JP2007217331A - 水分散性の磁性ナノ粒子 - Google Patents

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Abstract

【課題】生理活性物質を表面に有する水単分散性磁性ナノ粒子、並びに上記の磁性ナノ粒子の汎用性が高くかつ簡便な製造方法を提供する。
【解決手段】水に分散している平均粒子粒径1〜50nmの磁性ナノ粒子であって、表面にタンパク質又はペプチドが固定化されていることを特徴とする磁性ナノ粒子。水に分散している磁性ナノ粒子が、一般式R−(OCHCH−O−L−X(式中、Rは炭素数1〜24のアルキル基を示し、nは1以上20以下の整数を示し、Lは単結合、又は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、Xはカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基又はホウ酸基を示す)で表される化合物で表面修飾されている、磁性ナノ粒子。ライフサイエンス、医療診断などの分野において使用できる。
【選択図】なし

Description

本発明は、ライフサイエンス又は医療診断などの分野において使用するための水分散性の磁性ナノ粒子に関する。より詳細には、本発明は、表面にタンパク質又はペプチドが固定化されている水分散性磁性ナノ粒子に関する。
薬剤・化学物質のレセプターを単離・固定するアフィニティービーズが開発され応用展開されてきたが、このビーズに磁気応答性を付与することにより、さらに用途を拡大できる可能性がある。例えば、非特許文献1には、HTS用ビーズとして機能性を付与したフェライト磁性ナノ粒子の合成することが記載されており、そのような磁性ナノ粒子の用途としてMRI造影剤、DDS、センサーなどへの応用が記載されている。また、非特許文献2には、4℃の低温かつ中性近傍の反応液中でフェライト (Fe3O4とδ-Fe2O3の固溶体)ナノ微粒子を合成する方法が記載されている。非特許文献2では、タンパク質や各種の生理活性物質を反応溶液中に含有させておくことによって ,これらをフェライト粒子の合成中にその表面に化学結合によって強固に固定することができることが示されている。この技術を応用してフェライトナノ微粒子をポリマー分子で強固に被覆したり、抗体や薬剤などの生理活性物質をその活性を損なわずに強く固定することで、高速バイオスクリーニングやその他の新しい応用をめざしている。
また、バイオテクノロジーにおいてナノ粒子は細胞・ DNA・蛋白質などの分離や各種アッセイ、診断やドラッグデリバリーシステム (DDS)など幅広い領域での利用が期待されている。例えば、非特許文献3には、磁性ナノ粒子として熱応答性高分子を組み合わせた熱応答性磁性ナノ粒子の作製が記載されており、バイオ分離への応用、遺伝子工学からゲノム・プロテオーム解析への応用、および細胞分離・アッセイへの応用が記載されている。非特許文献3には、従来の分析法で使用されている磁性微粒子やラテックス担体などを温度応答性磁性ナノ粒子である Therma-Maxに置き換えるだけで、大幅な感度アップと測定時間の短縮が期待できたことが記載されている。
また、非特許文献4には、4℃の低温でフェライトナノ微粒子を合成する際、反応溶液中にアビジン-FITCを共存させておくことで、フェライト粒子の表面にアビジンを化学結合によって強固に固定することができることを示しており、フレキシブルディスク上に塗布して蛍光X線で磁性体のパターンと蛍光パターンの一致が観察されている。
生体物質(タンパク、核酸等)の分離精製手段としてサイズがμmから数百nmの親水性磁性粒子が広く利用されており、捕捉した生体分子を容易に磁気分離することが可能である。これら磁性粒子は水に懸濁した状態で存在しており、ターゲット分子との相互作用は不均一系の反応となっている。磁性粒子のサイズを数十nm以下まで小さくし親水性表面を形成すれば均一な分散液となり、生体分子との相互作用の加速が期待できる。また、磁気によるナノサイズ粒子の制御・検出で医療診断、治療等への応用も可能性が拡大している。従って、磁性ナノ粒子の合成および水分散法の検討が活発に行われている。
合成した磁性ナノ粒子が凝集体を形成せず均一に水分散させる手段として、表面に共有結合で親水性化合物を連結、ポリスチレン等のポリマーマトリックスあるいはシリカ包埋後表面を親水化処理、リン脂質被覆あるいはリポソーム包含、シランカップリング処理による親水性基の導入、デキストラン被覆あるいはポリアクリル酸等の合成親水性ポリマー被覆などが知られている。これらは磁性ナノ粒子表面を被覆した上で表面に官能基を導入し目的の生理活性物質と相互作用できる分子、例えば抗体などを導入している。そのため、機能性を有する水分散性磁性ナノ粒子を得るためには多段階の工程を必要とする。また、作成した磁性粒子表面を生体組織,細胞と直接接触させる場合の生体適合性も十分ではない。また、半田らはコネクター分子を経由する表面修飾方法を報告しているが、温度コントロールした精密な粒子形成操作を必要とする。更に、カルボキシメチルセルロース、ポリイソプロピルアクリルアミド等の水溶性ポリマー溶液中に表面処理した磁性粒子を分散させる方法も知られており、一部はMRI造影剤などに使用されている。
しかしながら、生体適合性表面を有し、かつ生理活性物質の連結が可能であると共に生体由来分子との相互作用が期待でき、透明な水分散体を形成する高機能な超常磁性を示すナノ粒子はこれまでのところ報告されていない。
機能性磁性ナノビーズの構築とバイオテクノロジーへの応用、BIO INDUSTRY, Vol.21, No.8, 21-30, 2004, 郷右近展之、西尾広介、半田 宏 医用磁性ナノビーズの新規作製技術、BIO INDUSTRY, Vol.21, No.8, 7-13, 2004, 阿部正紀、半田 宏 磁性ナノ微粒子材料の開発とバイオテクノロジーへの応用、日本農芸化学会誌、Vol.77, N0.9, 861-864, 2003, 近藤昭彦、大西徳幸 Direct immobilization of fluorescent dyes onto ferrite nanoparticles during their synthesis from aqueous solution, J. Appl. Phys., 93(10), 7569-7570 (2003), M. Abe, H. Handa, et al.
本発明は、上記した従来技術の問題点を解消することを解決すべき課題とする。即ち、本発明は、生理活性物質を表面に有する水単分散性磁性ナノ粒子、並びに上記の磁性ナノ粒子の汎用性が高くかつ簡便な製造方法を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討した結果、磁性ナノ粒子分散液とタンパク質又はペプチド溶液とを混合し、超音波照射を行うことにより、表面がタンパク質又はペプチドに置換された水分散性磁性ナノ粒子を製造できることを見出した。本発明はこの知見に基づいて完成したものである。
即ち、本発明によれば、水に分散している平均粒子粒径1〜50nmの磁性ナノ粒子であって、表面にタンパク質又はペプチドが固定化されていることを特徴とする磁性ナノ粒子が提供される。
好ましくは、磁性ナノ粒子1個に対して1から50分子のタンパク質又はペプチドが固定化されている。
好ましくは、水に分散している磁性ナノ粒子は、一般式R1−(OCH2CH2n−O−L−X(式中、R1は炭素数1〜24のアルキル基を示し、nは1以上20以下の整数を示し、Lは単結合、又は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、Xはカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基又はホウ酸基を示す)で表される化合物で表面修飾されている。
好ましくは、平均粒子粒径1〜50nmの磁性ナノ粒子は酸化鉄あるいはフェライトである。
好ましくは、固定化するタンパク質又はペプチドが親水性のタンパク質又はペプチドである。
好ましくは、固定化するタンパク質又はペプチドが球状タンパク質、繊維状タンパク質、ゼラチン、抗体、酵素、レクチン、核酸結合タンパク、ホルモン、又はオリゴペプチドから選択される。
本発明の別の側面によれば、水に分散している平均粒子粒径1〜50nmの磁性ナノ粒子を、タンパク質又はペプチドの存在下において超音波を照射して処理することを含む、表面にタンパク質又はペプチドが固定化されている磁性ナノ粒子の製造方法が提供される。
好ましくは、超音波照射はpH5.0以上の緩衝液中で行う。
好ましくは、超音波照射はリン酸緩衝液中で行う。
好ましくは、超音波の照射時間は1分以上2時間以下である。
好ましくは、高周波出力が0.1〜200Wの超音波を照射する。
好ましくは、超音波照射中の液温は60℃以下である。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の方法により製造される、磁性ナノ粒子が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の磁性ナノ粒子を含む、温熱療法剤、MRI造影剤、薬物送達剤、分析診断用プローブ、並びに生理活性物質の分離剤が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、上記した本発明の磁性ナノ粒子と生理活性物質を接触させることを含む、生理活性物質の磁気分離精製方法が提供される。
本発明によれば、水分散性を維持したまま目的とする生理活性物質を、少ない工程で簡便に磁性ナノ粒子に導入することが可能になった。本発明の磁性ナノ粒子は、生体適合性表面を有し、かつ生理活性物質の連結が可能であると共に生体由来分子との相互作用が期待できる。本発明の磁性ナノ粒子は、良好な水分散生を有するとともに、高機能な超常磁性を示す。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の磁性ナノ粒子は、水に分散している平均粒子粒径1〜50nmの磁性ナノ粒子であって、表面にタンパク質又はペプチドが固定化されていることを特徴とする。
本発明で用いる磁性ナノ粒子の分散液は、例えば、磁性ナノ粒子の凝集物に、界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(4,5)ラウリルエーテル酢酸など)の水溶液を加えて分散することにより磁性ナノ粒子の分散液を調製することができる。しかし、磁性ナノ粒子の分散液の調製方法はこれに限定されるものではなく、例えば、親水性ポリマー[ポリエチレングリコール、ポリリン酸ナトリウムなど]、あるいはリン脂質(ホスファチジルコリンなど)をナノ粒子合成時又は合成語共存させても良い。
本発明においては、独立分散している平均粒子粒径1〜50nmの磁性ナノ粒子であって、表面にアニオン性官能基を有する磁性ナノ粒子を使用することが好ましい。「独立分散している」とは、溶液中で粒子が凝集体を形成することなく単独で分散している状態のことを意味する。また、磁性ナノ粒子の平均粒子粒径は1〜50nm であり、さらに好ましくは1〜40nm以下であり、特に好ましくは1〜30nm以下である。
磁性ナノ粒子としては、水性媒体に分散又は懸濁することができ、分散液又は懸濁液から磁場の適用により分離することができる粒子であれば任意の粒子を使用することができる。本発明で用いる磁性ナノ粒子としては、例えば、鉄、コバルト又はニッケルの塩、酸化物、ホウ化物又は硫化物;高い磁化率を有する稀土類元素(例えば、ヘマタイト又はフェライト)などが挙げられる。磁性ナノ粒子の具体例としては、例えば、マグネタイト(Fe34)、FePd、FePt、CoPtなどの強磁性規則合金を使用することもできる。本発明では好ましい磁性ナノ粒子は、金属酸化物、特に、酸化鉄およびフェライト(Fe,M)34からなる群から選択されるものである。ここで酸化鉄には、とりわけマグネタイト、マグヘマイト、またはそれらの混合物が含まれる。前記式中、Mは、該鉄イオンと共に用いて磁性金属酸化物を形成することのできる金属イオンであり、典型的には遷移金属の中から選択され、最も好ましくはZn2+、Co2+、Mn2+、Cu2+、Ni2+、Mg2+などであり、M/Feのモル比は選択されるフェライトの化学量論的な組成に従って決定される。金属塩は固形でまたは溶液状で供給されるが、塩化物塩、臭化物塩、または硫酸塩であることが好ましい。このうち、安全性の観点から酸化鉄、フェライトが好ましい。特に好ましくは、マグネタイト(Fe34)である。
本発明で用いる磁性ナノ粒子は、表面にアニオン性官能基を有するものである。アニオン性官能基としては、カルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基又はホウ酸基などを挙げることができるが、特にカルボキシル基が好ましい。
好ましくは、一般式R1−(OCH2CH2n−O−L−Xで表される化合物で表面修飾されている磁性ナノ粒子を用いることができる。式中、R1は炭素数1〜24のアルキル基を示し、nは1以上20以下の整数を示し、Lは単結合、又は炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基を示し、Xはカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基又はホウ酸基を示す。
なお、本発明の磁性ナノ粒子は、好ましくは、薬物(薬学的活性成分)を含まないものである。
本発明の磁性ナノ粒子においては、好ましくは磁性ナノ粒子1個に対して1から50分子のタンパク質又はペプチドが固定化されている。固定化するタンパク質又はペプチドは、好ましくは、親水性のタンパク質又はペプチドであり、より具体的には、球状タンパク質、繊維状タンパク質、ゼラチン、抗体、酵素、レクチン、核酸結合タンパク、ホルモン、又はオリゴペプチドなどから選択することができる。
本発明はさらに、水に分散している平均粒子粒径1〜50nmの磁性ナノ粒子を、タンパク質又はペプチドの存在下において超音波を照射して処理することを含む、表面にタンパク質又はペプチドが固定化されている磁性ナノ粒子の製造方法に関する。本発明では、水単分散磁性ナノ粒子表面を被覆している分散剤を水中で直接置換することにより、水分散性を維持したまま目的とするタンパク質又はペプチドを簡便に磁性ナノ粒子に導入することができる。
本発明において超音波照射は、当業者に公知の常法により行うことができ、例えば、市販の超音波バスなどを用いて行うことができる。超音波照射はpH5.0以上の緩衝液中で行うことが好ましく、例えばリン酸緩衝液中で行うことができる。超音波の照射時間は、磁性ナノ粒子の表面にタンパク質又はペプチドを固定化できる限り、特に限定されずに適宜設定することができ、一般的には、1分以上2時間以下である。また。超音波としては、高周波出力が0.1〜200Wの超音波を照射することが好ましい。また、タンパク質の変性を防止するという観点から、超音波照射中の液温は60℃以下であることが好ましい。
本発明の磁性ナノ粒子は、磁性を有するため、磁力により所定の部位に誘導することができる。即ち、本発明の磁性ナノ粒子は体内に投与し、磁力により疾患部位に誘導することができる、また上記のようにして疾患部位に誘導された磁性ナノ粒子は、MRI造影により確認することができる。即ち、本発明の磁性ナノ粒子は、MRI用造影剤として有用である。
本発明の磁性ナノ粒子には、所望により薬物(薬学的活性成分)をさらに含ませてもよい。このような本発明の磁性ナノ粒子は、上記の方法に従って疾患部位に誘導した後、高周波をあてて加熱し、ナノ粒子に内包した薬学的活性成分を放出させることができる。即ち、本発明の磁性ナノ粒子は、温熱療法剤又は薬物送達剤として有用である。
さらに本発明の磁性ナノ粒子は、分析診断用プローブとして使用することもできる。具体的には、血中の疾患マーカーに対する抗体を磁性ナノ粒子に固定化し、各種疾患の診断に用いることが出来る。また、ホルモン受容体を磁性ナノ粒子に固定化し、各種ホルモンの診断に用いることが出来る。更に核酸結合タンパクを磁性ナノ粒子に固定化することにより特定配列を有する核酸の分析診断に用いることが出来る。
本発明の磁性ナノ粒子に、所望により含めることができる薬学的活性成分の種類は、特には限定されないが、好ましくは、制癌剤、抗アレルギー剤、抗酸化剤、抗血栓剤、又は抗炎症剤などである。本発明で用いることができる制癌剤の具体例としては、フッ化ピリミジン系代謝拮抗薬(5-フルオロウラシル(5FU)やテガフール、ドキシフルリジン、カペシタビンなど);抗生物質(マイトマイシン(MMC)やアドリアシン(DXR)など);プリン代謝拮抗薬(メソトレキサートなどの葉酸代謝拮抗薬、メルカプトプリンなど);ビタミンAの活性代謝物(ヒドロキシカルバミドなどの代謝拮抗薬、トレチノインやタミバロテンなど);分子標的薬(ハーセプチンやメシル酸イマチニブなど);白金製剤(ブリプラチンやランダ(CDDP)、パラプラチン(CBDC)、エルプラット(Oxa)、アクプラなど);植物アルカロイド薬(トポテシンやカンプト(CPT)、タキソール(PTX)、タキソテール(DTX)、エトポシドなど);アルキル化剤(ブスルファンやシクロホスファミド、イホマイドなど);抗男性ホルモン薬(ビカルタミドやフルタミドなど);女性ホルモン薬(ホスフェストロールや酢酸クロルマジノン、リン酸エストラムスチンなど);LH-RH薬(リュープリンやゾラデックスなど);抗エストロゲン薬(クエン酸タモキシフェンやクエン酸トレミフェンなど);アロマターゼ阻害薬(塩酸ファドロゾールやアナストロゾール、エキセメスタンなど);黄体ホルモン薬(酢酸メドロキシプロゲステロンなど);BCGなどが挙げられるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
また本発明の磁性ナノ粒子には、癌細胞に選択的な親和性を有する物質を添加してもよい。特に好ましくは、抗体、又は葉酸を添加することができる。癌細胞に選択的な親和性を有する抗体としては、例えば、癌抗原を認識する抗体を使用することができ、好ましくは、遊離抗原を認識する抗体を使用することができる。癌抗原の具体例としては、上皮増殖因子受容体(Epidermal Growth Factor Receptor;EGFR)、エストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)などが挙げられる。
上記した癌細胞に選択的な親和性を有する抗体は、当業者であれば容易に入手可能であり、例えば、市販品を使用してもよいし、又は上記抗原又はその部分ペプチドを免疫原として公知の抗体作製法により適宜作製して使用することもできる。また、使用する抗体はモノクローナル抗体でもよいし、ポリクローナル抗体でもよい。
上記したような抗体は、本発明の磁性ナノ粒子に含まれるタンパク質又はペプチドのアミノ基やカルボキシル基などを反応基とし、アミド化反応によるペプチド結合の形成などにより、本発明の磁性ナノ粒子に結合させることができる。アミド化反応は、カルボキシル基またはその誘導基(エステル、酸無水物、酸ハロゲン化物など)とアミノ基の縮合により行なわれる。酸無水物や酸ハロゲン化物を用いる場合には塩基を共存させることが望ましい。カルボン酸のメチルエステルやエチルエステルなどのエステルを用いる場合には、生成するアルコールを除去するために加熱や減圧を行なうことが望ましい。カルボキシル基を直接アミド化する場合には、DCC、Morpho−CDI、WSCなどのアミド化試薬、HBTなどの縮合添加剤、N−ヒドロキシフタルイミド、p−ニトロフェニルトリフルオロアセテート、2,4,5−トリクロロフェノールなどの活性エステル剤などのアミド化反応を促進する物質を共存させたり、予め反応させておいてもよい。また、アミド化反応時、アミド化により結合させる親和性分子のアミノ基又はカルボキシル基のいずれかを常法にしたがって適当な保護基で保護し、反応後脱保護することが望ましい。
アミド化反応により癌細胞に選択的な親和性を有する抗体を結合したナノ粒子は、ゲルろ過などの常法により洗浄、精製後、水及び/又は親水性溶媒(好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、2−エトキシエタノールなど)に分散させて使用することができる。
本発明の磁性ナノ粒子の投与方法は特に限定されないが、血管、体腔内又はリンパへ注射により投与することが好ましく、静脈注射が特に好ましい。
本発明の磁性ナノ粒子の投与量は、患者の体重、疾患の状態などに応じて適宜設定することができるが、一般的には、1回の投与につき、10μg〜100mg/kg程度を投与することができ、好ましくは、20μg〜50mg/kg程度を投与することができる。
また、本発明の磁性ナノ粒子は、試料と接触させることによって、試料中の生理活性物質を分離するために使用することができる。即ち、本発明の磁性ナノ粒子は、生理活性物質の分離剤として使用することができる、また、生体試料によっては凝集促進剤の存在下で磁性ナノ粒子と生体試料とを接触させることもできる。ここで凝集促進剤とは、凝集を惹起させる物質であり、凝集させるようとする分画の種類に応じて、適当な物質を単独又は組合せて用いることができる。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製造例1:磁性ナノ粒子分散液の調整
塩化鉄(III)6水和物10.8gおよび塩化鉄(II)4水和物6.4gをそれぞれ1N−塩酸水溶液80mlに溶解し混合した。この溶液を攪拌しながらこの中にアンモニア水(28重量%)96mlを2ml/分の速度で添加した。その後80℃で30分加熱した後、室温に冷却した。得られた凝集物をデカンテーションにより水で精製した。結晶子サイズ約12nmのマグネタイト(Fe34)の生成をX線回折法により確認した。
この凝集物に、ポリオキシエチレン(4,5)ラウリルエーテル酢酸(日光ケミカルズ)2.3gを溶解した水溶液(NaOHでpHを6.8に調製したもの)100mlを加え分散し、磁性ナノ粒子分散液を調整した。
実施例1:レクチン(コンカナバリンA)の磁性ナノ粒子表面固定化
製造例1で製造した界面活性剤(ポリオキシエチレン(4,5)ラウリルエーテル酢酸)で水に分散している磁性ナノ粒子(酸化鉄含量18.2g/L)分散液1.0 mlに、0.5%コンカナバリンA(ConA) を含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.6)2.0mlを加え、超音波バスSharp UT-105で液温を30℃以下に保ちながら100Wで20分間超音波を照射した。磁石で凝集した磁性体を回収し水で洗浄後、2.0mlの水を加え100Wで5分間超音波照射を行った。再分散された磁性ナノ粒子のゼータ電位を測定したところ、処理前の-31mVから-2mVへと変化しており表面がConAに置換されていることを確認した。同様の手法により、各種タンパクを用いた被覆を実施した。例えば、ゼラチン、IgGで処理することによりそれぞれ+2mV、-10mVのゼータ電位を持つ磁性ナノ粒子分散液を得た。
また、被覆タンパク量をMicro BCA Protein Assay Reagent Kit(Pierce社)で定量したところ磁性ナノ粒子1個に対し約1分子のConA4量体が結合していた。
実施例2:ゼラチンの磁性ナノ粒子表面固定化
製造例1で製造した界面活性剤(ポリオキシエチレン(4,5)ラウリルエーテル酢酸)で水に分散している磁性ナノ粒子(酸化鉄含量18.2g/L)分散液1.0 mlに、0.5%ゼラチンを含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.6)2.0mlを加え、超音波バスSharp UT-105で液温を30℃以下に保ちながら100Wで20分間超音波を照射した。磁石で凝集した磁性体を回収し水で洗浄後、2.0mlの水を加え100Wで5分間超音波照射を行った。 再分散された磁性ナノ粒子のゼータ電位を測定したところ、処理前の-31mVから+2mVへと変化しており表面がゼラチンに置換されていることを確認した。また、被覆タンパク量をMicro BCA Protein Assay Reagent Kit(Pierce社)で定量したところ磁性ナノ粒子1個に対し約1分子のゼラチンが結合していた。
実施例3:牛血清アルブミン(BSA)の磁性ナノ粒子表面固定化
製造例1で製造した界面活性剤(ポリオキシエチレン(4,5)ラウリルエーテル酢酸)で水に分散している磁性ナノ粒子(酸化鉄含量18.2g/L)分散液1.0 mlに、0.5%BSAを含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.6)2.0mlを加え、超音波バスSharp UT-105で液温を30℃以下に保ちながら100Wで20分間超音波を照射した。磁石で凝集した磁性体を回収し水で洗浄後、2.0mlの水を加え100Wで5分間超音波照射を行った。 再分散された磁性ナノ粒子のゼータ電位を測定したところ、処理前の-31mVから+2mVへと変化しており表面がBSAに置換されていることを確認した。また、被覆タンパク量をMicro BCA Protein Assay Reagent Kit(Pierce社)で定量したところ磁性ナノ粒子1個に対し約3分子のBSAが結合していた。
実施例4:抗CRP抗体の磁性ナノ粒子表面固定化
製造例1で製造した界面活性剤(ポリオキシエチレン(4,5)ラウリルエーテル酢酸)で水に分散している磁性ナノ粒子(酸化鉄含量18.2g/L)分散液1.0 mlに、3.1mgの抗CRP抗体を含む0.2Mリン酸緩衝液(pH7.6)2.0mlを加え、超音波バスSharp UT-105で液温を30℃以下に保ちながら100Wで20分間超音波を照射した。磁石で凝集した磁性体を回収し水で洗浄後、2.0mlの水を加え100Wで5分間超音波照射を行った。 再分散された磁性ナノ粒子のゼータ電位を測定したところ、処理前の-31mVから-10mVへと変化しており表面が抗CRP抗体に置換されていることを確認した。また、被覆タンパク量をMicro BCA Protein Assay Reagent Kit(Pierce社)で定量したところ磁性ナノ粒子1個に対し約1分子の抗体が結合していた。この溶液にCRPを添加すると凝集体を形成し抗原抗体反応を確認した。形成した凝集体を図1に示す。また、凝集体は磁気分離可能であった。
図1は、抗CRP抗体を表面に固定化した磁性ナノ粒子の溶液にCRPを添加して形成した凝集体を示す。

Claims (19)

  1. 水に分散している平均粒子粒径1〜50nmの磁性ナノ粒子であって、表面にタンパク質又はペプチドが固定化されていることを特徴とする磁性ナノ粒子。
  2. 磁性ナノ粒子1個に対して1から50分子のタンパク質又はペプチドが固定化されている、請求項1に記載の磁性ナノ粒子。
  3. 水に分散している磁性ナノ粒子が、一般式R1−(OCH2CH2n−O−L−X(式中、R1は炭素数1〜24のアルキル基を示し、nは1以上20以下の整数を示し、Lは単結合、又は炭素数1〜10のアルキレン基を示し、Xはカルボン酸基、リン酸基、スルホン酸基又はホウ酸基を示す)で表される化合物で表面修飾されている、請求項1又は2に記載の磁性ナノ粒子。
  4. 平均粒子粒径1〜50nmの磁性ナノ粒子が酸化鉄あるいはフェライトである、請求項1から3の何れかに記載の磁性ナノ粒子。
  5. 固定化するタンパク質又はペプチドが親水性のタンパク質又はペプチドである、請求項1から4の何れかに記載の磁性ナノ粒子。
  6. 固定化するタンパク質又はペプチドが球状タンパク質、繊維状タンパク質、ゼラチン、抗体、酵素、レクチン、核酸結合タンパク、ホルモン、又はオリゴペプチドから選択される、請求項1から5の何れかに記載の磁性ナノ粒子。
  7. 水に分散している平均粒子粒径1〜50nmの磁性ナノ粒子を、タンパク質又はペプチドの存在下において超音波を照射して処理することを含む、表面にタンパク質又はペプチドが固定化されている磁性ナノ粒子の製造方法。
  8. 超音波照射をpH5.0以上の緩衝液中で行う、請求項7に記載の方法。
  9. 超音波照射をリン酸緩衝液中で行う、請求項7又は8に記載の方法。
  10. 超音波の照射時間が1分以上2時間以下である、請求項7から9の何れかに記載の方法。
  11. 高周波出力が0.1〜200Wの超音波を照射する、請求項7から10の何れかに記載の方法。
  12. 超音波照射中の液温が60℃以下である、請求項7から11の何れかに記載の方法。
  13. 請求項7から12の何れかに記載の方法により製造される、磁性ナノ粒子。
  14. 請求項1から6又は13の何れかに記載の磁性ナノ粒子を含む、温熱療法剤。
  15. 請求項1から6又は13の何れかに記載の磁性ナノ粒子を含む、MRI造影剤。
  16. 請求項1から6又は13の何れかに記載の磁性ナノ粒子を含む、薬物送達剤。
  17. 請求項1から6又は13の何れかに記載の磁性ナノ粒子を含む、分析診断用プローブ。
  18. 請求項1から6又は13の何れかに記載の磁性ナノ粒子を含む、生理活性物質の分離剤。
  19. 請求項1から6又は13の何れかに記載の磁性ナノ粒子と生理活性物質を接触させることを含む、生理活性物質の磁気分離精製方法。
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