JP2007236807A - 運動耐容能評価装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 加速度脈波を用いて、個人対応型の目標心拍数を設定し、個人対応型の運動耐容能の評価装置を提供すること。
【解決手段】 加速度脈波の成分波のa波の頂点からe波の頂点までの時間間隔(Tae)と、成分波のe波の頂点からa波の頂点までの時間間隔とが、Tae = Teaとなる交差脈拍数を目標心拍数とし、この目標心拍数が所定の年代の被験者の予測最大心拍予備能の何%に相当するかを算出して運動耐容能を評価する手段を有する。
【選択図】図2

Description

本発明は、運動耐容能評価装置に関する。
高血圧症、糖尿病患者などの運動療法を実施する場合に、循環器に関係した事故を起こさないためには、運動の種類、時間、強度が重要である。なかでも、運動強度については性別や年齢や心肺機能に応じたおおよその目安をたてる必要がある。運動療法以外にも健康増進を目的として運動を始める場合も多いが、その際にも安全な運動強度の目安が必要となる。
運動強度をあらわす方法としては、ボルグスケール(Borg Scale: 1973)と呼ばれる自覚的運動強度(rating of perceived exertion)や目標心拍数を設定する方法が知られている。運動負荷の場合には、心拍数がカルボーネン法の70%HR reserve(70%最大心拍予備能)に達したら中止する方法が用いられることも多い。この目標心拍数としての70%最大心拍予備能は、[{(220-年齢)-安静時心拍数}×運動強度(k=0.7)+安静時心拍数]の式で算出される。x%HR reserveは、年齢ごとの予測最大心拍予備能(最大心拍数−安静時心拍数)の何パーセントの運動強度であるかということであり、この表現は分かりやすく現場でも使いやすい。一般に、有酸素運動は当初は50%最大心拍予備能以下の心拍数で指導することが多いが、加齢を重ねるにつれて、個人差が大きくなる上に、疾患を持つ者では、このような年齢と安静時脈拍数による一律の基準では不便さがある。
加速度脈波(APG)の標準波形は、測定機器の種類、すなわち、光源、フィルター、波形読み取り方式、信号処理等の条件の違いによって微妙に異なる。また、加齢によって変化してゆくので、生理的変化と病的変化の判別も難しい。その上、波形に男女差もみられる。このように、測定機器、測定環境、年齢等によって異なる波形を評価するには、どのような条件にも適応できるような共通の波形評価法を確立しなければならない。すなわち、測定環境が同一であれば、どの器械にも、どの年齢層にも共通して使用できる共通の基準を作成し、それに基づいて評価することが必要である。
APGは、容積脈波の二次微分波であり、心臓の収縮期の波形である。脈波センサーにより測定され、パーソナルコンピューターを用いて解析され、モニター画面に表示される容積脈波、一次微分波および二次微分波を図1に模式的に示す。この図から明らかなように、APGは、5つの成分波、すなわち、a波、b波、c波、d波、及びe波を有する。これらの成分波は、生体の条件により、また、加齢に応じて、さらには運動強度に応じて一定の変化をしてゆく。a波の頂点は容積脈波の原波形の立ち上がり起始点と一致し、e波の頂点は原波形の大動脈切痕と一致する。従って、a波の頂点からe波の頂点までの時間であるTaeは左室駆出時間と対応し、e波の頂点からa波の頂点までの時間であるTeaは拡張時間と対応する。また、Taaは心電図のRR間隔と対応するので(例えば、非特許文献1参照)、60秒をTaaで除すれば、脈拍数を計算できる。
また、波形の基線より上を正、下を負の象限としたとき、a波はその頂点が基線より常に上に位置する陽性波であり、b波はその頂点が基線より常に下に位置する陰性波であり、c波、d波、e波はそれぞれの頂点が生体の条件により陽性又は陰性に変化する成分波である。そこで、波形評価のパラメータとして、基線をx軸として、基線から各成分波の頂点までの距離をy軸としてとらえ、基線からa波の頂点までの距離を分母にして、基線からb波、c波、d波、e波の各頂点までの距離を分子としたb/a、c/a、d/a、e/aを用いて、加速度脈波が生体の何を具体的に表現しているかを解明しようとしている研究が多く行われている。ここで、c/aとは、(cはc波波形の基線から頂点までの距離)/(aはa波波形の基線から頂点までの距離)を意味する。このc/aは、頻脈や運動不足では小さくなるということが知られている。
本発明者らの一人は、先に、加速度脈波の上記成分波から旧来のAPGインデックスとは異なった新しい指標である波形指数1および2を求め、この波形指数を利用して、血管の老化を評価することができることを明らかにした(特許第3487829号)。この波形指数1は、(d/a)-(b/a)(この式において、aはa波波形の基線から頂点までの距離を表し、bはb波波形の基線から頂点までの距離を表し、d波波形はd波波形の基線から頂点までの距離を表す。)であり、波形指数2は、(c/a)-(b/a)(この式において、aおよびbは前記の通りであり、cはc波波形の基線から頂点までの距離を表す。)である。この波形指数2には、年齢相関があることが知られている。
上記Taeは左室駆出時間に対応した時間間隔であるので、安静時のAPGでは、当然Tae<Teaであり、Tae/Taaは0.30-0.33であり、TaeとTeaの比はおよそ1:2である。しかし、脈拍数が増加するにつれ、TaeもTeaも短縮するが同時にその比も変化し、ある時点で、Tae=Teaとなり、やがて駆出時間と拡張時間の比は逆転してTae>Teaとなる。この逆転する時の脈拍数を本発明者らは「交差脈拍数」と名づけた(例えば、非特許文献2参照)。つまり、「交差脈拍数」とは、左室駆出時間と拡張時間とが等しくなる時の脈拍数であり、「交差脈拍数」以上の脈拍数になれば、心臓の拡張時間と収縮時間が逆転するという意味を持つ。
心臓の収縮活動は拡張時間と心筋収縮力に依存する。一般に、安静時では心臓の拡張時間は収縮時間のほぼ2倍であるが、心拍数が増加するにつれ拡張時間は短縮し、やがて収縮時間の方が長くなるので、心臓の収縮活動は心筋収縮力により強く依存することになる。そこで、「交差脈拍数」とは心臓収縮活動のふるまいの変わる臨界点とも言える。
Takada H and Okino K, An Evaluation Method for Heart Rate Variability,by Using Acceleration Plethysmography, HEP., 31, No. 4, 538-551, 2004 高田晴子及び高田和夫:運動耐容能を評価のための新しい指標,総合健診,32(5),415-421, 2005
本発明の課題は、上述の従来技術の問題点を解決することにあり、加速度脈波(APG)を用いて、個人対応型の目標心拍数を設定し、個人対応型の運動耐容能を評価する装置を提供することにある。
本発明者らは、被験者個人の「交差脈拍数」を目標心拍数として設定し、この目標心拍数を、被験者の年齢における予測最大心拍予備能の何%に相当するかを算出し、その年齢における平均的な最大心拍予備能の何%の運動強度で、個人の心臓収縮活動のふるまいが変わるのかを個別に評価することができ、その結果、運動療法における運動強度を決定できることを発明し、本発明を完成するに至った。
本発明の加速度脈波による個人対応型の運動耐容能評価装置は、被験者の容積脈波の二次微分波である加速度脈波の成分波のa波の頂点からe波の頂点までの時間間隔(Tae)と、成分波のe波の頂点からa波の頂点までの時間間隔とが、Tae = Teaとなる交差脈拍数を目標心拍数とし、この目標心拍数が所定の年代の被験者の予測最大心拍予備能の何%に相当するかを算出して、該被験者の年齢における運動耐容能を評価する手段を有することを特徴とする。
前記予測された最大心拍予備能として、次式:
補正された%HR reserveのk値=[{h1×(予測された%HR reserveのk値)−h2×(Tac)+h3×(年齢)+h4×(c/a)+h5}]
(式中、h1〜h5は定数係数であって、h1=0.146〜0.186、h2=0.0009〜0.0011、h3=0.0015〜0.0025、h4=0.168〜0.368、h5=0.534〜0.554であり、%HR reserveは最大心拍予備能を表し、Tacは加速度脈波のa波の頂点からc波の頂点までの時間間隔を表し、c/aは、(加速度脈波のc波成分の波形の基線から頂点までの距離)/(加速度脈波のa波成分の波形の基線から頂点までの距離)を表す)
に基づき補正した値を用いることが好ましい。h1〜h5の係数が、上記数値範囲内に入らないと、本発明により運動耐容能を正確に評価することが困難である。すなわち、上記数値内に入れば、各々の変数の代表的な値である、例えば予測された%HR reserveのk=0.5、Tac=100msec、c/a=0.1、および年齢=20歳を上記補正式に代入したときに、上記補正された%HR reserveのk値が±0.01(±1%)の範囲内に入り、所期の目的を達成することができる。このh1〜h5は、例えば、h1=0.166、h2=0.001、h3=0.002、h4=0.268およびh5=0.544であることができる。
本発明によれば、被験者の年齢における平均的な最大心拍予備能の何%の運動強度で、個人の心臓収縮活動のふるまいが変わるのかを個別に評価し、安全な運動強度の目安を決めることができるという効果を奏する。
本発明者らは、先に、2185名を対象として、18秒間APG測定を行い、その結果に基づいて、世代別にTaa、Tae、及びTeaの平均値を算出し、世代全体の回帰式を求めて世代間の差を検討した。しかし、個人対応型の交差脈拍数算出のためには、一人一人の回帰式を求めなくては、個人対応型の運動耐容能を正確に評価できなかった。
そこで、本発明では、一人2分間のAPG測定を実施して、一人一人の回帰式を個別に求めて、実際に個人の交差脈拍数を推測した。また、安静時に推測した交差脈拍数と実測した交差脈拍数とでは年齢が若いほど差がでることが考えられるので、運動負荷で実際に脈拍数を増加させて交差脈拍数を実測して、推測交差脈拍数と実測交差脈拍数との差を検討した。
本発明目的は、(1)推測交差脈拍数と実測交差脈拍数との差を検討して補正式を求めること、(2)補正された交差脈拍数と既存の指標である%HR reserveとの関係を世代別に検討すること、(3)交差脈拍数と%HR reserveのもつ意義を検討して、加速度脈波による個人対応型の運動耐容能評価システムを開発することにある。
ところで、脈波を測定するために、従来から、透過型、反射型の脈波センサーが多数市販されている。反射型の脈波センサーは、発光部と受光部とが並べて配置され、この発光部と受光部との上に透光板が設けられて構成され、透光板表面に被験者の指の皮膚表面を密着させて使用されるものである。この場合、発光部から指の皮膚に向けて光を照射し、指内部からの反射光を受光部で受光して、その受光量の変化を電圧に変換し、脈波情報として検出している。本発明におけるAPG測定には、特開2004-000467号公報記載の反射型脈波センサー(例えば、株式会社ユメディカ製の商品名:ARTETT)を用いて行った。
本発明では、上記脈波センサーを用い、右手第二指の指先で測定された容積脈波の二次微分波であるAPGをパーソナルコンピューターのモニター画面に表示し、以下の波形解析アルゴリズムを採用して解析している。これは、Taeの解析精度がe波の検出精度に依存し、このe波は通常は陽性波として検出されるが、被測定者と測定条件によっては陽性波として検出できないことがあるためである。
(1)TaaからTaeの上限推定値(ESTae)を次式により検出する。
Taa<1.0secの時、ES(Estimated)Tae = 0.3*SQRT(Taa) + 0.04(sec)
Taa>1.0secの時、ESTae = 0.34(sec)
(2)ESTaeの推定点から時間を逆にたどって、APGの正の勾配の極大点(cut点:d波からe波までの間の点)を検出してa-cut間隔Tacutを求める。
(3)cut点から正方向にたどって、極大点を求めてe波とする。
(4)極大点が定まらないときは、次式からTaeを算出する。
Tae = Tacut*1.167
換言すれば、Tae算出のため、APGのe波が極大値として検出できないときは、脈拍間隔から推定されるe波の発生位置直前の最大勾配点を求め、a波からこの最大勾配点までの時間間隔(Tacutとする)に一定係数をかけてa-e間隔(Tae)とする。すなわち、交差脈拍数算出には、e波の時間位置が重要であるので、TacutとTaeとの相関から回帰式を求めて、補正式をTacut = 1.167*Taeとした。上記e波の発生位置推定のためTaeを上記したような手続に準じて推定する。
本発明によれば、被験者の容積脈波の二次微分波である加速度脈波の成分波のa波の頂点からe波の頂点までの時間間隔(Tae)と、成分波のe波の頂点からa波の頂点までの時間間隔とが、Tae = Teaとなる交差脈拍数を目標心拍数とし、この目標心拍数が所定の年代の被験者の予測最大心拍予備能の何%に相当するかを算出し、該被験者の年齢における運動耐容能を評価する。この場合の2分間のAPG測定から測定脈波数、%HRRおよび補正された%HRR表示に至るフローチャートを図2(a)〜(c)に示す。この図から明らかなように、まず脈波センサーを用いて被験者の脈波を測定し、波形測定ソフトを起動させて、脈波データを取得し、このデータから波形解析を行って、a波およびe波を検出する。この際、異常波の処理として、Taeの±15%を超えるものを異常波として除去し、以下の回帰式算出には含めないようにする。
上記a波およびe波の検出後、交差脈拍数の解析を行う。Tea = Taa - Tae を算出し、異常波を除去する。次いで、Tae vs Taaの回帰式およびTea vs Taaの回帰式を算出する。かくして、交差脈拍数、%HR reserveおよび補正%HR reserveが算出される。このようにして算出されたデータをコンピューターのモニター画面上に表示し、各個人情報を表示し、TaeおよびTaa vs Taaをプロットしグラフを作成し、測定脈拍数、%HR reserve、補正%HR reserveを表示する。
上記APGデータのうち、疾病、例えば心筋梗塞の既往者、高血圧患者、糖尿病患者、呼吸器疾患の既往者、および薬物服用者に関するデータは除いて、その後の手順を実施する。これは、かかる疾病に罹っている者や薬物服用者のデータは、異常なデータとなるからである。
上記APGの測定は、安静時に行い、対象個人の回帰式から個人の「交差脈拍数」を予測し、予測された交差脈拍数から対応する%HR reserveを導く。運動直後にもAPGを2分間測定して、同様に、対象個人の回帰式から個人の「交差脈拍数」を実測して、実測された「交差脈拍数」から対応する%HR reserveの実測k値を導く。
次いで、実測時と予測時の%HR reserveのk値との関係を重回帰分析により求めて、その結果から、%HR reserveのk値の補正式を求める。
補正された%HR reserveのk値が自覚的運動能や運動歴とどのような関係を持つのかを検討し、その結果を本発明の補正された%HR reserveのk値に反映させる。
また、安静時に得られた%HR reserveのk値を、先に得られた補正式で補正して、対応する交差脈拍数を求め、得られた交差脈拍数および補正%HR reserveと年齢との関係を示し、例えば心筋収縮のふるまいについての加齢変化を検討することもできる。
本実施例では、脈波センサ(株式会社ユメディカ製の商品名:ARTETT)を用いて被験者のAPGを測定し、%HR reserveのk値の補正式を求め、次いで対応する交差脈拍数を求め、心筋収縮のふるまいについての加齢変化を検討した。
上記脈センサーは、反射型赤外光センサーを持ち、センサー波長:940nm、出力最大振幅:±3.3V、直流カット時定数:1.5秒、AD変換のサンプリング周波数:1000(ECG標準に対応)、分解能:3.23mV/digitであり、USBケーブルによりコンピュータに接続される。この場合、TaaとECGとのR-R間隔の相関係数は0.999である。
対象被験者:
A集団:三重県の某企業の社員のうち、エアロバイク運動負荷による体力測定に参加した男性205名を対象に、運動前安静時と運動直後との2回、2分間APG測定を行った。
B集団:愛知県、三重県の某2企業の社員ならびに名古屋市および大阪市で行われた一般向け健康講座の参加者に対して、APG測定を2分間行った。
上記A集団およびB集団のうち、心筋梗塞の既往者、高血圧患者、糖尿病患者、呼吸器疾患の既往者、薬物服用者、およびデータ利用に同意しなかった者を除いた男性277名、女性59名、計336名のAPG データを本発明のために採用した。
実験経過:
A集団においては:
(1)安静時にAPGを2分間測定して、対象個人の回帰式から個人の「交差脈拍数」を予測し、予測された交差脈拍数から対応する%HR reserveを導いた。運動直後にもAPGを2分間測定して、同様に、対象個人の回帰式から個人の「交差脈拍数」を実測して、実測された「交差脈拍数」から対応する%HR reserveの実測k値を導いた(表1)。
(表1−1)交差脈拍数:予測値、測定値および補正値
Figure 2007236807
(表1−2)交差脈拍数:予測値、測定値および補正値
Figure 2007236807
(2)実測時と予測時の%HR reserveのk値の関係を重回帰分析により求めて、その結果から、%HR reserveのk値の補正式を求めた。
(3)簡単なアンケート調査を実施した。回収は205名中の204名であった。質問項目は、(a)現在、自分に最もあてはまるものを選んでください(選択回答:1.階段を2階〜3階まで上がると息切れする。2.階段を3階〜4階まで上がると息切れする。3.階段5階以上でも平気)。(b)運動経験について(選択回答:1.過去も現在もスポーツも運動もほとんどしない。2.過去はスポーツをしたが、現在は歩くか自転車に乗る程度。3.今、定期的に週2回以上スポーツしている。)
(4)補正された%HR reserveのk値が自覚的運動能や運動歴とどのような関係を持つのかを検討した。
また、B集団においては:
(1)安静時に得られた%HR reserveのk値を、先に得られた補正式で補正して、対応する交差脈拍数を求めた。そして、得られた交差脈拍数および補正%HR reserveと年齢との関係を示し、心筋収縮のふるまいについての加齢変化を検討した。
統計的解析方法:
交差脈拍数を算出するために、多数計測の代わりに、公知の方法に基づきエクセルのマクロソフト“解析フォーム”を製作し、以下の手順に従って交差脈拍数を算出した。
(1)“解析フォーム”のエクセルファイル(マクロソフト)を開く。
(2)[解析フォーム]画面がでる。
(3)[解析]ボタンをクリックすると、ファイルを開くためのダイアログボックスが表示されるので、%_dataフォルダの中のCSVファイルを選択して開く。
(4)選択したファイルを開くと、自動的に計算されてグラフが表示され、[近似式の入力]ダイアログが開く。
(5)表示されたグラフの隣に、ふたつの式が表示されるので、[近似式の入力]ダイアログのなかのXの値、Yの値に式の値を手で入力して、入力ボタンを押す。
(6)E列に交差脈拍数が表示され、結果はC:¥hondaに保存される。ファイル名は元のファイルから%を削除し、頭にH_を付加している。
(7)保存されたファイルが表示されるので、終了ボタンを押してファイルを閉じる。
(8)ファイルを閉じると、[解析フォーム]画面にもどるので、次の解析に移る時は上記手順(1)へ戻る。*変更するか聞いてくるのでしないと答える。
(9)エクセルの新規ファイルを開き、B集団の336名分の交差脈拍数をファイル名とともにそれぞれ入力記録する。
前述のマクロソフトを用いて、A集団およびB集団におけるAPGを記録し、記録された各人のAPGデータのB列(Tae)およびH列(Taa)から、Teaを計算し、TaaとTaeとの関係およびTaaとTeaとの関係を図3(a)および(b)に示す。これらの図において、x軸にTaaを、y軸にTaeおよびTeaをプロットし、Tae・TaaとTea・Taaのふたつの回帰直線を求めて、回帰直線の交点のTaaを算出し、脈拍数に換算して、これを各人の交差脈拍数とした。図3(a)にA集団の結果を、また、図3(b)にB集団の結果を示す。各図中の参照数字1はTeaの場合、2はTeaの場合を示す。
また、各人の交差脈拍数がカルボーネン式で求められる何%HR reserveに相当するかを求めた。換算には交差脈拍数={(220−年齢)−安静時心拍数}×運動強度(k=?%)+安静時心拍数}の式を用いた。なお、体力測定に参加したA集団の男性205名については、運動前と運動直後の2回APGを測定して、交差脈拍数および対応する%HR reserveについて、安静時予測値(運動前)と実測値(運動後)の両方を上記の方法で求めた(表1)。
(1)A集団において、実測交差脈拍数(運動後)に対応する%HR reserveのk値を従属変数とし、安静時予測交差脈拍数(運動前)に対応するk値および年齢、Tac、c/aを独立変数に採用して、重回帰分析(強制投入法)を実施した。ただし、採用した独立変数は、上記したように、c/aが頻脈や運動不足では小さくなるということが知られている事実や、波形指数2(c/a) - (b/a)の年齢相関の事実から、c波が心臓の駆出力と関係しているのではないかという推測から仮説的に選択したものであるが、重回帰分析の結果、補正に必要な変数であると判断された。重回帰分析(強制投入法)によって得られた非標準化係数のB値から、安静時に予測した交差脈拍数に対応する%HR reserveのk値の補正式を得た(表2)。得られた補正式から補正k値を算出し、補正k値から補正交差脈拍数を得た(表3)。
(表2)多重ロジスティック分析モデル
Figure 2007236807
註:従属変数=運動後の%HR reserve のk値
表2から、相関関数Rおよび重相関係数R2は以下の通りであり、有効なモデルであることが分かる。
R = 0.325, R2 = 0.106 (p<0.001)
(表3)補正された%HR reserve のk値から算出された交差脈拍数
Figure 2007236807
*:式:補正された%HRのk値=[{0.166×(予測された%HR reserveのk値)−0.001×(Tac)+0.002×(年齢)+0.268×(c/a)+0.544}]
全て、ANOVA(一元配置分散分析)により分析された。
(2)A集団の体力測定(運動負)およびアンケート調査に参加した男性204名について、%HR reserveの補正k値の各年代における平均値を基準として、平均値未満の群(I群)と平均値以上の群(II群)に分けた(I群は20代0.49以上、30代0.50以上、40代0.52以上、50代0.52以上)とした。年齢、BMI(体重(kg))/(身長(m2))×10000、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)、脈拍数(安静時)、波形指数1(d/a - b/a)、波形指数2(c/a - b/a)、安静時予測交差脈拍数、安静時予測交差脈拍数対応%HR reserveのk値、補正k値、補正k値対応交差脈拍数などの各項目について、t検定で2群間を統計的に比較した(表4)。また、I群とII群との2群間で、自覚的息切れ階数と運動経験に関してχ二乗検定で比較検討した(表5および6)。
(表4)I群とII群との間の比較
Figure 2007236807
(表5)I群およびII群におけるスポーツおよび運動
Figure 2007236807
註:χ二乗検定:p<0.05
(表6)定期的にしているスポーツ
Figure 2007236807
註:χ二乗検定:p<0.01
(3)B集団の予測交差脈拍数および対応する%HR reserveのk値を求めた(表7)。上記方法(2)で得られた補正式を用いて、B集団の対象の%HR reserveの補正k値および補正交差脈拍数を得た(表8)。かくして得られた交差脈拍数と対応する%HR reserveの補正k値との関係をグラフに示し(図4および5)、20代、30代、40代、50代、60代の世代間でどのような違いがあるのかを回帰分析で検討した。図4は男性の場合、図5は女性の場合の結果を示す。
(表7−1)補正前の交差脈拍数(男性の場合)
Figure 2007236807
(表7−2)補正前の交差脈拍数(女性の場合)
Figure 2007236807
(表8−1)補正後の交差脈拍数(男性の場合)
Figure 2007236807
(表8−2)補正後の交差脈拍数(女性の場合)
Figure 2007236807
*:補正された%HRのk値=[{0.166×(予測された%HR reserveのk値)−0.001×(Tac)+0.002×(年齢)+0.268×(c/a)+0.544}]
結果および考察:
上記表に示したデータからの分析および考察について以下説明する。
(1)A集団においては、表1に示すように、交差脈拍数の予測値は年代により減少する傾向がみられたものの、統計的に明確な有意差は認められなかった。また、それに対応する%HR reserveも年代により増加する傾向がみられたが、やはり統計的には明確な差はなかった。実測交差脈拍数には年代による有意な減少がみられた。しかし、実測交差脈拍数に対応する%HR reserveには年代による有意な差はみられなかった。20代において交差脈拍数の推測値と実測値の間には比較的に大きな差がみられたが、有意な差ではなかった。また、20代では実測値にばらつきが大きかった。
(2)重回帰分析の結果、補正式は、%HR reserveの補正k値=0.166×[%HR reserveの評価k値] - 0.001×[Tac]+0.002×[年齢]+0.268×[c/a]+0.544だった(表2)。そこで、それぞれの年代の交差脈拍数の補正値は、20代では補正前120拍と補正後131拍、30代では補正前124拍と補正後132拍、40代では補正前121拍と補正後128拍、50代では補正前118拍と補正後121拍だった(表1)。また、それぞれの年代の補正k値は、20代では49%、30代では50%、40代では52%、50代では52%だった。補正交差脈拍数および補正k値は分散分析で有意に年代差が認められた(表3)。
(3)表4に示すように、I群とII群では、年齢、BMI、収縮期血圧(SBP)、拡張期血圧(DBP)には差がなかったが、脈拍数(安静時)はI群で有意に多く、波形指数2はI群で有意に小さかった、また、補正k値は、I群で平均0.48、B群で平均0.55と有意にII群で大きかった。補正k値対応の交差脈拍数は、I群で平均126拍、B群で平均128拍とII群で有意に大きかった(表4)。表5及び6に示すように、I群とII群では自覚的息切れ階数には差はなかったが、I群では、II群よりも運動経験が有意に少なかった。I群97名中、現在も運動を定期的にしている者は5名で、ウオーキング、ゴルフ、バレーボール、ラグビーなどを現在実施している者はひとりもいなかった。これに対して、II群では101名中15名が定期的に運動しており、種目は多岐にわたっていた。
(4)B群の予測交差脈拍数および対応する%HR reserveのk値は表7に示した通りであった。次に、B群の予測交差脈拍数対応の%HR reserveのk値を上記補正式で補正して、補正%HR reserveのk値を求めて、これに対応する脈拍数を補正交差脈拍数としたが、男性においては、予測値は20代では127拍、30代117拍、40代118拍、50代120拍、60才以上118拍であったが、補正されると、20代では136拍、30代131拍、40代125拍、50代123拍、60才以上119拍となった。また、女性では、予測値は20代では114拍、30代120拍、40代110拍、50代113拍、60才以上107拍であったが、補正されると、20代では131拍、30代130拍、40代122拍、50代120拍、60才以上120拍となった。これら交差脈拍数は男性では、47%から56%の平均50%最大心拍予備能、女性では48%から59%の平均50%最大心拍予備能に対応した(表8)。
補正された%HR reserveのk値をx軸にし、補正交差脈拍数をy軸にして、対象全員の結果を年代別にプロットして、各年代の回帰式を求め、図示したものが図4および5であるが、男女ともに、年代が若いほど回帰線は上方に位置した。その結果、%HR reserveのk値が同じであっても、その時の交差脈拍数は加齢につれて小さくなることが予測された。また、逆に、交差脈拍数が同じであっても、その時の%HR reserveは加齢につれて、大きくなることが予測された。
従って、上記分析の結果、以下のように考察することができる。
本発明者らの一人は、先の研究において、20才以上70歳未満の男女2,185名のAPGを18秒間測定して、左室駆出時間の心拍補正式が過去の研究成果と極めて類似しており、APGによる駆出時間予測が信頼できるものであることを示した。また、加齢により駆出時間Taeおよび心拍間隔Taaが延長するにもかかわらず、駆出時間割合であるTae/Taaは減少して、心筋収縮のふるまいが加齢によって変化することも示した。さらに、男女2,185名を20代、30代、40代、50代、60代の年齢集団に分けて、年齢集団における「交差脈拍数」を予測したところ、予測された「交差脈拍数」は、男性の20代で128拍、30代で133拍、40代で127拍、50代で126拍、60代で109拍、女性の20代で125拍、30代で129拍、40代で116拍、50代で116拍、60代で119拍と、加齢につれて低くなることを示した。さらに、これらの予測された「交差脈拍数」が各年齢集団における予測%HR reserve(カルボーネンの式による)の約52%に相当すること(男性では55%最大心拍予備能、女性では47%最大心拍予備能、男女平均で52%最大心拍予備能)も示した。
本発明が先の研究方法と異なるところは、まず、APG測定時間を18秒間ではなく2分間としたことである。先の研究では18秒測定法を採用したので、個人対応の交差脈拍数算出法では誤差が大きくなるため、対象人数を2,000人以上で実施し、年齢集団別の交差脈拍数を求めて、一定の結論を得たものである。
しかし、先の研究の目的は、個人の目標心拍数を推測することであるので、年齢集団一括での検討は不十分であった。そこで、本発明では、測定を2分間として、対象全員の個別の交差脈拍数を推定して検討した。また、安静時に推測された交差脈拍数と実際の交差脈拍数と、どれほど異なるのかを確認することも目的のひとつであった。
本発明の結果、安静時測定で推測された交差脈拍数と実測された交差脈拍数を比較すると、予測値と実測値は30歳以上ではほとんど差がないが、20代の若い年代の者ほど差が大きいことが明らかとなった。低い運動強度で交差脈拍数に達すると予測される場合でも、実際に運動負荷をかけてみると、もっと大きい運動強度で、そして、もっと高い脈拍数が交差脈拍数となるということである。若年者ほど心肺予備能が大きいことが、ひとつの要因であると思われるが、若年者の波形そのものに誤差を生む要因がひそむとも考えられる。そこで、何らかの補正が必要と考え、補正には年齢の他には、c波の情報を使用した。c波が具体的にどのような循環機能の現象を多く反映しているかについては、静脈反応が混入しているとする説、1回心拍出量と相関があるとする説など種々存在し、いまだ確定には至っていないが、本発明者らは、これまでの研究で、d波が基線から降下する波形にはc波がともに降下する場合と降下しない場合とがあること、加齢につれてc波が降下すること、c波が降下する場合にTac(a波の頂点とc波の頂点との時間間隔)が減少すること、心拍数が多いときには、c波が降下する場合が多いこと、運動不足の人ではc波の降下波形を示すことが多いことなどを確認している。そこで、重回帰分析に際して、独立変数として、年齢、Tac、c/aの3つを採用したところ、統計的に有意なモデルができた。
重回帰分析の結果、補正式は補正k値(補正された%HR reserveのk値)=[[0.166×[予想された%HR reserveのk値] - 0.001×[Tac]+0.002×[年齢]+0.268×[c/a]+0.544]]で与えられたが、補正された%HR reserveから逆に交差脈拍数を求めると、男性20代では136拍、30代で131拍、40代で125拍、50代で123拍、60才以上で119拍、女性20代では131拍、30代で130拍、40代で122拍、50代で120拍、60才以上で120拍となった。これを対応する%HR reserveとの回帰直線でみると、加齢につれて、回帰直線は右下方に移動している。つまり、若いときには、高い心拍数で心臓収縮のふるまいが変わるが、加齢につれて、若いときよりも低い心拍数で心臓収縮のふるまいが変わることになる。また、ふるまいの変わる運動強度を%HR reserveで表現すると、加齢につれて、若いときよりも、より高い運動強度で心臓収縮のふるまいが変わることになる。加齢につれて、若いときよりも強い運動強度でないと心臓収縮のふるまいが変わらないと同時に、そのとき上昇する心拍数は若いときよりも低いレベルであることは、高齢者が運動するときの安全性について注意すべき点について示唆している。運動で心拍数が上昇する意味が年齢によって異なるのである。
%HR reserveとの交差脈拍数との回帰式を表9に示す。
若年者から老齢者までの全体で見ると、交差脈拍数に対応する運動強度は、最大心拍予備能の約50%であった。今回の結果を先行研究で得られた結果と比較すると、交差脈拍数および%HR reserveの値が極めて近く、今回得られた補正式は信頼できると考えられる。
安静時にAPGを測定して交差脈拍数を求めた後、補正した交差脈拍数を算出すれば、心臓収縮のふるまいの変わる臨界の脈拍数を知ることができる。この脈拍数は50%%HR reserveでもあるので、運動開始時の指標として有意義なものになると考える。
さらに、本発明の結果からも分かるように、交差脈拍数および対応%HR reserveは運動能とも関連しているので、運動を一定期間続けた後、交差脈拍数および対応%HR reserveを求めれば、自己の心肺予備能または運動耐容能改善の予測も可能である。
(表9)%HR reserveと交差脈拍数との回帰式
Figure 2007236807
(註)X=%HR reserve; Y=交差脈拍数
本発明によれば、被験者の年齢における平均的な最大心拍予備能の何%の運動強度で、個人の心臓収縮活動のふるまいが変わるのかを個別に評価し、安全な運動強度の目安を決めることができるので、本発明は、健康管理や疾病管理などの分野で適用可能である。
測定された脈波の容積脈波、一次微分波および二次微分波模式的に示すグラフ。 APG測定から測定脈波数、%HRRおよび補正された%HRR表示に至るフローチャート。 実施例1において得られたTaaとTaeとの関係およびTaaとTeaとの関係を示すグラフ、(a)はA集団の場合、(b)はB集団の場合を示す 実施例1において得られた男性の場合の交差脈拍数と対応する%HR reserveの補正k値との関係をグラフ。 実施例1において得られた女性の場合の交差脈拍数と対応する%HR reserveの補正k値との関係をグラフ。

Claims (3)

  1. 被験者の容積脈波の二次微分波である加速度脈波の成分波のa波の頂点からe波の頂点までの時間間隔(Tae)と、成分波のe波の頂点からa波の頂点までの時間間隔とが、Tae = Teaとなる交差脈拍数を目標心拍数とし、この目標心拍数が所定の年代の被験者の予測された最大心拍予備能の何%に相当するかを算出して、該被験者の年齢における運動耐容能を評価する手段を有することを特徴とする加速度脈波による個人対応型の運動耐容能評価装置。
  2. 前記予測された最大心拍予備能として、次式:
    補正された%HR reserveのk値=[{h1×(予測された%HR reserveのk値)−h2×(Tac)+h3×(年齢)+h4×(c/a)+h5}]
    (式中、h1〜h5は定数係数であって、h1=0.146〜0.186、h2=0.0009〜0.0011、h3=0.0015〜0.0025、h4=0.168〜0.368、h5=0.534〜0.554であり、%HR reserveは最大心拍予備能を表し、Tacは加速度脈波のa波の頂点からc波の頂点までの時間間隔を表し、c/aは、(加速度脈波のc波成分の波形の基線から頂点までの距離)/(加速度脈波のa波成分の波形の基線から頂点までの距離)を表す)
    に基づき補正した値を用いることを特徴とする請求項1記載の運動耐容能評価装置。
  3. 前記予測された最大心拍予備能として、次式:
    補正された%HR reserveのk値=[{0.166×(予測された%HR reserveのk値)−0.001×(Tac)+0.002×(年齢)+0.268×(c/a)+0.544}]
    (式中、%HR reserveは最大心拍予備能を表し、Tacは加速度脈波のa波の頂点からc波の頂点までの時間間隔を表し、c/aは、(加速度脈波のc波成分の波形の基線から頂点までの距離)/(加速度脈波のa波成分の波形の基線から頂点までの距離)を表す)
    に基づき補正した値を用いることを特徴とする請求項1記載の運動耐容能評価装置。
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