JP2007246775A - 耐熱塗料およびプレコート鋼板 - Google Patents

耐熱塗料およびプレコート鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】シリコーン樹脂系耐熱塗膜を形成したプレコート鋼板において、塗膜の加工性を維持しながら、塗膜の耐熱性、すなわち300〜400℃程度の温度域に100h程度加熱された段階の過渡的状態の塗膜における耐疵付き性を改善する。
【解決手段】シリコーン樹脂系塗料において、シリコーン樹脂100質量部に対し、分子量175〜200のメルカプト系シランカップリング剤2〜45質量部、低軟化点ガラスフリット粉末0.6〜50質量部が配合されている塗料を用いて、プレコート鋼板を製造する。メルカプト系シランカップリング剤は、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよび3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランの1種以上からなるものが使用できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、自動車マフラー等に使用されるプレコート鋼板に適した耐熱塗料、およびその塗料を使用して塗膜を形成したプレコート鋼板に関する。
従来、自動車マフラー、調理器具、温風ヒーター等の耐熱性を要する部材に使用する塗装鋼材には、加工後の部材表面に、耐熱性の高い無機系の塗膜を形成する手法(ポストコート)が多用されてきた。このような無機系塗膜は加工性に劣るため、加工前の鋼板素材の段階で塗膜を形成する手法(プレコート)の適用が困難である。
一方、シリコーン樹脂を用いた耐熱塗膜をプレコートする手法も開発されている。特許文献1にはニッケル粉末を配合したシリコーン樹脂塗膜を有するスポット溶接性の良い耐熱性プレコート鋼板が記載されている。シリコーン樹脂を用いた耐熱塗膜は、部材への加工時には有機基がもたらす柔軟性によって鋼板の変形にしなやかに追従し、その後、部材として耐熱用途に使用されると、部材の昇温によって有機基が揮発し、シロキサン結合が増大することにより、無機系塗膜的な化学結合に富む耐熱性の高い塗膜が構築される。
しかし、このような耐熱性シリコーン樹脂塗膜は、部材として使用される段階で300〜400℃付近の温度に100〜200h程度の時間曝されると、シリコーン樹脂が持つ有機基(メチル基、フェニル基など)が揮発していき、実用的に十分な硬度を有する耐熱性の高い塗膜が構築されるまでの過渡期において、不安定な塗膜状態となる。この過渡的な塗膜は強度が低く、塗膜剥離を招きやすいという問題がある。
そこで、この過渡的な段階での塗膜強度を向上させる手段として、特許文献2には、350〜450℃の温度域で軟化が生じる低融点ガラスフリットを塗膜中に含有させておき、前記の過渡的な段階から比較的早期にセラミックス系の塗膜を形成させる手法が開示されている。
特許第3391565号公報 特開2001−341229号公報
特許文献2の手法によると、耐熱性プレコート鋼板を加工して得た部材において、300〜400℃付近の温度に100〜200h程度加熱された際の塗膜強度が向上し、塗膜が剥離するといった製品寿命に関わる重大なトラブルは回避されるようになった。しかし、発明者らの詳細な調査によれば、低軟化点ガラスフリットが軟化する前の段階で有機基が揮発して塗膜密度の低下が起きる際に、すでに塗膜内部にはクラックの起点になるような欠陥が生じていると考えられ、結果的に塗膜剥離には至らないまでも、疵の付きやすい塗膜状態となることがわかってきた。昨今では自動車マフラーのような床下部材や、調理器具の内部にも意匠性が求められることが多くなり、初期の美麗な黒色外観が維持されるように、前記の過渡的段階からすでに疵の付きにくい塗膜が構築されるプレコート鋼板の出現が待たれている。
本発明はこのような現状に鑑み、耐熱性プレコート鋼板用シリコーン樹脂系塗料において、部材への加工性を十分維持しつつ、300〜400℃付近で100h程度加熱された段階ですでに耐疵付き性に優れた塗膜が構築されるものを提供すること、およびそれを用いた耐熱性プレコート鋼板を提供することを目的とする。
上記目的は、シリコーン樹脂系塗料において、シリコーン樹脂100質量部に対し、メルカプト系シランカップリング剤およびメルカプト基とアルコキシ基をもつオリゴマーから選択される1種以上の物質2〜45質量部、低軟化点ガラスフリット粉末0.6〜50質量部が配合されていることを特徴とするプレコート鋼板用耐熱塗料によって達成される。特に、シリコーン樹脂100質量部に対し、分子量175〜200のメルカプト系シランカップリング剤2〜45質量部、低軟化点ガラスフリット粉末0.6〜50質量部が配合されているものが好適な対象となる。ここでいうシリコーン樹脂系塗料は、塗料を構成する樹脂成分のうち50質量%以上がシリコーン樹脂で占められているものである。
シリコーン樹脂としては、メチルフェニルシリコーン樹脂を含有し、メチルフェニルシリコーン樹脂(A)とメチルシリコーン樹脂(B)を、質量比B/Aが0以上70/30以下となるように配合したものが使用できる。メチルシリコーン樹脂はメチル基と水酸基を持つシリコーン樹脂である。ここで質量比B/Aが0のときは、メチルシリコーン樹脂(B)を配合していない場合を意味する。つまりメチルシリコーン樹脂(B)は任意成分である。
メルカプト系シランカップリング剤は、有機物質と反応する官能基としてメルカプト基(−SH)を分子中に1つ持つ物質で構成されるシランカップリング剤であり、具体的な物質として3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。これらを単独または2種複合で使用することができる。低軟化点ガラスフリット粉末は350〜450℃の温度域で軟化が生じる性質を有するフリット粉末であり、平均粒径1〜20μmのものが好適に使用できる。ガラスフリット粉末(X)とメルカプト系シランカップリング剤(Y)の配合比は、質量比Y/Xが0.25〜6.0となるようにすることが望ましい。
塗料を構成するその他の原料としては、グラファイト粉末、顔料、ニッケル粉末等が挙げられる。このうちニッケル粉末は平均粒径2〜40μmの粒状粒子で構成されるものが適している。これらの配合量は、シリコーン樹脂100質量部に対し、グラファイトは1〜30質量部、顔料は0.3〜80質量部、ニッケル粉末は3〜100質量部とすればよい。
また本発明では、このような配合のシリコーン樹脂系塗料を鋼板基材表面に塗布したのち乾燥させた塗膜を有する耐熱性プレコート鋼板が提供される。その塗膜中にはメルカプト系シランカップリング剤の官能基に由来するSが検出され、また、塗料に分散混合された低軟化点ガラスフリットの粒子が塗膜中に分散して存在している。
本発明によれば、耐熱性プレコート鋼板において、塗膜の加工性が良好であるとともに、加工後の部材を高温で使用した際には、300〜400℃付近に100h程度曝された過渡的な塗膜状態での塗膜強度が向上し、耐塗膜剥離性に優れることに加え、さらに耐疵付き性にも優れるものが実現できた。この塗膜は引っかき疵等に強いため、従来の耐熱性プレコート鋼板を使用した部材に比べ、当初の美麗な塗膜外観が損なわれ難い。また、良好なスポット溶接性を付与した塗膜とすることもできる。したがって本発明は、耐熱部材の意匠性向上に寄与しうるものである。
本発明のシリコーン樹脂系耐熱性塗料においては、特許文献2の技術と同様に、低軟化点ガラスフリット粉末の作用を利用する。すなわち、プレコート鋼板を部材に加工した後、実際の使用に供したとき、300〜400℃付近の温度域に100h程度保持される熱履歴を受けた段階においては、シリコーン樹脂を構成する有機基(メチル基やフェニル基)が揮発して塗膜中に空隙が形成されやすくなる。この段階ではまだ樹脂間のシロキサン結合が十分に進行していないために、塗膜の強度が低下し、塗膜剥離等のトラブルを引き起こしやすい。そこで塗膜中に低軟化点ガラスフリット粉末を分散含有させている。低軟化点ガラスフリットの粒子は、350〜450℃程度で軟化するため、有機基が抜けて「疎」になった樹脂間がガラス質物質で埋められる。これにより、シリコーン樹脂に由来するシリカ成分とガラス物質との間で化学結合が形成され、本来の硬質な耐熱性塗膜が形成される前の過渡的段階から比較的早期に塗膜強度を向上させることができる。
しかしながら、このような低軟化点ガラスフリット粉末を添加した塗膜においても、300〜400℃程度の温度域に100h程度曝した場合には、耐疵付き性に劣るという問題が生じた。低軟化点ガラスフリットが軟化するより低温の段階ですでに有機基の揮発は始まっており、塗膜内部は空隙が形成されやすい状態になっている。このため、塗膜中にはクラック発生の起点になりうる欠陥がすでに導入されていることが考えられ、これが耐疵付き性の低下を引き起こす要因になっているものと推察された。上記の欠陥は低軟化点ガラスフリット粒子の近傍などにおいて特に導入されやすいものと考えられる。特許文献2のプレコート鋼板では、水酸基を有するメチルシリコーン樹脂を配合させることにより、ガラスフリットの軟化による上記作用が得られにくい300〜350℃域でのシロキサン結合の促進を図っているが、それでもこの温度域で熱履歴を受けたときの耐疵付き性を十分改善することは困難である。
本発明では、塗膜中に低軟化点ガラスフリット粒子を分散させるとともに、シリコーン樹脂にはメルカプト系シランカップリング剤を配合させておく。そうすると、300〜400℃域で100h程度の熱履歴を受けたときの塗膜強度が向上し、耐疵付き性が顕著に向上するのである。そのメカニズムについては現時点で未解明の部分も多いが、以下のようなことが考えられる。
[1]メルカプト系シランカップリング剤が持つメルカプト基によって、シリコーン樹脂に由来するシリカ成分同士の間のシロキサン結合反応が促進され、シリカ化(SiO2化)が促進される。
[2]塗膜中に存在している低軟化点ガラスフリット粒子や、顔料粒子と、メルカプト系シランカップリング剤が反応し、これらの粒子を塗膜のマトリクス中に固着させる作用が発揮される。その結果、「疎」になりつつある塗膜において、特に粒子近傍での欠陥の形成が抑止され、塗膜強度が向上する。
[3]メルカプト系シランカップリング剤によって、鋼板基材と塗膜との親和性が向上することにより塗膜密着性がさらに改善される。
以下、本発明を特定するための事項について説明する。
〔シリコーン樹脂〕
シリコーン樹脂としては、一般的なメチルフェニルシリコーン樹脂が主成分として好適に使用できる。この樹脂はメチル基とフェニル基を有しており、プレコート鋼板として部材への加工に供されるときには、これらの有機基によって塗膜の加工性が確保される。加工後の部材が実際の使用に供されて加熱されると、これらの有機基は揮発していき、残存するシリカ成分同士のシロキサン結合による架橋反応が進行するにしたがって耐熱性の高いシリカを主体とする無機系塗膜的な塗膜構造に変わる。
メチルフェニルシリコーン樹脂に加え、さらにメチルシリコーン樹脂が配合されていると、メチルシリコーン樹脂が持つ水酸基の作用でシロキサン結合反応が促進され、塗膜強化には有利となる。ただし本発明では後述のメルカプト系シランカップリング剤により、同様の作用がより強力に得られるので、メチルシリコーン樹脂の配合は必須ではない。
メチルシリコーン樹脂を配合させる場合は、メチルフェニルシリコーン樹脂の配合量をA、メチルシリコーン樹脂の配合量をBとするとき、質量比B/Aが1/99以上となるようにすることが、より効果的である。ただし、メチルシリコーン樹脂の配合量が多くなりすぎると、低温域でのシロキサン結合の形成が過剰になり、プレコート鋼板製造段階での塗膜乾燥工程において塗膜が硬質化する恐れがある。そうなるとシリコーン樹脂が有する本来の柔軟性が阻害され、良好な加工性が実現できなくなる。種々検討に結果、メチルシリコーン樹脂を配合させる場合は、上記質量比B/Aが70/30以下となる範囲で行う必要があることがわかった。通常、上記質量比B/Aが5/95〜20/80の範囲において、メチルシリコーン樹脂添加の効果が十分に得られる。
〔低軟化点ガラスフリット粉末〕
低軟化点ガラスフリット粉末の粒子は、上述のように、加工された部材表面を覆う塗膜中において、350〜450℃程度の温度域に100h程度加熱された際に軟化する。そのガラス成分は、有機基が揮発して生じた空隙に毛細管現象等により入り込み、このような熱履歴を受けた塗膜の強化に寄与する。
低軟化点ガラスフリット粉末としては、例えばアルミニウム化合物、りん酸化合物、アルカリ金属酸化物等を含有したものであって、溶融したのち急冷して得られるガラス状粉末が挙げられ、軟化点(JIS R3103−1;2001)が450℃以下のものが使用できる。環境問題からPbを含まないフリットを使用することが望ましく、そのようなフリットとして軟化点が概ね330〜450℃のものが比較的容易に入手できる。軟化点が330〜400℃であるものが一層好ましい。塗料への分散性等を考慮すると、レーザー回折式粒度分布測定装置で求まる平均粒径D50が1〜20μm程度のものが好適である。塗料中への配合量は、シリコーン樹脂100質量部に対し、低軟化点ガラスフリット粉末0.6〜50質量部の範囲とすることができる。50質量部を超えると塗料の粘度が上昇することによる塗装性低下が問題になりやすい。低軟化点ガラスフリット粉末配合量は3〜30質量部とすることがより好ましい。
〔メルカプト系シランカップリング剤〕
メルカプト系シランカップリング剤は、塗膜が300〜400℃程度の温度域に100h程度加熱される熱履歴を受けたときに、塗膜の耐疵付き性を顕著に改善する。その作用は前記[1]〜[3]のようなメカニズムによるものと考えられる。特に低軟化点ガラスフリット粒子が軟化する前の段階において、シリコーン樹脂に由来するシリカ成分とフリット粒子との間の結着力を高める作用が発揮され、塗膜の強度向上がより低温から早期に実現されるものと推察される。結果的に、常温から450℃程度の温度まで、どの温度域で保持される熱履歴を受けても、有機的塗膜から無機的塗膜への過渡的段階における塗膜強度の低下を顕著に抑制することが可能になる。
後述の実施例で示すように、メルカプト系以外のシランカップリング剤を使用しても十分な効果は得られない。
メルカプト系シランカップリング剤としては、分子量が175〜200程度の物質からなるものが好適に採用される。例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。本発明において分子量を算出する際には原子量としてC=12、H=1、O=16、Si=28、S=32を採用する。
3−メルカプトプロピルトリメトキシシランは(CH3O)3SiC36SHで表され、分子量は196である。また3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランは(CH3O)2Si(CH3)C36SHで表され、分子量は180である。
これらを単独で使用すれば良いが、2種を複合して使用することもできる。
分子量が175〜200であり、1つの分子あたりにメルカプト基を1個有するメルカプト系シランカップリング剤を使用する限り、その配合量は、シリコーン樹脂100質量部に対し、メルカプト系シランカップリング剤2〜45質量部の範囲とすることができる。メルカプト系シランカップリング剤の配合量が過剰であるとプレコート鋼板における塗膜が硬質化し、加工性を阻害するようになるので注意を要する。
前述の低軟化点ガラスフリット粉末との関係では、低軟化点ガラスフリット粉末の配合量をX、メルカプト系シランカップリング剤の配合量をYとするとき、質量比Y/Xが0.25〜6.0となるように配合することが一層好ましい。
シランカップリング剤だけでなく、メルカプト基とアルコキシ基を有するメルカプト系オリゴマーなどを添加してもよい。
〔グラファイト粉末〕
グラファイト粉末は、シリコーン樹脂系塗膜の加工性および摺動性を向上させる作用を有する。グラファイトの粒子は劈開性、つまり外部応力が加わると一定の結晶面に沿って板状に滑る性質を持っており、塗料中に添加することによって塗膜面の摺動性が改善される。また、グラファイトは耐熱性に優れるとともに化学的に安定であるので、塗膜の耐食性、耐熱性の向上に寄与する。さらにグラファイトは導電性を有するため、スポット溶接性の向上にも寄与する。
本発明で用いられるグラファイト粉末は、特に限定されるものではなく、鱗片状、粒状のいずれの形状であってもよい。また、塗料中におけるグラファイト粒子の分散性やロール塗装時の均一転写性等を考慮すると、グラファイト粉末の粒径は5〜20μm程度の粒度分布を有していることが好ましい。このようなグラファイト粉末の配合量は、前記シリコーン樹脂100質量部に対し、1〜30質量部の範囲とすることが効果的である。これより少ないと前記の摺動性向上効果が十分に享受できず、逆に多いと前記効果は飽和し、コストアップの要因となる。
〔顔料〕
自動車マフラーや、調理器具の内部などでは黒色の塗膜が好まれる場合が多く、必要に応じて顔料が添加される。本発明では従来の耐熱塗料に使用されている顔料が使用できる。例えば、Cu、Fe、Mn系などの耐熱性に優れた焼成顔料が適している。顔料の配合量は、シリコーン樹脂100質量部に対し、0.3〜80質量部とすることができ、一般的には5〜30質量部程度で良好な結果が得られる。
〔ニッケル粉末〕
ニッケル粉末は、塗膜へのスポット溶接性を付与する作用を有し、必要に応じて塗料中に添加される。所定量のニッケル粉末粒子が塗膜中に分散していると、その粒子により塗膜に導電性が付与され、スポット溶接が可能になる。ニッケル粉末の粒子形状としては粒状ニッケルが好ましく、フレーク状ニッケルの場合はアスペクト比が大きくなるほど塗膜の断面方向での短絡効果が減少するので好ましくない。粒状ニッケルを使用する場合、その粒径は、塗料中への分散性やロール塗装での均一転写性等の観点から、平均粒径2〜40μmの範囲から選択することが望ましく、平均粒径5〜20μmのものが一層好ましい。ニッケル粉末の配合量は、シリコーン樹脂100質量部に対し、3〜100質量部とすることができ、一般的には20〜50質量部程度とすることで良好な結果が得られる。
その他、本発明の効果を阻害しない限り、塗料中には一般的に使用される種々の添加剤を含有させることができる。
〔鋼板基材〕
本発明のプレコート鋼板に用いる基材としては、例えば普通鋼板の他、耐熱性に優れたステンレス鋼板、あるいは普通鋼板やステンレス鋼板に耐熱性の良好な溶融アルミニウムめっきを施した鋼板などが好適に使用できる。これらの鋼板基材は、要求される耐熱性、加工性、耐食性、耐久性、耐テンパーカラー性等の性能に応じて使い分けられる。これらの基材表面には、必要に応じて前処理として、クロメート処理、クロムフリー処理、りん酸塩処理をはじめとする従来公知の表面処理を施してもよい。
〔塗料〕
前記の各種原料を配合し、適量の溶媒を加えることによって本発明の塗料を調合することができる。粉末原料については塗料中に均一に分散するように攪拌混合することが望ましい。
〔塗装〕
鋼板基材表面への塗装方法については特に限定されるものではなく、一般的なプレコート鋼板の製造法に準じて行えばよい。塗布方法としてはロールコーターやバーコーターによる方法が採用できる。塗布後には、例えば200〜350℃の温度に数十秒から数分程度加熱することにより乾燥させる。主に加工性の観点から乾燥後の塗膜厚さが5〜20μm程度になるように塗布量をコントロールすることが望ましい。塗装は、用途に応じて、鋼板基材の片面のみに施す場合と両面に施す場合がある。
〔プレコート鋼板の塗膜〕
このようにして得られたプレコート鋼板の塗膜においては、シリコーン樹脂を構成する有機基が豊富に残っており、その塗膜は良好な加工性を呈する。この塗膜中には低軟化点ガラスフリット粒子もまだ存在している。また、この塗膜中にはメルカプト系シランカップリング剤に由来するS(硫黄)が含まれている。このSはメルカプト基を構成し、特に低軟化点ガラスフリット粒子と、シリコーン樹脂との結合状態を改善する作用を呈すると考えられる。
各原料を下記の質量比で配合した塗料を調合した。メルカプト系シランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(分子量196)を使用し、これをシリコーン樹脂100質量部に対し1〜45質量部の範囲で変化させた6種類のシリコーン樹脂系塗料を用意した。
一方、鋼板基材として、板厚0.5mmのステンレス(SUS304)鋼板を用意した。
〔塗料の配合〕
(1)シリコーン樹脂: 100質量部
(内訳)・メチルフェニルシリコーン樹脂: 91質量部
・メチルシリコーン樹脂: 9質量部
(2)低軟化点ガラスフリット粉末: 6.4質量部
・平均粒径D50:約3μm、軟化点:約350℃の錫−リン酸系ガラスフリット粉末
(3)グラファイト粉末: 4.5質量部
(4)ニッケル粉末: 36.4質量部
・平均粒径:約9μmの粒状ニッケル粉末
(5)黒色顔料: 18.2質量部
(6)メルカプト系シランカップリング剤: 1〜45質量部
・3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン
各塗料を脱脂、チタン系のクロムフリー処理した基材鋼板の片面にロールコーター法により塗布した後、310℃×70secの加熱処理を行って塗膜を乾燥させ、塗膜厚さ約7μmの塗膜を有するプレコート鋼板を得た。各プレコート鋼板の塗膜断面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察した結果、ガラスフリット粒子およびニッケル粒子が塗膜中に分散して存在していることが確認された。また、SEMに付属のEDXにより塗膜のマトリクス(ガラスフリット粒子およびニッケル粒子以外の部分)を分析したところ、Sの存在が確認された。
〔加工性〕
各プレコート鋼板試料を用いて、塗膜面が曲げ加工の外側になるように、180°、4T曲げ試験(Tは板厚)を行った。曲げ加工部の塗膜について、JIS Z1522に規定されるセロハン粘着テープを使用して塗膜剥離試験を実施し、セロハン粘着テープを貼付した面積のうち、塗膜が剥離した面積(剥離面積)の割合を測定することにより、下記の基準で塗膜の加工性を評価した。評価4以上を合格と判定した。
(塗膜の加工性評価)
・評価1: 剥離面積の割合が100%(全面剥離)
・評価2: 剥離面積の割合が40〜99%
・評価3: 剥離面積の割合が10〜39%
・評価4: 剥離面積の割合が1〜10%
・評価5: 剥離面積の割合が0%(剥離なし)
〔耐熱性〕
各プレコート鋼板の試料を大気中350℃で100h加熱する試験に供し、加熱後の塗膜表面についてJIS K5400(1990)に準拠した鉛筆引っかき硬度試験を実施し、鉛筆のすり傷が観察されない鉛筆硬度を求め、耐熱性を評価した。その鉛筆硬度が3H以上のものを合格と判定した。
これらの結果を表1に示す。
Figure 2007246775
表1からわかるように、本発明で規定する配合量でメルカプト系シランカップリング剤を配合した塗料を使用したプレコート鋼板(No.2〜5)では、良好な加工性と、上述の過渡的段階における塗膜の優れた耐熱性(耐疵付き性)が両立できた。これに対し、比較例であるNo.1はメルカプト系シランカップリング剤の配合量が少なすぎたことにより過渡的段階での塗膜の耐熱性(耐疵付き性)が十分改善されなかった。No.6は逆にメルカプト系シランカップリング剤の配合量が多すぎたことにより塗膜の加工性に劣った。
次に、実施例1のNo.3に用いた塗料に配合したメルカプト系シランカップリング剤を他のカップリング剤に変えた試料を作り、上記と同様の方法で塗膜の加工性と耐熱性を調べた。各カップリング剤の配合量はシリコーン樹脂100質量部に対し14質量部と一定にした。カップリング剤の種類を変えたこと以外は、いずれの試料も前記No.3と同様の条件とした。なお、No.15はカップリング剤を添加しなかったものである。結果を表2に示す。
Figure 2007246775
表2からわかるように、メルカプト系シランカップリング剤を使用したNo.3のみにおいて、前記過渡的段階における塗膜の耐熱性が顕著に改善された。

Claims (12)

  1. シリコーン樹脂系塗料において、シリコーン樹脂100質量部に対し、メルカプト系シランカップリング剤およびメルカプト基とアルコキシ基をもつオリゴマーから選択される1種以上の物質2〜45質量部、低軟化点ガラスフリット粉末0.6〜50質量部が配合されていることを特徴とするプレコート鋼板用耐熱塗料。
  2. シリコーン樹脂系塗料において、シリコーン樹脂100質量部に対し、メルカプト系シランカップリング剤2〜45質量部、低軟化点ガラスフリット粉末0.6〜50質量部が配合されていることを特徴とするプレコート鋼板用耐熱塗料。
  3. シリコーン樹脂系塗料において、シリコーン樹脂100質量部に対し、分子量175〜200のメルカプト系シランカップリング剤2〜45質量部、低軟化点ガラスフリット粉末0.6〜50質量部が配合されていることを特徴とするプレコート鋼板用耐熱塗料。
  4. 前記シリコーン樹脂は、メチルフェニルシリコーン樹脂を含有し、メチルフェニルシリコーン樹脂(A)とメチルシリコーン樹脂(B)を、質量比B/Aが0以上70/30以下となるように配合したものである請求項1〜3のいずれかに記載のプレコート鋼板用耐熱塗料。
  5. 前記メルカプト系シランカップリング剤は、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランおよび3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシランの1種以上からなるものである請求項1〜4のいずれかに記載のプレコート鋼板用耐熱塗料。
  6. 前記低軟化点ガラスフリット粉末は、平均粒径1〜20μmのものである請求項1〜5のいずれかに記載のプレコート鋼板用耐熱塗料。
  7. ガラスフリット粉末(X)とメルカプト系シランカップリング剤(Y)を、質量比Y/Xが0.25〜6.0となるように配合した請求項1〜6のいずれかに記載のプレコート鋼板用耐熱塗料。
  8. グラファイト粉末1〜30質量部が配合されている請求項1〜7のいずれかに記載のプレコート鋼板用耐熱塗料。
  9. 顔料0.3〜80質量部が配合されている請求項1〜8のいずれかに記載のプレコート鋼板用耐熱塗料。
  10. 平均粒径2〜40μmのニッケル粉末3〜100質量部が配合されている請求項1〜9のいずれかに記載のプレコート鋼板用耐熱塗料。
  11. 鋼板基材表面に、請求項1〜10のいずれかに記載の塗料を塗布したのち乾燥させた塗膜を有する耐熱性プレコート鋼板。
  12. 塗膜中にSが検出され、かつ塗膜中にガラスフリット粒子が観察される請求項11に記載の耐熱性プレコート鋼板。
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