JP2007202521A - 低分子量rnaの分離精製方法 - Google Patents

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利保 後藤
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Abstract

【課題】miRNA分子などのRNA分子を簡便に作製する方法、および配列未知のmiRNA分子などのRNA分子を作製するための技術を提供することを課題とする。
【解決手段】汎用性の高いRNAポリメラーゼ(RNA polymerase)を用いることにより任意のmature RNA(例えば、miRNA)を作成する手法を新たに開発したことによって解決した。プロモーター領域をRT−PCRの段階で導入することおよび余分な配列と相補的なプライマー(DNA断片)をアニーリングさせ、RNase H処理およびDNase処理することにより上記課題は解決された。
【選択図】なし

Description

本発明は、核酸化学の技術に関する。より詳細には、本発明は、所望の配列からなるRNAの新規作製法および関連技術に関する。
近年、ゲノム上の非コード領域(non−coding region)の解析より、塩基数が19−24程度の低分子量のRNA(すなわち、microRNAと称され、本発明では、以下miRNAとも呼ぶ)が急速に注目を集めている。miRNAは、タンパク質に翻訳されない小型のRNA分子で、生命現象に深く関わっていることが示唆されている。しかし、現在のところ、miRNAはその発現領域や発現量、さらに、RNA−induced silencing complex protein(本明細書において以下RISCタンパク質とも称する。)との作用などの解析において、主に既知にmiRNAに関して検出(detection)系の実験が行われているに過ぎず、直接的にmiRNAの過剰発現を用いてmiRNAに起因する可能性のある疾病の発見や診断、そして治療法の開発などもなかなか進んでいない。また、配列未知のmiRNAの発現クローニング(expression cloning)などによる機能スクリーニング(functional screening)は不可能であり、「任意のmiRNA」を「matureな形で作成する手法が存在しない」ことが、miRNAの生物学的機能の解明や医学的意義の理解を大きく妨げていた。
ここで、「mature」(成熟型ともいう)な形のmiRNAとは、「余分な配列を含むRNAからその余分な配列だけを酵素反応を用いて取り除き、目的の配列だけになったこと」をいう。
これまでのmiRNA分子を作成する手法は、まずクローニングを行い、配列を決定した後にRNA合成装置を使って機械的に合成することであったが、この手法では、合成のために莫大な時間と費用がかかり、併せて、配列未知のmiRNAを作成することは原理的に不可能だった。
合成装置などとしては、Beckman社のoligo 1000などが挙げられる。現状では、合成装置を購入するか、もしくは1サンプル最低数万円(もちろん合成量によります)かけて企業に外注することを余儀なくされている。
最近では特別なRNAの配列を認識し、その配列部位を切断する酵素(リボザイム)が発見され、様々な配列で切断できるように改良されている。つまり本法でのpre-RNAの段階からこれらの酵素を使用することによって、目的の配列のみからなるRNAが作製可能である(非特許文献1)。しかしながら、これらはまさに発展途上の産物である。実際に酵素と認識配列が1:1ではないものも多いようであるし(一つの酵素で複数の認識配列を有する場合がある)、全ての配列に対応するだけの酵素は改良されていない。当然ながらこれらの酵素を使用する方法は未知の配列のRNAには利用出来ない。
生体内には存在するが未だに発見されていないRNA、もしくは発見されていても機能解析が十分になされていないRNA(本明細書において「未知配列」ともいう。)は、配列を決定してからでないと、合成することができない。
このような技術に関してみると、特許文献1〜3は、cDNAの増幅に関する記載がされているが、RNAを増幅する方法は記載されていない。特に、これらの文献では、cDNAの合成に主眼が行われており、RNAについては何ら言及していない。
特許文献4〜7は、RNAの合成を目的とした技術を記載する。しかし、matureなRNAを生産することは記載も示唆もされていない。
特許文献5では、oligodTとアニールしているpolyAの除去のためにRNaseHを使用しているが、matureなRNAを生産することは記載も示唆もされていない。
あらゆる未知の配列のRNAに対応しており、工業的、人工的に作製したいような生体内に存在しないRNA配列に対しても利用できるようなものはまだない。
特開2004-73118号公報 特開2003-70490号公報 特開2002-233379号公報 特開平7-59599号公報 特表2002-505087号公報 特開2005-224172号公報 国際公開02/004627パンフレット Lee Y, Ahn C, Han J, Choi H, Kim J, Yim J, Lee J, Provost P, Radmark O,Kim S, Kim VN. The nuclear RNase III Drosha initiates micro RNA processing.Nature. 2003 425(6956):415-9.
本発明が開示される前は、(1)既知の配列からなるmatureな形のmiRNAを費用の嵩むRNA合成装置を使って機械的に合成するのではなく、未知の配列も含めた任意の配列からなるmatureな形のmiRNAを汎用性のあるRNAポリメラーゼ(例としてT7 RNAポリメラーゼを用いる)を用いて安価に合成する必要があった。
加えて、本発明が開示される前は、(2)RNAポリメラーゼを用いて作成されたRNA(以下pre−RNAと呼ぶ)はmiRNAのクローニングにおけるリンカー核酸部位と新たに導入したプロモーター領域の余分な配列が含まれるため、mature miRNAの形状にするために余分な配列を除去する必要があった。
従って、本発明は、miRNA分子などのRNA分子を簡便に作製する方法、および配列未知のmiRNA分子などのRNA分子を作製するための技術を提供することを課題とする。
上記課題は、汎用性の高いRNAポリメラーゼ(RNA polymerase)を用いることにより任意のmature RNA(例えば、miRNA)を作成する手法(本明細書において「後藤−浅島法」とも呼ぶ。)を新たに開発したことによって解決した。本法ではあらゆる未知の配列のRNAに対応しており、工業的、人工的に作製したいような生体内に存在しないRNA配列に対しても利用できる。
本発明である「後藤−浅島法」では、汎用性の高いRNAポリメラーゼを用いるにあたり、従来のクローニング法を改良し、プロモーター領域をRT−PCRの段階で導入することで、上記課題(1)を解決した。また、上記課題(1)の手法だけではmiRNAに付加されている余分なRNA配列を除けないために、余分な配列と相補的なプライマー(DNA断片)をアニーリングさせ、RNase H処理およびDNase処理することにより上記課題(2)を解決した。
(1)単離された成熟型RNA。
(2)合成成熟型RNA。
(3)低分子量成熟型RNA。
(4)上記成熟型RNAは、目的の配列のみからなる、RNA。
(5)所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法であって:
A)上記所望の配列を有する鋳型核酸にリンカー核酸を結合させてリンカー核酸結合鋳型核酸を生産するライゲーション工程;
B)上記リンカー核酸結合鋳型核酸に基づいて核酸増幅鋳型を生産する核酸増幅鋳型生産工程;
C)上記核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を行って増幅産物を生産する増幅工程;
D)上記増幅産物に対してRNAポリメラーゼを用いてRNA産物を生産するRNA増幅工程;および
E)上記RNA産物から所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産する調整工程;
を包含する、方法。
(6) 上記鋳型核酸は、RNAである、項目5に記載の方法。
(7) 上記リンカー核酸は、DNA、RNAまたはDNA−RNAハイブリッドを含む、項目5に記載の方法。
(8) 上記リンカー核酸は、制限酵素部位を含む、項目5に記載の方法。
(9) 上記リンカー核酸は、制限酵素部位を含まない、項目5に記載の方法。
(10) 上記ライゲーション工程において、上記連結がリガーゼによって媒介される、項目5に記載の方法。
(11) 上記ライゲーション工程において、上記連結がDNAとRNAとの連結を媒介する能力も有するリガーゼにより媒介される、項目5に記載の方法。
(12) 上記リンカー核酸が二つ提供され、その一方の末端にリン酸が付加されていることを特徴とする、項目5に記載の方法。
(13) 上記リンカー核酸が二つ提供され、その一方の末端がライゲーション妨害基で改変されていることを特徴とする、項目5に記載の方法。
(14) 上記リンカー核酸が二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、上記第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されていることを特徴とする、項目5に記載の方法。
(15) 上記ライゲーション妨害基が、ジデオキシヌクレオチドである、項目13または14に記載の方法。
(16) 上記リンカーが二つ提供され、上記リンカー核酸が第1のリンカー核酸および第2のリンカー核酸の二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、上記第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されており、第2のリンカー核酸は少なくとも3’側がRNAである、項目5に記載の方法。
(17) 上記リンカーが二つ提供され、上記リンカー核酸が第1のリンカー核酸および第2のリンカー核酸の二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、上記第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されており、第2のリンカー核酸は5’側がDNAであり3’側がRNAである、項目5に記載の方法。
(18) 上記A)ライゲーション反応において、上記第2のリンカー核酸と上記鋳型核酸との連結をまず行って第1連結産物を得、次に上記第1のリンカー核酸と上記第1連結産物との連結を行うことを特徴とする、項目17に記載の方法。
(19)上記ライゲーション工程は、smart protocolまたはNelson protocolにて行われる、項目5に記載の方法。
(20) 上記鋳型核酸はRNAである、項目5に記載の方法。
(21) 上記鋳型核酸はRNAであり、上記核酸増幅鋳型の生産は逆転写反応により達成され、上記核酸増幅鋳型はDNAである、項目5に記載の方法。
(22) 上記リンカー核酸結合鋳型核酸がRNAとDNAとのキメラ核酸である、項目5に記載の方法。
(23) 上記リンカー核酸結合鋳型核酸がRNAとDNAとのキメラ核酸であり、上記核酸増幅鋳型の生産は逆転写反応により達成され、上記逆転写反応において用いられるプライマーが上記リンカー核酸結合鋳型核酸のリンカー核酸部分に相補的な配列を含む、項目5に記載の方法。
(24) 上記核酸増幅反応が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、gap LCR、鎖置換増幅(strand displacement amplification;SDA)、Qβレプリカーゼ増幅、転写増幅システム(TAS)、自己支持配列複製システム(self−sustained sequence replication system;3SR);核酸配列ベース増幅(NASBA);転写媒介増幅(TMA)、等温条件下キメラプライマー開始核酸増幅(ICAN;Isothermally chimeric primer used amplification of nucleic acid)およびループ媒介性等温増幅(LAMP)からなる群より選択される、項目5に記載の方法。
(25) 上記核酸増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応である、項目5に記載の方法。
(26) 上記核酸増幅反応において、プロモーター配列を含むプライマーが用いられる、項目5に記載の方法。
(27) 上記核酸増幅反応において使用される5’側のプライマーにプロモーター配列が含まれる、項目5に記載の方法。
(28) 上記核酸増幅反応において使用されるプライマーが、制限酵素部位の配列を含む、項目5に記載の方法。
(29) 上記核酸増幅反応において使用されるプライマーが、マルチクローニングサイトを含む、項目5に記載の方法。
(30) 上記核酸増幅反応において使用されるプライマーが、制限酵素部位の配列を含み、5’側のプライマーにプロモーター配列が含まれる、項目5に記載の方法。
(31) 上記核酸増幅反応において使用されるプライマーが、リンカー核酸の配列またはその相補配列あるいはその一部を含む、項目5に記載の方法。
(32) 上記核酸増幅反応において使用されるプライマーが、リンカー核酸の配列またはその相補配列あるいはその一部を含み、上記プライマーが、制限酵素部位の配列を含み、5’側のプライマーにプロモーター配列が含まれる、項目5に記載の方法。
(33) C)増幅工程の後に、上記増幅産物を、ベクターにクローニングする工程をさらに包含する、項目5に記載の方法。
(34) 上記ベクターは、上記プロモーター配列を含まないことを特徴とする、項目31に記載の方法。
(35) 上記増幅産物がDNAであり、上記RNAポリメラーゼが、DNA依存性である、項目5に記載の方法。
(36) 上記RNAポリメラーゼは、上記プロモーター配列を認識するものである、項目5に記載の方法。
(37) 上記核酸増幅反応において、使用されるプライマーが、リンカー核酸の配列またはその相補配列あるいはその一部を含み、上記プライマーが、制限酵素部位の配列を含み、5’側のプライマーにプロモーター配列が含まれ
上記C)増幅工程の後に、上記増幅産物を、ベクターにクローニングする工程をさらに包含し、上記ベクターは、上記プロモーター配列を含まず、上記RNAポリメラーゼが上記プロモーター配列を認識し、かつ、3’側のプライマーの上記制限酵素部位を切断する制限酵素で消化して上記RNAポリメラーゼの鋳型として上記RNAポリメラーゼによる増幅を行うことを特徴とする、項目5に記載の方法。
(38) RNA増幅工程の後にDNAを除去する工程をさらに包含する、項目5に記載の方法。
(39) 上記DNAの除去は、DNaseにより達成される、項目38に記載の方法。
(40) 上記RNA増幅工程において、存在するRNA分子の量の少なくとも2倍量のプライマーが使用される、項目5に記載の方法。
(41) 上記RNAポリメラーゼは、オーバーハングを生じさせないRNAポリメラーゼである、項目5に記載の方法。
(42) 上記所望でないRNA配列の除去は、上記リンカー核酸結合鋳型核酸の配列のうち、上記所望の配列以外の配列と相補的な除去用プライマーを上記RNA産物とハイブリダイズさせてハイブリダイズ産物を生成し、上記ハイブリダイズ産物に対してDNAと結合している一本鎖RNAのみを選択的に分解する手段を用いて分解させて、所望の配列のみを含むRNAを生産することを包含する、項目5に記載の方法。
(43) 上記除去用プライマーは、上記所望の配列からなるRNAに直接連結されている配列に対して相補的な配列を少なくとも1つ含み、上記相補的な配列は、上記RNA産物とのハイブリダイズ形成に充分な長さを含む、項目42に記載の方法。
(44) 上記所望でないRNA配列の除去は、DNAと結合している一本鎖RNAのみを選択的に分解することを特徴とする、項目5に記載の方法。
(45) 上記所望でないRNA配列の除去は、RNase Hにより達成される、項目5に記載の方法。
(46) RNAを実質的に分解しないDNA分解手段によりDNAを分解する工程をさらに包含する、項目5に記載の方法。
(47) さらに、上記RNAポリメラーゼによって生じたオーバーハングを除去する工程を包含する、項目5に記載の方法。
(48) 上記RNAポリメラーゼによって生じたオーバーハングを除去する上記工程は、電気泳動を包含する、項目47に記載の方法。
(49) 上記成熟型RNAは、低分子量RNAである、項目5に記載の方法。
(50) 上記成熟型RNAは、miRNAである、項目5に記載の方法。
(51)所望の配列を有する成熟型RNAを生産するためのキットであって:
A1)上記所望の配列を有する鋳型核酸に連結させるためのリンカー核酸;
A2)上記リンカー核酸を上記鋳型核酸に結合させる結合手段;
B)上記鋳型核酸と上記リンカー核酸とが連結したリンカー核酸結合鋳型核酸から核酸増幅鋳型を生産する核酸増幅鋳型生産手段;
C)上記転写反応によって生じる核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を生じさせる核酸増幅手段;
D)上記核酸増幅反応によって増幅された産物を鋳型としてRNAを生産する手段;および
E)所望でないRNA配列を除去するRNA配列除去手段、
を備える、キット。
(52) 上記リンカー核酸は、制限酵素部位を含むことを特徴とする、項目51に記載のキット。
(53) 上記リンカー核酸は、制限酵素部位を含まないことを特徴とする、項目51に記載のキット。
(54) 上記リンカー核酸が二つ提供され、その一方の末端にリン酸が付加されていることを特徴とする、項目51に記載のキット。
(55) 上記リンカー核酸が二つ提供され、その一方の末端がライゲーション妨害基で改変されていることを特徴とする、項目51に記載のキット。
(56) 上記リンカー核酸が二つ提供され、その一方の末端にリン酸が付加され、他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されていることを特徴とする、項目51に記載のキット。
(57) 記ライゲーション妨害基が、ジデオキシヌクレオチドである、項目55または56に記載のキット。
(58) 上記リンカー核酸が二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、上記第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されていることを特徴とする、項目51に記載のキット。
(59) 上記リンカーが二つ提供され、上記リンカー核酸が第1のリンカー核酸および第2のリンカー核酸の二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、上記第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されており、第2のリンカー核酸は少なくとも3’側がRNAである、項目51に記載のキット。
(60) 上記リンカーが二つ提供され、上記リンカー核酸が第1のリンカー核酸および第2のリンカー核酸の二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、上記第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されており、第2のリンカー核酸は5’側がDNAであり3’側がRNAである、項目51に記載のキット。
(61) 上記結合手段は、RNAリガーゼである、項目51に記載のキット。
(62) 上記結合手段は、DNAとRNAとの連結を媒介する能力も有するリガーゼである、項目51に記載のキット。
(63) 上記結合手段は、T4 RNAリガーゼである、項目51に記載のキット。
(64) 上記鋳型核酸はRNAであり、上記核酸増幅鋳型生産手段は、逆転写酵素とプライマーを含む、項目51に記載のキット。
(65) 上記プライマーセットは、上記リンカー核酸結合鋳型核酸のリンカー核酸部分に相補的な配列を含むことを特徴とする、項目51に記載のキット。
(66) 上記核酸増幅手段は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、gap LCR、鎖置換増幅(strand displacement amplification;SDA)、Qβレプリカーゼ増幅、転写増幅システム(TAS)、自己支持配列複製システム(self−sustained sequence replication system;3SR);核酸配列ベース増幅(NASBA);転写媒介増幅(TMA)、等温条件下キメラプライマー開始核酸増幅(ICAN;Isothermally chimeric primer used amplification of nucleic acid)およびループ媒介性等温増幅(LAMP)からなる群より選択される増幅反応のための手段を含む、項目51に記載のキット。
(67) 上記核酸増幅手段は、DNAポリメラーゼとプライマーセットとを含む、項目51に記載のキット。
(68)上記プライマーセットは、上記リンカー核酸連結鋳型核酸の一部と同一の配列および相補的な配列をそれぞれ含む、項目51に記載のキット。
(69)上記プライマーセットのうち少なくとも1つがプロモーター配列を含む、項目51に記載のキット。
(70)上記プライマーセットの両方が制限部位を含む、項目51に記載のキット。
(71)上記プライマーセットがマルチクローニングサイトを含む、項目51に記載のキット。
(72)上記プライマーセットのうち少なくとも1つがプロモーター配列を含み、上記プライマーセットの両方が制限部位を含む、項目51に記載のキット。
(73) C−2)上記増幅産物をクローニングするためのベクター、さらに含む、項目51に記載のキット。
(74) C−3)上記増幅産物に含まれる制限部位を認識し切断する制限酵素を含む、項目51に記載のキット。
(75)上記核酸増幅反応によって増幅された産物を鋳型としてRNAを生産する手段は、RNAポリメラーゼである、項目51に記載のキット。
(76) 上記RNAポリメラーゼは、上記プライマーセットに含まれる上記プロモーター配列を認識するRNAポリメラーゼである、項目51に記載のキット。
(77) 上記プロモーター配列がT7プロモーター、S6プロモーターまたはT3プロモーターであり、上記RNAポリメラーゼが上記プロモーターに対応してT7 RNAポリメラーゼ、S6 RNAポリメラーゼまたはT3 RNAポリメラーゼである、項目51に記載のキット。
(78) D−1)RNase活性のないDNaseをさらに備える、項目51に記載のキット。
(79) 上記RNase活性のないDNaseは、上記鋳型となった増幅産物であるDNAを除去するために用いられる、項目51に記載のキット。
(80) D−2)生産されたRNAを精製するための精製手段をさらに備える、項目51に記載のキット。
(81) 上記精製手段は、フェノール/クロロホルム抽出手段およびエタノール沈澱手段である、項目80に記載のキット。
(82) 上記除去手段は、RNaseである、項目51に記載のキット。
(83) 上記除去手段は、DNAと結合している一本鎖RNAのみを選択的に分解するRNaseである、項目51に記載のキット。
(84) 上記除去手段は、RNase Hである、項目51に記載のキット。
(85) 上記リンカー核酸結合鋳型核酸の配列のうち、上記所望の配列以外の配列と相補的な除去用プライマーをさらに包含する、項目51に記載のキット。
(86) 上記除去用プライマーは、上記所望の配列からなるRNAに直接連結されている配列に対して相補的な配列を少なくとも1つ含む、項目85に記載のキット。
(87) 上記除去用プライマーは、上記所望の配列からなるRNAに直接連結されている配列に対して相補的な配列を少なくとも1つ含み、上記相補的な配列は、上記RNA産物とのハイブリダイズ形成に充分な長さを含む、項目85に記載のキット。
(88) さらに、上記RNAポリメラーゼによって生じたオーバーハングを除去する手段を備える、項目51に記載のキット。
(89)機能を有するRNAをスクリーニングするための方法であって、
A)対象RNAを提供する工程;
B)B−1)上記所望の配列を有する鋳型核酸にリンカー核酸を結合させてリンカー核酸結合鋳型核酸を生産するライゲーション工程;
B−2)上記リンカー核酸結合鋳型核酸に基づいて核酸増幅鋳型を生産する核酸増幅鋳型生産工程;
B−3)上記核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を行って増幅産物を生産する増幅工程;
B−4)上記増幅産物をベクターに配置し、上記ベクターで宿主を形質転換する工程;
B−5)上記宿主を増幅させる増幅された宿主からベクターを入手する工程;
B−6)上記ベクターを鋳型として用いてRNAポリメラーゼを使用してRNA産物を生産するRNA増幅工程;および
B−7)上記RNA産物から所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産する調整工程、
を行って、対象RNAを増幅生産する工程、
C)上記対象RNAを試験細胞に感染させる工程;
D)上記試験細胞が所望の機能を発現した場合、上記発現が見出される試験細胞に含まれる対象RNAに対応する宿主をさらに培養して増幅させる工程;
E)必要に応じて、B−5〜B−7、CおよびDを繰り返し、単一コロニーを探索する工程、
F)上記単一コロニーに含まれるRNAの配列を決定する工程;
ここで、上記決定された配列と上記機能と関連付けて、機能を有するRNAが同定される、方法。
(90) G)上記RNAの発現パターン解析を行う工程、をさらに包含する、項目89に記載の方法。
(91)項目1〜4に記載のRNAまたは項目5〜88に記載の方法によって生産されたRNAの、上記RNAの機能を利用する分析または診断のための使用。
(92)所望の配列を含むRNAから所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産する方法であって、
a)所望の配列を含むRNA以外の配列に相補的な少なくとも1つのDNAプライマーと上記所望の配列を含むRNAとをハイブリダイズさせる工程;および
b)DNA−RNAの結合のみを認識して分解する工程、
を包含する、方法。
(93)上記DNAプライマーは、5’末端に少なくとも1つおよび3’末端に少なくとも1つ含む、項目92に記載の方法。
(94)所望の配列を含むRNAから所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産するためのキットであって、
a)所望の配列を含むRNA以外の配列に相補的な少なくとも1つのDNAプライマー;および
b)DNA−RNAの結合のみを認識して分解する手段、
を備える、キット。
(95)上記DNAプライマーは、5’末端に少なくとも1つおよび3’末端に少なくとも1つ含む、項目94に記載のキット。
本「後藤−浅島法」により、これまで実現されていなかったmatureな低分子量miRNAを効率よく作成することができる。その結果、生物学的ならびに医学的現象が現れた特定のRNAソースから、任意のmatureな低分子量miRNAなどの任意のRNAを、効率よく迅速に作成することができる。具体的には、
1.miRNAの生命現象との関わりにおける機能の理解が可能になる。
2.miRNAの機能不全や過剰機能発現に起因する疾病の発見や診断、そして、治療法の開発が可能になる。
また、本発明の「後藤−浅島法」は、miRNAだけでなく、tRNA等の他のRNAの作成にも適用でき、
3.広く一般に低分子量RNAの生命現象との関わりにおける機能の理解が可能になる。
4.広く一般に低分子量RNAの機能不全や過剰機能発現に起因する疾病の発見や診断、そして、治療法の開発が可能になる。
さらに、本「後藤−浅島法」は、低分子量RNA以外のRNAに対しても、5’、3’両末端部分に余剰配列を残さないので、機能解析の時に細胞内での最終的な形状(matureな形)が必要なRNAの作成の全てに適用でき、そのように作成された
5.matureな形のRNAの生命現象との関わりにおける機能の理解が可能になる。
6.matureな形のRNAの機能不全や過剰機能発現に起因する疾病の発見や診断、そして、治療法の開発が可能になる。
以下に本発明を、必要に応じて、添付の図面を参照して例示の実施例により記載する。本明細書の全体にわたり、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。従って、単数形の表現は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
(用語)
本明細書において使用される用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸分子」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、増幅反応を阻害しない限り「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。
本明細書において、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換された誘導体オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換された誘導体オリゴヌクレオチド、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換された誘導体オリゴヌクレオチドなどが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。タンパク質などをコードする遺伝子は、通常、このポリヌクレオチド形態をとる。
本明細書で用いる「ヌクレオチド」という用語は、糖部分(五炭糖)、リン酸基および含窒素複素環式塩基からなるDNAまたはRNAの単量体単位を指す。塩基は配糖体炭 素(五炭糖の1’炭素)を介して糖部分と結合しており、この塩基と糖の組み合わせがヌクレオシドである。ヌクレオシドが五炭糖の3’位または5’位に結合したリン酸基を含む場合、これはヌクレオチドと呼ばれる。機能的に結合したヌクレオチドの配列を、本明細書では一般に「ヌクレオチド配列」およびそれらの文法的等価物として言及され、これは左から右の方向が5’末端から3’末端への通常の向きであるような定則によって表される。
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「ヌクレオチド誘導体」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのようなヌクレオチド誘導体およびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのようなヌクレオチド誘導体およびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法では、工程に応じてこれらの誘導体またはアナログを用いることができるが、最終産物は通常RNAである。
伸長反応に使用される場合、ヌクレオチドは、三リン酸の形態を採ることができる。ヌクレオシド三リン酸としては、RNA構成成分であるアデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン三リン酸(GTP)、シチジン三リン酸(CTP)、チミジン三リン酸(TTP)、ウリジン三リン酸(UTP)、イノシン三リン酸(ITP)などが挙げられるがそれらに限定されない。特に言及しない場合、本発明において、「ヌクレオチド」と「ヌクレオチド三リン酸」とは互換可能に使用されることが理解される。
本明細書において「mature」なRNAとは、「余分な配列を含むRNAからその余分な配列だけを酵素反応を用いて取り除き、目的の配列だけになったこと」をいう。例えば、miRNAが対象となるのであれば、対象となるmiRNAのみの配列を有することをいう。
本明細書においてヌクレオチドは、「標識」され得る。そのような標識としては、例えば、蛍光、放射能、燐光、ビオチン、ジゴキシゲニン(DIG)、酵素および化学発光を利用した任意の標識を挙げることができるがそれらに限定されない。
本明細書において「標識」とは、目的となる分子または物質を他から識別するための存在(たとえば、物質、エネルギー、電磁波など)をいう。そのような標識方法としては、RI(ラジオアイソトープ)法、蛍光法、ビオチン法、化学発光法等を挙げることができる。このような標識を有するRNAなどのヌクレオチドもまた、本明細書において等価であると解され得る。
本明細書において「断片」または「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15,20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、ポリペプチドおよびポリヌクレオチドの長さは、上述のようにそれぞれアミノ酸または核酸の個数で表すことができるが、上述の個数は絶対的なものではなく、同じ機能を有する限り、上限または加減としての上述の個数は、その個数の上下数個(または例えば上下10%)のものも含むことが意図される。そのような意図を表現するために、本明細書では、個数の前に「約」を付けて表現することがある。しかし、本明細書では、「約」のあるなしはその数値の解釈に影響を与えないことが理解されるべきである。
ヌクレオチドは、一般に認知された1文字コードにより言及され得る。アミノ酸もまた、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。
その文字コードは以下のとおりである。
アミノ酸
3文字記号 1文字記号 意味
Ala A アラニン
Cys C システイン
Asp D アスパラギン酸
Glu E グルタミン酸
Phe F フェニルアラニン
Gly G グリシン
His H ヒスチジン
Ile I イソロイシン
Lys K リジン
Leu L ロイシン
Met M メチオニン
Asn N アスパラギン
Pro P プロリン
Gln Q グルタミン
Arg R アルギニン
Ser S セリン
Thr T トレオニン
Val V バリン
Trp W トリプトファン
Tyr Y チロシン
Asx アスパラギンまたはアスパラギン酸
Glx グルタミンまたはグルタミン酸
Xaa 不明または他のアミノ酸。
塩基
記号 意味
a アデニン
g グアニン
c シトシン
t チミン
u ウラシル
r グアニンまたはアデニンプリン
y チミン/ウラシルまたはシトシンピリミジン
m アデニンまたはシトシンアミノ基
k グアニンまたはチミン/ウラシルケト基
s グアニンまたはシトシン
w アデニンまたはチミン/ウラシル
b グアニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル
d アデニンまたはグアニンまたはチミン/ウラシル
h アデニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル
v アデニンまたはグアニンまたはシトシン
n アデニンまたはグアニンまたはシトシンまたはチミン/ウラシル、不明、または他の塩基。
本明細書では、アミノ酸配列および塩基配列の類似性、同一性および相同性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.9(2004.5.12 発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメーターの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。
本明細書において「増幅産物」または「PCR産物」とは、核酸増幅反応によって得られる産物をいい、通常、核酸分子である。ある核酸分子を増幅して得られる増幅産物は、その核酸分子と実質的に同一の配列を含む。増幅産物は、二本鎖であることが多く、本明細書において、二本鎖の形態の場合特に二本鎖増幅産物ともいう。また、2以上の核酸分子が連結された増幅産物をいう場合、「連結核酸増幅産物」ともいう。
本明細書において「鋳型核酸」とは、反応のもと(鋳型)となるべく、所望の配列を有する核酸をいう。核酸がRNAの場合、「鋳型核酸」は、「鋳型RNA」と呼ばれ得る。
本明細書において「リンカー核酸」とは、本発明において、第1の核酸(例えば、鋳型核酸)と第二の核酸(例えば、プロモーター配列の核酸)とを連結させる目的で使用される核酸をいう。好ましい実施形態では、リンカー核酸は、特定の制限酵素(エンドヌクレアーゼ)の認識する部位(制限酵素部位)を含む。リンカー核酸は、制限酵素部位を含んでいても良く、含んでいなくても良い。
本明細書において「リンカー核酸結合鋳型核酸」とは、リンカー核酸が結合した鋳型核酸をいう。リンカー核酸結合鋳型核酸は、鋳型核酸にリンカー核酸を連結させることによって生産することができる。あるいは、そのような配列を有する核酸を最初から合成することによってもこのようなリンカー核酸結合鋳型核酸が提供される。1つの実施形態では、鋳型核酸は、代表的にはRNAであり、リンカー核酸は代表的にはDNAであるが、そのような場合においては、リンカー核酸連結鋳型核酸は、DNA−RNAのキメラ核酸であり得る。
本明細書において「ライゲーション」または「連結」とは、複数の核酸分子を相互に結合させる行為または現象をいう。ライゲーションは、通常「リガーゼ」という酵素を媒介にして実現される。
本明細書において「リガーゼ」とは、核酸の生合成の場合のポリヌクレオチド接続酵素をいい、通常、ヌクレオシド三リン酸の関与を必要とし,ヌクレオシド三リン酸は二リン酸または一リン酸となる。核酸がRNAの場合、RNAリガーゼと呼び、核酸がDNAの場合、DNAリガーゼと呼ぶ。RNAとDNAとをライゲーションさせるときは、RNAとDNAとの両方に反応するリガーゼを用いることが好ましいがこれに限定されない。RNAとDNAとの両方に反応するリガーゼの例としては、例えば、T4 RNAリガーゼ、ThermoPhage Single − Stranded DNA Ligase(フナコシ)などを挙げることができるがそれらに限定されない。
本明細書において例示されるT4 RNAリガーゼは、ATPに依存して一本鎖RNAまたはDNAの分子間および分子内の連結を行い、1本鎖RNAまたはDNAの5’末端のリン酸基と3’末端の水酸基を結合する(Silber,R.,Malathi,B.G.and Hurwitz,J.(1972)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 69,3009)。同様に、一本鎖RNAに[5’−32P]ヌクレオシド3’,5’−ビス(ホスフェート)を付加する反応も媒介することが知られている。
他の形態としては、例えば、リンカー核酸の連結末端(例えば、5’末端)にリン酸(例えば、アデニル化(rApp))を付加することによって結合を所望する部位のみの反応を促進させることが考えられる。リンカー核酸の連結末端にこのようにリン酸を付加することによってATP非存在下での反応を行うことができ、鋳型RNA同士の結合を防ぐことができる。
加えて、リンカー核酸の連結を所望しない末端(例えば、3’末端)を連結を起こしにくい基(例えば、ジデオキシ基(例えば、ddCなど);本明細書において「ライゲーション妨害基」という。)で改変させることによって、リンカー核酸同士の結合を防ぐことができる。そのようなライゲーション妨害基としては、例えば、ジデオキシヌクレオチド(ddT,ddA、ddC、ddGなど)等を挙げることができる。
RNAリガーゼは、ATPを利用して一本鎖核酸配列の5’末端をアデニル化する。次に、このように活性化されたアデニル化核酸(例えば、オリゴマー)を第二の配列の3’末端の−OHに連結する。ピロホスフェート結合を有するアデニル化核酸(例えば、アデニル化オリゴヌクレオチド)は、ATPの非存在下で本発明において代表的に利用されるT4 RNAリガーゼの基質となる(England,T.E.,Gumport,R.I.,and Uhlenbeck,O.C.Proc Natl Acad Sci USA,74:4839−42(1977))。Unrau,P.J.らの方法(Unrau,P.J.,and Bartel,D.P.Nature,395:260−63 (1998))を用いることによって、アデニル化核酸を大量に合成することができる。このような方法は、miRNAの構築に用いられてきた(Lau,N.C.,Lim,L.P.,Weinstein,E.G.,and Bartel,D.P.Science,294:858−62 (2001))。このような特殊なリンカー核酸としては、例えば、IDT社が販売するmiRNA Cloning Linkerを挙げることができるがそれに限定されない。このようなリンカー核酸は、予め製造され凍結乾燥状態で提供されることが通常であるが、その場で合成してもよい。凍結乾燥状態で提供される場合は、100μMなどの濃度で水または適切な緩衝液(例えば、10mM Tris pH 8.0,0.1mM EDTA)に再懸濁して使用し得る。
本明細書において「アニーリング」とは、二本鎖の核酸を変性して一本鎖にしたものを再び二本鎖にもどすことをいう。従って、核酸増幅反応では、アニーリングとハイブリダイズとは、同様の意味で用いることができる。例えば、DNAを加熱またはアルカリ処理などにより一本鎖に解離させた後、徐冷または中和すると再び二本鎖の状態にもどる。この現象をアニーリングといい、この性質を用いて核酸鎖間の塩基配列の相補性を調べることができる。ここでアニーリングする場合は、本発明の増幅方法において使用可能な程度の相補性を有すると判定することができる。
本明細書において、「特異的」とは、核酸配列について用いられる場合、ある核酸配列が、一般的な核酸配列よりも高いレベルで基準となる標準核酸配列と相互作用(例えば、ハイブリダイゼーション)することをいう。特異的な配列は、1つまたは複数存在し得る。また、ある特異的な配列存在するとき、それよりも特異性が高い配列が存在していてもよい。好ましくは特異的な配列は、ある部位においてのみ特異的に相互作用することをいう。
本明細書において、「ハイブリダイズする」とは、一定の条件下で、ある核酸分子と別の核酸分子とが特異的に相互作用してハイブリッドを形成することをいう。具体的には、核酸増幅反応において、目的となる核酸またはその等価物と、増幅手段に該当する核酸等価物とがハイブリッドを形成し、その後の増幅反応に続く工程をいう。本明細書において特に言及する場合は、ハイブリダイズは、「アニーリング」ともいう。増幅反応におけるハイブリダイズについては、PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications等を参照のこと。
本明細書において「ハイブリダイズ可能」な核酸またはポリヌクレオチドとは、上記ハイブリダイズ条件下で別の核酸またはポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができる核酸またはポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能な核酸として具体的には、配列表で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有する核酸、好ましくは80%以上の相同性を有する核酸、さらに好ましくは95%以上の相同性を有する核酸を挙げることができる。核酸配列の相同性は、たとえばAltschulら(J.Mol.Biol.215,403−410(1990))が開発したアルゴリズムを使用した検索プログラムBLASTを用いることにより、scoreで類似度が示される。
本明細書において「高度にストリンジェントな条件」は、核酸配列において高度の相補性を有するDNA鎖のハイブリダイゼーションを可能にし、そしてミスマッチを有意に有するDNAのハイブリダイゼーションを除外するように設計された条件をいう。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、主に、温度、イオン強度、および他の添加剤の条件によって決定される。このようなハイブリダイゼーションおよび洗浄に関する「高度にストリンジェントな条件」の例は、0.0015M 塩化ナトリウム、0.0015M クエン酸ナトリウム、65〜68℃などである。このような高度にストリンジェントな条件については、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory(Cold Spring Harbor,N,Y.1989)、同第3版(2001);およびAnderson et al.、Nucleic Acid ハイブリダイゼーション:A Practical approach、IV、IRL Press Limited(Oxford,England).Limited,Oxford,Englandを参照のこと。必要により、よりストリンジェントな条件(例えば、より高い温度、より低いイオン強度、他の添加物の存否など)を、使用してもよい。他の薬剤が、非特異的なハイブリダイゼーションおよび/またはバックグラウンドのハイブリダイゼーションを減少する目的で、ハイブリダイゼーション緩衝液および洗浄緩衝液に含まれ得る。そのような他の薬剤の例としては、ゼラチン、Triton−X100などであるが、他の適切な薬剤もまた、使用され得る。これらの添加物の濃度および型は、ハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーに実質的に影響を与えることなく変更され得る。ハイブリダイゼーション条件としては、通常、pH6.8〜7.4が挙げられるが;代表的なイオン強度条件において、ハイブリダイゼーションの速度は、ほとんどpH独立である。PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications等を参照のこと。一般的なハイブリダイゼーションについては、Anderson et al.,Nucleic Acid Hybridization:a Practical Approach、第4章、IRL Press Limited(Oxford,England)を参照のこと。
核酸の二本鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二本鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na+])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二本鎖の長さであり、[Na]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。なお、核酸増幅においては、ホルムアミドは核酸増幅においては、使用されないことが好ましい。従って、核酸増幅におけるハイブリダイゼーション条件の考慮は、上記一般式から当業者は、使用する増幅反応に応じて改変して用いることができる。
RNA、PNAなどを利用したときは、当業者は、そのヌクレオチドに適切な関係式を利用することができる。RNAについては、例えば、Freier S.M.(1993)Hybridization: Considerations affecting Antisense Drugs in Antisense Research and Applications,eds.Grooke S.T.and Lebleu B.CRC Press,Inc.,67−82を参照のこと。
当業者は、上述のような関係式を用いて、標識または検出などに適切な条件を見出すことができることが理解される。
ハイブリダイズする核酸分子は、相互に実質的に相補的または完全に相補的であることが多い。
本明細書において、「相補(的)」であるとは、核酸について言及するとき、核酸の塩基配列において,各塩基をワトソン−クリック結合で対になる塩基でおきかえた塩基配列(核酸)をいう。通常、AとT(U)と、およびCとGとが互いに相補的であるといわれる。
本明細書中で使用される場合、用語「相補的」または「実質的に相補的」とは、別の核酸分子に対して、特異的にハイブリダイズし得る、核酸配列を表す。相補的な核酸配列は、一方の配列をワトソンクリックの塩基対に基づき変換した配列が、他方の配列と比較して、好ましくは70%以上、80%以上、90%以上、95%、99%以上または100%の配列同一性を有し得る。ここで、この配列同一性が100%である場合、完全に相補的であるともいう。
本明細書中で使用される場合、用語「核酸」、「核酸分子」、「オリゴヌクレオチド」、「ポリヌクレオチド」は、特に言及する場合を除き交換可能に使用され、一連のヌクレオチドからなる高分子(重合体)を指す。本明細書中において、オリゴヌクレオチドは、特に言及しない限り、一本鎖オリゴヌクレオチドを指す。
本明細書において「核酸の分離」とは、ある核酸の集合を別の性質を有する核酸の集合から離すことをいう。そのような分離は、分子量、標識、親和性などを手がかりに行うことができる。分子量を手がかりに分離する場合は、電気泳動を行うことによって分離することができる。分子ふるいを用いても分子量による分離を行うことができる。
本発明では、標識の検出は、直接または間接的に行うことができる。直接行う場合は、例えば、放射能をガイガーカウンターなどで検出し、または蛍光を直接肉眼またはカメラなどで検出することができる。間接的に行う場合は、例えば、別に標識されたものをその標識に結合することによって、その別の標識を検出し、または標識を活性化する因子を付与してその活性化により標識(ビオチン、ストレプトアビジンなどの使用)を検出することなどにより検出を行うことが可能である。
本明細書において使用される「オートラジオグラフ」または「オートラジオグラフィー」とは、X線写真フィルムあるいは乾板を使って,生体内における放射性物質(トレーサー)の取込みを観察し、生体内物質の分布、移動、代謝を細胞化学、組織化学的に調べる方法をいう。オートラジオグラフには、マクロオートラジオグラフ法(可視オートラジオグラフ法)・ミクロオートラジオグラフ法(光顕オートラジオグラフ法)・ウルトラミクロオートラジオグラフ法(電顕オートラジオグラフ法)などが挙げられ、本発明においては、その目的に応じて任意に選択して使用することができる。
本明細書において、プライマー対として使用される核酸分子は、「順方向一本鎖核酸分子」と「逆方向一本鎖核酸分子」とから構成される。通常、ある核酸分子を増幅するために、順方向は、一本鎖またはセンス鎖の5’末端から3’末端向きの方向をいい、逆方向とは、その逆をいう。
本明細書における「プライマー」とは、高分子合成酵素反応において、合成される高分子化合物の反応の開始に必要な物質またはRNaseの分解を促進する物質をいう。核酸分子の合成反応では、合成されるべき高分子化合物の一部の配列に相補的な核酸分子(例えば、DNAまたはRNAなど)が用いられ得る。プライマーの長さは、通常100塩基以下、より好ましくは8塩基〜80塩基、さらにより好ましくは10塩基〜40塩基であるが、これらに限定されない。プライマーは、制限酵素部位、マルチクローニングサイト(様々な制限酵素に認識される配列が存在する部位であってもよい。これを適当な制限酵素で切断し、外来のDNA配列を挿入する。)と呼ばれる汎用の配列を有していても良い。そのようなマルチクローニングサイトは任意の物を使用することができる。
遺伝子工学分野において通常プライマーとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と特異的なハイブリダイゼーション条件(通常核酸増幅条件)で標的となる核酸分子とハイブリダイズする、好ましくは実質的に相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましく10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは11の連続するヌクレオチド長の、12の連続するヌクレオチド長の、13の連続するヌクレオチド長の、14の連続するヌクレオチド長の、15の連続するヌクレオチド長の、16の連続するヌクレオチド長の、17の連続するヌクレオチド長の、18の連続するヌクレオチド長の、19の連続するヌクレオチド長の、20の連続するヌクレオチド長の、25の連続するヌクレオチド長の、30の連続するヌクレオチド長の、40の連続するヌクレオチド長の、50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、90%相同な、95%相同な核酸配列が含まれる。プライマーとして適切な配列は、合成(増幅)が意図される配列の性質によって変動し得るが、当業者は、意図される配列に応じて適宜プライマーを設計することができる。そのようなプライマーの設計は当該分野において周知であり、手動でおこなってもよくコンピュータプログラム(例えば、LASERGENE,PrimerSelect,DNAStar)を用いて行ってもよい。このようなプライマーを用いて本発明に用いる増幅産物を作製することができる。
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、ホルモン、サイトカインの情報伝達機能など)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
本明細書において「鋳型」とは、核酸増幅反応において、増幅される対象となる配列を含む核酸分子またはその等価物をいう。本明細書では、核酸増幅反応の鋳型を「核酸増幅反応鋳型」と呼び、これは例えば、逆転写反応によって生産することができる。
RNA(例えば、miRNA)へのリンカー核酸結合の代表的な方法としては、例えば、Smartプロトコル(U.S. Patent Nos.5,962,271& 5,962,272)、Nelsonプロトコルなどを挙げることができる。
ここで、Nelsonプロトコルを説明する。
(第I工程)3’リンカー核酸をRNAに連結する。出発材料としてのRNAは、どのようなものでもよく、例えば、総RNAを用いてもよく、あるいは、総RNAから調製されたサイズ分画したRNAを用いて行うこともでき、ここでは、適切なサイズマーカーを用いてゲル精製してもよい。
アデニル化オリゴヌクレオチド(「modban」(IDT DNA Technologies,idtdna.comから入手可能)等)を用いてATPをライゲーション工程において不要とさせる。これにより、RNAの環化を防ぐことができる。
一例として20μlのライゲーション反応を例示する。
13μl 5−50μgの総RNA水溶液(または5−50μgの総RNAから精製した約22ntのRNA)
2μl 10×T4 RNAリガーゼ緩衝液(500 mM Tris−HCl pH 7.5,100 mM MgCl,100 mM DTT;10mM ATP,600μg/ml BSA;製造業者から供給)
2μl DMSO
1μl 100μM RNA3’リンカー核酸オリゴヌクレオチド(例えば、“modban”、AMP-5’p-5’p/CTGTAGGCACCATCAATジデオキシC-3’(配列番号1))
2μl T4 RNAリガーゼ(20ユニット,Amersham)。
(工程)37℃で1時間インキュベートしてライゲーションを進行させる。ライゲーションは、20μlの変性ゲルサンプル緩衝液(例えば、95%ホルムアルデヒド、20mM EDTA)を加えることによって停止させる。停止したライゲーション反応物は、−20℃で保存することができ、あるいは、ゲル電気泳動で即座に処理しても良い。この反応物はまた、フェノールで抽出し、エタノールで沈降させ、ついで再度ゲル電気泳動の前にサンプル緩衝液中に再溶解する。
(第II工程)RNA−3’リンカー核酸ライゲーション生成物のゲル精製
1.4cm幅、1.5mm厚で8cm長の12.5%アクリルアミド、8M尿素ゲルを、1cm幅のレーンを有するコームを用いて調製する(TheBio-RadProtean II minigel systemまたはそれと同等のものが推奨されるがこれに限定されない。)。以下を混合する:
7.5 ml Sequagel Concentrate (National Diagnostics)
6 ml Sequagel Diluent
1.5 ml Sequagel Buffer
次いで、1分にわたり減圧下において脱気する。ついで、以下を加える:
150 μl 10% 過硫酸アンモニウム
3.5 μl TEMED
これらを緩やかに混合し、そしてゲルに注ぐ。
2.サンプルを65℃に5分加熱し、チューブを氷上で冷却し、そしてゲルにロードする。
マーカーレーンには15μgの40マー一本鎖DNAオリゴヌクレオチドを含ませる。電気泳動を18ボルト/cm(8cmのゲルでは150ボルト)で行い、最速の色素がゲルの端部に到達するまで続ける。
3.40ヌクレオチドマーカーをUVシャドウイングにより可視化し、そしてその位置をマークする。これは、ライゲーション生成物の予測位置(18ヌクレオチドのModban+約22小RNA)である。連結されたRNA(40nt)をアクリルアミドのスライスから以下のように溶出させる(が、ライゲーション生成物の標識されたバンドの上下3−4mmのゲルを余分に含める。)。
4.ゲルスライスを、きれいな1.5mlの遠心分離管にいれ、そして1000μlのプラスチックピペットの先端の小さな末端などを用いてブンゼンバーナーまたはアルコールバーナーの炎中にその小さな先端を通過させることなどによって均質化する。ゲルスライスは、非常に小さな粒子にまで粉砕するべきである。
5.20mM Tris(pH 8.0) 1 mM EDTA 0.4M 酢酸アンモニウム 0.5% SDSを600μl(少なくともゲルスライスの4倍量の容積)を加え、管に蓋をしてきつく閉め、そしてはげしく室温で少なくとも2時間攪拌する(一晩)。
6.ゲルスライスをNanosep100フィルターなどのアクリルアミドフラグメントをトラップするのに適したフィルター中に通し均質化する。
7.溶出物をプールし、そして1μlの20μg/mlのグリコーゲン、3体積分の100%エタノールを加える。これを−20℃まで10分間冷却し、次いで冷蔵型微小遠心分離器中で遠心分離を4℃で10分間行い、上清を捨てる。ペレットを70%エタノールで3回完全に洗浄し、ペレットを乾燥させ(ほぼ完成させた状態でよい)、そして7μlの水に再溶解し、−80℃で保存する。あるいは、必要に応じて以下の工程を行う。
8.100μlの水中にこのペレットを溶かし、30μlの酢酸ナトリウム、300μlエタノールを加える。これを、冷蔵型微小遠心分離機中で10分間遠心分離し、ペレットを再度洗浄し、これをほぼ乾燥の状態にまでさせ、そして7μlの水に再溶解する。これを−80℃で保存する。
(第III工程)(5’リンカー核酸のRNAライゲーション:Nelsonプロトコル)
この工程は、Nelson Lauの方法に従う。ここでは、ダイサー生成物が5’一リン酸とともに選択されるように設計された。
1.20μlライゲーション反応物を準備する。
11μl 3’ライゲーション生成物 (上記第2節)
2μl 10X T4 RNA ライゲーション緩衝液
2μl 60μM ATP
2μl DMSO
1μl 100μM RNA 5’リンカー核酸オリゴヌクレオチド
“Nelsonリンカー核酸” 5’ATCGTrArGrGrCrArCrCrUrGrArArA 3’ (配列番号2)。
2μl T4 RNAリガーゼ (20ユニット,Amersham)。
これを、37℃で1時間インキュベートする
これに、100μlの10mM Tris(pH8.0)1mM EDTA,0.4M 酢酸アンモニウムを加え、フェノール抽出を行い、クロロホルム抽出を行う。10μgのグリコーゲンを加え、3容積(300μl)の100%エタノールを加える。−20℃に冷却し、12,000×gで遠心分離を20分間、4℃で行う。
ペレットを70%エタノールで洗浄し、ペレットを乾燥させ、7μlのHOに溶解させる。
(第IV工程:逆転写反応)
逆核酸増幅鋳型生産工程には2種類代表的に選択肢がある。1つ目は、スマート型(Clontech-style “SMART” protocol)を用いて3’リンカー核酸(第II工程)のみを含むRNAに使用することである。この場合において、5’一リン酸は、RNAをクローニングするのには必要ない。他の選択肢としては、Nelson型のものがあり、これは、3’リンカー核酸と5’リンカー核酸とを両方RNAに用いるものである(第III工程)。この段階以降は、2つの方法では、逆転写反応において用いられるプライマーが違うのみである(下記参照)。
1.以下のアニール工程を設定する:
6.3 μl RNA ライゲーション生成物(上記第II工程および第III工程)
4.2 μl オリゴヌクレオチド混合物:
SMARTプロトコル用(第II工程):
5μM Smartban5’-ATCGTAGGCACCTGAAAGGG-3’(配列番号3)
5μM BanOne: 5’-ATTGATGGTGCCTACAG-3’(配列番号4)。
Nelsonプロトコル用(第III工程):
5μM BanOne: 5’-ATTGATGGTGCCTACAG-3’ (配列番号4)
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合計 10.5 μl
2分間72℃インキュベーションし、
1分間20℃で遠心分離し、
2分間氷上で冷却する。
2.以下を加えて合計18.9μlとする。
8.4μlの「RT Mix」
RT Mixのストック:30 μl 5×第一鎖緩衝液
15 μl 20 mM DTT
各15 μl dNTPs (各10mM)。
3.サンプルを2つのチューブに分割し、各々9μlずつとする。
+RT:1μl(200U)のRNase H RT(Invitrogen Superscript(R))
−RT:1μlの水
を加える。
4.これを42℃で1時間インキュベートする。
(第V工程)cDNAのPCR増幅
1.以下の100μlのPCR反応を準備する。
2μl 第一鎖cDNAまたは「−RTコントロール」(上記において調製)。
66μl 水
10μl 10×PCR緩衝液
10μl dNTP Mix(各々2mM)
6μl 25mM MgCl
2μl 50μM 5’PCRプライマーBanTwo: 5’-ATCGTAGGCACCTGAAA-3’(配列番号6)
2μl 50μM 3’PCRプライマーBanOne: 5’-ATTGATGGTGCCTACAG-3’(配列番号4)
2μl 2.5U/ml Taqポリメラーゼ
内容物をチューブを軽くたたきながらゆっくりと混合する。
軽く遠心分離をして、チューブの底に内容物を収集する。
必要に応じてミネラルオイルを2−3滴添加する(好ましくは、熱いボンネットおよび対応するチューブを備えるサーモサイクラーを用いる)。チューブに蓋をし、これを予熱した(95℃)サーマルサイクラーに配置する。
2.以下のPCRプログラムを実行する。
第1工程:96℃ 1分
第2工程:96℃ 10秒
第3工程:50℃ 60秒
第4工程:72℃ 20秒
第5工程:第2工程まで26サイクル行う。
第6工程:72℃ 3分
第7工程:10℃で使用時まで。
3.PCR反応物を0.4M塩の存在下フェノール抽出およびクロロホルム抽出し、そして3容積のエタノールで沈降させる。
4.室温で20分間12,000rpmですぐに遠心分離する。
5.上清を捨て、ペレットを70%エタノールで洗い、廃液を捨てるが、完全にペレットを乾燥させずに40μlのTE緩衝液40μl中に再懸濁する。
(第VI工程)cDNAのゲル精製
この工程は、任意であり、PCR産物が単一のインサートクローンとして直接クローニングされ得る(第VII工程)か、またはban−1を用いて消化して、コンカタマー化させ(第VIII工程)てもよい。ゲル精製は、いかなるプライマーダイマーPCR産物も過剰の長さの生成物をも除去するという利点がある。
1.10cm長の2%低融点(65℃)アガロースゲル(1X TAE ,0.5 μg/ml エチジウムブロミド)を調製する。
2.ゲルにcDNAをロードし、10μlの(1μgの)HaeIII消化したPhi−X DNAサイズマーカーを隣にロードし、そして「−RTコントロール」をその隣にロードする。45℃で80ボルトで電気泳動する。
低融点ゲルが高電流で融解することを避けるために、電気泳動の電圧は、80ボルトに制限する。低融点アガロースからDNAを抽出する際には、TBEゲルランニング緩衝液ではなくではなくTAE緩衝液を使用し、DNAのエタノール沈澱の間の硼化物沈澱の可能性を回避する。
3.ゲル中のDNAフラグメントを、長波長UVソースを用いた照明下で暗室で観察する。PCR産物の位置にマークし(約70nt)、これをきれいなスカルペルで切除する。
4.DNAバンドをレーザー刃またはスカルペルで切り出し、ゲルスライスを予め秤量した1.5ml反応チューブに移す。ゲルスライスが250mgより重い場合、アガロースバンドを2つのチューブに分割する。少なくとも1容積(v/w)の0.4M NaClを加えて、最終容量を500μlとする。チューブを70℃で10分間インキュベートしてゲルスライスを融解させ、これに500μlの70℃で予熱し緩衝化した水飽和フェノール(pH7.8)を加える。この溶液を激しくボルテックスし、即座に室温になじませた5分間にわたり卓上型遠心分離にて最高速度で相を分離させる。アガロースは、インターフェース中に蓄積するはずである。アガロースの上の相を収集し、水相をもう一度65℃のフェノールで抽出する。
6.400μlの溶離物について、20μlのグリコーゲン、1mlのエタノールを加える。−20℃に少なくとも1時間冷却し、そして遠心分離により沈降物を回収する。ペレットを70%エタノールで洗浄し、そして30−50μlのTE緩衝液中に溶解する。ここでは、ペレットを完全に乾燥させないことが好ましい。なぜなら、DNAが変性するからである。また、配列の異種集団であるから、相補鎖は適切に再アニールしないかもしれないからである。ペレットを水に再懸濁するのではなく、同じ理由で緩衝液中に再懸濁する。
(第VII工程:単一インサートcDNAのクローニング)
配列データを得るための最も迅速な方法の一つは、PCR生成物を直接クローニングすることである。しかし、ほんの少しのRNA配列が各々のクローンについて得られることから、これは、コンカタマーcDNAの配列決定(第X工程)に比べてあまり経済的とはいえない。しばしば、小さな単一インサートクローンのライブラリーを作製し、これらのうち数十程度の配列を決定し、ライブラリーの品質を評価して、その後、コンカタマー化工程に進むことが好ましい。
1.例えば、Invitrogen TOPOクローニングキットを製造業者の指示書に基づいて用いてcDNAをクローニングする。標準的な方法を用いて配列決定を行う。ここでは、リンカーオリゴヌクレオチド配列は、以下のように元のRNA配列を迷い無く確立することに留意。
5’-ATCGTAGGCACCTGAAAGGG-(RNA 5’-to-3’)-CTGTAGGCACCATCAATC- 3’(配列番号8)
SMARTban cDNA insert chiban
(第VIII工程)コンカタマーcDNAのクローニング
このアプローチに関しては、cDNAをできるだけ多く用意して実験することが重要である。これは、400−500μlのPCR反応(第VII工程)を設定し、生成物をプールすることによって達成され得る。
1.各々のPCR反応物100μlについて、PCR生成物を50μlの1×BanI緩衝液中に溶解する。3μl(消化していないサンプル)を取り出して、後のゲル分析に使用する。
DNA変性を避けるために、ペレットを乾燥させてはならない。同様の理由でペレットは水ではなく、緩衝液中に溶解する。
2.3μlのBanIエンドヌクレアーゼを加え、そして37℃で少なくとも3時間にわたりインキュベートする。制限消化が完了したかを、3μlの消化サンプルおよび3μlの消化していないサンプルを2%の標準的なアガロースゲル中で上記のように流すことによって確認する。
3.5μlの5M NaClを加え、次いで1回のフェノール/クロロホルム抽出およ9び1回のクロロホルム抽出を行うことによって反応を停止させる。3容量の無水エタノールを加え、そして1時間にわたり氷上で員キュベーションすることによってDNAを沈降させる。
4.ban−1で消化したDNAペレットを収集し、70%エタノールで洗浄し、そしてペレットを10μlの2×NEB Quick−Ligation緩衝液中に溶解し、T4 Quick DNA Ligaseに使用する。
5.3μlの50μM banOneプライマーおよび3μlの50μM banTwoプライマーを加え、そして3μlの水も加える。これを65℃で2分間インキュベートし、室温に冷却する。
この工程は、コンカタマー化工程において12bpのBanI消化フラグメントが再連結することを防ぐ意味で重要である。65℃で、長いDNAではなく12bpフラグメントを変性させ、そして冷却して過剰なPCRプライマーに対して競合的な様式でハイブリダイズする。12bpBanI消化したフラグメントの再連結が存在した場合、コンカタマー化工程は機能しない。
6.1μlのT4 Quick DNAリガーゼを加え、22℃で5分間インキュベートする。2μlの反応物を取り出して、2%のアガロースゲルにおいてコンカタマー化が完了しているかどうかをチェックする。そして、連結物を−20℃で凍結してプレップゲルで分画する。ここでは、インキュベーション時間が5分を超えると、組み換えプラスミドでの形質転換効率をアッセイした場合の良好な連結生成物が減少するようである。
7.2%の低融点アガロースゲル上で連結物を直接ロードし、電気泳動し、600−1000bpの範囲の物質を切り出し、そしてDNAをアガロースから熱フェノール抽出およびエタノール沈澱により精製する(IV工程参照)。通常のアガロースおよび標準的なゲル抽出キットを用いて(例えば、Qiagenのキット)実施することもできる。
(第IX工程)Tベクターライゲーションのためのコンカタマーの末端のテーリング
ここでは、充分な物質量が確保されていれば即座にコンカタマーをテーリングおよびクローニングすることができる。コンカタマーが充分量確保されていない場合、精製されたコンカタマーをBanOneおよびBanTwoを用いて増幅させることができる。そして、600−1000bpのバンドを再度精製する。このように増幅された物質を直接クローニングできる。
1.DNAペレットを収集する(第IIX工程ステップ7)。ペレットを15μlのPCRミックス(1×dNTP、1×PCR緩衝液および0.15μlのTaqポリメラーゼを含む)中に溶解する。
2.反応混合物を72℃で30分間インキュベートして酵素による3’テーリングを行う。
3.必要に応じて、2%アガロースゲル上で3μlのサンプルを分析することによってコンカタマーの収率をチェックする。
4.TOPO TAクローニングを製造業者の記載するように実施する(Invitrogen,pCR2.1-TOPOベクター有り).
このようにして種々のNelson工程が実施される。
SmartTM protocolはRT−PCRにおいて使用される方法であり、逆転写反応に引き続きdCを転写産物に付加する。その後3’末端にGGGを含有するプライマーをPCR時点で上流プライマーとして使用する方法である。米国特許第5,962,271号および同5,962,272号を参照。具体的には以下の通りである。
ポリARNAを鋳型にしてCDSプライマーを用いて第1鎖の合成を逆転写酵素(RT)にて行う。この際、3’末端にGGGを有するプライマーを上流プライマーとして使用する。合成後、逆転者酵素によりdCがテーリングされる。この後、鋳型をスイッチし、逆転写酵素によって伸長する。次にcDNAをLD PCRによりPCRプライマーを用いて増幅すると二本鎖cDNAが生産される。詳しくは、Clonetechから入手されるSuperSMART PCR cDNA Synthesis Kitなどに添付されるマニュアルを参照。これらのキットをもちいてSmart protocolを使用することができる。
本明細書において「制限酵素部位」または「制限部位」とは、制限酵素が切断することができる配列を言う。そのような制限部位は、制限酵素が一旦与えられたならば、当業者はその制限酵素に対する配列を認識できる。本明細書において使用される代表的な制限酵素部位は、例えば、以下の通りである。
6base cutterとしてEcoRI(GAATTC認識)、HindIII(AAGCTT認識)など
8base cutterとしてNotI(GCGGCCGC認識)、PmeI(GTTTAAAC認識)など。
本明細書において「マルチクローニングサイト」とは、種々の制限酵素に認識される配列が存在する部位をいう。これを適切な制限酵素で切断し、外来のDNA配列を挿入することができる。
本明細書において使用される核酸増幅法は、核酸分子を増幅させることができる限り、任意の方法を利用することができ、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、gap LCR、鎖置換増幅(strand displacement amplification;SDA)、Qβレプリカーゼ増幅、転写増幅システム(TAS)、自己支持配列複製システム(self−sustained sequence replication system;3SR);核酸配列ベース増幅(NASBA);転写媒介増幅(TMA)、等温条件下キメラプライマー開始核酸増幅(ICAN;Isothermally chimeric primer used amplification of nucleic acid)およびループ媒介性等温増幅(LAMP)などを挙げることができる。
「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)」とは、DNA 2 本鎖の解離,オリゴヌクレオチドとのアニーリング (annealing)、プライマーおよびDNA ポリメラーゼを利用しての相補鎖合成の3反応を繰り返すことにより増幅が起こる増幅反応をいう。その具体的な例は、本明細書において実施例に例示されている。最もよく使用される核酸増幅技術である。SaikiR.K.et al.(1985),Science,vol.230,1350-1354;Saiki R.K. et al.(1988),Science,vol.239,487-491;US4,683,202、US4,683,195、US4,965,188を参照。PCR反応において、一本鎖プライマー(通常12から24ヌクレオチド鎖長を有するオリゴヌクレオチド)は、相補的な一本鎖DNA配列とアニールする。れらのプライマーは、二本鎖DNAを得るためにDNAポリメラーゼとデオキシリボヌクレオシド三リン酸塩(dNTP、すなわちdATP、dCTP、dGTPおよびdTTP)の存在下で連続的に伸長される。その二本鎖DNAは、加熱することによって一本鎖に分離される。その温度はプライマーアニーリングの新しい工程を可能にするように十分に減少される。これらプライマーは再度二本鎖DNAに伸長される。一本鎖DNAのほとんどの各分子が増幅の各回で二本鎖DNAに形質転換され、次回の増幅のための鋳型として再度使用される二つの一本鎖DNAに分割されるように反応条件が適合されるので、上記の工程を繰り返すことにより、開始DNAの指数関数的な増幅が可能になる。
リガーゼ連鎖反応(LCR)とは、リガーゼを用いた核酸増幅反応であり、標的DNAに相補的な隣接する30nt長のプローブ4個を耐熱性DNAリガーゼの存在した、温度サイクルにかけると、標的DNA依存的に隣接するプローブ同士の連結反応が繰り返し起こり、連結プローブが指数関数的に増加する。リガーゼ連鎖反応(ligasechainreaction:LCR)法は、耐熱性のDNAリガーゼを用いて温度サイクリング反応(熱処理と冷却の繰り返し反応)を行うことにより標的遺伝子配列を増幅、検出する方法である。本法では、熱処理により解離したDNAの二重らせんの双方にそれぞれに冷却して結合する2種類の隣りあった遺伝子断片、計4種類の遺伝子断片を用いて反応を行う。具体的には、2本鎖DNAを94−99℃で熱処理して、それぞれを1本鎖に解離させる。続く50−70℃での冷却操作により、1本鎖に分離した標的DNAに2種類の隣りあった遺伝子断片が結合する。さらに、正常な配列であった場合、耐熱性DNAリガーゼによって隣り合う遺伝子断片が連結するが、1塩基でも異常があった場合は連結しない。この一連の反応を繰り返すことによって、正常DNA配列の場合、遺伝子断片の連結産物が指数関数的に増幅されるが、異常DNA配列は増幅されない。Landegren U. etal.(1988),Science,vol.241,1077-1080;Barany F.(1991),Proc. Natl. Acad.Sci.USA,vol.88,189-193;特表平5−508764、特開2001−269187を参照。
gap LCRとは、リガーゼを用いる核酸増幅の一つであり、連結末端に数塩基のギャップを導入、プローブ同士の平滑末端連結による偽陽性を防止、結合したプローブ間のギャップをDNAポリメラーゼで埋めリガーゼで連結する。MarshallR.L.et al.(1994),PCR Methods Appl.,vol.4,80-84;特許3330599号を参照。
鎖置換増幅(strand displacement amplification;SDA)とは、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を欠くDNAポリメラーゼ,制限酵素を用いた核酸増幅反応であり、・制限酵素による一本鎖ニックによりDNAポリメラーゼにより伸長しうるプライマーが生じる、置換されたDNA 鎖が次の複製の鋳型として機能する反応である。HincII認識部位をもったターゲットの複製とSDA反応増幅サイクルの2段階からなっている。SDA法は単一温度の下で核酸の増幅を図るので、反応系を高温にさらす必要がなく、同時に複数のターゲットを増幅できることから自動化が容易である。SDA法は、検出対象となる病原細菌のDNAに制限酵素で切れ目を入れ、切れ目をもつDNA断片を順番に置換していくDNAポリメラーゼの作用を用いてDNAを増幅する技術であり、この技術は米国BectonDickinson(BD社)によって遺伝子を増幅する方法として開発された。WalkerG.T. et al.(1992),Proc. Natl. Acad.Sci. USA,vol.89,392-396;Walker G.T. etal.(1992),Nucleic Acids Res.,vol.20,1691-1696;特公平7−114718を参照。
Qβレプリカーゼ増幅(Qβ replicase amplification)とは、RNA指向性RNAポリメラーゼ(Qβレプリカーゼ)を用いた核酸増幅反応であり、Qβ レプリカーゼの認識部位を含むRNAプローブを標的にハイブリダイズ、結合していないプローブを除去後、結合したプローブをQβレプリカーゼで複製増幅する反応である。MieleE.A.et al.(1983),J. Mol. Biol.,vol.171,281-295;Lizardi P.M. et al.(1988),Biotechnology,vol.6,1197-1202;US4,786,600、特許2710159、特許3240151を参照。
転写増幅システム(TAS)とは、逆転写酵素、DNA依存性RNAポリメラーゼを用いた核酸増幅反応であり、標的RNAと同一配列のフォワードプライマー、標的RNA と相補的で5’側にT7 RNAポリメラーゼのプロモーター配列の付いたリバースプライマーを用い、鋳型RNAから転写産物を得る工程と、得られた転写産物を鋳型としてさらに転写産物を合成する工程を組み合わせる反応である。KwohD.Y.et al.(1989),Proc. Natl. Acad. Sci. USA,vol.86 1173-1177;特許2843586を参照。
自己支持配列複製システム(self−sustained sequence replication system;3SR)とは、TASと同様の核酸増幅反応であるが、TAS にRNaseH を加えることにより、cDNA とRNA コピーの増幅が起こりともに次の反応の鋳型となる反応である。GuatelliJ.C.et al.(1990),Proc. Natl. Acad. Sci. USA,vol.87,1874-1878;特許3152927を参照。
核酸配列ベース増幅(NASBA)とは、逆転写酵素,RNase H,DNA依存性RNAポリメラーゼを用いる反応をいう。標的RNA と同一配列のフォワードプライマー、標的RNA と相補的で5’側にT7 RNAポリメラーゼのプロモーター配列の付いたリバースプライマーを用い、鋳型RNAから転写産物を得る工程と、得られた転写産物を鋳型としてさらに転写産物を合成する工程を組み合わせる反応である。ComptonJ.(1991),Nature,vol.350,91-92;KievitsT.(1991),J. Virol. Methods,vol.35,273-286;特許2648802、特許2650159を参照。
転写媒介増幅(TMA)とは、RNase H 活性を有する逆転写酵素,RNAポリメラーゼを使用する核酸増幅反応であり、標的RNA と同一配列のフォワードプライマー、標的RNA と相補的で5’側にT7 RNAポリメラーゼのプロモーター配列の付いたリバースプライマーを用い、鋳型RNAから転写産物を得る工程と、得られた転写産物を鋳型としてさらに転写産物を合成する工程を組み合わせる反応である。特許3241717、特開平11-46778、特開2000-350592を参照。
等温条件下キメラプライマー開始核酸増幅(ICAN)とは、鎖置換(strand displacement)活性を有するDNAポリメラーゼ,RNase Hを用いた核酸増幅反応であり、RNA−DNAからなるキメラプライマーを用い、鎖置換反応、鋳型交換反応、ニック導入反応により増幅を行う反応である。NotomiT.et al.(2000),Nucleic Acids Res.,vol.28,e63;Nagamine K. et al.(2001),Clin.Chem.,vol.47,1742-1743;特許3313358、特開2001−34790を参照。
ループ媒介性等温増幅(LAMP)とは、鎖置換(strand displacement)活性を有するDNA ポリメラーゼを用いた核酸増幅反応であり、合成されたDNA の3’末端が常にループを形成して次のDNA の合成起点となるようプライマーを設計する反応である。http://www.takara.co.jp/news/2000/07-09/00-i-019.htm;WO2000−56877を参照。
本明細書において使用される「核酸増幅条件」とは、使用されるべき核酸増幅法において、核酸増幅が生じる任意の条件をいう。そのような条件は、上記文献を参酌して、当業者は、容易に選択することができる。
本明細書において「逆転写反応」または「逆転写酵素反応」、とは、RNAに依存してDNAを合成する酵素である逆転写酵素(リバーストランスクリプターゼ、RNA依存性DNAポリメラーゼとも呼ばれる)により媒介される反応をいう。一本鎖RNAを鋳型としてこれと相補的なヌクレオチド配列をもつDNAが合成される。逆転写反応は、その次にPCRと組み合わされて、逆転写反応−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)として汎用される。従って、RT−PCRは、逆転写酵素を用いてRNAを鋳型としたDNA合成を行い、そのDNAを今度は鋳型にしてPCR反応を行うことになる。RT−PCRは、例えば、GIBCOBRL社のキット(Super ScriptTM Preamplification System(Cat. No. 18089-011)等)を用いることができる。
RT−PCRにおいては、RNase free の調製が好ましい。RNase free であることと同様に重要なのが、DEPC を完全に除去することである。DEPCによって以下の反応の多くが阻害されてしまうからである。可能であれば、試薬は使用する前に臭いを嗅ぎ、DEPC臭がしないことを必ず確認することが重要である。
逆転写反応を説明する。逆転写反応後に生じるDNA/RNA 2本鎖はDNA/DNAよりも結合が強いので、これを鋳型としたPCRは反応が起きにくいと一般的に言われている。そのため、RNaseHを用いてRNAを分解する反応をcDNA 合成後に付け加えるのが通常であるが、その反応を省略しても問題ない。好ましくは、42℃90min の逆転写反応終了後、RNase H を1μl加え、37℃、20min インキュベートし、−20℃保存するとよいがそれに限定されない。また、PCR 反応を行うとき、RT 産物は希釈して使用するが、反応を半量にスケールダウンしても支障は無いので、実験コストを下げるため、半量系で行ってもよい。
本発明の方法に用いうるDNAポリメラーゼには、本発明のDNA増幅反応を行うすべてのDNAポリメラーゼが含まれる。このようなポリメラーゼは、本明細書に記載する通り、相補的なヌクレオチド配列を持つ末端を有する、2つの線状DNA分子を連結する能力に関してアッセイすることによって同定しうる。好ましくは、DNAポリメラーゼは、ワクシニアウイルスDNAポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼ、および大腸菌(E.coli)DNAポリメラーゼIのクレノー断片からなる群より選択される。DNAポリメラーゼの選択に際しては、合成(伸長)反応の正確性を考慮することが特に重要である。従って、特にタグの領域において、3‘→5’エキソヌクレアーゼ活性が強くhigh-fidelityを示すα型酵素(例えば、KOD-plus-:TOYOBO)が望ましい。好ましくは、DNAポリメラーゼとしては、KOD-plus-:TOYOBOなどの正確性が高い酵素が使用される。各線状DNA分子の相補的ヌクレオチド配列の長さは、約5から約100ヌクレオチドの間、好ましくは約8から約50ヌクレオチドの間、最も好ましくは約10から35ヌクレオチドの間でありうる。インキュベーション混合物に公知の種々の刺激因子を加えてもよい。このような刺激因子は、反応の効率を向上させ、かつ所望の反応産物、例えば一本鎖DNA結合タンパク質を安定化させる因子が使用され得る。
反応の効率を高めるため、および/または反応産物を安定化するために、さまざまな公知の刺激因子をインキュベーション混合物に加えてもよい。適した刺激因子には一本鎖DNA結合タンパク質が含まれる。用いうる一本鎖DNA結合タンパク質の中には、ワクシニアおよび大腸菌(E.coli)の一本鎖結合タンパク質、単純ヘルペスウイルスICP8タンパク質、ならびに酵母およびヒトの複製プロテインA(例えば、yRPAおよびhRPA)を含むが、これらに限定されないものもある。当業者は、本発明の方法においてDNAポリメラーゼと組み合わせて有用に用いうる、他の適した刺激因子を容易に同定しうると考えられる。本発明の1つの実施形態において、ワクシニア一本鎖結合タンパク質を用いて、ワクシニアDNAポリメラーゼを用いるDNA連結反応の収率を高める。
線状DNA分子の末端間の相補性の程度は、約5から約100ヌクレオチドの間、好ましくは約8から約50ヌクレオチドの間、最も好ましくは約10から35 ヌクレオチドの間を変動しうる。本発明の方法を用いて連結されうる線状DNA分子は、制限酵素切断を用いて、原核生物または真核生物のゲノムのゲノムDNA、ならびにプラスミド、コスミド、ファージ、BACなどを含む種々のベクターから入手してもよい。または、線状DNA分子を、例えば自動合成などを用いる化学的手法によって合成してもよい。DNA分子は任意の種由来のmRNA、tRNAおよびrRNAなどのRNA種に由来してもよく、Sambrookら(1989)(下記)に記載された通りに、まず逆転写酵素によってcDNAに変換して増幅することができる。
核酸増幅条件は、以下を考慮すべきである。
適切な緩衝溶液は、前記2価陽イオンを結合する緩衝剤を更に含有し、前記2価陽イオンは好ましくはMn2+であり、前記緩衝剤の20℃かつ0.1Mのイオン強度における2価陽イオン結合反応のKは、10および10の間、好ましくは10および10の間、より好ましくは102.5および103.5の間である。前記緩衝剤は、好ましくは水素イオン緩衝作用を与える両性イオン性化合物であり、前記緩衝溶液の20℃かつ0.1Mのイオン強度におけるpKaは、7および9の間、好ましくは7.5および8.5の間である。好ましい実施態様において、前記緩衝溶液は、更にN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンまたはN[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシンを含んでなり、更に好ましくは、前記緩衝溶液は、更に酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸アンモニウムおよび酢酸リチウムからなる群から選択される酢酸塩を含んでなる。最も好ましい実施態様において、緩衝溶液は酢酸マンガン(Mn(OAc)またはMn(CHCOとも記される)、ビシン−KOH(ビシンはN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシンである)および酢酸カリウム(KOAcまたはKCHCOとも記される)を含んでなる。前記熱安定性DNAポリメラーゼは、好ましくはThermusaquaticusDNAポリメラーゼまたはThermus thermophilusDNAポリメラーゼ、最も好ましくは組換えTthDNAポリメラーゼである。好ましい実施態様において、工程(a)の温度は、40℃および80℃の間である。
本明細書において「逆転写反応混合物」とは、標的RNAの逆転写のために使用される種々の試薬を含む水溶液を指す。これらは、酵素、水性緩衝剤、塩類、オリゴヌクレ オチドプライマー、標的核酸、およびヌクレオシド三リン酸を含む。状況に依存して、該混合物は完全または不完全逆転写反応混合物のいずれであってもよい。
本明細書において「緩衝液」とは、緩衝剤または緩衝剤混合物、および場合により2価陽イオンおよび1価陽イオンを含む溶液を指す。
本明細書において「増幅反応混合物」とは、標的核酸の増幅のために使用される種々の試薬を含む水溶液を指す。これらは、酵素、水性緩衝剤、塩類、増幅プライマー、標 的核酸、およびヌクレオシド三リン酸を含む。状況に依存して、該混合物は完全または増幅反応混合物のいずれであってもよい。本発明の好ましい実施態様において、増幅系はPCRであり、増幅反応混合物はPCR混合物である。
本発明は、多くの供給源に由来するRNAを逆転写・増幅するために好適である。RNAテンプレートは、ウイルスまたは細菌性核酸調製物等の微生物由来の 核酸調製物中に含まれてよい。該調製物は、細胞残渣および他の成分、精製全RNA、または精製mRNAを含んでよい。該RNAテンプレートは、試料中の異種的RNA分子の母集団または特定の標的RNA分子であってよい。RNAは、WO91/09944に引用されているような種々の方法のいずれにより調製されてもよい。
プライマー伸長を起こさせるためには、このプライマーがRNAテンプレートにアニールしなければならない。逆転写を起こすためには、プライマーのすべてのヌクレオチドがテンプレートにアニールする必要はない。プライマー配列は、テンプレートの正確な配列を反映する必要はない。例えば、非相補的ヌクレオチド断片をプライマーの5’末端に連結し、プライマー配列の残る部分をRNAに相補的としてもよい。他の方法として、プライマー配列がRNAテンプレートとハイブリダイズするために充分に相補的であって、かつ相補DNA鎖の合成を可能とする限り、プライマー中に非相補的塩基を分散させてもよい。
加熱条件は、緩衝溶液、塩濃度、および変性される核酸に依存する。当然のことながら、mRNAの逆転写についてテンプレート分子は一般に単鎖であり、従って高温度の変性工程が不要であることは認識される。しかしながら、二本鎖RNAも、最初の変性または鎖分離工程に続く逆転写/増幅方法のための好ましいテンプレートを与える。
RNA不安定化の温度は、典型的には50〜80℃の範囲である。プライマー伸長の第1のサイクルは、上述した変性および増幅に適した二本鎖テンプレートを 与える。核酸変性の温度は、典型的には約90〜約100℃の範囲であり、変性が起こるに充分な時間は核酸長、塩基成分、試料中に存在する単鎖配列間の相補性に依存するが、典型的には約10秒から4分間である。
熱安定性または熱活性DNAポリメラーゼは、好ましくは約40℃以上、例えば 60−80℃の温度で至適活性を有する。42℃よりかなりな高温度では、熱安定性または熱活性DNAポリメラーゼ以外のDNAおよびRNA−依存ポリメラーゼは、不活性化する。ここに参考として取り入れるShimomaveおよびSalvato、1989、GeneAnal.Techn.6:25−28は、AMV−RTは、42℃において最大活性を有することを記述している。50℃において該酵素は50%の活性を有し、55℃においてはAMV−RTは活性最大水準の僅かに10%を保持するにすぎない。従って、AMV−RTはRNAテンプレートを使用する高温度ボリマー化反応を触媒するには不適当である。本発明では、このような熱活性DNAポリメラーゼを用いても良い。
プライマーのテンプレートに対するハイブリダイゼーションは、組成およびプライマーの長さに加えて塩濃度に依存する。熱安定性または熱活性ポリメラーゼを使用する場合には、ハイブリダイゼーションは高温度(例えば45−70℃)にて起こり得て、これは選択性の増大および/またはプライミングの高い厳密性のために好適である。ポリメラーゼ酵素についての高温度の至適性は、プライマーハイブリダイゼーション工程での選択性のためにRNA逆転写および引き続く増幅がより高い特異性を持って進むことを可能とする。好ましくはRNA逆転写の至適温度は、約55−75℃、更に好ましくは60−70℃の範囲である。
核酸増幅の交差夾雑を最小化する特定の方法が、ここに参考として取り入れるPCT特許公開WO92/01814および米国特許5,035,996に記述されている。該方法は、dUTP等の非慣用ヌクレオチド塩基を増幅生成物に導入し、持ち越し生成物を酵素的および/または物理化学的処理に付して生成物DNAを次の増幅についてテンプレートとして機能し得ないようにすることを含む。例えば、ウラシル−N−グリコシラーゼまたはUNGとしても知られているウラシルDNAグリコシラーゼは、ウラシル塩基を含むPCR生成物からウラシル残基を除去する。該酵素処理は、夾雑するPCR生成物を分解し、増幅反応物をクリーンにする作用をする。
一般に、トリス緩衝溶液中でMgClを使用するPCRにおいてdNTP濃度は、各dNTPにつぃて20−200μMの範囲である。dUTPの取り込みのためには、上昇させたヌクレオチド濃度において増幅効率が改善される。
熱安定性ポリメラーゼを使用する逆転写のためには、Mn2+が2価陽イオンとして好ましく、典型的には例えば塩化マンガン(MnCl)、酢酸マンガン(Mn(OAC))または硫酸マンガン(MnSO)等の塩として含まれる。MnClが、10mMトリス緩衝溶液を含む反応物に含まれる場合に、MnClは一般に0.5−7.0mMの濃度で存在し、dGTP、dATP、dUTPおよびdCTPをそれぞれ200μM使用する場合、0.8−1.4mMが好ましく、1.2mM MnClが最も好ましい。本発明の一実施態様において、Mn(OAc)、ビシン−KOHおよびKOAcを含む反応用緩衝溶液が、MnCl、トリス、KCl緩衝溶液に代えて使用される。Mn(OAc)として供給されるMn2+が1.2〜2.5mMの範囲の濃度で使用されるビシン/アセテート緩衝溶液が使用され得る。RT/PCRにおいては、3.6mMおよび3.5mMの濃度が代表的に使用され得るがそれに限定されない。
増幅の標的は、RNA/DNAハイブリッド分子であり得る。該標的は、単鎖または二本鎖核酸であり得る。上述のPCR法は、二本鎖標的を仮定して記述した が、これは必要条件ではない。単鎖DNA標的の第1の増幅サイクルの後、該反応物は、単鎖標的および新たに合成された相補鎖からなる二本鎖DNA分子を含む。同様に、RNA/cDNA標的の第1の増幅サイクルに次いで、該反応混合物は二本鎖cDNA分子を含む。この点において、増幅の引き続くサイクルは、上述したように進行する。本発明の方法において、増幅の標的は単鎖RNAであり、第1の増幅サイクルは、逆核酸増幅鋳型生産工程である。別の方法として、出発のテンプレートが二本鎖RNAである場合には、最初の高温度変性工程が単鎖RNAテンプレートの調製のために使用される。
熱安定性ポリメラーゼは、多くの供給元から入手可能である。酵素は、天然または組換えタンパク質であってよい。好ましい熱安定性酵素は、Thermusthermophilusから精製されるThermusthemophilusDNAポリメラーゼである(ここに参考として取り入れるPCT特許出願公開WO91/09950参照)。別の方法として、TthDNAポリメラーゼは、組換え宿主細胞から生成され、該宿主細胞は、WO91/09944二記述されているように、下記プライマーを使用して調製されうる。
組換えTthポリメラーゼは、rTthDNAポリメラーゼと記される。TaqDNAポリメラーゼもまた本発明の実施に好適である。TaqDNAポリメラー ゼは、Hoffmann−LaRocheInc.により開発および製造され、Perkin Elmer,Norwalk,CTから市販されている組換え製品またはThermus aquaticusから天然TaqDNAポリメラーゼとして生成されたものが商業的に入手可能である。ここにおいて使用されるように、組換えTaqDNAポリメラーゼはrTaqDNAポリメラーゼと記されてよく、また天然TaqDNAポリメラーゼは、nTaqDNAポリメラーゼとして記されてもよい。更に、Amersham,ArlingtonHeights,ILから“Hot Tub”DNAポリメラーゼとして入手可能なT.flavus(Tfl)DNAポリメラーゼが好適であり得る。逆転写および核酸増幅へのTthDNAポリメラーゼの使用の詳細については、WO91/09944に見いだされる。
プライマーは、その5’末端またはその近傍に位置する便利な制限酵素認識配列を伴って設計されうる。cDNA転写物の形成において、プライマーの3’末端 が標的配列に水素結合している限り、得られた二本鎖cDNA分子は特定の制限酵素認識配列を含む。cDNAをテンプレートとして使用して増幅後、該制限部位は例えばクローニング等の別の処理を容易にするために使用されうる。
別の方法において、慣用されないヌクレオチドは、PCR生成物の変性温度に影響を与えるために有用である。例えば、ヒドロキシメチルdUTP(Hmdutp) は、SP01ファージDNA中にチミンに代えて5’ヒドロキシメチルウラシル(HmUra)として天然に生じる(Kallenら、1962,J.Mol.Biol.5:248−250、ならびにLevyおよびTeebor、1991,Nuc.AcidsRes.19(12):3337、両者をここに参考として取り入れる)。HmUraを含むゲノムは、対応するチミンを含むDNAより10℃低い温度で融解する。HmdUTPのcDNAへの取り込みは、逆転写生成物およびPCR二本鎖DNA生成物の両者の変性温度を、類似するチミン含有DNAの変性温度に比べて効果的に低下させる。DNA生成物のTmに効果を及ぼしうる他の修飾ヌクレオチド三リン酸(例えば、c7dGTP、7−デアザ−2’デオキシグアノシン5’−三リン酸またはα−ホスホロチオエートdNTP)は、類似するRNAおよびDNAテンプレートを区別するために好適である。
DNAポリメラーゼは、触媒活性のために2価陽イオンを必要とする。ここに参考として取り入れるTaborおよびRichardson、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA86:4076−4080は、DNA配列決定法においてMg2+をMn2+に置換可能であることを報告している。これらの方法ではDNAテンプレートおよびT7DNAポリメラーゼまたはDNAポリメラーゼIが必要である。
この方法において使用するために好ましいRNAは、特定の標的RNAを含むことが予想される生物学的試料中に含まれてよい。生物学的試料は、例えば血液試料 または生検組織試料等のRNAが該試料の小部分である異種的試料であってよい。従って、この方法は、臨床検査および診断のために有用である。RNAは、特定の疾患または感染物質を示すものであり得る。
本明細書において「RNAポリメラーゼ」とは、DNA依存性RNAポリメラーゼまたは転写酵素とも称され、DNAを鋳型(template)とし,基質リボヌクレオシド三燐酸を燐酸ジエステル結合で重合してRNAを合成する反応を触媒する酵素をいう。胞内で遺伝子DNAのもつ遺伝情報をRNAに転写する段階に関与することから,転写酵素ともよばれる。特異的塩基対の形成により,鋳型DNA鎖に正確に相補的な塩基配列をもつRNAを合成する。反応は,(1)DNAと酵素との結合,(2)RNAの5’末端となる基質(通常ATPまたはGTP)と2番目の基質との間の燐酸ジエステル結合の形成,(3)5’側から3’側へのRNA鎖伸長反応,(4)RNA合成の停止,などの素反応からなる。
本明細書において「オーバーハング」とは、二本鎖核酸において突出した一本鎖をいう。
本明細書において使用されるRNAポリメラーゼとしては、オーバーハングを生じさせないものが好ましいがそれに限定されない。
本明細書において使用されるRNA配列の除去のための手段としては、例えば、RNaseを挙げることができる。好ましいRNaseとしては、DNAと結合している一本鎖RNAのみを選択的に分解するものがよい。そのような特殊なRNaseの例としては、RNase Hなどを挙げることができる。
従来の合成装置を用いる方法でもラベルされたRNAは合成は可能ではあるが、それは困難である。本発明では、pre−RNAを作製する段階は一般に取られている方法であり、標識、非標識の違いはRNAの材料となるrNTP(rATP,rCTP,rGTP,rUTP)がラベルされているものを用いたかどうかだけの違いであり標識を容易に導入することができることが理解される。その反応において特別に別の手法(酵素を代えたりなど)は必要ないことから、本発明の方法では、pre−RNAの合成時にラベルされた塩基を加えて反応を行えば標識RNAの合成は可能である。従って、本発明は、通常のRNAの合成のみならず、標識が導入されたRNAの増幅においても従来の技術よりはるかに優れた方法を提供することになる。
本明細書において遺伝子操作について言及する場合、「ベクター」または「組み換えベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるベクターをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体などの宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。
本明細書において、ベクターのうち、クローニングに適したベクターを「クローニングベクター」という。そのようなクローニングベクターは通常、制限酵素部位を複数含むマルチプルクローニング部位を含む。そのような制限酵素部位およびマルチプルクローニング部位は、当該分野において周知であり、当業者は、目的に合わせて適宜選択して使用することができる。そのような技術は、本明細書に記載される文献(例えば、Sambrookら、下記)に記載されている。
本明細書において「発現ベクター」とは、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子のような選択マーカーおよび、エンハンサーを含み得る。生物(例えば、動物)の発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
原核細胞に対する組換えベクターとしては、pcDNA3(+)、pBluescript−SK(+/−)、pGEM−T、pEF−BOS、pEGFP、pHAT、pUC18、pFT−DESTTM42GATEWAY(Invitrogen)などが例示される。
動物細胞に対する組換えベクターとしては、pcDNAI/Amp、pcDNAI、pCDM8(いずれもフナコシより市販)、pAGE107[特開平3−229(Invitrogen)、pAGE103[J.Biochem.,101,1307(1987)]、pAMo、pAMoA[J.Biol.Chem.,268,22782−22787(1993)]、マウス幹細胞ウイルス(Murine Stem Cell Virus)(MSCV)に基づいたレトロウイルス型発現ベクター、pEF−BOS、pEGFPなどが例示される。
植物細胞に対する組換えベクターとしては、pPCVICEn4HPT、pCGN1548、pCGN1549、pBI221、pBI121などが挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、サイレンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
本明細書において、核酸分子を細胞に導入する技術は、どのような技術でもよく、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。 そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.およびその第三版,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような本明細書に記載される方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
また、ベクターの導入方法としては、細胞にDNAを導入する上述のような方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、形質転換など(例えば、リン酸カルシウム法、リポソーム法、DEAEデキストラン法、エレクトロポレーション法、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法など)、リポフェクション法、スフェロプラスト法[Proc.Natl.Acad.Sci.USA,84,1929(1978)]、酢酸リチウム法[J.Bacteriol.,153,163(1983)]、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)記載の方法が挙げられる。
本明細書において「遺伝子導入試薬」とは、核酸(通常遺伝子をコードするが、それに限定されない)の導入方法において、導入効率を促進するために用いられる試薬をいう。そのような遺伝子導入試薬としては、例えば、カチオン性高分子、カチオン性脂質、ポリアミン系試薬、ポリイミン系試薬、リン酸カルシウムなどが挙げられるがそれらに限定されない。トランスフェクションの際に利用される試薬の具体例としては、種々なソースから市販されている試薬が挙げられ、例えば、Effectene Transfection Reagent(cat.no.301425,Qiagen,CA),TransFastTM Transfection Reagent(E2431,Promega,WI),TfxTM−20 Reagent(E2391,Promega,WI),SuperFect Transfection Reagent(301305,Qiagen,CA),PolyFect Transfection Reagent(301105,Qiagen,CA),LipofectAMINE 2000 Reagent(11668−019,Invitrogen corporation,CA),JetPEI(×4)conc.(101−30,Polyplus−transfection,France)およびExGen 500(R0511,Fermentas Inc.,MD)などが挙げられるがそれらに限定されない。本発明においては、本発明の核酸分子を細胞に導入する際にこのような遺伝子導入試薬が使用され得る。
本明細書において「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部(組織など)をいう。形質転換体としては、原核生物、酵母、動物、植物、昆虫などの細胞などの生命体の全部または一部(組織など)が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。本発明において用いられる細胞は、形質転換体であってもよい。
本発明において遺伝子操作などにおいて原核生物細胞が使用される場合、原核生物細胞としては、Escherichia属、Serratia属、Bacillus属、Brevibacterium属、Corynebacterium属、Microbacterium属、Pseudomonas属などに属する原核生物細胞、例えば、Escherichia coli XL1−Blue、Escherichia coli XL2−Blue、Escherichia coli DH1が例示される。あるいは、本発明では、天然物から分離した細胞も使用することができる。
本明細書において遺伝子増幅・操作などにおいて使用され得る動物細胞としては、マウス・ミエローマ細胞、ラット・ミエローマ細胞、マウス・ハイブリドーマ細胞、チャイニーズ・ハムスターの細胞であるCHO細胞、BHK細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞、ヒト白血病細胞、HBT5637(特開昭63−299)、ヒト結腸癌細胞株などを挙げることができる。マウス・ミエローマ細胞としては、ps20、NSOなど、ラット・ミエローマ細胞としてはYB2/0など、ヒト胎児腎臓細胞としてはHEK293(ATCC:CRL−1573)など、ヒト白血病細胞としてはBALL−1など、アフリカミドリザル腎臓細胞としてはCOS−1、COS−7、ヒト結腸癌細胞株としてはHCT−15、ヒト神経芽細胞腫SK−N−SH、SK−N−SH−5Y、マウス神経芽細胞腫Neuro2Aなどが例示される。あるいは、本発明では、初代培養細胞も使用することができる。
本明細書において遺伝子操作などにおいて使用され得る植物細胞としては、カルスまたはその一部および懸濁培養細胞、ナス科、イネ科、アブラナ科、バラ科、マメ科、ウリ科、シソ科、ユリ科、アカザ科、セリ科などの植物の細胞が挙げられるがそれらに限定されない。
本明細書において遺伝子発現(たとえば、mRNA発現、ポリペプチド発現)の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。アレイ(例えば、DNAアレイ、プロテインアレイ)を用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。プロテインアレイについては、Nat Genet.2002 Dec;32 Suppl:526−32に詳述されている。遺伝子発現の分析法としては、上述に加えて、RT−PCR、RACE法、SSCP法、免疫沈降法、two−hybridシステム、インビトロ翻訳などが挙げられるがそれらに限定されない。そのようなさらなる分析方法は、例えば、ゲノム解析実験法・中村祐輔ラボ・マニュアル、編集・中村祐輔 羊土社(2002)などに記載されており、本明細書においてそれらの記載はすべて参考として援用される。
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、試薬、酵素、鋳型核酸、標準など)が提供されるユニットをいう。混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、試薬、酵素、ヌクレオチド、標識されたヌクレオチド、伸長反応を止めるヌクレオチドなど(およびその三リン酸)、鋳型核酸、標準など)をどのように処理すべきかを記載する説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、試薬成分、緩衝液、塩濃縮液、使用するための補助手段、使用方法を記載した指示書などが含まれる。
本明細書において「指示書」は、本発明の試薬の使用方法、反応方法などを使用者に対して記載したものである。この指示書は、本発明の酵素反応などの手順を指示する文言が記載されている。この指示書は、必要に応じて本発明が実施される国の監督官庁が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、瓶に貼り付けられたフィルム、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ(ウェブサイト)、電子メール)のような形態でも提供され得る。
RNAソースは何でもよい。本発明の方法では、あらゆる配列に対して本法は実施可能であるからである。クローニング段階で用いるRNAのソース(動物種)を変えるだけで、もしくはPCRの段階でそれぞれの動物種のRNAの配列に対応したプライマーを用いれば問題ない。実際に実施例で行われたもののうち最初の例として挙げられているアフリカツメガエルのRNA配列もデータバンクに登録されている例として実施したのであり、それに限定する趣旨ではない。従って、例えば、マウスの配列に変えればマウスのRNAで行ったことと変わりない。これは、実際に後の実施例において実証され得ることからも明らかである(例えば、mir−1(マイクロRNAの一種)の配列(実施例を参照))。このように、様々な動物種でほとんど共通な配列が保存されているのが理解される。
本明細書において特に対象とされるのは「miRNA」である。「miRNA」とは、マイクロRNAとも呼ばれ、18−25塩基の小さなRNAであり、他の遺伝子の発現を調節する機能を有すると考えられている。miRNAの元になるDNA配列はmiRNAより長く、miRNAの配列と、それにほぼ相補的な逆向きの配列とを含む。このDNA配列が1本鎖RNAに転写されると、miRNA配列とその逆相補配列は相補的に結合して2本鎖になり、全体としてはヘアピンループ構造(tRNAに似た形)をとる。これをprimary miRNA(pri−miRNA)という。核内にあるDroshaと呼ばれる酵素がこのpri−miRNA分子の一部を切断してpre−miRNA( miRNAの直接の前駆体)を作る。次いでpre−miRNA分子はExportin−5と呼ばれるキャリアタンパク質によって核外に輸送され、これからダイサー(Dicer:RNAiを参照)により20−25塩基のmiRNA配列が切り出される(植物ではpri−miRNAが直接ダイサーによって処理される)。miRNAの機能は遺伝子の調節にあると思われる。miRNA は一部のmRNA(大抵は3’側非翻訳領域)に相補的な配列を有する。このmRNAとmiRNAとの結合により、翻訳が阻害される場合(下述のstRNA)、またRNAiのようにmRNAの分解を惹き起こす場合があると考えられている。miRNAの活性は、実験的には人工合成核酸であるモルホリノアンチセンスオリゴを用いて阻害できる。miRNAの命名・分類についての指針は、以下を参照のこと:VictorAmbros, Bonnie Bartel, David P. Bartel, Christopher B. Burge, JamesC.Carrington, Xuemei Chenand, Gideon Dreyfuss, Sean R. Eddy, SamGriffiths-Jones,Mhairi Marshall, Marjori Matzke, Gary Ruvkun and Thomas Tuschl(2003) "Auniform system for microRNA annotation", RNA, 9: 277-279;およびhttp://microrna.sanger.ac.uk/sequences/index.shtml
(miRNA)
(転写)
miRNAは、最初、一次miRNA(pri−miRNA)と命名された転写物の一部として発現される(Lee Y,Jeon K,Lee JT,Kim S,KimVN(2002) MiRNA maturation: stepwise processing and subcellular localization.EMBOJ 21: 4663-4670)。miRNAは、RNAポリメラーゼIIによって転写されるようであり、5’キャップと3’ポリ(A)テールを含む(SmalheiserNR.(2003) EST analyses predict the existence of a population of chimeric microRNAprecursor-mRNA transcripts expressed in normal human and mouse tissues. GenomeBiol 4(7): 403. Epub;Cai X,Hagedorn CH,Cullen BR. (2004) Human microRNAs areprocessed from capped,polyadenylated transcripts that can also function asmRNAs. RNA. Nov 3 [Epub ahead of print])。pri−miRNA転写物のmi部分は、dsRNA特異的なヌクレアーゼ開裂のシグナルを有するヘアピンを形成するようである。
(2 核でのヘアピン遊離)
dsRNA特異的なリボヌクレアーゼDroshaは、ヌクレアーゼ中のpri−miRNAを消化してヘアピン前駆体miRNA(pre−miRNA)を遊離する(LeeY,AhnC,Han J,Choi H,Kim J,Yim J,Lee J,Provost P,Radmark O,Kim S,Kim VN (2003)Thenuclear RNase III Drosha initiates miRNA processing. Nature 425: 415-419)。Pre−miRNAは、1〜4ヌクレオチド(nt)の3’オーバーハング(突出)、約25−30bpのステム、および比較的小さなループを含むおよそ70ヌクレオチドのRNAであるといわれている。Droshaはまた、成熟型(mature)miRNAの5’末端または3’末端のいずれかを生成する。これは、pre−miRNAのどの鎖がRISCによって選択されるかによる(LeeY,AhnC,Han J,Choi H,Kim J,Yim J,Lee J,Provost P,Radmark O,Kim S,Kim VN (2003)Thenuclear RNase III Drosha initiates miRNA processing. Nature 425: 415-419;YiR,QinY,Macara IG,Cullen BR (2003) Exportin-5 mediates the nuclear exportofpre-microRNAs and short hairpin RNAs. Genes Dev 17: 3011-3016)。
(細胞質への輸送)
エクスポルティン−5(Exportin-5)(Exp5)は、核から細胞質へのpre−miRNAの輸送を担うようである。Exp5は、正確にプロセッシングされたpre−miRNAに直接かつ特異的に結合することが示されている。miRNA生合成には、核および細胞質のプロセシングステップの調整が必要だとされる(LundE,Guttinger S,Calado A,Dahlberg JE,Kutay U. (2003) Nuclear Export of Micro RNAPrecursors. Science. 2003 Nov 20 [Epub ahead of print];Yi R,Qin Y,Macara IG,CullenBR(2003) Exportin-5 mediates the nuclear export of pre-microRNAs and shorthairpin RNAs. Genes Dev 17: 3011-3016)。
(ダイサープロセッシング)
ダイサーは、二座配位子のヌクレアーゼのRNase IIIスーパーファミリーのメンバーであって、線虫、昆虫および植物におけるRNA干渉における役割が示唆されている。一旦細胞質に存在すると、ダイサーは、pre−miRNAを、Droshaの切断部位からおよそ19bp分で切断する(LeeY,AhnC,Han J,Choi H,Kim J,Yim J,Lee J,Provost P,Radmark O,Kim S,Kim VN (2003)Thenuclear RNase III Drosha initiates miRNA processing. Nature 425: 415-419;YiR,QinY,Macara IG,Cullen BR (2003) Exportin-5 mediates the nuclear export ofpre-microRNAs and short hairpin RNAs. Genes Dev 17: 3011-3016)。得られた二本鎖RNAは、14ヌクレオチドの3’オーバーハングを何れかの端に有する(LundE,GuttingerS,Calado A,Dahlberg JE,Kutay U. (2003) Nuclear Export of Micro RNA Precursors.Science. 2003 Nov 20 [Epub ahead of print])。一旦二本鎖のうちの一つがmature miRNAになると、いくつかのmature miRNAは、pri−miRNA転写物のリーディング鎖から誘導され、そして他方のmiRNAとともにラギング鎖がmature miRNAとなる。
(RISCによる鎖選択)
標的mRNAの翻訳をコントロールするために、ダイサーによって生成した二本鎖RNAの鎖を分離せねばならない。そして、一本鎖のmature miRNAは、RISCと会合せねばならない(HutvagnerG,Zamore PD (2002) A miRNA in a multiple-turnover RNAi enzyme complex.Science297,2056-2060)。dsRNAからの活性化鎖の選択は、dsRNAの二つの端部の末端基の安定性におもに依存するようである(SchwarzDS,Hutvagner G,Du T,Xu Z,Aronin N,Zamore PD. (2003) Asymmetry in the assemblyof the RNAi enzyme complex. Cell 115(2): 199-208;Khvorova A,Reynolds A,JayasenaSD. (2003)Functional siRNAs and miRNAs exhibit strand bias. Cell 115(2):209-16)。二本鎖の5’末端の2−4ヌクレオチドの低い安定性の塩基対合をともなう鎖は、優先的にRISCと会合することにより、活性型miRNAとなる(SchwarzDS,Hutvagner G,Du T,Xu Z,Aronin N,Zamore PD. (2003) Asymmetry in the assemblyof the RNAi enzyme complex. Cell 115(2): 199-2083)。
本明細書において核酸の「少なくとも一方の先端」とは、その核酸の3’末端または5’末端の少なくとも一方を意味する。
本明細書において「核酸合成酵素」とは、核酸を合成する能力を有する任意の酵素をいう。本明細書では、ポリメラーゼともいう。ヌクレオチドを縮合させてポリヌクレオチドにする反応を触媒する酵素の総称である。このような核酸合成酵素としては、例えば、DNAポリメラーゼ(例えば、DNA依存性DNAポリメラーゼ、RNA依存性DNAポリメラーゼ)、RNAポリメラーゼ、などを挙げることができるがそれらに限定されない。
ポリメラーゼとしては、DNA依存性DNAポリメラーゼ、RNA依存性DNAポリメラーゼなどを挙げることができる。また、どちらのポリメラーゼでも、検出するのはDNA,RNAを問わないことが理解される。鋳型がどちらか(あるいは両方か)という違いだけである。(RNA依存性DNAポリメラーゼはDNAも鋳型にする。DNA依存性DNAポリメラーゼとして売られているものの中にも、RNA依存性活性も持つものが有る)。このようなポリメラーゼとしては、例えば、Escherichiacoli由来のDNAポリメラーゼI、DNAポリメラーゼIクレノウフラグメント、Taqポリメラーゼ、KLA−Taqポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Ventポリメラーゼ、AMV逆転写酵素、Pfuポリメラーゼ、T4 DNAポリメラーゼなどを挙げることができるがそれらに限定されない。
本明細書において「伸長反応」とは、核酸について言及するとき、その核酸が少なくとも1ヌクレオチド伸びるような任意の反応をいう。ポリメラーゼを用いた伸長反応を行う場合、通常、鋳型に基づいてヌクレオチドが導入されることから、特定の配列が標識対象核酸などの伸長すべき核酸において伸長することになる。
伸長反応は、(i)標的核酸およびその相補鎖と核酸プライマーおよび核酸 プローブとのハイブリダイゼーション(アニーリング)反応と、(ii)核酸合成酵素によるプライマー鎖の伸長反応及びプローブの分解反応からなりこれら反応(i)および(ii)は、例えばトリス塩酸緩衝液等の適当な緩衝液を含む水溶液中で実施することができる。このハイブリダイゼーション反応は、代表的には、55〜75℃で実施することができるがそれに限定されない。酵素反応は、代表的には、37℃で実施することができるがそれに限定されない。
プライマー伸長産物の変性は、上記伸長反応で得られるプライマー鎖伸長産物を含む溶液を、例えば94〜95℃で0.5〜1分間加熱処理するなどを行うことによって実施することができる。
標的核酸の増幅は、例えば、その標的核酸(標識対象核酸)が所望の量になるまで、工程上記伸長反応および変性を上記と同様の条件下で複数回繰り返せばよい。上記工程をn回行えば、理論的には標的核酸量は当初の2−1倍にまで増幅されることとなる。
このような伸長反応は、市販のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)のための装置(例えば、Applied Biosystemsから販売されている)を用いれば、簡便かつ効率的に実施することができる。
混合物からの核酸の取り出しは、当該分野において任意の方法を用いて行うことができる。そのような取り出しとしては、例えば、電気泳動、クロマトグラフィー、変性、アルコール沈澱、アフィニティー精製、抗体などを用いることができるがそれらに限定されない。
本発明の方法において用いられる核酸の提供工程は、当該分野において周知の任意の技法(例えば、化学合成、遺伝子工学の利用、生体からの抽出)を利用して行うことができる。
本発明の方法において用いられる核酸複合体の生成は、当該分野において周知の任意の技法を用いて行うことができる。例えば、本明細書において別の場所において説明したような通常使用されるハイブリダイゼーションの条件を適宜選択することによって、複合体生成を行うことができることが理解される。
本発明の方法において用いられる伸長反応は、当該分野において周知の任意の技法を用いて行うことができる。伸長反応には、伸長反応の触媒(例えば、核酸合成酵素)、触媒が反応することができる条件を提供する物質(例えば、緩衝液など)、伸長の際に入るべきヌクレオチド(標識、非標識など)を考慮することができる。また、反応条件をコントロールするために、温度などを調節する装置(例えば、恒温槽)を使用しても良い。
伸長反応の後、混合物から標識が導入された核酸を取り出す工程もまた、当該分野において周知の任意の技法を用いて行うことができる。そのような取り出す工程は、核酸を精製または分離するために通常使用される技術であれば、どのようなものであっても使用することができる。
本発明の方法において、標的核酸に対応する伸長産物が存在するか検出する工程では、検出は、当該分野において周知の任意の技法を用いて、標識を直接または間接的に任意の方法で実施することができることが理解される。ここで、伸長産物の存在は、上記標的核酸の存在の指標であることが理解される。伸長産物は、伸長される前の未知核酸が存在しない限り、検出されないからである。ただし、伸長される前の未知核酸は、複数種類存在することが考えられることから、伸長産物の配列を決定することによって、より詳細な検出をすることができる。そのような伸長産物の配列決定は、当該分野において公知の任意の技法を用いて行うことができる。
ハイブリダイズされるべき核酸分子同士の相補性は、伸長反応が進捗するに十分である程度であることが好ましい。そのような相補性の程度は、長さ、伸長反応条件などによって異なり、また、3’末端付近が伸長反応に適していることが好ましい。特に、3’末端の1〜2ヌクレオチドは、完全な相補性を有していることが好ましくあり得る。あるいは、短い方の核酸を基準として、通常、少なくとも50%の相同性を有していることが好ましく、より好ましくは少なくとも60%、さらに好ましくは少なくとも70%、さらに好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも90%、さらに好ましくは少なくとも95%の相同性を有していることがさらに好ましくあり得る。あるいは、標識対象核酸全部と相補的であってもよい。
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Sambrook J.et al.(1989).Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associat ESand Wiley−Interscience;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications:Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
人工的に合成した遺伝子を作製するためのDNA合成技術および核酸化学については、例えば、Gait,M.J.(1985).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRLPress;Gait,M.J.(1990).Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein,F.(1991).Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approac,IRL Press;Adams,R.L.etal.(1992).The Biochemistry of the Nucleic Acids,Chapman&Hall;Shabarova,Z.et al.(1994).Advanced Organic Chemistry of Nucleic Acids,Weinheim;Blackburn,G.M.et al.(1996).Nucleic Acids in Chemistry and Biology,Oxford University Press;Hermanson,G.T.(I996).Bioconjugate Techniques,Academic Pressなどに記載されており、これらは本明細書において関連する部分が参考として援用される。
本明細書において核酸の存在を確認するには、放射能法、蛍光法、ノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価され得る。
(スクリーニング)
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の方法または核酸構築物を使用することができる。本発明では、任意の核酸(RNA)構築物を自在に作製することができることから、本発明はスクリーニングにおいても顕著な効果を発揮する。
(遺伝子治療)
本発明の用途としては、自在に作製された核酸分子を修飾して細胞に遺伝子治療を施す遺伝子を組込むことが挙げられる。
遺伝子治療に使用することが可能な遺伝子配列は公知のデーターベース、例えばGenBank、DDBJ、EMBL等において検索し、入手できる。
さらに、本発明は、ライブラリーで作業するまたはそれをスクリーニングするための工程の一部として、配列の機能を評価するため、またはタンパク質発現をスクリーニングするため、または特定の細胞タイプに対する特定のタンパク質または特定の発現制御領域に対する効果を評価するために利用することができる。
(miRNAのクローニング法)
以下に具体的に、まず従来のmiRNAのクローニング法について述べる。なお、miRNAのクローニング法については、smart protocolとNelson protocolがあるが、miRNAのクローニング法としてNelson protocolをここでは説明する。すなわち、Nelson protocolによれば、産物はRNA リガーゼ(ligase)を用いることによって、以下に示すように、5’,3’の両端にリンカー核酸配列を有したDNA/RNA/DNAのキメラ構造を取っている。以後、本明細書においてこの節では、大文字でDNAを、また小文字でRNAを表すものとする。
(RNA リガーゼ反応)
5’側 Nelson リンカー核酸: 5’-ATCGT-aggcaccugaaa-3’(配列番号9)
3’側 miRNA cloningリンカー核酸: 5rApp/CTGTAGGCACCATCAAT/3ddC(配列番号10)
注:miRNA cloningリンカー核酸は、IDT社の市販品を用いた。
RNA リガーゼ反応を3’、5’の順序で行うことにより、DNA(下線)-RNA(二重下線)-miRNA-DNA(下線)というキメラ構造を持つ産物が得られる。
キメラ構造
ATCGT-aggcacugaaa-miRNA-CTGTAGGCACCATCAATC(配列番号11)
DNA RNA DNA
ここで、5rAppはATP非存在下でのRNA リガーゼ反応に必要であり、ddCはセルフライゲーションを防ぐのに必要である。次にリンカー核酸部位でprimerを作製し、RT-PCRを行って、得られたPCR産物のリンカー核酸配列内のBanIsite(GGCACC)(図のキメラ構造中の網掛け部分)を用いてクローニングする。リンカー核酸部位の配列を含有するプライマーを用いてRT、そしてPCRを行うがBanI部位でクローニングしていない。クローニングに必要な制限酵素部位はPCR時点で使用するプライマーの5‘末端に追加させる。
本発明では、このクローニング方法を改良した上で、新たに任意のmature RNA(例えば、miRNA)を効率良く作成できる新手法を開発した。なお、本手法は、miRNAだけでなく、塩基数が約70-90のtRNAなど他の低分子量RNAおよび低分子量でないRNAにも適用できる。最近の研究によれば、ミトコンドリアのtRNAもmiRNAと同様に、転写や翻訳の調節の関わる可能性も示唆されてきている。したがって、本発明はmiRNAだけでなくtRNAなども網羅する発明なので、任意の低分子量RNAのみならず、mRNAなどRNA一般に原理的には利用可能である。
(好ましい実施形態)
以下に本発明の最良の形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
(成熟型RNA)
1つの局面において、本発明は、単離された成熟型RNAを提供する。成熟型RNAを単離した形で生産することはこれまで実質的に不可能であった。本発明が提供する方法によって、いかなる成熟型RNA(特にmiRNAなどの低分子量RNA)を生産することができるようになったことによってこの課題は解決された。
別の局面では、本発明は、合成された成熟型RNAを提供する。合成により成熟型RNAを生産することは事実上困難であったことから、本発明は従来存在しない物を提供するという画期的な発明である。
特に、本発明の成熟型RNAは、目的の配列のみからなることが特徴である。
(所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法)
別の局面において、本発明は、所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法を提供する。この方法は、
A)該所望の配列を有する鋳型核酸にリンカー核酸を結合させてリンカー核酸結合鋳型核酸を生産するライゲーション工程;
B)該リンカー核酸結合鋳型核酸に基づいて核酸増幅鋳型を生産する核酸増幅鋳型生産工程;
C)該核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を行って増幅産物を生産する増幅工程;
D)該増幅産物に対してRNAポリメラーゼを用いてRNA産物を生産するRNA増幅工程;および
E)該RNA産物から所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産する調整工程を包含する。
以下に各工程を説明する。
所望の配列を有する鋳型核酸にリンカー核酸を結合させてリンカー核酸結合鋳型核酸を生産するライゲーション工程は、材料となる鋳型核酸とリンカー核酸とが結合される様式であれば、どのような様式であってもよい。
本発明の方法において使用される鋳型核酸(クローニング開始時)は、通常、RNAである。増幅を試みるための対象として例えば、miRNA、tRNAなどを挙げることができるがそれに限定されない。本発明の方法は、mRNA以外のRNAでも任意の合成できることが特徴であり、その意味で対象となる鋳型核酸には制限はない。所望の配列を有している限り他の核酸(DNA,PNAなど)であっても良いことが理解される。ただし、好ましくはこれらの鋳型核酸は一本鎖であることが有利である。そのような場合は、他の核酸に適した増幅系、転写系を使用することができ、これらは当業者が適宜選択することができる。
本発明の方法において使用されるリンカー核酸は、通常DNAを含み、RNA、DNA-RNAハイブリッドであってもよい。通常DNAからなる。具体的な配列設計においては、クローニングの便宜を考慮する。従って、使用が予定される制限酵素部位を用いることが好ましい。あるいは、便宜的にマルチクローニング部位を用いることができる。そのようなマルチクローニング部位は当該分野において周知であり、特に特定のものには限定されない。
本発明の方法のライゲーション工程において、連結は、通常リガーゼによって媒介される。このリガーゼは、核酸分子の連結を意図するものであれば何でもよく、好ましくは、DNAとRNAとの連結を媒介する能力も有するリガーゼがよい。本明細書では、RNAのほかにDNAも通常使用されることから、その両方を認識して連結することができるリガーゼが好ましいからである。そのようなリガーゼとしては、例えば、T4 リガーゼなどを挙げることができるがそれに限定されない。
1つの実施形態では、リンカー核酸は、二つ提供される。これは、鋳型核酸の両端に結合させるためである。リンカーは、DNAまたはRNAあるいはそれらの混合物(キメラを含む)であり得る。リンカー核酸は、例えば、5’側としては、NelsonリンカーなどのmiRNAへのリンカー結合に使用されるような任意のリンカーが用いられ得る。Nelsonリンカーは、5’側にDNAが結合し、3’側にはRNAが結合したキメラ構造を示す。本発明において用いられる3’側のリンカーとしては、miRNAクローニングリンカーなどのリンカーを用いることができる。例えば、そのようなmiRNAクローニングリンカーは、末端にリン酸(好ましくはrAppリボアデノシルジホスフェート)が結合していることが好ましい。リン酸基が結合することによって、リガーゼが酵素反応に必要とするATPが不要となり、反応が容易になるからであるが、これに限定されるわけではない。rAppは、5’末端に付加されていることが好ましい。3'側のリンカーはまた、他方の末端がリガーゼ反応を阻害するような基(例えば、ddCのようなジデオキシヌクレオチド)が結合されていることが好ましい。従って、この実施形態では、リンカーが二つ提供され、リンカー核酸が第1のリンカー核酸および第2のリンカー核酸の二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、該第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されており、第2のリンカー核酸は少なくとも3’側がRNAであり、好ましくは、5’側がDNAであり3’側がRNAである。これにより、自己環化を防ぐことができるからである。上述のような好ましい実施形態では、ATP非存在下で反応が行われるので、RNA(例えば、miRNA)同士の結合は起こらなくなるので効率よいRNA合成が期待できる。また、リンカーの3’側をリガーゼ反応が進まないような基(ライゲーション妨害基)で修飾することにより、リンカー同士の結合も防ぐことができるので好ましいがそれに限定されない。ここで、ライゲーション妨害基は、ジデオキシヌクレオチド(ddC、ddT、ddA、ddGなど)等であり得る。RNAリガーゼを用いていることから、RNA-RNAの結合を優先に考える。したがってプライマーの3‘末端側がRNAであれば好ましいということになる。ということで5’末端がDNAである必要は無く、RNAのみからなるリンカーでも可能である。また3‘末端がDNAである場合でもRNA-RNAの結合よりはかなり劣るが、RNAリガーゼはDNA-RNA結合も可能であるので5-DNA、3-RNAという限定ではない。
1つの実施形態では、本発明で用いられるリンカー核酸が二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、該第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されていることを特徴とする。
1つの実施形態では、本発明の方法におけるライゲーション反応において、前記第2のリンカー核酸と前記鋳型核酸との連結をまず行って第1連結産物を得、次に前記第1のリンカー核酸と該第1連結産物との連結を行うことを特徴とする。
1つの実施形態では、ライゲーションは、smart protocolまたはNelson protocolにて行われる。smart protocolおよびNelson protocolは、本明細書において記載されている。
以下に、リンカー核酸結合鋳型核酸に基づいて核酸増幅鋳型を生産する核酸増幅鋳型生産工程(B工程)を説明する。
1つの実施形態では、鋳型核酸はRNAである。鋳型核酸は、通常、標的となるので、実験の対象となるmiRNAなどを挙げることができる。しかし、最終産物がRNAであればよく、そのRNAが目的の配列のみからなることを目的としていることから、鋳型核酸は必ずしもRNAである必要は無いことに留意すべきである。
1つの実施形態では、鋳型核酸がRNAである場合、転写反応は逆転写反応であり、核酸増幅鋳型はDNAである。このような逆転写反応はどのような反応であっても利用することができることが理解される。
1つの実施形態では、リンカー核酸結合鋳型核酸がRNAとDNAとのキメラ核酸である。上述のように5’側がDNA−RNAのキメラを用い、3’側がDNAを用いる場合、鋳型核酸がRNAであれば、DNA−RNA−DNAの構造をとるリンカー核酸結合鋳型核酸が使用されることになる。
別の実施形態では、リンカー核酸結合鋳型核酸がRNAとDNAとのキメラ核酸であり、前記転写反応が逆転写反応であり、この逆転写反応において用いられる少なくとも1つのプライマーがリンカー核酸結合鋳型核酸のリンカー核酸部分に相補的な配列を含み得る。マルチクローニング部位はパリンドローム構造を取りやすいのでリンカーでは使用しないことが好ましい。
以下に核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を行って増幅産物を生産する増幅工程を説明する。
本明細書において使用され得る核酸増幅反応は、核酸が増幅され得る限りどのようなものであっても良いことが理解される。そのような核酸増幅反応としては、例えば、PCR、LCR、gap LCR、SDA、Qβレプリカーゼ増幅、TAS、3SR、NASBATMA、ICANおよびLAMP等を挙げることができる。
好ましくは、核酸増幅反応としてはポリメラーゼ連鎖反応が使用される。
1つの好ましい実施形態では、核酸増幅反応において、プロモーター配列を含むプライマーが用いられる。このプロモーター配列は、RNA増幅反応において用いられるRNAポリメラーゼが認識できる配列であることが好ましい。これにより、最終のRNA増幅反応において、特定されたRNA産物を生産することができるからである。従って、例えば、T7リガーゼが認識するプロモーターであれば、T7プロモーターの配列は、例えば、TAATACGACTCACTATAGG(配列番号12)等を挙げることができる。好ましくは、核酸増幅反応において使用される5’側のプライマーにプロモーター配列が含まれることが有利である。
1つの好ましい実施形態では、核酸増幅反応において使用されるプライマーは、制限酵素部位の配列を含む。より好ましくは、核酸増幅反応において使用されるプライマーは、制限酵素部位の配列を含み、5’側のプライマーにプロモーター配列が含まれる。1つの別の実施形態では、核酸増幅反応において使用されるプライマーが、リンカー核酸の配列またはその相補配列あるいはその一部を含む。
より好ましい実施形態では、核酸増幅反応において使用されるプライマーが、リンカー核酸の配列またはその相補配列あるいはその一部を含み、該プライマーが、制限酵素部位の配列を含み、5’側のプライマーにプロモーター配列が含まれる。
必須ではないが、通常は、上記増幅工程の後に、上記増幅産物をベクターにクローニングし、さらに大量に目的となる産物を増やしても良い。このようなクローニングシステムについては、当該分野において公知の任意の手法を使用することができることが理解される。このクローニングベクターは、上記プロモーター配列(すなわち、RNA増幅工程において使用されるRNAポリメラーゼが認識するプロモーター配列)と実質的に相同の配列を含まないことが好ましい。
以下に増幅産物に対してRNAポリメラーゼを用いてRNA産物を生産するRNA増幅工程(D)を説明する。
1つの実施形態において、RNA増幅工程において用いられる(鋳型となる)増幅産物は通常DNAであり、RNAポリメラーゼは通常、DNA依存性である。
好ましい実施形態では、使用されるRNAポリメラーゼは、前記プロモーター配列を認識するRNAポリメラーゼであることが有利である。RNAポリメラーゼとそれが認識するプロモーターの配列の組み合わせは周知である。その組み合わせとしては、以下
T7RNAポリメラーゼ T7プロモーター(TAATACGACTCACTATAGGG
(配列番号13))
SP6RNAポリメラーゼ SP6プロモーター(A TTTAGGTGAC ACTATAGA(配列番号14))
T3RNAポリメラーゼ T3プロモーター(AATTAACCCTCACTAAAGG(配列番号15))
等を挙げることができる。
核酸増幅反応において、使用されるプライマーが、リンカー核酸の配列またはその相補配列あるいはその一部を含み、プライマーが、制限酵素部位の配列を含み、5’側のプライマーにプロモーター配列が含まれ
C)増幅工程の後に、増幅産物を、ベクターにクローニングする工程をさらに包含し、該ベクターは、プロモーター配列を含まず、RNAポリメラーゼが該プロモーター配列を認識し、かつ、3’側のプライマーの制限酵素部位を切断する制限酵素で消化して該RNAポリメラーゼの鋳型として該RNAポリメラーゼによる増幅を行うことを特徴としてもよい。
1つの実施形態では、好ましくは、本発明の方法は、RNA増幅工程の後にDNAを除去する工程をさらに包含する。DNAの除去は、例えば、DNaseにより達成される。ここでは、DNaseは、RNAを分解する活性を実質的に有しない物を用いることが好ましい。生産されたRNAが破壊されることを防ぐためである。RNA増幅工程では、通常プライマーとしてDNAが用いられることから、そのようなプライマーを除去することにより、目的の配列からなるRNAを生産することに資するからである。
1つの実施形態では、RNA増幅工程において、存在するRNA分子の量よりも多くのプライマーが用いられる。ここで使用されるプライマーは、好ましくは存在するRNA分子の量の少なくとも2倍量、少なくとも3倍量、少なくとも4倍量、少なくとも5倍量などのプライマーが使用されるがそれに限定されない。
1つの実施形態では、RNAポリメラーゼは、オーバーハングを生じさせないRNAポリメラーゼであるが、これに限定されない。オーバーハング(例えば、uuなど)を生じさせるRNAポリメラーゼを使用した場合は、その後に、そのような短いヌクレオチドを除去(例えば、サイズなどによる除去)を行うことによって、目的の配列のみからなるRNAを生産することができる。
以下にRNA産物から所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産する調整工程(E)を説明する。
1つの実施形態では、所望でないRNA配列の除去は、リンカー核酸結合鋳型核酸の配列のうち、所望の配列以外の配列と相補的な除去用プライマーをRNA産物とハイブリダイズさせてハイブリダイズ産物を生成し、そのハイブリダイズ産物に対してDNAと結合している一本鎖RNAのみを選択的に分解する手段を用いて分解させて、所望の配列のみを含むRNAを生産することを包含する。このような方法は、従来の技術では、想定すらされていなかった。しかも、このような方法を用いれば、所望の配列を有する任意のRNAを生産することができることが理解される。
1つの実施形態において、除去用プライマーは、前記所望の配列からなるRNAに直接連結されている配列に対して相補的な配列を少なくとも1つ含み、該相補的な配列は、前記RNA産物とのハイブリダイズ形成に充分な長さを含むことが好ましい。このような方法は、従来の技術では、想定すらされていなかった。しかも、このような方法を用いれば、所望の配列を有する任意のRNAを生産することができることが理解される。なお、ハイブリダイズ形成に充分な長さは、ハイブリダイズの条件を設定することによって任意に変更することができることが理解される。ハイブリダイズの条件は、本明細書に記載されている条件を考慮するかまたは周知の文献に記載されているものを参照することができる。全長であれば、確実に相補性が担保される。実質的に全長といえる長さであっても良い。ハイブリダイズ可能であれば、変異が入っていても良い。少なくとも所望の配列からなるRNAに直接連結されるRNAがDNAと結合していればよい。
従って、1つの実施形態において、所望でないRNA配列の除去は、DNAと結合している一本鎖RNAのみを選択的に分解することによって達成することが好ましい。具体的な実施形態では、このような所望でないRNA配列の選択的な除去は、RNase Hにより達成される。
本発明の方法は、最終工程において、RNAを実質的に分解しないDNA分解手段によりDNAを分解する工程をさらに包含することが好ましい。RNaseなどによって遊離したDNAが不純物として残っており、これらを除去することが好ましいからであるがこの工程は必須というわけではない。
さらに、本発明は、RNAポリメラーゼによって生じたオーバーハングを除去する工程を包含してもよい。
1つの実施形態において、RNAポリメラーゼによって生じたオーバーハングを除去する工程は、電気泳動を行うことを包含する。電気泳動によって、サイズ分画が可能となり、通常の所望の配列からなるRNAであれば、非常に小さなオーバーハングと分離することができるからである。このような電気泳動によって分離されたRNAは、その後当該分野において周知の技法を用いることによって精製することができることに留意すべきである。
1つの実施形態では、本願が対象とする成熟型RNAは、低分子量RNAである。このような低分子量RNAは、通常100ヌクレオチド長以下のものであり、例えば、60ヌクレオチド長以下などのものを挙げることができるがそれらに限定されない。低分子量RNAの代表例としては、miRNA、tRNAなどを挙げることができる。従来miRNAを効率よく合成できる方法は知られていなかったことから、本発明は、microRNAなど立体構造などまでが重要な場合のRNAの合成(修飾)を初めて達成したという点において顕著な効果を示すべきと考えられる。
(所望の配列を有する成熟型RNAを生産するためのキット)
1つの局面において、本発明は、所望の配列を有する成熟型RNAを生産するためのキットを提供する。このキットは、所望の配列を有する成熟型RNAを生産するために必要な構成要素を備える。そのような構成要素としては、例えば、A1)該所望の配列を有する鋳型核酸に連結させるためのリンカー核酸;A2)該リンカー核酸を該鋳型核酸に結合させる結合手段;B)該鋳型核酸と該リンカー核酸とが連結したリンカー核酸結合鋳型核酸に対して転写反応を生じさせる転写手段;C)該転写反応によって生じる核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を生じさせる核酸増幅手段;D)該核酸増幅反応によって増幅された産物を鋳型としてRNAを生産する手段;およびE)所望でないRNA配列を除去するRNA配列除去手段を挙げることができる。これらのすべてを備えていてもよく、ばら売りで別々の組み合わせまたは一つの構成要素がキットとして含まれていても良い。
A1)所望の配列を有する鋳型核酸に連結させるためのリンカー核酸の形態を説明する。リンカー核酸は、鋳型核酸に結合する能力を有せば、どのような形の核酸であってもよいことが理解される。
使用されるリンカー核酸は、本発明のキットにおいても本明細書上記(所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法)において記載されるような任意の実施形態を使用することができることが理解される。
1つの具体的な実施形態において、本発明において使用されるリンカー核酸は、実施例に記載されるような配列が挙げられるがこれに限定されず、任意の配列が使用されることが理解される。
A2)リンカー核酸を鋳型核酸に結合させる結合手段を説明する。本発明では、リンカー核酸と鋳型核酸とを結合させることができる限り任意の手段を用いることができることが理解される。例えば、酵素が代表的な手段である。そのような酵素としては、RNAリガーゼなどのリガーゼを挙げることができる。このようなRNAリガーゼとしては、DNAとRNAとの連結を媒介する能力も有するリガーゼであることが好ましい。本発明で使用される核酸はDNAとRNAとを通常包含するからである。そのようなRNAリガーゼの具体的な例としては、T4 RNAリガーゼなどを挙げることができることが理解される。使用され得るリンカー核酸を鋳型核酸に結合させる結合手段としては、本発明のキットにおいても本明細書上記(所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法)において記載されるような任意の実施形態を使用することができることが理解される。
次に、B)該鋳型核酸と該リンカー核酸とが連結したリンカー核酸結合鋳型核酸に対して転写反応を生じさせる転写手段を説明する。本発明では、リンカー核酸結合鋳型核酸に対して転写反応を生じさせることができる限り、任意の手段を用いることができることが理解される。使用される転写手段としては、本発明のキットにおいても本明細書上記(所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法)において記載されるような任意の実施形態を使用することができることが理解される。
次に、C)該転写反応によって生じる核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を生じさせる核酸増幅手段を説明する。本発明では、転写反応によって生じる核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を生じさせることができる限り、任意の手段を用いることができることが理解される。使用される増幅手段としては、本発明のキットにおいても本明細書上記(所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法)において記載されるような任意の実施形態を使用することができることが理解される。
具体的な実施形態では、核酸増幅手段は、DNAポリメラーゼとプライマーセットとを含み得る。ここで、好ましい実施形態では、核酸増幅手段中で使用されるプライマーセット(核酸増幅プライマー(セット)ともいう)は、前記リンカー核酸連結鋳型核酸の一部と同一の配列および相補的な配列をそれぞれ含む。より好ましい実施形態では、核酸増幅手段中で使用されるプライマーセットのうち少なくとも1つがプロモーター配列を含む。
1つの好ましい実施形態では、核酸増幅手段中で使用されるプライマーセットの両方が制限部位を含む。さらに好ましくは、プライマーセットのうち少なくとも1つがプロモーター配列を含み、プライマーセットの両方が制限部位を含む。
具体的なプライマーセットの配列は、以下の通りである。
5’- ccccaagcttTAATACGACTCACTATAGGGATCGTaggcacctgaaa(配列番号16)
5’- ccccgaattcTAATACGACTCACTATAGGGATCGTaggcacctgaaa(配列番号17)
3’- aaaaaagcggccgcGATTGATGGTGCCTACAG(配列番号18)。
1つの実施形態において、本発明のキットは、上記に加え、C−2)増幅産物をクローニングするためのベクター、さらに備えていても良い。このようなベクターは、目的とする配列と使用する宿主において使用することができる限り、本明細書において記載されるように任意の公知のベクターであり得る。このベクターは、キットにおいて使用するRNAポリメラーゼによって認識されるプロモーター配列を含まないことが有利である。RNAポリメラーゼによる最終増幅において所望されない配列が増幅されるのを防御するからである。
1つの実施形態では、本発明のキットは、C−3)前記増幅産物に含まれる制限部位を認識し切断する制限酵素をさらに含んでいても良い。
次に、D)該核酸増幅反応によって増幅された産物を鋳型としてRNAを生産するRNA生産手段を説明する。本発明では、核酸増幅反応によって増幅された産物を鋳型としてRNAを生産することができる限り、任意の手段を用いることができることが理解される。使用されるRNA生産手段としては、本発明のキットにおいても本明細書上記(所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法)において記載されるような任意の実施形態を使用することができることが理解される。
さらに好ましい実施形態では、本発明のキットは、D−1)RNase活性のないDNaseをさらに備えることが有利である。余分なDNAを除去することができるからである。このようなRNase活性のないDNaseは、鋳型となった増幅産物であるDNAを除去するために用いられる。
さらに好ましい実施形態では、本発明のキットは、D−2)生産されたRNAを精製するための精製手段をさらに備えていてもよい。このような精製手段を用いることによって、所望の配列のみからなるRNAのみを単離することができる。
1つの実施形態としては、精製手段としては、任意の手段を用いることができるが、例えば、フェノール/クロロホルム抽出手段およびエタノール沈澱手段であってもよいがこれに限定されない。
次に、E)所望でないRNA配列を除去する除去手段を説明する。本発明では、所望でないRNA配列を除去することができる限り、任意の手段を用いることができることが理解される。使用される除去手段としては、本発明のキットにおいても本明細書上記(所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法)において記載されるような任意の実施形態を使用することができることが理解される。この除去手段は、それ自体が、新規かつ自明でないことにも留意すべきである。
従って、例えば、使用される除去手段としては、RNaseであって、特に、DNAと結合している一本鎖RNAのみを選択的に分解するRNase(例えば、RNase H)であることが有利である。ここで、このようなRNaseを使用する場合には、リンカー核酸結合鋳型核酸の配列のうち、所望の配列以外の配列と相補的な除去用プライマーが使用され、キットに包含されていてもよい。このような除去用プライマーは、前記所望の配列からなるRNAに直接連結されている配列に対して相補的な配列を少なくとも1つ含む。
このような除去用プライマーは、前記所望の配列からなるRNAに直接連結されている配列に対して相補的な配列を少なくとも1つ含み、該相補的な配列は、前記RNA産物とのハイブリダイズ形成に充分な長さを含む。
1つの実施形態では、本発明のキットは、さらに、前記RNAポリメラーゼによって生じたオーバーハングを除去する手段を備えていてもよい。
上述のように、除去方法のみが新規でありかつ自明でないことから本発明の1つの局面では、以下もまた提供される。
従って、本発明は、所望の配列を含むRNAから所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産する方法を提供する。この方法は、a)所望の配列を含むRNA以外の配列に相補的な少なくとも1つのDNAプライマーと該所望の配列を含むRNAとをハイブリダイズさせる工程;およびb)DNA−RNAの結合のみを認識して分解する工程、を包含する。ここで使用される各々の工程は、上記(所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法)などにおいて説明されている形態を利用することができることが理解される。好ましくは、DNAプライマーは、5’末端に少なくとも1つおよび3’末端に少なくとも1つ含む。
従って、別の局面では、本発明は、所望の配列を含むRNAから所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産するためのキットを提供する。ここで、このキットは、a)所望の配列を含むRNA以外の配列に相補的な少なくとも1つのDNAプライマー;およびb)DNA−RNAの結合のみを認識して分解する手段、を備える。キットには、説明書が備えられていても良い。ここで使用される各々の手段は、上記(所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法)および(所望の配列を有する成熟型RNAを生産するためのキット)などにおいて説明されている形態を利用することができることが理解される。好ましくは、DNAプライマーは、5’末端に少なくとも1つおよび3’末端に少なくとも1つ含み、これらは同一配列であっても異なる配列であってもよい。同一除去プライマーを用いる場合でも最初のリンカーの方は5‘末端と3’末端では通常異なる。
(スクリーニング法)
別の局面において、本発明は、機能を有するRNAをスクリーニングするための方法を提供する。この方法は、A)対象RNAを提供する工程;B)B−1)該所望の配列を有する鋳型核酸にリンカー核酸を結合させてリンカー核酸結合鋳型核酸を生産するライゲーション工程;B−2)該リンカー核酸結合鋳型核酸に基づいて核酸増幅鋳型を生産する核酸増幅鋳型生産工程;B−3)該核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を行って増幅産物を生産する増幅工程;B−4)該増幅産物をベクターに配置し、該ベクターで宿主を形質転換する工程;−5)該宿主を増幅させる増幅された宿主からベクターを入手する工程;B−6)該ベクターを鋳型として用いてRNAポリメラーゼを使用してRNA産物を生産するRNA増幅工程;およびB−7)該RNA産物から所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産する調整工程、を行って、対象RNAを増幅生産する工程、C)該対象RNAを試験細胞に感染させる工程;D)該試験細胞が所望の機能を発現した場合、該発現が見出される試験細胞に含まれる対象RNAに対応する宿主をさらに培養して増幅させる工程;E)必要に応じて、B−5〜B−7、CおよびDを繰り返し、単一コロニーを探索する工程、F)該単一コロニーに含まれるRNAの配列を決定する工程を包含する。ここでは、該決定された配列と該機能と関連付けて、機能を有するRNAが同定される。ここで、RNAの増幅までの工程では、(所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法)および(所望の配列を有する成熟型RNAを生産するためのキット)などにおいて説明されている形態を利用することができることが理解される。また、他の工程における例えば、培養などの工程は、当業者に公知の任意の手法を用いることができることが理解される。
1つの実施形態では、本発明は、G)RNAの発現パターン解析を行う工程、をさらに包含する。具体的にはPCRの段階で逆向きに増幅させたRNA配列に対して、その合成時に標識rNTPを加えれば「プローブ」の作製が可能であるということである。
1つの局面において、本発明は、機能を有するRNAをスクリーニングするためのキットを提供する。このキットは、A)対象RNAを提供する手段;B)B−1)該所望の配列を有する鋳型核酸にリンカー核酸を結合させてリンカー核酸結合鋳型核酸を生産するライゲーション手段;B−2)該リンカー核酸結合鋳型核酸に基づいて核酸増幅鋳型を生産する転写手段;B−3)該核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を行って増幅産物を生産する増幅手段;B−4)該増幅産物をベクターに配置し、該ベクターで宿主を形質転換する手段;−5)該宿主を増幅させる増幅された宿主からベクターを入手する手段;B−6)該ベクターを鋳型として用いてRNAポリメラーゼを使用してRNA産物を生産するRNA増幅手段;およびB−7)該RNA産物から所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産する調整を行って、対象RNAを増幅生産する手段、C)該対象RNAを試験細胞に感染させる手段;D)該試験細胞が所望の機能を発現した場合、該発現が見出される試験細胞に含まれる対象RNAに対応する宿主をさらに培養して増幅させる手段;E)単一コロニーを探索する手段、F)該単一コロニーに含まれるRNAの配列を決定する手段を包含する。ここで、(所望の配列を有する成熟型RNAを生産するためのキット)などにおいて説明されている形態を利用することができることが理解される。また、他の手段における例えば、培養などの手段は、当業者に公知の任意の手法を用いることができることが理解される。
(使用)
本発明は、本発明のRNAまたは本発明の方法によって生産されたRNA(したがって、所望の配列のみからなるRNA)の、該RNAの機能を利用する分析または診断のための使用を提供する。分析または診断は、提供されるRNAに応じて変動することが理解される。
(他の形態)
本発明の方法の一部または全体を自動化するための装置もまた、本発明の範囲内である。
本発明の1つの実施形態において、連結される所望の核酸分子の少なくとも1つは、ベクターの配列を有する。本発明に好ましいベクターとしては、プラスミド、およびウイルスが挙げられる。核酸分子の1つとしてベクター(特にクローニングベクター)を用いる場合、本発明は、遺伝子クローニング技術として用いられ得る。
クローニングベクターとしては、例えば、pUC118/119 タイプベクター、pUC18/19 タイプベクター、pTWV228/229 DNA、pBR322 DNAなどを挙げることができ、それらは、例えば、Roche,TaKaRaなどから入手可能である。
本発明の1つの実施形態において、本発明によって構築された核酸構築物を導入された細胞もまた、本発明に含まれ得る。これらの細胞としては、細菌(例えば、大腸菌)、真菌(例えば、酵母)、動物細胞(例えば、ヒト、類人猿、ウシ、ウマ、ブタおよびげっ歯類などの哺乳動物細胞ならびに非哺乳動物細胞)、植物細胞(例えば、被子植物および裸子植物)の細胞が、挙げられる。細胞に核酸構築物を導入する方法としては、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションなどの方法が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明に従う核酸構築物は、薬学的組成物中に組み込まれ得、ヒトまたは他の動物に投与され得る。これらの薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む、丸剤、錠剤、シロップ剤、カプセルなどの経口薬、注射または輸液(皮下、静脈内、腹腔内、筋肉内など)によって投与される滅菌の溶液剤、鼻腔内投与されるエアロゾル剤、座剤などであり得るが、これらに限定されない。
また、本発明に従う核酸構築物を導入された細胞をヒトまたは他の動物に投与することによる、遺伝子治療の方法が、本発明によって提供され得る。
また、本発明によって、本発明に従う方法によって構築された核酸構築物を導入された細胞を移植された動物または植物もまた、提供される。本発明に従う核酸構築物を導入した動物または植物の利用方法としては、例えば、本発明に従う核酸構築物または本発明に従う核酸構築物によってコードされるペプチドを乳として分泌するウシ、ウマ、ヒツジおよびヤギなどの哺乳動物、本発明に従う核酸構築物または本発明に従う核酸構築物または本発明に従う核酸構築物によってコードされるペプチドを可食部分(例えば、実、地下茎、葉など)に蓄える食用の植物(例えば、芋類、果物類、野菜類など)が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、請求の範囲によってのみ限定される。
以下、実施例により、本発明の構成をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において使用した試薬類は、特に言及した場合を除いて、和光純薬、Sigma、東洋紡、New England Biolabs、Clonetech、アマシャム、Invtrogen、フナコシ、ニッポンジーンなどから市販されているものを使用した。合成DNAは、Invitrogenに生産を依頼したが、当業者は当該分野において周知の技法を用いてそのようなDNAおよびRNAを合成することができることが理解される。
(手法)
本発明のプロトコルを図1に示した。なお、以下の手順説明では、miRNAを例示しているが、本明細書に記載されているように、他のRNA(例えば、ミトコンドリアRNA,tRNAなど)であっても同様の手順で合成できることが理解される。また、リンカー核酸などの配列についても適宜別の配列に変更することができることが理解される。
(1. miRNAへのリンカー核酸の結合)
1つの実施形態では、本過程は既に確立されているNelson protocolをそのまま踏襲したが、他のプロトコルも使用できることが理解される。
得られる反応産物は次の通りである
キメラ構造
ATCGT-aggcacugaaa-miRNA-CTGTAGGCACCATCAATC(配列番号19)
DNA RNA DNA
(2. 逆転写酵素反応)
キメラ構造の3’末端と相補的な下記のプライマーで逆転写反応(RT-PCR)を行う。
逆転写反応プライマー:
5’-GATTGATGGTGCCTACAG-3’(配列番号20)
キメラ構造:
ATCGT-aggcacugaaa-miRNA-CTGTAGGCACCATCAATC(配列番号21)
反応方向←-----GACATCCGTGGTAGTTAG(配列番号22)
(3. PCR反応)
逆転写反応後に下記のプライマーで通常のPCR反応を行う。この反応で、5’側プライマーにあらかじめプロモーター配列を入れることで、後の反応(4pre-RNAの作成)で必ず順方向のmiRNA配列を含むpre-RNAが合成される。
5’側プライマー:
5’-CCCCGAAGCTTTAATACGACTCACTATAGGGATCGTAGGCACCTGAAA-3’(配列番号23)
AAGCTT: HindIII 部位
TAATACGACTCACTATAGGG: T7 プロモーター認識部位(下線部)(配列番号24)
ATCGTAGGCACCTGAAA: Nelson リンカー核酸部位(配列番号25)
3’側プライマー:
5’-AAAAAAAGCGGCCGCGATTGATGGTGCCTACAG-3’(配列番号26)
GCGGCCGC: Not I site
GATTGATGGTGCCTACAG: IDTリンカー核酸部位(相補配列)(配列番号27)
PCR産物(配列番号28):
PCR産物に存在する制限酵素Hind IIIと制限酵素Not I に対するsiteを用いてベクターにクローニングする。ただしPCR産物にT7 プロモーター配列が含まれるので、ベクターとしてはT7プロモーターを含まないものを用いる。ただし、本発明で用いられる制限酵素およびRNAプロモーター配列とそれに相当するポリメラーゼは、それらに限定されるものでなく、他の制限酵素や他のプロモーター配列とそれを認識するRNAポリメラーゼでもよい。
(4. pre-RNAの作成と精製)
クローニングされたプラスミドをNot Iで切断し、これを鋳型としてT7 RNA ポリメラーゼでRNA合成を行う。このRNA産物をpre-RNAと呼ぶ。ここで、RNAの合成開始点はT7プロモーター配列の19番目のGなので、先頭部分にgggという余分な配列を持った下記のRNAが合成される。
合成されるRNA:
gggaucguaggcaccugaaa-miRNA-cuguaggcaccaucaaucgc-uu(配列番号29)
ここで、ggccgcuuuuuu(配列番号30)は、Not I消化後なので、もはや存在しない。ただし、ポリメラーゼの特性上、uがオーバーハングする場合がある。RNA合成後に鋳型のDNAをDNaseで除去することにより、反応チューブ内にはRNAのみが存在する。反応産物をフェノールクロロホルム処理とエタノール沈殿により精製する。
(5. 余剰RNA部位の除去)
この過程が本発明の要点である。すなわち、得られる産物は、目的とするmiRNAだけでなく、その両端に余分なRNA配列を含むが、RNase H処理とDNase 処理を組み合わせることにより、この余分なRNA配列だけを特異的に除去して、目的のmiRNA配列だけを作成する。
はじめに、精製されたRNAの5’、3’各々の余分な配列と相補的なprimerをアニーリングさせる(通常、primer添加量はRNA分子量の2倍以上とする)。
5’側プライマー:
5’-TTTCAGGTGCCTACGATCCC-3’(配列番号31)
3’側プライマー:
5’-GCGATTGATGGTGCCTACAG-3’(配列番号32)
生成物(配列番号33)
この状態で次にRNase H処理を行う(注:RNase HはDNAと結合している1本鎖RNAのみを選択的に分解する)。
RNase H分解産物(配列番号34、44)
ここで、DNase処理を行うと、これにより添加した過剰の相補的primerが分解され、miRNAの部分だけが残る。
-miRNA- -uu
オーバーハングしたUUは無視出来る。(酵素の種類によってはオーバーハングを抑えられるものもあるので、そのような酵素を使用してもよい)
(実施例1:アフリカツメガエルのミトコンドリアおよび体細胞のメチオニンtRNAの作成)
上述した手順に基づいて、アフリカツメガエルのミトコンドリアおよび体細胞メチオニンtRNAの作製を行った。なお、鋳型の調製は以下のようにして行った。なお、以後の実験方法でも同じであるが、既知の配列に関してはRT-PCRの段階から始める(本発明の方法の骨子はRNaseHなどの独特の除去系を使用するところにあり、クローニングからは始める必要は必ずしもない)。
(鋳型となるアフリカツメガエルのミトコンドリアのRNAの調製およびその後手順)
まずアフリカツメガエル胚からISOGENなどを利用しRNAを抽出する。
抽出したRNAの逆転写反応を行う。
プライマーは
ミトコンドリアMettRNA
agtaaagtcagctaaaaaagcttttgggcccataccccaaacatgttggttaaaccccttcctttacta(配列番号35)
に対して
3‘末端プライマー
aaaaaagcggccgcGATTGATGGTGCCTACAGtagtaaaggaaggggtttaa(配列番号36)
を使用する。
逆転写反応後に
5‘末端側プライマー
ccccaagcttTAATACGACTCACTATAGGGATCGTaggcacctgaaaagtaaagtcagctaaaaaag(配列番号37)
と上記の3‘末端側プライマーでPCRを行う。
PCR産物をT7プロモーター配列の含まないベクターに
HindIII(AAGCTT)、NotI(GCGGCCGC)の制限酵素部位でクローニングする。
クローニングされたプラスミドをNotIで切断し、T7 RNA ポリメラーゼ、DNaseを使用してpre-RNAを合成する。
合成されたpre-RNAに対して
5‘末端側プライマー
tttcaggtgcctACGATCCC(配列番号38)
3‘末端側プライマー
gcGATTGATGGTGCCTACAG(配列番号39)
をハイブリッドさせRNaseH処理、エキソヌクレアーゼI処理を行いmatureなミトコンドリアMettRNAを得る。
(鋳型となる体細胞のメチオニンtRNAの調製およびその後の手順)
RT-PCRで使用するプライマーは下記のものを使用する。
Met tRNA
agcagagtggcgcagcggaagcgtgctgggcccataacccagaggtcgatggatcgaaaccattctctgctacca(配列番号40)
に対して
3‘末端プライマー
aaaaaagcggccgcGATTGATGGTGCCTACAGtggtagcagagaatggtttc(配列番号41)
を使用する。
逆転写反応後に
5‘末端側プライマー
ccccaagcttTAATACGACTCACTATAGGGATCGTaggcacctgaaaagcagagtggcgcagcggaa(配列番号42)
と上記の3‘末端側プライマーでPCRを行う。
(結果)
図2 アフリカツメガエルのミトコンドリアおよび体細胞のメチオニン(Met)tRNAの作成。RNAの作成はT7 RNA ポリメラーゼを用いて行なった。レーン1、マーカー;レーン2、ミトコンドリアMettRNAのpre-RNA;レーン3、ミトコンドリアMettRNA;レーン4、Met RNAのpre-NA;レーン5、Met tRNA。図中の白矢頭はpre-RNAを、また白点はtRNAを示す。
このように、tRNAであれミトコンドリアRNAであれ、本発明である「後藤−浅島法」は、クローニングされた低分子量RNAに対して、新たなプライマーを用いてPCR反応を行い、pre−RNAの作成と精製、RNase H/DNase処理を行なうことで、matureな低分子量RNAを効率よく作成するものであることが実証された。
(実施例2:アフリカツメガエルの体細胞の2種類のmiRNA(miRNA−1とmiRNA−427)の作製)
上述した手順に基づいて、アフリカツメガエルの体細胞の2種類のmiRNA(miRNA−1とmiRNA−427)の作製を行った。なお、鋳型の調製は以下のようにして行った。
(鋳型となるアフリカツメガエルの体細胞の2種類のmiRNA(miRNA−1とmiRNA−427)の調製およびその後の手順)
実施例1および2に準じるが、これらとは異なり配列が短いのでプライマーに配列を含みPCRから反応を行う。
(配列)
Xenopus laevis microRNA miR-1 アフリカツメガエル
tggaatgtaaagaagtatgtat (配列番号43)
に対して
5‘末端側プライマー
ATCGTAGGCACCTGAAATGGAATGTAAAGAAGTATGT(配列番号45)
3‘末端プライマー
AAAAAAGCGGCCGCGATTGATGGTGCCTACAGATACATACTTCTTTACATTC(配列番号46)
を用いてPCRを行う。
miRNA-427
aaagtgcttcctgttttgggcgt(配列番号47)
に対して
5‘末端側プライマー
ATCGTAGGCACCTGAAAAAAGTGCTTCCTGTTTTGGG(配列番号48)
3‘末端プライマー
AAAAAAGCGGCCGCGATTGATGGTGCCTACAGACGCCCAAAACAGGAAGCAC(配列番号49)
を用いてPCRを行う。
同一配列の除去プライマーを用いる場合は、
Xenopus laevismicroRNA mir-124
taaggcacgcggtgaataccaa(配列番号60)
に対して、
5‘末端側プライマー
CCCCGAATTCTAATACGACTCACTATAGGGCTTTCTTCATGTTGCTAAGGCACGCGGTGAATACCAA(配列番号61)
3‘末端側プライマー
AAAAAAGCGGCCGCAACATGAAGAAAGCCCTTGGTATTCACCGCGTGCCTTA(配列番号62)
を用いてPCRを行う。
この場合は、除去用プライマー配列は
GCAACATGAAGAAAGCCC(配列番号63)
を3’側および5’側の両方に使用する。
(結果)
図3 アフリカツメガエルのmiRNA−1(mir−1と呼ぶ)とmiRNA−427(mir−427と呼ぶ)の作成。RNAの作成はT7 RNA polymeraseを用いて行なった。レーン1、マーカー;レーン2、mir−1のpre−RNA;レーン3、mature mir−1;レーン4、mir−427のpre−RNA;レーン5、mature mir−427。図中の白矢頭はpre−RNAを、また白点はtRNAを示す。
このように、miRNAであっても、本発明である「後藤−浅島法」は、クローニングされた低分子量RNAに対して、新たなプライマーを用いてPCR反応を行い、pre−RNAの作成と精製、RNase H/DNase処理を行なうことで、matureな低分子量RNAを効率よく作成するものであることが実証された。
同一除去配列を用いる場合でも、同様に、効率よく除去することができることが明らかになる。
(実施例3:マウスの例)
以下の3種のmiRNAについて、上記実施例と同様の実験を行って、matureな低分子量RNAを効率よく生産できるかどうかを確認する。
上述した手順に基づいて、マウスmiRNAの作製を行った。なお、鋳型の調製は以下のようにして行った。
(鋳型となるマウスmiRNAの調製およびその後の手順)
と同様にPCRから反応を行う
miR-1b
tggaatgtaaagaagtatgtaa(配列番号50)
に対して
5‘末端側プライマー
ATCGTaggcacctgaaaTGGAATGTAAAGAAGTATGTAA(配列番号51)
3‘末端プライマー
aaaaaagcggccgcGATTGATGGTGCCTACAGttacatacttctttacatt(配列番号52)
を用いてPCRを行う。以下は上記実施例を同じである。
(配列)
Mus musculus microRNA miR-1b マウス
tggaatgtaaagaagtatgtaa (配列番号50)
Mus musculus microRNA miR-1c マウス
tggaatgtaaagaagtatgtac (配列番号53)
Mus musculus microRNA miR-1d マウス
tggaatgtaaagaagtatgtatt (配列番号54)
(結果)
合成した結果を観察すると、別の動物種のmiRNAであっても、本発明である「後藤−浅島法」は、クローニングされた低分子量RNAに対して、新たなプライマーを用いてPCR反応を行い、pre−RNAの作成と精製、RNase H/DNase処理を行なうことで、matureな低分子量RNAを効率よく作成するものであることが実証される。
(実施例4:ラットの例)
以下のmiRNAについて、上記実施例と同様の実験を行って、matureな低分子量RNAを効率よく生産できるかどうかを確認する。
上述した手順に基づいて、ラットmiRNAの作製を行った。なお、鋳型の調製は以下のようにして行った。
(鋳型となるラットmiRNAの調製)
マウスの実施例と同様の方法にてmiRNAの調製を行う。
(配列)
Rattus norvegicus microRNA miR-1 ラット
tggaatgtaaagaagtgtgta (配列番号55)
(結果)
合成した結果を観察すると、別の動物種のmiRNAであっても、本発明である「後藤−浅島法」は、クローニングされた低分子量RNAに対して、新たなプライマーを用いてPCR反応を行い、pre−RNAの作成と精製、RNase H/DNase処理を行なうことで、matureな低分子量RNAを効率よく作成するものであることが実証される。
(実施例5:トロピカリスの例)
以下のmiRNAについて、上記実施例と同様の実験を行って、matureな低分子量RNAを効率よく生産できるかどうかを確認する。
上述した手順に基づいて、トロピカリスmiRNAの作製を行った。なお、鋳型の調製は以下のようにして行った。
(鋳型となるトロピカリスmiRNAの調製)
マウスの実施例と同様の方法にてmiRNAの調製を行う。
(配列)
Xenopus tropicalis microRNA miR-1 トロピカリス
tggaatgttaagaagtatgta (配列番号56)
(結果)
合成した結果を観察すると、別の動物種のmiRNAであっても、本発明である「後藤−浅島法」は、クローニングされた低分子量RNAに対して、新たなプライマーを用いてPCR反応を行い、pre−RNAの作成と精製、RNase H/DNase処理を行なうことで、matureな低分子量RNAを効率よく作成するものであることが実証される。
(実施例6:ゼブラフィッシュの例)
以下のmiRNAについて、上記実施例と同様の実験を行って、matureな低分子量RNAを効率よく生産できるかどうかを確認する。
上述した手順に基づいて、ゼブラフィッシュmiRNAの作製を行った。なお、鋳型の調製は以下のようにして行った。
(鋳型となるゼブラフィッシュmiRNAの調製)
マウスの実施例と同様の方法にてmiRNAの調製を行う。
(配列)
Danio rerio microRNA miR-1 ゼブラフィッシュ
tggaatgtaaagaagtatgta (配列番号57)
(結果)
合成した結果を観察すると、別の動物種のmiRNAであっても、本発明である「後藤−浅島法」は、クローニングされた低分子量RNAに対して、新たなプライマーを用いてPCR反応を行い、pre−RNAの作成と精製、RNase H/DNase処理を行なうことで、matureな低分子量RNAを効率よく作成するものであることが実証される。
(実施例7:線虫の例)
以下のmiRNAについて、上記実施例と同様の実験を行って、matureな低分子量RNAを効率よく生産できるかどうかを確認する。
上述した手順に基づいて、線虫miRNAの作製を行った。なお、鋳型の調製は以下のようにして行った。
(鋳型となる線虫miRNAの調製)
マウスの実施例と同様の方法にてmiRNAの調製を行う。
(配列)
Caenorhabditis elegans microRNA mir-1 線虫
tggaatgtaaagaagtatgta (配列番号58)
(結果)
合成した結果を観察すると、別の動物種のmiRNAであっても、本発明である「後藤−浅島法」は、クローニングされた低分子量RNAに対して、新たなプライマーを用いてPCR反応を行い、pre−RNAの作成と精製、RNase H/DNase処理を行なうことで、matureな低分子量RNAを効率よく作成するものであることが実証される。
(実施例8:ショウジョウバエの例)
以下のmiRNAについて、上記実施例と同様の実験を行って、matureな低分子量RNAを効率よく生産できるかどうかを確認する。
上述した手順に基づいて、ショウジョウバエmiRNAの作製を行った。なお、鋳型の調製は以下のようにして行った。
(鋳型となるショウジョウバエmiRNAの調製)
マウスの実施例と同様の方法にてmiRNAの調製を行う。
(配列)
Drosophila melanogaster microRNA miR-1 ショウジョウバエ
tggaatgtaaagaagtatggag (配列番号59)
(結果)
合成した結果を観察すると、別の動物種のmiRNAであっても、本発明である「後藤−浅島法」は、クローニングされた低分子量RNAに対して、新たなプライマーを用いてPCR反応を行い、pre−RNAの作成と精製、RNase H/DNase処理を行なうことで、matureな低分子量RNAを効率よく作成するものであることが実証される。
なお、上述のmiRNAは以下のアラインメント結果からも明らかなように相同性が高いことが知られている。
[化3]
mouse mir-1b tggaatgtaaagaagtatgtaa
mouse mir-1c tggaatgtaaagaagtatgtac
mouse mir-1d tggaatgtaaagaagtatgtatt
rat mir-1 tggaatgtaaagaagtgtgta
laevis mir-1 tggaatgtaaagaagtatgtat
trop mir-1 tggaatgttaagaagtatgta
zebra mir-1 tggaatgtaaagaagtatgta
C.elegans mir-1 tggaatgtaaagaagtatgta
dro mir-1 tggaatgtaaagaagtatggag
********.*******.**.*
(実施例9)
次にスクリーニングをした例として、癌原因因子としての機能的miRNAのスクリーニングを実証する。
実質的には、上記実施例に記載されているRNA合成法を用いる。プロトコルとしては以下を用いる。
(プロトコル)
1、任意の癌細胞よりmiRNAを抽出する
2、miRNAをNelson法(上記実施例において示されている前半部分)と本法で使用するプライマーを用いてRT-PCRを行う
3、PCR産物を所定の制限酵素サイトを使用してベクターにクローニング(ライゲーション)する
4、クローニングされたベクタープラスミド(複数の未知miRNA配列を含有する)を大腸菌に形質転換する。
5、形質転換された個々のシングルコロニーのレプリカを取り、50-200ずつを1サンプルとして計20のサンプルの大腸菌溶液を培養し、プラスミドを精製する。
1サンプル(50-200)×20=(1000-4000)のクローンからの絞りこみ
6、各サンプルから精製されたプラスミドより本法を利用してmiRNA(50-200種類/サンプル)を作製する
7、作製されたmiRNAを正常細胞にインフェクションし、培養する。
8、あるサンプルからのmiRNAが正常細胞を癌化した場合、そのサンプルのもとになった大腸菌コロニー(レプリカから大腸菌)を新たに1サンプルに5-20のコロニーが含まれるようにして培養する(現段階で50-200に絞り込まれた)
1サンプル(5-20)×10=(50-200)のクローンからの絞り込み
9、6-8の工程を繰り返し、最終的に単一のシングルコロニーを探索し、そのプラスミドに含まれるmiRNAの配列情報を得る
その結果は、以下の通りである。
10、以上より癌原因miRNAが解明され、以後はこのmiRNAの発現パターン等の解析を行い、癌原因となることの検証実験に移る。
以上のように9の段階まではどのようなmiRNAの配列では未知でも構わないことが分かる。
発見されたmiRNAの発現量が癌細胞と正常細胞の間で異なることが分かるはずである。つまりある種のmiRNAが癌細胞で多いのであれば、それを抑制するような対処を取れば正常に戻る可能性を示唆することになる。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明によって提供される方法は、従来法と比較して簡便、迅速、正確かつ費用効果の高い方法であり、あらゆる核酸に適用可能である。一局面において、本発明の方法は、従来法より格段に簡便かつ迅速なスクリーニング方法に使用され得る。また、本発明の方法は、分子生物学、組織および器官の再生、再生医学および再生医療、遺伝子治療、診断学、ならびに医薬品開発などの分野で幅広く活用可能である。本発明の方法によって構築される核酸構築物は、医薬品の製造、遺伝子治療などに幅広く使用され得る。従って、本発明は、産業上の利用可能性が極めて高いといえる。
本「後藤−浅島法」により、これまで実現されていなかったmatureな低分子量miRNAを効率よく作成することができる。その結果、生物学的ならびに医学的現象が現れた特定のRNAソースから、任意のmatureな低分子量miRNAを、効率よく迅速に作成することができる。具体的には、以下の通りである。
1. miRNAの生命現象との関わりにおける機能の理解が可能になる。
2. miRNAの機能不全や過剰機能発現に起因する疾病の発見や診断、そして、治療法の開発が可能になる。
また、本「後藤−浅島法」は、miRNAだけでなく、tRNA等の他の低分子量RNAの作成にも適用でき、
3. 広く一般に低分子量RNAの生命現象との関わりにおける機能の理解が可能になる。
4. 広く一般に低分子量RNAの機能不全や過剰機能発現に起因する疾病の発見や診断、そして、治療法の開発が可能になる。
さらに、本「後藤−浅島法」は、低分子量RNA以外のRNAに対しても、5’、3’両末端部分に余剰配列を残さないので、機能解析の時に細胞内での最終的な形状(matureな形)が必要なRNAの作成の全てに適用でき、そのように作成された
5. matureな形のRNAの生命現象との関わりにおける機能の理解が可能になる。
6. matureな形のRNAの機能不全や過剰機能発現に起因する疾病の発見や診断、そして、治療法の開発が可能になる。
図1は、本発明のプロトコルである。ただし、miRNAへのリンカー核酸の結合までの方法はNelson protocolを使用した。 アフリカツメガエルのミトコンドリアおよび体細胞のメチオニン(Met)tRNAの作成。RNAの作成はT7 RNA polymeraseを用いて行なった。レーン1、マーカー;レーン2、ミトコンドリアMettRNAのpre-RNA;レーン3、ミトコンドリアMettRNA;レーン4、Met RNAのpre-NA;レーン5、Met tRNA。図中の白矢頭はpre-RNAを、また白点はtRNAを示す。 アフリカツメガエルのmiRNA-1(mir-1と呼ぶ)とmiRNA-427(mir-427と呼ぶ)の作成。RNAの作成はT7 RNApolymeraseを用いて行なった。レーン1、マーカー;レーン2、mir-1のpre-RNA;レーン3、maturemir-1;レーン4、mir-427のpre-RNA;レーン5、maturemir-427。図中の白矢頭はpre-RNAを、また白点はtRNAを示す。
(大文字はDNA,小文字はRNA)
配列番号1 “modban”、AMP-5’p-5’p/CTGTAGGCACCATCAATジデオキシC- 3’
配列番号2 Nelsonリンカー核酸5’ATCGTrArGrGrCrArCrCrUrGrArArA3’
配列番号3 Smartban5’-ATCGTAGGCACCTGAAAGGG-3’
配列番号4 BanOne:5’-ATTGATGGTGCCTACAG-3’
配列番号5 BanOneの相補鎖
配列番号6 5’PCRプライマーBanTwo: 5’-ATCGTAGGCACCTGAAA-3’
配列番号4 3’PCRプライマーBanTwoの相補鎖
配列番号8 SMARTbancDNA insert chiban 5’-ATCGTAGGCACCTGAAAGGG-(RNA 5’-to-3’)-CTGTAGGCACCATCAATC-3’
配列番号9 5’側 Nelsonリンカー核酸: 5’-ATCGT-aggcaccugaaa-3’
配列番号10 3’側 miRNAcloningリンカー核酸: 5rApp/CTGTAGGCACCATCAAT/3ddC
配列番号11 キメラ構造 ATCGT-aggcacugaaa-miRNA-CTGTAGGCACCATCAATC
配列番号12 T7プロモーター配列1TAATA CGACTCACTA TAGG
配列番号13 T7プロモーター配列2TAATACGACTCACTATAGGG
配列番号14 SP6プロモーター配列A TTTAGGTGAC ACTATAGA
配列番号15 T3プロモーター配列AATTAACCCTCACTAAAGG
配列番号16 具体的なプライマーセット1 ccccaagcttTAATACGACTCACTATAGGGATCGTaggcacctgaaa
配列番号17 具体的なプライマーセット2 ccccgaattcTAATACGACTCACTATAGGGATCGTaggcacctgaaa
配列番号18 具体的なプライマーセット3 aaaaaagcggccgcGATTGATGGTGCCTACAG
配列番号19 キメラ構造ATCGT-aggcacugaaa-miRNA-CTGTAGGCACCATCAATC
配列番号20 逆転写反応プライマー: 5’-GATTGATGGTGCCTACAG-3’
配列番号21 キメラ構造: ATCGT-aggcacugaaa-miRNA-CTGTAGGCACCATCAATC
配列番号22 反応方向←-----GACATCCGTGGTAGTTAG
配列番号23 5’側プライマー:5’-CCCCGAAGCTTTAATACGACTCACTATAGGGATCGTAGGCACCTGAAA-3’
配列番号24 TAATACGACTCACTATAGGG:T7 プロモーター認識部位(下線部)
配列番号25 ATCGTAGGCACCTGAAA:Nelson リンカー核酸部位
配列番号26 3’側プライマー:5’-AAAAAAAGCGGCCGCGATTGATGGTGCCTACAG-3’
配列番号27 GATTGATGGTGCCTACAG:IDTリンカー核酸部位
配列番号28 PCR産物(化1)
配列番号29 合成されるRNA gggaucguaggcaccugaaa-miRNA-cuguaggcaccaucaaucgc-uu
配列番号30 NotI消化後に存在しない配列ggccgcuuuuuu
配列番号31 5’側プライマー:5’-TTTCAGGTGCCTACGATCCC-3’
配列番号32 3’側プライマー:5’-GCGATTGATGGTGCCTACAG-3’
配列番号33 生成物(化2)
配列番号34 RNaseH分解産物(配列番号34)(化3)
配列番号35 ミトコンドリアMet tRNA agtaaagtcagctaaaaaagcttttgggcccataccccaaacatgttggttaaaccccttcctttacta
配列番号36 3‘末端プライマー:aaaaaagcggccgcGATTGATGGTGCCTACAGtagtaaaggaaggggtttaa
配列番号37 5‘末端側プライマーccccaagcttTAATACGACTCACTATAGGGATCGTaggcacctgaaaagtaaagtcagctaaaaaag
配列番号38 pre-RNAに対する5‘末端側プライマーtttcaggtgcctACGATCCC
配列番号39 pre-RNAに対する3‘末端側プライマーgcGATTGATGGTGCCTACAG
配列番号40 MettRNA
agcagagtggcgcagcggaagcgtgctgggcccataacccagaggtcgatggatcgaaaccattctctgctacca
配列番号41 MettRNA3‘末端プライマー
aaaaaagcggccgcGATTGATGGTGCCTACAGtggtagcagagaatggtttc
配列番号42 MettRNA5‘末端側プライマー
ccccaagcttTAATACGACTCACTATAGGGATCGTaggcacctgaaaagcagagtggcgcagcgga
配列番号43 Xenopuslaevis microRNA miR-1 アフリカツメガエルtggaatgtaaagaagtatgtat
配列番号44 RNaseH分解産物
配列番号45 miRNA-15‘末端側プライマー ATCGTAGGCACCTGAAATGGAATGTAAAGAAGTATGT
配列番号46 miRNA-13‘末端プライマー AAAAAAGCGGCCGCGATTGATGGTGCCTACAGATACATACTTCTTTACATTC
配列番号47 miRNA-427 aaagtgcttcctgttttgggcgt
配列番号48 miRNA-4275‘末端側プライマー ATCGTAGGCACCTGAAAAAAGTGCTTCCTGTTTTGGG
配列番号49 miRNA-4273‘末端プライマー AAAAAAGCGGCCGCGATTGATGGTGCCTACAGACGCCCAAAACAGGAAGCAC
配列番号50 Musmusculus microRNA miR-1b tggaatgtaaagaagtatgtaa
配列番号51 miR-1b5‘末端側プライマー ATCGTaggcacctgaaaTGGAATGTAAAGAAGTATGTAA
配列番号52 miR-1b3‘末端プライマー aaaaaagcggccgcGATTGATGGTGCCTACAGttacatacttctttacatt
配列番号53 Musmusculus microRNA miR-1c マウス tggaatgtaaagaagtatgtac
配列番号54 Musmusculus microRNA miR-1d マウス tggaatgtaaagaagtatgtatt
配列番号55 Rattusnorvegicus microRNA miR-1 ラット tggaatgtaaagaagtgtgta
配列番号56 Xenopus tropicalis microRNA miR-1 トロピカリス tggaatgttaagaagtatgta
配列番号57 Daniorerio microRNA miR-1 ゼブラフィッシュ tggaatgtaaagaagtatgta
配列番号58 Caenorhabditis elegans microRNA mir-1 線虫 tggaatgtaaagaagtatgta
配列番号59 Drosophila melanogaster microRNA miR-1 ショウジョウバエ tggaatgtaaagaagtatggag
配列番号60 Xenopuslaevis microRNA mir-124 taaggcacgcggtgaataccaa
配列番号61 例示の同一配列の除去プライマーのための5‘末端側プライマー CCCCGAATTCTAATACGACTCACTATAGGGCTTTCTTCATGTTGCTAAGGCACGCGGTGAATACCAA
配列番号62 例示の同一配列の除去プライマーのための3‘末端側プライマー AAAAAAGCGGCCGCAACATGAAGAAAGCCCTTGGTATTCACCGCGTGCCTTA
配列番号63 例示の同一配列の除去用プライマー配列 GCAACATGAAGAAAGCCC

Claims (95)

  1. 単離された成熟型RNA。
  2. 合成成熟型RNA。
  3. 低分子量成熟型RNA。
  4. 前記成熟型RNAは、目的の配列のみからなる、RNA。
  5. 所望の配列を有する成熟型RNAを生産する方法であって:
    A)該所望の配列を有する鋳型核酸にリンカー核酸を結合させてリンカー核酸結合鋳型核酸を生産するライゲーション工程;
    B)該リンカー核酸結合鋳型核酸に基づいて核酸増幅鋳型を生産する核酸増幅鋳型生産工程;
    C)該核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を行って増幅産物を生産する増幅工程;
    D)該増幅産物に対してRNAポリメラーゼを用いてRNA産物を生産するRNA増幅工程;および
    E)該RNA産物から所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産する調整工程;
    を包含する、方法。
  6. 前記鋳型核酸は、RNAである、請求項5に記載の方法。
  7. 前記リンカー核酸は、DNA、RNAまたはDNA−RNAハイブリッドを含む、請求項5に記載の方法。
  8. 前記リンカー核酸は、制限酵素部位を含む、請求項5に記載の方法。
  9. 前記リンカー核酸は、制限酵素部位を含まない、請求項5に記載の方法。
  10. 前記ライゲーション工程において、前記連結がリガーゼによって媒介される、請求項5に記載の方法。
  11. 前記ライゲーション工程において、前記連結がDNAとRNAとの連結を媒介する能力も有するリガーゼにより媒介される、請求項5に記載の方法。
  12. 前記リンカー核酸が二つ提供され、その一方の末端にリン酸が付加されていることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  13. 前記リンカー核酸が二つ提供され、その一方の末端がライゲーション妨害基で改変されていることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  14. 前記リンカー核酸が二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、該第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されていることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  15. 前記ライゲーション妨害基が、ジデオキシヌクレオチドである、請求項13または14に記載の方法。
  16. 前記リンカーが二つ提供され、前記リンカー核酸が第1のリンカー核酸および第2のリンカー核酸の二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、該第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されており、第2のリンカー核酸は少なくとも3’側がRNAである、請求項5に記載の方法。
  17. 前記リンカーが二つ提供され、前記リンカー核酸が第1のリンカー核酸および第2のリンカー核酸の二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、該第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されており、第2のリンカー核酸は5’側がDNAであり3’側がRNAである、請求項5に記載の方法。
  18. 前記A)ライゲーション反応において、前記第2のリンカー核酸と前記鋳型核酸との連結をまず行って第1連結産物を得、次に前記第1のリンカー核酸と該第1連結産物との連結を行うことを特徴とする、請求項17に記載の方法。
  19. 前記ライゲーション工程は、smart protocolまたはNelson protocolにて行われる、請求項5に記載の方法。
  20. 前記鋳型核酸はRNAである、請求項5に記載の方法。
  21. 前記鋳型核酸はRNAであり、前記核酸増幅鋳型の生産は逆転写反応により達成され、前記核酸増幅鋳型はDNAである、請求項5に記載の方法。
  22. 前記リンカー核酸結合鋳型核酸がRNAとDNAとのキメラ核酸である、請求項5に記載の方法。
  23. 前記リンカー核酸結合鋳型核酸がRNAとDNAとのキメラ核酸であり、前記核酸増幅鋳型の生産は逆転写反応により達成され、該逆転写反応において用いられるプライマーが該リンカー核酸結合鋳型核酸のリンカー核酸部分に相補的な配列を含む、請求項5に記載の方法。
  24. 前記核酸増幅反応が、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、gap LCR、鎖置換増幅(strand displacement amplification;SDA)、Qβレプリカーゼ増幅、転写増幅システム(TAS)、自己支持配列複製システム(self−sustained sequence replication system;3SR);核酸配列ベース増幅(NASBA);転写媒介増幅(TMA)、等温条件下キメラプライマー開始核酸増幅(ICAN;Isothermally chimeric primer used amplification of nucleic acid)およびループ媒介性等温増幅(LAMP)からなる群より選択される、請求項5に記載の方法。
  25. 前記核酸増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応である、請求項5に記載の方法。
  26. 前記核酸増幅反応において、プロモーター配列を含むプライマーが用いられる、請求項5に記載の方法。
  27. 前記核酸増幅反応において使用される5’側のプライマーにプロモーター配列が含まれる、請求項5に記載の方法。
  28. 前記核酸増幅反応において使用されるプライマーが、制限酵素部位の配列を含む、請求項5に記載の方法。
  29. 前記核酸増幅反応において使用されるプライマーが、マルチクローニングサイトを含む、請求項5に記載の方法。
  30. 前記核酸増幅反応において使用されるプライマーが、制限酵素部位の配列を含み、5’側のプライマーにプロモーター配列が含まれる、請求項5に記載の方法。
  31. 前記核酸増幅反応において使用されるプライマーが、リンカー核酸の配列またはその相補配列あるいはその一部を含む、請求項5に記載の方法。
  32. 前記核酸増幅反応において使用されるプライマーが、リンカー核酸の配列またはその相補配列あるいはその一部を含み、該プライマーが、制限酵素部位の配列を含み、5’側のプライマーにプロモーター配列が含まれる、請求項5に記載の方法。
  33. C)増幅工程の後に、前記増幅産物を、ベクターにクローニングする工程をさらに包含する、請求項5に記載の方法。
  34. 前記ベクターは、前記プロモーター配列を含まないことを特徴とする、請求項31に記載の方法。
  35. 前記増幅産物がDNAであり、前記RNAポリメラーゼが、DNA依存性である、請求項5に記載の方法。
  36. 前記RNAポリメラーゼは、前記プロモーター配列を認識するものである、請求項5に記載の方法。
  37. 前記核酸増幅反応において、使用されるプライマーが、リンカー核酸の配列またはその相補配列あるいはその一部を含み、該プライマーが、制限酵素部位の配列を含み、5’側のプライマーにプロモーター配列が含まれ
    前記C)増幅工程の後に、前記増幅産物を、ベクターにクローニングする工程をさらに包含し、該ベクターは、前記プロモーター配列を含まず、前記RNAポリメラーゼが該プロモーター配列を認識し、かつ、3’側のプライマーの該制限酵素部位を切断する制限酵素で消化して該RNAポリメラーゼの鋳型として該RNAポリメラーゼによる増幅を行うことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  38. RNA増幅工程の後にDNAを除去する工程をさらに包含する、請求項5に記載の方法。
  39. 前記DNAの除去は、DNaseにより達成される、請求項38に記載の方法。
  40. 前記RNA増幅工程において、存在するRNA分子の量の少なくとも2倍量のプライマーが使用される、請求項5に記載の方法。
  41. 前記RNAポリメラーゼは、オーバーハングを生じさせないRNAポリメラーゼである、請求項5に記載の方法。
  42. 前記所望でないRNA配列の除去は、前記リンカー核酸結合鋳型核酸の配列のうち、前記所望の配列以外の配列と相補的な除去用プライマーを前記RNA産物とハイブリダイズさせてハイブリダイズ産物を生成し、該ハイブリダイズ産物に対してDNAと結合している一本鎖RNAのみを選択的に分解する手段を用いて分解させて、所望の配列のみを含むRNAを生産することを包含する、請求項5に記載の方法。
  43. 前記除去用プライマーは、前記所望の配列からなるRNAに直接連結されている配列に対して相補的な配列を少なくとも1つ含み、該相補的な配列は、前記RNA産物とのハイブリダイズ形成に充分な長さを含む、請求項42に記載の方法。
  44. 前記所望でないRNA配列の除去は、DNAと結合している一本鎖RNAのみを選択的に分解することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
  45. 前記所望でないRNA配列の除去は、RNase Hにより達成される、請求項5に記載の方法。
  46. RNAを実質的に分解しないDNA分解手段によりDNAを分解する工程をさらに包含する、請求項5に記載の方法。
  47. さらに、前記RNAポリメラーゼによって生じたオーバーハングを除去する工程を包含する、請求項5に記載の方法。
  48. 前記RNAポリメラーゼによって生じたオーバーハングを除去する前記工程は、電気泳動を包含する、請求項47に記載の方法。
  49. 前記成熟型RNAは、低分子量RNAである、請求項5に記載の方法。
  50. 前記成熟型RNAは、miRNAである、請求項5に記載の方法。
  51. 所望の配列を有する成熟型RNAを生産するためのキットであって:
    A1)該所望の配列を有する鋳型核酸に連結させるためのリンカー核酸;
    A2)該リンカー核酸を該鋳型核酸に結合させる結合手段;
    B)該鋳型核酸と該リンカー核酸とが連結したリンカー核酸結合鋳型核酸から核酸増幅鋳型を生産する核酸増幅鋳型生産手段;
    C)該転写反応によって生じる核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を生じさせる核酸増幅手段;
    D)該核酸増幅反応によって増幅された産物を鋳型としてRNAを生産する手段;および
    E)所望でないRNA配列を除去するRNA配列除去手段、
    を備える、キット。
  52. 前記リンカー核酸は、制限酵素部位を含むことを特徴とする、請求項51に記載のキット。
  53. 前記リンカー核酸は、制限酵素部位を含まないことを特徴とする、請求項51に記載のキット。
  54. 前記リンカー核酸が二つ提供され、その一方の末端にリン酸が付加されていることを特徴とする、請求項51に記載のキット。
  55. 前記リンカー核酸が二つ提供され、その一方の末端がライゲーション妨害基で改変されていることを特徴とする、請求項51に記載のキット。
  56. 前記リンカー核酸が二つ提供され、その一方の末端にリン酸が付加され、他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されていることを特徴とする、請求項51に記載のキット。
  57. 記ライゲーション妨害基が、ジデオキシヌクレオチドである、請求項55または56に記載のキット。
  58. 前記リンカー核酸が二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、該第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されていることを特徴とする、請求項51に記載のキット。
  59. 前記リンカーが二つ提供され、前記リンカー核酸が第1のリンカー核酸および第2のリンカー核酸の二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、該第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されており、第2のリンカー核酸は少なくとも3’側がRNAである、請求項51に記載のキット。
  60. 前記リンカーが二つ提供され、前記リンカー核酸が第1のリンカー核酸および第2のリンカー核酸の二つ提供され、そのうちの第1のリンカー核酸の一方の末端にリン酸が付加され、該第1のリンカー核酸の他方の末端がライゲーションを妨害する基で改変されており、第2のリンカー核酸は5’側がDNAであり3’側がRNAである、請求項51に記載のキット。
  61. 前記結合手段は、RNAリガーゼである、請求項51に記載のキット。
  62. 前記結合手段は、DNAとRNAとの連結を媒介する能力も有するリガーゼである、請求項51に記載のキット。
  63. 前記結合手段は、T4 RNAリガーゼである、請求項51に記載のキット。
  64. 前記鋳型核酸はRNAであり、前記核酸増幅鋳型生産手段は、逆転写酵素とプライマーを含む、請求項51に記載のキット。
  65. 前記プライマーセットは、該リンカー核酸結合鋳型核酸のリンカー核酸部分に相補的な配列を含むことを特徴とする、請求項51に記載のキット。
  66. 前記核酸増幅手段は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、gap LCR、鎖置換増幅(strand displacement amplification;SDA)、Qβレプリカーゼ増幅、転写増幅システム(TAS)、自己支持配列複製システム(self−sustained sequence replication system;3SR);核酸配列ベース増幅(NASBA);転写媒介増幅(TMA)、等温条件下キメラプライマー開始核酸増幅(ICAN;Isothermally chimeric primer used amplification of nucleic acid)およびループ媒介性等温増幅(LAMP)からなる群より選択される増幅反応のための手段を含む、請求項51に記載のキット。
  67. 前記核酸増幅手段は、DNAポリメラーゼとプライマーセットとを含む、請求項51に記載のキット。
  68. 前記プライマーセットは、前記リンカー核酸連結鋳型核酸の一部と同一の配列および相補的な配列をそれぞれ含む、請求項51に記載のキット。
  69. 前記プライマーセットのうち少なくとも1つがプロモーター配列を含む、請求項51に記載のキット。
  70. 前記プライマーセットの両方が制限部位を含む、請求項51に記載のキット。
  71. 前記プライマーセットがマルチクローニングサイトを含む、請求項51に記載のキット。
  72. 前記プライマーセットのうち少なくとも1つがプロモーター配列を含み、該プライマーセットの両方が制限部位を含む、請求項51に記載のキット。
  73. C−2)前記増幅産物をクローニングするためのベクター、さらに含む、請求項51に記載のキット。
  74. C−3)前記増幅産物に含まれる制限部位を認識し切断する制限酵素を含む、請求項51に記載のキット。
  75. 前記核酸増幅反応によって増幅された産物を鋳型としてRNAを生産する手段は、RNAポリメラーゼである、請求項51に記載のキット。
  76. 前記RNAポリメラーゼは、前記プライマーセットに含まれる前記プロモーター配列を認識するRNAポリメラーゼである、請求項51に記載のキット。
  77. 前記プロモーター配列がT7プロモーター、S6プロモーターまたはT3プロモーターであり、前記RNAポリメラーゼが該プロモーターに対応してT7 RNAポリメラーゼ、S6 RNAポリメラーゼまたはT3 RNAポリメラーゼである、請求項51に記載のキット。
  78. D−1)RNase活性のないDNaseをさらに備える、請求項51に記載のキット。
  79. 前記RNase活性のないDNaseは、前記鋳型となった増幅産物であるDNAを除去するために用いられる、請求項51に記載のキット。
  80. D−2)生産されたRNAを精製するための精製手段をさらに備える、請求項51に記載のキット。
  81. 前記精製手段は、フェノール/クロロホルム抽出手段およびエタノール沈澱手段である、請求項80に記載のキット。
  82. 前記除去手段は、RNaseである、請求項51に記載のキット。
  83. 前記除去手段は、DNAと結合している一本鎖RNAのみを選択的に分解するRNaseである、請求項51に記載のキット。
  84. 前記除去手段は、RNase Hである、請求項51に記載のキット。
  85. 前記リンカー核酸結合鋳型核酸の配列のうち、前記所望の配列以外の配列と相補的な除去用プライマーをさらに包含する、請求項51に記載のキット。
  86. 前記除去用プライマーは、前記所望の配列からなるRNAに直接連結されている配列に対して相補的な配列を少なくとも1つ含む、請求項85に記載のキット。
  87. 前記除去用プライマーは、前記所望の配列からなるRNAに直接連結されている配列に対して相補的な配列を少なくとも1つ含み、該相補的な配列は、前記RNA産物とのハイブリダイズ形成に充分な長さを含む、請求項85に記載のキット。
  88. さらに、前記RNAポリメラーゼによって生じたオーバーハングを除去する手段を備える、請求項51に記載のキット。
  89. 機能を有するRNAをスクリーニングするための方法であって、
    A)対象RNAを提供する工程;
    B)B−1)該所望の配列を有する鋳型核酸にリンカー核酸を結合させてリンカー核酸結合鋳型核酸を生産するライゲーション工程;
    B−2)該リンカー核酸結合鋳型核酸に基づいて核酸増幅鋳型を生産する核酸増幅鋳型生産工程;
    B−3)該核酸増幅鋳型に対して核酸増幅反応を行って増幅産物を生産する増幅工程;
    B−4)該増幅産物をベクターに配置し、該ベクターで宿主を形質転換する工程;
    B−5)該宿主を増幅させる増幅された宿主からベクターを入手する工程;
    B−6)該ベクターを鋳型として用いてRNAポリメラーゼを使用してRNA産物を生産するRNA増幅工程;および
    B−7)該RNA産物から所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産する調整工程、
    を行って、対象RNAを増幅生産する工程、
    C)該対象RNAを試験細胞に感染させる工程;
    D)該試験細胞が所望の機能を発現した場合、該発現が見出される試験細胞に含まれる対象RNAに対応する宿主をさらに培養して増幅させる工程;
    E)必要に応じて、B−5〜B−7、CおよびDを繰り返し、単一コロニーを探索する工程、
    F)該単一コロニーに含まれるRNAの配列を決定する工程;
    ここで、該決定された配列と該機能と関連付けて、機能を有するRNAが同定される、方法。
  90. G)該RNAの発現パターン解析を行う工程、をさらに包含する、請求項89に記載の方法。
  91. 請求項1〜4に記載のRNAまたは請求項5〜88に記載の方法によって生産されたRNAの、該RNAの機能を利用する分析または診断のための使用。
  92. 所望の配列を含むRNAから所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産する方法であって、
    a)所望の配列を含むRNA以外の配列に相補的な少なくとも1つのDNAプライマーと該所望の配列を含むRNAとをハイブリダイズさせる工程;および
    b)DNA−RNAの結合のみを認識して分解する工程、
    を包含する、方法。
  93. 前記DNAプライマーは、5’末端に少なくとも1つおよび3’末端に少なくとも1つ含む、請求項92に記載の方法。
  94. 所望の配列を含むRNAから所望でないRNA配列を除去し、それにより成熟型RNAを生産するためのキットであって、
    a)所望の配列を含むRNA以外の配列に相補的な少なくとも1つのDNAプライマー;および
    b)DNA−RNAの結合のみを認識して分解する手段、
    を備える、キット。
  95. 前記DNAプライマーは、5’末端に少なくとも1つおよび3’末端に少なくとも1つ含む、請求項94に記載のキット。
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CN114891782A (zh) * 2022-05-24 2022-08-12 四川农业大学 一种利用酚氯仿法纯化rna的方法

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