本発明に係る周波数特性測定方法は、圧電振動デバイスとしての水晶振動片や水晶振動子等に適用される。
水晶振動片は、例えばATカット水晶振動片からなり、水晶ウエハから切り出され、所定の厚さにまで研磨することにより形成される。また、水晶振動片は、水晶ウエハのロットや水晶振動片の加工状態によって共振周波数が異なるため、共振周波数特性の測定を行って所定の共振周波数に区分けしてランク分けされる。
具体的には、水晶振動片を下電極体の上に搭載し、上電極体を上方から水晶振動片に近接させこの状態で水晶振動片に対して電圧を印加して、本発明に係る周波数測定方法を適用することにより共振周波数の測定が行われる。なお、上電極体は、水晶振動片との間に1mm未満の隙間を設けるようにして配置される。
次に、水晶振動片の両面にそれぞれ励振電極が形成される。励振電極の形成状態により共振周波数の値が変化するので、共振周波数の測定が行われる。具体的には、励振電極にプローブピンを当接させて、本発明に係る周波数測定方法を適用することにより共振周波数の測定が行われる。
励振電極が形成された水晶振動片は、水晶振動片を保持するベースに接合材により固定される。さらに、真空若しくは不活性ガス雰囲気中でベースにキャップを嵌合させて接合することにより、水晶振動片はパッケージ内に密封される。このようにして、水晶振動子C(図11参照)が製造される。
なお、ベースは、アルミナ等のセラミック材料からなり、一面に開口面を有した箱状体に形成されたものである。開口面においてベースとキャップとが接合される。キャップは、金属材料からなり、平面視矩形状の一枚板に形成されている。キャップは、下面にろう材が形成されており、シーム溶接やビーム溶接等によりベースに接合される。また、水晶振動片をベースに固定する接合材として、銀フィラを含有したシリコーンが用いられる。
水晶振動子Cの共振周波数は、振動片がパッケージに固定され密封されることにより、振動片の共振周波数とは異なる値となるので、再び、共振周波数が測定される。具体的には、水晶振動子Cの端子にプローブを当接させて、本発明に係る周波数測定方法を適用することにより共振周波数の測定が行われる。
なお、本発明に係る周波数測定方法は、上述に示した共振周波数特性の測定に限定して適用されるものではなく、水晶振動片または水晶振動子の製造工程において必要に応じて実施される共振周波数の測定に対しても適用されるものである。
以下、本発明に係る周波数特性測定方法について図面を参照して説明する。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る周波数特性測定方法の工程を示す工程図である。図2は、実施の形態1に係る周波数特性測定方法により得られる共振周波数特性の概略図である。本実施の形態に係る周波数特性測定では、図11に示す周波数特性測定装置100が用いられる。周波数特性測定装置100については実施の形態4に詳述する。なお、実施の形態1に係る周波数特性測定は、図11に示す周波数特性測定装置100を用いて行われることに限定されるものではない。
まず、測定対象物が保持器(不図示)に保持され、入力信号Sinを印加できる状態とされる。具体的には、測定対象物として水晶振動子C(図11参照)を測定する場合は、保持器に固定して端子にプローブピンを当接し測定ができる状態にする。また、測定対象物として水晶振動片を測定する場合は、上述の上電極体と下電極体の間に水晶振動片を配置し測定ができる状態にする。
次に、入力信号Sinが入力され、出力信号Soutが取得される(第1掃引工程S1)。入力信号Sinは、開始周波数fsから終了周波数feまでの周波数fの掃引として入力される。出力信号Soutは、周波数fの掃引に対応するようにして取得される。
なお、本実施の形態では、周波数fの掃引を開始周波数fsから終了周波数feまで行うことを第1掃引順序(図2に示す符号T1)という。また、第1掃引工程S1において周波数fの掃引を開始周波数fsから終了周波数feまで行っているが、この掃引方向は限定されるものではなく、第1掃引工程S1における掃引方向を図2における終了周波数feから開始周波数fsまでとしてもよい。
入力信号Sinの周波数fの掃引幅は、測定する水晶振動子Cの共振周波数f0を含むように設定される。出力信号Soutは、掃引する周波数fに対応させて取得される。また、出力信号Soutは一旦周波数fと関連づけして記憶部105(図11参照)に記憶される。出力信号Soutは、周波数fの掃引に対して共振周波数f0の付近でピークを有する共振特性Ch1として得られる(図2参照)。
第1掃引順序T1の周波数fの掃引は、高速で行うことができる。これは、第1掃引順序T1とは異なる第2掃引順序T2(下記参照)において行われる周波数fの掃引が、正確に共振周波数f0を測定できる程度の速度で行われることからである。すなわち、第1掃引順序T1における周波数fの掃引は、共振周波数f0の大体の値を把握するために行われる。
次に、出力信号Soutのピークが求められ、第1掃引順序T1でのピークに対応する第1ピーク周波数f1が取得される(第1ピーク周波数取得工程S2)。具体的には、取得された全ての出力信号Soutを比較することにより、最大値がピークとして求められ、第1掃引順序T1のピークに対応する周波数fが第1ピーク周波数f1として記憶される。なお、出力信号Soutの出力の極性を反転させ、最小値をピークとして求めてもよいし、また、第1掃引において、最初に検出された顕著なピーク(ファーストピーク)を第1ピーク周波数f1として取得してもよい。
次に、第1ピーク周波数f1に基づいて掃引を再開する周波数(掃引再開周波数frs)が設定される(再開周波数設定工程S3)。具体的には、第1掃引順序T1の掃引方向で第1ピーク周波数f1を超え、第1ピーク周波数f1から所定幅離れた周波数f(または、第1ピーク周波数f1)が掃引再開周波数frsとして設定される。すなわち、第1掃引順序T1において周波数fを増加させる方向に掃引した場合は、第1ピーク周波数f1より大きい値(または、第1ピーク周波数f1)が掃引再開周波数frsに設定され、また、周波数fを減少させる方向に掃引した場合は、第1ピーク周波数f1より小さい値(または、第1ピーク周波数f1)が掃引再開周波数frsに設定される。なお、第1ピーク周波数f1から離される所定幅は、測定する対象物により設定する値は異なる。
次に、入力信号Sinを入力して第1掃引順序T1の掃引方向に対して逆方向に掃引再開周波数frsから開始周波数fsまで周波数fの掃引を行う。そして、周波数fに対応する出力信号Soutを取得する(第2掃引工程S4)。
なお、図2においては、第1掃引順序T1において周波数fを増加させる方向に掃引した場合を示している。また、第1掃引順序T1の後に周波数fの掃引を掃引再開周波数frsから開始周波数fsまで行うことを第2掃引順序(図2に示す符号T2)という。
第2掃引順序T2では、第1掃引順序T1の掃引速度より遅く、高精度に共振周波数f0が測定できる速度で周波数fの掃引が行われる。また、第2掃引順序T2の周波数fの掃引は、開始周波数fsに至るまで行われる。出力信号Soutは、周波数fの掃引に対して共振周波数f0の付近でピークを有する共振特性Ch2として得られる(図2参照)。
第1掃引順序T1のように高速で掃引したときには、出力信号Soutのピークは共振周波数f0から掃引方向に大きくずれて計測される。したがって、第1ピーク周波数f1は、共振周波数f0から第1掃引順序T1の掃引方向にずれることになる。これに対して、第2掃引順序T2では、第1ピーク周波数f1を超えた周波数(あるいは第1ピーク周波数f1)から第1掃引順序T1の掃引方向に対して逆方向に掃引が行われる。これにより、第2掃引順序T2では確実に共振周波数f0が捉えられる。
次に、出力信号Soutのピークが求められ第2掃引順序T2のピークに対応する第2ピーク周波数f2が取得される(第2ピーク周波数取得工程S5)。具体的には、取得された全ての出力信号Soutが比較され最大値(または最小値)がピークとして求められ、第2掃引順序T2のピークに対応する周波数fが第2ピーク周波数f2として記憶部105(図11参照)に記憶される。
次に、第2ピーク周波数f2が共振周波数f0とされる(共振周波数取得工程S6)。
このような周波数特性測定方法により得られた共振周波数f0は、真の共振周波数と比較して殆どずれがなくなる。
すなわち、第2掃引順序T2の掃引は、第1ピーク周波数f1の近傍の掃引再開周波数frsから十分に遅い速度で掃引されることから、第1ピーク周波数f1の周辺範囲において高精度に測定が行われる。したがって、正確な共振周波数f0を得ることができる。
また、第2掃引工程S4が存在することから、第1掃引工程S1における測定は精度が要求されないので掃引速度を高速化することができる。また、第2掃引順序T2の掃引は、第1ピーク周波数f1を超えた周波数(または第1ピーク周波数f1)から掃引が逆方向に再開されることから、第2掃引順序T2の掃引範囲を狭くできる。したがって、周波数特性測定の時間が全体的に短縮される。
また、第1ピーク周波数f1は、共振周波数f0に対してその掃引方向にずれて計測されることから、第2掃引工程S4において、第1ピーク周波数f1を超えた周波数(掃引再開周波数frs)、あるいは第1ピーク周波数f1から第1掃引順序T1の掃引方向とは逆方向に掃引が行われることで、無駄な掃引を行うことなく第2ピーク周波数f2を捉えることができる。
次に、本実施の形態において、第2掃引順序T2の周波数の掃引を出力信号Soutのピークを検出した時点で終了するようにした周波数特性測定方法について説明する。
本周波数特性測定方法では、第2掃引工程S4において、出力信号Soutのピークを検出した時点で掃引を終了するようにする。具体的には、取得した出力信号Soutを比較し、出力信号Soutが上昇から下降(または、下降から上昇)に転換した時点を検知することにより、ピークを検出する。
これにより、第2掃引順序T2の周波数の掃引は、第1ピーク周波数f1に近い周波数(掃引再開周波数frs)から開始され、ピークが検出された後に終了することから、さらに掃引範囲が狭くなる。これにより、第2掃引順序T2の掃引時間が短縮される。したがって、周波数特性測定の時間が全体的に短縮される。
次に、通常の周波数特性測定方法と実施の形態1に係る周波数特性測定方法とを比較して、その効果の説明をする。
図3は、通常の周波数特性測定方法により測定して得られた共振周波数特性図である。縦軸はゲイン(dB)を示し、横軸は周波数f(MHz)を示している。出力信号Soutはゲインとして測定され、共振曲線Ch11として示されている。ここで、ゲインとは、水晶振動子Cから得られる出力信号Soutの値、または、入力信号値と出力信号値との差である。
通常の周波数特性測定では、デジタルネットワークアナライザを使用しており、周波数fは離散的になっており、各周波数ポイントにおける測定時間を設定できる。なお、本実施の形態または以下に説明する実施の形態においても、同性能の機能を有したデジタルネットワークアナライザが使用される。
通常の周波数特性測定では、周波数fの掃引は、周波数fを増加させる方向に測定ポイント数801とし、掃引速度1ms/ポイント、開始周波数3.998991MHz、終了周波数4.000988で行っている。測定時間は801msになる。また、共振周波数は4.0000174MHzである(図10、TestP参照、図10は、各実施の形態に係る周波数特性測定方法により得られた結果をまとめた図表である。)。この条件により得られた共振周波数f0と、標準治具により得られた十分信頼性のある共振周波数f0(3.9999914MHz)との差(以下、測定差(図10参照)という)は、26Hzである。なお、掃引速度とは、掃引する周波数における任意の一点(周波数f)での測定時間を示す。
図4は、実施の形態1に係る周波数特性測定方法により測定して得られた共振周波数特性図である。縦軸はゲイン(dB)を示し、横軸は周波数f(MHz)を示している。第1掃引順序T1の出力信号Soutは、ゲインとして測定され、共振曲線Ch12として示されている。また、第2掃引順序T2の出力信号Soutは、ゲインとして測定され、共振曲線Ch13として示されている。
第1掃引順序T1では、周波数fを増加させる方向に測定ポイント数801とし、掃引速度0.2ms/ポイント、開始周波数3.998991MHz、終了周波数4.000988で掃引している(図10、Test1参照)。
第2掃引順序T2では、周波数fを減少させる方向に測定ポイント数60とし、掃引速度3.4ms/ポイント、第1ピーク周波数f1(4.000062MHz)から3.999915MHzまで掃引している。なお、第1掃引順序T1と第2掃引順序T2の切替時間を10msとしている。測定時間は374.2msになる(図10、Test1参照)。
この条件では、共振周波数f0は3.9999799MHzであり、共振周波数f0の測定差(図10参照)という)は−11.5Hzである。
第1掃引順序T1の掃引は、0.2ms/ポイントとして高速に周波数fの掃引が行われている。第2掃引順序T2の掃引は、3.4ms/ポイントとして、高精度に共振周波数f0が測定できる速度で掃引が行われている。すなわち、1回目の掃引を高速にして、2回目の掃引を共振周波数f0の近傍範囲にのみ掃引を行うことによって、通常の周波数特性測定より測定時間は大幅に短縮されている。
また、第2掃引順序T2の掃引は、測定ポイントの測定時間を通常より3.4倍にしている。これにより、共振周波数f0の測定差は、通常の周波数特性測定方法と比較して小さいものとなっている(図10、Test1参照)。
なお、第1掃引順序T1における掃引方向は、周波数を増加させる方向、または周波数を減少させる方向いずれでもよい。
<実施の形態2>
本実施の形態に係る周波数特性測定方法は、実施の形態1に係る周波数特性測定方法とは第1順序より後の工程の内容が異なっているので、主に、第1順序より後の工程について図1を参照して説明する。また、実施の形態1と同一構成や内容についてはその説明を省略して同一符号を付す。
図5は、実施の形態2に係る周波数特性測定方法により得られる共振周波数特性の概略図である。
まず、測定対象物が保持器(不図示)に保持され、入力信号Sinを印加できる状態とされる。具体的には、測定対象物として水晶振動子C(図11参照)を測定する場合は、保持器に固定して端子にプローブピンを当接し測定ができる状態にする。また、測定対象物として水晶振動片を測定する場合は、上述の上電極体と下電極体の間に水晶振動片を配置し測定ができる状態にする。
次に、入力信号Sin(図11参照)を入力して周波数fの掃引を開始周波数fsから終了周波数feまで第1順序で行い、周波数fに対応する出力信号Sout(図11参照)を取得する(第1掃引工程S1)。出力信号Soutは、周波数fの掃引に対して共振周波数f0の付近でピークを有する共振特性Ch3として得られる。
次に、出力信号Soutのピークが求められ、第1掃引順序T1でのピークに対応する第1ピーク周波数f1が取得される(第1ピーク周波数取得工程S2)。具体的には、取得された全ての出力信号Soutを比較することにより、最大値(または最小値)がピークとして求められ、第1掃引順序T1のピークに対応する周波数fが第1ピーク周波数f1として記憶される。
次に、第2順序において掃引を開始する周波数(掃引再開周波数frs)が第1ピーク周波数f1に基づいて設定される(再開周波数設定工程S3)。具体的には、第1順序の掃引方向に対して第1ピーク周波数f1に至るまでの範囲において、第1ピーク周波数f1から所定幅離れた周波数fが掃引再開周波数frsとして設定される。なお、第1ピーク周波数f1から離される所定幅は、測定する対象物により設定する値は異なる。
次に、入力信号Sinを入力して第1掃引順序T1の掃引方向と同方向に掃引再開周波数frsから終了周波数feまで周波数fの掃引を行う。そして、周波数fに対応する出力信号Soutを取得する(第2掃引工程S4)。
なお、図5においては、第1掃引順序T1において周波数fを増加させる方向に掃引した場合を示している。また、第1掃引順序T1の後に周波数fの掃引を掃引再開周波数frsから終了周波数feまで行うことを第2掃引順序(図5に示す符号T2)という。
第2掃引順序T2では、第1掃引順序T1の掃引速度より遅く、高精度に共振周波数f0が測定できる速度で周波数fの掃引が行われる。また、第2掃引順序T2の周波数fの掃引は、開始周波数feに至るまで行われる。出力信号Soutは、周波数fの掃引に対して共振周波数f0の付近でピークを有する共振特性Ch4として得られる(図5参照)。
第1掃引順序T1のように高速で掃引したときには、出力信号Soutのピークは、共振周波数f0から掃引方向に大きくずれて計測される。したがって、第1ピーク周波数f1は、共振周波数f0から第1掃引順序T1の掃引方向にずれていることになる。これに対して、第2掃引順序T2では、第1ピーク周波数f1から第1掃引順序T1の掃引方向に対して十分手前から低速で同方向に掃引が行われる。これにより、第2掃引順序T2では第1ピーク周波数f1より手前で確実に共振周波数f0が捉えられる。
次に、出力信号Soutのピークが求められ、第2掃引順序T2のピークに対応する第2ピーク周波数f2が取得される(第2ピーク周波数取得工程S5)。具体的には、取得された全ての出力信号Soutが比較され最大値(または最小値)がピークとして求められ、第2掃引順序T2のピークに対応する周波数fが第2ピーク周波数f2として記憶部105(図11参照)に記憶される。
次に、第2ピーク周波数f2は共振周波数f0とされ(共振周波数取得工程S6)、共振周波数f0が測定される。第2掃引順序T2における周波数fの掃引は、高精度に共振周波数f0が測定できる速度で周波数fの掃引が行われることから、第2ピーク周波数f2と共振周波数f0とのずれは殆どなくなることになる。
すなわち、第2掃引順序T2の掃引は、第1ピーク周波数f1の近傍の掃引再開周波数frsから十分に遅い速度で掃引されることから、第1ピーク周波数f1の周辺範囲において高精度に測定が行われる。したがって、正確な共振周波数f0を得ることができる。
また、第2掃引工程S4が存在することから、第1掃引工程S1における測定は精度が要求されないので掃引速度を高速化することができる。また、第2掃引順序T2の掃引は、第1ピーク周波数f1の手前から掃引が再開されることから、第2掃引順序T2の掃引範囲は狭くなるので、第2掃引順序T2の掃引時間は短縮される。したがって、周波数特性測定の時間が全体的に短縮される。
次に、本実施の形態において、第2掃引順序T2の周波数の掃引を出力信号Soutのピークを検出した時点で終了するようにした周波数特性測定方法について説明する。
本周波数特性測定方法では、第2掃引工程S4において、出力信号Soutのピークを検出した時点で掃引を終了するようにする。具体的には、取得した出力信号Soutを比較し、出力信号Soutが上昇から下降(または下降から上昇)に転換した時点を検知することにより、ピークを検出する。
これにより、第2掃引順序T2の周波数の掃引は、第1ピーク周波数f1に近い周波数(掃引再開周波数frs)から開始され、第2ピークが検出された後に終了することから、さらに掃引範囲が狭くなる。これにより、第2掃引順序T2の掃引時間が短縮される。したがって、周波数特性測定の時間が全体的に短縮される。
次に、通常の周波数特性測定方法と実施の形態2に係る周波数特性測定方法とを比較して、その効果の説明をする。
通常の周波数特性測定方法により測定して得られた共振周波数特性図は、上述したように図3に示されている。
図6は、実施の形態2に係る周波数特性測定方法により測定して得られた共振周波数特性図である。縦軸はゲイン(dB)を示し、横軸は周波数f(MHz)を示している。第1掃引順序T1の出力信号Soutは、ゲインとして測定され、共振曲線Ch14として示されている。また、第2掃引順序T2の出力信号Soutは、ゲインとして測定され、共振曲線Ch15として示されている。
第1掃引順序T1では、周波数fを増加させる方向に測定ポイント数801とし、掃引速度0.2ms/ポイント、開始周波数3.998991MHz、終了周波数4.000988で掃引している(図10、Test2参照)。
第2掃引順序T2では、周波数fを増加させる方向に測定ポイント数81とし、掃引速度3.4ms/ポイント、第1ピーク周波数f1より手前の周波数3.9998908MHzから4.0000906MHzまで掃引している。なお、第1掃引順序T1と第2掃引順序T2の切替時間を10msとしている。測定時間は445.6msになる(図10、Test2参照)。
この条件では、共振周波数f0は3.9999982MHzであり、共振周波数f0の測定差(図10参照)は、6.8Hzである。
第1掃引順序T1の掃引は、0.2ms/ポイントとして高速に周波数fの掃引が行われている。第2掃引順序T2の掃引は、3.4ms/ポイントとして、高精度に共振周波数f0が測定できる速度で掃引が行われている。すなわち、正確な共振周波数f0を得るために2回掃引を行っているが、1回目の掃引を高速にして、2回目の掃引を共振周波数f0の近傍範囲にのみ掃引を行うことによって、通常の周波数特性測定よりの測定時間は大幅に短縮されている。
また、第2掃引順序T2の掃引は、測定ポイントの測定時間を通常より3.4倍にしている。これにより、共振周波数f0の測定差は、通常の周波数特性測定方法と比較して小さいものとなっている(図10、Test2参照)。
なお、第1掃引順序T1における掃引方向は、周波数を増加させる方向、または周波数を減少させる方向いずれでもよい。
<実施の形態3>
本実施の形態に係る周波数特性測定方法は、実施の形態1に係る周波数特性測定方法とは第1順序より後の工程の内容が異なっているので、主に、第1順序より後の工程について図を参照して説明する。本実施の形態に係る周波数特性測定では、図11に示す周波数特性測定装置100が用いられる。周波数特性測定装置100については実施の形態5に詳述する。なお、実施の形態1に係る周波数特性測定は、図11に示す周波数特性測定装置100を用いて行われることに限定されるものではない。
図7は、実施の形態3に係る周波数特性測定方法の工程を示す工程図である。図8は、実施の形態3に係る周波数特性測定方法により得られる共振周波数特性の概略図である。
まず、測定対象物が保持器(不図示)に保持され、入力信号Sinを印加できる状態とされる。具体的には、測定対象物として水晶振動子C(図11参照)を測定する場合は、保持器に固定して端子にプローブピンを当接し測定ができる状態にする。また、測定対象物として水晶振動片を測定する場合は、上述の上電極体と下電極体の間に水晶振動片を配置し測定ができる状態にする。
次に、入力信号Sin(図11参照)を入力して周波数fの掃引を開始周波数fsから終了周波数feまで行い、周波数fに対応する出力信号Sout(図11参照)を取得する(第1掃引工程S1)。
なお、本実施の形態では、周波数fの掃引を開始周波数fsから終了周波数feまで行うことを第1掃引順序(図8に示す符号T1)という。また、第1掃引工程S1において周波数fの掃引を開始周波数fsから終了周波数feまで行っているが、この掃引方向は限定されるものではなく、第1掃引工程S1における掃引方向を図8を参照して終了周波数feから開始周波数fsまでとしてもよい。出力信号Soutは、周波数fの掃引に対して共振周波数f0の付近でピークを有する共振特性Ch5として得られる(図8参照)。
次に、出力信号Soutのピークが求められ、第1掃引順序T1でのピークに対応する第1ピーク周波数f1が取得される(第1ピーク周波数取得工程S2)。具体的には、取得された全ての出力信号Soutを比較することにより、最大値(または最小値)がピークとして求められ、第1掃引順序T1のピークに対応する周波数fが第1ピーク周波数f1として記憶される。
次に、第1掃引順序T1の掃引方向に対して逆方向(図8に示す終了周波数feから開始周波数fsまで)に入力信号Sinの周波数fの掃引を行い、周波数fに対応する出力信号Soutを取得する(第2掃引工程S4)。なお、本実施の形態では、第1掃引順序の後に周波数fの掃引を終了周波数feから開始周波数fsまで行うことを第2掃引順序(図8に示す符号T2)という。
第2掃引順序T2では、第1掃引順序T1の掃引速度と等速度で周波数fの掃引が行われる。また、第2掃引順序T2の掃引範囲は第1掃引順序T1と同一範囲で行われる。出力信号Soutは、周波数fの掃引に対して共振周波数f0の付近でピークを有する共振特性Ch6として得られる(図8参照)。
なお、第2掃引順序T2の周波数fの掃引は、第1ピーク周波数f1の周囲の範囲において周波数fを掃引するように設定してもよい。これにより、第2掃引順序T2の周波数fの掃引時間が短縮化される。
次に、出力信号Soutのピークが求められ第2掃引順序T2のピークに対応する第2ピーク周波数f2が取得される(第2ピーク周波数取得工程S5)。具体的には、取得された全ての出力信号Soutが比較されて最大値(または最小値)がピークとして求められ、第2掃引順序T2のピークに対応する周波数fが第2ピーク周波数f2として記憶部105(図11参照)に記憶される。
次に、第1ピーク周波数f1および第2ピーク周波数f2に基づき共振周波数f0が導出され(共振周波数導出工程S7)、共振周波数f0が出力される。具体的には、第1ピーク周波数f1と第2ピーク周波数f2との平均値が共振周波数f0とされる。
第1掃引順序T1におけるピーク周波数は、共振周波数f0に対して第1掃引順序T1の掃引方向にずれる。他方、第2掃引順序T2におけるピーク周波数は、共振周波数f0に対して第2掃引順序T2の掃引方向にずれる。第1掃引順序T1と第2掃引順序T2の掃引速度は等速であることから、そのずれは同程度となる。したがって、第1ピーク周波数f1と第2ピーク周波数f2との平均値を算出することにより、ずれが相殺され、正確な共振周波数f0を得ることができる。
なお、第1掃引順序T1と第2掃引順序T2における掃引速度を変えたときは、第1ピーク周波数f1または第2ピーク周波数f2に所定の係数を乗じて共振周波数f0を算出してもよい。また、実際の測定(または測定条件、測定機器)に応じて最適な係数を求め、第1ピーク周波数f1または第2ピーク周波数f2に求めた係数を乗じて共振周波数f0を算出してもよい。
このような構成により、水晶振動子Cを順方向と逆方向から周波数を掃引してピークに対応するピーク周波数(第1ピーク周波数f1および第2ピーク周波数f2)を取得し、第1ピーク周波数f1(順方向)と第2ピーク周波数f2(逆方向)に基づき共振周波数f0を導き出すことから、各掃引工程(第1掃引工程S1および第2掃引工程S2)における各ピーク周波数(第1ピーク周波数f1または第2ピーク周波数f2)と共振周波数f0とのずれを相殺することができる。これにより、正確な共振周波数f0を得ることができる。
また、掃引速度を上げるとピーク周波数と共振周波数とのずれが大きくなるが、各掃引工程におけるピーク周波数(f1、f2)と共振周波数f0とのずれは相殺されることから、掃引速度を上げても正確な共振周波数f0を得ることができる。
また、簡単な計算式により共振周波数f0を得ることができる。すなわち、第1順序と第2順序との掃引速度を等速としてあることから、第1ピーク周波数f1と共振周波数f0とのずれと第2ピーク周波数f2と共振周波数f0とのずれとが等しくなるので、第1ピーク周波数f1と第2ピーク周波数f2の平均値を共振周波数f0とすることができる。
次に、通常の周波数特性測定方法と実施の形態3に係る周波数特性測定方法とを比較して、その効果の説明をする。
通常の周波数特性測定方法により測定して得られた共振周波数特性図は、上述したように図3に示されている。
図9は、実施の形態3に係る周波数特性測定方法により測定して得られた共振周波数特性図である。縦軸はゲイン(dB)を示し、横軸は周波数f(MHz)を示している。第1掃引順序T1の出力信号Soutは、ゲインとして測定され、共振曲線Ch16として示されている。また、第2掃引順序T2の出力信号Soutは、ゲインとして測定され、共振曲線Ch17として示されている。
第1掃引順序T1では、周波数fを増加させる方向に測定ポイント数801とし、掃引速度0.2ms/ポイント、開始周波数3.998991MHz、終了周波数4.000988で掃引している(図10、Test3参照)。
第2掃引順序T2では、周波数fを減少させる方向に測定ポイント数801とし、掃引速度0.2ms/ポイント、開始周波数4.000988MHz、終了周波数3.998991で掃引している。なお、第1掃引順序T1と第2掃引順序T2の切替時間を10msとしている。測定時間は330.4msになる(図10、Test3参照)。
この条件では、第1ピーク周波数はf1は4.0000599MHzであり、第2ピーク周波数f2は3.9999274MHzであり、その平均値は、3.9999937MHzとなる。共振周波数f0の測定差(図10参照)という)は、2.3Hzである。
第1掃引順序T1の掃引と第2掃引順序T2の掃引は、0.2ms/ポイントとして高速に周波数fの掃引が行われている。このような高速の掃引を行っても、第1掃引順序T1の掃引と第2掃引順序T2の掃引は、等速で互いに逆方向に行われることから、ピーク周波数の平均値を取ることによりピーク周波数と共振周波数f0とずれが相殺される。したがって、正確な共振周波数f0を得ることができる。
次に、共振周波数f0を測定することができる周波数特性測定装置について図を参照して説明する。実施の形態4または実施の形態5では、水晶振動子Cを測定対象物として例に挙げる。なお、実施の形態4または実施の形態5に係る周波数特性測定装置は、測定対象物として水晶振動子Cに対して適用されるものに限定されるものではなく、圧電振動デバイスその他共振周波数特性を有する電子デバイスに適用されるものである。
<実施の形態4>
本実施の形態に係る周波数特性測定装置を図2の共振周波数特性の概略図および図11を参照して説明する。
図11は、本実施の形態4に係る周波数特性測定装置のブロック図である。
本実施の形態に係る周波数特性測定装置100は、低周波数側と高周波数側との間で掃引させる入力信号を発生させる入力信号発生器110と、水晶振動子Cに入力された入力信号Sinに対して出力される出力信号Soutを取得する出力取得部103と、出力信号Soutのピークを算出するピーク演算部104と、出力信号Soutとピークに対応するピーク周波数とを関連づけて記憶する記憶部105と、低周波数側(図2に示す開始周波数fs)から高周波数側(図2に示す終了周波数fe)まで周波数掃引して得られるピーク周波数に基づいて周波数fの掃引を再開させるための掃引再開周波数frsを設定させ、掃引再開周波数frsから図2に示す開始周波数fsに再掃引させる制御部106と、周波数側の再掃引で得られたピーク周波数を共振周波数f0とする共振周波数取得部107とを備えている。
なお、本実施の形態では、周波数fの掃引を開始周波数fsから終了周波数feまで行うことを第1掃引順序(図2に示す符号T1)といい、第1掃引順序の後に周波数fの掃引を掃引再開周波数frsから開始周波数fsまで行うことを第2掃引順序(図2に示す符号T2)という。
入力信号発生器110は、掃引される周波数fを形成する周波数掃引発振器101と、形成された周波数fに基づき入力信号Sinを形成する高周波信号発生器102により主要部が構成される。
周波数掃引発振器101は、電圧−容量変換素子(例えば、バリキャップとコイルとを組合せた同調回路の同調周波数fで発振させる発振回路)により構成され、周波数fを所定の範囲で掃引することができるようになっている。
また、制御部106からの命令により、掃引を開始する開始周波数fsや掃引方向を変更できるものとなっている。例えば、所定の条件により設定される開始周波数fsから掃引を開始させることができる。また、所定のタイミングにおいて掃引方向を反転させることができる。
具体的に、本実施の形態では、第1掃引順序T1では周波数fの掃引を開始周波数fsから終了周波数feまで行っているが、この掃引方向は限定されるものではなく、第1掃引順序T1における掃引方向を図2を参照して終了周波数feから開始周波数fsまでとしてもよい。さらに、第2掃引順序T2では、第1掃引順序T1の後に周波数fの掃引を掃引再開周波数frsから開始周波数fsまで行っているが、これに限定されるものではなく、第2掃引順序T2における掃引方向を図2を参照して掃引再開周波数frsから終了周波数feまでとしてもよい。
高周波信号発生器102は、周波数掃引発振器101からの掃引周波数fを受け、これに基づいて入力信号Sinを形成するものである。
出力取得部103は、入力信号Sinが加えられた水晶振動子Cからの出力信号Soutを取得するものである。また、入力信号Sinに対して得られた出力信号Soutは、入力信号Sinの周波数fと同期されて記憶部105に記憶される。
ピーク演算部104は、出力信号Soutからピークを算出するものであり、また、ピークに対応するピーク周波数を記憶部105に記憶させる。ピーク周波数の記憶は順序毎に記憶される。すなわち、第1掃引順序T1で得られたピークは第1ピーク周波数f1として、第2掃引順序T2で得られたピークは第2ピーク周波数f2として記憶される。
記憶部105は、出力信号Soutを周波数fと関連づけて記憶し、また、ピーク周波数を記憶するものである。
制御部106は、第1順序で周波数fの掃引を実行させ、第1順序で得られるピーク周波数に基づき周波数fの掃引を再開させる掃引再開周波数frsを設定させ、第2順序で周波数fの掃引を再実行させるように、各構成要素(周波数掃引発振器101、入力信号発生器110(高周波信号発生器102、出力取得部103)、ピーク演算部104、記憶部105、共振周波数取得部107)を制御する。
具体的には、制御部106は、第1順序で周波数掃引発振器101と高周波信号発生器102により入力信号Sinを形成させて、入力信号Sinの周波数fの掃引を所定の範囲で実行させる。次に、出力取得部103により出力信号Soutを取得させて、ピークを検出させて、ピークに対応する第1ピーク周波数f1を記憶部105に記憶させる。次に、第1ピーク周波数f1の基づき第2掃引順序T2における掃引再開周波数frsを設定する。
なお、第2掃引順序T2で掃引方向を反転させる場合には、第1ピーク周波数f1を第1掃引順序T1の掃引方向側に超えた周波数f(または、第1ピーク周波数)が掃引再開周波数frsとして設定される(実施の形態1参照)。
第2掃引順序T2と第1掃引順序T1の掃引方向とを同じとする場合には、第1ピーク周波数f1に至るまでの周波数fが掃引再開周波数frsとして設定される(実施の形態2参照)。
次に、第2掃引順序T2で、周波数掃引発振器101と高周波信号発生器102により入力信号Sinを形成し、入力信号Sinの周波数fの掃引を所定の範囲で実行させる。第2掃引順序T2での掃引速度は、第1手順T1での掃引速度より遅く、共振周波数f0が正確に測定できる程度の速度に設定される。
次に、出力取得部103により出力信号Soutを取得させて、ピークを算出させて、ピークに対応する第2ピーク周波数f2を記憶部105に記憶させる。
共振周波数取得部107は、第2掃引順序T2で取得された第2ピーク周波数f2を共振周波数f0として記憶/出力するものである。
このような構成により、第1ピーク周波数f1の周辺範囲において共振周波数f0が正確に測定できる程度の速度で再測定されることから、正確な共振周波数f0を得ることができる。
また、第2掃引順序T2の掃引再開周波数frsを第1ピーク周波数f1の近傍の周波数に設定することができる。これにより、第2掃引順序T2の掃引範囲を狭くすることができるので、第2掃引順序T2の掃引時間を短縮することができる。したがって、周波数特性測定の時間を全体的に短縮することができる。
次に、本実施の形態に係る周波数特性測定装置100の構成例について説明する。
例えば、周波数特性測定装置100は、ネットワークアナライザとPC(パーソナルコンピュータ)により主要部が構成される。ネットワークアナライザは、周波数掃引器101、高周波発生装置102、および出力取得部103の機能を担う。PCは、ピーク演算部104、記憶部105、制御部106、および共振周波数取得部107の機能を担う。
また、PCは、測定条件を入力できるものとしてもよい。測定条件は、例えば、第1掃引順序T1における周波数fの掃引範囲や掃引速度や掃引方向(第1条件)、あるいは、第2掃引順序T2における周波数fの掃引範囲や掃引速度や掃引方向(第2条件)、等である。なお、上記PCの機能をネットワークアナライザに組み込んだ構成としてもよい。
以下に、具体的な動作について説明する。
PCに入力された測定条件はネットワークアナライザに出力される。ネットワークアナライザは、測定条件(例えば、第1条件)に従って測定対象物(水晶振動子C、振動片等)に入力信号Sinを印加しつつ、第1の出力信号Soutを取得する。第1の出力信号Soutは、ネットワークアナライザからPCに出力される(実施の形態1又は2に示す第1掃引工程を参照)。
PCでは、第1の出力信号のピークに対応するピーク周波数が求められる。ピーク周波数は、第1ピーク周波数f1として記憶される(実施の形態1又は2に示す第1ピーク周波数取得工程を参照)。
次いで、ピーク周波数に基づき掃引再開周波数frsが算出される(実施の形態1又は2に示す再開周波数設定工程を参照)。なお、掃引再開周波数frsの算出条件は、測定対象物によって異なるものであるので、予め算出条件を入力するように構成してもよい。
ネットワークアナライザは、PCから掃引再開周波数frsを含む情報を取得し、測定条件(例えば、第2条件)に従って測定対象物(水晶振動子C、振動片等)に入力信号Sinを印加しつつ、第2の出力信号Soutを取得する。第2の出力信号Soutは、ネットワークアナライザを介してPCに出力される(実施の形態1又は2に示す第2掃引工程を参照)。
PCでは、第2の出力信号のピークに対応するピーク周波数が求められる。ピーク周波数は第2ピーク周波数f2として記憶される。また、第2ピーク周波数f2は、共振周波数f0として記憶される(実施の形態1又は2に示す第2ピーク周波数取得工程を参照)。
<実施の形態5>
本実施の形態に係る周波数特性測定装置を図8の共振周波数特性の概略図および図11を参照して説明する。
本実施の形態5に係る周波数特性測定装置100の構成は、実施の形態4に係る周波数特性測定装置100と同様であるので、図11を参照して説明する。
本実施の形態に係る周波数特性測定装置100は、低周波数側と高周波数側との間で掃引させる入力信号を発生させる入力信号発生器110と、水晶振動子Cに入力された入力信号Sinに対して出力される出力信号Soutを取得する出力取得部103と、入力信号Sinのピークを算出するピーク演算部104と、出力信号Soutとピークに対応するピーク周波数とを関連づけて記憶する記憶部105と、低周波数側(図8に示す開始周波数fs)から高周波数側(図8に示す終了周波数fe)まで周波数fの掃引を実行し、この周波数fの掃引方向とは逆の方向に周波数fの再掃引を実行する制御部106と、周波数fの掃引により得られた第1ピーク周波数f1と周波数fの再掃引により得られた第2ピーク周波数f2とに基づき共振周波数f0を導出する共振周波数導出部108(図11においては、共振周波数取得部107と同一ブロックで表示しているが、機能は異なるものである)とを備えている。
なお、本実施の形態では、周波数fの掃引を開始周波数fsから終了周波数feまで行うことを第1掃引順序(図8に示す符号T1)といい、第1掃引順序T1の後に周波数fの掃引を終了周波数feから開始周波数fsまで行うことを第2掃引順序(図8に示す符号T2)という。また、本実施の形態では、第1掃引工程S1において周波数fの掃引を開始周波数fsから終了周波数feまで行なっているが、この掃引方向は限定されるものではなく、第1掃引工程S1における掃引方向を図8を参照して終了周波数feから開始周波数fsまでとしてもよい。
上述の構成において、実施の形態4と異なる構成要素は、制御部106と共振周波数f0導出部108であるので、この点について詳述する。他の構成要素は実施の形態4と同様であるのでその説明を省略し、同一構成要素には同一符号を付す。
制御部106は、第1掃引順序T1で周波数fの掃引を実行させ、第2掃引順序T2では第1掃引順序T1の掃引方向と逆方向に周波数fの掃引を再実行させるように各構成部(周波数掃引発振器101、入力信号発生器110(高周波信号発生器102、出力取得部103)、ピーク演算部104、記憶部105、共振周波数導出部108)を制御する。
具体的には、制御部106は、第1順序で周波数掃引発振器101と高周波信号発生器102により入力信号Sinを形成し、入力信号Sinの周波数fの掃引を所定の範囲で実行させる。次に、出力取得部103で出力信号Soutを取得させて、ピークを検出させて、ピークに対応する第1ピーク周波数f1を記憶部105に記憶させる。
次に、第2掃引順序T2で、周波数掃引発振器101と高周波信号発生器102により入力信号Sinを形成し、入力信号Sinの周波数fの掃引を所定の範囲で実行させる。なお、第2掃引順序T2の掃引方向は、第1掃引順序T1の掃引方向とは逆方向とされ、掃引速度は、第1掃引順序T1の掃引速度と等速度とされる。
次に、出力取得部103で出力信号Soutを取得させて、ピークを算出させて、ピークに対応する第2ピーク周波数f2を記憶部105に記憶させる。
共振周波数導出部108は、第1ピーク周波数f1と第2ピーク周波数f2の平均値を共振周波数f0として記憶/出力するものである。
このような構成により、各掃引工程(第1掃引工程S1および第2掃引工程S4)における各ピーク周波数(第1ピーク周波数f1または第2ピーク周波数f2)と共振周波数とのずれが相殺されることから、正確な共振周波数を得ることができる。
また、掃引速度を上げるとピーク周波数(f1、f2)と共振周波数f0とのずれが大きくなるが、各順序での(第1掃引順序T1および第2掃引順序T2)の掃引方向が互いに逆になっていることから、各順序におけるピークと共振周波数f0とのずれは相殺される。したがって、掃引速度を上げても正確に共振周波数f0が得ることができる周波数特性測定装置100となっている。
次に、本実施の形態に係る周波数特性測定装置100の構成例について説明する。
例えば、周波数特性測定装置100は、ネットワークアナライザとPC(パーソナルコンピュータ)により主要部が構成される。ネットワークアナライザは、周波数掃引器101、高周波発生装置102、および出力取得部103の機能を担う。PCは、ピーク演算部104、記憶部105、制御部106、および共振周波数導出部108の機能を担う。
また、PCは、測定条件を入力できるものとしてもよい。測定条件は、例えば、第1掃引順序T1における周波数fの掃引範囲や掃引速度や掃引方向(第1条件)、第2掃引順序T2における周波数fの掃引範囲や掃引速度や掃引方向(第2条件)、等である。なお、上記PCの機能をネットワークアナライザに組み込んだ構成としてもよい。
以下に、具体的な動作について説明する。
PCに入力された測定条件はネットワークアナライザに出力される。ネットワークアナライザは、測定条件(例えば、第1条件)に従って測定対象物(水晶振動子C、振動片等)に入力信号Sinを印加しつつ、第1の出力信号Soutを取得する。第1の出力信号Soutは、ネットワークアナライザからPCに出力される(実施の形態3に示す第1掃引工程を参照)。
次いで、測定条件(例えば、第2条件)に従って測定対象物(水晶振動子C、振動片等)に入力信号Sinを印加しつつ、第2の出力信号Soutを取得する。第2の出力信号Soutは、ネットワークアナライザを介してPCに出力される(実施の形態3に示す第2掃引工程を参照)。
PCでは、第1の出力信号のピークに対応する第1ピーク周波数f1、および第2の出力信号のピークに対応する第2ピーク周波数f2が求められる(実施の形態3に示す第1ピーク周波数取得工程、および、第2ピーク周波数取得工程を参照)。
次いで、第1ピーク周波数f1および第2ピーク周波数f2に基づき共振周波数f0が算出され記録される(実施の形態3に示す共振周波数導出工程を参照)。