JP2007246970A - 移動型炉床炉の操業方法 - Google Patents

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夏生 石渡
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Abstract

【課題】鉄含有物と固体還元材を主原料として、移動型炉床炉によって還元鉄を得るにあたり、りん濃度の低い還元鉄を得るのに有利な炉の操業方法を提案することにある。
【解決手段】移動型炉床炉の炉内を移動する移動床上に、鉄含有物、固体還元剤および造滓材を含む混合原料を装入し、その移動する炉内で該混合原料を加熱し、還元し、溶融させて、メタル分とスラグ分とからなる還元生成物を得たのち、スラグ分を除去することにより、還元鉄の回収を行う際に、前記移動型炉床炉内の温度が1450℃以上である帯域における還元生成物の滞在時間を5分以内にすると共に、スラグとメタルの分離をこの帯域において行う移動型炉床炉の操業方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、還元鉄の製造に供する移動型炉床炉の操業方法に関し、とくに低いりん濃度の還元鉄を製造するのに有効な操業方法を提案する。
粗鋼を製造する方法の1つとして電気炉によって行う方法がある。この方法は、原料を電気エネルギーによって加熱し、溶解して、場合によってはさらに精錬して、所望の鋼とする技術である。また、この方法は、原料として主にスクラップを使用している。しかし、近年、そのスクラップの需給が逼迫していることから、スクラップに換えて還元鉄を使用する提案がある。
その還元鉄は、例えば、特許文献1に開示されるような方法によって製造することができる。この方法は、移動型炉床炉(加熱炉)の炉内を水平方向に移動する炉床(移動床)上に、主として鉄鉱石と固体還元剤とを積載し、上方からの輻射伝熱によってこの鉄鉱石等の原料を加熱し、還元し、さらには該移動床上に生成する還元生成物を溶融することにより、還元鉄を製造する方法であり、移動型炉床炉法とも呼ばれている。
この方法に用いられる移動型炉床炉とは、この炉内に配設される炉床(移動床)が水平方向に移動する過程で、原料を加熱して還元する炉であり、環状の移動床が、図1に示すように回転する形式をとるのが普通であり、それ故に、回転炉床炉とも呼ばれている。
例えば、代表的な移動型炉床炉は、図1に示すように、予熱帯10a、還元帯10b、溶融帯10cおよび冷却帯10dに区画された環状型加熱炉の加熱炉炉体10内に、回転しながら連続的に移動する移動床11を配設してなるものである。そして、この炉は、前記移動床11上に、例えば、鉄鉱石(炭材内装ペレットが用いられることもある)と固体還元剤からなる混合原料12を積載して加熱し、還元し、その後、少なくとも一度は溶融させるようになっている。かかる移動床11は、通常、耐火物でライニングされた炉体10によって囲われているが、特許文献1に開示されているように、炉床耐火物保護のために、混合原料層とは別に、床敷材となる炭材の層が設けられる場合がある。また、この炉体10の上部にはバーナー13が配設され、このバーナー13を熱源として、移動床11上の鉄鉱石等が還元される。なお、図1において、14は原料を移動床11上に装入する装入装置、15は還元物を排出する排出装置である。また、炉体10内の雰囲気温度は還元帯では通常、1300℃程度に調節されているが、溶融帯では1500℃前後の高温に制御される。
鉄含有物、例えば鉄鉱石は、その産地によって差はあるものの、多くの脈石成分を含むのが普通である。また、固体還元剤の代表例である石炭、石炭チャー、コークスにもまた灰分等が含まれている。そのために、還元操作のみを行う移動型炉床炉法では、製品である脈石分や該還元剤中の灰分が還元鉄中に不可避に混入するという問題がある。しかし、特許文献1に開示されているように、移動型炉床炉法の場合、還元後の原料を溶融させることができるから、メタルから脈石分であるスラグを分離することができる。ただし、単にそれだけで、鉄鉱石中の脈石成分の除去が完全にできるわけではなく、高品質の還元鉄を製造できることにはならない。
その理由は、特許文献1に開示の方法は、メタル分とスラグ分とは最終的には分離することになるから、脈石分の除去は可能である。しかし、C、Si、P、Sなどがなお還元鉄中に残存するからである。もし、これらの成分が電気炉の操業で十分に除去できなければ、例えば、りん濃度が高いと、鋼の熱間加工性低下や溶接性低下などを招いて、鋼材品質の低下につながり、最近の高品質化の流れに反する結果となる。
表1および表2に、鉄鉱石と石炭の代表的な組成を示す。一般に、鉄鉱石中のりん濃度は高く、精錬して得られる還元鉄中のりん(P)分は、ほとんどはこの鉄鉱石に由来するものである。一方、鉄鉱石中に含まれるりん(P)は、鉱石種によっても大きなばらつきがあるが、近年、りん濃度の低い良質な鉄鉱石は枯渇してきており、鉱石中のりん(P)分と鉄(Fe)分との比が0.3%を超えるような高りん鉱石も使用されるようになってきた。従って、還元鉄中のりん濃度の上昇は、今後、避けられないものとなることから、近年、りん濃度の低減技術の開発が強く望まれている。
Figure 2007246970
Figure 2007246970
高炉−転炉法における鋼中のりん濃度は、一般に、次のように考えられている。それは、溶融鉄とスラグとが共存する状況においては、溶融鉄中のりん(P)はスラグ−メタル間反応に応じて分配され、溶融鉄中のPは、下記反応式によって酸化され、スラグ中に移行することが知られている。
2[P]+5FeO → (P25)+5Fe
([P]溶銑中のリン、(P)はスラグ中のリンをそれぞれ示す。)
このことは、非特許文献1にも記載されているように、りん(P)はスラグが、(1)高FeO濃度であるほど、(2)高塩基度であるほど、(3)温度が低いほど、酸化反応が進行してスラグ中に移行しやすく、溶銑中のりん濃度[P]とスラグ中のりん濃度(P)との分配比Lp((P)/[P])が増加することが知られている。そして、この分配比に与える塩基度あるいは酸化性の影響については、例えば、特許文献2などに開示されている。また、このりん(P)の溶銑からスラグへの移行反応は、スラグ−メタル界面における物質移動の反応であるため、スラグ−メタル界面積が大きいほど、速く進行することも知られている。
なお、高炉の操業では、溶銑が高温高還元雰囲気中に長く滞留し、その後、炉外に出銑されるため、溶銑中にりんが移行しやすい条件下となり、原料中のりん成分のうち、ほぼ100mass%が溶銑中に移行する。
従って、高炉法によって生産された溶銑は、使用した鉄鉱石中のりん濃度によって決まるのが普通である。そのために、高りん濃度の鉄鉱石については、転炉にて鋼を溶製する前に、予め脱りん処理を行うことが多い。
その脱りん処理は、
(1)酸化鉄および酸素を溶銑内に吹き込むこと(高酸化性)、
(2)CaO、CaCO3などを吹き込む(高塩基度)こと、
等によって溶銑中のりんをスラグ中に移行させ、りん(P)を多く含むスラグを除滓し、メタルと完全に分離する方法で行っている。
特開平11−172312号公報 特開2002−339009号公報 金属科学入門シリーズ 第2巻 鉄鋼製錬(日本金属学会発行) P94
このように銑鉄中のりん濃度の低下に対して様々な提案がなされている中、前記移動型炉床炉法においては、これまで脱りんについての検討が行われてこなかった。例えば、移動型炉床炉法についての特許文献2には、還元鉄とスラグのりん濃度についての報告はあるが、りんの分配率を制御することについての提案ではない。電炉等で使用する場合、もし、還元鉄のりん濃度が高い場合、(1)還元鉄の使用量を制限する、(2)低級鋼の生産を行う、(3)別途、脱りんの方法を採用するという方法で対処しなければならない。しかし、こうした方法は、還元鉄の用途を制限することになる。
そこで、本発明の目的は、鉄含有物と固体還元材を主原料として、移動型炉床炉によって還元鉄を製造するにあたり、その還元鉄のりん濃度を低下させるのに有利な移動型炉床炉の操業方法を提案することにある。とくに、本発明は、高りん濃度の鉄鉱石を原料として低りん濃度の還元鉄を製造するのに有利な操業方法を提案する。
従来技術が抱えている上述した課題を克服でき、上記目的の実現に有効な方法について鋭意研究を重ねた結果、発明者らは、還元鉄が溶融し始める段階の操業条件を適宜に制御することが、還元鉄中への復りん現象を抑えて低りん化させるには有効であるとの知見を得て、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、移動型炉床炉の炉内を移動する移動床上に、鉄含有物、固体還元剤および造滓材を含む混合原料を装入し、その移動する炉内で該混合原料を加熱し、還元し、溶融させて、メタル分とスラグ分とからなる還元生成物を得たのち、スラグ分を除去することにより、還元鉄の回収を行う際に、前記移動型炉床炉内の温度が1450℃以上である帯域における還元生成物の滞在時間を5分以内にすると共に、スラグとメタルの分離をこの帯域において行うことを特徴とする移動型炉床炉の操業方法である。
ここで、メタルとスラグの分離とは、加熱中にスラグとメタルが混在した状態から均一なメタル相とスラグ相に分離することを意味している。このときの単一メタルの質量は10g以上である。このように鉱石に比べて大粒径の粒とすることで、単位堆積(もしくは質量)あたりの界面積を低下させ、りんが移行できないようにすることができる。
また、本発明においては、広いスラグ−メタル界面を形成して低りん化を促進するために、前記混合原料中の鉄含有物として、平均粒径を1mm以下の鉄鉱石を用いることが有効である。それは、後でも詳述するように、溶融の初期に生成する小粒径メタルとFeOを高濃度に含有するスラグとの界面積が大きくなり、脱リン反応が促進されるからである。
また、本発明にかかる操業方法では、特に混合原料中の鉄鉱石は、りん分と鉄分との比が0.05%以上2.0%以下である高りん鉄鉱石を用いる場合に採用することが、好ましい。
本発明に係る操業方法によれば、還元鉄中のりん濃度を確実に低下させることができるようになる。従って、本発明によれば、りん濃度の低い還元鉄を製造することができるようになると共に、安価な高りん含有鉄鉱石の使用も可能になると同時に、低りん濃度還元鉄を低いコストで製造できるようになる。
発明者らは、移動型炉床炉におけるスラグ−メタル間のりん(P)分配に関して研究し、還元鉄中のりん濃度をより効果的に低下させる方法について検討した。
一般に、移動型炉床炉の操業では、初期の還元は固体−固体間で行われ、鉄の還元率が90〜95%程度に達すると同時に全体が溶融し始め、やがてスラグとメタルとに分離することが知られている(ISIJ lnternational Vol.41(2001)ppS17−21)。図2(a)、(b)は、鉄の還元率とその還元率のときに発生するスラグ中のFeO濃度(a)および金属化率(b)との関係を示すが、還元率95%でのスラグ中のFeO濃度は25mass%となり、脱りん反応を起こすのに十分な高酸化性雰囲気であることがわかる。このスラグ中のFeO濃度は、時間が経過するほどに低下する傾向がある。なぜなら、上記文献にも開示されているように、溶融時に残存しているFeOは、その後次第に、周囲に残る炭材によって順次還元されてしまい、やがてFeO濃度は10mass%程度にまで低下してしまうからである。
その後、還元が進み、炉温および還元生成物の温度が1350℃になると、該還元生成物は溶融を開始し、1450℃に達して、全体が溶融するものと考えられる。この温度は、最終的な炉温である1450℃〜1500℃よりもやや低い温度である。従って、還元生成物が溶融する初期段階では、スラグ中のFeOが高くかつ温度も低いため、炉外へ排出される時よりもりん(P)はスラグ側に多く分配される環境であると考えられる。
また、移動型炉床炉においては、鉄鉱石粉が好適に用いられるが、粉状の鉄鉱石表面は装入原料全体が溶融する前に先行して溶融し、個々の粒子がそれぞれスラグとメタルとに分離し、各々がスラグ−メタル界面を形成しているものと考えられる。一般に、スラグ−メタル間でのりんの移行反応は界面積が大きいほど速く進行することが知られている。即ち、単位体積あたりの粒子の表面積は、粒径の逆数に比例し、粒径が小さくなるほど急激に界面積が広がるため、スラグ−メタル間でのりん(P)の移行反応が活発に行われるようになる。
このことから、鉄鉱石、石炭、造滓剤等からなる混合原料を、炉内で急速に加熱し、還元し、さらには溶融させたのち、スラグを分離してメタル(還元鉄)を得る場合、この還元鉄が溶融する初期段階において、(1)高FeOスラグが存在し、(2)温度が低く、(3)大きいスラグ−メタル界面が存在する状況が発生していると、メタル中のりん(P)がスラグ中へ円滑にかつ多く移行するものと考えられる。
そこで発明者らは、このことを確認するために、移動型炉床炉のシミュレーター(実験炉)を製作し、上述した反応ついて調査した。この調査に使用したシミュレータの概略図を図3に示す。このシミュレータは、資料用の昇降台1を備えた電気炉で、ヒーター2に接続された図示しない温調装置によって昇温パターンを任意に変更することができるものである。昇降台1上にはカーボン製のるつぼ3を設置し、その中に鉄鉱石、石炭、造滓剤等を混合した混合原料を入れて、移動型炉床炉と同様の温度パターンにて昇温し、還元し、溶融し、メタル−スラグ分離の処理を行った。処理を終えたサンプルは、昇降台1を用いて炉外に取り出し、急速冷却した。また、るつぼ3には温度計4を装着して、炉温の他、原料の温度を直接測定できるようにした。実験は、加熱時間を種々変更し、反応途中のサンプルを順次取り出し、形状観察や還元状況およびりん濃度の分析を行った。表3にこの実験に供した混合原料の配合比率を示した。ここで使用した鉄鉱石は、3mmおよび1mmの篩で分級した篩下(−3mm、−1mm)を使用した。
Figure 2007246970
図4〜図7は、−3mmの鉄鉱石(実線で示す)と−1mmの鉄鉱石(破線で示す)とを用いた混合原料を、図3に示す上記実験炉内に装入し、その装入後の経過時間に対する、各種の変化を調べた。即ち、図4は、経過時間と温度との関係、図5は、経過時間と還元率との関係、図6は、経過時間とFeO濃度との関係、図7は、経過時間とりん分配率(Lp)との関係を、そして図8は得られたサンプルの外観写真を示した。
実験の結果、以下のような事実が判明した。
a.加熱開始後5分;
個々の粒子が溶融し始めて焼結している。この段階では、スラグとメタルが分離していないため、メタルおよびスラグのそれぞれのりん濃度を分析することはできないが、還元率は約80%であった。サンプルの温度は1350℃であった。
b.加熱開始後7分;
炉温は1450℃に達しており、サンプルの温度とほぼ同じになった。図8(b)の写真に示すように、溶融が全体に亘っており、完全には分離していないが、るつぼ内サンプルの底部には溶融メタルが見られた。溶融スラグ中には炭材は含まれておらず、るつぼ内に残っていた。なお、この段階ではスラグ中に含まれるFeOが底部の炭材と反応してCOガスが発生し、スラグの発泡が見られた。還元率は90%を超えていた。
c.加熱開始後10分;
炉温は1450℃で、メタルとスラグとが分離した。図8(c)の写真に示すように、10分後の写真では、メタルとスラグとが一応分離しているが、これらは互いに接している状態だった。るつぼ内に炭材はほとんど見られず、スラグの発泡もまったく見られなかった。還元率は、ほぼ100%で、スラグ中のFeO濃度は5mass%で、サンプル温度は1500℃であった。
d.加熱開始後15分;
10分とほとんど変化は見られなかった。FeO濃度は2mass%のままで変化していなかった。
なお、図7は、経過時間毎のメタルおよびスラグとの分析値から計算されたりん分配率Lp(実線)と、平衡りん分配率(Lp)(黒丸印)を示す。溶融開始初期(5分)のりん分配率は高く、平衡りん分配率((Lp)とほぼ同じ程度であった。その後、図3、図4に示すとおり、時間の経過とともに温度および還元率が上昇し、脱りんに不利な条件になると、平衡りん分配率(Lp)は低下し、実際のりん分配率(Lp)の低下はゆっくりであることがわかる。
この変化は、以下のように考えることができる。それは、5分後は、装入原料の全体が溶融したのち凝集し、均一層にまでなることはないものの、個々の粒子は溶融した状態にある。このことは、図8(a)の5分後の写真に見られるように、焼結した状態で回収されていることからも明らかである。そして、図8(b)に示す7分後のものは、金属化率は80%にも達しており、個々の粒子がスラグ−メタル界面をもった集合体として存在している。このような状況の中で、メタルからスラグヘのりんの移行反応が盛んになり、そして急速に平衡に達する。
その後、温度が上昇し、還元がより進行することにより、スラグ中のFeO濃度は低下する。そのため、平衡りん分配率(Lp)が低下し、スラグからメタルへ向けて、りんが移行する。なお、このように、メタル側からスラグ側へ移動したりんが、再びメタル側に戻るのを復りんと呼ぶ。そして、図8(c)に示すように、全体が均一に溶融するに到る。その結果、各粒子が結合し、溶融粒子の径が増大し、スラグ−メタル間の界面積は急激に減少すると同時に、移行反応が緩慢になり、平衡に達するまで時間がかかるようになる。その結果、平衡りん分配率(Lp)と実際のりん分配率(Lp)は大きく乖離し、より多くのりんがスラグに取り残されるようになる。その後、時間がたつにつれて、りんがメタルに移行し、図7に示したように、12分後には平衡りん分配率に達する。
このように、還元反応の進行に応じて、メタル−スラグ間のりん分配率は大きく変化する。従って、少なくともこの実験では、12分以内において、上記メタルおよびスラグを急速に冷却し、この領域において、メタルとスラグとを分離してスラグの除去を行えば、スラグからメタルへのりんの移行(復りん)を確実に抑制することができるようになる。その結果、メタル中のりん濃度を平衡りん分配率(Lp)よりも低く抑えることができるものと考えられる。
ただし、この領域において、スラグとメタルの分離が完了していなければ、急速に冷却を行っても、りんをスラグ中に封じ込めて、メタルと分離することはできない。そこで、発明者らは、さらに実験を進め、メタルとスラグが完全に分離する条件について検討した。その結果、こうしたスラグとメタルとの分離が完了する臨界点が1450℃以上の領域にあることを知見した。この温度は、炭素分を含んだメタルとスラグとが十分な流動性を維持している状態である。
以上のことから、移動型炉床炉の操業において、移動床上への混合原料の装入後、7分を経過し、炉温が1450℃に達してメタルとスラグとが分離した状態としてから、りん(P)のスラグ−メタル間の分配(Lp)が平衡りん分配(Lp)と一致する12分後までの間、つまり炉内温度が1450℃に達して(この段階では還元生成物の温度もまた1450℃に達している)からの5分間だけ該還元生成物をこの炉内に滞在させてから、つまり、5分以内に冷却すると共に、ここで溶融スラグをメタルから分離除去することにより、製品(還元鉄)を取り出すようにすることで、メタル中のりん濃度を低いレベルのものにすることができる。
なお、還元鉄の市場的価値は、りん濃度のみが指標ではない。本発明では、メタル中のりん濃度を効率的に下げる方法について提案しているが、例えば、スラグ中FeO濃度が高ければ、同一鉄鉱石から得られるメタル量が少なくなり、コストを上げてしまう。つまり、りん濃度のみに着目すれば、炉内の温度が原料を装入してから7分後には1450℃となり、メタルとスラグとが分離したときに冷却し、製品とすることが望ましい。しかし、このような場合、スラグ中のFeO濃度などを考慮した上で実情に応じ、本発明の効果であるメタル中のりん濃度を低下させるという効果を阻害しない範囲で、1450℃に達してから冷却するまでの時間を、5分を若干超えるような時間に選択することは可能である。
次に、本発明において、前述したりん濃度低下の効果をより高めるために、溶融初期の反応界面積を広げる方法についても検討した。即ち、原料である鉄鉱石の粒径を、−3mmでなく、−1mmのものを用い、−3mmのときと同じ配合、同じ温度条件にて、実験を行った。その結果が、図4〜7中に破線にて示されている。鉄鉱石粒径が−1mmと−3mmとの実験結果はほとんど変わらないが、(1)粒径の低下により、還元反応が速くなり、FeO濃度も低下し、還元率も向上している。(2)特に、7分後、10分後のりん分配率の乖離が大きいことがわかる。
上述したようにこれは、鉄鉱石の粒径は細かい方が、溶融が速く、溶融初期のスラグ−メタル間でのりん(P)の移行反応が活発に行われ、りんがスラグ側により多く移行することが原因と考えられる。つまり、粒径は小さいほど、りんがスラグからメタルヘ移行しやすく、各粒子の溶融開始段階(全体が溶融する前)において、広いスラグ−メタル界面が得られる。
しかし、微粉の鉄鉱石は、お互いに結合しあって、擬似粒子を形成することがある。そして、この擬似粒子は、各粒子の溶融開始段階において、擬似粒子単位で溶融する。つまり、実際の界面積は粒子径を低下させることにより拡大していくが、−1mm以下の微粉を増やしていっても、擬似粒子が形成されることにより、スラグ−メタル界面の拡大効果が飽和するようになる。しかも、鉄鉱石の粒子径を低下させるために、破砕作業が必要となるが、これにはコストがかかる。このことからスラグ−メタル界面の増加のためには、原料鉄鉱石は平均粒径が−1mmのものとすることが好ましい。なお、0.5mm程度以上としても、拡大する効率は飽和する。
次に、本発明において用いる鉄鉱石としては、りんの含有量が0.05mass%以上20mass%以下のものであることが好ましい。その理由は、たとえば、非特許文献1のP3にあるように、最終製品である一般的な鋼は、りん濃度が0.05mass%以下であるから、該鉄鉱石中のりん含有量は0.05mass%以上のものに対して適応されるべきである。しかし、鉄鉱石のりん含有量があまり高い鉱石では、りん分配率Lpを向上させ、りんをスラグとともに効率よく除去したとしても、最終製品中のりん濃度を0.05mass%以下にすることは難しく、実際的な効果が得られないため、鉄鉱石の最大りん含有量は2.0mass%程度以下のものを用いる。
この実施例は、実際のプラントにおいて、上述した考察と実験結果についての効果を確認すべく操業実験を行ったものである。即ち、この実施例では、移動型炉床炉を用い、鉄鉱石、石炭、造滓剤を種々の割合で混合し、この混合原料(塊成化物)を、移動床上に床敷として積載した石炭の上に積層し、最高温度が1500℃である加熱−還元条件にて移動床を移動させて、還元鉄を製造した。なお、表1に、この実施例で使用した鉄鉱石の組成を示し、また、表2に、使用した石炭の組成を示し、そして、表4に、この移動型炉床炉の設備概要を示した。
また、図9に発明法の昇温のパターン例と比較例の昇温パターン例を示した。この実施例では、鉱石種、炭材種、配合および移動速度を変化させて、操業実験を行った。
Figure 2007246970
この実施例の操業条件において、得られたメタルとスラグに関して塩基度(B2)を変更した場合のりんの分配比((P)/[P])とFeO濃度との関係を図10に示した。また、各塩基度(B2)における分配比とFeOとの関係が平衡状態に達しているかを確認するため、特許文献2に開示されている平衡分配率の関係式との比較を試みた。このとき、炉の最終位置でのメタルとスラグの温度を測定したところ、平均1490℃で、10℃程度のばらつきしかないことを確認した。なお、B2とは、スラグ中の塩基度を表わす指標であり、スラグ中のCaOとSiOの比で表わされる。
この実験をまとめると、炉内温度が1450℃に達している帯域での炉内滞在時間が5分(3分)以内と5分超とでは、同じFeO濃度、同じ塩基度であっても、りん分配率に差があり、前者の場合に高く、メタル中のりん濃度が低くなることがわかる。従って、本発明に係る操業方法を採用することで、りん濃度の低い還元鉄を製造することが可能になることが明らかになった。
本発明に係る技術は、低りん濃度還元鉄の製造に効果的な移動型炉床炉の操業方法について説明したが、この技術は、他の成分の調整法としても応用が可能であり、また、海綿鉄や鉄粉の他、鉄以外の還元金属の製造技術にも適用が可能である。
移動型炉床炉の略線図である。 FeO濃度および金属化率と還元率の関係を示すグラフである。 実験炉(シミュレーター)の略線図である。 実験炉での温度変化(−3mm、−1mm)を示すグラフである。 実験炉での還元率変化(−3mm、−1mm)を示すグラフである。 実験炉でのFeO濃度変化(−3mm、−1mm)を示すグラフである。 実験炉でのリン分配率の変化(−3mm、−1mm)を示すグラフである。 実験炉で得られたサンプルの写真である。 実施例における移動型炉床炉中の昇温パターンを示すグラフである。 実施例における本発明法を採用した移動型炉床炉でのりん分配率を示すグラフである。
符号の説明
10 炉体
10a 予熱帯
10b 還元帯
10c 溶融帯
10d 冷却帯
11 移動床
12 混合原料
13 バーナー
14 装入装置
15 排出装置

Claims (3)

  1. 移動型炉床炉の炉内を移動する移動床上に、鉄含有物、固体還元剤および造滓材を含む混合原料を装入し、その移動する炉内で該混合原料を加熱し、還元し、溶融させて、メタル分とスラグ分とからなる還元生成物を得たのち、スラグ分を除去することにより、還元鉄の回収を行う際に、前記移動型炉床炉内の温度が1450℃以上である帯域における還元生成物の滞在時間を5分以内にすると共に、スラグとメタルの分離をこの帯域において行うことを特徴とする移動型炉床炉の操業方法。
  2. 前記混合原料中の鉄含有物として、平均粒径が1mm以下の鉄鉱石を用いることを特徴とする請求項1に記載の移動型炉床炉の操業方法。
  3. 前記鉄鉱石は、鉄分とりん分との比が0.05%以上2.0%以下のものであることを特徴とする請求項1または2に記載の移動型炉床炉の操業方法。
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