JP2007237907A - タイヤとリムとの組立て体 - Google Patents

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Abstract

【課題】タイヤが受傷して内圧が急激に低下した際に、中空粒子の温度を確実に上昇するための手段について提案する。
【解決手段】タイヤをリムに装着し、該タイヤとリムとで区画されたタイヤ気室内に、樹脂による連続相と独立気泡とからなる熱膨張可能な中空粒子の多数個を気体による加圧下で封入してなるタイヤとリムとの組立て体において、前記タイヤのトレッド部に、少なくともタイヤの赤道面に対して45°以内の傾斜角度で延びる溝を有し、少なくとも前記溝の底部を形成するゴムのロスを、当該溝底部以外のトレッドゴムのロスよりも大きくする。
【選択図】図1

Description

本発明は、タイヤが外傷等を受けることによってパンク状態となってなお、必要とされる距離を安全に継続走行することができる他、受傷前の定常走行時における耐久性、乗心地性等にすぐれ、しかも、タイヤの生産性を損ねることなく、汎用のリムに装着して使用に供されるタイヤとリムとの組立て体に関するものである。
タイヤをリムに装着し、該タイヤとリムとで区画された空間内へ、樹脂による連続相と、大気圧より高圧に保持された独立気泡とからなる粒子組成物を多数個封入してなるタイヤとリムとの組立て体は、たとえば、出願人の先の提案に係る特許文献1に記載されている。
このタイヤとリムとの組立て体では、タイヤが受傷して内圧が低下し始めると、特許文献1では粒子組成物と称される中空粒子が受傷部を封止し、急激な内圧低下が抑制される。一方で、タイヤ内圧の低下に伴いタイヤの撓み量が増加し、タイヤ内容積が減少することによって、中空粒子そのものが直接的に荷重を負担することとなり、その後の走行に必要な最低限のタイヤ内圧を保持する。また、受傷前のタイヤ内圧下で存在していた中空粒子の独立気泡中の気泡内圧力は、受傷後も上記のタイヤ内圧に準じた圧力を保ったまま、言い換えれば、受傷前の中空粒子総体積を保持したままタイヤ内に存在することになるので、タイヤがさらに転動することによって、中空粒子そのものが直接的に荷重を負担しつつ中空粒子同士が摩擦を引き起して自己発熱し、これにタイヤの撓み量の増加に伴うタイヤの発熱が加わることにより、タイヤ内の中空粒子温度が急上昇して、該温度が中空粒子の連続相を形成する樹脂の軟化温度を越えると、中空粒子の独立気泡中の気泡内圧力が受傷前のタイヤ内圧に準じた圧力であるのに加え、前記中空粒子温度の急上昇によりさらに気泡内圧力が上昇するため、中空粒子が一気に体積膨張し、タイヤの傷口を膨張した中空粒子が効果的に塞ぐ一方、それ以外の中空粒子が体積膨張する結果、タイヤ内圧は受傷前の状態に近い圧力まで復活することになる。
特開2003−118332号公報
かように、タイヤの受傷部を中空粒子で塞いで、かつタイヤ内圧を受傷前の状態近くに復活させるには、中空粒子の温度上昇による膨張が重要であり、タイヤが受傷して内圧が急激に低下した際には、中空粒子の温度が速やかに膨張開始温度に至ることが重要になる。
従って、本発明は、タイヤが受傷して内圧が急激に低下した際に、中空粒子の温度を確実に上昇するための手段について提案することを目的とする。
発明者らは、タイヤ受傷による内圧低下時に中空粒子の温度上昇を確実にはかる手段について検討したところ、タイヤの内圧が低下した際にタイヤの温度を適切に上昇させることが肝要であり、そのためには、タイヤにおいて最も大きな質量を占めかつ発熱量も多い、トレッドゴムの発熱を制御するのが有効であることを見出した。ここで、トレッドゴムの発熱を促進するには、ゴム材を発熱しやすいものに変更したり、ゴム重量を増加することで達成できるが、その場合、通常使用時の転がり抵抗が大きくなって車の燃費を大きく悪化させてしまうため採用できない。
そこで、転がり抵抗などのタイヤの基本的性能を犠牲にすることなく、タイヤ内圧が急速に低下した際のトレッドゴムの発熱を促進する手立てについて鋭意究明したところ、内圧低下に伴うトレッド部の変形が最も剛性の低い溝底部分に集中するために、この溝底部分に限定してゴムの発熱性を高めることが有効であるとの知見を得た。本発明は、この知見に基づくものである。
すなわち、本発明の要旨は、次の通りである。
タイヤをリムに装着し、該タイヤとリムとで区画されたタイヤ気室内に、樹脂による連続相と独立気泡とからなる熱膨張可能な中空粒子の多数個を気体による加圧下で封入してなるタイヤとリムとの組立て体において、前記タイヤのトレッド部に、少なくともタイヤの赤道面に対して45°以内の傾斜角度で延びる溝を有し、少なくとも前記溝の底部を形成するゴムのロスを、当該溝底部以外のトレッドゴムのロスよりも大きくしたことを特徴とするタイヤとリムとの組立て体。
ここに、上記の「ゴムのロス」とは、変形によりゴムに加えられた歪みエネルギーを熱として散逸させる特性を示す。
本発明によれば、タイヤの急速な内圧低下を契機として、中空粒子の加熱膨張を確実に実現することができる。従って、受傷によってパンク状態に陥った場合に、中空粒子の機能によってタイヤの内圧復活を遂げる、安全性の高いタイヤを提供することができる。
図1は、本発明で対象とするタイヤとリムとの組立て体を例示する幅方向断面図である。
図示のタイヤとリムとの組立て体は、タイヤ1をリム2に装着し、該タイヤ1とリム2とで区画されたタイヤ気室3内に、樹脂よりなる連続相と独立気泡とからなる熱膨張可能な中空粒子4の多数を、加圧下で充填配置してなる。
なお、タイヤ1は、規格に従う各種自動車用タイヤ、たとえば、トラックやバス用タイヤ、乗用車用タイヤ等であれば、特に構造を限定する必要はない。すなわち、この発明はタイヤとリムとの組立体になるすべての安全タイヤに適用できる技術であり、図示のタイヤは、1対のビードコア5間でトロイド状に延びるカーカス6のクラウン部に、その半径方向外側へ順にベルト7およびトレッド8を配設してなる一般的な自動車用タイヤである。
図において、符号9は、タイヤ気室3に対して気体を給排するバルブを、10はインナーライナー層をそれぞれ示し、11はサイド部を、そして12は、中空粒子4の周囲の空隙をそれぞれ示す。
上記中空粒子4は、略球形状の樹脂による連続相で囲まれた独立気泡を有する、たとえば粒径が10μm〜500μm程度の範囲で粒径分布を持った中空体、あるいは、独立気泡による小部屋の多数を含む海綿状構造体である。すなわち、該中空粒子4は、外部と連通せずに密閉された独立気泡を内包する粒子であり、該独立気泡の数は単数であってもよいし、複数であってもよい。この明細書では、この『中空粒子群の独立気泡内部』を総称して『中空部』と表現する。
また、この粒子が独立気泡を有することは、該粒子が独立気泡を密閉状態で内包するための『樹脂製の殻』を有することを指し、さらに、樹脂による連続相とは、この『樹脂製の殻を構成する成分組成上の連続相』を指す。なお、この樹脂製の殻の組成は後述のとおりである。
この中空粒子4の多数個である中空粒子群は、高圧気体とともにタイヤ気室3の内側に充填配置することによって、通常の使用条件下ではタイヤの『使用内圧』を部分的に担うと共に、タイヤ1の受傷時には、タイヤ気室3内の失った圧力を復活させる機能を発現する源となる。この『内圧復活機能』については後述する。
ここで、『使用内圧』とは、『自動車メーカーが各車両毎に指定した、装着位置ごとのタイヤ気室圧力値(ゲージ圧力値)』を指す。
ところで、中空粒子はその原料である『膨張性樹脂粒子』、すなわちガス成分を液体状態の発泡剤として樹脂に封じ込めた粒子を加熱膨張することにより得られ、この膨張性樹脂粒子には膨張開始温度Ts1が存在する。
更に、この加熱膨張によって得られた中空粒子を室温から再度加熱すると、中空粒子は更なる膨張を開始し、ここに中空粒子の膨張開始温度Ts2が存在する。発明者らは、これまで多くの膨張性樹脂粒子から中空粒子を製造し検討を重ねてきた結果、Ts1を膨張特性の指標としてきたが、中空粒子の膨張特性の指標としてはTs2が適切であることを見出すに到った。
すなわち、膨張性樹脂粒子を加熱膨張させる場合における膨張挙動を観察したところ、膨張性樹脂粒子は膨張する前の段階にあるため、中空粒子の状態に比して粒径が極端に小さく、樹脂製の殻部の厚さが極端に厚いため、マイクロカプセルとしての剛性が高い状態にある。したがって、加熱膨張の過程で樹脂製の殻部の連続相がガラス転移点を越えても、更なる加熱により殻部がある程度柔らかくなるまでは、内部ガスの拡張力が殻部の剛性にうち勝つことが出来ない。よって、Ts1は実際の殻部のガラス点移転よりも高い値を示す。
この一方で、中空粒子を再度加熱膨張させる場合には、中空粒子の殻部の厚さが極端に薄く、中空体としての剛性が低い状態にある。したがって、加熱膨張の過程で殻部の連続相がガラス転移点を超えると同時に膨張を開始するため、Ts2はTs1より低い位置づけとなる。
そこで、図示のタイヤとリムとの組立て体では、一旦膨張させて得た中空粒子の更なる膨張特性を活用する。この場合、中空粒子のTs2は、90℃以上200℃以下であることが好ましい。
すなわち、中空粒子のTs2が90℃未満では、常用走行時のタイヤ気室内の温度環境下にて膨張するおそれがあるからであり、一方200℃を超えると、パンク受傷後のランフラット走行において、中空粒子の摩擦発熱に起因する急激な温度上昇が起こっても、Ts2に達することが出来ない場合があり、よって目的とする『内圧復活機能』を十分に発現させることが出来なくなる場合がある。
次に、中空粒子の中空部(独立気泡)を構成する気体としては、窒素、空気、炭素数が2から8の直鎖状及び分岐状の脂肪族炭化水素およびそのフルオロ化物、炭素数が2から8の脂環式炭化水素およびそのフルオロ化物、そして次の一般式(I):
−O−R・・・・ (I)
(式中のRおよびRは、それぞれ独立に炭素数が1から5の一価の炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子に置き換えても良い)にて表されるエーテル化合物、からなる群の中から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
ところで、タイヤ気室3内に充填する気体は空気でも良いが、上記粒子中の気体がフルオロ化物でない場合には、安全性の面から酸素を含まない気体、たとえば窒素や不活性ガス等が好ましい。
なお、独立気泡を有する中空粒子を得る方法は特に限定されないが、発泡剤を用いて『膨張性樹脂粒子』を作製し、これを加熱膨張させる方法が一般的である。
この発泡剤としては、高圧圧縮ガス及び液化ガスなどの蒸気圧を活用する手法、熱分解によって気体を発生する熱分解性発泡剤を活用する手法などを挙げることができる。
後者の熱分解性発泡剤には窒素を発生させる特徴のあるものが多く、これらによる発泡によって得られる膨張性樹脂粒子の反応を適宜制御することによって得た粒子は気泡内に主に窒素を有するものとなる。この熱分解性発泡剤としては特に限定されないが、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾジカルボンアミド、パラトルエンスルフォニルヒドラジンおよびその誘導体、そしてオキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジンを好適に挙げることができる。
次に、前者の高圧圧縮ガス及び液化ガスなどの蒸気圧を活用して中空粒子となる『膨張性樹脂粒子』を得る手法を説明する。
中空粒子を形成する前記樹脂による連続相を重合する際、炭素数が2から8の直鎖状及び分岐状の脂肪族炭化水素およびそのフルオロ化物、炭素数が2から8の脂環式炭化水素およびそのフルオロ化物、そして次の一般式(II):
−O−R・・・・ (II)
(式中のRおよびRは、それぞれ独立に炭素数が1から5の一価の炭化水素基であり、該炭化水素基の水素原子の一部をフッ素原子に置き換えても良い)にて表されるエーテル化合物からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を発泡剤として高圧下で液化させ、反応溶媒中に分散させつつ、乳化重合させる手法である。これにより上記に示されるガス成分を液体状態の発泡剤として前述の樹脂連続相にて封じ込めた『膨張性樹脂粒子』を得ることができ、これを加熱膨張させる事によって、所望の中空粒子を得る事が出来る。
また、前記『膨張性樹脂粒子』の表面に、シリカ粒子等のアンチブロッキング剤、カーボンブラック微粉、帯電防止剤、界面活性剤等をコーティングした上で加熱膨張させることにより、目的の中空粒子を得ることができる。
ここで、受傷によりタイヤ気室圧力が低下した状態において、該中空粒子によって必要最低限の内圧を付与するためには、中空粒子の中空部内に所定圧力で封入された気体が、粒子外部へ漏れ出ないこと、換言すると、中空粒子の殻の部分に相当する、樹脂による連続相が気体を透過し難い性質を有することが重要である。
すなわち、連続相を構成する樹脂は、ガス透過性の低い材質によること、具体的には、アクリロニトリル系共重合体、アクリル系共重合体、塩化ビニリデン系共重合体のいずれか少なくとも1種からなることが好ましい。これらの材料は、タイヤ変形による入力に対して中空粒子としての柔軟性を有するため、安全タイヤに適用して特に有効である。
とりわけ、中空粒子の連続相には、アクリロニトリル系重合体、アクリル系重合体および塩化ビニリデン系重合体のいずれかを適用することが好ましい。さらに詳しくは、重合体を構成するモノマーが、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、メチルメタクリレート、メタクリル酸、塩化ビニリデンから選択される重合体であり、好ましくは、アクリロニトリル/メタアクリロニトリル/メチルメタクリレート3元共重合体、アクリロニトリル/メタアクリロニトリル/メタクリル酸3元共重合体から選ばれた少なくとも1種がそれぞれ有利に適合する。これらの材料は、いずれもガス透過係数が小さくて気体が透過し難いために、中空粒子の中空部内の気体が外部に漏れ難く、中空部内の圧力を適切に保持することができる。
さらに、中空粒子の連続相は、30℃におけるガス透過係数が300×10-12 (cc・cm/cm2 ・s・cmHg)以下、好ましくは30℃におけるガス透過係数が20×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下、さらに好ましくは30℃におけるガス透過係数が2×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下であることが推奨される。
なぜなら、通常の空気入りタイヤにおけるインナーライナー層のガス透過係数は300×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下のレベルにあって十分な内圧保持機能を有している実績を鑑み、粒子の連続相についても、30℃におけるガス透過係数を300×10-12(cc・cm/cm2 ・s・cmHg)以下とした。ただし、このガス透過係数のレベルでは、3〜6カ月に1度程度の内圧補充が必要であるから、そのメンテナンス性の点からも、20×10-12 (cc・cm/cm2 ・s・cmHg)以下、さらに好ましくは2×10-12(cc・cm/cm2・s・cmHg)以下とすることが推奨される。
ところで、以上のようにして構成される中空粒子4の、タイヤ気室3内への充填下での、タイヤ気室内圧による圧潰変形を防止し、それを略球形状に維持するためには、中空粒子4の中空部内の圧力を、以下のようにして調整することが好ましい。
すなわち、中空粒子4の中空部内の圧力を、所望のタイヤ気室3内の圧力に対してたとえば70%以上とした中空粒子4を、タイヤ気室3内に所定の充填量で配置するには、タイヤの使用内圧以上の高圧気体中に中空粒子4の多数を収容した耐圧容器から、タイヤ気室3に中空粒子並びに高圧気体を充填することが好ましい。
なぜなら、中空粒子4を、耐圧容器の内部に高圧気体とともに収容した当初は、中空粒子4の中空部内の圧力(独立気泡内の圧力)が大気圧とほぼ等しく、容器内の圧力より小さいために、粒子は体積減少する。この時点での中空粒子4の形状は略球形状ではなく、球形状から扁平化して歪んだ形状となっている。
粒子形状が扁平化して歪んだ状態のままこの中空粒子4をタイヤ内に充填し、使用内圧にて走行すると、中空粒子4は、球形状の場合と比べて粒子同士の衝突やタイヤおよびリム内面との衝突により、破壊しやすくなる。すなわち、中空粒子が扁平化して歪んだ形状では、衝突による入力を均一に分散させることができず、耐久性の面で大きな不利をもたらすことになる。
また、タイヤが受傷した場合、中空粒子4が入り込んで閉塞できる傷口の大きさが小さいものだけに限定されることになり、また、中空粒子4がタイヤ外部に噴出することはないにしても、中空粒子4が扁平化して歪んだ形状であるためにミクロな通路が多く発生し、かような通路を介してタイヤ気室内の気体が著しく漏洩することがあり、その場合、復活させた内圧が早期に散逸してしまう懸念がある。
この一方で、扁平化して歪んだ中空粒子4は、その中空部内の圧力と容器内の圧力との差により体積減少した状態にあるが、一定期間にわたって耐圧容器内圧に晒すことによって、中空粒子の中空部内の圧力、言い換えれば該粒子内の独立気泡内の圧力を、耐圧容器の圧力程度にまで高めることができる。
すなわち、扁平化した中空粒子の殻の部分には元の略球形状に戻ろうとする力が働いて、扁平化した中空粒子の中空部内の圧力は、耐圧容器内圧力よりも低くなる傾向にあることから、その圧力差を解消するために、耐圧容器内の気体の分子が樹脂による連続相の殻を通過して粒子の中空部内に浸透することになる。
また、中空粒子の中空部は独立気泡であり、その中の気体は発泡剤に起因するガスで満たされているため、耐圧容器内(粒子周囲の空隙部)の気体とは異なる場合があり、この場合は、上述したような単なる圧力差だけではなく気体の分圧差に従いながら、その分圧差を解消するまで耐圧容器内の高圧気体が粒子中空部内へ浸透していく。
このように、耐圧容器内の高圧気体は、時間と共に中空粒子の中空部内へ浸透していくため、この中空部内に浸透した分だけ、耐圧容器内の圧力は低下することとなる。よって、中空粒子の中空部内に浸透した分を補うために、耐圧容器内へ高圧気体を充填した上で所望の圧力をかけ続けることにより、中空粒子の中空部内圧を、所望の使用内圧に調整することができる。
この場合、中空粒子の中空部内の圧力は、耐圧容器内(粒子周囲の空隙部)の圧力に、次第に近づくことになり、これにより、中空粒子は、一旦減少した粒子体積を回復して、扁平化されて歪んだ粒子形状から元の略球形状へと回復することになる。この形状回復過程で、中空粒子の中空部内圧が耐圧容器の内圧に対して70%以上にまで増加することにより、粒子形状は略球形へ十分に回復することが出来、これによって上述した中空粒子の耐久性を保証することが出来る。
かくして、中空粒子4を、タイヤとは別の耐圧容器内に配置し、粒子周囲の空隙圧力を少なくとも所望のタイヤ気室3内の使用圧力以上まで高めた状態に保持し、この圧力をかけ続けたまま該耐圧容器内にて適切な時間保管したうえで、中空部内の圧力が増加した状態の中空粒子4をその周囲の雰囲気と共にタイヤ気室内に供給することにより、その中空粒子4は、粒子体積を回復して、粒子形状を略球形に回復しているため、中空粒子充填後のタイヤの、転動時の繰り返しの変形に伴って粒子に加わる疲労や破壊も大幅に低減させることができ、中空粒子4の耐久性が損なわれることはない。
なお、中空粒子4の、耐圧容器内への適切な保持時間は、中空粒子の殻の部分、すなわち粒子の連続相に対する空隙気体の透過性と、粒子中空部内の気体と空隙気体との分圧差とを考慮して設定すればよい。
以上の機構と粒子の形状、体積の変化過程に則り、耐圧容器内(粒子周囲の空隙部)に充填する気体の種類と圧力とを適宜に選択、そして調節することにより、中空粒子4の中空部内の圧力を所望の範囲に設定することができる。
かように耐圧容器内で調整された中空粒子4は、タイヤ気室3内へ供給された段階で、その中空部内の圧力(独立気泡中の気泡内圧力)が、タイヤ気室3内の使用内圧に準じた高い圧力を保ったまま、言い換えれば、粒子体積と中空部圧力を保持したままタイヤ気室3内に存在する結果、タイヤとリムとの組立て体において所要の内圧復活機能を十分に発揮することができる。
すなわち、上述した中空粒子群をタイヤ気室内に配置したタイヤ1とリム2との組立体では、タイヤ1が受傷すると、中空粒子4の相互間の空隙に存在するタイヤ気室3内の高圧気体がタイヤの外側に漏出し、これに伴って、高圧気体の流出に共連れされた中空粒子4の多数が受傷部を閉塞し、急激な気室圧力の低下を抑制する。
つまり、受傷部の傷口はタイヤ気室内の気体が漏れ出る流路となるが、中空粒子4は、その流路内に『圧密』状態で入り込んで多数の中空粒子4によって流路を詰まらせることができる。
さらに、後述する内圧復活機構によりタイヤ気室3内の圧力が大気圧から増圧されると、タイヤ骨格に張力が与えられることにより、傷口の内径は絞り込まれるように減少していくので、傷口内に圧密状態で入り込んだ中空粒子群には、タイヤ気室3内の増圧により、タイヤ側から絞り込まれるような圧縮力が働く。この場合、中空粒子4は、中空部圧力が高いため、その圧縮力に対し、中空部圧力に基く反力を発生して、圧密の度合いを高めることができ、より大きな内径の傷口においても、タイヤ気室3内の気体がほとんど漏れ出さない程度まで傷口を閉塞することができる。
したがって、パンクの原因となった傷口は、中空粒子4によって、瞬時にかつ確実に塞がれることになる。
一方で、タイヤ気室圧力の低下に伴ってタイヤの撓み量が増加して、タイヤ気室容積が減少すると、その気室内に配置した中空粒子は、タイヤ1の内面とリム2の内面との間に挟まれながら、圧縮およびせん断入力を受けることとなり、これによれば、中空粒子同士が摩擦して、自己発熱するために、タイヤ気室3内の中空粒子4の温度が急上昇し、その温度が、中空粒子4の殻部である樹脂連続相の熱膨張開始温度Ts2(該樹脂のガラス転移温度に相当する)を超えると、該粒子の殻は軟化し始める。
このとき、中空粒子4の中空部内の圧力が、タイヤの使用内圧に準じた高い圧力にあることに加え、中空粒子温度の上昇により中空部内圧力がさらに上昇しているために、中空粒子4が一気に体積膨張して粒子周囲の空隙気体を圧縮する事になり、タイヤ気室の圧力を、少なくともタイヤのサイド部が接地しなくなるタイヤ気室圧力まで回復させることができ、この結果として、安全タイヤ、ひいては、それを装着した車両は、必要とされる距離を安全に継続走行することが可能となる。
以上の内圧復活機構はタイヤ受傷後直ちに発現することが望ましく、そのためには中空粒子温度が速やかに上記Ts2に到達してそれを超えることが重要になる。タイヤ内圧低下に伴う中空粒子の自己発熱は上述したとおりであるが、
中空粒子温度の上昇には内圧低下時にタイヤ内温度を積極的に上昇させることも、中空粒子温度を速やかに上昇させるためには有効である。
以下に、内圧低下時にタイヤ温度を上昇させるための方途について、具体的に説明する。
さて、タイヤが受傷して内圧が低下すると、タイヤの撓み量が増大し、トレッド部の変形も大きくなる。ここで、内圧低下時の変形解析を行ったところ、内圧低下時のトレッドの変形は、最も剛性の低い溝の底部に集中し、トレッドゴムが厚い陸部は剛性も高く変形は少ないことが、明らかとなった。
そこで、変形が集中する溝底部分のゴムにロスの大きいもの、例えば発熱性の高いものを配置することによって、内圧低下時に変形の集中する溝底部分の発熱が大きくなり、パンク状態に陥ったタイヤの温度上昇を効率よく達成することができる。なお、発熱性の高いゴムは溝底部分に限定して配置するため、通常使用時の転がり抵抗の悪化は極めて小さなレベルに止めることができる。
ここで、ロスの大きいゴムとは、変形による歪エネルギーを熱として散逸させる傾向が強いゴムを意味する。
ところで、タイヤのトレッド部には様々な向きに延びる種々の幅の溝が形成されているのが通例であるが、ロスの大きいゴムを配置するのは、(少なくとも、)タイヤの赤道面に対して45°以内の傾斜角度で延びる溝を対象とする。すなわち、タイヤの赤道面に沿って延びる周溝は勿論、赤道面に対して45°以内の傾斜で延びる溝について、その底部にロスの大きいゴムを配置する。例えば、乗用車用タイヤの典型的なトレッドパターンを、図2に示すように、ここに形成された、周溝8a、8bおよび8c並びに、その他の溝8d〜8kの各種溝のうち、少なくとも周溝8a、8bおよび8cの溝が対象となる。
さらには、溝8eおよび8kを除くその他の溝についても、底部にロスの大きいゴムを配置することも可能である。なぜなら、図2に例示したトレッドパターンでは、溝8eおよび8kは他の溝に比べて浅いものであり、デザイン上の役割しかもたない。この点、とりわけ周溝8a、8bおよび8cは深さも充分にあり、内圧低下時にトレッドの踏面がその赤道面の方向に曲げられるため、溝底に変形が集中するために、ここにロスの大きいゴムを配置することは有効である。
また、タイヤの赤道面に対して45°以内の傾斜角度で延びる周溝8a、8bおよび8c以外の溝8d、8f、8iおよび8jについては、内圧低下時のタイヤの変形は、タイヤ赤道面に直角の向き(周方向)にも認められ、当然剛性の低い溝底部分にも変形が集中してしまうからである。
図1に示した一般的構造を満たし、かつ図2に示したトレッドパターンを有する、サイズ195/65R15のタイヤに、表1に示すサイズ6.0J−15のリムを組み込み、乗用車用タイヤとリムとの組立体を準備した。次に、このタイヤとリムとの組立体の内部に、中空粒子として、上述した気泡圧力調整を経たアクゾノベル社製エクスパンセル(商標)092DE120を250g充填するとともに、タイヤ内圧を220kPaに調整した。ここで用いた中空粒子は一例であり、他の中空粒子、例えば松本油脂製薬社製のマイクロスフィアー(商標)などを用いることも可能であるが、粒子の膨張特性に立脚した必要量を充填する必要が有る。
なお、タイヤのトレッドゴムは、図2に示したトレッド部における、周溝8a、8bおよび8cについては、その底部にTanδ(60℃)=0.25またはTanδ(60℃)=0.35のゴム(厚さ:2.5mm)を配置し、その他の溝底並びに陸部については、Tanδ(60℃)=0.2のゴムを適用した。
かくして作製したタイヤとリムとの組立体を、荷重:4.3kNの下で3.3m径のドラム上にて80km/hにて走行させた際のトルクを計測し、従来例の計測結果を100としたときの指数を求めた。この指数が小さいと転がり抵抗が高いことを意味する。
また、上記のタイヤとリムとの組立体を、排気量2000ccクラスの乗用車の右側輪に装着し、40km/hにて20分走行後にタイヤトレッド部の中央に直径3mmの釘で貫通穴を開けた。その後、再び同速度での走行を開始した時点からタイヤ内圧をコパル社製の内圧計測装置にて測定し、内圧低下から内圧が増加に転じるまでの時間を計測した。
以上の計測結果を、タイヤとリムとの組立体の仕様と併せて表1に示す。
Figure 2007237907
本発明に従うタイヤとリムとの組立体を示すタイヤ幅方向断面図である。 トレッドパターンの一例を示す図である。
符号の説明
1 タイヤ
2 リム
3 タイヤ気室
4 中空粒子
5 ビードコア
6 カーカス
7 ベルト
8 トレッド
9 バルブ
10 インナーライナー層
11 粒子周囲の空隙
11 サイド部
12 粒子周囲の空隙

Claims (1)

  1. タイヤをリムに装着し、該タイヤとリムとで区画されたタイヤ気室内に、樹脂による連続相と独立気泡とからなる熱膨張可能な中空粒子の多数個を気体による加圧下で封入してなるタイヤとリムとの組立て体において、
    前記タイヤのトレッド部に、少なくともタイヤの赤道面に対して45°以内の傾斜角度で延びる溝を有し、少なくとも前記溝の底部を形成するゴムのロスを、当該溝底部以外のトレッドゴムのロスよりも大きくしたことを特徴とするタイヤとリムとの組立て体。
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