JP2007239043A - 高周波熱処理方法および高周波熱処理品 - Google Patents

高周波熱処理方法および高周波熱処理品 Download PDF

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Abstract

【課題】温度制御を可能にし、熱処理の条件出しを容易に行なうとともに、被処理物の品質を安定させることが可能な高周波熱処理方法を提供する。また、製造コストが抑制され、かつ品質の安定した高周波熱処理品を提供する。
【解決手段】高周波焼入方法は、被処理物1の表面に、被処理物1が加熱される温度域において被処理物1よりも耐酸化性の高い安定化層が形成される表面安定化工程11と、表面安定化工程11において安定化層が形成された被処理物1が焼入硬化される焼入硬化工程10とを備えている。焼入硬化工程10は、安定化層が形成された被処理物1の温度が調節される温度制御工程20と、加熱された被処理物1が冷却されるべきタイミングが決定されて、被処理物1が冷却される焼入制御工程30とを含んでいる。
【選択図】図3

Description

本発明は高周波熱処理方法および高周波熱処理品に関し、より特定的には、高周波加熱により被処理物を加熱して熱処理を行なう高周波熱処理方法および高周波熱処理品に関するものである。
高周波熱処理方法は、誘導コイルに高周波電流を流すことにより、誘導コイルに隣接してセットされた被処理物を誘導加熱し、被処理物の焼入、焼戻などの熱処理を行なう熱処理方法である。この高周波熱処理方法は、一般的に鋼の熱処理方法として採用されている浸炭焼入や光輝熱処理などに比べて、作業環境がクリーンであり、少量ロットの製品を短時間で効率よく処理できるといった点で有利である。そのため、高周波熱処理方法や高周波熱処理設備に関しては、被処理物の硬度の制御や、熱処理の効率向上を目的として多くの検討がなされ、種々の提案がなされている(たとえば特許文献1および2参照)。
特開2004−315851号公報 特開2004−225081号公報
高周波熱処理においては、一般的な雰囲気炉のような炉内の雰囲気を介して被処理物が加熱される熱処理方法とは異なり、被処理物が誘導加熱により直接加熱される。そのため、被処理の温度を測定するためには、被処理物を直接測温する必要がある。しかし、高周波熱処理設備には、被処理物を均一に加熱するため、被処理物を移動させるための駆動機構が設けられている場合が多く、接触式の温度計の設置が困難である場合が多い。
これに対し、被処理物の測温を、放射温度計を用いて行なう対策が考えられる。しかし、鋼などの金属は金属光沢を有し、光の反射率が高い。そのため、金属からなる被処理物においては、外部の光源からの光が反射されることによる外乱の影響のため、放射温度計の測温精度が低下する場合が多い。また、鋼などの金属は放射率が小さいため、放射温度計が取得する光の量が小さく、上記外乱の影響が一層大きくなる。
上述のような理由により、高周波熱処理においては被処理物の測温が容易ではなく、温度と時間との熱処理条件による熱処理の制御(温度制御)が難しい。そのため、一般に、高周波熱処理においては、電力と時間との熱処理条件による熱処理の制御(電力制御)が採用される場合が多い。この電力制御による高周波熱処理では、被処理物に付与された加熱履歴が明確ではないため、電源から誘導コイルに出力される電力と当該出力の時間とを変化させながら、被処理物のサンプルが実際に熱処理され、当該サンプルの硬度、ミクロ組織などの熱処理品質が確認されて、実験的に熱処理条件が設定されている。そのため、所望の熱処理品質を被処理物に付与するためには、被処理物の形状や材質が変更されるたびに、熱処理品質を確認しながらの熱処理の試行錯誤を繰り返して熱処理条件を設定する必要がある。その結果、熱処理の条件出しに手間がかかるだけでなく、被処理物の品質が十分に安定しないという点が高周波熱処理の問題点となっている。また、これに起因して、高周波熱処理により熱処理された高周波熱処理品の製造コストが上昇している。
そこで、本発明の目的は、温度制御を可能にし、熱処理の条件出しを容易に行なうとともに、被処理物の品質を安定させることが可能な高周波熱処理方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、製造コストが抑制され、かつ品質の安定した高周波熱処理品を提供することである。
本発明の一の局面における高周波熱処理方法は、高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する高周波熱処理方法である。当該高周波熱処理方法は、被処理物の表面に、被処理物が加熱される温度域において当該被処理物よりも耐酸化性の高い安定化層が形成される表面安定化工程と、表面安定化工程において安定化層が形成された被処理物が焼入硬化される焼入硬化工程とを備えている。
そして、焼入硬化工程は、安定化層が形成された被処理物の温度が調節される温度制御工程と、加熱された被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて、被処理物が冷却される焼入制御工程とを含んでいる。温度制御工程は、被処理物の表面に形成された安定化層の表面の温度が放射温度計により測定される温度制御用測温工程と、温度制御用測温工程において測定された温度の情報に基づき被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程と、温度制御信号に基づいて、高周波加熱により被処理物が加熱される加熱工程とを有している。
焼入制御工程は、被処理物の表面に形成された安定化層の表面の温度が放射温度計により測定される焼入用測温工程と、焼入用測温工程において測定された温度の情報に基づき加熱時間が調節され、被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程と、冷却開始信号に基づいて、被処理物が冷却されることにより被処理物が焼入硬化される冷却工程とを有している。
一般に、高周波焼入においては、まず熱処理条件として電力と時間とのパラメータからなる電源出力の推移(電源出力パターン)が、過去の熱処理の実績や作業者の経験に基づいて決定される(電力制御)。そして、熱処理条件は、被処理物の形状、材質等を考慮しつつ電力と時間とを変化させて被処理物のサンプルを実際に熱処理して決定される。そのため、熱処理条件の決定に経験と手間が必要となる。また、鋼製品の焼入においては、被処理物を所定温度に所定時間以上保持した後、急冷する必要がある。しかし、上記方法(電力制御)では被処理物の加熱履歴を正確に把握することは困難である。そのため、熱処理条件を決定するためには、実際に熱処理を実施して得られた被処理物の硬度、ミクロ組織等の品質を調査する必要がある。
これに対し、本発明の一の局面における高周波熱処理方法では、焼入硬化工程において、温度と時間とをパラメータとして被処理物の加熱が制御される(温度制御)。そのため、被処理物の加熱履歴を正確に把握することが可能であり、被処理物に必要な加熱履歴を与えた後、急冷することで焼入を行なうことができる。その結果、実際に熱処理を実施して得られた被処理物の硬度、ミクロ組織等の品質の調査を必ずしも行なう必要がなく、また、熱処理条件の決定に経験や手間が必ずしも必要ない。このように、本発明の一の局面における高周波熱処理方法によれば、前述の高周波熱処理の問題点が解消される。
また、温度制御を採用する本発明の一の局面における高周波熱処理方法においては、被処理物の測温精度が極めて重要である。前述のように、高周波熱処理においては、熱処理装置のレイアウト上の問題により、被処理物の測温に熱電対などの接触式温度計の採用は困難である、そのため、本発明の一の局面における高周波熱処理方法においても、被処理物の測温には、放射温度計が採用される。一方、高周波熱処理では、通常、雰囲気の制御は行なわれず、大気中(空気中)で被処理物が加熱される。そのため、鋼からなる被処理物が熱処理される場合、被処理物は熱処理の進行とともに大気中の酸素により酸化される。その結果、熱処理の進行中に被処理物の表面状態が変化し、これに伴い放射率が変化するため、放射温度計による被処理物の測温の精度が低下する。
被処理物の耐酸化性が低い場合、被処理物の表面は、熱処理の初期に酸化され、その後、表面状態はほとんど変化しないため、測温精度に及ぼす表面状態の変化の影響は比較的小さい。しかし、被処理物が3%以上のクロムを含む鋼、たとえばJIS規格 SUS440Cなどのマルテンサイト系ステンレス鋼や、AISI規格M50などの高速度鋼などから構成されている場合、表面の酸化に比較的長い時間を要するため、測温精度に及ぼす表面状態の変化の影響が大きくなる。
これに対し、本発明の一の局面における高周波熱処理方法では、表面安定化工程において、被処理物の表面に、被処理物が加熱される温度域において被処理物よりも耐酸化性の高い安定化層が形成される。そのため、焼入硬化工程において、被処理物の表面の酸化による表面状態の変化が抑制され、放射温度計による測温精度の低下が回避される。その結果、本発明の一の局面における高周波熱処理方法によれば、被処理物の品質を安定させることができる。
以上のように、本発明の一の局面における高周波熱処理方法によれば、温度制御を可能にし、熱処理の条件出しを容易に行なうことが可能であるとともに、被処理物の品質を安定させることが可能な高周波熱処理方法を提供することができる。
なお、上述の温度制御用測温工程においては、被処理物が加熱され過ぎることにより残留オーステナイト量が過多となることを回避するため、被処理物のうち温度の高くなる部位、たとえば誘導コイルに近接し、磁束の侵入の最も多い部位の温度が測定されることが好ましい。また、上述の焼入用測温工程においては、被処理物の焼入前の加熱が不足することを回避するため、被処理物のうち温度の低くなる部位、たとえば誘導コイルから遠く、磁束の侵入の最も少ない部位の温度が測定されることが好ましい。
本発明の他の局面における高周波熱処理方法は、高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する高周波熱処理方法である。当該高周波熱処理方法は、データ取得工程と、記憶工程と、確認工程と、量産工程とを備えている。データ取得工程では、被処理物のサンプルが加熱されて焼入硬化されることにより、プロセスデータが取得される。記憶工程では、データ取得工程において被処理物のサンプルを加熱するために高周波加熱用の電源から誘導コイルに出力された電源出力の推移データと、被処理物のサンプルの冷却タイミングを特定するための冷却タイミングデータとがプロセスデータとして記憶される。
確認工程では、データ取得工程において焼入硬化された被処理物の材質データに基づき、電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性が確認される。量産工程では、記憶工程で記憶され、かつ確認工程で妥当性が確認された電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータに従って被処理物が焼入硬化される。そして、データ取得工程における焼入硬化は、上記本発明の一の局面における高周波熱処理方法により実施される。
上記本発明の一の局面における高周波熱処理方法においては、被処理物の測温に放射温度計が採用されている。そして、表面安定化工程が実施されることにより、測温精度に及ぼす外乱の影響が抑制されている。しかし、たとえば放射温度計のレンズに汚れや水滴が付着した場合、測定された温度には誤差が含まれるおそれがあり、外乱への更なる対策を講じることが好ましい。
これに対し、上記他の局面における高周波熱処理方法では、データ取得工程として上記本発明の一の局面における高周波熱処理方法による高周波焼入を被処理物のサンプルに対して行なった後、測温データ等のプロセスデータを記憶する記憶工程を設け、さらに記憶されたプロセスデータの妥当性を確認する確認工程を経た上で、妥当性が担保されたプロセスデータに基づいて量産工程の熱処理が行なわれる。これにより、本発明の他の局面における高周波熱処理方法によれば、温度制御を可能にし、熱処理の条件出しを容易に行なうことが可能であるとともに、被処理物の品質をさらに安定させることが可能な高周波熱処理方法を提供することができる。
なお、上記確認工程において、電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性を確認するために調査される材質データは、たとえば被処理物の硬度、被処理物を構成する鋼のミクロ組織、残留オーステナイト量などから選択される1以上の材質データとすることができる。また、当該材質データは、データ取得工程の温度制御用測温工程および焼入用測温工程において測定された温度データを、記憶工程において記憶し、当該データとプロセスデータとして記憶された冷却タイミングデータに基づいて推定することができるが、熱処理後の被処理物のサンプルを実際に調査して取得してもよい。
被処理物の硬度は、熱処理後の被処理物を切断し、切断面を研磨した後、当該切断面の硬度をビッカース硬度計、ロックウェル硬度計などの硬度計により測定して得ることができる。また、被処理物を構成する鋼のミクロ組織は、熱処理後の被処理物を切断し、切断面を研磨した後、当該切断面をナイタル(硝酸アルコール溶液)などの腐食液により腐食し、光学顕微鏡などの顕微鏡により観察することにより調査することができる。また、残留オーステナイト量は、たとえば熱処理後の被処理物の所望の部位を電解研磨し、X線回折計(XRD)を用いて、マルテンサイトα(211)面とオーステナイトγ(220)面との回折強度とを測定することにより、算出することができる。
本発明の別の局面における高周波熱処理方法は、高周波加熱により被処理物を加熱して焼戻を実施する高周波熱処理方法である。当該高周波熱処理方法は、被処理物の表面に、被処理物よりも耐酸化性の高い安定化層が形成される表面安定化工程と、表面安定化工程において安定化層が形成された被処理物が加熱されて焼戻される焼戻工程とを備えている。焼戻工程は、被処理物の温度が調節される温度制御工程と、被処理物の加熱が終了されるべきタイミングが決定されて、被処理物が冷却される焼戻制御工程とを含んでいる。
温度制御工程は、被処理物の表面に形成された安定化層の表面の温度が放射温度計により測定される温度制御用測温工程と、温度制御用測温工程において測定された温度の情報に基づき、被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程と、温度制御信号に基づいて、高周波加熱により被処理物が加熱される加熱工程とを有している。焼戻制御工程は、被処理物の表面に形成された安定化層の表面の温度が放射温度計により測定される焼戻用測温工程と、焼戻用測温工程において測定された温度の情報に基づき加熱時間が調節され、被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程と、冷却開始信号に基づいて、被処理物が冷却されることにより被処理物の焼戻が終了する冷却工程とを有している。
本発明の別の局面における高周波熱処理方法では、焼戻工程において、温度制御による熱処理が採用される。そのため、上記一の局面における高周波熱処理方法と同様に、被処理物の加熱履歴を正確に把握することが可能であり、被処理物に必要な加熱履歴を与えた後、冷却することで焼戻を行なうことができる。その結果、実際に熱処理を実施して得られた被処理物の材質、たとえば硬度の調査を必ずしも行なう必要がなく、また、熱処理条件の決定に経験や手間が必ずしも必要ない。
また、本発明の別の局面における高周波熱処理方法では、表面安定化工程において、被処理物の表面に、被処理物が加熱される温度域において被処理物よりも耐酸化性の高い安定化層が形成される。そのため、焼戻工程において、被処理物の表面の酸化による表面状態の変化が抑制され、放射温度計による測温精度の低下が回避される。その結果、本発明の別の局面における高周波熱処理方法によれば、被処理物の品質を安定させることができる。
以上のように、本発明の別の局面における高周波熱処理方法によれば、温度制御を可能にし、熱処理の条件出しを容易に行なうことが可能であるとともに、被処理物の品質を安定させることが可能な高周波熱処理方法を提供することができる。なお、上述の焼戻用測温工程においては、被処理物の品質を安定させるため、複数部位の温度が測定されることが好ましい。
本発明のさらに別の局面における高周波熱処理方法は、高周波加熱により被処理物を加熱して焼戻を実施する高周波熱処理方法である。当該高周波熱処理方法は、データ取得工程と、記憶工程と、確認工程と、量産工程とを備えている。データ取得工程では、被処理物のサンプルが加熱されて焼戻されることによりプロセスデータが取得される。記憶工程では、データ取得工程において被処理物のサンプルを加熱するために高周波加熱用の電源から誘導コイルに出力された電源出力の推移データと、被処理物のサンプルの冷却タイミングを特定するための冷却タイミングデータとがプロセスデータとして記憶される。
確認工程では、データ取得工程において焼戻された被処理物の材質データに基づき、電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性が確認される。量産工程では、記憶工程で記憶され、かつ確認工程で妥当性が確認された電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータに従って被処理物が焼戻される。そして、データ取得工程における焼戻は、上記本発明の別の局面における高周波熱処理方法により実施される。
本発明のさらに別の局面における高周波熱処理方法では、データ取得工程として上記本発明の別の局面における高周波熱処理方法による高周波焼戻を被処理物のサンプルに対して行なった後、測温データ等のプロセスデータを記憶する記憶工程を設け、さらに記憶されたプロセスデータの妥当性を確認する確認工程を経た上で、妥当性が担保されたプロセスデータに基づいて量産工程の熱処理が行なわれる。これにより、本発明のさらに別の局面における高周波熱処理方法によれば、温度制御を可能にし、熱処理の条件出しを容易に行なうことが可能であるとともに、被処理物の品質をさらに安定させることが可能な高周波熱処理方法を提供することができる。
なお、上記確認工程において、電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性を確認するために調査される材質データは、たとえば被処理物の焼戻において最も重要な特性である被処理物の硬度とすることができる。また、当該材質データは、データ取得工程の温度制御用測温工程および焼戻用測温工程において測定された温度データを、記憶工程において記憶し、当該データとプロセスデータとして記憶された冷却タイミングデータに基づいて推定することができるが、熱処理後の被処理物のサンプルを実際に調査して取得してもよい。
上記高周波熱処理方法において好ましくは、表面安定化工程は、被処理物の表面に黒体塗料が塗布される黒体塗料塗布工程を含んでいる。被処理物が加熱される温度域において、放射率の変化の極めて小さい黒体塗料を被処理物の表面に塗布した上で、高周波熱処理が実施されることにより、熱処理中の被処理物の表面における放射率の変化が抑制される。その結果、放射温度計による測温の精度が一層向上し、被処理物の品質がより安定する。
ここで、黒体塗料としては、たとえばシリコン系の艶消し塗料などを使用することができ、より具体的には、たとえばTEMPIL社製のPyromark High Temperature Paint、ジャパンセンサー株式会社製の高温黒体塗料JSC3号などを採用することができる。
上記高周波熱処理方法において好ましくは、表面安定化工程は、被処理物が熱酸化されることにより、被処理物の表面に酸化鉄層が形成される熱酸化工程を含んでいる。被処理物が加熱される温度域において、被処理物よりも耐酸化性が高く、放射率の変化の小さい酸化鉄層を被処理物の表面に形成した上で、高周波熱処理が実施されることにより、熱処理中の被処理物の表面における放射率の変化が抑制される。その結果、放射温度計による測温の精度が一層向上し、被処理物の品質がより安定する。
ここで、上記酸化鉄層は、放射率の変化を抑制する観点からは、厚みの厚い酸化鉄層であることが好ましいが、その効果は当該酸化鉄層により被処理物の表面全体が完全に覆われることによりほぼ飽和する。したがって、酸化鉄層の形成の程度は熱処理の効率向上の観点も考慮して決定することが好ましい。
具体的には、たとえば、被処理物のサンプルを高周波加熱し、その際に当該被処理物の表面に熱電対などの接触式温度計を接触させて温度を測定するとともに、同一部位を放射温度計により測温して両者の測温データを取得する。そして、たとえば両者の測温データの差の変化率が10秒間あたり3%以下となれば、十分な酸化鉄層が形成されたと考えることができる。その後、放射温度計の放射率設定の調整を実施することで、当該酸化鉄層が形成された被処理物の表面の温度を、放射温度計により正確に測定することができる。
上記高周波熱処理方法において好ましくは、表面安定化工程は、被処理物が酸性の溶液中に浸漬されることにより、被処理物の表面に酸化鉄層が形成される酸性溶液浸漬工程を含んでいる。上述の場合と同様に、被処理物が加熱される温度域において、被処理物よりも耐酸化性が高く、放射率の変化の小さい酸化鉄層を被処理物の表面に形成した上で、高周波熱処理が実施されることにより、熱処理中の被処理物の表面における放射率の変化が抑制される。その結果、放射温度計による測温の精度が一層向上し、被処理物の品質がより安定する。
ここで、被処理物を浸漬するための酸性の溶液としては、硫酸、塩酸、硝酸などを採用することができる。また、酸化鉄層の形成後に、上述と同様に接触式温度計と放射温度計とによる被処理物の表面の測温を行ない、同様の手順で酸化鉄層が十分に形成されたか否かを判断することができる。
本発明に従った高周波熱処理品は、上述の高周波熱処理方法で熱処理されて作製されたことを特徴とする。本発明の高周波熱処理品によれば、温度制御により熱処理されるとともに、熱処理の条件出しが容易な高周波熱処理方法により熱処理されているため、低価格化が可能であり、かつ品質の安定した高周波熱処理品を提供することができる。
なお、本発明の高周波熱処理品は、たとえば、軸受の軌道輪、転動体など、鋼からなり、焼入硬化されて製造される機械部品に適用することができる。
以上の説明から明らかなように、本発明の高周波熱処理方法によれば、温度制御を可能にし、熱処理の条件出しを容易に行なうとともに、被処理物の品質を安定させることが可能な高周波熱処理方法を提供することができる。さらに、本発明の高周波熱処理品によれば、製造コストの抑制され、かつ品質の安定した高周波熱処理品を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
(実施の形態1)
図1は、本発明の一実施の形態である実施の形態1における高周波熱処理品としての転がり軸受外輪の構成を示す概略断面図である。図1を参照して、実施の形態1における転がり軸受外輪の構成を説明する。
図1を参照して、実施の形態1における高周波熱処理品としての転がり軸受外輪1は、円環状の形状を有している。そして、転がり軸受外輪1は、内周面1Bに転動体としての玉、ころなどが接触しつつ転走するための転走面1Cが形成されているとともに、他の部材と接触して転がり軸受外輪を当該他の部材に対して保持するための外周面1Aを有している。ここで、転がり軸受外輪1は転動疲労強度および剛性の観点から、58HRC以上の硬度を有していることが好ましい。また、寸法安定性の観点から、残留オーステナイト量は12体積%以下に抑制されていることが好ましい。
そして、転がり軸受外輪1は、以下に説明する本発明の一実施の形態における高周波熱処理方法で熱処理されて作製されているため、製造コストが抑制され、かつ品質の安定した高周波熱処理品となっている。
次に、本発明の一実施の形態である実施の形態1における高周波熱処理設備としての高周波焼入設備について説明する。図2は、実施の形態1における高周波焼入設備の構成を示す概略図である。図2を参照して、実施の形態1における高周波焼入設備の構成を説明する。
図2を参照して、実施の形態1における高周波焼入設備91は、高周波加熱により被処理物(たとえば転がり軸受外輪1)を加熱して焼入硬化する本発明の高周波熱処理方法に使用される高周波焼入設備であって、被処理物としての転がり軸受外輪1の温度を調節するための温度制御装置50と、加熱された転がり軸受外輪1が冷却されるべきタイミングを調節するための焼入制御装置60とを備えている。また、後述するように、転がり軸受外輪1の外周面1Aおよび内周面1Bには、転がり軸受外輪1が加熱される温度域、すなわち焼入温度において、転がり軸受外輪1よりも耐酸化性の高い安定化層9が形成されている。
温度制御装置50は、転がり軸受外輪1において、高周波加熱により最も温度が高くなると考えられる外周面1Aの温度データを取得し、転がり軸受外輪1の温度データに基づく温度の情報を出力する温度制御用測温装置としての第1放射温度計3と、第1放射温度計3に接続され、第1放射温度計3からの温度の情報に基づき被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号を出力する温度調節装置4と、温度調節装置4に接続され、温度調節装置4からの温度制御信号に基づき、高周波加熱により転がり軸受外輪1を加熱する加熱装置2とを含んでいる。加熱装置2は、たとえば高周波電流を流すための誘導コイルと、誘導コイルに接続され高周波電流を発生させる電源とを有している。
焼入制御装置60は、高周波加熱により最も温度が高くなると考えられる外周面1Aから最も遠く、温度の上昇が最も小さいと考えられる内周面1Bの温度データを取得し、内周面1Bの温度データに基づく温度の情報を出力する焼入用測温装置としての第2放射温度計5と、第2放射温度計5に接続され、第2放射温度計5からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、転がり軸受外輪1が冷却されるべきタイミングを決定して冷却開始信号を出力する冷却タイミング調節装置6と、冷却タイミング調節装置6に接続され、冷却開始信号に基づいて、転がり軸受外輪1を冷却することにより転がり軸受外輪1を焼入硬化する冷却装置としての冷却液噴射装置7とを含んでいる。
ここで、温度調節装置4および冷却タイミング調節装置6は、たとえばそれぞれパーソナルコンピュータであり、1台のパーソナルコンピュータで温度調節装置4と冷却タイミング調節装置6とを兼ねる構成であってもよい。
次に、上述の高周波焼入設備を用いた本発明の一実施の形態である実施の形態1における高周波熱処理方法としての高周波焼入方法について説明する。図3は、本発明の一実施の形態である実施の形態1における高周波焼入方法の概略を示す図である。
図2および図3を参照して、実施の形態1の高周波焼入方法は、高周波加熱により被処理物(転がり軸受外輪1)を加熱して焼入硬化する高周波熱処理方法であって、転がり軸受外輪1の表面に、転がり軸受外輪1が加熱される温度域において転がり軸受外輪1よりも耐酸化性の高い安定化層9が形成される表面安定化工程11と、表面安定化工程11において安定化層9が形成された転がり軸受外輪1が焼入硬化される焼入硬化工程10とを備えている。
焼入硬化工程10は、安定化層9が形成された転がり軸受外輪1の温度が調節される温度制御工程20と、加熱された転がり軸受外輪1が冷却されるべきタイミングが決定されて、転がり軸受外輪1が冷却される焼入制御工程30とを含んでいる。
温度制御工程20は、転がり軸受外輪1の外周面1Aに形成された安定化層9の表面の温度が第1放射温度計3により測定される温度制御用測温工程23と、温度制御用測温工程23において測定された温度の情報に基づき、転がり軸受外輪1の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程24と、温度制御信号に基づいて、高周波加熱により転がり軸受外輪1が加熱される加熱工程22とを有している。
焼入制御工程30は、転がり軸受外輪1の内周面1Bに形成された安定化層9の表面の温度が第2放射温度計5により測定される焼入用測温工程35と、焼入用測温工程35において測定された温度の情報に基づき加熱時間が調節され、転がり軸受外輪1が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程36と、冷却開始信号に基づいて、転がり軸受外輪1が冷却されることにより転がり軸受外輪1が焼入硬化される冷却工程37とを有している。
実施の形態1における高周波焼入方法は、温度制御により実施され、熱処理の条件出しが容易であるため、転がり軸受外輪1の製造コストを抑制し、かつ品質を安定させることが可能である。
なお、表面安定化工程11においては、転がり軸受外輪1の表面に黒体塗料が塗布されることにより、上述の安定化層9としての黒体塗料層を形成してもよい。また、黒体塗料層に代えて、酸化鉄層が形成されてもよい。この酸化鉄層は、たとえば転がり軸受外輪1の表面が熱酸化されることにより形成されてもよいし、転がり軸受外輪1が酸性の溶液中に浸漬されることにより形成されてもよい。
次に、上述の実施の形態1における高周波焼入方法の具体的手順について、転がり軸受外輪1の材質がJIS SUJ2である場合を例に、詳細に説明する。
ここでは、180℃で焼戻した場合の焼戻後の硬度(焼戻硬度)が強度の観点からHRC58以上(HV653以上)であり、寸法安定性の観点から残留オーステナイト量が12体積%以下であることを規格値として設定する。
図4は、熱処理の規格値を満足するための焼入温度と保持時間との関係を示したSUJ2材のTTA(Time Temperature Austinitization)線図である。図4において横軸は焼入温度(℃)、縦軸は保持時間(秒)を示している。また、領域Aは硬度規格を満足しない範囲であり、領域Bは残留オーステナイト量が規格を満足しない範囲であり、領域Cはいずれの熱処理品質規格をも満足する範囲である。図4を参照して、実施の形態1における高周波焼入方法のうち、冷却タイミング調節工程の熱処理条件の決定について説明する。
実施の形態1における高周波焼入においては、まず、目標の熱処理条件(焼入における加熱温度および加熱時間の条件)を決定する必要がある。図4を参照して、SUJ2製の転がり軸受外輪の硬度は焼入温度と保持時間とが大きくなるにつれて規格を満たしやすくなる。これに対して、オーステナイト量は焼入温度と保持時間とが大きくなるにつれて規格を満たしにくくなる。熱処理の規格値(硬度規格および残留オーステナイト量の規格値)を満たすためには、比較的低温で長時間の条件設定の方が熱処理品質を制御しやすい。たとえば、1050℃の比較的高温での処理では、熱処理品質規格を確保するための保持時間は15秒以上であるが、17秒以上保持してしまうと規格を満たすことができない。これに対し、950℃の処理では、熱処理品質を確保するための保持時間は20秒以上であり、60秒までは規格を満たすことができる。一方、短時間での昇温が可能であるという高周波熱処理の利点を生かすためには、できるだけ高温、短時間での処理が望ましい。すなわち、図4を参照して、熱処理品質の制御の容易性と、熱処理の効率とのバランスを考慮しつつ、目標の熱処理条件を決定することができる。
なお、図4はSUJ2に関するTTA線図であるが、材料に応じたTTA線図を作成することができれば、その線図に応じて熱処理条件を決定すればよいので、本実施の形態1の高周波熱処理方法は材料の種類を問わず利用することができる。
熱処理条件が決まると、図2を参照して、熱処理条件をパーソナルコンピュータなどの温度調節装置4に入力する。温度調節装置4は、第1放射温度計3と、加熱装置2とに接続されており、第1放射温度計3からの温度情報に基づき、PID(Proportional Integral Differential)制御により温度制御信号を加熱装置2に出力し、第1放射温度計3の測温部である外周面1Aの温度推移を制御することができる。なお、外周面1Aは、転がり軸受外輪1において磁束の侵入が最も多くなり、高周波加熱による温度上昇の最も大きい部位である。
このとき同時に、第2放射温度計5の測温データをパーソナルコンピュータなどの冷却タイミング調節装置6に取り込み、その温度推移から加熱が十分であるかどうかを判断し、冷却タイミングを調節する。冷却タイミングの判断は、第2放射温度計5の測温部である内周面1Bの温度推移がTTA線図上で規格内におさまったかどうかで行なう。なお、内周面1Bは、転がり軸受外輪1において磁束の侵入が最も少なくなり、高周波加熱による温度上昇の最も小さい部位である。また、温度調節装置4と冷却タイミング調節装置6とを同一のパーソナルコンピュータで兼ねることもできる。
TTA線図上で規格内におさまったかどうかという判断には、下記の式(1)および式(2)を用いることができるが、好ましくは被処理物の温度が刻一刻と変化することを考慮して式(1)を補正した式(3)および式(2)が用いられる。
ep=2(Dt)1/2・・・式(1)
ep=A×2(Dt)1/2・・・式(3)
D:鋼中の炭素の拡散定数、t:保持時間(秒)、A:補正係数
D=D0exp(−Q/RT)・・・式(2)
0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K)
ここで補正係数Aの値は、以下の式(4)から得られる値である。
erf(A)=1−0.1573C1/C2・・・式(4)
1:727℃のCの固溶度(SUJ2の場合:0.52)
2:任意の温度におけるCの固溶度
式(3)は、式(4)のC1の値が、C2になった場合の炭素の拡散長Depを計算する式である。C2の値は任意の温度における炭素の固溶度であり、これらの値は、実験的もしくは、熱力学の平衡計算により、あらかじめ求めることができる。冷却は、式(3)中の炭素の拡散長Depの値がある値(Dep *)に達した時に行なう。
なお、第2放射温度計5の測温部は、必ずしも1箇所である必要はない。測温部を複数とすることにより、複数の部位での熱処理品質を確保することができる。
図5は、補正Depの値を温度推移から積算する方法を説明するための焼入温度と保持時間との関係を示す説明図である。図5の上段左のグラフにおいては横軸を時間t、縦軸を温度Tとして温度制御側(転がり軸受外輪1の外周面1A)および焼入制御側(転がり軸受外輪1の内周面1B)における温度推移が示されている。また、上段右の図は上段左のグラフの領域αの部分を拡大して示した図である。また、下段には補正Depの値を温度推移から積算するための計算式が示されている。
図5を参照して、被処理物が加熱されている間、冷却タイミングを決定するための測温部位(つまり第2放射温度計5の測温部位である内周面1B)の温度は刻一刻と変化するので、補正Dep(式(3)における補正されたDep、以下単にDepという)の値は図5に示すように、Dep1→Dep2→・・・→Depnと積算する必要がある。転がり軸受外輪1の昇温が開始されると、焼入制御側(内周面1B側)は、磁束の進入が温度制御側(外周面1A側)より少ないので、温度制御側に比べて遅れて温度が上昇する。通常、温度が727℃を越えると、鉄のオーステナイト化が始まるが、昇温速度が速いと鉄の加熱変態温度は変化する。そのため、拡散長を計算するための温度は、昇温速度によって変化させなくてはならない。
昇温速度は、電源の能力、コイルと被処理物の形状などによって異なるので、装置と被処理物の種類によって、拡散長を計算するための温度は適宜変更されることが好ましい。焼入制御側の温度が加熱変態温度を越えたところから、図中の式によって拡散長Depを計算する。任意の時間におけるDepnがDep *を越えると、ただちに焼入を開始する。Dep *の値は、所定の熱処理品質を維持できる範囲で、できるだけ小さな値である方が、熱処理時間低減という観点からは望ましい。しかし、品質を安定させる観点からは、ある程度安全をみた設定値とするのが望ましい。
図6は、Dep *の値に対する硬度と処理時間との変化を示す図である。図6は、最高到達温度を900℃、降温速度を0℃/秒とし、焼入後に焼戻を180℃で120分行なった場合の結果を示している。図6において、横軸はDep *の値(mm)、縦軸は硬度(HV)および処理時間(秒)を示している。また、図中の黒丸は硬度、白丸は処理時間を示している。
図6を参照して、処理時間は、Dep *を大きく設定するほど、必要な拡散長が長くなるため増加することが分かる。また硬度は、Dep *の値を大きく設定するほど、処理時間が増加するので、高くなっていくことが分かる。ただし、硬度は、加熱が長すぎると飽和する領域が存在し、Dep *が約0.015mmで最高硬さに達していた。したがって、Dep *の値は0.015mm以下が望ましい考えられる。つまり、本実施の形態の場合、たとえばDep *の値を0.015mmとし、上述のように積算されたDepnが0.015mmとなった時点で、冷却タイミング調節装置6から冷却開始信号が冷却液噴射装置7に向けて出力され、これに基づいて冷却液噴射装置7が転がり軸受外輪1をA点以上の温度からM点以下の温度に冷却することにより、転がり軸受外輪1を焼入硬化することができる。
なお、A点とは鋼を加熱した場合に、鋼の組織がフェライトからオーステナイトに変態を開始する温度に相当する点をいう。また、M点とはオーステナイト化した鋼が冷却される際に、マルテンサイト化を開始する温度に相当する点をいう。
次に、実施の形態1の変形例について説明する。実施の形態1の変形例における高周波熱処理方法、高周波熱処理設備および高周波熱処理品は基本的に上述した実施の形態1と同様の構成を有している。しかし、冷却タイミングの判断において転がり軸受外輪1の内周面1Bの温度推移がTTA線図上で規格内におさまったどうかの判断に下記の式(5)および式(2)を用いる点で異なっている。以下、転がり軸受外輪1の内周面1Bの温度推移がTTA線図上で規格内におさまったどうかの判断を、式(5)および式(2)を用いて行なう方法について説明する。
∂C/(∂t)=D∂2C/(∂x2)・・・式(5)
D:鋼中の炭素の拡散定数、C:炭素濃度(質量%)、t:時間(秒)、x:距離
D=D0exp(−Q/RT)・・・式(2)
0:拡散定数のエントロピー項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:絶対温度(K)
ここで、式(5)を差分方程式で表すと、以下の式になる。
m,n+1=rCm+1,n+(1−2r)Cm,n+rCm-1,n・・・式(6)
r=D×Δt/(Δx)2・・・式(7)
冷却タイミングは、式(6)をある境界条件で解き、材料中の炭素の固溶状態が所定の条件を満たしているかどうかで決定する。ここで、境界条件は、たとえば加熱中の転がり軸受外輪1を構成する鋼中における鉄炭化物(セメンタイト;FeC)と素地との界面において、ある温度での炭素固溶濃度が当該温度での炭素の固溶度に等しくなっているとの仮定の下に与えることができる。
図7は、加熱中の被処理物の温度推移を示す図である。また、図8〜図10は、炭素の固溶開始からの各時間T(0.4秒後、0.8秒後、1.2秒後)における、2つのFeC間の各位置における炭素分布(固溶炭素濃度(質量%)の分布)を示す図である。図7において、横軸は時間(秒)、縦軸は温度(℃)を示している。また、図8〜図10において、横軸は基準となる境界点からの距離(位置)(mm)、縦軸は炭素濃度(質量%)を示している。この炭素の固溶状態の計算においては、2つのFeC間の距離を0.012mmとし、境界点(FeCと素地との界面)における固溶炭素量(炭素濃度(質量%)の値)をSUJ2の固溶度曲線から得られる値(熱力学平衡計算ソフトで計算)とした。この固溶度曲線の式(固溶度の式)は、実験的もしくは熱力学平衡計算によって、材料別にあらかじめ求めておくことができる。
図7〜図10を参照して、たとえば図7に示すように転がり軸受外輪1が加熱された場合、固溶炭素濃度の分布は、図8〜図10に示すように中央位置(2つのFeC間の距離を0.012mmとした場合には0.006mmの位置)において固溶炭素濃度が最も低くなっており、時間が経過するにつれて固溶炭素濃度が全体として増加するとともに、中央位置と両端(FeCと素地との界面)との差が小さくなる傾向にある。
冷却タイミング調節工程36における冷却開始信号は、たとえば転がり軸受外輪1の内周面1Bが上述の焼入条件である固溶炭素濃度の条件を上記中央位置において満たした時点で出力することができる。また2つの境界点間の距離(炭化物間距離)は、被処理物の焼入前の組織や材料の違いによって適宜変更することができる。
つまり本変形例の冷却タイミングの決定はたとえば以下のように行なわれる。まず焼入制御側の温度を第2放射温度計5により測定し(ステップA)、その測定された温度から境界部の炭素量を計算する(ステップB)。境界部の炭素量の値を式(6)の境界条件に与えて式(6)を計算する(ステップC)。以上の工程により、図8〜図10に示すような固溶炭素濃度の分布を計算することができる(ステップD)。得られた固溶炭素濃度の分布から、固溶炭素濃度の分布の中央位置における炭素濃度が所定の炭素濃度(たとえば0.6〜0.8質量%)になったかどうかの確認を行なう(ステップE)。もし中央位置における炭素濃度が所定の炭素濃度に達していたら冷却を開始し(ステップF)、達していなければ冷却は開始されずに加熱が継続されて再度ステップAに戻る。
また、上記ステップCにおける式(6)は以下のように差分法により解くことができる。まず図8〜図10の炭素分布の両端における炭素濃度は、炭化物素地界面の炭素濃度である。したがって、この位置からある濃度(炭素の固溶度)で炭素が素地へ供給される。
たとえば図8〜図10のように、隣り合うFeCの間に区切りを5点とると(境界点を入れると7点)、5個の連立方程式が得られるが、未知数は、C0,n、C1,n、C2,n、C3,n、C4,n、C5,n、C6,nの7つになる。このうちC0,nとC6,nとは炭化物と素地との界面の位置となるため、固溶度の式から炭素濃度の値を与えることができる。これにより、連立方程式は5個で、未知数が5個となるため、C1,n、C2,n、C3,n、C4,n、C5,nの値を求めることができる。
なお、上記固溶炭素濃度の計算を、焼入制御側だけでなく、温度制御側でも行なうことにより、温度制御側の炭素の固溶状態から、温度制御側の残留オーステナイト量を推測することができる。
図11は、本変形例の方法で焼入を実施した場合の、温度制御側および焼入制御側における固溶炭素濃度の分布を示す図である。図11において、横軸は基準となる境界点からの距離(位置)(mm)、縦軸は炭素濃度(質量%)を示している。このデータは、焼入温度(加熱温度)を950℃で一定とし、焼入温度までの昇温速度を300℃/秒とし、炭化物間距離を0.012mmとし、冷却開始の条件を炭素濃度の中央位置での値を0.6質量%とした場合のものである。図11から、固溶炭素濃度の値は、焼入制御側よりも温度制御側のほうが全体的に高くなっていることが分かる。これは、転がり軸受外輪1において、加熱装置2に含まれる誘導コイルに近い温度制御側の温度が、焼入制御側よりも高くなるためである。
さらに、上述固溶炭素濃度の計算の開始温度、すなわち炭素の素地への固溶の開始温度は、昇温速度を考慮して決定することが好ましい。以下、その決定方法について説明する。
鋼が平衡状態を保ちつつ727℃(A点温度)以上に加熱されると、オーステナイト化が始まり、これに伴って炭素の固溶が始まる。しかし、昇温速度が速い場合、A点温度は昇温速度に影響されて変化し、AC1点(加熱変態点)温度においてオーステナイト化を開始する。したがって、上記計算の開始温度は、昇温速度を考慮して変化させることが好ましい。
図12は、炭素含有量1質量%の鋼(JIS SUJ2)における昇温速度による加熱変態点の変化を示す図である。図12において、横軸は昇温速度(℃/秒)、縦軸は加熱変態点AC1(℃)を示している。図12を参照して、昇温速度が変化すると、加熱変態点AC1は、727℃から950℃まで変化することが分かる。よって、被処理物の組成における昇温速度の変化に対する加熱変態点AC1の変化を予め調べておき、被処理物の加熱時における昇温速度から加熱変態点AC1を求めて、その加熱変態点AC1に基づいて上記固溶炭素濃度の計算開始温度(炭素の固溶開始温度)を決定することができる。
図13は、昇温速度を考慮して固溶炭素濃度の計算開始温度を決定する方法を説明するための図である。図13において、横軸は時間、縦軸は温度を示している。図13中には、温度制御側(図2の転がり軸受外輪1の外周面1A)の温度推移と焼入制御側(図2の転がり軸受外輪1の内周面1B)の温度推移と加熱変態点AC1とが示されている。
図13を参照して、加熱初期においては、温度制御側での加熱が急速に行なわれるため、焼入制御側の昇温速度も速くなり、加熱変態点は高くなる。温度制御側の温度が所定の設定温度に近づくと、温度調節装置4により昇温速度が緩やかになるように加熱が制御される。そのため、焼入制御側の昇温速度も緩やかになり、加熱変態点AC1が低下していく。そして、時間が経過すると、加熱変態点AC1は、焼入制御側の温度推移と交わる。この交点がオーステナイト化の開始温度を示していることになるため、この交点の温度(つまりオーステナイト化の開始温度)から上記固溶炭素濃度の計算を開始することができる。
そして、図8〜図10を用いて説明したように、固溶炭素濃度の分布の中央位置における炭素濃度が所定の炭素濃度(たとえば0.6〜0.8質量%)を越えた時点で、ただちに冷却を開始して、被処理物(転がり軸受外輪1)を焼入硬化することができる。
(実施の形態2)
図14は、本発明の一実施の形態である実施の形態2における高周波焼入設備の構成の概略を示す図である。また、図15は、本発明の一実施の形態である実施の形態2における高周波焼入方法の概略を示す図である。図14および図15を参照して、実施の形態2における高周波焼入設備および高周波焼入方法について説明する。
図14を参照して、実施の形態2における高周波焼入設備92は、基本的には実施の形態1における高周波焼入設備91と同様の構成を有している。しかし、実施の形態2における高周波焼入設備92は、加熱装置2、温度調節装置4および冷却タイミング調節装置6に接続され、電源出力の推移データと、冷却タイミングデータとをプロセスデータとして記憶する記憶装置70を備えている点において、実施の形態1の高周波焼入設備91とは異なっている。
また、図15を参照して、実施の形態2における高周波焼入方法は高周波加熱により被処理物(たとえば転がり軸受外輪1)を加熱して焼入硬化する高周波熱処理方法であって、データ取得工程と、記憶工程と、確認工程と、量産工程とを備えている。
データ取得工程では、転がり軸受外輪1のサンプルが加熱されて焼入硬化されることによりプロセスデータが取得される。記憶工程では、データ取得工程において転がり軸受外輪1のサンプルを加熱するために高周波加熱用の電源から誘導コイルに出力された電源出力の推移データと、転がり軸受外輪1のサンプルの冷却タイミングを特定するための冷却タイミングデータとがプロセスデータとして記憶される。
確認工程では、データ取得工程において焼入硬化された転がり軸受外輪1の材質データに基づき、電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性が確認される。すなわち、たとえば、データ取得工程における被処理物の温度推移のデータを記憶し、記憶された温度推移データが分析されることで、外乱の影響の有無が判定され、記憶工程において記憶されたプロセスデータである電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性が確認される。なお、実際に熱処理された転がり軸受外輪1のサンプルの材質データを実験により実際に取得し、電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性が確認されてもよい。
ここで、転がり軸受外輪1の測温において、外乱の影響があった場合、温度推移データに異常な値が記録されるため、記憶された温度推移データから外乱の有無は判断可能である。たとえば、温度推移データに不連続な領域が存在する場合、外乱があったものと判断することができる。また、より正確な判断を行なうためには、同一の部位の温度を測定する接触式または非接触式の温度計を設け、双方のデータの整合性により外乱の有無を判断することもできる。具体的判断の手法としては、たとえば双方のデータから温度差が5%以上となった場合に外乱有りと判断することができる。また、外乱の判断は作業者が温度推移データを確認して行なうことができるが、自動化された他の装置により行なうこともできる。具体的にはたとえば記憶された温度推移データの温度推移の微分値が1000℃/秒以上または−1000℃/秒以下となった場合に外乱有りと判断する方法や、前述のように同一の部位の温度を測定する温度計を設け、両者のデータに5%以上の差が生じた場合に外乱有りと判断するような手段が挙げられる。
量産工程では、記憶工程で記憶され、かつ確認工程で妥当性が確認された電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータに従って転がり軸受外輪1の高周波焼入が行なわれる。そして、データ取得工程における焼入硬化は、本発明の高周波熱処理方法、たとえば実施の形態1の高周波焼入方法により実施される。
実施の形態2における高周波焼入方法により被処理物としての転がり軸受外輪1を焼入硬化することにより、温度制御が可能となり、熱処理の条件出しが容易となるだけでなく、プロセスデータへの外乱の影響が一層抑制され、被処理物(転がり軸受外輪1)の品質が安定する。
そして、実施の形態2における高周波焼入方法により焼入硬化された実施の形態2における高周波焼入品としての転がり軸受外輪1は、低価格化され、かつ一層品質の安定した高周波焼入品となっている。
次に、実施の形態2における高周波焼入の詳細について説明する。図16は、実施の形態2に係る高周波焼入の各工程におけるデータおよび指令の流れを示す図である。図16において、データ取得工程におけるデータの流れは実線矢印、記憶工程におけるデータの流れは破線矢印、確認工程におけるデータの流れは二重破線矢印、量産工程におけるデータの流れは二重実線矢印で表示されている。図16を参照して、実施の形態2に係る高周波焼入の各工程におけるデータの流れを説明する。
図16を参照して、データ取得工程においては、温度制御用測温装置(第1放射温度計3)により測定された被処理物としての転がり軸受外輪1のサンプルの温度データは温度調節装置4に送られる。温度調節装置4においては転がり軸受外輪1の目標加熱温度および取得した転がり軸受外輪1のサンプルの温度データから必要な電源出力を判断し、加熱装置2の電源に電源出力を指令する。指令を受けた電源は加熱装置2の誘導コイルに電力を出力し、転がり軸受外輪1のサンプルは目的の温度に加熱される。
一方、焼入用測温装置(第2放射温度計5)により測定された転がり軸受外輪1のサンプルの温度データは冷却タイミング調節装置6に送られる。冷却タイミング調節装置6においては取得した転がり軸受外輪1のサンプルの温度および加熱時間から冷却タイミングを判断し、冷却開始を冷却液噴射装置7などの冷却装置に指令する。これにより、転がり軸受外輪1のサンプルは急冷され、焼入硬化される。このとき、このデータ取得工程は温度制御により実施されるため、転がり軸受外輪1のサンプルの加熱履歴は明確である。そのため、温度データが正確である限り適切な熱処理が行なわれており、目的の品質を有する転がり軸受外輪1が得られている。その結果、被処理物の品質を確認しながら熱処理の条件出しが行なわれる必要がなく、条件出しが容易に行なわれる。また、被処理物の表面には、安定化層が形成されているため、放射温度計による測温の精度は高くなっている。
記憶工程においては、データ取得工程において温度調節装置4および冷却タイミング調節装置6が取得した温度データが温度推移データとして記憶装置70に記憶される。また、加熱装置2の電源が誘導コイルに出力した電源出力が電源出力の推移データとして記憶装置70に記憶される。さらに、冷却タイミング調節装置6が冷却液噴射装置7などの冷却装置に出力した冷却開始指令のタイミングが冷却タイミングデータとして記憶装置70に記憶される。ここで、冷却タイミングはたとえば加熱開始からの時間として記憶される。
確認工程においては、たとえば第1放射温度計3および第2放射温度計5と同一部位を測定可能な温度計がそれぞれ設けられ、当該部位が測温される。この測温データと、第1放射温度計3および第2放射温度計5により測定されて記憶装置70に記憶された温度推移データとが比較されることにより、外乱の有無が判断される。
量産工程においては、記憶工程で記憶され、かつ確認工程で妥当性が確認された電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータに基づき、転がり軸受外輪1が加熱されて焼入が行なわれる。このとき、この量産工程は外乱のおそれのある第1放射温度計3および第2放射温度計5からのリアルタイムの温度データに基づいて実施されるのではなく、妥当性が確認された電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータに基づいて電力制御により実施される。そのため、安定した品質の転がり軸受外輪1が得られる。
なお、記憶装置70は、独立の装置として設置されてもよいが、たとえばハードディスクなどの記憶部を有するパーソナルコンピュータにより、温度調節装置4、冷却タイミング調節装置6などの装置を兼用して設置されてもよい。また、本実施の形態の高周波焼入方法の各工程は、たとえば制御装置としてパーソナルコンピュータを用い、各工程に対応した単数または複数のプログラムにより当該パーソナルコンピュータを動作させることにより実施することができる。
(実施の形態3)
図17は、実施の形態3の高周波熱処理方法に使用される高周波焼戻設備の構成を示す概略図である。図17を参照して、実施の形態3における高周波焼戻設備の構成を説明する。
図17を参照して、実施の形態3における高周波焼戻設備93は、高周波加熱により被処理物(たとえば転がり軸受外輪1)を加熱して焼戻を実施する本発明の高周波熱処理方法に使用される高周波焼戻設備であって、被処理物としての転がり軸受外輪1の温度を調節するための温度制御装置51と、加熱された転がり軸受外輪1が冷却されるべきタイミングを調節するための焼戻制御装置61とを備えている。また、後述するように、転がり軸受外輪1の外周面1Aおよび内周面1Bには、転がり軸受外輪1が加熱される温度域、すなわち焼戻温度において、転がり軸受外輪1よりも耐酸化性の高い安定化層9が形成されている。
温度制御装置51は、転がり軸受外輪1において、高周波加熱により最も温度が高くなると考えられる外周面1Aの温度データを取得し、転がり軸受外輪1の温度データに基づく温度の情報を出力する温度制御用測温装置としての第1放射温度計13と、第1放射温度計13に接続され、第1放射温度計13からの温度の情報に基づき被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号を出力する温度調節装置14と、温度調節装置14に接続され、温度調節装置14からの温度制御信号に基づき、高周波加熱により転がり軸受外輪1を加熱する加熱装置12とを含んでいる。加熱装置12は、たとえば高周波電流を流すための誘導コイルと、誘導コイルに接続され高周波電流を発生させる電源とを有している。
焼戻制御装置61は、高周波加熱により最も温度が高くなると考えられる外周面1Aから最も遠く、温度の上昇が最も小さいと考えられる内周面1Bの温度データを取得し、内周面1Bの温度データに基づく温度の情報を出力する焼戻用測温装置としての第2放射温度計15と、第2放射温度計15に接続され、第2放射温度計15からの温度の情報に基づき加熱時間を調節し、転がり軸受外輪1が冷却されるべきタイミングを決定して冷却開始信号を出力する冷却タイミング調節装置16と、冷却タイミング調節装置16に接続され、冷却開始信号に基づいて、転がり軸受外輪1を冷却することにより転がり軸受外輪1の焼戻を終了させる冷却装置としての冷却液噴射装置17とを含んでいる。
ここで、温度調節装置14および冷却タイミング調節装置16は、たとえばそれぞれパーソナルコンピュータであり、1台のパーソナルコンピュータで温度調節装置14と冷却タイミング調節装置16とを兼ねる構成であってもよい。
次に、上述の高周波焼戻設備を用いた本発明の一実施の形態である実施の形態3における高周波熱処理方法としての高周波焼戻方法について説明する。図18は、本発明の一実施の形態である実施の形態3における高周波焼戻方法の概略を示す図である。
図17および図18を参照して、実施の形態3の高周波焼戻方法は、高周波加熱により被処理物(たとえば転がり軸受外輪1)を加熱して焼戻を実施する高周波熱処理方法であって、転がり軸受外輪1の表面に、転がり軸受外輪1よりも耐酸化性の高い安定化層9が形成される表面安定化工程11と、表面安定化工程において安定化層9が形成された転がり軸受外輪1が加熱されて焼戻される焼戻工程110とを備えている。
焼戻工程110は、転がり軸受外輪1の温度が調節される温度制御工程120と、転がり軸受外輪1の加熱が終了されるべきタイミングが決定されて、転がり軸受外輪1が冷却される焼戻制御工程130とを含んでいる。
温度制御工程120は、転がり軸受外輪1の表面に形成された安定化層9の表面の温度が放射温度計により測定される温度制御用測温工程123と、温度制御用測温工程123において測定された温度の情報に基づき、転がり軸受外輪1の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程124と、温度制御信号に基づいて、高周波加熱により転がり軸受外輪1が加熱される加熱工程122とを有している。
焼戻制御工程130は、転がり軸受外輪1の表面に形成された安定化層9の表面の温度が放射温度計により測定される焼戻用測温工程135と、焼戻用測温工程135において測定された温度の情報に基づき加熱時間が調節され、転がり軸受外輪1が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程136と、冷却開始信号に基づいて、転がり軸受外輪1が冷却されることにより転がり軸受外輪1の焼戻が終了する冷却工程137とを有している。
実施の形態3における高周波焼戻方法は、温度制御により実施され、熱処理の条件出しが容易であるため、転がり軸受外輪1の製造コストを抑制し、かつ品質を安定させることが可能である。また、実施の形態3の高周波焼戻方法においては、たとえば図1に基づいて説明した実施の形態1の転がり軸受外輪1と同様の構成を有し、焼入硬化された被処理物に対して焼戻を実施することができる。その結果、本発明の一実施の形態である実施の形態3における高周波熱処理品としての転がり軸受外輪1は、製造コストが抑制され、かつ品質の安定した高周波熱処理品となっている。
なお、表面安定化工程11においては、実施の形態1と同様に、転がり軸受外輪1の表面に黒体塗料が塗布されることにより、上述の安定化層9としての黒体塗料層を形成してもよいし、黒体塗料層に代えて、酸化鉄層が形成されてもよい。この酸化鉄層は、たとえば転がり軸受外輪1の表面が熱酸化されることにより形成されてもよいし、転がり軸受外輪1が酸性の溶液中に浸漬されることにより形成されてもよい。
次に、実施の形態3の高周波熱処理方法について、SUJ2製の転がり軸受外輪1を例に、具体的に説明する。この転がり軸受外輪1は、RXガス雰囲気炉にて850℃から急冷されることにより焼入されたものである。ここでは、強度の観点から、焼戻後の被処理物の熱処理規格を、硬度HRC58以上HRC62以下と設定する。
材料強度と、焼戻温度および焼戻時間との間には、次の関係式が成立する。
X=1−exp{−(kt)
k=Aexp(−Q/RT)
M=M−(M−M)X
X:機械的性質の変化率、k:反応速度係数、t:焼戻時間(秒)、N:時間指数、A:振動因子項、Q:活性化エネルギー、R:気体定数、T:焼戻温度(K)、M:焼戻後の硬度、M:焼入後の硬度、M:生材硬度
したがって、これらの式から焼戻時間tについての次式を導くことができる。
t=〔ln{(M−M)/(M−M)}×{Aexp(−Q/RT)}−N1/N・・・式(8)
式(8)中の焼入後の硬度Mと生材硬度Mは実測できる。また、NとAとQは実験的に求めることができるから、焼戻温度Tの値を代入して式(8)により焼戻時間tを計算できる。本実施の形態3の冷却タイミング調節工程では、式(8)に基づき焼戻時間tを調節することができる。式(8)は、被処理物の規格品質(硬度)に対する熱処理温度とその保持時間との関係式であるから、転がり軸受外輪1の形状を問わず有効に利用することができる。
図19は、焼戻後に所定の硬度を得るための焼戻温度Tと焼戻時間tとの関係を示す条件線図である。図19において、横軸は焼戻温度(℃)、縦軸は保持時間(秒)を示している。また、領域AはHRC62以上の範囲であり、領域BはHRC58以下の範囲であり、領域CがHRC58〜62の範囲である。図19を参照して、焼戻の加熱温度および時間の条件(焼戻条件)の決定方法を説明する。
図19に示す条件線図は、焼戻時間tを求める式(8)に基づいて作製することができる。図19を参照して、焼戻温度が高温になるほど短時間での焼戻が可能になる。このため、焼戻温度は高い方が、熱処理時間の低減という観点からは望ましい。しかし、焼戻温度が高くなると、温度ムラによる焼戻ムラが発生しやすくなると考えられるので、焼戻温度は、熱処理時間と焼戻ムラとの兼ね合いなどから決定することができる。
焼戻条件が決定すると、図17を参照して、当該焼戻条件がパーソナルコンピュータなどの温度調節装置14に入力される。温度調節装置14は、第2放射温度計13と、加熱装置12に接続されており、第2放射温度計13からの温度情報に基づき、PID制御により温度制御信号を加熱装置12に出力し、転がり軸受外輪1の温度推移を制御する。このとき同時に、第2放射温度計15の温度情報をパソコンなどの冷却タイミング調節装置16に取り込み、その温度推移から加熱が十分であるかどうかを判断し、焼戻終了時期を調節する。
図20は、焼戻後の硬度の値を温度推移から積算する方法を説明するための焼戻温度と保持時間との関係を示す説明図である。図20の上段左のグラフにおいては横軸を時間t、縦軸を温度Tとして温度推移が示されている。また、上段右の図は上段左のグラフの領域βの部分を拡大して示した図である。また、下段には焼戻後の硬度Mの値を温度推移から積算するための計算式が示されている。
図20を参照して、第2放射温度計15からの温度情報は刻一刻と変化するので、M(焼戻後の硬度)の値はt を算出しつつ、図20のように積算して算出することが望ましい。そして、焼戻後の硬度が目標の硬度になる条件が満たされた時点で、冷却液噴射装置17により転がり軸受外輪1が冷却される。なお、温度調節装置14と冷却タイミング調節装置16とを同一のパソコンで兼ねることもできる。
なお、本実施の形態3の熱処理設備は上述の実施の形態1の熱処理設備と基本的に同様の構成を有している。したがって、たとえば制御装置としてパソコンを用い、目的の熱処理に対応したプログラムを使い分けることにより、高周波焼入装置と高周波焼戻装置を兼ねることができる。
(実施の形態4)
図21は、本発明の一実施の形態である実施の形態4における高周波焼戻設備の構成の概略を示す図である。また、図22は、本発明の一実施の形態である実施の形態4における高周波焼戻方法の概略を示す図である。図21および図22を参照して、実施の形態4における高周波焼戻設備および高周波焼戻方法について説明する。
図21を参照して、実施の形態4における高周波焼戻設備94は、基本的には実施の形態3における高周波焼戻設備93と同様の構成を有している。しかし、実施の形態4における高周波焼戻設備94は、加熱装置12、温度調節装置14および冷却タイミング調節装置16に接続され、電源出力の推移データと、冷却タイミングデータとをプロセスデータとして記憶する記憶装置71を備えている点において、実施の形態3の高周波焼戻設備93とは異なっている。
また、図22を参照して、実施の形態4における高周波焼戻方法は高周波加熱により被処理物(たとえば転がり軸受外輪1)を加熱して焼戻を実施する高周波熱処理方法であって、データ取得工程と、記憶工程と、確認工程と、量産工程とを備えている。
データ取得工程では、転がり軸受外輪1のサンプルが加熱されて焼戻されることによりプロセスデータが取得される。記憶工程では、データ取得工程において転がり軸受外輪1のサンプルを加熱するために高周波加熱用の電源から誘導コイルに出力された電源出力の推移データと、転がり軸受外輪1のサンプルの冷却タイミングを特定するための冷却タイミングデータとがプロセスデータとして記憶される。
確認工程では、データ取得工程において焼戻された転がり軸受外輪1の材質データに基づき、電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性が確認される。すなわち、たとえば、データ取得工程における被処理物の温度推移のデータを記憶し、記憶された温度推移データが分析されることで、外乱の影響の有無が判定され、記憶工程において記憶されたプロセスデータである電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性が確認される。なお、実際に熱処理された転がり軸受外輪1のサンプルの材質データを実験により実際に取得し、電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータの妥当性が確認されてもよい。
ここで、転がり軸受外輪1の測温において、外乱の影響があった場合、温度推移データに異常な値が記録されるため、記憶された温度推移データから外乱の有無は判断可能である。たとえば、温度推移データに不連続な領域が存在する場合、外乱があったものと判断することができる。また、より正確な判断を行なうためには、同一の部位の温度を測定する接触式または非接触式の温度計を設け、双方のデータの整合性により外乱の有無を判断することもできる。具体的判断の手法としては、たとえば双方のデータから温度差が5%以上となった場合に外乱有りと判断することができる。また、外乱の判断は作業者が温度推移データを確認して行なうことができるが、自動化された他の装置により行なうこともできる。具体的にはたとえば記憶された温度推移データの温度推移の微分値が1000℃/秒以上または−1000℃/秒以下となった場合に外乱有りと判断する方法や、前述のように同一の部位の温度を測定する温度計を設け、両者のデータに5%以上の差が生じた場合に外乱有りと判断するような手段が挙げられる。
量産工程では、記憶工程で記憶され、かつ確認工程で妥当性が確認された電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータに従って転がり軸受外輪1の高周波焼戻が行なわれる。そして、データ取得工程における焼戻は、本発明の高周波熱処理方法、たとえば実施の形態3の高周波熱処理方法により実施される。
実施の形態4における高周波焼戻方法により被処理物としての転がり軸受外輪1を焼戻すことにより、温度制御が可能となり、熱処理の条件出しが容易となるだけでなく、プロセスデータへの外乱の影響が一層抑制され、被処理物(転がり軸受外輪1)の品質が安定する。
そして、実施の形態4における高周波焼戻方法により焼戻された実施の形態4における高周波焼戻品としての転がり軸受外輪1は、低価格化され、かつ一層品質の安定した高周波焼戻品となっている。
次に、実施の形態4における高周波焼戻の詳細について説明する。図23は、実施の形態4に係る高周波焼戻の各工程におけるデータおよび指令の流れを示す図である。図23において、データ取得工程におけるデータの流れは実線矢印、記憶工程におけるデータの流れは破線矢印、確認工程におけるデータの流れは二重破線矢印、量産工程におけるデータの流れは二重実線矢印で表示されている。図23を参照して、実施の形態4に係る高周波焼戻の各工程におけるデータの流れを説明する。
図23を参照して、データ取得工程においては、温度制御用測温装置(第1放射温度計13)により測定された被処理物としての転がり軸受外輪1のサンプルの温度データは温度調節装置14に送られる。温度調節装置14においては転がり軸受外輪1の目標加熱温度および取得した転がり軸受外輪1のサンプルの温度データから必要な電源出力を判断し、加熱装置12の電源に電源出力を指令する。指令を受けた電源は加熱装置12の誘導コイルに電力を出力し、転がり軸受外輪1のサンプルは目的の温度に加熱される。
一方、焼戻用測温装置(第2放射温度計15)により測定された転がり軸受外輪1のサンプルの温度データは冷却タイミング調節装置16に送られる。冷却タイミング調節装置16においては取得した転がり軸受外輪1のサンプルの温度および加熱時間から冷却タイミングを判断し、冷却開始を冷却液噴射装置などの冷却装置に指令する。これにより、転がり軸受外輪1のサンプルは冷却され、焼戻が終了する。このとき、このデータ取得工程は温度制御により実施されるため、転がり軸受外輪1のサンプルの加熱履歴は明確である。そのため、温度データが正確である限り適切な熱処理が行なわれており、目的の品質を有する転がり軸受外輪1が得られている。その結果、被処理物の品質を確認しながら熱処理の条件出しが行なわれる必要がなく、条件出しが容易に行なわれる。また、被処理物の表面には、安定化層が形成されているため、放射温度計による測温の精度は高くなっている。
記憶工程においては、データ取得工程において温度調節装置14および冷却タイミング調節装置16が取得した温度データが温度推移データとして記憶装置70に記憶される。また、加熱装置12の電源が誘導コイルに出力した電源出力が電源出力の推移データとして記憶装置71に記憶される。さらに、冷却タイミング調節装置16が冷却液噴射装置などの冷却装置に出力した冷却開始指令のタイミングが冷却タイミングデータとして記憶装置71に記憶される。ここで、冷却タイミングはたとえば加熱開始からの時間として記憶される。
確認工程においては、たとえば第1放射温度計13および第2放射温度計15と同一部位を測定可能な温度計がそれぞれ設けられ、当該部位が測温される。この測温データと、第1放射温度計13および第2放射温度計15により測定されて記憶装置71に記憶された温度推移データとが比較されることにより、外乱の有無が判断される。
量産工程においては、記憶工程で記憶され、かつ確認工程で妥当性が確認された電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータに基づき、転がり軸受外輪1が加熱されて焼戻が行なわれる。このとき、この量産工程は外乱のおそれのある第1放射温度計13および第2放射温度計15からのリアルタイムの温度データに基づいて実施されるのではなく、妥当性が確認された電源出力の推移データおよび冷却タイミングデータに基づいて電力制御により実施される。そのため、安定した品質の転がり軸受外輪1が得られる。
なお、記憶装置71は、独立の装置として設置されてもよいが、たとえばハードディスクなどの記憶部を有するパーソナルコンピュータにより、温度調節装置14、冷却タイミング調節装置16などの装置を兼用して設置されてもよい。また、本実施の形態の高周波焼戻方法の各工程は、たとえば制御装置としてパーソナルコンピュータを用い、各工程に対応した単数または複数のプログラムにより当該パーソナルコンピュータを動作させることにより実施することができる。
以下、本発明の実施例について説明する。本発明の高周波熱処理方法における表面安定化工程の効果を確認する試験を行なった。試験の手順は以下のとおりである。
試験の対象となる被処理物としては、JIS SUJ2製の転がり軸受外輪、およびJIS SUS440C製の転がり軸受外輪を選択した。そして、それぞれの被処理物を900℃以上の温度に加熱して保持しつつ、被処理物の同一部位を放射温度計および熱電対で測定した。また、JIS SUS440C製の転がり軸受外輪については、加熱前に当該加熱温度において耐酸化性に優れ、放射率のほとんど変化しない黒体塗料(TEMPIL社製のPyromark High Temperature Paint)を表面に塗布した後、同様の試験を実施した。
図24は、JIS SUJ2製の転がり軸受外輪を加熱した場合の試験結果を示す図である。また、図25は、JIS SUS440C製の転がり軸受外輪を加熱した場合の試験結果を示す図である。また、図26は、JIS SUS440C製の転がり軸受外輪に黒体塗料を表面に塗布した後、加熱した場合の試験結果を示す図である。図24〜図26において、横軸は加熱時間、縦軸は加熱温度を示しており、実線は放射温度計の測温データ、破線は熱電対の測温データを示している。図24〜図26を参照して、本実施例の試験結果について説明する。
図24を参照して、SUJ2製の転がり軸受外輪の場合、加熱開始からわずかな時間、具体的には15秒程度で放射温度計の測温データと熱電対の測温データとの比がほぼ一定となっている。これは、SUJ2製の転がり軸受外輪の場合、上述の加熱開始からわずかな時間で、熱酸化により当該外輪の表面に酸化鉄層が形成され、その後表面状態が変化しなかったためであると考えられる。
一方、図25を参照して、SUS440C製の転がり軸受外輪の場合、加熱開始から170秒経過した時点で、熱電対の測温データを示す破線がほぼ水平となっており、その後は放射温度計の測温データと熱電対の測温データとの比がほぼ一定となっている。これは、SUS440CはSUJ2に比べて耐酸化性に優れているため、熱酸化により表面状態が変化しない程度にまで酸化鉄層が形成されるために、より長い時間を要するためであると考えられる。つまり、SUS440Cは、表面状態が変化しない程度にまで酸化鉄層が形成されるためには、920℃で170秒程度保持する必要がある。
以上の結果より、SUJ2製の被処理物に関しては、表面安定化工程を実施することが好ましいものの、960℃以上の高温で熱処理が実施される場合には、表面安定化工程を実施しない場合の測温精度への影響は比較的小さいといえる。なお、図24に示すように、放射温度計の測温データと熱電対の測温データとの間に差が認められるが、当該差は放射温度計の放射率の設定により解消し、本来の正確な温度である熱電対の測温データに放射温度計の測温データを一致させることができる。
一方、SUS440製の被処理物に関しては、表面安定化工程を実施しない場合の測温精度への影響は大きく、表面安定化工程を実施する必要性が高いといえる。そして、当該表面安定化工程を熱酸化により実施する場合、920℃で170秒程度保持する必要があることが分かった。
また、図26を参照して、黒体塗料を塗布した後、加熱を実施したSUS440製の被処理物に関しては、加熱の初期から放射温度計の測温データと熱電対の測温データとの比がほぼ一定となっている。このことから、表面安定化工程として黒体塗料の塗布を実施することにより、SUS440製の被処理物の放射温度計による測温精度を大幅に向上させることが可能であることが確認された。
以上の結果より、本発明の表面安定化工程を実施することで放射温度計による測温精度が向上し、特にステンレス鋼などの耐酸化性の高い素材(たとえばSUS440C、M50など)で構成される高周波熱処理品の品質を安定させることが可能となることが確認された。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の高周波熱処理方法および高周波熱処理品は、高周波加熱により被処理物を加熱して熱処理する高周波熱処理方法、および高周波加熱により加熱されて熱処理された高周波熱処理品に特に有利に適用され得る。
実施の形態1における高周波熱処理品としての転がり軸受外輪の構成を示す概略断面図である。 実施の形態1における高周波焼入設備の構成を示す概略図である。 実施の形態1における高周波焼入方法の概略を示す図である。 熱処理の規格値を満足するための焼入温度と保持時間との関係を示したSUJ2材のTTA線図である。 補正Depの値を温度推移から積算する方法を説明するための焼入温度と保持時間との関係を示す説明図である。 ep *の値に対する硬度と処理時間との変化を示す図である。 加熱中の被処理物の温度推移を示す図である。 炭素の固溶開始から0.4秒後における、2つのFeC間の各位置における炭素分布を示す図である。 炭素の固溶開始から0.8秒後における、2つのFeC間の各位置における炭素分布を示す図である。 炭素の固溶開始から1.2秒後における、2つのFeC間の各位置における炭素分布を示す図である。 変形例の方法で焼入を実施した場合の、温度制御側および焼入制御側における固溶炭素濃度の分布を示す図である。 炭素含有量1質量%の鋼(JIS SUJ2)における昇温速度による加熱変態点の変化を示す図である。 昇温速度を考慮して固溶炭素濃度の計算開始温度を決定する方法を説明するための図である。 実施の形態2における高周波焼入設備の構成の概略を示す図である。 実施の形態2における高周波焼入方法の概略を示す図である。 実施の形態2に係る高周波焼入の各工程におけるデータおよび指令の流れを示す図である。 実施の形態3の高周波熱処理方法に使用される高周波焼戻設備の構成を示す概略図である。 実施の形態3における高周波焼戻方法の概略を示す図である。 焼戻後に所定の硬度を得るための焼戻温度Tと焼戻時間tとの関係を示す条件線図である。 焼戻後の硬度の値を温度推移から積算する方法を説明するための焼戻温度と保持時間との関係を示す説明図である。 実施の形態4における高周波焼戻設備の構成の概略を示す図である。 実施の形態4における高周波焼戻方法の概略を示す図である。 実施の形態4に係る高周波焼戻の各工程におけるデータおよび指令の流れを示す図である。 JIS SUJ2製の転がり軸受外輪を加熱した場合の試験結果を示す図である。 JIS SUS440C製の転がり軸受外輪を加熱した場合の試験結果を示す図である。 JIS SUS440C製の転がり軸受外輪に黒体塗料を表面に塗布した後、加熱した場合の試験結果を示す図である。
符号の説明
1 被処理物(転がり軸受外輪)、1A 外周面、1B 内周面、1C 転走面、2 加熱装置、3 第1放射温度計、4 温度調節装置、5 第2放射温度計、6 冷却タイミング調節装置、7 冷却液噴射装置、9 安定化層、10 焼入硬化工程、11 表面安定化工程、12 加熱装置、13 第1放射温度計、14 温度調節装置、15 第2放射温度計、16 冷却タイミング調節装置、17 冷却液噴射装置、20 温度制御工程、22 加熱工程、23 温度制御用測温工程、24 温度調節工程、30 焼入制御工程、35 焼入用測温工程、36 冷却タイミング調節工程、37 冷却工程、50,51 温度制御装置、60 焼入制御装置、61 焼戻制御装置、70,71 記憶装置、91,92 高周波焼入設備、93,94 高周波焼戻設備。

Claims (8)

  1. 高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する高周波熱処理方法であって、
    前記被処理物の表面に、前記被処理物が加熱される温度域において前記被処理物よりも耐酸化性の高い安定化層が形成される表面安定化工程と、
    前記表面安定化工程において前記安定化層が形成された前記被処理物が焼入硬化される焼入硬化工程とを備え、
    前記焼入硬化工程は、
    前記安定化層が形成された前記被処理物の温度が調節される温度制御工程と、
    加熱された前記被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて、前記被処理物が冷却される焼入制御工程とを含み、
    前記温度制御工程は、
    前記被処理物の表面に形成された前記安定化層の表面の温度が放射温度計により測定される温度制御用測温工程と、
    前記温度制御用測温工程において測定された温度の情報に基づき前記被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程と、
    前記温度制御信号に基づいて、前記高周波加熱により前記被処理物が加熱される加熱工程とを有し、
    前記焼入制御工程は、
    前記被処理物の表面に形成された前記安定化層の表面の温度が放射温度計により測定される焼入用測温工程と、
    前記焼入用測温工程において測定された温度の情報に基づき加熱時間が調節され、前記被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程と、
    前記冷却開始信号に基づいて、前記被処理物が冷却されることにより前記被処理物が焼入硬化される冷却工程とを有する、高周波熱処理方法。
  2. 高周波加熱により被処理物を加熱して焼入硬化する高周波熱処理方法であって、
    前記被処理物のサンプルが加熱されて焼入硬化されることによりプロセスデータが取得されるデータ取得工程と、
    前記データ取得工程において前記被処理物のサンプルを加熱するために高周波加熱用の電源から誘導コイルに出力された電源出力の推移データと、前記被処理物のサンプルの冷却タイミングを特定するための冷却タイミングデータとが前記プロセスデータとして記憶される記憶工程と、
    前記データ取得工程において焼入硬化された前記被処理物の材質データに基づき、前記電源出力の推移データおよび前記冷却タイミングデータの妥当性が確認される確認工程と、
    前記記憶工程で記憶され、かつ前記確認工程で妥当性が確認された前記電源出力の推移データおよび前記冷却タイミングデータに従って前記被処理物が焼入硬化される量産工程とを備え、
    前記データ取得工程における前記焼入硬化は、請求項1に記載の高周波熱処理方法により実施される、高周波熱処理方法。
  3. 高周波加熱により被処理物を加熱して焼戻を実施する高周波熱処理方法であって、
    前記被処理物の表面に、前記被処理物よりも耐酸化性の高い安定化層が形成される表面安定化工程と、
    前記表面安定化工程において前記安定化層が形成された前記被処理物が加熱されて焼戻される焼戻工程とを備え、
    前記焼戻工程は、
    前記被処理物の温度が調節される温度制御工程と、
    前記被処理物の加熱が終了されるべきタイミングが決定されて、前記被処理物が冷却される焼戻制御工程とを含み、
    前記温度制御工程は、
    前記被処理物の表面に形成された前記安定化層の表面の温度が放射温度計により測定される温度制御用測温工程と、
    前記温度制御用測温工程において測定された温度の情報に基づき、前記被処理物の加熱状態を制御するための温度制御信号が出力される温度調節工程と、
    前記温度制御信号に基づいて、前記高周波加熱により前記被処理物が加熱される加熱工程とを有し、
    前記焼戻制御工程は、
    前記被処理物の表面に形成された前記安定化層の表面の温度が放射温度計により測定される焼戻用測温工程と、
    前記焼戻用測温工程において測定された温度の情報に基づき加熱時間が調節され、前記被処理物が冷却されるべきタイミングが決定されて冷却開始信号が出力される冷却タイミング調節工程と、
    前記冷却開始信号に基づいて、前記被処理物が冷却されることにより前記被処理物の焼戻が終了する冷却工程とを有する、高周波熱処理方法。
  4. 高周波加熱により被処理物を加熱して焼戻を実施する高周波熱処理方法であって、
    前記被処理物のサンプルが加熱されて焼戻されることによりプロセスデータが取得されるデータ取得工程と、
    前記データ取得工程において前記被処理物のサンプルを加熱するために高周波加熱用の電源から誘導コイルに出力された電源出力の推移データと、前記被処理物のサンプルの冷却タイミングを特定するための冷却タイミングデータとが前記プロセスデータとして記憶される記憶工程と、
    前記データ取得工程において焼戻された前記被処理物の材質データに基づき、前記電源出力の推移データおよび前記冷却タイミングデータの妥当性が確認される確認工程と、
    前記記憶工程で記憶され、かつ前記確認工程で妥当性が確認された前記電源出力の推移データおよび前記冷却タイミングデータに従って前記被処理物が焼戻される量産工程とを備え、
    前記データ取得工程における前記焼戻は、請求項3に記載の高周波熱処理方法により実施される、高周波熱処理方法。
  5. 前記表面安定化工程は、前記被処理物の表面に黒体塗料が塗布される黒体塗料塗布工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波熱処理方法。
  6. 前記表面安定化工程は、前記被処理物が熱酸化されることにより、前記被処理物の表面に酸化鉄層が形成される熱酸化工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波熱処理方法。
  7. 前記表面安定化工程は、前記被処理物が酸性の溶液中に浸漬されることにより、前記被処理物の表面に酸化鉄層が形成される酸性溶液浸漬工程を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高周波熱処理方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の高周波熱処理方法で熱処理されて作製されたことを特徴とする、高周波熱処理品。
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