JP2007194555A - 光電変換装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 結晶半導体粒子が接合された導電性基板を有する光電変換装置でありながら前記導電性基板の反りを抑制し、高変換効率で信頼性の高い光電変換装置を提供する。
【解決手段】 導電性基板1の一主面に複数個の第1導電型の結晶半導体粒子2が下部を加熱溶着されて接合されており、結晶半導体粒子2間には絶縁物質3が介在するとともに、結晶半導体粒子1の上部には第2導電型の半導体層4および透光性導体層5が設けられた光電変換装置であって、結晶半導体粒子2を構成する半導体元素が導電性基板1全体に拡散している。導電性基板1の一主面側表面からの結晶半導体粒子2の高さは、結晶半導体粒子2の粒子径の40〜80%である。導電性基板1における半導体元素の濃度は、一主面の反対側の他主面側よりも一主面側の方が高い。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光を電気に変換する光電変換装置に関し、より詳しくは、導電性基板の上に粒状の光電変換体としての結晶半導体粒子を多数配設してなる、太陽電池や光センサなどに有用な光電変換装置に関する。
近年、粒状シリコン等の結晶半導体粒子を用いた光電変換装置が注目されており、製造コストの低減が厳しく要求される太陽電池等への適用が期待されている。つまり、従来は、CZ法(チョクラルスキー法)で育成された単結晶シリコンや鋳造法で作製された多結晶シリコンのように高価な半導体グレードのシリコン材料を300μm程度の薄い平板状にして用いていたが、その際、ダイシング工程や研削工程において高価なシリコン材料が少なからず切屑として無駄になっており、これが製造コストを上昇させる要因となっていた。これに対し、粒状シリコンであれば、シリコン原料を赤外線や高周波コイルを用いて容器内で溶融させたのち溶融物を粒状となるように少量ずつ自由落下させることにより得ることができ、研削工程等を要することもなく、容易に製造コストの低減を図ることができるのである。さらに、結晶半導体粒子を用いた場合には、表面が凸曲面状を有しているので天頂部以外では結晶半導体粒子への入射光角度が大きくなって、反射光が斜めとなり、モジュール表面での再反射によって従来の平板の半導体基板を用いた場合よりも光電変換効率(以下、変換効率ともいう)の向上効果が得られる。
粒状シリコン等の結晶半導体粒子を用いた光電変換装置としては、例えば、第1の電極層を有する基板と多数の結晶半導体粒子とを、結晶半導体粒子と基板の合金中に前記結晶半導体粒子の材料からなる粒子が分散された複合体で接合し、接合した各結晶半導体粒子間には絶縁体を充填し、接合した結晶半導体粒子の上部には第2の電極層を設けてなる光電変換装置が提案されている(特許文献1参照)。
特開2002−164551号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているような光電変換装置においては、結晶半導体粒子が接合された基板に反りが生じるという問題があった。結晶半導体粒子を接合した基板に反りが生じると、該基板に対して絶縁体を充填したり第2の電極層を設けたりする際に基板の取り扱いが難しく作業に支障をきたしたり、変換効率が悪く信頼性の低い光電変換装置となることがある。
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みなされたものであり、結晶半導体粒子が配設された導電性基板の反りを抑制し、高変換効率で信頼性の高い光電変換装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、導電性基板に結晶半導体粒子を接合させた場合、通常、導電性基板のなかでも結晶半導体粒子に近い部位ほど、結晶半導体粒子を構成する半導体元素が溶出しやすいことに着目し、結晶半導体粒子を接合した後の導電性基板は部位によって構成成分(半導体元素の量)ひいては材質が異なることになり、それが導電性基板に反りが発生する原因になっていると考えた。この考えに基づき、結晶半導体粒子を構成する半導体元素が導電性基板全体に拡散するように接合すれば、導電性基板のどの部位も(表面側も裏面側も)同じ材質となり、反りの発生を抑制できることを見出した。
例えば、結晶半導体粒子がシリコン粒子であり、導電性基板がアルミニウム基板である場合、アルミニウム基板の上に複数のシリコン粒子を配置し、シリコン粒子とアルミニウム基板をAl−Siの共晶温度(577℃)以上に加熱することによって、Al−Siの共晶部が形成され、両者は接合される。ここで、従来は、Al−Si共晶部16が導電性基板11の表面付近のみに存在していた(図2参照)。これに対し、本発明者らは、導電性基板1全体に半導体元素が拡散するまで、具体的にはAl−Si共晶部6が導電性基板1全体に及ぶように(図1参照)共晶を進行させるようにしたのである。そして、これにより、導電性基板の反りを効果的に抑制しうることを見出した。本発明は、以上の知見に基づき完成されたものである。
すなわち、本発明の光電変換装置は、以下の構成を有する。
(1)導電性基板の一主面に複数個の第1導電型の結晶半導体粒子が下部を加熱溶着されて接合されており、該結晶半導体粒子間には絶縁物質が介在するとともに、結晶半導体粒子の上部には第2導電型の半導体層および透光性導体層が設けられた光電変換装置であって、前記結晶半導体粒子を構成する半導体元素が前記導電性基板全体に拡散している、ことを特徴とする光電変換装置。
(2)前記導電性基板の一主面側表面からの結晶半導体粒子の高さは、該結晶半導体粒子の粒子径の40〜80%である、前記(1)の光電変換装置。
(3)前記導電性基板における前記半導体元素の濃度は、前記一主面の反対側の他主面側よりも前記一主面側の方が高い、前記(1)または前記(2)の光電変換装置。
(4)前記導電性基板はアルミニウムから成り、前記結晶半導体粒子はシリコンから成る、前記(1)〜(3)のいずれかの光電変換装置。
なお、本発明において、半導体元素が導電性基板全体に拡散しているとは、導電性基板の内部及び全平面にわたって半導体元素が結晶半導体粒子が接合された一主面から反対側の他主面にかけて存在していることを意味する。このような拡散は、例えば、導電性基板の断面を観察して、アルミニウム−シリコン共晶が結晶半導体粒子の接合面から導電性基板の裏面に至るまで存在することを観察することにより確認することができる。
また、本発明において、半導体元素が拡散する際の態様は、結晶半導体粒子から導電性基板全体に半導体元素を拡散させる態様の他に、結晶半導体粒子を配設する前にあらかじめ導電性基板全体に半導体元素を拡散させておく態様であってもよい。
本発明によれば、結晶半導体粒子を構成する半導体元素が導電性基板全体に拡散しているので、結晶半導体粒子が配設された導電性基板の反りを抑制することが可能であり、高変換効率で信頼性の高い光電変換装置を提供することができる、という効果がある。
特に、上記(2)の態様においては、結晶半導体粒子の20〜60%が導電性基板と共晶化しているため、導電性基板と結晶半導体粒子との接着強度を向上させ、かつ、変換効率を高レベルに維持することが可能になる。さらに、上記(3)の態様においては、例えば、第1導電型がp型である場合、導電性基板と結晶半導体粒子との界面の合金部分におけるp型の結晶半導体粒子側にp+型領域を形成させることによって、BSF効果(バック・サーフィス・フィールド効果)も期待できる。
また、上記(4)の態様においては、結晶半導体粒子を導電性基板の一主面に押圧しつつ加熱することによって、結晶半導体粒子を成すシリコンがアルミニウムから成る導電性基板に容易に拡散するため、反りが抑制された導電性基板を簡便に形成することができる。
以下、本発明に係る光電変換装置の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の光電変換装置の実施形態の一例を模式的に表した断面図である。
本発明の光電変換装置は、導電性基板1の一主面に複数個の第1導電型の結晶半導体粒子2が下部を加熱溶着されて接合されており、該結晶半導体粒子2間には絶縁物質3が介在するとともに、結晶半導体粒子2の上部には第2導電型の半導体層4および透光性導体層5が設けられたものである。
導電性基板1としては、特に制限はなく、例えば、アルミニウムやアルミニウム合金からなる金属基板が好ましく挙げられる。このように、アルミニウムを含む金属基板であれば、低温で結晶半導体粒子2を配設することが可能であり、しかも軽量で低価格である点でも有利である。
導電性基板1は、その表面が粗面であることが好ましい。表面が粗面であることにより、導電性基板1表面まで到達する非受光領域の入射光の反射がランダムになり、入射した光を斜めに反射させ、モジュール表面で再反射させて、これを光電変換部でさらに光電変換することが可能になり、光を有効に利用することができるからである。
導電性基板1の一主面には、複数個の第1導電型の結晶半導体粒子2が下部を加熱溶着されて接合されている。本発明の光電変換装置は、結晶半導体粒子2を構成する半導体元素が導電性基板1全体に拡散しているものであり、このような半導体元素の拡散が達成されるように導電性基板1と結晶半導体粒子2との接合を行うことが重要である。換言すれば、導電性基板1全体に半導体元素が拡散するまで共晶を進行させることが重要であり、このように共晶を進行させることで導電性基板1の一主面側と該一主面の反対側の他主面側の材質が同質となり、その結果、導電性基板1の反りを抑制することができるのである。
本発明の光電変換装置の好ましい態様においては、前記導電性基板1の一主面側表面からの結晶半導体粒子2の高さ(図1におけるa)は、該結晶半導体粒子2の粒子径の40〜80%である。図1におけるaが結晶半導体粒子2の粒子径の40%以上であるということは、言い換えれば、結晶半導体粒子2の粒子径の60%未満が導電性基板1と共晶化しているということであり、図1におけるaが結晶半導体粒子2の粒子径の80%以下であるということは、言い換えれば、結晶半導体粒子2の粒子径の20%超が導電性基板1と共晶化しているということである。このような態様であると、導電性基板1と結晶半導体粒子2の接着強度に優れ、高い光電変換効率を得ることができる。結晶半導体粒子2の高さ(図1におけるa)が結晶半導体粒子2の粒子径の40%未満であると、言い換えれば、結晶半導体粒子2の粒子径の60%以上が導電性基板1と共晶化していると、光電変換効率が低下する恐れがある。一方、結晶半導体粒子2の高さ(図1におけるa)が結晶半導体粒子2の粒子径の80%を超えると、言い換えれば、結晶半導体粒子2の粒子径の20%以下が導電性基板1と共晶化していると、導電性基板1と結晶半導体粒子2との接着強度が不充分となる傾向がある。
なお、結晶半導体粒子2は完全な真球でない場合もあるため、その粒子径は、真球である場合はその直径であり、真球でない場合は、結晶半導体粒子2に内包される最大の球の直径として規定する。
本発明の光電変換装置のさらに好ましい態様においては、前記導電性基板1における前記半導体元素の濃度は、前記一主面の反対側の他主面側よりも前記一主面側の方が高い。これにより、第一導電型がp型の場合は、導電性基板1と結晶半導体粒子2との界面部分の合金部におけるp型の結晶半導体粒子2側にp+形領域を形成させることで、BSF効果(バック・サーフィス・フィールド効果)を得ることが可能になる。詳しくは、従来のように結晶半導体粒子2と導電性基板1を接合する際の温度を低く抑えた場合は、前述したp+型領域の厚みは通常3μm以下であり、BSF効果は顕著に現われなかったが、本発明では、導電性基板1全体に半導体元素が拡散するように接合を行うので、通常4μm以上の厚みのp+型領域が形成され、安定したBSF効果が得られる。なお、前述のように、導電性基板1の一主面側と他主面側とで半導体元素の濃度勾配が存在することとなっても、導電性基板1の反りを抑制するという本発明の効果が損なわれることはない。
結晶半導体粒子2としては、特に限定されるわけではないが、例えば、シリコン粒子が汎用性が高い点で好ましく挙げられる。なお、本発明の光電変換装置は、複数個の結晶シリコン粒子を用いているが、1個の結晶シリコン粒子で30μA程度の発電電流であり、10万個を並列に接続して使用することにより、3.0A程度の電流が得られることから、一般的には1万〜100万個の結晶シリコン粒子を用いる。
なお、本発明の光電変換装置の好ましい態様は、前記導電性基板1がアルミニウムから成り、前記結晶半導体粒子2がシリコンから成る態様である。このような態様であれば、結晶半導体粒子2を導電性基板1の一主面に押圧しつつ加熱することによって、結晶半導体粒子2を成すシリコンがアルミニウムから成る導電性基板1に容易に拡散するため、反りが抑制された導電性基板を簡便に形成することができる。
結晶半導体粒子2として用いられるシリコン粒子は、次のようにして得ることができる。まず、赤外線や高周波コイルを用いて容器内で原料の半導体グレードの結晶シリコンを溶融し、溶融したシリコンを自由落下させるなどして多結晶の粒状シリコンを得る。この時点で得られる多結晶の粒状シリコンは、ほぼ球形状のもののほかにも涙型、流線型、連結型などを含むものであり、この多結晶の粒状シリコンをこのままで光電変換装置に使用したとしても、該多結晶の粒状シリコン中に金属不純物として含有されるFe、Cr、Ni、Mo等の存在や、結晶粒界における再結合効果が起因して、良好な光電変換特性は期待できない。そこで、さらに、温度制御したリメルト炉の中で再溶融させた後、酸素/窒素雰囲気下で降温する処理を施すことにより、不純物を抑えた単結晶シリコン粒子を得る。この単結晶シリコン粒子の表面には、通常、厚み1μm以上の酸窒化被膜が形成されているので、これを除去するためにフッ酸でエッチング処理を施すのがよい。また、単結晶シリコン粒子の結晶表面歪層を除去するためにはフッ硝酸でのエッチング処理を厚さ1μm以上にわたって行うことが望ましい。このようにして得られたシリコン粒子が結晶半導体粒子2として好ましく使用される。
なお、結晶半導体粒子2の表面に入射してきた光の一部は反射してしまうが、この反射光を再利用して効率向上を図るためには、結晶半導体粒子2の表面に微細な凹凸を形成し、反射角度を斜めにしてガラス表面で再反射させ、再度、結晶半導体粒子2に入射させることも有効である。
導電性基板1に結晶半導体粒子2を加熱溶着させて接合するには、具体的には、例えば、導電性基板1上に結晶半導体粒子2を多数配設し、窒素ガスあるいは窒素と水素の混合ガス等の還元雰囲気炉に入れ、550〜660℃、好ましくは580〜630℃で、0.1〜20分間、好ましくは1〜10分間処理すればよい。
導電性基板1に接合した複数の結晶半導体粒子2の間には絶縁物質3が介在する。このとき、絶縁物質3は、少なくとも結晶半導体粒子2の天頂部は覆わないように介在していなければならない。結晶半導体粒子2の天頂部が覆われずに露出していることにより、この上に形成される後述の半導体層4や透光性導体層5との有効な接触が可能となるのである。
結晶半導体粒子2間の絶縁物質の表面形状は、結晶半導体粒子2側(結晶半導体粒子2に接する部分)が高くなっている凹形状をしていることが好ましい。このような凹形状をしていることにより、モジュールの封止樹脂との屈折率の差が生じ、光電変換材料のない非受光領域における光の乱反射を促進して光電変換効率の向上に寄与することができるからである。
絶縁物質3としては、絶縁層を形成しうるものであれば、特に制限はないが、例えば、ポリシロキサンとポリカルボシランとの混合物または両者の反応物、ポリイミド樹脂等が、低温でムラや隙間なく全面にコーティングし易い点で好ましく挙げられる。
結晶半導体粒子2の上部には、まず第2導電型の半導体層4が設けられている。第2導電型の半導体層4は、第1の導電型とは逆の導電型を持った半導体からなる層であり、例えば、第1の導電型の結晶半導体粒子2がp型の場合であれば、逆のn型のアルモファスシリコン膜が挙げられる。半導体層4の形成は、複数の結晶半導体粒子2を接合し、各結晶半導体粒子2の間に絶縁物質3を介在させたのち、結晶半導体粒子2の上部に、所定の半導体層4を成膜してpn接合を形成するようにすればよい。これにより、本発明の光電変換装置では、結晶半導体粒子2で発生した少数キャリアをpn接合に収集して、発電させることができるのである。
第2の導電型の半導体層4の形成方法としては、例えば、アモルファスシリコン膜であれば、CVD法、イオン注入法等を採用することができる。また、プラズマCVD法では、アモルファスシリコン膜のほか、微結晶膜、多結晶膜、SiC膜などの種々の薄膜効果(吸収係数、導電率、バンドギャップ、濃度勾配、不純物混入及び勾配等)が期待される膜が得られる。また、第2導電型の半導体層4を形成するには、接合に先立って工程コストの低い熱拡散法により形成してもよい。第2導電型の半導体層4を形成するに際しては、ドーパントとして、V族のP、As、Sb、III族のB、Al、Gaなどを用いることができる。
半導体層4の上部には、さらに透光性導体層5が設けられている。詳しくは、透光性導体層5は、半導体層4の上に上部電極として形成されるとともに、絶縁物質3の上にも形成されており、この透光性導体層5によって、個々の結晶半導体粒子2で構成された光電変換素子は並列につなぎ合わされるのである。つまり、透光性導体層5が設けられていることにより、複数の結晶半導体粒子2のそれぞれで発生した光電流を収集できるようになる。
透光性導体層5としては、例えば、錫ドープ酸化インジウム膜、酸化スズ膜、酸化亜鉛膜等が挙げられる。なお、透光性導体層5を所定の膜厚(例えば85nm程度)に制御すると反射防止効果をも期待できるようになるので好ましい。
透光性導体層5を形成するに際しては、量産に適した信頼性の高い膜質を形成するには、スパッタリング法を採用するのが通常であるが、CVD法、ディップ法、スプレイ法、電析法などを採用することもできる。
本発明においては、例えば、透光性導体層5の上に銀ペースト等をくし状に塗布してグリット電極とすることにより、光電変換素子が得られる。
本発明の光電変換装置は、小さな粒状の結晶半導体粒子が寄り集まって大面積を構成するものであるので、いかなる形状にも容易に対応できるという利点がある。例えば、通常用いられる正方形や長方形以外にも、正三角形、直角三角形、二等辺三角形、ひし形、台形、正五角形、正六角形、正八角形等の形状とすることができる。また、一旦光電変換装置を形成した後に所望の形状に切断することも可能である。このことにより、種々の形状のモジュールの面積利用効率を改善し、変換効率を向上させるとともに、意匠的にも優れたモジュールを提供することができる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず、結晶半導体粒子を次のようにして得た。すなわち、ホウ素がドーピングされたシリコンからなる多結晶半導体粒子(粒径約400μm)を溶融落下法により得、該多結晶半導体粒子を石英ガラスの鞘上に充填した。次いで、これを雰囲気焼成炉内に入れ、酸素ガスおよび窒素ガスからなる反応性ガスをアルゴンガス雰囲気中に導入することにより酸窒化被膜を形成しながら、室温から昇温していき、酸窒化被膜内側のシリコンを溶融させた。その後、一旦降温して凝固させ、次いで、さらに熱アニールを行い、熱アニール後は室温度付近まで降温させて、球状の単結晶半導体粒子を得た。次に、この単結晶半導体粒子に対して、酸窒化膜被膜および不純物の多いシリコン最表面層である10μm程度を除去するため、フッ酸およびフッ硝酸でエッチング処理を施した。次いで、得られた半導体粒子を高温の水酸化ナトリウム液中に浸漬することで、結晶方位に依存するエッチングレートにより、表面を(111)面が残り且つ表面粗さが4μm厚になるようにし、これを結晶半導体粒子とした。該結晶半導体粒子の粒子径は350μmであった。
次に、40mm×60mmで厚み500μmの純アルミニウム基板を導電性基板とし、この基板上に上記の結晶半導体粒子を多数配設して、600℃に設定した窒素ガスの還元雰囲気炉で3分間処理することで、導電性基板に結晶半導体粒子を加熱溶着させて接合した。なお、上記で導電性基板として用いた純アルミニウム基板は、後述する接着強度評価における変動要因を除外するために、フラットな表面としておいた。
得られた結晶半導体粒子を接合した導電性基板中の半導体元素(シリコン)について、導電性基板の断面観察によって共晶状態を観察することにより、導電性基板(アルミニウム基板)の全体に結晶半導体粒子を構成する半導体元素(シリコン)が拡散して存在していることが確認された。この結晶半導体粒子を接合した導電性基板の反りは0mm(すなわち、反りはなし)であった。なお、本発明の実施例および比較例において、導電性基板の反りとは、40cm×60cmの大きさの基板を水平な台の上に載置したときに、台上から最も大きく浮き上がった端部の台からの垂直な高さ(mm)、を意味するものとする。
また、得られた結晶半導体粒子を接合した導電性基板は、アルミニウム基板とシリコン粒子との界面にAl−Si共晶の形成が認められるものであった。また、得られた結晶半導体粒子を接合した導電性基板において、シリコン粒子の粒子径の約30%はアルミニウム基板と共晶しており、導電性基板表面(シリコン粒子が接合した側の表面)からの結晶半導体粒子の高さは結晶半導体粒子の粒子径の約70%(0.25mm)であった。
さらに、導電性基板内に存在する半導体元素(シリコン)の量が増えたことで結晶半導体粒子と導電性基板との接合部分のシリコン濃度は高く、p型の結晶半導体粒子側に形成されたp+型領域の厚みは5μmであり、BSF効果を容易に得ることができた。
次に、上記で得られた結晶半導体粒子が接合された導電性基板の上に絶縁物質としてポリイミド樹脂を塗布し、窒素雰囲気中で加熱乾燥させることにより、結晶半導体粒子間に絶縁物質を介在させた。このとき、各結晶半導体粒子の上部(天頂部)はポリイミド樹脂で覆われないようにするため、各結晶半導体粒子の上部(天頂部)には撥水効果を有する不純物を導入しておいた。また、塗布するポリイミド樹脂の粘度を制御しておくことによって、毛管現象により結晶半導体粒子間を隙間なくポリイミド樹脂で埋めることができた。
次いで、フッ硝酸で軽くエッチングした後、プラズマCVD装置を用いて、n層のアモルファスシリコン膜を200Åの厚みで成膜して、pn接合を形成した。なお、アモルファスシリコン膜はバンドギャップが1.8eVあるため、短波長側の光透過率が結晶シリコンよりも優れていた。
次いで、錫ドープ酸化インジウム膜をスパッタリング法で850Åの厚みに成膜することにより、透光性導体層を形成し、光電変換装置を得た。このとき、透光性導体層は、第2導電型の半導体層(シリコン層)の上に上部電極として形成されるとともに、絶縁物質の上にも形成され、個々の結晶半導体粒子から形成された光電変換素子を並列につなぎ合わせるようにした。
得られた光電変換装置に対して、銀ペーストをディスペンサーでグリッド状にパターン形成して銅箔電極を接着させ、太陽電池セルを作製した。この太陽電池セルにAM1.5の光を照射し、上記光電変換装置の電気特性を示す変換効率を測定したところ、Vocは5.6V以上、光電変換効率は13.9%であった。
(比較例1)
実施例1と同様の結晶半導体粒子および導電性基板を用い、導電性基板上に結晶半導体粒子を多数配設して、580℃に設定した窒素ガス雰囲気炉で0.3分間処理することで、導電性基板に結晶半導体粒子を加熱溶着させて接合した。
得られた結晶半導体粒子を接合した導電性基板について、該導電性基板中への半導体元素(シリコン)の拡散を、実施例1と同様にして調べたところ、結晶半導体粒子を構成する半導体元素(シリコン)は導電性基板(アルミニウム基板)の表面近傍にのみ存在していることが確認された。この結晶半導体粒子を接合した導電性基板の反りは1.1mmであった。また、得られた結晶半導体粒子を接合した導電性基板は、アルミニウム基板とシリコン粒子との界面にAl−Si共晶の形成が認められるものであった。また、得られた結晶半導体粒子(結晶シリコン粒子)を接合した導電性基板において、結晶シリコン粒子の粒子径の約10%がアルミニウム基板と共晶しており、アルミニウム基板表面(結晶シリコン粒子が接合した側の表面)からの結晶シリコン粒子の高さは結晶シリコン粒子の粒子径の約90%(0.32mm)であった。
さらに、p型の結晶シリコン粒子側に形成されたp+型領域の厚みは4μmであり、明確なBSF効果は得られず不安定であった。
(実施例2)
導電性基板として50mm×50mmで500μm厚の高純度のアルミニウム基板を用い、この50mm角のアルミニウム基板上に対角線で分割されたパターンの光電変換素子を実施例1と同様にして形成し、最終工程でシェアリングを用いて切断することにより、実施例1と同レベルの特性を有する光電変換装置を得た。なお、切断に際しては、従来はAl−Si共晶部の境界で剥れるバリの発生が認められたが、実施例2では、バリの発生は生じなかった。また、このような光電変換装置においては、直角三角形の光電変換素子を三角形のモジュールに用いることにより光電変換モジュールに占める有効発電領域が増えるので、光電変換モジュール効率が向上することがわかった。また、適宜意匠性に優れたデザインを設計することも可能であった。
(実施例3−1〜実施例3−7)
実施例1において、導電性基板に結晶半導体粒子を加熱溶着させる際の条件を各々表1に示すように変更し、接合された結晶半導体粒子の高さがそれぞれ表1に示す通りとなるようにした以外は、同様にして光電変換装置を得、さらに同様にして太陽電池セルを作製した。
この太陽電池セルにAM1.5の光を照射し、光電変換装置の電気特性を示す光電変換効率を測定し、光電変換効率が10%以上である場合を「○」、10%未満である場合を「×」と判定した。
また、結晶半導体粒子が接合された導電性基板に関し、粒子の接着強度を以下のようにして評価した。すなわち、導電性基板に接合された結晶半導体粒子を爪の力だけで剥がそうとしたときに、簡単に剥れてしまった結晶半導体粒子の個数が結晶半導体粒子の全個数の5%未満である場合を「○」、5%以上である場合を「×」と判定した。爪の力で簡単に剥れてしまう程度の接着強度のものは、後工程において多数の結晶半導体粒子の剥がれが生じることになる。
光電変換効率および接着強度の結果を表1に示す。
Figure 2007194555
表1から、導電性基板に接合した結晶半導体粒子の高さが該結晶半導体粒子の粒子径の40〜80%の範囲であれば、良好な光電変換効率を発現し、接合された結晶半導体粒子の接着強度にも優れることが明らかである。なお、実施例3−1では接着強度が、実施例3−7では光電変換効率がそれぞれ「×」であったが、いずれも許容される範囲であり、導電性基板の反りについてはいずれも認められなかった。
本発明の光電変換装置の実施形態の一例を示す概略的な断面図である。 従来の光電変換装置の実施形態の一例を示す概略的な断面図である。
符号の説明
1、11 導電性基板
2、12 第1導電型の結晶半導体粒子
3、13 絶縁物質
4、14 第2導電型の半導体層
5、15 透光性導体層
6、16 アルミニウム−シリコン共晶部

Claims (4)

  1. 導電性基板の一主面に複数個の第1導電型の結晶半導体粒子が下部を加熱溶着されて接合されており、該結晶半導体粒子間には絶縁物質が介在するとともに、結晶半導体粒子の上部には第2導電型の半導体層および透光性導体層が設けられた光電変換装置であって、
    前記結晶半導体粒子を構成する半導体元素が前記導電性基板全体に拡散している、ことを特徴とする光電変換装置。
  2. 前記導電性基板の一主面側表面からの結晶半導体粒子の高さは、該結晶半導体粒子の粒子径の40〜80%である、請求項1に記載の光電変換装置。
  3. 前記導電性基板における前記半導体元素の濃度は、前記一主面の反対側の他主面側よりも前記一主面側の方が高い、請求項1または2記載の光電変換装置。
  4. 前記導電性基板はアルミニウムから成り、前記結晶半導体粒子はシリコンから成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光電変換装置。
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