JP2007240470A - 尿漏れセンサー及び尿漏れ検知オムツ - Google Patents

尿漏れセンサー及び尿漏れ検知オムツ Download PDF

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哲也 原
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Yoshinobu Omae
好信 大前
Hideki Kamata
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Abstract

【課題】 導電性や屈曲性、通気性、供給安定性、取り扱い性に優れた尿漏れセンサー及び該センサーを用いた尿漏れ検知オムツを提供する
【解決手段】 ポリビニルアルコール系ポリマーと平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子からなり、且つ硫化銅微粒子が繊維の表層および/または内部に含有されてなる導電性ポリビニルアルコール系繊維が、布帛の面方向に間隔をおいて配置されていることを特徴とする尿漏れセンサー。
【選択図】なし

Description

本発明は、導電性及び屈曲性、通気性、供給安定性に優れた導電性ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記する)系繊維を布材の面方向に間隔をおいて配置された尿漏れセンサー及び該センサーを用いた尿漏れ検知オムツに関するものである。
近年、高齢化社会の進行により、いわゆる寝たきり老人が増える傾向にあるが、住宅介護および老人健康施設などにおいて、これらの患者の看護にあたっては、尿、便の処理が大きな問題となっている。例えば尿漏れに対しては、一般的にはおむつを中心とした装具による自然排尿後の処理が主流であり、尿漏れの有無に関係なく一定時間毎に交換する方式か、尿漏れを手の触感で確かめ、尿漏れが認められる際に交換する方式が一般的である。従って、交換時間前に尿漏れがあった場合、次の交換まで不愉快な状態で放置されることになり、不快感をもたらすと共に、おむつかぶれ、冷え、床ずれ等の苦痛を与える結果となっている。また、高齢者、要介護者にとって排泄物が残るおむつを着用し続けることは、人間の尊厳をも損なう大きな問題である。
上記の問題に対処するために、特に病院等で多数の病人を少数の看護婦で看病する場合は、尿漏れを本人や介護者や看護婦が速やかに認知できる検知器の開発が希求され、近年では尿漏れ検知器が種々開発されつつある。例えば、二つの金属端子電極を柔らかいシリコンゴムに埋設させたものをオムツ内に装着し、尿漏れにより二つの電極が短絡することによって尿失禁を検出するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、センサー本体として柔らかいシリコンゴムを採用しているものの、硬い金属電極が埋設しているため、この金属電極が使用者にゴツゴツとした違和感を与え、肌荒れを生じさせたり肌を傷つける恐れがあった。また、シリコンゴムが弾性により変形するのでシリコンゴムと金属電極との間に隙間が生じ、この隙間に尿が残留する場合がある。この残尿によって金属電極やこの金属電極と電導線との接続部分が腐食されるので、尿漏れ検知センサーの耐久寿命が短いという問題があった。さらに、前記残尿によって、尿漏れしていないにも拘わらず、金属電極間が短絡してしまい、誤検知するという問題もあった。また、オムツとセンサーが別体であるので、オムツを取り替える度にセンサーをオムツから取り外し、再度装着する必要があり、オムツの交換作業を面倒にしていた。更には、洗浄してから使うとはいえ、同じセンサーを何度も使うことに対しては、衛生上の問題も指摘されていた。
また、一対の帯状アルミ箔電極を所望間隔離して平行にビニールシートに貼り付け、このビニールシートをおむつとおむつカバーの間に挟んで、尿漏れにより2つの電極間が導通することによって尿漏れを検知するものも開示されている(例えば、特許文献2参照)。電極がアルミ箔であることから、使用者へのゴツゴツ感は少ないものの、おむつとセンサーは別体であり、先述した方法と同様におむつの交換作業は面倒である。またアルミ箔がおむつの通気性を損なうという問題もあった。更には、オムツ製造工程においてアルミ箔電極を組み込むには、アルミ箔の切断が起きないように、工程速度を遅くしなければならず、コスト高になるなどの問題も抱えていた。
さらには、2列の薄膜状の金属層をラミネート処理又は蒸着手段により紙の使い捨ておむつに付着形成したものが開示されている(例えば、特許文献3参照)。電極である薄膜状の金属層をラミネート処理や蒸着処理によって形成させたものであるが、やはりこの金属層によってオムツの通気性を損なうという問題があった。また、この金属層は、導電性が高いため検出感度は優れているものの、装着時の屈曲又は人体の移動によって金属層が断線したりする場合が多く、確実な動作態様が得られない場合があった。更には、この方法は非常にコスト高になってしまい、使い捨てオムツとしては広く普及するものではなかった。
特開平5−31100号公報 特開平1−277558号公報 実公平3−15063号公報
上記のように多くの技術が提案され、一部は実施されているにも関わらず、一般の家庭や老人健康施設などに普及しているとは言い難いのが現状である。この理由として、本発明者等は価格の問題と手間の問題、そして性能の問題が大きいとの認識に至った。
すなわち、まず価格の問題とは、特にその導電素材にあり、従来の金属棒や、金属蒸着、導電性塗料のコーティングなどによる導電素材を尿漏れセンサーとしてオムツに内にセットしたり、検出装置を取り付けやすいように導電素材などの末端を露出させたりするなどの加工を行う場合の製造コストの増加が大きいため、通常のオムツよりも単価がかなり高くなってしまうことである。その結果、使い捨ての紙おむつの使用が主流となった最近では、使用枚数も多くなっていることから、紙オムツの使用コストが大幅に上昇する。
また、手間の問題とは、価格の上昇を抑えるためにオムツとは別に検知センサーを作成し、これをオムツに着脱させるようにしたものを採用する場合は、オムツの交換毎に検知センサーの脱着操作を頻繁に行う必要があって、消費者が手間を感じて敬遠する場合が多い。
さらに、性能の問題とは、例えば金属泊などを用いた場合は、通気性が悪くなったり、患者にオムツを装着する時やその使用時に伴う屈曲動作で、電極が切断してしまい、正確な検知が出来ず、信頼性に欠けていたことなどが挙げられる。
本発明は、かかる従来の尿漏れセンサーの欠点に鑑み、導電性や屈曲性、通気性、供給安定性、取り扱い性に優れた尿漏れセンサー及び該センサーを用いた尿漏れ検知オムツを提供することにある。
本発明者等は上記した尿漏れセンサー及び該センサーを用いた尿漏れ検知オムツを得るべく鋭意検討を重ねた結果、特定の導電性PVA系繊維を電極とすることで、従来技術では達成し得なかった、低コストで、且つ使い捨て可能であり、そして装着時の屈曲又は人体の移動によって電極が断線することがなく確実な動作態様が得られる尿漏れ検知センサー、およびそれを用いた尿漏れ検知オムツが得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、PVA系ポリマーと平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子からなり、且つ硫化銅微粒子が繊維の表層および/または内部に含有されてなる導電性PVA系繊維が、布帛の面方向に間隔をおいて配置されていることを特徴とする尿漏れセンサーに関するものであり、好ましくは配置される導電性PVA系繊維の50cm当りの抵抗値が200kΩ以下でことを特徴とする上記の尿漏れセンサーであり、さらに好ましくは配置される導電性PVA系繊維の表層および/または内部に含有される硫化銅微粒子がPVA系ポリマー100質量%に対して、1〜40質量%含有されてなる上記の尿漏れセンサーであり、そして本発明は上記の尿漏れセンサーを用いた尿漏れ検知オムツに関する。
本発明は、従来技術では困難であった、導電性や屈曲性、通気性、供給安定性、取り扱い性に優れた尿漏れセンサー及び該センサーを用いた尿漏れ検知オムツを提供することが可能であり、一般家庭、介護施設、老人施設などで幅広く使用することができる。
以下、本発明について具体的に説明する。本発明の尿漏れセンサーは、PVA系ポリマーと平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子からなり、且つ該硫化銅微粒子が繊維の表層および/または内部に含有されてなる導電性PVA系繊維が布材の面方向に間隔をおいて配置されていることが必要である。この電極となる導電性PVA系繊維に電気伝導度の変化を検知する装置を接続すると、布材が尿漏れにより吸水することにより、間隔をおいて設けられている電極の間が水分によって短絡し、電極間に電流が流れる。このように、電極間の電気伝導度の変化によって尿漏れを検知し、ブザーやランプ、振動などの報知手段によって、使用者又は介護者に尿漏れを知らせることができる。
本発明の一つ目のポイントは、電極を上記の繊維素材とすることで、通気性は勿論のこと、布材としての柔軟性が損なわれることもなく、人体に対して触れたとしても不快感を与えないことである。従って、肌あれせず、肌を傷つけることもなく、さらにはオムツとして使用した際の装着時の屈曲又は人体の移動によって電極が断線することがなく、正確な検知が可能となる。なお、本発明の尿漏れ検知センサーの電極として使う繊維素材としては、詳細は後述するが、特定範囲の平均粒子径をもった硫化銅微粒子が含有されてなる導電性PVA系繊維であることが重要である。
ここでいう布材とは、織物の他、編物や、不織布など、繊維からなる布帛の総称である。例えば、編組織としては平編、天竺編等を、織組織としては平織等を、不織布としては乾式や湿式不織布等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
そして本発明の二つ目のポイントは、電極として、PVA系ポリマーと平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子からなり、且つ該硫化銅微粒子が繊維の表層および/または内部に含有されてなる導電性PVA系繊維を用いることである。導電性を発現する硫化銅が微粒子であること、そして該微粒子が繊維の表層および/または内部に微分散して含有されてなるPVA系繊維を用いることにより、布材の面方向に間隔をおいて該繊維が配置された尿漏れセンサーは高い導電性に加えて、屈曲を伴う使用における粒子の脱落や劣化がなく、導電性及び屈曲性、通気性を兼備することができる。なお、繊維の表層とは、繊維表面から1μm程度の深さ範囲のことを示し、繊維の内部とは、繊維の表面から繊維の中心までの範囲を示す。繊維表面にのみ硫化銅粒子が付着している繊維は本発明の尿漏れ検知センサーの電極として用いる導電性PVA系繊維の範囲外であり、このような繊維を用いた尿漏れ検知センサーは、所望の検知性能が得られないばかりか、繊維表面からの硫化銅微粒子の脱落があり、実使用において制約のかかるものである。
更に本発明の三つ目のポイントは、電極となる上記導電性PVA系繊維が布材の面方向に間隔をおいて設けられていることである。その場合の間隔や面内の方向については特に制限はないが、例えば本発明の尿漏れセンサーを用いてオムツとして使用する場合は、オムツの長手方向に沿って所定の間隔を保持して平行に、オムツの製造ラインの流れ方向に連続して配列して、オムツの前部から後部にかけて貫いていることがオムツの生産性を向上させる点で好ましい。
本発明で使用する上記の導電性PVA繊維は、ステープルファイバー、ショートカットファイバー、フィラメントヤーン、紡績糸、紐状物、ロープ、布帛などのあらゆる繊維形態において優れた導電性を示すので、あらゆる形態にて用いることができる。その際の繊維の断面形状に関しても特に制限はなく、円形、中空、あるいは星型等異型断面であってもかまわない。
次に、本発明の尿漏れセンサーに用いる導電性PVA系繊維について説明する。構成するPVA系ポリマーの重合度は特に限定されるものではないが、得られる繊維の機械的特性や寸法安定性等を考慮すると30℃水溶液の粘度から求めた平均重合度が1200〜20000のものが望ましい。高重合度のものを用いると、強度、耐湿熱性等の点で優れるので好ましいが、ポリマー製造コストや繊維化コストなどの観点から、より好ましくは、平均重合度が1500〜5000である。用いるPVA系ポリマーのケン化度についても特に限定されるものではないが、得られる繊維の力学物性、耐水性の点から、88モル%以上であることが好ましい。PVA系ポリマーのケン化度が88モル%よりも低いものを使用した場合、得られる繊維の機械的特性や工程通過性、製造コストなどの面で好ましくない。
また上記のPVA系ポリマーは、ビニルアルコールユニットを主成分とするものであれば特に限定されず、本発明の効果を損なわない限り、所望により他の構成単位を有していてもかまわない。このような構造単位としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類、アクリル酸及びその塩とアクリル酸メチルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、ポリアルキレンオキシドを側鎖に有するアリルエーテル類、メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、アクリロニトリル等のニトリル類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル、マレイン酸およびその塩またはその無水物やそのエステル等の不飽和ジカルボン酸等がある。このような変性ユニットの導入法は共重合による方法でも、後反応による方法でもよい。しかしながら、本発明の目的とする繊維を得るためにはビニルアルコール単位が88モル%以上のポリマーがより好適に使用される。もちろん本発明の効果を損なわない範囲であれば、目的に応じてポリマー中に酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤などの添加剤が含まれていてもよい。
本発明で用いる導電性PVA系繊維は、前述したように上記PVA系ポリマー以外の構成成分として、硫化銅微粒子を含有することが必要である。かかる硫化銅微粒子は一価の硫化銅でも二価の硫化銅でもよいが、その平均粒子径は500nm以下であることが必要であり、300nm以下であるような微粒子であることが好ましく、100nm以下であるような微粒子であると更に好ましい。このような微粒子であることにより、繊維中での粒子間距離の著しい減少が可能となり、少ない量にて所望の導電性能を発現することができる。例えば、同じ質量%の含有量において、粒子径が百分の一になると、粒子間距離は一万分の一にまで小さくなることが知られている。また、このような場合、粒子間の相互作用が非常に強く働き、その間に挟まれたポリマー分子は、あたかも粒子と同じような機能を示すことも知られている〔例えば、ナノコンポジットの世界、p22(工業調査会)参照〕。従って、このサイズ効果により、電流がより流れやすくなり、少ない量でも、優れた導電性能を付与することができ、それ故、このような繊維を用いてなる尿漏れセンサーは、優れた検知性能を示す。また、多量に含有させる必要がないことから、繊維自体の風合いを損ねることなく、柔軟性に優れ、且つ屈曲性に優れた尿漏れセンサーとなる。一方で、繊維中の硫化銅粒子の平均粒子径が500nmより大きい場合、所望の導電性を発現させるには多量の粒子を含有させる必要があり、その場合、柔軟性は損なわれ、また屈曲性などの耐久性が低くなるので、そのような繊維を用いても、本発明の目的とする尿漏れセンサーを得ることはできない。なお、本発明の尿漏れセンサーに使用する導電性PVA系繊維中の硫化銅微粒子の分散状態は、図1に示すように透過型電子顕微鏡(TEM)にてその存在形態を確認することができる。
本発明の尿漏れセンサーに用いる上記の導電性PVA系繊維の50cm当りの抵抗値は200kΩ以下であることが好ましく、100kΩ以下であるとより好ましく、50kΩであるとさらに好ましい。200kΩより大きい場合、十分な導電素材とは言えず、尿漏れが起こっても検出されなかったり、誤動作の原因となる場合がある。なおこの抵抗値は、繊維の繊度、撚り合わす本数などでも制御できる。例えば、抵抗値の比較的大きい一本の繊維を複数本撚り合わせて、全体の抵抗値を下げた形態としても使用できる。本発明の尿漏れセンサーは、上述の導電性PVA系繊維を用いて初めて達成できる。詳細は後述するが本発明で用いる導電性PVA系繊維は、通常のPVA系繊維をその製造工程中において、銅イオンを含む化合物を繊維中に含浸させ、その後の工程で銅を硫化処理することにより得ることができる。なお、50cm当たりの抵抗値は後述する方法により測定される。
本発明に用いるPVA系繊維は、PVA系ポリマー100質量%に対して硫化銅微粒子を1〜40質量%含有することが望ましい。硫化銅微粒子の含有量が1質量%より少ない場合、所望の導電性能が得られにくく、それを配置してなる尿漏れセンサーはセンシング機能を発現しない。一方で、硫化銅微粒子の含有量が多くなりすぎると、繊維の機械的性質や耐摩耗性、耐屈曲性が不十分になることから、それを配置してなる尿漏れセンサーも耐屈曲性が不十分なものとなり、検出されなかったり、誤動作の原因となる。硫化銅微粒子の含有量は30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましい。
本発明の尿漏れセンサーに配置される、硫化銅微粒子が繊維の表層および/または内部に含有されてなる導電性PVA系繊維は、PVA系ポリマーを水あるいは有機溶剤に溶解した紡糸原液を用いて後述する方法で安価に製造することができる。紡糸原液を構成する溶媒としては、例えば水、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと略記)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどの極性溶媒やグリセリン、エチレングリコールなどの多価アルコール類、およびこれらとロダン塩、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛などの膨潤性金属塩の混合物、さらにはこれら溶媒同士、あるいはこれら溶媒と水との混合物などが挙げられるが、これらの中でも、とりわけ水やDMSOがコスト、回収性等の工程通過性の点で最も好適である。
紡糸原液中のポリマー濃度は組成、重合度、溶媒によって異なるが、8〜60質量%の範囲であることが好ましい。紡糸原液の吐出時の液温は、紡糸原液が分解、着色しない範囲であることが好ましく、具体的には50〜200℃とすることが好ましい。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、紡糸原液にはPVA系ポリマー以外にも、目的に応じて、難燃剤、酸化防止剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤、特殊機能剤などの添加剤などが含まれていてもよい。更にこれらは、一種類または二種類以上のものを併用して使用してもかまわない。
かかる紡糸原液をノズルから吐出して湿式紡糸、乾湿式紡糸あるいは乾式紡糸を行えばよく、PVA系ポリマーに対して固化能を有する固化液あるいは、気体中に吐出すればよい。なお、湿式紡糸とは、紡糸ノズルから直接固化浴に紡糸原液を吐出する方法のことであり、乾湿式紡糸とは、紡糸ノズルから一旦任意の距離の空気中あるいは不活性ガス中に紡糸原液を吐出し、その後に固化浴に導入する方法のことである。また、乾式紡糸とは、空気中あるいは不活性ガス中に紡糸原液を吐出する方法のことである。
本発明において、湿式紡糸または乾湿式紡糸の際に用いる固化浴は、原液溶媒が有機溶媒の場合と水の場合では異なる。有機溶媒を用いた原液の場合には、得られる繊維強度等の点から固化浴溶媒と原液溶媒からなる混合液であることが好ましく、固化溶媒としては特に制限はないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノ−ル、ブタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類等のPVA系ポリマーに対して固化能を有する有機溶媒を用いることができる。これらの中でも低腐食性及び溶剤回収の点でメタノールとDMSOとの組合せが好ましい。一方、紡糸原液が水溶液の場合、固化浴を構成する固化溶媒としては、芒硝、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウム等のPVA系ポリマーに対して固化能を有する無機塩類や苛性ソーダの水溶液を用いることができる。また、PVA系ポリマーと共に、ホウ酸などを加えた水溶液をアルカリ性固化浴中にゲル化紡糸することもできる。
次に固化された原糸から紡糸原液の溶媒を抽出除去するために、抽出浴を通過させるが、抽出時に同時に原糸を湿延伸することが、乾燥時の繊維間膠着抑制及び得られる繊維の機械的特性を向上させるうえで好ましい。その際の湿延伸倍率としては2〜10倍であることが工程性、生産性の点で好ましい。抽出溶媒としては固化溶媒単独あるいは原液溶媒と固化溶媒の混合液を用いることができる。
固化された原糸は必要に応じて乾燥され、更に場合によっては乾熱延伸、熱処理が施される。このための延伸条件は、一般的には100℃以上の温度、好ましくは150℃〜260℃の温度で行うのがよく、1.2倍以上の全延伸倍率、好ましくは1.5〜10倍の全延伸倍率で延伸すると、繊維の結晶化度と配向度が上昇し、その結果繊維の機械特性が著しく向上するので好ましい。温度が100℃未満の場合、繊維の白化が生じ、そのため機械的物性の低下をもたらす。また260℃を越えると繊維の部分的な融解が生じ、この場合においても機械的物性の低下をもたらすので好ましくない。なお、ここでいう延伸倍率とは、先述した乾燥前の固化浴中での湿延伸と乾燥後の延伸倍率の積である。例えば、湿延伸を3倍とし、その後の乾熱延伸を2倍とした場合の全延伸倍率は6倍となる。
本発明で使用する導電性PVA系繊維を得るためには、上記の固化された原糸の膨潤状態の糸篠、若しくはこれの乾燥後の糸篠を、硝酸銅または硫酸銅などの銅イオンを含む化合物を溶解した浴を通過させて該化合物を繊維中に含浸させる。この場合、繊維内部への銅イオンを含む化合物の均一浸透させ、銅イオンをPVA系ポリマーの水酸基と配位結合を形成せしめるためには、繊維は浴溶媒により膨潤していることが望ましく、そのためには浴に用いる溶媒はメタノール等のアルコール類や水、塩類あるいはこれらの混合物であることが好ましい。その時の浴溶媒による繊維の膨潤率は20質量%以上であることが好ましい。なお、膨潤率調整のため、糸篠を先ず所定の浴に浸漬し、その後、銅イオンを放出する化合物が溶解された浴に浸漬することが望ましい場合もある。膨潤率が20質量%未満の場合、銅イオンがPVA系ポリマーの水酸基と十分な配位結合を形成できず、従って繊維の表層および/または内部にて硫化銅微粒子を生成させることができない。一方で、膨潤率が大きくなりすぎた場合、浴へのPVA系ポリマーの溶出などが起こり、工程通過性の面で好ましくない。以上のことから、銅イオンを含む化合物が溶解された浴での膨潤率は30質量%以上300質量%以下であることが好ましく、50質量%以上250質量%以下であることがより好ましい。
次に、銅イオンを含む化合物を浸透させた繊維を、硫化ナトリウムまたはチオ硫酸ナトリウムなどの硫化物イオンを含む化合物を溶解した浴を通過させ、繊維の表層および/または内部で配位結合している銅イオンを硫化処理する。これにより、本発明を構成する導電性ポリビニルアルコール系繊維の一つの必須成分である硫化銅が繊維中の表層および/または内部に形成される。その場合、硫化物イオンを含む化合物の浴への添加量は銅イオンの導入量によって必要に応じて適宜設定すればよいが、1〜100g/Lの範囲であることが好ましい。添加量が1g/L未満の場合、繊維内部の銅イオンまで硫化処理が進まない可能性があるので好ましくない。また100g/Lを超える場合は、PVA系繊維内に含まれる銅イオンを硫化処理するに十分な量ではあるが、回収系や臭気問題など工程性の面であまり好ましくない。
繊維に含浸された銅イオンを硫化する反応は、特に硫化能の大きい化合物を用いた場合は瞬時に起こることから、この場合の滞留時間には特に制限はないが、繊維内部にまで十分硫化処理を施すことを目的に、滞留時間は0.1秒以上であることが望ましい。
一方で、硫化銅粒子を予め原液から仕込んだ場合には、繊維中に硫化銅微粒子を分散させることはできず、所望の物性を発現させるには、多量の硫化銅粒子の添加が必要となる。この場合、原液中での分散不良や、凝集、沈降などが起こり、繊維化工程、その後の延伸性が低下し、結果として結晶化度が低く、ある程度の導電性は付与できても、機械的特性の低い繊維しか得られない。また、あらかじめ銅イオンを配位させたPVA系ポリマーを原料として使用した場合は、銅の配位による溶液粘度の上昇や、固化性が悪化するなど、工程性が悪化することに加えて、得られる繊維の力学物性は低いものとなる。
このようにして得られた、繊維中に硫化銅微粒子を導入された原糸若しくは延伸糸に、熱処理を施し繊維物性を向上させることで、本発明で使用する導電性PVA系繊維を製造することができる。このための熱処理条件は、一般的には100℃以上の温度、好ましくは150℃〜260℃の温度で行うのがよい。温度が100℃未満の場合、繊維物性の向上効果が不十分である。また260℃を越えると繊維の部分的な融解が生じ、この場合においても機械的物性の低下をもたらすので好ましくない。
本発明によれば、得られる繊維の繊度は特に限定されず、例えば0.1〜100000dtex、好ましくは1〜10000dtexの繊度が広く使用できる。
本発明の尿漏れセンサー及び該センサーを用いた尿漏れ検知オムツは、導電性や屈曲性、通気性、供給安定性、取り扱い性に優れていることことから、一般家庭、介護施設、老人施設などで幅広く使用することができる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何等限定されるものではない。なお以下の実施例において、50cm当たりの抵抗値は下記の方法により測定したものを示す。
[50cm当たりの抵抗値 kΩ]
予め調湿されたヤーンを50cmに切り出し、その両端をタワー型クリプで挟み込み、三和電気計器株式会社製デジタルマルチメーターにて抵抗値を測定した。
[実施例1]
(1)粘度平均重合度1700、ケン化度99.8モル%のPVAをPVA濃度50質量%となるように水を含水させ、押出し機を通して165℃に加熱し、孔径0.1mm、ホール数200のノズルを通して空気中に乾式紡糸した。巻取り機により160m/minの速度で巻き取った繊維を、200℃の熱風延伸炉中で30m/minの延伸速度で1.6倍に延伸し、繊維を得た。
(2)得られた繊維を、和光純薬(株)製の硝酸銅を280g/L溶解した50℃の水浴に滞留時間が240秒になるように導糸し、引き続き、和光純薬(株)製の硫化ナトリウムを50g/L溶解した25℃の水浴に滞留時間が120秒間になるように導糸した。この処理を2回繰り返した後、水洗し、120℃の熱風で乾燥し、繊維を得た。得られた繊維の性能評価結果を表1に、参考として繊維の断面TEM写真を図1に示す。
(3)得られた繊維において、繊維中の硫化銅微粒子の平均粒子径は10nm、含有量は13.1質量%、50cm当りの抵抗値は10kΩであった。
(4)上記により得られた繊維を、縦500mm、横250mmの目付500g/cmのPVA系繊維からなる不織布に、50mmの間隔をおいて平行に配置した。次に、繊維の先端に、二箇所の繊維間の電気伝導度の変化を検出する装置を取り付けた。なおこの検出器は、電気伝導度の変化があるとランプがつく仕組みとなっている。その後、繊維間が濡れるまで市販の生理食塩水(尿の代替)を注ぎ込み、検出器におけるランプの点灯状態を確認した。参考として本センシング試験の概略図を図2に示す。
(5)上記(4)の確認試験の結果、繊維間が生理食塩水で濡れた直後にランプが点灯した。これは、生理食塩水により両繊維間が短絡し、離れた繊維間に電流が流れ、それをセンシングしことを示している。
[実施例2]
(1)実施例1と同様にして、導電性PVA系繊維を、縦500mm、横250mmの500g/cmのPVA系繊維からなる不織布に、25mmの間隔をおいて三箇所に平行に配置した。次に、繊維の先端に、繊維間の電気伝導度の変化を検出する装置を取り付けた。なおこの検出器には、ランプが二つ設置されおり、左と真中の繊維間の電気伝導度の変化があると一つ目のランプが点灯し、真中と右の繊維間の電気伝導度の変化があると、二つ目のランプが点灯する仕組みとなっている。その後、左と真中の繊維の間に、両繊維間が濡れるまで市販の生理食塩水を注ぎ込み、検出器におけるランプの点灯状態を確認した。その後、その位置を変えずに、右の繊維が濡れるまで、更に生理食塩水を注ぎ込んだ。
(2)上記(1)の確認試験の結果、先ず、左と真中の繊維が生理食塩水で濡れた直後に一つ目のランプが点灯した。次に、生理食塩水が不織布上を浸透していき、真中と右の繊維間が濡れた時に、二つ目のランプが点灯した。このように繊維を配置することにより、尿漏れの程度(例えば、「多い」または「少ない」)などもセンシングすることが可能である。
[実施例3]
(1)実施例1で得られた繊維が配置された不織布の長手方向の一端に、4.9Nの荷重をかけて、1分間に175回の折り曲げ速度で、左右135°/サイクルの繰り返しを1000回行う、屈曲性試験を施した。屈曲性試験を行った後、実施例1と同様な方法でセンシング試験を実施した。
(2)上記(1)の屈曲性試験後のセンシング試験の結果、繊維間が生理食塩水で濡れた直後にランプが点灯した。すなわち、本センサーは耐屈曲性に優れるものであった。
[比較例1]
(1)硝酸銅が溶解された浴及び硫化ナトリウムが溶解された浴を通過させない以外は、実施例1と同様な条件で紡糸し、繊維を得た。これを、実施例1の方法にて不織布に配置し、センシング試験を実施した。
(2)上記(1)で得られた繊維の50cm当りの抵抗値は、硫化銅微粒子を含有しないため、4.5×10kΩであり導電性に劣るものであった。またセンシング試験において、生理食塩水にて繊維間が濡れても、ランプは点灯せず、センサーとして使用できるものではなかった。
[比較例2]
(1)市販のナイロン6繊維を、和光純薬(株)製の硝酸銅を280g/L溶解した50℃の水浴に滞留時間が240秒になるように導糸し、引き続き、和光純薬(株)製の硫化ナトリウムを50g/L溶解した30℃の水浴に滞留時間が120秒間になるように導糸した。これを、10回繰り返した後、120℃の熱風で乾燥し、繊維を得た。これを、実施例1と同様の方法にて不織布に配置し、センシング試験を実施した。
(2)上記(1)で得られた繊維において、硫化銅量は0.45質量%であり、表面にのみ1μm程度の硫化銅粒子が、大きな塊上に付着して入る状態であった。そのため、50cm当りの抵抗値は、1.0×1010kΩであり、導電性に劣るものであった。さらに、センシング試験において、生理食塩水にて繊維間が濡れても、ランプは点灯せず、センサーとして使用できるものではなかった。
[比較例3]
(1)和光純薬(株)製の硝酸銅を280g/L溶解した水溶液と、和光純薬(株)製の硫化ナトリウムを50g/L溶解した水溶液を混合し、2次粒子径約10μmの硫化銅粒子を析出させた。これを水で十分洗浄後、80℃で乾燥したものを、PVAに対して30質量%となるように原液に添加する、いわゆる原液添加にて実施例1と同様の方法で紡糸し繊維を得た。これを、実施例1と同様の方法にて不織布に配置し、センシング試験を実施した。
(2)上記(1)で得られた繊維において、硫化銅粒子の含有量は28.8質量%であったが、50cm当りの抵抗値は、3.8×10kΩであり、導電性に劣るものであった。またセンシング試験において、生理食塩水にて繊維間が濡れても、ランプは点灯せず、センサーとして使用できるものではなかった。
[比較例4]
(1)平均粒子径が1μmの市販のカーボンブラックを、PVAに対して30質量%となるように原液に添加する、いわゆる原液添加にて実施例1と同様の方法で紡糸し繊維を得た。これを、実施例1の方法にて不織布に配置し、センシング試験を実施した。
(2)上記(1)で得られた繊維において、繊維中のカーボンブラックの含有量は26.3質量%で、繊維内部でのカーボンブラックの平均粒子径は1.5μmであり、繊維内部で所々凝集していた。また、50cm当りの抵抗値は、7.2×10kΩであり、導電性に劣るものであった。またセンシング試験において、生理食塩水にて繊維間が濡れても、ランプは点灯せず、センサーとして使用できるものではなかった。
[比較例5]
(1)市販の金属メッキ繊維(日本蚕毛社製サンダーロン:アクリル繊維表面に硫化銅がメッキされたものであり、その50cm当りの抵抗値は20kΩ)を用いて、実施例1と同様な方法で布帛に配置し、センシング試験を実施した結果、繊維間が生理食塩水で濡れた直後にランプが点灯し、尿漏れセンサーとして使用できるものであった。
(2)上記で得られた繊維が配置された不織布の長手方向の一端に、4.9Nの荷重をかけて、1分間に175回の折り曲げ速度で、左右135°/サイクルの繰り返しを1000回行う、屈曲性試験を施した。これに、実施例1と同様な方法でセンシング試験を実施した結果、繊維間が生理食塩水で濡れてもランプは点灯しなかった。布帛より繊維を取り出してその抵抗値を測定したところ、1.6×10kΩと、抵抗値が大きくなっていた。繊維表面を観察したところ、メッキが剥げており、耐屈曲性に劣るものであった。
Figure 2007240470
Figure 2007240470
表1、2及び図1の結果から明らかなように、平均粒子径が500nm以下の硫化銅微粒子を繊維の表層および/または内部に含有されており、且つ50cm当りの抵抗値が200kΩ以下である導電性PVA系繊維が配置されてなる尿漏れセンサーは、優れたセンシング機能をだけでなく、通気性、屈曲性、供給安定性に優れている。一方、表2の結果から明らかなように、硫化銅微粒子を含まない繊維や、含んでいても繊維中の平均粒子径が500nm以上のもの、或いは表層および/または内部に含有せず、表面にメッキされた繊維を配置してなる尿漏れセンサーは、本発明の効果を発現することはできない。
本発明によれば、従来技術では困難であった、導電性や屈曲性、通気性、供給安定性、取り扱い性に優れた尿漏れセンサー及び該センサーを用いた尿漏れ検知オムツを提供することが可能であり、一般家庭、介護施設、老人施設などではば広く使用することができる。
本発明の尿漏れセンサーに配置される導電性PVA系繊維中において、繊維の表層および/または内部に硫化銅微粒子が分散している状態の一例を示す透過型電子顕微鏡写真。 尿漏れセンサーのセンシング試験の一例を示した概略図。

Claims (4)

  1. ポリビニルアルコール系ポリマーと平均粒子径500nm以下の硫化銅微粒子からなり、且つ硫化銅微粒子が繊維の表層および/または内部に含有されてなる導電性ポリビニルアルコール系繊維が、布帛の面方向に間隔をおいて配置されていることを特徴とする尿漏れセンサー。
  2. 配置される導電性ポリビニルアルコール系繊維の50cm当りの抵抗値が200kΩ以下であることを特徴とする請求項1記載の尿漏れセンサー。
  3. 配置される導電性ポリビニルアルコール系繊維の表層および/または内部に含有される硫化銅微粒子がポリビニルアルコール系ポリマー100質量%に対して、1〜40質量%含有されてなる請求項1または2記載の尿漏れセンサー。
  4. 請求項1〜3記載のいずれか1項記載の尿漏れセンサーを用いた尿漏れ検知オムツ。
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