JP2007200804A - 燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池の電極近傍において、生成水によるガス流れの阻害を抑える。
【解決手段】燃料電池は、電解質層21と、電解質層21上に形成され、表面に触媒金属を担持する第1のカーボン粒子と電解質とを備える触媒層22,23と、触媒層上に配置され、導電性多孔質体から成るガス拡散層33,34と、ガス拡散層と触媒層との界面に設けられ、第2のカーボン粒子を備えるカーボン層31,32とを備える。ここで、第1のカーボン粒子および第2のカーボン粒子のうちの少なくとも一方は、三次元的に連通して広がる微細路を内部に有する多孔質カーボン粒子である。
【選択図】図1

Description

この発明は、燃料電池に関する。
燃料電池、例えば固体高分子型燃料電池では、アノードに水素を含有する燃料ガスが供給されると共に、カソードに酸素を含有する酸化ガスが供給されることで電気化学反応が進行し、電気化学反応の進行に伴って、カソードで水が生じる。このようにカソードで生じた水がカソード近傍に留まると、カソードに対するガスの給排が妨げられる可能性がある。そのため、燃料電池における発電を良好に継続させるためには、カソードからの排水を支障なく進行させて、カソードへのガス供給が確保されることが必要である。なお、カソードで生じた水が、電解質膜を介してアノード側へと移動する場合には、アノード側においても同様の問題が生じる。
ここで、カソードで生じた生成水によるガス流路の閉塞を防ぐ目的で、カソードに隣接するガス拡散層におけるカソードとの接触面において、撥水層を設ける構成が知られている。また、さらにカソードへと酸化ガスを均一に供給するために、撥水層における平均空孔径と、カソードにおける平均空孔径とを実質的に等しくする構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2001−52717号公報
しかしながら、ガス拡散層上に撥水層を設けても、発電量が増加して生じる生成水量が増える時には、生成水の滞留量が増加して、生成水によってガス流れが妨げられる場合があった。このように、生成水によってガス流れが妨げられると、撥水層における平均空孔径の制御によって酸化ガスの流れを適正化しようとしても、電池性能を充分に向上させることは困難となる。そのため、生成水がより多く生じる場合にも、ガス流れを確保できる技術が望まれていた。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池の電極近傍において、生成水によるガス流れの阻害を抑えることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の燃料電池は、
電解質層と、
前記電解質層上に形成され、表面に触媒金属を担持する第1のカーボン粒子と、電解質と、を備える触媒層と、
前記触媒層上に配置され、導電性多孔質体から成るガス拡散層と、
前記ガス拡散層と前記触媒層との界面に設けられ、第2のカーボン粒子を備えるカーボン層と
を備え、
前記第1のカーボン粒子および前記第2のカーボン粒子のうちの少なくとも一方は、三次元的に連通して広がる微細路を内部に有する多孔質カーボン粒子であることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第1の燃料電池によれば、上記多孔質カーボン粒子を備える触媒層および/またはカーボン層において、多孔質カーボン粒子の粒子間に形成される空隙によって排水を確保すると共に、三次元的に連通して拡がる微細路によって、ガス流れを確保することができる。従って、水によるガス流路の閉塞に起因する電池性能の低下を抑制することができる。
本発明の第1の燃料電池において、前記多孔質カーボン粒子は、球状であることとしても良い。
このような構成とすれば、多孔質カーボン粒子の粒子間に、排水のための空間を良好に確保することができると共に、多孔質カーボン粒子間の接触を良好に確保することによって、多孔質カーボン粒子内の微細路を全体として連通させることができる。
本発明の第1の燃料電池において、前記多孔質カーボン粒子は、粒子表面および前記微細路表面に撥水性物質を備えることとしても良い。
このような構成とすれば、微細路内への水の侵入に起因する微細路の閉塞が抑制されるため、ガス流路を確保し易くなる。
本発明の第1の燃料電池において、
前記第1のカーボン粒子および前記第2のカーボン粒子のうち、少なくとも前記第2のカーボン粒子は、前記多孔質カーボン粒子であり、
前記第2のカーボン粒子の平均粒径は、1〜50μmであることとしても良い。
このような構成とすれば、多孔質カーボン粒子の粒子間に形成される空隙の大きさを、特に排水性の確保に適した大きさとすることができるとともに、粒子内の微細路の連続性を良好に確保することができるため、電池性能を高めることができる。
本発明の第1の燃料電池において、
前記第1のカーボン粒子および前記第2のカーボン粒子の双方が、前記多孔質カーボン粒子であり、
前記第1のカーボン粒子の平均粒径の方が、前記第2のカーボン粒子の平均粒径よりも小さいこととしても良い。
このような構成とすれば、触媒層において、触媒層を厚くすることなく充分量の触媒金属を担持するための表面積を確保することができると共に、カーボン層における粒子間の空隙をより大きくして、カーボン層における排水性を確保することができる。
本発明の第1の燃料電池において、前記多孔質カーボン粒子は、少なくともカソード側に備えられていることとしても良い。
このような構成とすれば、電気化学反応の進行と共に水が生じるカソード側において、排水性とガスの流通性を共に確保することができ、電池性能を向上させることができる。
本発明の第2の燃料電池は、
電解質層と、
前記電解質層上に形成され、表面に触媒金属を担持するカーボン粒子と電解質とを備える触媒層と
を備え、
前記カーボン粒子は、内部にガスが流通可能な三次元的な微細路を有する多孔質カーボン粒子であることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第2の燃料電池によれば、上記多孔質カーボン粒子を備える触媒層において、多孔質カーボン粒子の粒子間に形成される空隙によって排水を確保すると共に、三次元的に連通して拡がる微細路によって、ガス流れを確保することができる。従って、ガス流路の水による閉塞に起因する電池性能の低下を抑制することができる。
本発明の第3の燃料電池は、
電解質層と、
前記電解質層上に形成されて、触媒金属を備える触媒層と、
前記触媒層上に配置され、導電性多孔質体から成るガス拡散層と、
前記ガス拡散層と前記触媒層との界面に設けられ、前記導電性多孔質体が備える細孔の細孔径よりも小さな粒径のカーボン粒子を備えるカーボン層と
を備え、
前記カーボン粒子は、内部にガスが流通可能な三次元的な微細路を有する多孔質カーボン粒子であることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第3の燃料電池によれば、上記多孔質カーボン粒子を備えるカーボン層において、多孔質カーボン粒子の粒子間に形成される空隙によって排水を確保すると共に、三次元的に連通して拡がる微細路によって、ガス流れを確保することができる。従って、ガス流路の水による閉塞に起因する電池性能の低下を抑制することができる。
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、燃料電池の製造方法や、多孔質カーボン粒子の製造方法などの形態で実現することが可能である。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.燃料電池の構成:
B.カーボン層の構成:
C.第1実施例の実験結果:
D.第2実施例:
E.第2実施例の実験結果:
F.第3実施例:
G.第3実施例の実験結果:
H.変形例:
A.燃料電池の構成:
図1は、本発明の実施例である燃料電池の概略構成を表わす断面模式図である。本実施例の燃料電池は、例えば固体高分子電解質型燃料電池とすることができ、単セル10を複数積層したスタック構造を有している。単セル10は、電解質層21と、電解質層21上に形成されると共に電気化学反応が進行する触媒金属を備えた触媒層であるカソード22およびアノード23と、から成るMEA24を備える。また、単セル10は、MEA24を挟持すると共に、MEA24との界面にカーボン層31,32を備えるガス拡散層33,34と、このサンドイッチ構造をさらに両側から挟持するガスセパレータ35,36と、を備えている。
電解質層21は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好なプロトン伝導性を示す。電解質層21の表面には、触媒層として、白金または白金と他の金属からなる合金を有する電極層であるカソード22およびアノード23が設けられ、MEA24を形成している。
ガス拡散層33,34は、ガス透過性を有する導電性部材、例えば、カーボンペーパ等のカーボン多孔質体や、金属メッシュや発泡金属などの金属多孔質体によって形成することができる。このガス拡散層33,34におけるMEA24と接する側の表面には、カーボン層31,32が形成されている。カーボン層31,32は、撥水性物質を表面に備えた多孔質カーボン粒子を備えている。この多孔質カーボン粒子は、ガス拡散層を構成する多孔質な導電性部材の有する細孔よりも、小さな粒径を有することが望ましい。これにより、触媒層とガス拡散層との間の集電を良好に確保できると共に、毛管現象による触媒層側からガス拡散層側への吸水効率を向上させることができる。カーボン層の詳しい構成については、後述する。
ガスセパレータ35,36は、ガス不透過の導電性部材、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボンや、プレス成形した金属板によって形成することができる。ガスセパレータ35,36の表面には、単セル10に供給された燃料ガスあるいは酸化ガスの流路を形成するための凹凸形状が形成されている。すなわち、カソード22側のガス拡散層33とガスセパレータ35との間には、カソードでの電気化学反応に供される酸化ガスが通過する単セル内酸化ガス流路37が形成されている。また、アノード23側のガス拡散層34とガスセパレータ36との間には、アノードでの電気化学反応に供される燃料ガスが通過する単セル内燃料ガス流路38が形成されている。なお、図1のガスセパレータ35,36は、平行な複数の溝からなる凹凸形状を有しているが、異なる形状としても良く、ガスセパレータ35,36とMEA24との間に、ガスの流路を形成するための空間を形成可能であればよい。
単セル10の外周部には、単セル内酸化ガス流路37および単セル内燃料ガス流路38におけるガスシール性を確保するための図示しないシール部材が配設されている。また、本実施例の燃料電池は、単セル10を複数積層したスタック構造を有しているが、このスタック構造の外周部には、単セル10の積層方向と平行であって燃料ガスあるいは酸化ガスが流通する複数のガスマニホールドが設けられている(図示せず)。これら複数のガスマニホールドのうちの酸化ガス供給マニホールドを流れる酸化ガスは、各単セル10に分配され、電気化学反応に供されつつ各単セル内酸化ガス流路37内を通過し、その後、酸化ガス排出マニホールドに集合する。同様に、燃料ガス供給マニホールドを流れる燃料ガスは、各単セル10に分配され、電気化学反応に供されつつ各単セル内燃料ガス流路38内を通過し、その後、燃料ガス排出マニホールドに集合する。
燃料電池に供給される酸化ガスとしては、例えば空気を用いることができる。また、燃料電池に供給される燃料ガスとしては、炭化水素系燃料を改質して得られる水素リッチガスを用いても良いし、純度の高い水素ガスを用いても良い。
なお、図示は省略しているが、スタック構造の内部温度を調節するために、各単セル間に、あるいは所定数の単セルを積層する毎に、冷媒の通過する冷媒流路を設けても良い。冷媒流路は、隣り合う単セル間において、一方の単セルが備えるガスセパレータ35と、これに隣接して設けられる他方の単セルのガスセパレータ36との間に設ければよい。
B.カーボン層の構成:
図2は、カソード22とガス拡散層33との界面に設けられたカーボン層31の様子を模式的に表わす説明図である。図2に示すように、カーボン層31は、多孔質カーボン粒子40によって構成されている。多孔質カーボン粒子40は、三次元的に連通して広がる微細路を内部に有する球状の多孔質カーボン粒子であり、粒子の表面および内部の微細路の表面に、撥水性物質を備えている。
本実施例では、カーボン層31をガス拡散層33上に形成した後に、このガス拡散層33をMEA24と重ね合わせることによって、カソード22とガス拡散層33との界面にカーボン層31を配置している。図3は、燃料電池の製造時に実行されるカーボン層31を有するガス拡散層33の製造工程を表わす説明図である。カーボン層31を作製するには、まず、多孔質カーボン粒子40を用意する(ステップS100)。多孔質カーボン粒子40は、本実施例では、球状の多孔質ポリイミドを不活性雰囲気下(ヘリウム、アルゴン、ネオンなどの希ガスや窒素ガスから成る不活性ガス雰囲気下)で、1000〜2800℃の温度条件にて焼成することによって作製している。焼成により得られる多孔質カーボン粒子40の粒径は、例えば1〜50μmとすることができる。
次に、ステップS100で用意した多孔質カーボン粒子40を、撥水化処理する(ステップS110)。撥水化処理は、例えばフッ素ガスを用いることにより、多孔質カーボン粒子40の粒子表面および内部の微細路表面を撥水化させるための処理である。具体的には、フッ素ガス中、300〜600℃で数十分〜数時間処理すればよい。その後、撥水化処理した多孔質カーボン粒子40と、撥水性物質とを含む分散液を調製する(ステップS120)。撥水性物質としては、例えば、フッ素樹脂を用いることができる。その後、分散液を、ガス拡散層33として用いる導電性多孔質体表面に塗布する(ステップS130)。塗布は、例えばドクターブレイドを用いて行なうことができる。導電性多孔質体表面に分散液を塗布した後は、乾燥・焼成を行なうことで、多孔質カーボン粒子40を備えると共に撥水性を有するカーボン層31が表面に形成されたガス拡散層33を得ることができる(ステップS140)。なお、本実施例では、カーボン層32を表面に備えるガス拡散層34も、同様にして製造している。
以上のように構成された本実施例の燃料電池によれば、触媒層とガス拡散層との界面に、多孔質カーボン粒子40を備えるカーボン層を形成しているため、触媒層からの排水を確保すると共に、生成水に起因するガス流れの阻害を抑制して、触媒層に対するガスの給排を確保することができる。すなわち、排水は、多孔質カーボン粒子40の粒子間に形成される空隙によって確保することができる。図2では、多孔質カーボン粒子40の粒子間の空隙を水が通過する様子を、太い実線で示している。また、ガスの給排は、多孔質カーボン粒子40内に形成される三次元的に連通して拡がる微細路によって確保することができる。内部に微細路を有する多孔質カーボン粒子40が集まることで、各多孔質カーボン粒子内の微細路が互いに連通し、カーボン層全体としてガスの通路が形成されるためである。図2では、上記全体として三次元的に連通して拡がる微細路内にガスが流れる様子を、細い破線で示している。したがって、ガスの給排は、粒子間の空隙が水で塞がれる場合であっても、互いに連通する微細路によって確保することができる。このように、触媒層(特にカソード22)で生じた生成水が速やかに触媒層から単セル内ガス流路側へと排水されると共に、単セル内ガス流路から触媒層に対してガスがスムーズに給排されるため、燃料電池の電池性能を高く維持することが可能になる。
特に、本実施例では、多孔質カーボン粒子40において、粒子表面および微細路内部が撥水性物質を用いて撥水化処理されている。したがって、生成水が、微細路内に侵入できなくなるため、ガスの流路となる微細路が水によって閉塞されることがない。また、カーボン層全体が撥水性を有することにより、一旦ガス拡散層33側に排出された生成水がカーボン層31側へと押し戻されるため、生成水のカソード22側への逆戻りを抑えることができる。なお、多孔質カーボン粒子40の撥水化処理やカーボン層への撥水性物質の添加により、隣り合う多孔質カーボン粒子間の接触抵抗は増加するが、粒子間の接触に起因する過電圧よりも、一般的には、ガスの拡散効率に起因する拡散過電圧の方がはるかに大きいため、撥水処理を行なうことで、全体としては電池性能を高めることができる。
ここで、用いる多孔質カーボン粒子40の平均粒径は、あまり小さすぎると粒子間の空隙が小さくなるため、水による閉塞の問題が生じやすくなる可能性がある。また、多孔質カーボン粒子40の平均粒径があまり大きすぎると、粒子間の接点が少なくなり、粒子間にわたって形成される微細路の三次元的な広がりが少なくなるため、ガスの給排効率が確保し難くなる。そのため、多孔質カーボン粒子40の平均粒径は、1〜50μm、好ましくは10〜30μmとしている。
C.第1実施例の実験結果:
本実施例の燃料電池において、カーボン層31,32を構成する多孔質カーボン粒子40の粒径を変更して燃料電池を組み立て、電池性能を比較した実験結果を図4に示す。ここでは、カーボン層31,32を形成するために、実験例1では粒径10μmの多孔質カーボン粒子を用い、実験例2では粒径30μmの多孔質カーボン粒子を用い、実験例3では粒径100μmの多孔質カーボン粒子を用いた。また、比較例では、多孔質ではないカーボン粒子を用いてカーボン層31,32を形成した。以下に、実験に用いた燃料電池の製造工程として、各燃料電池のカーボン層の製造工程、および、燃料電池全体の製造工程について説明する。
実験例1〜3の燃料電池のカーボン層31,32を形成する際には、図3のステップS100において、三次元的に連通して広がる微細路が形成された球状の多孔質ポリイミドを不活性雰囲気下で1000〜1500℃にて焼成し、それぞれ、平均粒径が10μm、30μm、100μmの多孔質カーボン粒子40を用意した。なお、用意した各多孔質カーボン粒子40の多孔度は、水銀ポロシメータによる測定で、約50%であった。比較例の燃料電池のカーボン層31,32を形成する際には、ステップS100において、多孔質カーボン粒子40に代えて、三次元的に連通して広がる微細路を有しないカーボン粒子(電気化学工業製、デンカブラック)を用意した。なお、この比較例で用いたカーボン粒子は、表面を酸化して賦活することで表面は多孔質化されており、1次粒径40nm、水銀ポロシメータによる測定で多孔度約70%である。そして、実験例1〜3および比較例共に、ステップS110では、温度350℃、フッ素ガス圧0.1MPa以下で1時間、ステップS100で用意したカーボン粒子の撥水化処理を行なった。その後、ステップS120で、上記撥水処理したカーボン粒子と共に、フッ素樹脂FEPの分散液(ダイキン工業(株)製、ND−1)と、水およびイソプロピルアルコールとを用いて、遊星ボールミルにて分散液を調製した。その際、カーボン粒子とフッ素樹脂の質量比は、4対6とした。
ステップS130でドクターブレイドを用いて分散液を塗布する導電性多孔質体としては、厚さ約170μmのカーボンペーパ(SGL社製、GDL−31BA)を用いた。また、ステップS140では、300℃で8時間焼成を行ない、厚さ30μmのカーボン層が形成されたガス拡散層を得た。なお、厚さ30μmのカーボン層は、その一部が、導電性多孔質体であるカーボンペーパ内に染み込んだ状態となっている。
図5は、燃料電池の製造工程の概要を表わす工程図である。燃料電池を製造する際には、まず、触媒層を構成するための触媒金属を担持したカーボン粒子と、電解質と、電解質層21を構成する固体高分子電解質膜とを用意する(ステップS200)。ここでは、カソード22を形成する触媒担持カーボン粒子として、45質量%の白金を担持した炭素粒子(ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製、ケッチェンブラックEC)を用意した。また、アノード23を形成する触媒担持カーボン粒子として、30質量%の白金を担持した炭素粒子(日本キャボット社製、バルカンXC−72R)を用意した。また、触媒層を形成する電解質としては、高分子電解質を含む電解液(デュポン社製、SE20092)を用意した。さらに、電解質膜としては、フッ素系固体高分子膜(デュポン社製、Nafion112)を用意した。
その後、固体高分子電解質膜上に触媒層を形成し、MEA24を作製する(ステップS210)。触媒層は、例えば、白金担持カーボン粒子と電解質とを混合してスラリを形成し、このスラリを用いて予め所定の基材上に成膜を行ない、作製した膜を電解質膜上に熱転写することにより作製することができる。あるいは、上記スラリを用いて電解質膜上に直接スプレーすることにより触媒層を作製しても良い。実験例および比較例の燃料電池では、白金担持カーボン粒子と電解質とを溶媒でスラリ化して所定の基材上に塗布し、その後電解質膜上に熱転写した。スラリ化の際には、カソード22を作製するには、上記白金担持カーボン粒子1gと、上記電解液を2.2g用いた。また、アノード23を作製するには、上記白金担持カーボン粒子を1gと、上記電解液を3.5g用いた。このとき、各触媒層における単位面積当たりの白金担持量は、0.2mg/cm2 とした。なお、触媒層における触媒と電解質膜との間でプロトンが移動する際の距離は短い方が望ましいため、触媒層は、例えば5〜50μmの厚さとすればよく、実験例および比較例の燃料電池では、10μmとした。
次に、図3の製造工程に従って作製したカーボン層を備えるガス拡散層33,34を用いて、MEA24を挟持する(ステップS220)。その際、ガス拡散層上に形成されたカーボン層31,32が触媒層に接するように、ガス拡散層33,34を配置する。そして、ガス拡散層33,34のさらに外側から挟持するように、カーボン製のガスセパレータ35,36を配置して(ステップS230)、単セル10を完成させる。
実際の燃料電池は、単セルを複数積層した構造を有しているが、図4に示す実験結果は、図3および図5に従って作製した燃料電池について、単セルの状態で発電を行なわせたときの結果である。発電の際には、燃料ガスとしては純度の高い水素ガスを大過剰量用い、酸化ガスとしては空気を大過剰量用いた。このとき、燃料ガスおよび酸化ガスは、それぞれ、燃料電池の運転温度と同じ温度のバブラを用いて、略飽和蒸気圧となるように加湿した。各燃料電池における電極面積は25cm2 であり、1A/cm2 の条件を維持している時の電圧を測定した。発電は、80℃および40℃の温度条件で行なわせた。
図4に示すように、平均粒径10μmおよび30μmの多孔質カーボン粒子40を用いて形成したカーボン層を備える実験例1および実験例2の燃料電池では、運転温度が80℃であっても40℃であっても、高い電圧を維持することができた。これに対して、平均粒径100μmの多孔質カーボン粒子40を用いて形成したカーボン層を備える実施例3の燃料電池、および、微細路を有しないカーボン粒子を用いて形成したカーボン層を備える比較例の燃料電池では、より低い電圧を示した。このように、平均粒径10〜30μmの多孔質カーボン粒子40を用いて形成したカーボン層を備える燃料電池では、40℃という水が凝縮しやすい低い温度条件下であっても、生成水の排水効率が維持されることによってガスの供給効率が確保され、電池性能を高く保つことができた。
D.第2実施例:
図6は、第2実施例の燃料電池の要部の構成を模式的に表わす説明図である。第2実施例の燃料電池は、触媒層およびカーボン層以外は第1実施例の燃料電池と同様の構成を有しているため、共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。
第2実施例の燃料電池は、第1実施例の燃料電池におけるカソード22およびアノード23に代えて、カソード122およびアノード123を備えており、カーボン層31,32に代えて、カーボン層131,132を備えている。このような本実施例の燃料電池では、カーボン層ではなく、触媒層であるカソード122およびアノード123が、球状の多孔質カーボン粒子140を備えることを特徴としている。
第2実施例の燃料電池は、図5に示した第1実施例の燃料電池の製造工程と同様の製造工程によって製造することができる。このとき、ステップS200で触媒担持カーボン粒子を用意する際には、触媒金属を担持した球状の多孔質カーボン粒子を用意すればよい。図7は、ステップS200で用意する触媒担持多孔質カーボン粒子の製造工程を表わす説明図である。触媒担持多孔質カーボン粒子を製造するには、まず、多孔質カーボン粒子を用意する(ステップS300)。この工程は、図3のステップS100と同様に行なうことができる。なお、ステップS300で用意する多孔質カーボン粒子は、触媒金属を担持する担体となるものであるため、触媒層を厚くすることなく触媒金属を担持する表面積を確保するために、粒径は充分に小さくすることが望ましい。ステップS300で用意する多孔質カーボン粒子の平均粒径は、例えば、40〜1000nmとすることができる。
その後、用意した多孔質カーボン粒子に対して、撥水化処理を施す(ステップS310)。この撥水化処理は、図3のステップS110と同様にして行なうことができる。撥水処理を行なうことで、多孔質カーボン粒子の粒子表面および内部の微細路表面が撥水化される。撥水化処理を行なうと、次に、撥水化処理した多孔質カーボン粒子の表面に、触媒金属を担持させる(ステップS320)。本実施例では、触媒金属の担持は、湿式法により行なっている。例えば、塩化白金酸溶液などの白金含有溶液中に、撥水化処理した多孔質カーボン粒子を浸漬させればよい。その後、乾燥・焼成の工程によって白金を還元させ(ステップS330)、多孔質カーボン粒子上に白金を析出させることによって、触媒担持多孔質カーボン粒子を完成する。この触媒金属を担持させる工程は、ステップS310の撥水化処理の後であるので、微細路内に白金含有溶液が入り込むことがなく、内部の微細路表面において触媒金属が実質的に担持されることはない。
図5に従って本実施例の燃料電池を製造する際に、ステップS220において用いるカーボン層を備えるガス拡散層は、第1実施例の多孔質カーボン粒子に代えて、内部に微細路を有しない通常のカーボン粒子を用いて、図3に示す製造工程に従って製造すればよい。
以上のように構成された第2実施例の燃料電池によれば、触媒金属を担持する多孔質カーボン粒子を用いて触媒層を構成しているため、触媒層における排水を良好に行なわせると共に、生成水に起因するガス流れの阻害を抑制して、触媒層内におけるガスの給排を確保することができる。すなわち、触媒金属上で生じた生成水の排水は、多孔質カーボン粒子140の粒子間に形成される空隙によって確保することができる。図6では、多孔質カーボン粒子140の粒子間の空隙を水が通過する様子を、太い実線で示している。また、ガスの給排は、多孔質カーボン粒子140内に形成される三次元的に連通して拡がる微細路によって確保することができる。内部に微細路を有する多孔質カーボン粒子140が集まることで、各多孔質カーボン粒子内の微細路が互いに連通し、触媒層全体としてガスの通路が形成されるためである。図6では、上記全体として三次元的に連通して拡がる微細路内にガスが流れる様子を、細い破線で示している。したがって、ガスの給排は、粒子間の空隙が水で塞がれる場合であっても、互いに連通する微細路によって確保することができる。このように、生じた生成水が、速やかに触媒層から単セル内ガス流路側へと排水されると共に、触媒層内において触媒金属に対してガスがスムーズに給排されるため、燃料電池の電池性能を高く維持することが可能になる。
特に、本実施例では、多孔質カーボン粒子140において、粒子表面および微細路内部が撥水性物質を用いて撥水化処理されると共に、触媒金属は、実質的に粒子表面にのみ担持されている。したがって、生成水が、微細路内に侵入することがなく、微細路内で生成水が生じることもないため、ガスの流路となる微細路が水によって閉塞されることがない。
E.第2実施例の実験結果:
第2実施例の燃料電池を組み立て、電池性能を調べた実験結果を図8に示す。ここでは、触媒層122,123を形成するために、実験例では粒径平均100nmの多孔質カーボン粒子を用いた。また、比較例では、多孔質ではないカーボン粒子を用いて触媒層を形成した。以下に、実験に用いた燃料電池の製造工程の具体的な条件について、図5に示した燃料電池の製造工程に即して説明する。
燃料電池を製造する際には、まず、電解質および電解質膜と共に、触媒担持カーボン粒子を用意するが(ステップS200)、実験例では、既述した図7の製造工程によって製造した触媒担持多孔質カーボン粒子を用意した。実験例の燃料電池の触媒層を構成する触媒担持多孔質カーボン粒子を作製する際には、図7のステップS300において、球状の多孔質ポリイミドを不活性雰囲気下で1000〜1500℃にて焼成し、平均粒径が100nmであって、水銀ポロシメータによる測定で多孔度が約50%のカーボン粒子を用意した。また、ステップS310の撥水化処理は、温度350℃、フッ素ガス圧0.1MPa以下で1時間の条件で行なった。また、ステップS320およびステップS330によって多孔質カーボン粒子上に白金を担持させる際には、30質量%の白金を担持させた。なお、比較例の燃料電池を製造する際には、図5のステップS200において、第1実施例の実験例1〜3および比較例と同様にして、微細路を有しないカーボン粒子に白金を担持させたものを用意した。実施例および比較例において、各触媒層での単位面積当たりの白金担持量は、0.2mg/cm2 としており、各触媒層の厚さは10μmとした。
図5のステップS210で、MEA24を作製する際には、触媒層を構成する電解質として、高分子電解質を含む電解液(デュポン社製、SE20092)を用いると共に、電解質膜としては、フッ素系固体高分子膜(デュポン社製、Nafion112)を用いた。MEA24を作製したときの条件は、第1実施例の実験例および比較例の作製条件と同様である。
図5のステップS220で用いるカーボン層を備えるガス拡散層としては、第1実施例の比較例と同様のものを用いた。すなわち、図3のステップS100において、多孔質カーボン粒子に代えて、三次元的に連通して広がる微細路を有しないカーボン粒子(電気化学工業製、デンカブラック)を用いて作製したカーボン層を備えるガス拡散層を利用した。その他の製造工程は、第1実施例における実験例および比較例と同様の条件で行なった。
図8に示す実験結果を得る際の発電の条件は、図4の実験結果を得る際のものと同様である。すなわち、電極面積が25cm2 である単セルの状態で、燃料ガスとしては純度の高い水素ガスを大過剰量用い、酸化ガスとしては空気を大過剰量用いて発電を行なわせた。このとき、燃料ガスおよび酸化ガスは、それぞれ、燃料電池の運転温度と同じ温度のバブラを用いて略飽和蒸気圧となるように加湿しつつ、1A/cm2 の条件を維持している時の電圧を測定した。温度条件は、80℃および40℃の2種類である。
図8に示すように、平均粒径100nmの多孔質カーボン粒子を用いて形成した触媒層を備える実験例の燃料電池では、運転温度が80℃であっても40℃であっても、高い電圧を維持することができた。これに対して、微細路を有しないカーボン粒子を用いて形成した触媒層を備える比較例の燃料電池では、より低い電圧を示した。このように、多孔質カーボン粒子を用いて形成した触媒層を備える燃料電池では、40℃という水が凝縮しやすい低い温度条件下であっても、生成水の排水効率が維持されることによってガスの供給効率が確保され、電池性能を高く保つことができた。
F.第3実施例:
図9は、第3実施例の燃料電池の概略構成を表わす断面模式図である。第3実施例の燃料電池は、第1実施例と同様に多孔質カーボン粒子を備えるカーボン層31,32と、第2実施例と同様に触媒金属を担持した多孔質カーボン粒子を備える触媒層であるカソード122およびアノード123とを有することを特徴としている。そのため第1および第2実施例と共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明を省略する。
第3実施例の燃料電池は、図5に示した第1実施例の燃料電池の製造工程と同様の製造工程によって製造することができる。このとき、ステップS200で触媒担持カーボン粒子を用意する際には、第2実施例と同様に図7に従って、触媒金属を担持した球状の多孔質カーボン粒子を用意すればよい。また、ステップS220においてカーボン層を備えるガス拡散層を用いる際には、第1実施例と同様に図3に従って、多孔質カーボン粒子を備えるカーボン層31,32を表面に形成したガス拡散層33,34を用いればよい。
以上のように構成された第3実施例の燃料電池によれば、第1実施例および第2実施例双方の効果を奏することができる。触媒層とガス拡散層との界面に、多孔質カーボン粒子40を備えるカーボン層を形成しているため、第1実施例と同様に、触媒層からの排水を確保すると共に、生成水の滞留に起因するガス流れの阻害を抑制して、触媒層に対するガスの給排を確保することができる。また、触媒金属を担持する多孔質カーボン粒子を用いて触媒層を構成しているため、第2実施例と同様に、触媒層における排水を確保すると共に、生成水の滞留に起因するガス流れの阻害を抑制して、触媒層内におけるガスの給排を確保することができる。すなわち、カーボン層および触媒層において、排水は、多孔質カーボン粒子の粒子間に形成される空隙によって確保することができると共に、ガス流れは、多孔質カーボン粒子が集まることで全体として形成される三次元的に連通して広がる微細路によって確保することができる。このように、カーボン層および触媒層において、生成水が速やかに単セル内ガス流路側へと排水されると共に、ガスがスムーズに給排されるため、燃料電池の電池性能を高く維持することが可能になる。
なお、第3実施例の燃料電池のように、触媒層とカーボン層の双方が多孔質カーボン粒子を備える場合には、触媒層を構成する多孔質カーボン粒子の平均粒径を、カーボン層を構成する多孔質カーボン粒子の平均粒径よりも小さくすることが望ましい。触媒層を構成する多孔質カーボン粒子は、触媒層層を厚くすることなく充分量の触媒金属を担持するための表面積を確保するには、粒径をより小さくする必要があるためである。また、カーボン層では、生成水の排水性を確保するためには、多孔質カーボン粒子の粒径を大きくして粒子間の空隙をより大きくすることが有利だからである。ここで、触媒層では、電気化学反応の進行に伴って熱が生じてカーボン層よりも温度が高くなるため、水は気体の状態で存在し易くなり、粒径を小さくして粒子間の空隙がより小さくなっても、上記空隙を介した排水性の悪化が問題となることはない。
G.第3実施例の実験結果:
本実施例の燃料電池を組み立て、電池性能を調べた実験結果を図10に示す。実験例の燃料電池では、触媒層122,123を形成するために、第2実施例の実験例と同様に、平均粒径100nmの多孔質カーボン粒子を用いた。比較例では、第2実施例の比較例と同様に、三次元的に連通して広がる微細路を有しないカーボン粒子を用いて触媒層を形成した。また、実験例の燃料電池では、カーボン層31,32を形成するために、第1実施例の実験例1と同様に、平均粒径10μmの多孔質カーボン粒子を用いた、比較例では、第1実施例の比較例と同様に、微細路を有しないカーボン粒子を用いてカーボン層を形成した。
実験例および比較例の燃料電池は、図5に示した燃料電池の製造工程に従って製造した。その際、実験例の燃料電池を製造するには、ステップS200では、第2実施例の実験例と同様にして、触媒担持カーボン粒子を用意した。そして、ステップS220では、第1実施例の実験例1と同様にして、カーボン層を備えるガス拡散層を作製した。また、比較例の燃料電池を製造するには、ステップS200では、第1実施例の比較例と同様にして、触媒担持多孔質カーボン粒子を用意した。そして、ステップS220では、第1実施例の比較例と同様にして、カーボン層を備えるガス拡散層を作製した。その他の製造工程は、第1実施例における実験例および比較例と同様の条件で行なった。
図10に示す実験結果を得る際の発電の条件は、図4の実験結果を得る際のものと同様である。すなわち、電極面積が25cm2 である単セルの状態で、燃料ガスとしては純度の高い水素ガスを大過剰量用い、酸化ガスとしては空気を大過剰量用いて発電を行なわせた。このとき、燃料ガスおよび酸化ガスは、それぞれ、燃料電池の運転温度と同じ温度のバブラを用いて略飽和蒸気圧となるように加湿しつつ、1A/cm2 の条件を維持している時の電圧を測定した。温度条件は、80℃および40℃の2種類である。
図10に示すように、平均粒径100nmの多孔質カーボン粒子を用いて形成した触媒層と共に、平均粒径10μmの多孔質カーボン粒子を用いて形成したカーボン層を備える実験例の燃料電池では、運転温度が80℃であっても40℃であっても、高い電圧を維持することができた。これに対して、微細路を有しないカーボン粒子を用いて形成した触媒層およびカーボン層を備える比較例の燃料電池では、より低い電圧を示した。このように、多孔質カーボン粒子を用いて形成した触媒層およびカーボン層を備える燃料電池では、40℃という水が凝縮しやすい低い温度条件下であっても、生成水の排水効率が維持されることによってガスの供給効率が確保され、電池性能を高く保つことができた。
H.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
H1.変形例1:
第1ないし第3実施例では、用いる多孔質カーボン粒子は球状としたが、異なる形状の多孔質カーボン粒子を用いても良い。多孔質カーボン粒子が集合してカーボン層や触媒層を構成したときに、粒子間に、生成水の通路となる空隙が形成されると共に、粒子同士が接触することで、粒子内部に形成される微細路が全体として三次元的に連通して拡がる状態となればよい。多孔質カーボン粒子の形状の他の例としては、例えば、円柱状とすることができる。円柱状の多孔質カーボン粒子を用いて触媒層あるいはカーボン層を構成すれば、円柱の側壁間に水が通過する流路が形成されると共に、円柱の側壁同士が接触することによって、内部の微細路が三次元的に連通可能となる。図11は、円柱状の多孔質カーボン粒子の集合体の様子を模式的に表わす説明図である。図11では、円柱状の多孔質カーボン粒子間の空隙を水が通過する様子を太い実線で表わしており、三次元的に連通して拡がる微細路内にガスが流れる様子を細い破線で示している。また、触媒層やカーボン層を構成する多孔質カーボン粒子の形状の他の例としては、例えば、円柱状に代えて、円柱の上下の底面が湾曲した凸状面になった、いわゆるカプセル状としても良い。
H2.変形例2:
第1ないし第3実施例では、カーボン層は、カーボン粒子と撥水性物質を含む分散液をカーボンペーパなどの導電性多孔質体上に塗布し、一部を導電性多孔質体内に染み込ませて形成したが、異なる構成としても良い。例えば、上記分散液を、導電性多孔質体とは別体の基材膜上に塗布することによって成膜し、成膜して得たカーボン層を、ガス拡散層となる導電性多孔質体上に熱転写などにより固着させることとしても良い。
H3.変形例3:
第1ないし第3実施例では、カーボン層あるいは触媒層を形成する多孔質カーボン粒子を、フッ素ガス等を用いて撥水化処理しているが、異なる構成としても良い。例えば、用いる多孔質カーボン粒子自体が充分な撥水性を示すならば、撥水化処理を省略することができる。
H4.変形例4:
また、ガス拡散層やガスセパレータの形状を、第1ないし第3実施例の燃料電池とは異なる形状としても良い。例えば、ガスセパレータ表面において、単セル内ガス流路を形成するための凹凸形状を設けない形状とすると共に、ガスセパレータとMEAとの間に導電性多孔質部材を配置して、この導電性多孔質部材内に形成される空隙によって、単セル内ガス流路を形成することとしても良い。単セル内ガス流路の形状を他の任意の形状とする場合であっても、触媒層や、触媒層に隣接するカーボン層を多孔質カーボン粒子を用いて構成することにより、多孔質カーボン粒子を備える層において、ガスの経路と水の経路とを分離して、生成水増大時にも排水効率を維持し、ガスの流通を確保する効果を得ることができる。
H5.変形例5:
第1ないし第3実施例では、カソード側とアノード側の両方において、触媒層および/またはカーボン層を多孔質カーボン粒子を用いて構成しているが、いずれか一方の側でのみ、多孔質カーボン粒子を用いることとしても良い。特に、電気化学反応の進行に伴い水が生じるカソード側において、触媒層および/またはカーボン層を多孔質カーボン粒子を用いて形成することで、排水性を確保しつつガス流通性を維持して電池性能を高める効果を顕著に得ることができる。アノード側において本発明を適用する場合には、特に、単セル内で酸化ガスと燃料ガスとを対向する向きに流す構成を採用する場合(いわゆるカウンターフロー型燃料電池)に、より高い効果が得られる。すなわち、酸化ガスと燃料ガスとを対向流にすると、酸化ガス中の水蒸気圧が高くなる下流側領域と、燃料ガス中の水蒸気圧がより低い上流側領域とが重なることで、電解質膜を介した水蒸気圧差が極めて大きくなり、カソード側からアノード側への水の移動量が増大する。従って、アノード近傍において本発明を適用し、排水性を維持してガス流通を確保することにより、電池性能が向上する。
H6.変形例6:
また、第1実施例のようにカーボン層31,32を多孔質カーボン粒子を用いて形成する場合に、触媒層の構成を、第1実施例のカソード22およびアノード23とは異なる構成としても良い。例えば、白金などの触媒金属を、カーボン粒子上に担持させることなく、電解質膜上に直接担持させることも可能である。
あるいは、第2実施例のようにカソード122およびアノード123を多孔質カーボン粒子を用いて形成する場合に、触媒層とガス拡散層との界面の構成を、第2実施例とは異なる構成としても良い。例えば、ガス拡散層上に、カーボン粒子を備えるカーボン層を形成することなく、ガス拡散層上に撥水性物質のみを塗布することとしても良い。
第1実施例の燃料電池の概略構成を表わす断面模式図である。 カーボン層の様子を模式的に表わす説明図である。 ガス拡散層の製造工程を表わす説明図である。 第1実施例の実験結果を表わす説明図である。 燃料電池の製造工程の概要を表わす工程図である。 第2実施例の燃料電池の要部の構成を模式的に表わす説明図である。 触媒担持多孔質カーボン粒子の製造工程を表わす説明図である。 第2実施例の実験結果を表わす説明図である。 第3実施例の燃料電池の概略構成を表わす断面模式図である。 第3実施例の実験結果を表わす説明図である。 変形例の多孔質カーボン粒子を模式的に表わす説明図である。
符号の説明
21…電解質層
22…カソード
23…アノード
24…MEA
31,32…カーボン層
33,34…ガス拡散層
35,36…ガスセパレータ
37…単セル内酸化ガス流路
38…単セル内燃料ガス流路
40…多孔質カーボン粒子
122…カソード
123…アノード
131,132…カーボン層
140…多孔質カーボン粒子

Claims (8)

  1. 燃料電池であって、
    電解質層と、
    前記電解質層上に形成され、表面に触媒金属を担持する第1のカーボン粒子と、電解質と、を備える触媒層と、
    前記触媒層上に配置され、導電性多孔質体から成るガス拡散層と、
    前記ガス拡散層と前記触媒層との界面に設けられ、第2のカーボン粒子を備えるカーボン層と
    を備え、
    前記第1のカーボン粒子および前記第2のカーボン粒子のうちの少なくとも一方は、三次元的に連通して広がる微細路を内部に有する多孔質カーボン粒子である
    燃料電池。
  2. 請求項1記載の燃料電池であって、
    前記多孔質カーボン粒子は、球状である
    燃料電池。
  3. 請求項1または2記載の燃料電池であって、
    前記多孔質カーボン粒子は、粒子表面および前記微細路表面に撥水性物質を備える
    燃料電池。
  4. 請求項1ないし3いずれか記載の燃料電池であって、
    前記第1のカーボン粒子および前記第2のカーボン粒子のうち、少なくとも前記第2のカーボン粒子は、前記多孔質カーボン粒子であり、
    前記第2のカーボン粒子の平均粒径は、1〜50μmである
    燃料電池。
  5. 請求項1ないし4いずれか記載の燃料電池であって、
    前記第1のカーボン粒子および前記第2のカーボン粒子の双方が、前記多孔質カーボン粒子であり、
    前記第1のカーボン粒子の平均粒径の方が、前記第2のカーボン粒子の平均粒径よりも小さい
    燃料電池。
  6. 請求項1ないし5いずれか記載の燃料電池であって、
    前記多孔質カーボン粒子は、少なくともカソード側に備えられている
    燃料電池。
  7. 燃料電池であって、
    電解質層と、
    前記電解質層上に形成され、表面に触媒金属を担持するカーボン粒子と電解質とを備える触媒層と
    を備え、
    前記カーボン粒子は、内部にガスが流通可能な三次元的な微細路を有する多孔質カーボン粒子である
    燃料電池。
  8. 燃料電池であって、
    電解質層と、
    前記電解質層上に形成されて、触媒金属を備える触媒層と、
    前記触媒層上に配置され、導電性多孔質体から成るガス拡散層と、
    前記ガス拡散層と前記触媒層との界面に設けられ、前記導電性多孔質体が備える細孔の細孔径よりも小さな粒径のカーボン粒子を備えるカーボン層と
    を備え、
    前記カーボン粒子は、内部にガスが流通可能な三次元的な微細路を有する多孔質カーボン粒子である
    燃料電池。
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