JP2007205322A - 蒸発燃料処理装置の異常検出装置 - Google Patents

蒸発燃料処理装置の異常検出装置 Download PDF

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敏弘 尾▲崎▼
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Abstract

【課題】蒸発燃料の漏れ検出実行判定に用いる判定値を適切に補正することによって、漏れ検出実行による蒸発燃料の排出を抑制することが可能な蒸発燃料処理装置の異常検出装置を提供する。
【解決手段】蒸発燃料処理装置の異常検出装置は、蒸発燃料濃度判定値を用いて、蒸発燃料の漏れ検出を実行するか否かの判定を行う。具体的には、蒸発燃料濃度判定値算出手段が、キャニスタからの蒸発燃料の脱離特性に影響を与える因子に基づいて蒸発燃料濃度判定値を算出する。例えば、走行外気温度や、走行外気温度とソーク外気温度との温度差や、燃料の揮発性に基づいて蒸発燃料濃度判定値を補正する。これにより、脱離特性に影響を与える因子に基づいて漏れ検出の実行を制限することができるため、検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を抑制することが可能となる。
【選択図】図6

Description

本発明は、蒸発燃料処理装置の異常検出装置に関する。
従来より、燃料タンクと、燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタとを有し、キャニスタに吸着された蒸発燃料を内燃機関に対してパージする蒸発燃料処理装置が知られている。また、蒸発燃料処理装置からの蒸発燃料の漏れ(リーク)を検出する蒸発燃料処理装置の異常検出装置が知られている。
例えば、特許文献1には、吸気温度と機関温度とにおいて小さい温度を外気温度推定値として用い、この温度が所定条件を満たしているときに漏れ診断を行う技術が記載されている。特許文献2には、外気温度と燃料タンク内の気層温度との差が小さい場合、漏れの検出の実行を禁止する技術が記載されている。また、特許文献3には、パージ量に応じた燃料タンクのタンク内圧力に基づいて、蒸発燃料処理装置の異常を検出する技術が記載されている。
特開2003−328867号公報 特開2003−113743号公報 特開2002−357163号公報
しかしながら、上記した特許文献1及び2に記載された技術では、蒸発燃料処理装置内の蒸発燃料濃度(以下、「ベーパ濃度」とも呼ぶ。)に基づいて、漏れの検出を実行するか否かの判定を行ってはいなかった。また、特許文献3に記載された技術では、ベーパ濃度の判定に用いる値(以下、「ベーパ濃度判定値」とも呼ぶ。)を適切に補正してはいない。したがって、特許文献1乃至3に記載された技術では、漏れの検出を実行した際に、大気中に蒸発燃料が排出されてしまう場合があった。
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、蒸発燃料濃度に対する判定に用いる判定値を適切に補正することによって、蒸発燃料の漏れ検出の実行による蒸発燃料の排出を抑制することが可能な蒸発燃料処理装置の異常検出装置を提供することを目的とする。
本発明の1つの観点では、燃料タンクと、前記燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタとを有する蒸発燃料処理装置に対して、前記蒸発燃料処理装置から外部への前記蒸発燃料の漏れを検出する蒸発燃料処理装置の異常検出装置は、前記キャニスタからの蒸発燃料の脱離特性に影響を与える因子に基づいて、前記蒸発燃料処理装置内の蒸発燃料濃度に対する判定に用いる蒸発燃料濃度判定値を算出する蒸発燃料濃度判定値算出手段と、前記蒸発燃料濃度判定値と前記蒸発燃料濃度とを比較することによって、前記漏れの検出を実行するか否かを判定する漏れ検出実行判定手段と、前記漏れ検出実行判定手段によって前記漏れの検出の実行が許可された場合に、当該検出を実行する漏れ検出実行手段と、を備えることを特徴とする。
上記の蒸発燃料処理装置の異常検出装置は、燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタなどを有し、キャニスタに吸着された蒸発燃料を内燃機関に対してパージする蒸発燃料処理装置に対して、蒸発燃料の漏れ(リーク)を検出する装置である。蒸発燃料処理装置の異常検出装置は、蒸発燃料濃度判定値を用いた判定を行うことによって、漏れの検出を実行するか否かを判定する。こうするのは、漏れの検出の実行による、多量の蒸発燃料が排出を抑制するためである。具体的には、蒸発燃料濃度判定値算出手段は、キャニスタからの蒸発燃料の脱離特性に影響を与える因子に基づいて蒸発燃料濃度判定値を算出する。即ち、蒸発燃料濃度判定値を補正する。こうするのは、キャニスタからの蒸発燃料の脱離特性に応じて、キャニスタ内の蒸発燃料濃度が変化するからである。そして、漏れ検出実行判定手段は、蒸発燃料濃度判定値と蒸発燃料濃度とを比較することによって、漏れの検出を実行するか否かを判定し、漏れ検出実行手段は、漏れの検出の実行の許可が出された場合に、この検出を実行する。以上より、キャニスタからの蒸発燃料の脱離特性に応じて漏れの検出の実行を制限することができるため、検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を抑制することが可能となる。
上記の蒸発燃料処理装置の異常検出装置の一態様では、前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、前記因子として走行中の外気温度に基づいて、前記蒸発燃料濃度判定値を算出し、前記漏れ検出実行判定手段は、前記蒸発燃料濃度が前記蒸発燃料濃度判定値よりも薄い場合に、前記漏れの検出の実行を許可する。即ち、蒸発燃料濃度判定値算出手段は、走行外気温度による蒸発燃料濃度の変化に基づいて、蒸発燃料濃度判定値を算出することができる。
この場合、前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、前記外気温度が低いほど前記蒸発燃料濃度判定値として小さな値を決定し、前記外気温度が高いほど前記蒸発燃料濃度判定値として大きな値を決定する。これにより、走行中の外気温度に基づいて漏れの検出の実行を制限することができるため、検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を抑制することが可能となる。
上記の蒸発燃料処理装置の異常検出装置の他の一態様では、前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、前記因子として走行中の外気温度とソーク時の外気温度との温度差に基づいて、前記蒸発燃料濃度判定値によって規定される蒸発燃料濃度判定範囲を決定し、前記漏れ検出実行判定手段は、前記蒸発燃料濃度が前記蒸発燃料濃度判定範囲内にある場合に、前記漏れの検出の実行を許可する。即ち、蒸発燃料濃度判定値算出手段は、走行中の外気温度とソーク時における外気温度との温度差による蒸発燃料濃度の変化に基づいて、蒸発燃料濃度判定値を算出することができる。
この場合、前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、前記温度差が小さいほど前記蒸発燃料濃度が濃くなり、前記温度差が大きいほど前記蒸発燃料濃度が薄くなるような範囲を前記蒸発燃料濃度判定範囲として決定する。これにより、走行中の外気温度とソーク時における外気温度との温度差に基づいて漏れの検出の実行を制限することができるため、検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を抑制することが可能となる。
上記の蒸発燃料処理装置の異常検出装置の他の一態様では、前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、前記因子として燃料の揮発性に基づいて、前記蒸発燃料濃度判定値を算出し、前記漏れ検出実行判定手段は、前記蒸発燃料濃度が前記蒸発燃料濃度判定値よりも薄い場合に、前記漏れの検出の実行を許可する。即ち、蒸発燃料濃度判定値算出手段は、燃料の揮発性による蒸発燃料濃度の変化に基づいて、蒸発燃料濃度判定値を算出することができる。
この場合、前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、前記燃料の揮発性が低いほど前記蒸発燃料濃度判定値として小さな値を決定し、前記燃料の揮発性が高いほど前記蒸発燃料濃度判定値として大きな値を決定する。これにより、燃料の揮発性に基づいて漏れの検出の実行を制限することができるため、検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を抑制することが可能となる。
上記の蒸発燃料処理装置の異常検出装置において好適には、前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、走行中における前記蒸発燃料濃度の変化と積算パージ量とに基づいて、前記燃料の揮発性を算出する。これにより、走行中の蒸発燃料濃度の変化を考慮して、燃料の揮発性を精度良く算出することができる。
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
[全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係る蒸発燃料処理装置の構成を説明するための図である。図1に示すように、蒸発燃料処理装置は、主に、燃料タンク10とキャニスタ26とを備えている。燃料タンク10には、タンク内圧を測定するためのタンク内圧センサ12が設けられている。タンク内圧センサ12は、大気圧に対する相対圧としてタンク内圧を検出し、その検出値に応じた出力を発生するセンサである。また、燃料タンク10の内部には、燃料の液面を検出するための液面センサ14が配置されている。
燃料タンク10には、ROV(Roll Over Valve)16、18を介してベーパ通路20が接続されている。ベーパ通路20は、その途中に封鎖弁ユニット24を備えており、その端部においてキャニスタ26に連通している。封鎖弁ユニット24は、封鎖弁28とリリーフ弁30を備えている。封鎖弁28は、無通電の状態で閉弁し、外部から駆動信号が供給されることにより開弁状態となる常時閉タイプの電磁弁である。リリーフ弁30は、燃料タンク10側の圧力がキャニスタ26側の圧力に比して十分に高圧となった場合に開弁する正方向リリーフ弁と、その逆の場合に開弁する逆方向リリーフ弁とからなる機械式の双方向逆止弁である。
キャニスタ26は、パージ孔32を備えている。パージ孔32には、パージ通路34が連通している。パージ通路34は、その途中にパージVSV(Vacuum Switching Valve)36を備えていると共に、その端部においてエンジンの吸気通路38に連通している。吸気通路38には、主に、吸気の温度を検出する吸気温度センサ71と、通過する吸気を浄化するエアフィルタ40と、吸入空気量を検出するエアフロメータ42と、吸気の流量を調整するスロットルバルブ44と、が設けられている。
キャニスタ26の内部は、活性炭で充填されている。ベーパ通路20を通って流入してきた蒸発燃料は、その活性炭に吸着される。キャニスタ26は、また、大気孔50を備えている。大気孔50には、負圧ポンプモジュール52を介して大気通路54が連通している。大気通路54は、その途中にエアフィルタ56を備えている。大気通路54の端部は、燃料タンク10の給油口58の近傍において大気に開放されている。
ECU(Electronic Control Unit)60は、図示しないCPU、ROM、RAM、A/D変換器及び入出力インタフェイスなどを有している。ECU60は、車両の駐車中において経過時間(ソーク時間)を計数するためのソークタイマを内蔵している。ECU60には、上述したタンク内圧センサ12や封鎖弁28、或いは負圧ポンプモジュール52と共に、リッドオープナー開閉スイッチ64が接続されている。また、リッドオープナー開閉スイッチ64には、ワイヤーによりリッド手動開閉装置66が連結されている。リッドオープナー開閉スイッチ64は、給油口58を覆うリッド(車体の蓋)68のロック機構であり、ECU60からリッド開信号が供給された場合に、或いは、リッド手動開閉装置66に対して所定の開動作が施された場合に、リッド68のロックを解除する。また、ECU60にはリッドスイッチ(不図示)が接続されており、リッドスイッチはECU60に対してリッド68のロックを解除するための指令を送る。
更に、ECU60には、イグニッションスイッチ(以下、「IGスイッチ」とも呼ぶ。)70が接続されている。また、ECU60は、吸気の温度を検出する吸気温度センサ71、外気温度を検出する外気温度センサ72、エンジン水温を検出する水温センサ73、及び排気通路などに設けられた空燃比(A/F)を検出するA/Fセンサ74、のそれぞれから検出信号を取得する。ECU60は、上記した各種センサから供給される検出信号に基づいて、上記した蒸発燃料処理装置に対する制御(パージ制御など)を行うと共に、蒸発燃料処理装置に対する異常検出を行う。具体的には、ECU60は、蒸発燃料処理装置に対して、蒸発燃料の漏れの検出(以下、単に「漏れ検出」と呼ぶ。)などを行う。
ここで、本実施形態において行われる、漏れ検出を実行するか否かを判定(以下、「漏れ検出実行判定」と呼ぶ。)する方法について簡単に説明する。本実施形態では、ECU60は、蒸発燃料処理装置内の蒸発燃料濃度(以下、「ベーパ濃度」と呼ぶ。)に基づいて漏れ検出実行判定を行う。具体的には、ECU60は、ベーパ濃度を判定する際に用いる判定値(以下、「ベーパ濃度判定値」と呼ぶ。)を、キャニスタ26からの蒸発燃料の脱離特性に影響を与える因子に基づいて補正し、補正されたベーパ濃度判定値とベーパ濃度とを比較することによって、漏れ検出実行判定を行う。なお、ECU60は、A/Fセンサ74から供給されるA/Fや、吸気通路38に供給されるパージエア量(蒸発燃料を含んだエア)などに基づいて、ベーパ濃度を算出することができる。
このような漏れ検出実行判定によって漏れ検出の実行が許可された場合、ECU60は、蒸発燃料の漏れ検出を実行する。具体的には、ECU60は、負圧ポンプモジュール52をONにし(この場合、大気孔50と大気通路54とが導通される)、封鎖弁28をOFF(閉)にし、パージVSV36をOFFにする。そして、ECU60は、負圧ポンプモジュール52内の圧力などに基づいて、蒸発燃料が漏れているか否かを判定する。
以上のように、ECU60は、本発明における蒸発燃料処理装置の異常検出装置として機能する。具体的には、ECU60は、蒸発燃料濃度判定値算出手段、漏れ検出実行判定手段、及び漏れ検出実行手段として動作する。
[漏れ検出実行判定方法]
以下では、本実施形態に係る漏れ検出実行判定方法について具体的には説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る漏れ検出実行判定方法について説明する。第1実施形態では、キャニスタ26からの蒸発燃料の脱離特性に影響を与える因子として、走行中の外気温度(以下、「走行外気温度」と呼ぶ。)に基づいてベーパ濃度判定値を算出する。即ち、ECU60は、ベーパ濃度判定値を走行外気温度に基づいて補正する。そして、ECU60は、実際のベーパ濃度がベーパ濃度判定値よりも薄い場合に、漏れ検出の実行を許可する。
ここで、走行外気温度に基づいてベーパ濃度判定値を補正する理由について、図2乃至図4を用いて説明する。
図2は、走行外気温度と、キャニスタ26におけるベーパ濃度及びキャニスタ26内に残留する蒸発燃料の量(以下、「ベーパ残量」と呼ぶ。)との関係について説明するための図である。図2においては、横軸に走行外気温度を示し、縦軸にベーパ濃度及びベーパ残量を示している。具体的には、実線がベーパ濃度を示し、破線がベーパ残量を示している。これより、走行外気温度に応じて、キャニスタ26のベーパ濃度及びベーパ残量が変化していることがわかる。具体的には、走行外気温度が低いほどベーパ濃度が薄くなり、ベーパ残量が多くなる。一方、走行外気温度が高いほどベーパ濃度が濃くなり、ベーパ残量が少なくなる。こうなるのは、走行外気温度に応じて、蒸発燃料の脱離量が変化するためである。即ち、走行外気温度が低いほど蒸発燃料の脱離量が少なくなり、走行外気温度が高いほど蒸発燃料の脱離量が多くなるからである。
図3は、一般的に用いられるベーパ濃度判定値を示している。図3は、横軸に走行外気温度を示し、縦軸にベーパ濃度判定値を示している。具体的には、太線で表された実線がベーパ濃度判定値を示している。一般的には、走行外気温度によらずにベーパ濃度判定値を一定に設定し、走行時のベーパ濃度がベーパ濃度判定値よりも薄い場合に漏れ検出の実行を許可する。このようにベーパ濃度判定値を用いて判定を行っているのは、漏れ検出の実行によって、多量の蒸発燃料が大気中に排出されてしまうことを抑制するためである。なお、上記したベーパ濃度判定値は、走行外気温度を考慮せずに、漏れ検出時に多量の蒸発燃料が大気中に排出されることはないと予想されるベーパ濃度に基づいて設定されている。
図4は、走行外気温度によらずに一定に設定したベーパ濃度判定値を用いて漏れ検出実行判定を実行した場合に、生じる不具合を説明するための図である。図4は、燃料タンク10、ベーパ通路20、キャニスタ26、パージ通路34、負圧ポンプモジュール52、及び大気通路54などを簡略化して示した図である。また、符号26aで示す部分は活性炭を示し、符号101で示すハッチングされた丸は液状の燃料を示し、符号102で示す白抜きの丸はガス状の燃料を示している。また、図4は、走行外気温度が低い場合におけるキャニスタ26などの状態を示している。具体的には、図4(a)は漏れ検出前の状態を示しており、図4(b)は漏れ検出時の状態を示している。
図4(a)に示すように、走行外気温度が低い場合には、ベーパ濃度が薄く、ベーパ残量が多い状態にあることがわかる。これは、蒸発燃料の脱離量が少ないためである。したがって、この場合におけるベーパ濃度は前述したベーパ濃度判定値(図3参照)よりも薄くなる可能性が高い。よって、漏れ検出の実行が許可される可能性は高い。
図4(b)は、キャニスタ26が図4(a)に示した状態にある場合に、漏れ検出を実行したときの様子を示す図である。前述したように、漏れ検出を実行する際に、負圧ポンプモジュール52がONにされる。即ち、大気孔50と大気通路54とが導通される。この場合、図4(a)に示したようにキャニスタ26内には多量の蒸発燃料が残留しているため、漏れ検出の実行により負圧ポンプモジュール52がONにされると、矢印103a〜103cで示すように、多量の蒸発燃料が負圧ポンプモジュール52や大気通路54などを通過して大気中に排出されてしまう。このように多量の蒸発燃料が排出されると、エミッションは悪化してしまう。
以上より、走行外気温度によらずにベーパ濃度判定値を一定に設定して判定を行った場合、漏れ検出時に蒸発燃料が大気中に多量に排出される可能性がある。これは、図2に示したように、走行外気温度に応じて、キャニスタ26のベーパ濃度及びベーパ残量が変化するためである。そのため、漏れ検出時に多量の蒸発燃料が大気中に排出されるといった不具合が生じないようなベーパ濃度は走行外気温度に応じて変化するため、走行外気温度によらずにベーパ濃度判定値を一定に設定することは好ましくないといえる。したがって、第1実施形態では、漏れ検出の実行による蒸発燃料の排出を適切に抑制するために、走行外気温度を考慮に入れて漏れ検出実行判定を行う。具体的には、走行外気温度に基づいてベーパ濃度判定値を補正する。
図5は、第1実施形態において用いるベーパ濃度判定値を示した図である。図5は、横軸に走行外気温度を示し、縦軸にベーパ濃度判定値を示している。具体的には、太線で表された実線がベーパ濃度判定値を示している。即ち、図5は、走行外気温度とベーパ濃度判定値との関係を示すマップを表している。
図5より、ベーパ濃度判定値は、走行外気温度が低いほど小さな値となるように設定され、走行外気温度が高いほど大きな値となるように設定されている。即ち、ベーパ濃度判定値は、走行外気温度によるベーパ濃度の変化(図2参照)に基づいて設定されている。したがって、走行外気温度を考慮した判定値を用いて、ベーパ濃度を判定することが可能となる。例えば走行外気温度が低い場合には、ベーパ濃度判定値として小さな値が決定されるので、ベーパ濃度がベーパ濃度判定値よりも濃くなる可能性が高くなる。そのため、漏れ検出の実行が許可される可能性は低くなる。よって、第1実施形態によれば、走行外気温度に基づいて漏れ検出の実行を制限することができるため、漏れ検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を抑制することが可能となる。
次に、第1実施形態において、漏れ検出実行判定を行う際に実行される処理(以下、「漏れ検出実行判定処理」とも呼ぶ。)について説明する。この漏れ検出実行判定処理は、ECU60によって、所定の周期で繰り返し実行される。また、漏れ検出実行判定処理は、車両が駐車中である場合に実行される。詳しくは、車両がある程度走行した後に駐車し、駐車してからある程度の時間が経過している場合に実行される。
図6は、第1実施形態に係る漏れ検出実行判定処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS101では、ECU60は、走行履歴があるか否かを判定する。走行履歴がある場合(ステップS101;Yes)、処理はステップS102に進む。一方、走行履歴がない場合(ステップS101;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合には、漏れ検出を実行しない。即ち、ECU60は、漏れ検出の実行を許可しない。
ステップS102では、ECU60は、車両が駐車している時間(以下、「ソーク時間」とも呼ぶ。)を、内蔵されたソークタイマから取得し、ソーク時間が所定時間以上であるか否かを判定(ソークタイマ判定)する。言い換えると、ソークタイマ判定許可が出ているか否かを判定する。ソークタイマ判定許可が出ている場合(ステップS102;Yes)、処理はステップS103に進む。一方、ソークタイマ判定許可が出ていない場合(ステップS102;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合には、漏れ検出を実行しない。
ステップS103では、ECU60は、IGスイッチ70がONであるか否かを判定する。IGスイッチ70がONである場合(ステップS103;Yes)、処理はステップS104に進む。一方、IGスイッチ70がOFFである場合(ステップS103;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合、漏れ検出を実行しない。
ステップS104では、ECU60は、水温センサ73が検出したエンジンの水温が所定未満であるか否かを判定する。この判定は、エンジンの水温が極端に高い場合に漏れ検出が実行されてしまうことを防止するために行っている。水温が所定未満である場合(ステップS104;Yes)、処理はステップS105に進む。一方、水温が所定以上である場合(ステップS104;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合、漏れ検出を実行しない。
ステップS105では、ECU60は、吸気温度センサ71が検出した吸気温度が所定未満であるか否かを判定する。この判定も、吸気温度が極端に高い場合に漏れ検出が実行されてしまうことを防止するために行っている。吸気温度が所定未満である場合(ステップS105;Yes)、処理はステップS106に進む。一方、吸気温度が所定以上である場合(ステップS105;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合、漏れ検出を実行しない。
ステップS106では、ECU60は、積算パージ量が所定以上であるか否かを判定する。ここでは、ある程度の量の蒸発燃料がパージされていることを漏れ検出の実行の前提条件としている。積算パージ量が所定以上である場合(ステップS106;Yes)、処理はステップS107に進む。一方、積算パージ量が所定未満である場合(ステップS106;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合、漏れ検出を実行しない。
ステップS107では、ECU60は、走行中に予め記憶していた走行外気温度を読み込む。この走行外気温度は、車両の走行中に外気温度センサ72によって検出される温度である。そして、処理はステップS108に進む。
ステップS108では、ECU60は、予め記憶している走行外気温度とベーパ濃度判定地との関係を示すマップ(図5参照)を取得し、このマップに基づいて、ステップS107で取得された走行外気温度に対応するベーパ濃度判定値を算出する。そして、処理はステップS109に進む。
ステップS109では、ECU60は、走行時のベーパ濃度がステップS108で算出されたベーパ濃度判定値よりも薄いか否かを判定する。ベーパ濃度がベーパ濃度判定値よりも薄い場合(ステップS109;Yes)、処理はステップS110に進む。この場合、漏れ検出を実行しても、大気中に蒸発燃料がほとんど排出されないため、ECU60は、漏れ検出を実行する(ステップS110)。具体的には、ECU60は、負圧ポンプモジュール52をONにし、封鎖弁28をOFF(閉)にし、パージVSV36をOFFにする。そして、ECU60は、負圧ポンプモジュール52内の圧力などに基づいて、蒸発燃料が漏れているか否かを判定する。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
一方、ベーパ濃度がベーパ濃度判定値よりも濃い場合(ステップS109;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合、漏れ検出の実行によって蒸発燃料が大気中に排出される可能性が高いため、ECU60は、漏れ検出を実行しない。即ち、ECU60は、漏れ検出の実行を許可しない。
このように、第1実施形態に係る漏れ検出実行判定によれば、走行外気温度を考慮に入れて漏れ検出実行判定を行うため、漏れ検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を適切に抑制することが可能となる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る漏れ検出実行判定方法について説明する。第2実施形態では、キャニスタ26からの蒸発燃料の脱離特性に影響を与える因子として、走行外気温度と、車両のソーク時(駐車時)における外気温度(以下、「ソーク外気温度」と呼ぶ。)との温度差に基づいて、ベーパ濃度判定値を設定する。即ち、走行外気温度とソーク外気温度との温度差に基づいてベーパ濃度判定値を補正する。第3実施形態は、走行外気温度の代わりに、走行外気温度とソーク外気温度との温度差に基づいてベーパ濃度判定値を設定する点で第1実施形態と異なる。
このように走行外気温度とソーク外気温度との温度差に基づいてベーパ濃度判定値を補正する理由について説明する。ここでは、車両のソーク中にソーク外気温度が走行外気温度よりもかなり高くなった場合(ソーク外気温度と走行外気温度との温度差が大きくなった場合)を例に挙げて説明する。ソーク中にソーク外気温度が走行外気温度よりもかなり高くなった場合、燃料タンク10に発生する蒸発燃料の量は車両の駐車直後(ソーク直後)よりも増加する傾向にある。そのため、ソーク中に、キャニスタ26の大気側の空間(大気孔50が接続された部屋)に浮遊する蒸発燃料は増加する。よって、この場合に漏れ検出を実行すると、多量の蒸発燃料が大気中に排出されてしまう可能性が高い。以上より、第2実施形態では、大気中への多量の蒸発燃料の排出を抑制するために、走行外気温度とソーク外気温度との温度差に基づいて蒸発燃料濃度判定値を補正する。
図7及び図8は、走行外気温度とソーク外気温度との温度差を考慮せずに漏れ検出実行判定を実行した場合に生じる不具合を説明するための図である。
図7は、一般的に用いるベーパ濃度判定値を示している。図7は、横軸に走行外気温度とソーク外気温度との温度差を示し、縦軸にベーパ濃度を示している。詳しくは、網掛け領域A1は、ベーパ濃度判定値によって規定される範囲(以下、「ベーパ濃度判定範囲」と呼ぶ。)を示している。一般的には、温度差によらずにベーパ濃度判定範囲A1を一定に設定し、走行時のベーパ濃度がベーパ濃度判定範囲A1内にある場合に漏れ検出の実行を許可する。このようにベーパ濃度判定範囲A1を用いて判定を行っているのは、漏れ検出の実行によって、多量の蒸発燃料が大気中に排出されてしまうことを抑制するためである。なお、上記したベーパ濃度判定範囲A1は、走行外気温度とソーク外気温度との温度差を考慮せずに、漏れ検出時に多量の蒸発燃料が大気中に排出されることはないと予想されるベーパ濃度に基づいて設定されている。また、例えば、ベーパ濃度判定範囲A1は「5(%)」から「−5(%)」の範囲のベーパ濃度に設定される。この場合、ベーパ濃度判定範囲A1を用いて判定を行うことは、ベーパ濃度判定値を「5(%)」に設定して、ベーパ濃度が「5(%)」よりも薄いか否かを判定することと同義である。
図8は、走行外気温度とソーク外気温度との温度差に起因するキャニスタ26における状態の変化について説明するための図である。図8は、燃料タンク10、ベーパ通路20、キャニスタ26、パージ通路34、負圧ポンプモジュール52、及び大気通路54などを簡略化して示した図である。
図8(a)は、駐車直後のキャニスタ26等の状態を示している。この場合、走行外気温度が比較的低温であった場合を考える。図8(b)は、車両の駐車中にソーク外気温度が走行外気温度よりもかなり高くなった場合の、キャニスタ26等の状態を示している。言い換えると、図8(b)は、図8(a)に示す状態からある程度の時間が経過したときの図を示している。図8(a)と図8(b)とを比較すると、ソーク中に燃料タンク10に発生する蒸発燃料の量が増加していることがわかる。図8(b)で示すような状態にキャニスタ26がある場合に、上記の図7に示したベーパ濃度判定範囲A1を用いて漏れ検出実行判定を実行すると、走行外気温度とソーク外気温度との温度差を考慮してベーパ濃度判定範囲A1を設定していないため、漏れ検出の実行が許可される可能性が高い。この場合には、漏れ検出の実行によって、多量の蒸発燃料が大気中に排出されてしまうと考えられる。
このように、走行外気温度とソーク外気温度との温度差によらずにベーパ濃度判定範囲A1を一定に設定して判定を行った場合、漏れ検出時に多量の蒸発燃料が大気中に排出される可能性がある。これは、走行外気温度とソーク外気温度との温度差に応じて、ソーク中に燃料タンク10に発生する蒸発燃料の量が変化するためである。そのため、漏れ検出時に蒸発燃料が大気中に多量に排出されるといった不具合が生じないようなベーパ濃度の範囲が走行外気温度とソーク外気温度との温度差に応じて変化するため、この温度差によらずにベーパ濃度判定範囲A1を一定に設定することは好ましくないといえる。したがって、第2実施形態では、漏れ検出の実行による蒸発燃料の排出を適切に抑制するために、走行外気温度とソーク外気温度との温度差を考慮に入れて漏れ検出実行判定を行う。
図9は、第2実施形態において用いるベーパ濃度判定範囲を示した図である。図9は、横軸に走行外気温度とソーク外気温度との温度差を示し、縦軸にベーパ濃度を示している。また、網掛け領域A2は、第2実施形態で用いるベーパ濃度判定範囲を示している。
図9より、ベーパ濃度判定範囲A2は、走行外気温度とソーク外気温度との温度差が大きいほどベーパ濃度が薄くなるような範囲に設定され、温度差が小さいほどベーパ濃度が濃くなるような範囲に設定されている。即ち、ベーパ濃度判定範囲A2は、走行外気温度とソーク外気温度との温度差によるベーパ濃度の変化に基づいて設定されている。したがって、走行外気温度とソーク外気温度との温度差を考慮して、ベーパ濃度を判定することが可能となる。例えばソーク外気温度が走行外気温度よりもかなり高くなった場合(温度差が大きくなった場合)には、ベーパ濃度判定範囲A2が薄い濃度に設定されているので、ベーパ濃度がベーパ濃度判定範囲内A2に入る可能性が低くなるため、漏れ検出の実行が許可される可能性は低くなる。よって、第2実施形態によれば、走行外気温度とソーク外気温度との温度差に基づいて漏れ検出の実行を制限することができるため、漏れ検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を抑制することが可能となる。
次に、第2実施形態に係る漏れ検出実行判定処理について説明する。この漏れ検出実行判定処理は、ECU60によって、所定の周期で繰り返し実行される。また、漏れ検出実行判定処理は、車両が駐車中である場合に実行される。詳しくは、車両がある程度走行した後に駐車し、駐車してからある程度の時間が経過している場合に実行される。
図10は、第2実施形態に係る漏れ検出実行判定処理を示すフローチャートである。
ステップS201〜S207の処理は、前述したステップS101〜S107の処理と同様であるため(図6参照)、その説明を省略する。ここでは、主に、ステップS208〜S212の処理を説明する。
ステップS208では、ECU60は、ソーク外気温度を取得する。具体的には、ECU60は、外気温度センサ72から現在の外気温度を取得し、この温度をソーク外気温度として用いる。そして、処理はステップS209に進む。
ステップS209では、ECU60は、ステップS207で取得された走行外気温度と、ステップS208で取得されたソーク外気温度との温度差を算出する。具体的には、ECU60は、「ソーク外気温度−走行外気温度」を算出する。そして、処理はステップS210に進む。
ステップS210では、ECU60は、ステップS209で算出されたソーク外気温度と走行外気温度との温度差から、ベーパ濃度判定範囲を算出する。具体的には、図9に示したベーパ濃度判定範囲A2に基づいて、ソーク外気温度と走行外気温度との温度差に対応するベーパ濃度の範囲を算出する(詳しくは、ベーパ濃度の上限値と下限値を算出する)。そして、処理はステップS211に進む。
ステップS211では、ECU60は、走行時のベーパ濃度がステップS210で算出されたベーパ濃度判定範囲内にあるか否かを判定する。ベーパ濃度がベーパ濃度判定範囲内にある場合(ステップS211;Yes)、処理はステップS212に進む。この場合、漏れ検出を実行しても、大気中に蒸発燃料がほとんど排出されないため、漏れ検出を実行する(ステップS212)。具体的には、ECU60は、負圧ポンプモジュール52をONにし、封鎖弁28をOFF(閉)にし、パージVSV36をOFFにする。そして、ECU60は、負圧ポンプモジュール52内の圧力などに基づいて、蒸発燃料が漏れているか否かを判定する。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
一方、ベーパ濃度がベーパ濃度判定範囲内にない場合(ステップS211;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合、漏れ検出の実行によって蒸発燃料が大気中に排出される可能性が高いため、漏れ検出を実行しない。即ち、ECU60は、漏れ検出の実行を許可しない。
このように、第2実施形態に係る漏れ検出実行判定によれば、ソーク外気温度と走行外気温度との温度差を考慮に入れて漏れ検出実行判定を行うため、漏れ検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を適切に抑制することができる。
なお、上記では、ソーク外気温度と走行外気温度との温度差に基づいて補正したベーパ濃度判定値のみを用いて判定を行う実施形態を示したが、この温度差に基づいたベーパ濃度判定値だけでなく、第1実施形態で示したような走行外気温度に基づいて補正したベーパ濃度判定値を用いて判定を行っても良い。例えば、温度差に基づいて補正したベーパ濃度判定値を用いて判定を行った後、走行外気温度に基づいて補正したベーパ濃度判定値を用いて判定を行うことができる。これにより、走行外気温度とソーク外気温度との温度差、及び走行外気温度に基づいて漏れ検出の実行を制限することができるため、漏れ検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を効果的に抑制することが可能となる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る漏れ検出実行判定方法について説明する。第3実施形態では、キャニスタ26からの蒸発燃料の脱離特性に影響を与える因子として、燃料の揮発性(燃料性状)に基づいてベーパ濃度判定値を設定する。即ち、燃料の揮発性に基づいてベーパ濃度判定値を補正する。第3実施形態は、走行外気温度、及び走行外気温度とソーク外気温度との温度差の代わりに、燃料の揮発性に基づいてベーパ濃度判定値を設定する点で、上記した第1実施形態及び第2実施形態とは異なる。
ここで、燃料の揮発性に基づいてベーパ濃度判定値を補正する理由について、図11乃至図14を用いて説明する。
図11は、燃料の揮発性と、キャニスタ26内のベーパ残量との関係について説明するための図である。図11においては、横軸に燃料の揮発性を示し、縦軸にベーパ残量を示している。なお、図11に示す関係は、ベーパ濃度及び外気温度が同一であるという条件の元で作成されている。
図11より、燃料の揮発性に応じて、キャニスタ26内のベーパ残量が変化していることがわかる。具体的には、燃料の揮発性が低いほどベーパ残量が多くなり、燃料の揮発性が高いほどベーパ残量が少なくなる。こうなるのは、燃料の揮発性に応じて蒸発燃料の脱離量が変化するためである。即ち、燃料の揮発性が低いほど脱離量が少なくなり、燃料の揮発性が高いほど脱離量が多くなるからである。なお、ベーパ濃度及びベーパ残量には、ベーパ濃度が濃くなるほどベーパ残量が少なくなり、ベーパ濃度が薄くなるほどベーパ残量が多くなるといった関係が概ね成立するため、ベーパ濃度は、燃料の揮発性が低いほど薄くなり、燃料の揮発性が高いほど濃くなる。
図12は、一般的に用いられるベーパ濃度判定値を示している。図12は、横軸に燃料の揮発性を示し、縦軸にベーパ濃度判定値を示している。具体的には、太線で表された実線がベーパ濃度判定値を示している。一般的には、燃料の揮発性によらずにベーパ濃度判定値を一定に設定し、走行時のベーパ濃度がベーパ濃度判定値よりも薄い場合に漏れ検出の実行を許可する。このベーパ濃度判定値は、燃料の揮発性を考慮せずに、漏れ検出時に多量の蒸発燃料が大気中に排出されることはないと予想されるベーパ濃度に基づいて設定されている。
ここで、図13及び図14を用いて、燃料の揮発性によらずに一定に設定したベーパ濃度判定値を用いて漏れ検出実行判定を実行した場合に、生じる不具合を説明する。なお、図13及び図14は、燃料タンク10、ベーパ通路20、キャニスタ26、パージ通路34、負圧ポンプモジュール52、及び大気通路54などを簡略化して示した図である。
図13は、揮発性の低い燃料を用いた場合の図を示している。具体的には、図13(a)は漏れ検出前の状態を示しており、図13(b)は漏れ検出時の状態を示している。図13(a)より、揮発性の低い燃料を用いた場合には、ベーパ残量が多いことがわかる。これは、蒸発燃料の脱離量が少ないためである。また、蒸発燃料の脱離量が少ないので、ベーパ濃度は薄いと考えられる。したがって、この場合におけるベーパ濃度は前述したベーパ濃度判定値(図12参照)よりも薄くなる可能性が高い。そのため、燃料の揮発性によらずに一定であるベーパ濃度判定値を用いて判定を行った場合には、漏れ検出の許可が出される可能性が高い。図13(b)は、キャニスタ26が図13(a)に示すような状態にある場合に、漏れ検出を実行したときの様子を示している。これより、図13(b)中の矢印110で示すように、多量の蒸発燃料が大気中に排出されていることがわかる。
一方、図14は、揮発性の高い燃料を用いた場合の図を示している。具体的には、図14(a)は漏れ検出前の状態を示しており、図14(b)は漏れ検出時の状態を示している。図14(a)より、揮発性の高い燃料を用いた場合には、ベーパ残量が少ないことがわかる。これは、蒸発燃料の脱離量が多いためである。図14(b)は、キャニスタ26が図14(a)に示すような状態にある場合に漏れ検出を実行したときの様子を示している。これより、図14(b)中の矢印111で示すように、蒸発燃料はほとんど大気中に排出されていないことがわかる。こうなるのは、揮発性の高い燃料を用いた場合には、キャニスタ26内のベーパ残量が少ないからである。より具体的には、揮発性の高い燃料を用いた場合に漏れ検出時に排出される蒸発燃料の量は、揮発性の低い燃料を用いた場合に漏れ検出時に排出される蒸発燃料の量(図13(b)参照)よりもかなり少ないといえる。
以上より、燃料の揮発性によらずにベーパ濃度判定値を一定に設定して判定を行った場合、漏れ検出時に多量の蒸発燃料が大気中に排出される可能性がある。こうなるのは、図11に示したように、燃料の揮発性に応じて、キャニスタ26のベーパ残量が変化するためである。そのため、漏れ検出時に蒸発燃料が大気中に多量に排出されるといった不具合が生じないようなベーパ濃度は燃料の揮発性に応じて変化するため、燃料の揮発性によらずにベーパ濃度判定値を一定に設定することは好ましくないといえる。したがって、第3実施形態では、漏れ検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を適切に抑制するために、燃料の揮発性を考慮に入れて漏れ検出実行判定を行う。具体的には、燃料の揮発性に基づいてベーパ濃度判定値を補正する。
図15は、第3実施形態において用いるベーパ濃度判定値を示した図である。図15は、横軸に燃料の揮発性を示し、縦軸にベーパ濃度判定値を示している。具体的には、太線で表された実線がベーパ濃度判定値を示している。即ち、図15は、燃料の揮発性とベーパ濃度判定値との関係を示すマップを表している。
図15より、ベーパ濃度判定値は、燃料の揮発性が低いほど小さな値となるように設定され、燃料の揮発性が高いほど大きな値となるように設定されている。即ち、ベーパ濃度判定値は、燃料の揮発性によるベーパ濃度の変化に基づいて設定されている。したがって、燃料の揮発性を考慮した判定値を用いて、ベーパ濃度を判定することが可能となる。例えば燃料の揮発性が低い場合には、ベーパ濃度判定値として小さな値が決定されるので、ベーパ濃度がベーパ濃度判定値よりも濃くなる可能性が高くなる。そのため、漏れ検出の実行が許可される可能性は低くなる。よって、第3実施形態によれば、燃料の揮発性に基づいて漏れ検出の実行を制限することができるため、漏れ検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を抑制することが可能となる。
ここで、図16を用いて、第3実施形態による効果を説明する。図16は、燃料タンク10やキャニスタ26などを簡略化して示した図である。具体的には、図16(a)は、揮発性の低い燃料を用いた場合における漏れ検出実行前の状態を示しており、図16(b)は、揮発性の高い燃料を用いた場合における漏れ検出実行前の状態を示している。一方、図16(c)は、漏れ検出実行時の状態を示している。
図16(a)に示すように、揮発性の低い燃料を用いた場合には蒸発燃料の脱離量が少ないため、ベーパ残量が多いことがわかる。また、蒸発燃料の脱離量が少ないので、ベーパ濃度は薄い。この場合に、第3実施形態に係るベーパ濃度判定値(図15参照)を用いて判定を行った場合、燃料の揮発性が低いため、ベーパ濃度判定値として小さな値が決定される。そのため、ベーパ濃度がベーパ濃度判定値よりも濃くなるため、漏れ検出の実行は許可されない。一方、図16(b)に示すように、揮発性の高い燃料を用いた場合には蒸発燃料の脱離量が多いため、ベーパ残量が少ないことがわかる。この場合に、第3実施形態に係るベーパ濃度判定値(図15参照)を用いて判定を行った場合、燃料の揮発性が高いため、ベーパ濃度判定値として大きな値が決定される。したがって、ベーパ濃度がベーパ濃度判定値よりも薄くなるため、漏れ検出の実行が許可される。
図16(c)は、図16(b)の状態にあるキャニスタ26に対して漏れ検出を実行した場合の図を示している。この場合には、図16(c)中の符号115で示す蒸発燃料(ハッチングされた丸)が大気中に排出される。このように排出される蒸発燃料の量はわずかであり、大気中に排出されても問題のない量であるといえる。以上より、第3実施形態によれば、燃料の揮発性に基づいて漏れ検出の実行を制限することができるため、漏れ検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を抑制することが可能となる。
ここで、図16(c)に、揮発性の低い燃料を用いた場合に、漏れ検出を実行したときに排出される蒸発燃料(符号116で示す破線で表された丸)を比較対象として示す。これより、多量の蒸発燃料が大気中に排出されていることがわかる。燃料の揮発性が低い場合には、第3実施形態に係るベーパ濃度判定値を用いて判定を行うと漏れ検出の実行が許可される可能性がかなり低いため、このような多量の蒸発燃料が排出されることはほとんどない。したがって、第3実施形態によれば、多量の蒸発燃料の排出が抑制され、符号115で示す量の蒸発燃料が排出される可能性が高くなるので、漏れ検出時に排出される蒸発燃料の量を概ね一定にすることが可能となる。
次に、第3実施形態に係る漏れ検出実行判定処理について説明する。この漏れ検出実行判定処理は、ECU60によって、所定の周期で繰り返し実行される。また、漏れ検出実行判定処理は、車両が駐車中である場合に実行される。詳しくは、車両がある程度走行した後に駐車し、駐車してからある程度の時間が経過している場合に実行される。
図17は、第3実施形態に係る漏れ検出実行判定処理を示すフローチャートである。
ステップS301〜S306の処理は、前述したステップS101〜S106及びステップS201〜S206の処理と同様であるため(図6及び図10参照)、その説明を省略する。ここでは、主に、ステップS307〜S311の処理を説明する。
ステップS307では、ECU60は、車両の走行時における、ベーパ濃度の変化率(以下、「Δベーパ濃度」と呼ぶ。)と、積算パージ量とを読み込む。これらの値は、燃料の揮発性を求める際に用いられる。そして、処理はステップS308に進む。
ステップS308では、ECU60は、Δベーパ濃度と積算パージ量との関係から燃料の揮発性を求める。このようにΔベーパ濃度及び積算パージ量に基づいて燃料の揮発性を求めるのは、積算パージ量当りのΔベーパ濃度が、走行時の外気温度や初期のベーパ濃度によって変化するためである。即ち、Δベーパ濃度の変化を考慮に入れて、燃料の揮発性を求める。
ここで、燃料の揮発性を求める方法を、図18を用いて具体的に説明する。図18(a)は、走行中に得られた積算パージ量及びΔベーパ濃度との関係の具体例を示しており、横軸に積算パージ量を示し、縦軸にΔベーパ濃度を示している。また、図18(a)において、曲線D1、D2は等揮発性曲線(それぞれの曲線上においては、揮発性は等しい)を示している。詳しくは、等揮発性曲線D1、D2は、異なる揮発性の燃料を用いた場合に得られた結果を示し、等揮発性曲線D2は等揮発性曲線D1よりも揮発性が高い。よって、積算パージ量B1及びΔベーパ濃度C1が得られた場合に用いられている燃料よりも、積算パージ量B2及びΔベーパ濃度C2が得られた場合に用いられている燃料の方が、揮発性が高いといえる。なお、図18(a)は、初期のベーパ残量が同じという条件の元で作成されている。
ECU60は、上記した積算パージ量、Δベーパ濃度、及び燃料の揮発性の関係を得た後、この関係に基づいて、Δベーパ濃度と燃料の揮発性を示すマップを作成する。図18(b)は、作成されたマップの一例を示す図である。具体的には、図18(b)は、横軸にΔベーパ濃度を示し、縦軸に燃料の揮発性を示している。これより、Δベーパ濃度が薄いほど燃料の揮発性が低くなり、Δベーパ濃度が濃いほど燃料の揮発性が高くなることがわかる。ステップS308においては、ECU60は、図18(b)に示すようなマップを参照して、Δベーパ濃度に対応する燃料の揮発性を算出する。以上のステップS308の処理が終了すると、処理はステップS309に進む。
図17に戻って、ステップS309の処理を説明する。ステップS309では、ECU60は、予め記憶している燃料の揮発性とベーパ濃度判定値との関係を示すマップ(図15参照)を取得し、このマップに基づいて、ステップS308で算出された燃料の揮発性に対応するベーパ濃度判定値を算出する。そして、処理はステップS310に進む。
ステップS310では、ECU60は、走行時のベーパ濃度がステップS309で算出されたベーパ濃度判定値よりも薄いか否かを判定する。ベーパ濃度がベーパ濃度判定値よりも薄い場合(ステップS310;Yes)、処理はステップS311に進む。この場合、漏れ検出を実行しても、大気中に蒸発燃料がほとんど排出されないため、ECU60は、漏れ検出を実行する(ステップS311)。具体的には、ECU60は、負圧ポンプモジュール52をONにし、封鎖弁28をOFF(閉)にし、パージVSV36をOFFにする。そして、ECU60は、負圧ポンプモジュール52内の圧力などに基づいて、蒸発燃料が漏れているか否かを判定する。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
一方、ベーパ濃度がベーパ濃度判定値よりも濃い場合(ステップS310;No)、処理は当該フローを抜ける。この場合、漏れ検出の実行によって蒸発燃料が大気中に排出される可能性が高いため、ECU60は、漏れ検出を実行しない。即ち、ECU60は、漏れ検出の実行を許可しない。
このように、第3実施形態に係る漏れ検出実行判定によれば、燃料の揮発性を考慮に入れて漏れ検出実行判定を行うため、漏れ検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を適切に抑制することが可能となる。
なお、上記では、燃料の揮発性に基づいて補正したベーパ濃度判定値のみを用いて判定を行う実施形態を示したが、これに限定はされない。他の例では、揮発性に基づいたベーパ濃度判定値だけでなく、第1実施形態で示したような走行外気温度に基づいて補正したベーパ濃度判定値、及び第2実施形態で示したような走行外気温度とソーク外気温度との温度差に基づいて補正したベーパ濃度判定値、のうちの少なくともいずれかを用いて判定を行うことができる。これにより、燃料の揮発性、走行外気温度、及び走行外気温度とソーク外気温度との温度差に基づいて漏れ検出の実行を制限することができるため、漏れ検出の実行による蒸発燃料の大気中への排出を更に効果的に抑制することが可能となる。
本発明の実施形態に係る蒸発燃料処理装置の構成を説明するための図である。 走行外気温度と、ベーパ濃度及びベーパ残量との関係を説明するための図である。 一般的に用いられるベーパ濃度判定値を示す図である。 一定に設定したベーパ濃度判定値を用いて漏れ検出実行判定を実行した場合に生じる不具合を説明するための図である。 第1実施形態において用いるベーパ濃度判定値を示す図である。 第1実施形態に係る漏れ検出実行判定処理を示すフローチャートである。 一般的に用いるベーパ濃度判定値を示す図である。 走行外気温度とソーク外気温度との温度差に起因するキャニスタにおける状態の変化について説明するための図である。 第2実施形態において用いるベーパ濃度判定範囲を示す図である。 第2実施形態に係る漏れ検出実行判定処理を示すフローチャートである。 燃料の揮発性とベーパ残量との関係について説明するための図である。 一般的に用いるベーパ濃度判定値を示す図である。 揮発性の低い燃料を用いた場合において、漏れ検出を実行したときの状態を示す図である。 揮発性の高い燃料を用いた場合において、漏れ検出を実行したときの状態を示す図である。 第3実施形態において用いるベーパ濃度判定値を示す図である。 第3実施形態による効果を説明するための図である。 第3実施形態に係る漏れ検出実行判定処理を示すフローチャートである。 燃料の揮発性を求める方法を説明するための図である。
符号の説明
10 燃料タンク
20 ベーパ通路
24 封鎖弁ユニット
28 封鎖弁
26 キャニスタ
34 パージ通路
36 パージVSV
38 吸気通路
52 負圧ポンプモジュール
54 大気通路
60 ECU
71 吸気温度センサ71
72 外気温度センサ

Claims (8)

  1. 燃料タンクと、前記燃料タンクで発生した蒸発燃料を吸着するキャニスタとを有する蒸発燃料処理装置に対して、前記蒸発燃料処理装置から外部への前記蒸発燃料の漏れを検出する蒸発燃料処理装置の異常検出装置であって、
    前記キャニスタからの蒸発燃料の脱離特性に影響を与える因子に基づいて、前記蒸発燃料処理装置内の蒸発燃料濃度に対する判定に用いる蒸発燃料濃度判定値を算出する蒸発燃料濃度判定値算出手段と、
    前記蒸発燃料濃度判定値と前記蒸発燃料濃度とを比較することによって、前記漏れの検出を実行するか否かを判定する漏れ検出実行判定手段と、
    前記漏れ検出実行判定手段によって前記漏れの検出の実行が許可された場合に、当該検出を実行する漏れ検出実行手段と、を備えることを特徴とする蒸発燃料処理装置の異常検出装置。
  2. 前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、前記因子として走行中の外気温度に基づいて、前記蒸発燃料濃度判定値を算出し、
    前記漏れ検出実行判定手段は、前記蒸発燃料濃度が前記蒸発燃料濃度判定値よりも薄い場合に、前記漏れの検出の実行を許可することを特徴とする請求項1に記載の蒸発燃料処理装置の異常検出装置。
  3. 前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、前記外気温度が低いほど前記蒸発燃料濃度判定値として小さな値を決定し、前記外気温度が高いほど前記蒸発燃料濃度判定値として大きな値を決定することを特徴とする請求項2に記載の蒸発燃料処理装置の異常検出装置。
  4. 前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、前記因子として走行中の外気温度とソーク時の外気温度との温度差に基づいて、前記蒸発燃料濃度判定値によって規定される蒸発燃料濃度判定範囲を決定し、
    前記漏れ検出実行判定手段は、前記蒸発燃料濃度が前記蒸発燃料濃度判定範囲内にある場合に、前記漏れの検出の実行を許可することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蒸発燃料処理装置の異常検出装置。
  5. 前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、前記温度差が小さいほど前記蒸発燃料濃度が濃くなり、前記温度差が大きいほど前記蒸発燃料濃度が薄くなるような範囲を前記蒸発燃料濃度判定範囲として決定することを特徴とする請求項4に記載の蒸発燃料処理装置の異常検出装置。
  6. 前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、前記因子として燃料の揮発性に基づいて、前記蒸発燃料濃度判定値を算出し、
    前記漏れ検出実行判定手段は、前記蒸発燃料濃度が前記蒸発燃料濃度判定値よりも薄い場合に、前記漏れの検出の実行を許可することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の蒸発燃料処理装置の異常検出装置。
  7. 前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、前記燃料の揮発性が低いほど前記蒸発燃料濃度判定値として小さな値を決定し、前記燃料の揮発性が高いほど前記蒸発燃料濃度判定値として大きな値を決定することを特徴とする請求項6に記載の蒸発燃料処理装置の異常検出装置。
  8. 前記蒸発燃料濃度判定値算出手段は、走行中における前記蒸発燃料濃度の変化と積算パージ量とに基づいて、前記燃料の揮発性を算出することを特徴とする請求項6又は7に記載の蒸発燃料処理装置の異常検出装置。
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