨウ素塩−ヨウ素の組み合わせ、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化カルシウム等の金属臭化物−臭素の組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物の臭素塩−臭素の組み合わせ、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等が挙げられる。上述の電解質は単独の組み合わせであっても混合であってもよい。また、電解質として、室温で溶融状態の溶融塩を用いることもできる。この溶融塩を用いた場合は、特に溶媒を用いなくても構わない。
電解液における電解質濃度は、0.05〜20Mが好ましく、0.1〜15Mが更に好ましい。電解液に用いる溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の非プロトン性極性溶媒等が好ましい。また、t−ブチルピリジン、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を併用しても構わない。
本発明では、電解質はポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化させることもできる。ポリマー添加によりゲル化させる場合の好ましいポリマーとしては、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン等を挙げることができる。オイルゲル化剤添加によりゲル化させる場合の好ましいゲル化剤としては、ジベンジルデン−D−ソルビトール、コレステロール誘導体、アミノ酸誘導体、トランス−(1R,2R)−1,2−シクロヘキサンジアミンのアルキルアミド誘導体、アルキル尿素誘導体、N−オクチル−D−グルコンアミドベンゾエート、双頭型アミノ酸誘導体、4級アンモニウム誘導体等を挙げることができる。
多官能モノマーによって重合する場合の好ましいモノマーとしては、ジビニルベンゼン、エチレングルコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等を挙げることができる。更に、アクリルアミド、メチルアクリレート等のアクリル酸やα−アルキルアクリル酸から誘導されるエステル類やアミド類、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル等のマレイン酸やフマル酸から誘導されるエステル類、ブタジエン、シクロペンタジエン等のジエン類、スチレン、p−クロロスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム等の芳香族ビニル化合物、ビニルエステル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、含窒素複素環を有するビニル化合物、4級アンモニウム塩を有するビニル化合物、N−ビニルホルムアミド、ビニルスルホン酸、ビニリデンフルオライド、ビニルアルキルエーテル類、N−フェニルマレイミド等の単官能モノマーを含有してもよい。モノマー全量に占める多官能性モノマーは、0.5〜70質量%が好ましく、1.0〜50質量%がより好ましい。
上述のモノマーは、ラジカル重合によって重合することができる。本発明で使用できるゲル電解質用モノマーは、加熱、光、電子線あるいは電気化学的にラジカル重合することができる。架橋高分子が加熱によって形成される場合に使用される重合開始剤は、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル−2,2′−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等のアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキシド等の過酸化物系開始剤等が好ましい。これらの重合開始剤の添加量は、モノマー総量に対して、0.01〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
ポリマーの架橋反応により電解質をゲル化させる場合、架橋反応に必要な反応性基を含有するポリマー及び架橋剤を併用することが望ましい。架橋可能な反応性基に好ましい例としては、ピリジン、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、トリアゾール、モルフォリン、ピペリジン、ピペラジン等の含窒素複素環を挙げることができ、好ましい架橋剤は、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロリド、イソシアネート等の窒素原子に対して求電子反応可能な2官能以上の試薬を挙げることができる。
無機固体化合物を電解質の代わりに用いる場合、ヨウ化銅、チオシアン化銅等をキャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解メッキ等の手法により電極内部に導入することができる。
また、本発明では電解質の代わりに有機電荷輸送物質を用いることができる。電荷輸送物質には正孔輸送物質と電子輸送物質がある。前者の例としては、例えば特公昭34−5466号公報等に示されているオキサジアゾール類、特公昭45−555号公報等に示されているトリフェニルメタン類、特公昭52−4188号公報等に示されているピラゾリン類、特公昭55−42380号公報等に示されているヒドラゾン類、特開昭56−123544号公報等に示されているオキサジアゾール類、特開昭54−58445号公報に示されているテトラアリールベンジジン類、特開昭58−65440号公報、あるいは特開昭60−98437号公報に示されているスチルベン類等を挙げることができる。その中でも、本発明に使用される電荷輸送物質としては、特開昭60−24553号公報、特開平2−96767号公報、特開平2−183260号公報、並びに特開平2−226160号公報に示されているヒドラゾン類、特開平2−51162号公報、並びに特開平3−75660号公報に示されているスチルベン類が特に好ましい。また、これらは単独、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
一方、電子輸送物質としては、例えばクロラニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン、あるいは1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド等がある。これらの電子輸送物質は単独、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。
また、更に増感効果を増大させる増感剤として、ある種の電子吸引性化合物を添加することもできる。この電子吸引性化合物としては例えば、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1−ニトロアントラキノン、1−クロロ−5−ニトロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、フェナントレンキノン等のキノン類、4−ニトロベンズアルデヒド等のアルデヒド類、9−ベンゾイルアントラセン、インダンジオン、3,5−ジニトロベンゾフェノン、あるいは3,3′,5,5′−テトラニトロベンゾフェノン等のケトン類、無水フタル酸、4−クロロナフタル酸無水物等の酸無水物、テレフタラルマロノニトリル、9−アントリルメチリデンマロノニトリル、4−ニトロベンザルマロノニトリル、あるいは4−(p−ニトロベンゾイルオキシ)ベンザルマロノニトリル等のシアノ化合物、3−ベンザルフタリド、3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)フタリド、あるいは3−(α−シアノ−p−ニトロベンザル)−4,5,6,7−テトラクロロフタリド等のフタリド類等を挙げることができる。
これらの電荷輸送材料を用いて電荷移動層を形成する場合、樹脂を併用しても構わない。樹脂を併用する場合にはポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアリレート樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独あるいは共重合体として2種以上を混合しても構わない。
電荷移動層の形成方法は大きく2通りの方法が挙げられる。1つは増感色素を担持した半導体層の上に、先に対極を貼り合わせ、その隙間に液状の電荷移動層を挟み込む方法、もう一つは、半導体層の上に直接電荷移動層を付与する方法である。後者の場合、電荷移動層の上に対極を新たに付与することになる。
前者の場合、電荷移動層の挟み込み方法として、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセスと常圧より低い圧力にして気相を液相に置換する真空プロセスが挙げられる。後者の場合、湿式の電荷移動層においては未乾燥のまま対極を付与し、エッジ部の液漏洩防止を施す必要がある。また、ゲル電解液の場合においては、湿式で塗布して重合等の方法により固体化する方法もある。その場合、乾燥、固定化した後に対極を付与してもよい。電解液の他、有機電荷輸送材料の溶解液やゲル電解質を付与する方法としては、半導体層への色素の付与と同様に、浸漬法、ローラ法、ディップ法、エアーナイフ法、エクストルージョン法、スライドホッパー法、ワイヤーバー法、スピン法、スプレー法、キャスト法、各種印刷法等が挙げられる。
対極は、前述の導電性支持体と同様に導電性層を有する支持体上に用いることができるが、導電性層自体が強度や密封性を十分有する場合は必ずしも支持体は必要ではない。対極に用いる材料の具体例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属、炭素系化合物、ITO、FTO等の導電性金属酸化物等が挙げられる。対極の厚さには特に制限はない。
色素を吸着させて増感させた半導体層に光が到達するためには、半導体層を保持した導電性支持体と対極の少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の光電変換素子においては、半導体層を保持した導電性支持体が透明であり、太陽光を導電性支持体側から入射させる方法が好ましい。この場合、対極には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、あるいは金属薄膜が好ましい。
対極の塗設については前述の通り、電荷移動層の上に付与する場合と半導体層上に付与する場合の2通りがある。何れの場合も対極材料の種類や電荷移動層の種類により、適宜、電荷移動層上または半導体層上に対極材料を塗布、ラミネート、蒸着、貼り合わせ等の手法により形成可能である。また、電荷移動層が固体の場合には、その上に直接、前述の導電性材料を塗布、蒸着、CVD等の手法で対極を形成することができる。
次に本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
(実施例1)
酸化チタン(日本アエロジル社製P−25)2g、アセチルアセトン0.2g、界面活性剤(アルドリッチ社製Triton X−100)0.3gを水6.5gと共にペイントコンディショナー(レッドデビル社製)で6時間分散処理を施した。更に、この分散液4.0gに対して濃硝酸0.2ml、エタノール0.4ml、ポリエチレングリコール(#20,000)1.2gを加えてペーストを作製した。このペーストをFTOガラス基板上に膜厚12μmになるように塗布し、室温で乾燥後、100℃で1時間、更に550℃で1時間焼成した。
酸化チタン(日本アエロジル社製P−25)2g、アセチルアセトン0.2g、界面活性剤(アルドリッチ社製Triton X−100)0.3gを水6.5gと共にペイントコンディショナー(レッドデビル社製)で6時間分散処理を施した。更に、この分散液4.0gに対して濃硝酸0.2ml、エタノール0.4ml、ポリエチレングリコール(#20,000)1.2gを加えてペーストを作製した。このペーストをFTOガラス基板上に膜厚12μmになるように塗布し、室温で乾燥後、100℃で1時間、更に550℃で1時間焼成した。
例示化合物(A−3)で示した色素をt−ブタノール/アセトニトリル(1/1)の混合溶液に溶解し、0.3mMの濃度の色素溶液を作製した。この色素溶液に、先に作製した半導体電極を室温で15時間浸漬して吸着処理を施した。その後、この半導体電極をオーブンにて120℃で5時間加熱し、(A−3)の置換基を吸着性基に変化させる操作を行った。処理後、この半導体電極を作用極とし、電解液はヨウ化リチウム0.1M、ヨウ素0.05M、ヨウ化1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウム0.5Mの3−メトキシアセトニトリル溶液、対極にはチタニウム板上に白金をスパッタリングしたものを使用して、両電極間に電解液を浸して光電変換素子を作製した。
この光電変換素子に、作用電極側から光源としてソーラーシミュレーター(AM1.5G、照射強度100mW/cm2)から発生した擬似太陽光を照射し、ソーラートロン社製電気化学測定装置(SI−1280B)を用いて評価を行った。その結果、開放電圧0.59V、短絡電流密度9.31mA/cm2、形状因子0.56、変換効率3.08%と良好な値を示した。
更に、半導体電極に対する増感色素の吸着安定性を評価した。本発明の例示化合物(A−3)をt−ブタノール/アセトニトリル(1/1)の混合溶液に溶解し、0.3mMの濃度の色素溶液を作製した。この色素溶液に、先に作製した半導体電極を室温で15時間浸漬して吸着処理を施した。次いでこの色素を吸着した半導体電極を電解質の溶媒である3−メトキシアセトニトリル中に浸漬し、遮光、密閉かつ室温下で10日間保存した。保存した後の半導体電極上における色素の担持状態を目視で観察した。その結果を表3に示す。
(実施例2〜13)
例示化合物(A−3)を、表1に示す例示化合物に変更した以外は実施例1と同様にして素子を作製し評価した。その結果を表1に示す。更に、(A−3)を、表1に示す例示化合物に変更した以外は実施例1と同様にして半導体電極に対する色素の吸着安定性を評価した。その結果を表3に示す。
例示化合物(A−3)を、表1に示す例示化合物に変更した以外は実施例1と同様にして素子を作製し評価した。その結果を表1に示す。更に、(A−3)を、表1に示す例示化合物に変更した以外は実施例1と同様にして半導体電極に対する色素の吸着安定性を評価した。その結果を表3に示す。
(実施例14)
例示化合物(D−4)で示した色素をt−ブタノール/アセトニトリル(1/1)の混合溶液に溶解し、0.3mMの濃度の色素溶液を作製した。この色素溶液に、ステロイド化合物(S−1)を0.6mMの濃度で溶解した。次いで、この色素溶液に、実施例1で作製した半導体電極を室温で15時間浸漬して吸着処理を施した。その後、この半導体電極をpH=1.50の塩酸−塩化カリウム緩衝液に60℃で15時間浸積し、(D−4)の置換基を吸着性基に変化させる操作を行った。処理後、この半導体電極を作用極とし、
電解液はヨウ化リチウム0.1M、ヨウ素0.05M、ヨウ化1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウム0.5Mの3−メトキシアセトニトリル溶液、対極にはチタニウム板上に白金をスパッタリングしたものを使用して、両電極間に電解液を浸して光電変換素子を作製した。
例示化合物(D−4)で示した色素をt−ブタノール/アセトニトリル(1/1)の混合溶液に溶解し、0.3mMの濃度の色素溶液を作製した。この色素溶液に、ステロイド化合物(S−1)を0.6mMの濃度で溶解した。次いで、この色素溶液に、実施例1で作製した半導体電極を室温で15時間浸漬して吸着処理を施した。その後、この半導体電極をpH=1.50の塩酸−塩化カリウム緩衝液に60℃で15時間浸積し、(D−4)の置換基を吸着性基に変化させる操作を行った。処理後、この半導体電極を作用極とし、
電解液はヨウ化リチウム0.1M、ヨウ素0.05M、ヨウ化1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリウム0.5Mの3−メトキシアセトニトリル溶液、対極にはチタニウム板上に白金をスパッタリングしたものを使用して、両電極間に電解液を浸して光電変換素子を作製した。
この光電変換素子に、作用電極側から光源としてソーラーシミュレーター(AM1.5G、照射強度100mW/cm2)から発生した擬似太陽光を照射し、ソーラートロン社製電気化学測定装置(SI−1280B)を用いて評価を行った。その結果、開放電圧0.58V、短絡電流密度8.39mA/cm2、形状因子0.67、変換効率3.26%と良好な値を示した。
(実施例15〜25)
例示化合物(D−4)を、表2に示す例示化合物に変更し、ステロイド化合物(S−1)を表2に示す例示化合物に変更した以外は実施例14と同様にして素子を作製し評価した。その結果を表2に示す。
例示化合物(D−4)を、表2に示す例示化合物に変更し、ステロイド化合物(S−1)を表2に示す例示化合物に変更した以外は実施例14と同様にして素子を作製し評価した。その結果を表2に示す。
(比較例1)
例示化合物(A−3)を、(R−1)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.41V、短絡電流密度5.8mA/cm2、形状因子0.52、変換効率1.24%と本発明の色素に比較して低い値であった。更に、(A−3)を(R−1)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、色素の半導体電極に対する吸着安定性を評価した。その結果を表3に示す。
例示化合物(A−3)を、(R−1)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.41V、短絡電流密度5.8mA/cm2、形状因子0.52、変換効率1.24%と本発明の色素に比較して低い値であった。更に、(A−3)を(R−1)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、色素の半導体電極に対する吸着安定性を評価した。その結果を表3に示す。
(比較例2)
例示化合物(A−3)を、(R−2)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.48V、短絡電流密度5.1mA/cm2、形状因子0.54、変換効率1.32%と本発明の色素に比較して低い値であった。更に、(A−3)を、(R−2)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、色素の半導体電極に対する吸着安定性を評価した。その結果を表3に示す。
例示化合物(A−3)を、(R−2)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.48V、短絡電流密度5.1mA/cm2、形状因子0.54、変換効率1.32%と本発明の色素に比較して低い値であった。更に、(A−3)を、(R−2)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、色素の半導体電極に対する吸着安定性を評価した。その結果を表3に示す。
(比較例3)
例示化合物(A−3)を、(R−3)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.55V、短絡電流密度5.7mA/cm2、形状因子0.59、変換効率1.85%と本発明の色素に比較して低い値であった。更に、(A−3)を、(R−3)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、色素の半導体電極に対する吸着安定性を評価した。その結果を表3に示す。
例示化合物(A−3)を、(R−3)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.55V、短絡電流密度5.7mA/cm2、形状因子0.59、変換効率1.85%と本発明の色素に比較して低い値であった。更に、(A−3)を、(R−3)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、色素の半導体電極に対する吸着安定性を評価した。その結果を表3に示す。
(比較例4)
例示化合物(A−3)を、(R−4)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.57V、短絡電流密度4.9mA/cm2、形状因子0.51、変換効率1.42%と本発明の色素に比較して低い値であった。更に、(A−3)を、(R−4)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、色素の半導体電極に対する吸着安定性を評価した。その結果を表3に示す。
例示化合物(A−3)を、(R−4)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして素子を作製し、評価した。その結果、開放電圧0.57V、短絡電流密度4.9mA/cm2、形状因子0.51、変換効率1.42%と本発明の色素に比較して低い値であった。更に、(A−3)を、(R−4)に示す化合物に変更した以外は実施例1と同様にして、色素の半導体電極に対する吸着安定性を評価した。その結果を表3に示す。
以上のように、本発明の一般式(1)の化合物を半導体層に吸着させた後、物理的または化学的手段により化学反応を起こさせて、より吸着性を高めたものを光電変換材料の増感色素として用いた場合、従来の材料と比較して、変換効率が高く、また吸着安定性に優れる等の、極めて優れた特性を有する事を見いだした。
本発明の活用例として、太陽電池等の光電変換素子に加えて、特定波長の光に感応する光センサー等が挙げられる。
Claims (6)
- 一般式(1)におけるXがカルボン酸エステル基であることを特徴とする請求項1記載の光電変換材料。
- 一般式(1)におけるSDがインドリン骨格を1個以上含む増感色素残基であることを特徴とする請求項1記載の光電変換材料。
- 導電性支持体と、その導電性表面上を被覆した半導体層と、その半導体層の表面に吸着した色素からなる半導体電極において、色素として前記一般式(1)でXが吸着性基に変化した化合物を少なくとも一種以上含有することを特徴とする半導体電極。
- 請求項4記載の半導体電極を用いることを特徴とする光電変換素子。
- 半導体層の表面に吸着させた前記一般式(1)の色素に、物理的または化学的手段により化学反応を起こさせて、Xを吸着性基に変化させることを特徴とする半導体電極の製造方法。
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-
2006
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