次に、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明のトナーは、少なくとも、有機溶媒中に、ポリエステル樹脂、活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体、着色剤及び離型剤を含有する組成物を溶解又は分散させることにより得られる溶液又は分散液を水系媒体中で分散させた後に、活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体を、活性水素基を有する化合物と反応させる(活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体を伸長反応及び/又は架橋反応させる)ことにより得られる。このとき、ポリエステル樹脂は、チタン原子を含む触媒を用いて、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物及びイソフタル酸を重合することにより得られる。なお、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物は、1molのビスフェノールAに対して、エチレンオキシドが2mol付加されていることが好ましい。また、有機溶媒は、活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体を、活性水素基を有する化合物と反応させた後又はさせながら、除去することが好ましく、有機溶媒を除去した後に、洗浄及び乾燥することが好ましい。
本発明において、ポリエステル樹脂は、重量平均分子量が3000〜10000であることが好ましく、ガラス転移温度が40〜60℃であることが好ましく、酸価が15〜30mgKOH/gであることが好ましい。これにより、低温定着性、耐オフセット性、耐熱保存性、帯電安定性等のトナー特性をより高品位にすることができる。
ポリエステル樹脂の酸価が30mgKOH/gを超えると、活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体の伸長反応及び/又は架橋反応が不十分となり、耐オフセット性が低下することがある。また、ポリエステル樹脂の酸価が15mgKOH/g未満では、活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体の伸長反応及び/又は架橋反応が進行しやすくなり、製造安定性が低下することがある。同様に、ポリエステル樹脂の重量平均分子量が3000未満である場合、ガラス転移温度が40℃未満である場合は、耐オフセット性や耐熱保存性が低下することがあり、重量平均分子量が10000を超える場合、ガラス転移温度が60℃を超える場合は、低温定着性が低下することがある。
本発明において、ポリエステル樹脂は、チタン系触媒を用いて、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物及びイソフタル酸を重合することにより得られるが、この場合に、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物を用いると、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物よりも反応性が劣るため、得られるポリエステル樹脂の分子量が低下する。また、テレフタル酸を用いると、得られるポリエステル樹脂の酢酸エチル等の溶媒に対する溶解性が低下し、トナーの母体粒子の造粒に支障を来す。
本発明において、活性水素基を有する化合物は、アミノ基を有することが好ましい。このような化合物としては、ジアミン、3価以上のポリアミン及び/又はアミノ基以外の活性水素基を有するアミン類が用いられる。このとき、アミノ基以外の活性水素基としては、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基等が挙げられ、アミノ基以外の活性水素基を有するアミン類としては、アミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸等が挙げられる。また、ジアミンとしては、芳香族ジアミン、脂環式ジアミン、脂肪族ジアミン等が挙げられる。なお、活性水素基を有する化合物が有するアミノ基は、ブロックされていてもよい。
本発明のトナーは、重量平均粒径(D4)が3〜8μmであることが好ましく、個数平均粒径(Dn)に対する重量平均粒径(D4)の比(D4/Dn)が1.00〜1.25であることが好ましく、1.10〜1.25がさらに好ましい。これにより、耐熱保存性、低温定着性及び耐オフセット性に優れるトナーが得られる。このとき、このようなトナーをフルカラー複写機等に用いると、光沢性に優れる画像が得られる。また、このようなトナーを二成分現像剤に用いると、長期間に亘るトナーの収支が行われても、現像剤中のトナーの粒径の変動を小さくすることができ、現像装置における長期間の攪拌においても、良好で安定した現像性が得られる。さらに、このようなトナーを一成分現像剤として用いると、トナーの収支が行われても、トナーの粒径の変動を小さくすることができる。さらに、現像ローラーへのトナーのフィルミングや、現像ローラー上のトナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着を抑制することができ、現像装置の長期間の使用(攪拌)においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
一般的には、トナーの粒径が小さい程、高解像で高画質の画像を形成するために有利であると言われているが、逆に、転写性やクリーニング性に対しては不利である。トナーの重量平均粒径が3μmより小さいと、二成分現像剤においては、現像装置における長期間の攪拌により、磁性キャリアの表面にトナーが融着して、磁性キャリアの帯電能力が低下することがある。さらに、このようなトナーを一成分現像剤として用いると、現像ローラーへのトナーのフィルミングや、現像ローラー上のトナーを薄層化するためのブレード等の部材へのトナーの融着が発生することがある。
また、トナーの重量平均粒径が8μmよりも大きい場合には、高解像で高画質の画像を形成することが難しくなると共に、現像剤中のトナーの収支が行われた場合に、トナーの粒径の変動が大きくなることがある。さらに、D4/Dnが1.25よりも大きい場合も同様である。
本発明において、トナーの重量平均粒径及び個数平均粒径は、粒度測定器マルチサイザーIII(ベックマンコールター社製)を用いて、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフトBeckman Coulter Mutisizer 3 Version3.51を用いて解析することにより得られる。以下に、具体的な測定方法を示す。ガラス製100mlビーカーに、界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩のネオゲンSC−A(第一工業製薬社製)の10重量%水溶液を0.5ml及びトナー0.5gを添加して、ミクロスパーテルでかき混ぜる。次に、イオン交換水80mlを添加した後、超音波分散器W−113MK−II(本多電子社製)で10分間分散させ、得られたトナー分散液を、マルチサイザーIIIを用いて測定する。このとき、測定用溶液としては、アイソトンIII(ベックマンコールター製)を用いる。なお、測定時には、マルチサイザーIIIが示す濃度が8±2%になるように、トナー分散液を滴下する。これにより、得られる粒径の誤差を小さくすることができる。
本発明のトナーは、ガラス転移点が40〜70℃であることが好ましい。ガラス転移点が40℃未満では、耐熱保存性が不十分になることがあり、70℃を超えると、低温定着性が低下することがある。
本発明のトナーは、平均円形度が0.90〜1.00であることが好ましい。これにより、適正な濃度の再現性のある高精細な画像を形成することができる。平均円形度が0.90未満であると、球形から離れた不定形の形状となるので、良好な転写性やチリのない高画質画像が得られないことがある。なお、平均円形度の計測方法としては、トナーを含む懸濁液を平板上の撮像部検知帯に通過させ、CCDカメラで光学的にトナーを検知し、解析する光学的検知帯の手法を用いることができる。平均円形度は、この手法で得られる投影面積と面積が等しい円の周囲長を実在粒子の周囲長で除した値である。この値は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2100(シスメックス社製)を用いて計測し、解析ソフトFPIA−2100 Data Processing Program for FPIA version00−10を用いて解析することができる。具体的には、ガラス製100mlビーカーに、界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩のネオゲンSC−A(第一工業製薬社製)の10重量%水溶液を0.1〜0.5ml及びトナー0.1〜0.5gを添加して、ミクロスパーテルでかき混ぜる。次に、イオン交換水80mlを添加した後、超音波分散器W−113MK−II(本多電子社製)で3分間分散させ、得られたトナー分散液を、FPIA−2100を用いて測定する。なお、平均円形度の再現性の点から、トナー分散液の濃度は、5000〜15000個/μlとすることが好ましい。トナー分散液の濃度を制御するためには、界面活性剤及びトナーの添加量を調整する必要がある。界面活性剤の添加量は、トナーの粒径測定の場合も同様であるが、トナーの疎水性により必要量が異なり、添加量が多いと、泡によるノイズが発生することがあり、少ないと、トナーの分散が不十分となることがある。また、トナーの添加量は、粒径により異なり、粒径が小さい場合は、少なくする必要があり、粒径が大きい場合は、多くする必要がある。トナーの重量平均粒径が3〜8μmの場合、トナーの添加量を0.1〜0.5gとすることにより、トナー分散液の濃度を5000〜15000個/μlとすることができる。
本発明のトナーは、酸価が1〜30mgKOH/gであることが好ましい。酸価が30mgKOH/gを超えると、活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体の伸長又は架橋反応が不十分となり、耐高温オフセット性が低下することがあり、1mgKOH/g未満では、活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体の伸長又は架橋反応が進行しやすくなり、製造安定性に問題が生じることがある。
本発明において、有機溶媒は、トナー組成物を溶解又は分散させることが可能な溶媒であれば、特に限定されないが、除去が容易であることから、沸点が150℃未満であることが好ましい。このような有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、単独又は2種以上組み合せて用いることができる。トナー組成物100重量部に対する有機溶媒の使用量は、通常、40〜300重量部であり、60〜140重量部が好ましく、80〜120重量部がさらに好ましい。
本発明において、着色剤としては、公知の染料及び顔料を使用することができ、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、p−クロロ−o−ニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等が挙げられ、単独又は2種以上組み合せて用いることができる。
トナー中の着色剤の含有量は、通常、1〜15重量%であり、3〜10重量%が好ましい。
本発明において、着色剤は、樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチに用いられる樹脂又はマスターバッチと共に混練される樹脂としては、変性又は未変性ポリエステル樹脂;ポリスチレン、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられ、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
マスターバッチは、高せん断力をかけて樹脂と着色剤を混合混練することにより得られる。このとき、着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶媒を用いることができる。また、着色剤及び水を含有する水性ペーストを樹脂及び有機溶媒と共に混合混練し、着色剤を樹脂側に移行させ、水と有機溶媒を除去する、いわゆるフラッシング法も着色剤のウエットケーキをそのまま用いることができるため、好ましく用いられる。なお、混合混練する際には、3本ロールミル等の高せん断分散装置を用いることができる。
本発明において、離型剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワッックス;パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素;カルボニル基を有するワックス等が挙げられる。中でも、カルボニル基を有するワックスが好ましい。
カルボニル基を有するワックスとしては、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート等のポリアルカン酸エステル;トリメリット酸トリステアリル、マレイン酸ジステアリル等のポリアルカノールエステル;エチレンジアミンジベヘニルアミド等のポリアルカン酸アミド;トリメリット酸トリステアリルアミド等のポリアルキルアミド;ジステアリルケトン等のジアルキルケトン等が挙げられる。中でも、ポリアルカン酸エステルが好ましい。
本発明において、離型剤の融点は、通常、40〜160℃であり、50〜120℃が好ましく、60〜90℃がさらに好ましい。融点が40℃未満であると、耐熱保存性が低下することがあり、160℃を超えると、低温における定着時にコールドオフセットが発生することがある。
また、離型剤の溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsであることが好ましく、10〜1000cpsがさらに好ましい。溶融粘度が1000cpsを超えると、耐オフセット性及び低温定着性を向上させる効果が小さくなることがある。
トナー中の離型剤の含有量は、通常、0〜40重量%であり、3〜30重量%が好ましい。
本発明において、トナーは、必要に応じて、帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩(フッ素変性4級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、リン又はリン化合物、タングステン又はタングステン化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩等が挙げられる。具体的には、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体のLR−147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他、スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等を有する高分子化合物が挙げられる。
本発明において、帯電制御剤の使用量は、結着樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含むトナーの製造方法等によって決定され、一義的に限定されないが、結着樹脂に対して、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.2〜5重量%がさらに好ましい。帯電制御剤の使用量が10重量%を超える場合には、トナーの帯電性が大きくなり、主帯電制御剤の効果を減退させることがある。さらに、現像ローラーとの静電的引力が増大し、現像剤の流動性が低下したり、画像濃度が低下したりすることがある。帯電制御剤は、マスターバッチ及び樹脂と共に、溶融混練した後、溶解分散させてもよいし、有機溶媒中に、溶解又は分散させる際に添加してもよいし、トナーの母体粒子の表面に固定化させてもよい。
本発明のトナーは、流動性、現像性、帯電性を補助するために、外添剤として、無機粒子を含有することが好ましい。無機粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、5〜500nmが特に好ましい。また、無機粒子のBET法による比表面積は、20〜500m2/gであることが好ましい。無機粒子の使用量は、トナーの母体粒子に対して、0.01〜5重量%であることが好ましく、0.01〜2重量%が特に好ましい。
無機粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。
この他の外添剤としては、例えば、ソープフリー乳化重合、懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ナイロン等の重縮合系、熱硬化性樹脂等の高分子粒子が挙げられる。
このような外添剤は、表面処理を行うと、表面の疎水性を向上させることができ、高湿度下においても、トナーの流動性や帯電性の低下を抑制することができる。表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。
本発明のトナーは、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去しやすくするために、クリーニング性向上剤を含有することができる。クリーニング性向上剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等のソープフリー乳化重合等によって製造された高分子粒子等が挙げられる。高分子粒子は、体積平均粒径が0.01〜1μmであることが好ましく、粒度分布が狭いことがさらに好ましい。
本発明において、トナーは、以下の方法で製造することができるが、これらに限定されることはない。
まず、有機溶媒中に、ポリエステル樹脂、活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体、着色剤及び離型剤を含有する組成物を溶解又は分散させることにより得られる溶液又は分散液を水系媒体中で分散させた後に、活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体を伸長反応及び/又は架橋反応させることにより、トナーの母体粒子の分散液が得られる。
水系媒体は、水単独でもよいが、水と混和可能な溶媒を併用することもできる。このような溶媒としては、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、アセトン、メチルエチルケトン等の低級ケトン類等が挙げられる。
トナーの母体粒子は、水性相で、活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体を、活性水素基を有する化合物と反応させることにより得られる。水性相に、ポリエステル樹脂と、活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体を含有する分散体を安定に形成する方法としては、有機溶媒に溶解又は分散させたポリエステル樹脂と、活性水素基と反応可能な官能基を有する重合体を水性相に加えて、せん断力により分散させる方法等が挙げられる。他のトナー組成物(以下、トナー原料と呼ぶ)である活性水素基を有する化合物、着色剤、着色剤マスターバッチ、離型剤、帯電制御剤、結着樹脂等は、水性相で分散体を形成する際に混合してもよいが、予めトナー原料を混合して、有機溶媒に溶解又は分散させた後、水性相に加えて分散させることが好ましい。また、本発明においては、トナー原料は、必ずしも、水性相でトナーの母体粒子を形成する時に混合しておく必要はなく、トナーの母体粒子を形成させた後、添加してもよい。例えば、着色剤を含まないトナーの母体粒子を形成した後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
分散方法は、特に限定されないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波等の公知の方法を適用することができる。分散体の平均粒径を2〜20μmにするためには、高速せん断式が好ましい。高速せん断式の分散機を使用する場合、回転数は特に限定されないが、通常、1000〜30000rpmであり、5000〜20000rpmが好ましい。分散時間は、特に限定されないが、バッチ方式の場合は、通常、0.1〜5分である。分散時の温度(加圧下)は、通常、0〜150℃であり、40〜98℃が好ましい。温度が0℃未満であると、トナー組成物の粘度が高くなり、分散が困難になることがある。
水系媒体の使用量は、トナー組成物100重量部に対して、通常、50〜2000重量部であり、100〜1000重量部が好ましい。水系媒体の使用量が50重量部未満であると、トナー組成物の分散状態が悪くなることがある。また、水系媒体の使用量が20000重量部を超えると、経済的でない。
本発明において、水系媒体は、必要に応じて、分散剤を含有することが好ましい。これにより、粒度分布を狭くすると共に、分散安定性を向上させることができる。
分散剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等の陰イオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型の陽イオン性界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の4級アンモニウム塩型の陽イオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等の非イオン性界面活性剤、アラニン、ドデシルビス(アミノエチル)グリシン、ビス(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等の両性界面活性剤が挙げられる。
また、分散剤として、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いると、添加量を少なくすることができるため、好ましい。フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−(ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ)−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−(ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ)−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及びその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等が挙げられる。市販品としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102、(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF100、F150(ネオス社製)等が挙げられる。
また、フルオロアルキル基を有するカチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級又は3級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。市販品としては、サーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキン工業社製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
また、分散剤としては、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の水に難溶の無機粒子を用いることができる。
さらに、分散剤としては、樹脂粒子を用いてもよい。樹脂粒子としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の酸類;アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、グリセリンモノアクリレート、グリセリンモノメタクリレート、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等の水酸基を有する(メタ)アクリル系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル等のビニルアルコール又はビニルアルコールとのエーテル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルアルコールとカルボキシル基を有する化合物のエステル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド及びこれらのメチロール化合物;アクリル酸塩化物、メタクリル酸塩化物等の酸塩化物類;ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン等の窒素原子又はその複素環を有するもの;等の単独又は共重合体;ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステル等のポリオキシエチレン系;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース類等が挙げられる。
なお、分散剤として、リン酸カルシウム等の酸又はアルカリに溶解可能な化合物を用いる場合は、例えば、リン酸カルシウムを塩酸等の酸を用いて溶解させた後、水洗する等の方法によって、トナーの母体粒子からリン酸カルシウムを除去することができる。その他に、酵素による分解等によっても除去することができる。
分散剤を使用する場合には、トナーの母体粒子の表面に分散剤が残存する状態で、トナーとして、使用することもできるが、活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体を伸長反応及び/又は架橋反応させた後に、洗浄除去する方がトナーの帯電性の面から好ましい。
活性水素基と反応することが可能な官能基を有する重合体の伸長反応及び/又は架橋反応の反応時間は、重合体が有する活性水素基と反応することが可能な官能基と、活性水素基の反応性により適宜選択されるが、通常、10分〜40時間であり、2〜24時間が好ましい。また、反応温度は、通常、0〜150℃であり、40〜98℃が好ましい。なお、この反応をさせる際には、必要に応じて、公知の触媒を使用することができる。
トナーの母体粒子の分散液から有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に昇温し、液滴中の有機溶媒を蒸発除去する方法を用いることができる。また、トナーの母体粒子の分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、液滴中の有機溶媒を除去してトナーの母体粒子を形成すると共に、分散剤を蒸発除去することも可能である。乾燥雰囲気としては、空気、窒素、炭酸ガス、燃焼ガス等の加熱気体が挙げられ、特に、使用される有機溶媒の沸点以上の温度に加熱された各種気流が一般に用いられる。スプレードライヤー、ベルトドライヤー、ロータリーキルン等を用いることにより、短時間の処理で目的とする品質が得られる。
本発明において、トナーの母体粒子の分散液の粒度分布が広く、その粒度分布を保って洗浄、乾燥処理が行われた場合、所望の粒度分布に分級することにより、粒度分布を調整することができる。乾燥処理前に分級する方法としては、サイクロン、デカンター、遠心分離等が挙げられる。これにより、微粒子を取り除くことができる。また、乾燥処理後にトナーの母体粒子を分級してもよいが、乾燥処理前に分級する方が効率の面で好ましい。
本発明において、分散剤は、トナーの母体粒子の分散液から除去することが好ましいが、分級と同時に行うことが好ましい。
本発明のトナーは、トナーの母体粒子と、離型剤の粒子、帯電制御剤の粒子、流動化剤の粒子、着色剤の粒子等の異種粒子を混合することにより、製造することができる。このとき、得られた混合物に機械的衝撃力を与えることにより、トナーの母体粒子の表面に異種粒子を固定化、融合化させることができ、トナーの表面からの異種粒子の脱離を抑制することができる。
具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士又は複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法等が挙げられる。装置としては、オングミル(ホソカワミクロン社製)、I式ミル(日本ニューマチック社製)を改造して、粉砕エアー圧カを下げた装置、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、自動乳鉢等が挙げられる。
なお、本発明においては、トナーの母体粒子をそのまま、トナーとして使用することができる。
本発明のトナーは、磁性キャリアと混合することにより、二成分系現像剤として、用いることができ、現像剤中のトナーの含有量は、磁性キャリア100重量部に対して、1〜10重量部であることが好ましい。
磁性キャリアとしては、平均粒径20〜200μmの鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉等の公知のものを使用することができ、表面に樹脂が被覆されていてもよい。
被覆樹脂としては、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等のアミノ系樹脂;アクリル樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニル及びポリビニリデン系樹脂;ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリエチレン;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンとアクリル単量体の共重合体、フッ化ビニリデンとフッ化ビニルの共重合体、テトラフルオロエチレンとフッ化ビニリデンと非フッ化単量体とのターポリマー等のフッ素系樹脂;シリコーン樹脂等が挙げられる。
また、被覆樹脂中には、必要に応じて、導電粉等が含まれていてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等が挙げられる。なお、導電粉の平均粒径は、1μm以下であることが好ましい。平均粒径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になることがある。
また、本発明のトナーは、磁性キャリアを使用しない磁性一成分現像剤又は非磁性一成分現像剤として、用いることができる。
以下、実施例により、本発明をさらに説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、部は、重量部を意味する。
(実施例1)
撹拌棒及び温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸のエチレンオキシド付加物の硫酸エステルのナトリウム塩エレミノールRS−30(三洋化成工業社製)11部、スチレン83部、メタクリル酸83部、アクリル酸ブチル110部及び過硫酸アンモニウム1部を仕込み、400回転/分で15分間撹拌し、白色の乳濁液を得た。次に、系内の温度を75℃まで昇温し、5時間反応させた。さらに、1重量%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で5時間熟成し、ビニル系樹脂(スチレン、メタクリル酸、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸のエチレンオキシド付加物の硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液(樹脂粒子分散液)を得た。樹脂粒子分散液をLA−920で測定することにより得られる樹脂粒子の体積平均粒径は、105nmであった。樹脂粒子分散液の一部を乾燥して樹脂分を単離したところ、樹脂分のガラス転移温度は、59℃であり、重量平均分子量は15万であった。
水990部、樹脂粒子分散液83部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.5重量%水溶液エレミノールMON−7(三洋化成工業社製)37部及び酢酸エチル90部を混合撹拌することにより、乳白色の水系媒体を得た。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物712部、イソフタル酸208部、アジピン酸46部及びチタン系触媒2部を仕込み、230℃、常圧で8時間反応させた後、10〜15mmHgで5時聞反応させた。次に、反応容器に無水トリメリット酸44部を入れ、180℃、常圧で2時間反応させることにより、ポリエステル樹脂1を得た。ポリエステル樹脂1は、重量平均分子量が5500であり、ガラス転移温度が45℃であり、酸価が25mgKOH/gであった。
水1200部、DBP吸油量が42ml/100mg、pHが9.5のカーボンブラックPrintex35(デクサ社製)540部及び1200部のポリエステル樹脂1を、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を用いて混合した。次に、得られた混合物を、2本ロールを用いて150℃で30分混練した後、圧延冷却し、パルペライザーで粉砕することにより、マスターバッチを得た。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、プロピレングリコール463部、テレフタル酸657部、無水トリメリット酸96部及びチタンテトラブトキシド2部を仕込み、230℃、常圧で8時間反応させ、さらに、10〜15mmHgで5時間反応させることにより、中間体を得た。中間体は、重量平均分子量が28000であり、ガラス転移温度が36℃であり、酸価が0.5mgKOH/gであり、水酸基価が16.5mgKOH/gであった。
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、中間体250部、イソホロンジイソシアネート18部及び酢酸エチル250部を仕込み、100℃で5時間反応させることにより、プレポリマーを得た。プレポリマーのイソシアネート基の含有量は、0.61%であった。
撹拌棒及び温度計をセットした容器に、378部のポリエステル樹脂1、カルナバワックス110部、サリチル酸金属錯体E−84(オリエント化学工業社製)22部及び酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下、80℃に昇温し、80℃で5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次に、容器に、マスターバッチ500部及び酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合することにより、原料混合液を得た。
原料混合液1324部を容器に移し、ビーズミルのウルトラビスコミル(アイメックス社製)を用いて、送液速度を1kg/時、ディスクの周速度を6m/秒、粒径0.5mmのジルコニアビーズの充填率を80体積%、3パスする条件で、カーボンブラック及びカルナバワックスを分散させた。次に、ポリエステル樹脂1の65重量%酢酸エチル溶液1324部加え、上記条件のビーズミルで1パスすることにより、原料分散液を得た。原料分散液を130℃で30分間乾燥することにより得られる固形分濃度は、50重量%であった。
原料分散液749部、プレポリマー111部及びイソホロンジアミン1.3部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化社製)を用いて5000rpmで1分間混合した後、容器に水系媒体1200部を加え、TKホモミキサーを用いて、13000rpmで20分間混合することにより、乳化スラリーを得た。撹拌機及び温度計をセットした容器に、乳化スラリーを投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で4時間熟成を行うことにより、分散スラリーを得た。マルチサイザーIIで分散スラリーを測定すると、重量平均粒径が5.13μm、個数平均粒径が4.51μmであった。
分散スラリー100部を減圧濾過した後、濾過ケーキ1にイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。次に、得られた濾過ケーキ2に蒸留水100部を加え、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで30分間混合した後、減圧濾過した。次に、得られた濾過ケーキ3に10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過した。さらに、得られた濾過ケーキ4にイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーを用いて、12000rpmで10分間混合した後、濾過する操作を2回行うことにより、濾過ケーキ5を得た。循風乾燥機を用いて、濾過ケーキ5を45℃で48時間乾燥し、目開き75μmのメッシュで篩うことにより、トナーを得た。
(実施例2)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物712部、イソフタル酸205部、アジピン酸51部及びチタン系触媒2部を仕込み、230℃、常圧で8時間反応させた後、10〜15mmHgで8時聞反応させた。次に、反応容器に無水トリメリット酸44部を入れ、180℃、常圧で2時間反応させることにより、ポリエステル樹脂2を得た。ポリエステル樹脂2は、重量平均分子量が6700であり、ガラス転移温度が45℃であり、酸価が25mgKOH/gであった。
ポリエステル樹脂1の代わりに、ポリエステル樹脂2を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
(実施例3)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物712部、イソフタル酸210部、アジピン酸43部及びチタン系触媒2部を仕込み、230℃、常圧で8時間反応させた後、10〜15mmHgで3時聞反応させた。次に、反応容器に無水トリメリット酸44部を入れ、180℃、常圧で2時間反応させることにより、ポリエステル樹脂3を得た。ポリエステル樹脂3は、重量平均分子量が4500であり、ガラス転移温度が45℃であり、酸価が25mgKOH/gであった。
ポリエステル樹脂1の代わりに、ポリエステル樹脂3を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
(実施例4)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物712部、イソフタル酸208部、アジピン酸46部及びチタン系触媒2部を仕込み、230℃、常圧で8時間反応させた後、10〜15mmHgで5時聞反応させた。次に、反応容器に無水トリメリット酸36.5部を入れ、180℃、常圧で2時間反応させることにより、ポリエステル樹脂4を得た。ポリエステル樹脂4は、重量平均分子量が5500であり、ガラス転移温度が45℃であり、酸価が21mgKOH/gであった。
ポリエステル樹脂1の代わりに、ポリエステル樹脂4を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
(実施例5)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物712部、イソフタル酸208部、アジピン酸46部及びチタン系触媒2部を仕込み、230℃、常圧で8時間反応させた後、10〜15mmHgで5時聞反応させた。次に、反応容器に無水トリメリット酸27.5部を入れ、180℃、常圧で2時間反応させることにより、ポリエステル樹脂5を得た。ポリエステル樹脂5は、重量平均分子量が5500であり、ガラス転移温度が45℃であり、酸価が16mgKOH/gであった。
ポリエステル樹脂1の代わりに、ポリエステル樹脂5を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
(比較例1)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物213部、ビスフェノールAのプロピレンオキシド2モル付加物544部、イソフタル酸208部、アジピン酸46部及びチタン系触媒2部を仕込み、230℃、常圧で8時間反応させた後、10〜15mmHgで5時聞反応させた。次に、反応容器に無水トリメリット酸44部を入れ、180℃、常圧で2時間反応させることにより、ポリエステル樹脂6を得た。ポリエステル樹脂6は、重量平均分子量が3300であり、ガラス転移温度が42℃であり、酸価が25mgKOH/gであった。
ポリエステル樹脂1の代わりに、ポリエステル樹脂6を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得た。
(比較例2)
冷却管、撹拌機及び窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物712部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部及びチタン系触媒2部を仕込み、230℃、常圧で8時間反応させた後、10〜15mmHgで5時聞反応させた。次に、反応容器に無水トリメリット酸44部を入れ、180℃、常圧で2時間反応させることにより、ポリエステル樹脂7を得た。ポリエステル樹脂7は、重量平均分子量が5500であり、ガラス転移温度が45℃であり、酸価が25mgKOH/gであった。
ポリエステル樹脂1の代わりに、ポリエステル樹脂7を用いた以外は、実施例1と同様にして、トナーを得ようとしたが、原料混合液を調製する際に、ポリエステル樹脂7が溶解せず、トナーが得られなかった。
(評価方法)
・イソシアネート基の含有量
イソシアネート基の含有量は、JIS K1603に規定の方法を用いて測定した。
・酸価
酸価は、JIS K0070に規定の方法を用いて測定した。但し、サンプルが溶解しない場合は、溶媒にジオキサン、THF等の溶媒を用いることができる。
・トナーの粒径
トナーの重量平均粒径(D4)及び個数平均粒径(Dn)は、粒度測定器マルチサイザーIII(ベックマンコールター社製)を用いて、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフトBeckman Coulter Mutisizer 3 Version3.51を用いて解析することにより得られる。以下に、具体的な測定方法を示す。ガラス製100mlビーカーに、界面活性剤として、アルキルベンゼンスルホン酸塩のネオゲンSC−A(第一工業製薬社製)の10重量%水溶液を0.5ml及びトナー0.5gを添加して、ミクロスパーテルでかき混ぜる。次に、イオン交換水80mlを添加した後、超音波分散器W−113MK−II(本多電子社製)で10分間分散させ、得られたトナー分散液を、マルチサイザーIIIを用いて測定した。このとき、測定用溶液としては、アイソトンIII(ベックマンコールター製)を用いた。なお、測定時には、マルチサイザーIIIが示す濃度が8±2%になるように、トナー分散液を滴下した。
チャンネルとしては、2.00μm以上2.52μm未満、2.52μm以上3.17μm未満、3.17μm以上4.00μm未満、4.00μm以上5.04μm未満、5.04μm以上6.35μm未満、6.35μm以上8.00μm未満、8.00μm以上10.08μm未満、10.08μm以上12.70μm未満、12.70μm以上16.00μm未満、16.00μm以上20.20μm未満、20.20μm以上25.40μm未満、25.40μm以上32.00μm未満及び32.00μm以上40.30μm未満の13チャンネルを使用し、粒径が2.00〜40.30μmの粒子を対象とした。
・分子量
樹脂の分子量は、GPC(gel permeation chromatography)を用いて、以下の条件で測定した。
装置:GPC−150C(ウォーターズ社製)
カラム:KF801〜807(ショウデックス社製)
温度:40℃
溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
流速:1.0ml/分
試料:0.05〜0.6重量%の試料を0.1ml注入
以上の条件で測定した樹脂の分子量分布から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用してトナーの重量平均分子量を算出した。なお、イソシアネート基を有するプレポリマーの分子量を測定する場合、イソシアネート基に対して、3倍等量のジブチルアミンを添加することにより、イソシアネート基を封止したサンプルを調製し、GPC測定に用いた。
・ガラス転移温度Tg
Tgは、TG−DSCシステムTAS−100(理学電機社製)を用いて、測定した。
まず、試料約10mgをアルミ製試料容器に入れ、それをホルダユニットに載せ、電気炉中にセットする。次に、室温から昇温速度10℃/分で150℃まで加熱した後、150℃で10分間放置し、室温まで試料を冷却して10分間放置し、窒素雰囲気下で再度150℃まで昇温速度10℃/分で加熱することにより、DSC測定を行った。Tgは、TAS−100システム中の解析システムを用いて、Tg近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点から算出した。
・耐熱保存性
トナーを50℃で8時間保管した後、42メッシュの篩で2分間篩い、金網上の残存率を測定することにより、耐熱保存性を評価した。なお、金網上の残存率が10%未満であるものを◎、10以上20%未満であるものを○、20%以上30%未満であるものを△、30%以上であるものを×として、判定した。
・定着性
imagio Neo 450(リコー社製)を用いて、普通紙及び厚紙の転写紙タイプ6200(リコー社製)及び複写印刷用紙<135>(NBSリコー社製)にベタ画像で、1.0±0.1mg/cm2のトナーが現像されるように調整を行って、普通紙でオフセットの発生しない定着上限温度及び厚紙で定着下限温度を測定した。なお、定着下限温度とは、現像された画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる定着ロールの温度である。
・帯電量
平均粒径が50μmのシリコーン樹脂被覆フェライトキャリア100部及びトナー4部をステンレス製ポットの内容積の3割まで入れ、100rpmで15秒間及び10分間攪拌した後の帯電量(帯電量1及び2)を、ブローオフ法により求めた。
(評価結果)
トナーの評価結果を表1に示す。