JP2007234329A - プラズマ発生装置及びワーク処理装置 - Google Patents

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秀高 松内
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宏史 萬川
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Abstract

【課題】プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しつつプラズマ処理効率を向上させることが可能なプラズマ発生装置及びワーク処理装置を提供する。
【解決手段】このワーク処理装置Sは、マイクロ波を発生するマイクロ波発生装置20と、マイクロ波を伝搬し処理対象とされるワークWに対向可能な下面板13Bを有する断面矩形状の導波管10と、導波管10の内部に突出する中心導電体32でマイクロ波を受信しそのマイクロ波のエネルギーに基づきプラズマを生成して放出するプラズマ発生ノズル31が、下面板13Bにマイクロ波の伝搬方向に沿って2列に整列配置されて取り付けられてなるプラズマ発生部30とを備えている。そして、導波管10の幅方向の内壁幅をaとした場合に、幅方向で隣り合う2つのプラズマ発生ノズル31の中心導電体32の配列間隔dがa・2/3以上であることを特徴とする。
【選択図】図4

Description

本発明は、基板等の被処理ワークに対してプラズマを照射しワーク表面の清浄化や改質を図ることが可能なプラズマ発生装置及びこれを備えるワーク処理装置に関するものである。
従来、例えば半導体基板等の被処理ワークに対してプラズマを照射し、その表面の有機汚染物の除去、表面改質、エッチング、薄膜形成または薄膜除去等を行うワーク処理装置が知られている。例えば特許文献1には、内側電極と外側電極とを有するプラズマ発生ノズルを用い、常圧下において両電極間に電界を印加することでグロー放電プラズマを発生させ、プラズマ化されたガス(プラズマ)を被処理ワークに放射するワーク処理装置が開示されている。
また、従来、大型ワークのプラズマ処理に好適な複数のプラズマ発生ノズルを備えたワーク処理装置も知られている。この従来のワーク処理装置は、一般に、導波管内を伝搬するマイクロ波を受信しそのマイクロ波のエネルギーに基づきプラズマを生成して放出するプラズマ発生ノズルが、導波管の前記マイクロ波の伝搬方向に沿った中心線上に一列に整列配置されて取り付けられて構成されており、これによってワークに対して前記マイクロ波の伝搬方向に一度に大面積のプラズマ処理を行い、プラズマ処理効率を向上させている。
特開2003−197397号公報
しかしながら、上記従来のワーク処理装置では、プラズマ処理効率のさらなる向上を図るべく、前記マイクロ波の伝搬方向と直交する導波管の幅方向にも一度に大面積のプラズマ処理を行う場合、プラズマ発生ノズルが一列に整列配置された導波管を前記幅方向に並設させる必要があるため、プラズマ発生機構が大型化したり複雑化したりするという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しつつプラズマ処理効率を向上させることが可能なプラズマ発生装置及びワーク処理装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、この発明の請求項1に記載のプラズマ発生装置は、マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、前記マイクロ波を伝搬し処理対象とされるワークに対向可能な対向面を有する断面矩形状の導波管と、前記導波管の内部に突出する導電体で前記マイクロ波を受信しそのマイクロ波のエネルギーに基づきプラズマ化したガスを生成して放出するプラズマ発生ノズルが、前記対向面に前記マイクロ波の伝搬方向に沿って2列に整列配置されて取り付けられてなるプラズマ発生部とを備え、前記導波管の前記伝搬方向と直交する幅方向の内壁幅をaとした場合に、前記幅方向で隣り合う2つの前記プラズマ発生ノズルの導電体の配列間隔dが以下の式(1)を満たすことを特徴とする。
d ≧ a・2/3 ・・・(1)
この請求項1に記載のプラズマ発生装置では、上記のように、導波管の内部に突出する導電体でマイクロ波を受信しそのマイクロ波のエネルギーに基づきプラズマ化したガス(プラズマ)を生成して放出するプラズマ発生ノズルを、導波管の対向面にマイクロ波の伝搬方向に沿って2列に整列配置して取り付けることによって、1つの導波管にプラズマ発生ノズルを2列に配列することができるので、例えばプラズマ発生ノズルがマイクロ波の伝搬方向に一列に整列配置された導波管を前記伝搬方向と直交する幅方向に並設してプラズマ発生ノズルを2列に配列する場合と異なり、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しながら、ワークに対して導波管の幅方向に一度に大面積のプラズマ処理を行うことができる。さらに、導波管の幅方向で隣り合う2つのプラズマ発生ノズルの導電体の配列間隔dを上記式(1)が満たされるように設定することによって、プラズマを点灯させるのに必要なプラズマ発生ノズルの電界強度を確実に得ることが可能な配列間隔で2列のプラズマ発生ノズルを対向面に配置することができるので、1つの導波管にプラズマ発生ノズルを2列に配列したことに起因してプラズマが放出されない場合があるという不都合の発生を十分に抑制することができる。以上のことから、この請求項1に記載のプラズマ発生装置では、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しながら一回当りのプラズマ処理面積を拡大し、かつ確実にプラズマ放出を行うことができるので、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しつつプラズマ処理効率を十分に向上させることができる。
上記請求項1に記載のプラズマ発生装置において、好ましくは、前記プラズマ発生ノズルは、前記導波管の内部に一端が突出する円柱状の内部導電体と、該内部導電体の周囲に離間して配置された外部導電体と、前記内部導電体と前記外部導電体との間に所定のガスを供給するガス供給部とを具備するとともに、ノズル先端部からプラズマ化されたガスを放出するよう構成されており、前記配列間隔dが、前記導波管の幅方向に隣り合う2つの前記プラズマ発生ノズルの内部導電体の軸心間距離である(請求項2)。
このように構成すれば、配列間隔dを正確に規定することができるので、1つの導波管にプラズマ発生ノズルを2列に配列したことに起因してプラズマが放出されない場合があるという不都合の発生を確実に防止することができる。
また、この発明の請求項3に記載のワーク処理装置は、請求項1または2に記載のプラズマ発生装置を具備するワーク処理装置であって、前記プラズマ発生装置で発生するプラズマを処理対象とされるワークに照射して所定の処理を施与することを特徴とする。
この請求項3に記載のワーク処理装置では、上記のように、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しつつプラズマ処理効率を十分に向上させることが可能なプラズマ発生装置を用いてワークにプラズマを照射して所定の処理を施与するように構成したので、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しつつプラズマ処理効率を十分に向上させることができる。
この発明のプラズマ発生装置及びワーク処理装置によれば、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しながら、ワークに対する一回当りのプラズマ処理面積を拡大することができ、さらに、1つの導波管にプラズマ発生ノズルを2列に配列したことに起因してプラズマ放出が行われないという不都合の発生を十分に抑制することができることから、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しつつプラズマ処理効率を十分に向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係るワーク処理装置Sの全体構成を示す斜視図であり、図2は、図1とは視線方向を異ならせたプラズマ発生ユニットPUの斜視図、図3は一部透視側面図である。なお、図1〜図3において、X−X方向を前後方向、Y−Y方向を左右方向、Z−Z方向を上下方向というものとし、−X方向を前方向、+X方向を後方向、−Yを左方向、+Y方向を右方向、−Z方向を下方向、+Z方向を上方向として説明する。
このワーク処理装置Sは、プラズマを発生し被処理物となるワークWに前記プラズマを照射するプラズマ発生ユニットPU(プラズマ発生装置)と、ワークWを前記プラズマの照射領域を経由する所定のルートで搬送する搬送手段Cとから構成されている。
プラズマ発生ユニットPUは、マイクロ波を利用し常温常圧でのプラズマ発生が可能なユニットであって、大略的に、マイクロ波を伝搬させる導波管10、この導波管10の一端側(左側)に配置され所定波長のマイクロ波を発生するマイクロ波発生装置20、導波管10に設けられたプラズマ発生部30、導波管10の他端側(右側)に配置されマイクロ波を反射させるスライディングショート40、導波管10に放出されたマイクロ波のうち反射マイクロ波がマイクロ波発生装置20に戻らないよう分離するサーキュレータ50、サーキュレータ50で分離された反射マイクロ波を吸収するダミーロード60及びインピーダンス整合を行うスタブチューナ70を備えて構成されている。
搬送手段Cは、所定の搬送路に沿って配置された複数の搬送ローラ80を備え、図略の駆動手段により搬送ローラ80が駆動されることで、処理対象となるワークWを、前記プラズマ発生部30を経由して搬送させるものである。本実施形態では、平板状のワークWが搬送手段Cにより搬送される例を示している。なお、処理対象となるワークWとしては、プラズマディスプレイパネルや半導体基板のような平型基板、電子部品が実装された回路基板等を例示することができる。また、平型形状でないパーツや組部品等も処理対象とすることができ、この場合は搬送ローラに代えてベルトコンベア等を採用すれば良い。
導波管10は、例えば非磁性金属(アルミニウム等)からなり、断面矩形の長尺管状を呈し、マイクロ波発生装置20により発生されたマイクロ波をプラズマ発生部30へ向けて、その長手方向に伝搬させるものである。導波管10は、分割された複数の導波管ピースが互いのフランジ部同士で連結された連結体で構成されており、一端側から順に、マイクロ波発生装置20が搭載される第1導波管ピース11、スタブチューナ70が組み付けられる第2導波管ピース12及びプラズマ発生部30が設けられている第3導波管ピース13が連結されてなる。なお、第1導波管ピース11と第2導波管ピース12との間にはサーキュレータ50が介在され、第3導波管ピース13の他端側にはスライディングショート40が連結されている。
また、第1導波管ピース11、第2導波管ピース12及び第3導波管ピース13は、それぞれ金属平板からなる上面板、下面板及び2枚の側面板を用いて角筒状に組み立てられ、その両端にフランジ板が取り付けられて構成されている。なお、このような平板の組み立てによらず、押し出し成形や板状部材の折り曲げ加工等により形成された矩形導波管ピース若しくは非分割型の導波管を用いるようにしても良い。また、非磁性金属に限らず、導波作用を有する各種の部材で導波管を構成することができる。
マイクロ波発生装置20は、例えば2.45GHzのマイクロ波を発生するマグネトロン等のマイクロ波発生源と、このマイクロ波発生源にて発生されたマイクロ波の強度を所定の出力強度に調整するアンプとを具備する装置本体部21と、装置本体部21で発生されたマイクロ波を導波管10の内部へ放出するマイクロ波送信アンテナ22とを備えて構成されている。本実施形態に係るプラズマ発生ユニットPUでは、例えば1W〜3kWのマイクロ波エネルギーを出力できる連続可変型のマイクロ波発生装置20が好適に用いられる。
図3に示すようにマイクロ波発生装置20は、装置本体部21からマイクロ波送信アンテナ22が突設された形態のものであり、第1導波管ピース11に載置される態様で固定されている。詳しくは、装置本体部21が第1導波管ピース11の上面板11Uに載置され、マイクロ波送信アンテナ22が上面板11Uに穿設された貫通孔111を通して第1導波管ピース11内部の導波空間110に突出する態様で固定されている。このように構成されることで、マイクロ波送信アンテナ22から放出された例えば2.45GHzのマイクロ波は、導波管10により、その一端側(左側)から他端側(右側)に向けて伝搬される。
プラズマ発生部30は、第3導波管ピース13の下面板13B(処理対象ワークとの対向面)に突設された16個のプラズマ発生ノズル31を備えている。本実施形態では、これらのプラズマ発生ノズル31は、マイクロ波の伝搬方向(左右方向)に8個整列配置され、かつ導波管10の前記伝搬方向と直交する幅方向(前後方向)に所定の配列間隔dを隔てて2列に配列されている。また、8個のプラズマ発生ノズル31により各々構成される一対の列は、導波管10の伝搬方向に沿った中心線L(図5参照)を基準に線対称となっている。
図6は、2つのプラズマ発生ノズル31を拡大して示す側面図(一方のプラズマ発生ノズル31は分解図として描いている)、図7は、図6のA−A線側断面図である。以下、プラズマ発生ノズル31の構成について詳細に説明する。プラズマ発生ノズル31は、中心導電体32(内部導電体)、ノズル本体33(外部導電体)、ノズルホルダ34、シール部材35及び保護管36を含んで構成されている。
中心導電体32は、良導電性の金属から構成された円柱状の部材からなり、その上端部321の側が第3導波管ピース13の下面板13Bを貫通して導波空間130に所定長さだけ突出(この突出部分を受信アンテナ部320という)する一方で、下端部322がノズル本体33の下端縁331と略面一になるように、上下方向に配置されている。この中心導電体32には、受信アンテナ部320が導波管10内を伝搬するマイクロ波を受信することで、マイクロ波エネルギー(マイクロ波電力)が与えられるようになっている。当該中心導電体32は、長さ方向略中間部において、シール部材35により保持されている。
ノズル本体33は、良導電性の金属から構成され、中心導電体32を収納する筒状空間332を有する筒状体である。また、ノズルホルダ34も良導電性の金属から構成され、ノズル本体33を保持する比較的大径の下部保持空間341と、シール部材35を保持する比較的小径の上部保持空間342とを有する筒状体である。一方、シール部材35は、テフロン(登録商標)等の耐熱性樹脂材料やセラミック等からなる絶縁性部材からなり、前記中心導電体32を固定的に保持する保持孔351をその中心軸上に備える筒状体からなる。
ノズル本体33は、上方から順に、ノズルホルダ34の下部保持空間341に嵌合される上側胴部33Uと、後述するガスシールリング37を保持するための環状凹部33Sと、環状に突設されたフランジ部33Fと、ノズルホルダ34から突出する下側胴部33Bとを具備している。また、上側胴部33Uには、所定の処理ガスを前記筒状空間332へ供給させるための連通孔333が穿孔されている。
このノズル本体33は、中心導電体32の周囲に配置された外部導電体として機能するもので、中心導電体32は所定の環状空間H(絶縁間隔)が周囲に確保された状態で筒状空間332の中心軸上に挿通されている。ノズル本体33は、上側胴部33Uの外周部がノズルホルダ34の下部保持空間341の内周壁と接触し、またフランジ部33Fの上端面がノズルホルダ34の下端縁343と接触するようにノズルホルダ34に嵌合されている。なお、ノズル本体33は、例えばプランジャやセットビス等を用いて、ノズルホルダ34に対して着脱自在な固定構造で装着されることが望ましい。
ノズルホルダ34は、第3導波管ピース13の下面板13Bに穿孔された貫通孔131に密嵌合される上側胴部34U(上部保持空間342の位置に略対応する)と、下面板13Bから下方向に延出する下側胴部34B(下部保持空間341の位置に略対応する)とを備えている。下側胴部34Bの外周には、処理ガスを前記環状空間Hに供給するためのガス供給孔344が穿孔されている。図示は省略しているが、このガス供給孔344には、所定の処理ガスを供給するガス供給管の終端部が接続するための管継手等が取り付けられる。かかるガス供給孔344と、ノズル本体33の連通孔333とは、ノズル本体33がノズルホルダ34への定位置嵌合された場合に互いに連通状態となるように、各々位置設定されている。なお、ガス供給孔344と連通孔333との突き合わせ部からのガス漏洩を抑止するために、ノズル本体33とノズルホルダ34との間にはガスシールリング37が介在されている。
シール部材35は、その下端縁352がノズル本体33の上端縁334と当接し、その上端縁353がノズルホルダ34の上端係止部345と当接する態様で、ノズルホルダ34の上部保持空間342に保持されている。すなわち、上部保持空間342に中心導電体32を支持した状態のシール部材35が嵌合され、ノズル本体33の上端縁334でその下端縁352が押圧されるようにして組み付けられているものである。
保護管36(図7では図示省略している)は、所定長さの石英ガラスパイプ等からなり、ノズル本体33の筒状空間332の内径に略等しい外径を有する。この保護管36は、ノズル本体33の下端縁331での異常放電(アーキング)を防止して後述するプルームPを正常に放射させる機能を有しており、その一部がノズル本体33の下端縁331から突出するように、前記筒状空間332に内挿されている。なお、保護管36は、その先端部が下端縁331と一致するように、或いは下端縁331よりも内側へ入り込むように、その全体が筒状空間332に収納されていても良い。
プラズマ発生ノズル31は上記のように構成されている結果、ノズル本体33、ノズルホルダ34及び第3導波管ピース13(導波管10)は導通状態(同電位)とされている一方で、中心導電体32は絶縁性のシール部材35で支持されていることから、これらの部材とは電気的に絶縁されている。従って、図8に示すように、導波管10がアース電位とされた状態で、中心導電体32の受信アンテナ部320でマイクロ波が受信され中心導電体32にマイクロ波電力が給電されると、その下端部322及びノズル本体33の下端縁331の近傍に電界集中部が形成されるようになる。
かかる状態で、ガス供給孔344から例えば酸素ガスや空気のような酸素系の処理ガスが環状空間Hへ供給されると、前記マイクロ波電力により処理ガスが励起されて中心導電体32の下端部322付近においてプラズマ(電離気体)が発生する。このプラズマは、電子温度が数万度であるものの、ガス温度は外界温度に近い反応性プラズマ(中性分子が示すガス温度に比較して、電子が示す電子温度が極めて高い状態のプラズマ)であって、常圧下で発生するプラズマである。
このようにしてプラズマ化された処理ガスは、ガス供給孔344から与えられるガス流によりプルームPとしてノズル本体33の下端縁331から放射される。このプルームPにはラジカルが含まれ、例えば処理ガスとして酸素系ガスを使用すると酸素ラジカルが生成されることとなり、有機物の分解・除去作用、レジスト除去作用等を有するプルームPとすることができる。本実施形態に係るプラズマ発生ユニットPUでは、16個のプラズマ発生ノズル31が前述した配列で整列配置されていることから、左右方向に長尺の帯状のプルームPを発生させることが可能となる。
因みに、処理ガスとしてアルゴンガスのような不活性ガスや窒素ガスを用いれば、各種基板の表面クリーニングや表面改質を行うことができる。また、フッ素を含有する化合物ガスを用いれば基板表面を撥水性表面に改質することができ、親水基を含む化合物ガスを用いることで基板表面を親水性表面に改質することができる。さらに、金属元素を含む化合物ガスを用いれば、基板上に金属薄膜層を形成することができる。
上記構成のプラズマ発生部30は、その幅員、つまり8個のプラズマ発生ノズル31で構成される各列の左右方向の配列幅が、平板状ワークWの搬送方向と直交する方向のサイズtと略合致する幅員とされている。これにより、ワークWを搬送ローラ80で搬送しながら、ワークWの全表面(下面板13Bと対向する面)に対してプラズマ処理が行えるようになっている。なお、各列を構成する8個のプラズマ発生ノズル31の配列間隔は、導波管10内を伝搬させるマイクロ波の波長λに応じて定めることが望ましい。例えば、波長λの1/2ピッチ、1/4ピッチでプラズマ発生ノズル31を配列することが望ましく、2.45GHzのマイクロ波を用いる場合、矩形の導波管10の断面サイズが2.84インチ×1.38インチのとき、λ=230mmであるので、115mm(λ/2)ピッチ、或いは57.5mm(λ/4)ピッチでプラズマ発生ノズル31を配列すれば良い。
ここで、本実施形態では、前述した導波管10の幅方向(前後方向)で隣り合う2つのプラズマ発生ノズル31の配列間隔dが、以下のように設定されている。すなわち、この配列間隔dは、詳細には導波管10の幅方向で隣り合う2つのプラズマ発生ノズル31の中心導電体32の軸心間距離で規定されるものであり、導波管10の幅方向の内壁幅をaとした場合に、次式(1)を満たすようになっている。
d ≧ a・2/3 ・・・(1)
図9は、プラズマ発生ノズル31の配列間隔と電界強度との関係を説明するための相関図である。以下、本願発明者らによる上記式(1)の導出過程について図9を参照して説明する。なお、図9における横軸は、導波管10の幅方向(前後方向)で隣り合う2つのプラズマ発生ノズル31の中心導電体32の軸心間距離(配列間隔dに相当する)を示しており、縦軸は、該プラズマ発生ノズル31の電界集中部での電界強度を示している。
本願発明者らは、内壁幅aの導波管10の下面板13Bにプラズマ発生ノズル31を比較的小さい配列間隔dで2列に配列設置した際に、プラズマ発生ノズル31からプラズマが適切に放出されない場合があることに着目し、配列間隔dと導波管10の内壁幅aとの関係がプラズマ発生ノズル31からのプラズマ放出に影響するという仮説を提案した。そして、該仮説を立証すべく、導波管10の幅方向(前後方向)で隣り合う2つのプラズマ発生ノズル31の配列間隔dを変化させ、各配列間隔dに対応するプラズマ発生ノズル31の電界強度をシミュレーションにより算出した。このシミュレーションで判明した配列間隔dと電界強度との関係が図9に示されている。なお、上記シミュレーションでの導波管10の幅方向の内壁幅aは、2.84インチ(約72mm)に設定されている。一方、本願発明者らが行った他の実験から、プラズマ発生ノズル31に処理ガスが供給された際にノズル先端からプラズマが放出されるためには、プラズマ発生ノズル31の電界集中部に約10000V/m以上の電界強度が必要であるとの実験結果が得られた。
この実験結果をもとに図9のシミュレーション結果を参照すると、プラズマ発生ノズル31の配列間隔dが約48mm以上の場合に、該プラズマ発生ノズル31の電界強度が約10000V/m以上になることがわかる。このことは、導波管10の下面板13Bに2列に整列配置されて取り付けられたプラズマ発生ノズル31においてプラズマを発生させるためには、導波管10の幅方向で隣り合う2つのプラズマ発生ノズル31の配列間隔dが約48mm以上必要であることを示している。
そして、シミュレーションでの導波管10の内壁幅aが2.84インチ(約72mm)に設定されていることから、導波管10に2列に配列されたプラズマ発生ノズル31からプラズマが適切に放出される条件としての配列間隔dと導波管10の内壁幅aとの関係式(1)が導出された。
このように、導波管10の幅方向で隣り合う2つのプラズマ発生ノズル31の配列間隔d(中心導電体32の軸心間距離)を式(1)が満たされるように設定することによって、プラズマを点灯放出させるのに必要なプラズマ発生ノズル31の電界強度を確実に得ることが可能な配列で2列のプラズマ発生ノズル31を下面板13Bに配置することができる。
スライディングショート40は、各々のプラズマ発生ノズル31に備えられている中心導電体32と、導波管10の内部を伝搬されるマイクロ波との結合状態を最適化するために備えられているもので、マイクロ波の反射位置を変化させて定在波パターンを調整可能とするべく第3導波管ピース13の右側端部に連結されている。従って、定在波を利用しない場合は、当該スライディングショート40に代えて、電波吸収作用を有するダミーロードが取り付けられる。
このスライディングショート40は、導波管10と同様な断面矩形の筐体構造を有しており、導波管10と同じ材料で構成された筐体内にマイクロ波の反射面となる先端面を有する円柱状の反射ブロック42が備えられている。かかる反射ブロック42の左右方向への移動による先端面の位置調整によって、定在波パターンが最適化される。
サーキュレータ50は、例えばフェライト柱を内蔵する導波管型の3ポートサーキュレータからなり、一旦はプラズマ発生部30へ向けて伝搬されたマイクロ波のうち、プラズマ発生部30で電力消費されずに戻って来る反射マイクロ波を、マイクロ波発生装置20に戻さずダミーロード60へ向かわせるものである。このようなサーキュレータ50を配置することで、マイクロ波発生装置20が反射マイクロ波によって過熱状態となることが防止される。
ダミーロード60は、上述の反射マイクロ波を吸収して熱に変換する水冷型(空冷型でも良い)の電波吸収体である。このダミーロード60には、冷却水を内部に流通させるための冷却水流通口61が設けられており、反射マイクロ波を熱変換することにより発生した熱が前記冷却水に熱交換されるようになっている。
スタブチューナ70は、導波管10とプラズマ発生ノズル31とのインピーダンス整合を図るためのもので、第2導波管ピース12の上面板12Uに所定間隔を置いて直列配置された3つのスタブチューナユニット70A〜70Cを備えている。これら3つのスタブチューナユニット70A〜70Cは同一構造を有しており、第2導波管ピース12の導波空間120に突出するスタブ71が備えられている。
スタブチューナユニット70A〜70Cに各々備えられているスタブ71は、その導波空間120への突出長が独立して調整可能とされている。これらスタブ71の突出長は、例えばマイクロ波電力パワーをモニターしつつ、中心導電体32による消費電力が最大となるポイント(反射マイクロ波が最小になるポイント)を探索することで決定される。なお、このようなインピーダンス整合は、必要に応じてスライディングショート40と連動させて実行される。
次に、本実施形態に係るワーク処理装置Sの電気的構成について説明する。図10は、ワーク処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。この制御系90はCPU(中央演算処理装置)等からなり、機能的にマイクロ波出力制御部91、ガス流量制御部92、モータ制御部93、全体制御部94が備えられている。さらに、全体制御部94に対して所定の操作信号を与える操作部95が備えられている。
マイクロ波出力制御部91は、マイクロ波発生装置20から出力されるマイクロ波のON−OFF制御、出力強度制御を行うもので、所定のパルス信号を生成してマイクロ波発生装置20の装置本体部21によるマイクロ波発生の動作制御を行う。
ガス流量制御部92は、プラズマ発生部30の各プラズマ発生ノズル31へ供給する処理ガスの流量制御を行うものである。具体的には、ガスボンベ等の処理ガス供給源921とプラズマ発生ノズル31との間を接続するガス供給管922に設けられた流量制御弁923の開閉制御乃至は開度調整を行う。
モータ制御部93は、搬送ローラ80を回転駆動させる駆動モータ931の動作制御を行うもので、ワークWの搬送開始及び停止、搬送速度の制御等を行うものである。
全体制御部94は、当該ワーク処理装置Sの全体的な動作制御を司るもので、操作部95から与えられる操作信号に応じて、上記マイクロ波出力制御部91、ガス流量制御部92及びモータ制御部93を、所定のシーケンスに基づいて動作制御する。すなわち、予め与えられた制御プログラムに基づいて、ワークWの搬送を開始させてワークWをプラズマ発生部30へ導き、所定流量の処理ガスを各プラズマ発生ノズル31へ供給させつつマイクロ波電力を与えてプラズマ(プルームP)を発生させ、ワークWを搬送しながらその表面にプルームPを放射させるものである。これにより、複数のワークWを連続的に処理することができる。
本実施形態では、上記のように、導波管10の内部に突出する中心導電体32でマイクロ波を受信しそのマイクロ波のエネルギーに基づきプラズマを生成して放出するプラズマ発生ノズル31を、導波管10の下面板13Bにマイクロ波の伝搬方向(左右方向)に沿って2列に整列配置して取り付けることによって、1つの導波管10にプラズマ発生ノズル31を2列に配列することができるので、例えばプラズマ発生ノズルがマイクロ波の伝搬方向に一列に整列配置された導波管を前記伝搬方向と直交する幅方向に並設してプラズマ発生ノズルを2列に配列する場合と異なり、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しながら、ワークWに対して導波管10の幅方向(前後方向)に一度に大面積のプラズマ処理を行うことができる。これにより、例えば搬送手段CによるワークWの搬送速度を増加させたとしても2列に配列されたプラズマ発生ノズル31により該ワークWに対して十分にプラズマ処理を行うことができるので、プラズマ処理速度を向上させることができる。さらに、導波管10の幅方向で隣り合う2つのプラズマ発生ノズル31の配列間隔dを式(1)が満たされるように設定することによって、プラズマを点灯させるのに必要なプラズマ発生ノズル31の電界強度を確実に得ることが可能な配列間隔で2列のプラズマ発生ノズル31を下面板13Bに配置することができるので、1つの導波管にプラズマ発生ノズルを2列に配列したことに起因してプラズマが放出されない場合があるという不都合の発生を十分に抑制することができる。以上のことから、本実施形態のワーク処理装置Sでは、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しながら一回当りのプラズマ処理面積を拡大し、かつ確実にプラズマ放出を行うことができるので、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しつつプラズマ処理効率を十分に向上させることができる。
また、本実施形態では、導波管10の幅方向で隣り合う2つのプラズマ発生ノズル31の中心導電体32の軸心間距離により配列間隔dを規定したので、配列間隔dを正確に規定することができる。これにより、1つの導波管10にプラズマ発生ノズル31を2列に配列したことに起因してプラズマが放出されない場合があるという不都合の発生を確実に防止することができる。
以上、本発明の一実施形態に係るワーク処理装置Sについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば下記の実施形態を取ることができる。
たとえば、上記実施形態では、ワークWを搬送手段Cにより搬送しながら該ワークWにプラズマ処理を施与するワーク処理装置Sに本発明を適用する例について示したが、これに限らず、固定的に配置されたワークにプラズマ処理を施与する構成のワーク処理装置にも本発明を適用可能である。この場合にも、1つの導波管10にプラズマ発生ノズル31を2列に配列することができるので、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しながら、固定ワークに対して導波管10の幅方向(前後方向)に一度に大面積のプラズマ処理を行うことができる。また、導波管10の幅方向で隣り合う2つのプラズマ発生ノズル31の中心導電体32の配列間隔dを上記実施形態の式(1)が満たされるように設定することによって、プラズマを点灯させるのに必要なプラズマ発生ノズル31の電界強度を確実に得ることが可能な配列間隔で2列のプラズマ発生ノズル31を下面板13Bに配置することができるので、1つの導波管にプラズマ発生ノズルを2列に配列したことに起因してプラズマが放出されない場合があるという不都合の発生を十分に抑制することができる。以上のことから、上記実施形態と同様、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しながら一回当りのプラズマ処理面積を拡大し、かつ確実にプラズマ放出を行うことができるので、プラズマ発生機構の大型化や複雑化を抑制しつつプラズマ処理効率を十分に向上させることができる。
また、上記実施形態では、プラズマ発生ノズル31を導波管10の下面板13Bに2列に格子状に配列して取り付けた例を示したが、これに限らず、プラズマ発生ノズル31を互い違いになるように2列に千鳥状に配列して取り付けてもよい。
本発明に係るプラズマ発生装置及びワーク処理装置は、半導体ウェハ等の半導体基板に対するエッチング処理装置や成膜装置、プラズマディスプレイパネル等のガラス基板やプリント基板の清浄化処理装置、医療機器等に対する滅菌処理装置、タンパク質の分解装置等に好適に適用することができる。
本発明に係るワーク処理装置Sの全体構成を示す斜視図である。 図1とは視線方向を異ならせたプラズマ発生ユニットPUの斜視図である。 ワーク処理装置Sの一部透視側面図である。 導波管10の内部の部分破断斜視図である。 図4に示した導波管10の内部の部分破断平面図である。 2つのプラズマ発生ノズル31を拡大して示す側面図(一方のプラズマ発生ノズル31は分解図として描いている)である。 図6のA−A線側断面図である。 プラズマ発生ノズル31におけるプラズマの発生状態を説明するための透視側面図である。 プラズマ発生ノズル31の配列間隔と電界強度との関係を説明するための相関図である。 ワーク処理装置Sの制御系90を示すブロック図である。
符号の説明
10 導波管
20 マイクロ波発生装置(マイクロ波発生手段)
30 プラズマ発生部
31 プラズマ発生ノズル
32 中心導電体(内部導電体)
33 ノズル本体(外部導電体)
34 ノズルホルダ
344 ガス供給孔(ガス供給部)
40 スライディングショート
50 サーキュレータ
60 ダミーロード
70 スタブチューナ
S ワーク処理装置
PU プラズマ発生ユニット(プラズマ発生装置)
C 搬送手段
W ワーク

Claims (3)

  1. マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、
    前記マイクロ波を伝搬し処理対象とされるワークに対向可能な対向面を有する断面矩形状の導波管と、
    前記導波管の内部に突出する導電体で前記マイクロ波を受信しそのマイクロ波のエネルギーに基づきプラズマ化したガスを生成して放出するプラズマ発生ノズルが、前記対向面に前記マイクロ波の伝搬方向に沿って2列に整列配置されて取り付けられてなるプラズマ発生部とを備え、
    前記導波管の前記伝搬方向と直交する幅方向の内壁幅をaとした場合に、
    前記幅方向で隣り合う2つの前記プラズマ発生ノズルの導電体の配列間隔dが以下の式(1)を満たすことを特徴とするプラズマ発生装置。
    d ≧ a・2/3 ・・・(1)
  2. 前記プラズマ発生ノズルは、
    前記導波管の内部に一端が突出する円柱状の内部導電体と、
    該内部導電体の周囲に離間して配置された外部導電体と、
    前記内部導電体と前記外部導電体との間に所定のガスを供給するガス供給部とを具備するとともに、
    ノズル先端部からプラズマ化されたガスを放出するよう構成されており、
    前記配列間隔dが、前記幅方向で隣り合う2つの前記プラズマ発生ノズルの内部導電体の軸心間距離であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ発生装置。
  3. 請求項1または2に記載のプラズマ発生装置を具備するワーク処理装置であって、
    前記プラズマ発生装置で発生するプラズマを処理対象とされるワークに照射して所定の処理を施与することを特徴とするワーク処理装置。
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