JP2007247896A - 高温超伝導磁気ベアリング - Google Patents

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Abstract


【課題】超伝導体の位置を、冷却位置から動作位置へ変更することのできる磁気ベアリングを提供する。
【解決手段】本発明は磁気ベアリングに関し、この磁気ベアリングでは、回転シャフト(3)が固定子(1)内に浮遊状態にて磁気的に保持されており、固定子は超伝導体(5)を備え、シャフトは、セグメント化された永久磁石の励磁システム10に取り付けられており、1または複数のセグメントは相互に対して移動可能である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、高温超伝導体を有する固定子エレメント内の、例えばシャフトのような回転エレメントであって、磁力によって非接触浮遊状態に保持される回転エレメントを備える磁気ベアリングに関する。
遷移温度Tcよりも高い温度で、永久磁石の場に高温超伝導体を配置すると、磁束が高温超伝導体を貫通する。この場合、超伝導体をTc未満の温度にまで冷却すると、磁束の一部が、超伝導体材料内に閉じ込められたままの状態となる。場の変化による位置の変化が生じると、永久磁石によって超伝導体内で遮蔽電流が誘導され、これにより位置の変化が相殺される。この場合に生じる力は反発力または引力のいずれでもあり得るが、冷却位置からの変位を相殺するように方向付けられる。
この原理を利用することで、非接触型構造、および、これによって本質的に無摩擦の自己安定型磁気ベアリングを構成できる。このようなベアリングは、励磁システムとしての永久磁石と高温超伝導体とを含む。
特許文献1に汎用ベアリングが示されている。一般に、このようなベアリングは第1ベアリング部を備えており、この第1ベアリングはシャフトにしっかりと取り付けられ、また、固定的に配置された第2のベアリング部によって包囲されており、ここで、第2ベアリング部は固定子と連結しており、第1ベアリング部と第2ベアリング部の間にはベアリング隙間が形成されている。第1ベアリング部は、複数の永久磁石の配置を含み、これらは交互に磁化され、永久磁石どうしの間に強磁性エレメントが設けられている。第2ベアリング部は超伝導体構造と、超伝導体構造を超伝導体材料のTc未満の温度にまで冷却する冷却装置とを含んでいる。ここで、第1ベアリング部は、回転子シャフト上に軸方向に並んで配置される環状ディスク型の多数の永久磁石で形成されている。これらのエレメントは、シャフトの軸方向に見て磁性が交互となるように磁化されている。隣接した永久磁石どうしの間のそれぞれには比較的薄い強磁性中間エレメントが配置されている。これらの強磁性中間エレメントは、磁気線または隣接する永久磁石の力を磁気的に濃縮するように機能するため、各中間エレメントの、ベアリング隙間に面した側部に特に強い磁場が生成される。永久磁石エレメントで構成された磁石配置を有する回転子本体の第1ベアリング部は、固定子の、固定位置の第2ベアリング部によって包囲されている。この第2ベアリング部は超伝導体構造を含んでいる。
上述の配置では、超伝導体を有する固定子エレメントは、Tc未満に冷却されると、回転子エレメントを本質的に同心的に励磁システムによって包囲し、これにより生成された磁力によって回転子エレメントが所定の位置に自由浮遊の状態で保持される。しかし、冷却後の回転子エレメントの実際の位置は、一般的に冷却位置からいわゆる動作位置へ回転子エレメントを変位させる回転子エレメント自体の重量と、使用荷重に応じて変動する。
回転子エレメントのベアリングを、安定し、固い(stiff)ものとするためには、超伝導体と励磁システムの間で作用する磁力の強度を可能な限り高くすることが望ましい。
概して、冷却中における(冷却位置にある際の)超伝導体とその励磁システムの間の距離によって、得られる力−距離特性は異なる。この距離が比較的長く(ゼロ場冷却 Zero Field Cooling=ZFC)、冷却中、超伝導体に磁場が実質的に全く作用しない場合には、接近に従って段階的に増加する反発力が得られる。冷却中相互から離れるように動き、この距離が短い(最大場冷却 Maximum Field Cooling=MFC)場合には、まず最大になるまで増加し続け、その後減少する引力が得られる。
上述の力−距離特性を考慮すると、回転子エレメントのベアリングを安定し、固いものとするためには、冷却位置から変位さなければならない。
特許文献2には、円筒形の超伝導体を備えた固定子エレメントと、励磁システムとしての永久磁石が同軸的に取り付けられているシャフト形の固定子とを備え、また、動作位置において、回転子エレメントが固定子エレメントに対して同軸的に配置されている磁気ベアリングが開示されている。冷却位置から動作位置へ変位できるようにするために、円筒形の超伝導体は少なくとも2つの円形セグメント形状の部分シェルに分割されており、これらの部分シェルは、適切な駆動機構(アクチュエ−タ)によって、相互に対して、また、半径方向に変位することが可能である。部分シェルを移動させることで、超伝導体と励磁システムの間の半径方向距離を変更できる。ここで、冷却位置において、2つの部分シェルは相互から離されるため、冷却位置における半径方向距離は動作位置における半径方向距離よりも長くなる。
上述したように、超伝導体をそのTc未満に冷却することが必要であるが、Tcは、例えば、よく知られているYBaCuO超伝導体の場合70Kである。そのため、超伝導体を有する固定子を、断熱性に非常に優れた、しっかりと密閉できる冷却装置、例えばデュワ−瓶の中に収納する必要がある。通常、耐真空性の極低温室を用い、この内部において、超伝導体を有する固定子エレメントが真空密閉された冷却ジャケット内に収納され、回転子エレメントが極低温装置の暖かい内部穴内に配置される。
独国特許第4436831号(DE4436831C2) 国際公開第02/06688号パンフレット(WO02/06688A1)
しかし、しっかりと密閉された冷却室内の可動固定子配置に関していくつかの問題がある。第一に、部分的な超伝導体シェルを駆動するための駆動機構は、非常に低温でも高い信頼性を持って稼動されなければならない。さらに、この機構は、暖かい状態と冷たい状態の間の大きな温度差への耐性を有する必要がある。例えば、駆動機構の材料は、非常に低い温度に冷却された場合にも高い寸法安定性を維持できなければない。すなわち、熱膨張係数が適切に低くなくてはならない。
この要件により、低温で動作する駆動機構の製造コストが高くなり、また、特定の材料しか使用できなくなる。さらに、このような機械応力がかかる可動機構は、修理を要する状況が生じやすいという固有の特徴を有する。しかし、欠陥が生じた場合には、高温超伝導体材料を有する固定子を室温に戻す必要があるだけでなく、さらに、密閉された冷却室を開き、欠陥修復後に冷却室を再び密閉し、Tcの低温にまで下げなければならず、これによりいかなる修理もコスト高で面倒なものになってしまうという欠点がある。
あるいは、駆動機構が冷却室の外に配置される場合には、低温の内部と暖かい外部との間を接続する必要があり、これもまた欠点となる。
特開2003−214429号公報に関連した、2003/11/5付の公開特許英文抄録vol.2003、no.11には、永久磁石を環状配置した磁気ベアリングを開示している。この環状永久磁石は、円周方向において複数のセグメントに分割されている。回転されると、これらのセグメントが遠心力によって補強リングの内面と接触することで、セグメントは、確実に隣接する磁石の側部との間に空間のない、したがって磁石が相互に接触したリング形状を形成する。これにより、永久磁石をリング形状に維持することによって、また、回転中の磁場の円周方向の分布を一様にすることによって、軸損失なく回転シャフトを支持する課題が解決される。ベアリング力をアクティブ化する必要はなく、また、永久磁石のセグメントを能動的な方法で移動させる移動手段も全く設けられておらず、セグメントの移動は、動作中の遠心力によって受動的に行われる。
米国特許第4、956、571号(US4956571)は、永久磁石で包囲された回転シャフトを有する超伝導磁気ベアリングを開示している。この永久磁石は、回転シャフト上に縦軸方向に配置された上側の円錐エレメントと下側の円錐エレメントで構成されている。上側の円錐エレメントと下側の円錐エレメントの間には、円錐エレメントの対向した面と面の間の軸方向の空間を調整するためのスペ−サ手段が配置されている。この上側の円錐エレメントと下側の円錐エレメントの対向した面どうしの間の軸方向の空間によって、超伝導体材料と永久磁石の間に、回転シャフトが摩擦や疲労なく自由に回転できるようにするための隙間が画定される。
永久磁石に対する超伝導体の位置を、冷却位置から動作位置へ変更することに関する開示はこれまでに存在していない。特に、この位置変更を実行するための移動手段を示すものはない。
本発明によれば、上述の問題は、固定的に配置された固定子エレメントと、上記固定子の超伝導体を励磁するための少なくとも1つの永久磁石を環状に配置されるように有する回転子エレメントとを備える磁気ベアリングであって、環状に配置された永久磁石は、固定子の超伝導体に対して移動可能な少なくとも2つのセグメントで構成されている磁気ベアリングによって解決される。
すなわち、本発明によれば、固定子エレメント内の回転子エレメントの非接触型ベアリングが得られ、ここで、固定子エレメントは超伝導体を備え、回転子エレメントを包囲しており、回転子エレメントはシャフトのような回転エレメントを備えており、回転エレメントの周囲の回転子エレメント内には、永久磁石の励磁システムが環状に配置されており、この環状配置された励磁システムは、その円周に沿って複数のセグメントに分割されており、これらのセグメントの少なくとも一部は互いに対して移動可能であり、これらのセグメントを移動させるための移動手段が設けられている。
本発明によれば、セグメントは、環状形状をした励磁システムの円周に沿って切断した扇型部分である。さらに、本発明によれば、磁気ベアリングは、1または複数のセグメントを能動的に移動させることができる移動手段を有する。
ベアリング力をアクティブ化するために、超伝導体を励磁システムに対して冷却位置から動作位置へ位置変更することが必要である。
すなわち、冷却中における、励磁システムに対する超伝導体の位置は、動作中における励磁システムに対する超伝導体エレメントの位置と異なっていなければならない。本発明によれば、この位置変更は、移動手段によって1または複数のセグメントを移動させることによって行なわれる。
本発明によれば、固定子の超伝導体は固定的に配置されているため、固定子エレメントを、しっかりと密閉された極低温装置の隔離された冷却室内に容易に収納することができる。このとき、冷却時の温度差に耐え得る駆動機構を設ける必要はなく、また、機械的に応力がかかることで修理回数が多くなる部品を設ける必要もないため、駆動機構の不具合によって、磁気ベアリングの動作がタイミング悪く妨害されることを回避することができる。
以下では、より良く説明するために、特定の実施形態の図面を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
図1は、冷却装置16のハウジングの一部を除去した、磁気ベアリングの一般的な設計図を示す。
この磁気ベアリングは全体的に円筒形をしている。固定子エレメント1は、円筒形の超伝導体5と、超伝導体5の外面に設けられた熱伝導部材6から構成される。この部分を超伝導体5と共に、冷却装置の壁内部に向かって支持する支持部19が設けられている。
ここでは、回転子エレメント2は水平シャフト3を備えており、水平シャフト3は、交互に永久磁石17と磁束収集極18とを有する励磁システム10によって包囲されている。固定子エレメント1は冷却装置16のジャケット内に収納され、回転子エレメント2は、室温に維持された冷却装置16の暖かい内部穴内に収納されている。
図2、図3の超伝導体構成部品とその励磁システムとの間における冷却距離に磁力の強度が依存することを説明するために、2つの別種のシステムの力−距離曲線の形状を示す。図では、x座標は、超伝導体構成部品とその励磁システムとの間の距離を示し、点0は、冷却中の永久磁石の位置を示し、y座標は接近中に生成される磁力を示す。
測定には、ロードセルを有する、鉄−ネオジム−ボロン(FeNdB)からなる永久磁石を使用する。
図2の曲線はゼロ場冷却の力の経路を示すが、この力は、励磁システム、すなわち永久磁石が超伝導体に接近するに従って指数関数的に増加している。
図3では、曲線の経路は、この場合は3mmのベアリング隙間を設けた実際の磁気ベアリングにおける実際の状況をより厳密に反映している。つまり、点0において、超伝導体と永久磁石の間の距離は実際には6mmであり、点3では、ベアリング隙間の大きさに一致する距離、すなわち3mmが残る。
図2、図3では、上側の曲線は接近する際の力の経路を示し、下側の曲線は離れてゆく際の力の経路を示す。この違いは磁石のヒステリシスによって生じる。
これら曲線の形状は、最大強度の磁力を得るためには、冷却位置を動作位置から十分に離間させる必要があり、さらに、動作位置において超伝導体と励磁システムの間の距離を可能な限り短くする必要があることを示している。
図4、図5は、動作位置(図4)と、冷却位置(図5)にある、本発明による磁気ベアリングの実施形態の断面図を示す。以下では、図4、図5を参照しながら、本発明の磁気ベアリングの設計原理についてより詳細に説明する。
図4に示す磁気ベアリングは、原則として中空円筒形の全体形状を有し、回転子エレメント2を同軸的に包囲する固定子エレメント1を備えている。回転子エレメント2は、やはり中空円筒形の励磁システム内に配置された回転エレメント3(ここでは、非磁気材料からなる機械のシャフト)を備えている。図に示す特定の実施形態では、固定子1は円筒形の超伝導体5で構成されている。超伝導体5の外面には、複数のスペ−サ7によって冷却装置の壁に対して支持される熱伝導部材6が設けられている。スペ−サ7どうしの間には空き領域8が設けられている。
熱伝導部材6は、超伝導体5から熱を持ち去るよう機能するため、熱伝導性の非常に高い材料、例えば銅からなることが好ましい。
図6は、図4、図5に示した磁気ベアリングの1/4区間の拡大図を示す。
固定子エレメント1はデュワ−瓶のような冷却装置のジャケット内に収納されており、また、固定子エレメント1の壁が、固定子エレメント1の外周と内周を包囲する黒線にて示されている。
超伝導体5の内面に断熱材料層9を設けて、冷却装置の暖かい内部を、固定子エレメント1を有する冷却されたジャケットから遮断できるようにすることが好ましい。適切な断熱材料は、本技術分野において一般的に知られている。
固定子エレメント1の冷却は適切な冷凍機械によって行う。
例えば、冷凍機械を熱伝導部材6に接続することで、超伝導体を間接的に冷却することができる。冷凍機械は図示されていないが、周知の冷凍機械と同様のものである。例えば、極低温冷却器(cryogenic coolers)を使用できる。
部材6の外面を断熱材料層(不図示)でさらに被服することで、断熱性を向上させることができる。
超伝導体5は、ベアリング用途に適するものとして周知の任意の高温超伝導体材料で構成できる。この用途に適した種類の超伝導体材料の1例として、酸化セラミック高温超伝導体が挙げられる。一般的な例は、Y−Ae−CuO、(Y、Re)−Ae−Cu−O、Bi−Ae−Cu−O、(Bi、Pb)−Ae−Cu−Oおよび(Tl、Pb)−(Ae、Y)−Cu−Oに基づく酸化セラミック超伝導体を含む。上記の化学式では、Aeは少なくとも1つのアルカリ土類元素、特にBa、Ca、Srを意味する。Reは、少なくとも1つの希土類元素、特にLa、Lu、Sc、Sm、Nd、Ybを意味する。
特に適した超伝導体は、表示YBCO−123、YBCO−211として知られているものであり、ここで、数字123、211の組み合わせは、元素Y、Ba、Cuの化学量的比率を意味している。表示BSCCO−2212、BSCCO−2223として知られるものも同様であり、この場合、数字2212と2223の組み合わせは、元素Bi、Sr、Ca、Cuの化学量論的比率であり、特に、Biの一部をPbで代用したものが用いられる。
特に好ましいのは、たとえば、独国特許出願公開第3830092号(DE-A-3830092)、欧州特許出願公開第0451532号(EP-A-0451532)、欧州特許出願公開第0462409号(EP-A-0462409)、欧州特許出願公開第0477493号(EP-A-0477493)に開示されている溶融鋳造方法、特に遠心鋳造法を用いて製造した超伝導体である。上記の文献は、明示的に参照される。
円筒形の超伝導体5は、一体型に構成されたもの、または複数のセグメントをまとめて取り付けて、環状体を形成したものであってよい。セグメントをまとめたものの場合には、これらのセグメントは台形であることが好ましい。また、各セグメントが全て同一の寸法であることが好ましい。
スペ−サ7は、固定された位置にある冷却装置のジャケット内の固定子配置を安定させるよう機能する。固定子配置が安定して固定位置におかれる限り、スペ−サ7の個数と形状は特に重要でない。スペ−サ7は、熱を取り入れないために、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)のような熱伝導性の低い材料からなるべきである。効果的な断熱を提供するために、スペ−サ7同士の間の空き領域8を真空化することが好ましい。さらに、この空き領域8の少なくとも一部を、少なくとも1つの断熱手段によって充填することも可能である。周知のいかなる断熱手段も、この目的に適切に適用できる。
適切な断熱材料の例には、断熱フォーム(insulation foam)、真空断熱材(super insulation)、断熱フレ−ク(insulating flakes)、ガラス繊維がある。
本発明に適した、円筒形磁気ベアリングの励磁システム10の設計と材料は、一般的に知られているものである。励磁システム10は、鉄のような強磁性材料からなるエレメントによって互いに離間された複数の永久磁石を備えることができる。適切な永久磁石材料には、例えば、ネオジム−鉄−ボロン(NdFeB)またはサマリウム−−コバルト−−合金(SmCo)がある。
永久磁石、および中間エレメントは、環状ディスクの形状であってもよく、シャフト3を包囲している円筒形の支持体11上に並んで配置されてもよい。円筒形の支持体11は、鋼鉄のような非磁気材料からなることが好ましい。永久磁石と中間部材によるスタックの、軸方向の最初と最後の部材は中間部材であることが好ましい。
図5に示すように、励磁システム10と支持体11の環状配置は、円周に沿って複数のセグメントに分割されており、これらのセグメントは相互に対して半径方向に移動することができる。これらのセグメントは鏡像対称的(a mirror-image symmetry)であってよい。すなわち、図5に示すように、各セグメントは鏡像を形成するためのもう片方のセグメントと対向している。
図5の実施形態では、相互に対して半径方向に移動することができる、2つの大セグメント12a、12bと、2つの小セグメント13a、13bと、を設けている。この配置を冷却位置にするために、2つの小セグメント13a、13bを、シャフト3と支持体11の間の空き領域内の、或る位置に達するまで、シャフト3方向に向かってシフトする。すなわち、2つの小セグメント13a、13bは、2つの大セグメント12a、12bが相互に向かってシフトできるような位置に移される。これにより、超伝導体5と励起システム10の間の距離を、磁力をアクティブ化しながら変更できる。
代替形によれば、励磁システムは、3つのセグメントに分割することができ、3つのセグメントのサイズは同一であっても異なってもよい。
上述で言及したように、シャフトの動作位置は磁力だけに依存するのでなく、シャフト自体の重量および作業負荷にも依存する。セグメントどうしの半径距離を適宜に選択することで、シャフト3の望ましい動作位置を調整することができる。すなわち、冷却位置におけるセグメントに対して、種々の半径距離を選択することができる。
一般的に、セグメントの個数、大きさ、形状は、それぞれの磁気ベアリングの全体的な構造を考慮した上での必要性に応じて選択される。例えば、超伝導体と励磁システムの間の距離は冷却位置において可能な限り長くすべきこと、また、最適な固さが得られるようにすることを考慮すべきである。
あるいは、動作位置にある場合には、超伝導体5と励磁システム10の間の距離を可能な限り短くすべきであり、ベアリング隙間4を可能な限り短くすることが好ましい。
さらに、1または複数のセグメントを、1または複数の他の可動セグメントに対して固定的に配置することができる。一般的に、励磁システムの個別の設計は、具体的な用途の需要に依存して、また、望ましいベアリング力とシステムの硬さを考慮して変更することができる。
セグメントを移動させるために、励磁システムを一般的なアクチュエ−タに接続することができる。アクチュエ−タの種類に関する制限は特にない。
励磁システムのセグメントを半径方向に移動させるために移動手段を設ける。例えば、このような移動手段は、旋盤チャックまたはクランピングチャックの原理に従って構成することができる。これ以外の任意の適切な構成を使用することも可能である。
励磁システムを構成するセグメントの移動経路の外側境界は、CFRPのような熱伝導性の低い材料の管14によって画定される。同時に、この管14は、本発明の磁気ベアリングのアセンブリ全体を機械的に安定させるため、回転数の高い場合に特に有利である。
図7(a)、図7(b)に、本発明による移動可能な励磁システムの特定の構成例を示す。図7(a)は励磁システムが冷却位置にある状態、図7bは動作位置にある状態を示す。
この例によれば、上側の大セグメント12bは静止しており、回転エレメント3に固定され、また、下側の大セグメント12aと、左右の小セグメント13a、13bとは、それぞれ回転エレメント3に対して半径方向に移動できるよう設計されている。
図7(a)は、冷却位置における各セグメントの位置を示す。励磁システム10と支持体11を有する上側の大セグメント12bは回転エレメント3に固定される。上側の大セグメント12bは静止している。つまり、上側の大セグメント12bは、アクティブ化のために励磁システム10のセグメントが相互に向かって移動する工程には寄与しない。
下側の大セグメント12aは、上側の大セグメント12bに対して半径方向に移動できる。
下側の大セグメント12aと同様に左右の小セグメント13a、13bのそれぞれは、回転エレメント3に対して半径方向に移動できる。
上側のおよび下側の大セグメント12a、12bは、下側の大セグメント12aが上側の大セグメント12bに向かって移動し、かつ、小セグメント13a、13bを収容するのに十分な寸法の凹部を確保できる嵌め合い設計がされている。
この特定の例では、可動セグメント12a、13a、13bの移動は、移動手段として機能するクランピングボルトや調整ネジのようなネジといった適切な調整手段15によって実行され、この際、ネジを調整することで対応するセグメントを移動させる。可動セグメント12a、13a、13bは、このようなネジを介して、静止した上側の大セグメント12bにそれぞれ接続しており、一方のセグメントはネジ頭を収容する凹部を備え、このセグメントに対応する部分は、各ネジのネジ山つき部分をねじ込むことができるネジ山付きの凹部、たとえば雌ネジ切りされた穴を備えている。
図7の実施形態では、小セグメント13a、13bを移動させるためのネジ頭が小セグメントの適切な収納部内に配置され、また、対応するネジ山が、静止した上側の大セグメント12bの支持体11内配置され、下側の大セグメント12aを移動させるためのネジ頭が上側の大セグメント12bの適切な凹部内に配置され、また、対応するネジ山が、下側の大セグメント12a内に配置される。
ネジ頭を固定するために、ナットまたは他の適切な手段を設けることができる。手またはアクチュエ−タでネジ15を回転させることで、セグメント12a、13a、13bを移動させることができる。
アクティブ化のため、励磁システム10が円を形成するように、可動セグメント12a、13a、13bが図7bに示す動作位置に向かって移動させられる。
全体構成の安定性を向上させるには、セグメント12a、12b、13a、13bを補強管14に対して押圧することが好ましく、さらに安定性を向上させるために、小セグメント13a、13bを大セグメント12a、12bの間にクランプ留めして圧縮応力を生成させることができる。
励磁システムのセグメントを移動させる上述の例は、説明のみを目的としたものである。何らの限定もなく、また、セグメントを移動させる他の適切な手段を本発明に使用することも可能である。
さらに、(支持部材11を含む)励磁システム10の別のセグメント、および別の可動セグメントを使用することもできる。
本発明の、励磁システムを有する磁気ベアリングによれば、励磁システムが極低温装置の断熱された暖かい穴内に設けられているため、回転密閉(rotating sealings)は省略できる。また、極低温装置の断熱性の高い真空性や長期密閉や、欠陥が生じた場合のベアリングおよび回転子の簡単な交換が可能である。さらに、本発明を用いれば、励磁システムをシャフト上に摩擦接続することができるため、共回転のダンピング(co-rotating dumping)を設ける必要がない。
超伝導体磁気ベアリングの一般的な設計図である。 本発明による磁気ベアリングの力−距離曲線を示す図である。 本発明による別の実施形態の力−距離曲線を示す図である。 動作位置にある、図3の実施形態の断面図である。 冷却位置にある本発明による磁気ベアリングの断面図である。 図4、図5の実施形態のセグメントの1/4を拡大した断面図である。 本発明による磁気ベアリングの回転子エレメントの断面図である。 本発明による磁気ベアリングの回転子エレメントの断面図である。
符号の説明
1 固定子エレメント
2 回転子エレメント
3 回転エレメント
4 ベアリング隙間
5 超伝導体
6 熱伝導部材
7 スペ−サ
8 空き領域
9 断熱層
10 励磁システム
11 支持体
12a 大セグメント(下側)
12b 大セグメント(上側)
13a 小セグメント(右)
13b 小セグメント(左)
14 管
15 調整手段
16 冷却装置
17 永久磁石
18 磁束収集極
19 支持部

Claims (8)

  1. 固定子エレメント(1)と回転子エレメント(2)を備え、回転エレメント(3)を浮遊状態に支持するための磁気ベアリングであって、
    前記固定子エレメント(1)は、前記回転子エレメント(2)を包囲し、固定的に配置された超伝導体(5)を備えており、
    前記回転エレメント(3)周囲の前記回転子エレメント(2)の内部に、環状永久磁石の励磁システム(10)が環状に配置されており、
    環状に配置された前記励磁システム(10)は、その円周に沿って、複数のセグメント(12a、12b;13a、13b)に分割され、この内の1または複数のセグメント(12a、12b;13a、13b)は相互に対して移動することができ、
    前記セグメント(12a、12b;13a、13b)を移動させるための移動手段が設けられている、磁気ベアリング。
  2. 前記セグメント(12a、12b;13a、13b)は相互に対して鏡像対称的に配置されている、請求項1に記載の磁気ベアリング。
  3. 前記セグメント(12a、12b;13a、13b)は半径方向に移動可能である、請求項1または2のいずれかに記載の磁気ベアリング。
  4. 前記励磁システム(10)は前記シャフト(3)に摩擦接続にて取り付けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の磁気ベアリング。
  5. 前記励磁システム(10)を包囲し、前記1または複数の可動セグメント(12a、12b;13a、13b)の移動経路の境界を定める管(14)が設けられている、請求項1から4のいずれか1項に記載の磁気ベアリング。
  6. 前記励磁システム(10)の前記可動セグメント(12a、12b;13a、13b)を移動させるために、調整手段(15)が設けられている、請求項1から5のいずれか1項に記載の磁気ベアリング。
  7. 前記調整手段(15)は、クランピングボルトと調整ネジからなるグル−プより選択される、請求項6に記載の磁気ベアリング。
  8. 少なくとも1つのセグメント(12b)は静止しており、これ以外のセグメント(12a、13a、13b)は、調整手段(15)によって、前記回転エレメント(3)に対して半径方向へ移動することができる、請求項1から7のいずれか1項に記載の磁気ベアリング。
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