JP2007235386A - 骨振動式音響シート - Google Patents

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【課題】 着座者に対する低音域の伝達経路と高音域の伝達経路とを明確に区分することで、音響シートとしての機能性、およびシートとしての快適性の両立を実現可能とした。
【解決手段】 単体の低音用スピーカ14と、この低音用スピーカの固定される支持板30と、低音用スピーカの前面に配置された三次元構造体である網クッション体16との組み合わせとしてなる振動伝導構造体18を、シートバック12の着座者腰部相当位置の所定範囲に形成したシートパッド24の切り抜き部分24aに配設、収納するとともに、左右一対の高音用スピーカ20を、その出力面前面からシートパッドを排除した状態でシートバックの肩部位置にそれぞれ配設している。
【選択図】 図1

Description

本発明は、シートバックにスピーカの内蔵された音響シート構造、特に低音用スピーカから発生する振動を着座者の骨に伝導することによって、それを低音域の音として脳に伝達させる骨振動式音響シートに関する。
たとえば、スピーカや振動トランスデューサ等の振動システムをシート等に内蔵し、その振動を人体の骨を介して脳に音として伝導する、いわゆる骨伝導システムが知られている。そして、この骨伝導システムによる体感伝導(体感音響)は、恍惚感、陶酔感、臨場感、安堵感等に優れ、また情緒的、本能的な作用もあることから、音楽鑑賞だけでなく、たとえばリラクゼーション、音楽療法等にも応用されている。
ところで、シートのクッション体として一般的に使用されるシートパッドは、通常、ウレタンフォーム等の発泡体から成形されるが、この種の発泡体は通気性に欠けるため、音の伝達性に劣るとともに、その弾性による振動の吸収により、その振動の伝達性にも劣ることが懸念されている。
そこで、熱可塑性樹脂から成形された中空連続線条をランダムなループやカールとして三次元的に接触絡合集合させてなるスプリング構造樹脂体、いわゆる網クッション体を、骨伝導システム内蔵のシートにおける、その発泡体に代わるクッション体として使用することが、たとえば特開2005−223630号公報に開示されている。
この公報に開示された網クッション体(スプリング構造樹脂体)は、所定の嵩密度の空隙を備える三次元構造体であるため、ウレタンフォーム等の発泡体に比較して通気性がよく、また振動を吸収しにくい硬質体であるため、音、振動の伝達性に優れるという利点がある。しかしながら、この種の網クッション体は、音、振動の伝達性に優れる反面、柔軟性に劣ることから、この公報に開示のような、網クッション体をシート等の着座面全面に設ける構成であっては、着座時の快適性の低下が伴われやすい。
そして、この網クッション体は比較的高価であるため、そのコストの点から見て汎用化は難しいと考えられる。
なお、この公知の構成であると、低音用スピーカ、高音用スピーカのいずれもが、網クッション体内に内設されるとともに、その全体をトリムカバー等によって被覆しているため、低音域、高音域のいずれもが、トリムカバー内にこもってしまう虞が否定できなくなる。つまり、この公知の構成であると、音の伝達効率に劣ることが避けられず、よって、音響シートとしての機能性自体に劣ることも考えられる。
特開2005−223630号公報
解決しようとする問題点は、音響シートとしての機能性、およびシートとしての快適性の両立が容易に得られないという点である。
本発明の請求項1に係る骨振動式音響シートは、単体の低音用スピーカと、この低音用スピーカが後方への突出を伴って固定されるとともに、シートバックフレームに対し、所定のばね部材によって弾性的に懸吊、支持された支持板と、熱可塑性樹脂から成形された中空連続線条をランダムなループやカールとして接触絡合集合させてなる三次元構造体であり、低音用スピーカの前面に位置可能に、支持板の前面に配置された網クッション体との組み合わせとしてなる振動伝導構造体を、シートバックの着座者腰部相当位置の所定範囲に形成したシートパッドの切り抜き部分に配設、収納するとともに、左右一対の高音用スピーカを、その出力面前面からシートパッドを排除した状態でシートバックの肩部位置にそれぞれ配設したことを、その最も主要な特徴としている。
また、この発明の請求項2は、高音用スピーカを、シートバックの肩部位置で、少なくともその出力面をシートバックの着座面側に露出させて配設したことを、その最も主要な特徴としている。
さらに、この発明の請求項3は、網クッション体の前面にスラブ材を配したことを、その最も主要な特徴としている。
本発明の請求項1に示す骨振動式音響シートは、着座者に対する低音域の伝達経路と高音域の伝達経路とを明確に区分し、網クッション体を着座者の腰部相当位置の所定範囲のみに設けることで、低音域の振動の減衰を伴うことなく、そのクッション性能の低下を防止するとともに、高音用スピーカをシートバックの肩部位置に設けることで、高音域の音の減衰を防止しているため、音楽等の音源を着座者に伝達する音響シートとしての機能性、および快適な着座を可能とするシートとしての快適性の両立が適切に実現できるという利点がある。
また、この請求項1は、比較的高価な網クッション体をシートバックの着座者腰椎相当位置に部分的に配しているにすぎないため、全体的なコストの低減化も十分にはかられるという利点がある。
さらに、シートバックの着座者腰椎相当位置に配設される振動伝導構造体を、ばね部材によって弾性的に支持するため、着座者に底づき感を与えない、つまりこの点においてもその快適性が十分に高く確保できるという利点がある。
また、この発明の請求項2によれば、シートパッド等に高音域の音の減衰が確実に防止されるため、は、高音用スピーカを、シートバックの肩部位置で、少なくともその出力面をシートバックの着座面側に露出させて配設しているため、音響シートとしての機能性が一層向上されるという利点がある。そして、高音用スピーカをシートバックの肩部位置に露出させることで、音響シートとしての外観品質も向上されることから、これに伴う商品価値の向上も十分に期待できるという利点がある。
さらに、この発明の請求項3は、振動伝導構造体の網クッション体の前面にスラブ材を配することで、振動伝導構造体部分により高いクッション性能が容易に確保できるという利点がある。
着座者に対する低音域の伝達経路と高音域の伝達経路とを明確に区分することにより、音響シートとしての機能性、およびシートとしての快適性の両立を実現可能とした。
図1、図2は、本発明の骨振動式音響シート10におけるシートバック12の、一部破断の概略正面図、およびその概略横断面図であり、図示のように、この発明においては、シートバック着座面の着座者腰部相当位置に、単体の低音用スピーカ14および網クッション体16を有してなる振動伝導構造体18が弾性的に支持されるとともに、左右一対の高音用スピーカ20が、シートバックの肩部位置にそれぞれ配設されている。
なお、この骨振動式音響シートのシートバック12は、ほぼ左右対称として具現化されるため、図1、図2においては、シートバックの正面右方のみを図示するものとする。
この骨振動式音響シート10として、たとえば、乗用車等の車両用シートを例示するが、この発明においては、その車両用シートの基本構造をほぼ援用することにより、骨振動式音響シートを具現化することが可能となっている。
図1、図2に示すように、この骨振動式音響シートのシートバック12の基本構造は、従来と同様の、略矩形状に組み立てられたシートバックフレーム22を骨格とし、その左右間に架設された複数のSばね(図示しない)等による弾性的支持を伴ってウレタンフォーム等の発泡体をクッション体、つまりシートパッド24としてその前面に配するとともに、これら全体をトリムカバー26で被覆することにより、このシートバックは形成される。
ここで、この発明においては、シートバックのシートパッド(クッション体)24の、着座者腰部相当位置の所定範囲に、たとえば略矩形状の切り抜き部24aが形成されている。そして、この発明においては、この切り抜き部24aに、振動伝導構造体18が配設、収納されている。
このシートパッドの切り抜き部24aは、たとえば貫通孔として形成され、振動伝導構造体18は、たとえばばね部材28による支持板30の懸吊のもとで、少なくともその後方への弾性移動を可能に支持されている。
このばね部材28としては、たとえば、支持板30の上部とシートバックフレーム22の左右フレーム22aの係止片32との間に架設、張設された左右個別の引張コイルばね28−1、および支持板下部の背面で、シートバックフレームの、その後方に位置する下部フレーム22bとの間に配設された圧縮ばね態様の板ばね28−2の組み合わせが例示でできる。
なお、ここでは支持板30の下部を圧縮ばね態様の板ばね28−2によって弾性的に支持するものとして具体化しているが、このばね部材28は、支持板を、着座者腰部からの押力のもとでその後方に弾性的に移動させ得るものであれば足りるため、これに限定されず、たとえば、その上部と同様に、左右フレーム22aとの間に架設、張設した引張コイルばねによってこの支持板の下部を弾性的に支持する構成としてもよい。
また、ここでは板ばね28−2として支持板下部のばね部材を具体化しているが、その後方への圧縮変形が可能であれば足りるため、この板ばねに限定されず、たとえばSばねを三次元的に折曲成形したものであってもよい。
このように、このばね部材を上部の引張コイルばね28−1と下部の圧縮ばね態様の板ばね28−2との組み合わせとすることにより、支持板上部での移動ストロークが引張コイルばねによって大きく確保できるとともに、その重量による下降が、支持板下部での板ばね等による支持のもとで確実に防止される。
この支持板30としては、たとえば、合成樹脂等によりなる樹脂パネルが例示できる。そして、この支持板(樹脂パネル)30は、たとえば、人体の腰椎形状に順応可能な、上下方向、左右方向にそれぞれ緩やかに湾曲した三次元形状として形成される。
この支持板30の裏面に、単体の低音用スピーカ14が固定される。
この低音用スピーカ14として、たとえば一般的なウーファが利用でき、その後方に突出する形態をもって、支持板30の裏面にねじ止め等のもとで固定される。
なお、図1に示すように、低音用スピーカ(ウーファ)14の出力の妨げとならないよう、支持板30には対応形状の貫通孔34が設けられる。
図1、図2に示すように、この、裏面に低音用スピーカ14を備えた支持板30の前面には、網クッション体16が配置されている。
この網クッション体16は、熱可塑性樹脂から成形された中空連続線条をランダムなループやカールとして三次元的に接触絡合集合させてなるスプリング構造樹脂体であり、支持板30とほぼ同一の平面形状で所定の厚み、たとえば3〜4cm程度の厚みを持って形成されている。
この網クッション体16は、たとえば接着剤によって支持板30の前面に一体的に固着される。
なお、この網クッション体16としては、たとえば特開2005−223630号公報にスプリング構造樹脂本体として開示されたものが例示できる。
ここで、この実施例においては、網クッション体16の前面に、この網クッション体とほぼ同一の平面形状を持ったスラブ材36が配置されている。
また、図1に示すように、この発明の骨振動式音響シート10においては、シートバック12の肩部位置に、左右一対の高音用スピーカ20が配設されている。
この高音用スピーカ20としては、一般的なツィータ、あるいはフルレンジスピーカ等が利用でき、この高音用スピーカは、たとえば樹脂ケース38に収納され、その出力面をシートバック12の着座面側に露出させるよう、シートクッションフレーム22等に固定される。
このような構成の骨振動式音響シート10においては、着座者腰部相当位置でシートバック12に内蔵された振動伝導構造体の低音用スピーカ14を、着座者の腰椎、つまりは人体の骨に低音域の振動を伝導する振動源として機能させている。そして、この発明においては、この低音用スピーカ14の前面に振動の減衰の少ない網クッション体16を配しているため、その振動を効率よく着座者の腰椎(骨)に伝導することが十分に可能となる。
また、この骨振動式音響シート10においては、比較的硬質な網クッション体16をシートバック12の着座者腰部相当位置の所定範囲に配置しているにすぎない。つまり、シートバック12の全体的なクッション性能を損なうことなく、着座者の腰椎に低音域の振動を伝導可能とする構成が、この発明によれば十分かつ容易に確保することができる。
さらに、この発明においては、左右一対の高音用スピーカ20を、シートバック12の肩部に露出して設けている。つまり、この高音用スピーカ20の出力面の前面には、音を吸収しやすいシートパッド24等の発泡体が存在しないため、着座者の耳に対する効率のよい出力および伝達が容易に確保可能となる。また、シートバック12の肩部であれば、着座者に着座時の違和感を与えることもないことから、その露出に伴うクッション性能の低減化も十分に防止できる。
上記のように、この発明の骨振動式音響シート10は、着座者に対する低音域の伝達経路と高音域の伝達経路とを明確に区分することで、音楽等の音源を着座者に伝達する音響シートとしての機能性、および快適な着座を可能とする車両用シートとしての快適性の両立を実現可能としている。
また、この発明においては、比較的高価な網クッション体16をシートバック12の着座者腰椎相当位置に部分的に配しているにすぎないため、全体的なコストの低減化も十分にはかられる。
さらに、この発明においては、シートバック12の着座者腰椎相当位置に配設される振動伝導構造体18が、ばね部材28−1,28−2によって弾性的に支持されているため、着座者からの押力に伴った、その沈み込みが十分に得られる。つまり、着座者に底づき感を与えないため、この点においても、その快適性が十分に高く確保可能となる。
ここで、この実施例においては、網クッション体16の前面にスラブ材36を配しているが、このスラブ材は振動伝導構造体18部分におけるクッション性能をより高く確保しようとするものにすぎず、振動伝導構造体の必須部材ではないため、省略することも可能である。
しかしながら、このようなスラブ材36を網クッション体16の前面に配置すれば、網クッション体のみの場合に比較して十分に高いクッション性能をこの振動伝導構造体18部分に確保することが容易に可能となる。
なお、この発明における振動伝導構造体18は、低音域の振動を着座者の腰椎に伝導すれば足りるものであり、網クッション体16を低音用スピーカ14の前面に設けることで、このスラブ材36の厚みも十分に抑制されたものにできるため、このスラブ材を網クッション体の前面に設ける構成であっても、その振動伝導性能に対する悪影響は少ないものと考えられる。
また、この実施例においては、高音用スピーカ20をシートバック12の肩部に露出して設けるものとしているが、その出力面の前面にシートパッド等のクッション体を配しない構成であれば足りるため、たとえばトリムカバー26によってこの高音用スピーカを全体的に覆ってもよい。なお、この場合においては、トリムカバー26の、高音用スピーカ20の出力面前面部分を、たとえばメッシュ状とすることが好ましい。
しかしながら、実施例のように、少なくともその出力面をシートバック12の肩部に露出して設ければ、音の減衰が確実に防止できるとともに、音響シートとしての外観品質の向上に伴う商品価値の向上も十分に期待できる。
上述した実施例は、この発明を説明するためのものであり、この発明を何等限定するものでなく、この発明の技術範囲内で変形、改造等の施されたものも全てこの発明に包含されることはいうまでもない。
本発明は、乗用車等の車両用シートに限定されず、たとえば、電車、飛行機、船舶等の各種乗り物用のシートや、劇場用、家庭用、医療用等の各種シートにも応用できる。
この発明に係る骨振動式音響シートにおけるシートバックの、一部破断の概略正面図である。 骨振動式音響シートにおけるシートバックの、一部破断の略横断面図である。
符号の説明
10 骨振動式音響シート
12 シートバック
14 低音用スピーカ
16 網クッション体
18 振動伝導構造体
20 高音用スピーカ
30 支持板
36 スラブ材

Claims (3)

  1. ウレタンフォーム等の発泡体を、シートパッドとして少なくともその着座面に有してなるシートであり、
    単体の低音用スピーカと;この低音用スピーカが後方への突出を伴って固定されるとともに、シートバックフレームに対し、所定のばね部材によって弾性的に懸吊、支持された支持板と;熱可塑性樹脂から成形された中空連続線条をランダムなループやカールとして接触絡合集合させてなる三次元構造体であり、低音用スピーカの前面に位置可能に、支持板の前面に配置された網クッション体と;の組み合わせとしてなる振動伝導構造体を、シートバックの着座者腰部相当位置の所定範囲に形成した、上記シートパッドの切り抜き部分に配設、収納するとともに、
    左右一対の高音用スピーカを、その出力面前面から上記シートパッドを排除した状態でシートバックの肩部位置にそれぞれ配設した骨振動式音響シート。
  2. 前記高音用スピーカが、シートバックの肩部位置で、少なくともその出力面をシートバックの着座面側に露出させて配設された請求項1記載の骨振動式音響シート。
  3. 前記網クッション体の前面にスラブ材を配した請求項1または2記載の骨振動式音響シート。
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