JP2007192300A - 樹脂製プーリ - Google Patents
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Abstract
【課題】樹脂材料の選定によらず、また、耐摩耗性被膜を形成する必要なく、異物が噛み込んでも耐摩耗性の低下を抑制可能にすること。
【解決手段】本樹脂製プーリ10は、その外側円筒部13の外周面であるベルト案内面13aにベルトとの間に噛み込んで相対移動してくる異物が嵌まり込む溝部16を不連続にかつ多数形成した構成を備える。
【選択図】図2
【解決手段】本樹脂製プーリ10は、その外側円筒部13の外周面であるベルト案内面13aにベルトとの間に噛み込んで相対移動してくる異物が嵌まり込む溝部16を不連続にかつ多数形成した構成を備える。
【選択図】図2
Description
本発明は、自動車エンジンにおけるクランクシャフトと補機との間のベルト伝動系においてベルトを巻き掛けて案内する樹脂製プーリに関する。自動車の補機にはウォーターポンプ、オルタネータ、パワーステアリング用ポンプ、空調機用のコンプレッサ等がある。
自動車のエンジンブロックにおいては、それに設けたねじ孔にボルトを取り付け、そのボルトにプーリユニットが設けられる。このプーリユニットは、そのプーリにエンジンの回転動力を補機に伝動するベルトや、補機よりの駆動力をエンジン側に伝動するベルトなど、エンジン側と補機側との間に介装したベルトが巻き掛けられる。このようなエンジンと補機との間のベルト伝動系に配備されるプーリユニットには、エンジンのクランクシャフト側プーリと補機側プーリとの間のベルト伝動経路においてベルトを案内するアイドラプーリを備えたプーリユニット(アイドラプーリユニット)が配置される。近年、このアイドラプーリには軽量化やコストダウン等を目的として樹脂製のアイドラプーリの採用が拡大化しつつある。このようなプーリユニットにおいて、樹脂製プーリは金属製プーリと比較して硬度に劣るため、そのベルト案内面はベルトとの接触部位に侵入してくる砂塵等の異物の噛み込みにより比較的摩耗し易く、寿命も短くなる傾向となり、比較的早期にメンテナンスを実施する必要がある。
このため、樹脂製プーリでは耐摩耗性に優れた樹脂材料を選定したりすることは極めて重要となるが、コストの面からその選定作業も困難であるのが現状である。また、樹脂材料選定の困難性を回避するべくベルト案内面にセラミックス等の耐摩耗性被膜を形成することも行われている(特許文献1参照)。
しかしながら、耐摩耗性に優れた樹脂素材を選定したり耐摩耗性被膜を形成しても、例えば硬い異物がベルト案内面とベルトとの間を移動するような状況下では、異物の介在でそれらの面圧が高くなるために樹脂材だけではベルト案内面やベルトの摩耗を抑制し難く、また、セラミックス等の耐摩耗性被膜では摩耗を抑制することができても剥離する可能性がある、などの課題がある。
特開平7−12206号公報
したがって、本発明により解決すべき課題は、樹脂材料の種類によらず、また、耐摩耗性被膜を形成する必要なく、異物が噛み込んでも耐摩耗性の低下を抑制することができる樹脂製プーリを提供することである。
本発明第1による樹脂製プーリは、ベルトを案内するベルト案内面を備える樹脂製プーリにおいて、このベルト案内面に、ベルト案内中にベルトとの間に介在する異物の嵌まり込みが可能な多数の不連続な溝部を設けたことを特徴とするものである。
本発明第1によると、砂塵等の硬いあるいは比較的硬い異物がベルト案内面とベルトとの間に噛み込んでもその異物がベルト案内面とベルトの相対回転に伴ない移動して溝部に到達すると、その異物はベルトから受ける面圧でその溝部に嵌まり込み、一旦、嵌まり込むとその溝部から脱出しにくくなってベルト案内面とベルトと共に一体回転することができるようになる。そのため、異物がベルト案内面に存在していても、ベルト案内面やベルトに対して相対摺動するようなことを防止し、異物によるベルト案内面やベルトの摩耗を抑制することができるようになる。その結果、ベルト案内面に異物が介在している状態でもベルト案内動作を円滑に安定して行わせることができるようになる。特に、異物が溝部に嵌まり込むと異物のベルト案内面からの高さが低くなり、このことにより異物によるベルト案内面とベルトとの接触面圧が低下するので異物による上記摩耗を一層抑制することができるようになる。
以上により、本発明第1ではプーリが金属製プーリではなく、その金属製よりも硬度に劣る樹脂製プーリであっても、樹脂素材にかかわらず異物の噛み込みによる摩耗を抑制することができ、また、プーリ表面にその形成にコストがかかる耐摩耗性被膜を何等形成する必要もないから、軽量かつ安価であるという樹脂製プーリの特徴を損なうことなく耐摩耗性に優れた樹脂製プーリを提供することができる。なお、溝部の形成方法には何等限定されるものではないが、例えばディンプル加工により形成することができる。
本発明第2による樹脂製プーリは、内側円筒部と、これと同心の外側円筒部と、前記両円筒部を連結する連結部とを備え、内側円筒部はその内周面に転がり軸受が嵌合され、外側円筒部はその外周面にベルト案内面を備えるプーリユニットにおいて、前記ベルト案内面に、ベルト案内中にベルトとの間に介在する異物の嵌まり込みが可能な溝部を不連続にかつ多数設けるとともに、当該樹脂製プーリの側面に放熱用の溝部を多数設けたことを特徴とするものである。この放熱用の溝部は、内側円筒部と外側円筒部と連結部それぞれの側面の全体に設けてもよく、あるいは、それらの一部に設けてもよいことは勿論である。
本発明第2においては、本発明第1と同様に、ベルト案内面の多数の溝部により異物の噛み込みによるベルト案内面やベルトの摩耗を抑制することができることに加えて、高速回転に伴う冷却風が上記側面の多数の放熱用の溝部に入り込むことでプーリ側面が冷却されやすくなっているとともにその溝部により放熱面積が大きく増大して極めて効果的な放熱を行うことができるようになる。したがって、本発明第2では、樹脂製プーリの欠点である発生熱が蓄積され易い一方で放熱されにくく、熱変形し易いという課題を解消することができ、ベルト案内動作を長期にわたり安定して行わせることができ、メンテナンスコスト等を低減することができるとともに、動力伝達系でのベルト案内の信頼性を高めることができる。
本発明によれば、樹脂材料の選定によらず、また、耐摩耗性被膜を形成する必要なく、異物が噛み込んでも耐摩耗性の低下を抑制することができる。
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る樹脂製プーリを説明すると、図1は、実施の形態による樹脂製プーリを備えたプーリユニットを示し、図2は図1の樹脂製プーリを拡大して示す斜視図である。樹脂製プーリ10は、その内径部分に転がり軸受である深溝型玉軸受11がインサート成形により一体的に取り付けられた構造になっている。樹脂製プーリ10は、内側円筒部12と、内側円筒部12と同心配置した外側円筒部13と、内側円筒部12と外側筒部13とを連結する環状連結部14とを備え、環状連結部14の両側面には複数の補強リブ15が放射状に設けられている。樹脂製プーリ10の外側円筒部13の外周面はベルト案内面13aとなっている。
実施の形態の樹脂製プーリ10においては、そのベルト案内面13aに多数の不連続な溝部16が形成されている。各溝部16は、ベルトと接触する接触面よりも凹んだ凹み部分となっており、図1及び図2に示すものでは円形状にその輪郭をなし、中央寄りほど凹む凹曲面状に形成されている。ベルト案内面13aと図示略のベルトとの間に介在する砂塵等の各種異物をベルト案内中に嵌まり込ませてベルト案内面13aとベルトとの接触面圧を低下させる。溝部16は、実施の形態では、異物の外形形状に対応した溝深さと溝断面とを有する形状であることが好ましい、例えば平面視形状が円形である。溝部16は例えば異物よりも大きく浅くても、硬度が低く柔軟性を有する異物ではベルト案内面13aとベルトとに挟まれて溝部16内で変形して嵌まり込むことができる。また、硬度が高くて容易に変形しにくい異物の場合では溝部16は異物が嵌まり込める溝深さと溝断面とを備えた形状にするとよい。溝部16はベルト案内面13aの全体に一様な大きさである必要はなく、不均等な大きさにしてもよい。溝部16は、ベルト案内面13aとベルトとの間に噛み込んで相対移動してくる異物が嵌まり込むと、その嵌まり込みにより、ベルト案内面13aとベルトとから相対回転する方向に力を受けても、ベルト案内面13aと一体回転するようになる。
以上の構成を備えた実施の形態の樹脂製プーリ10においては、溝部16に異物が噛み込むと、ベルト案内面13aからの異物の高さがベルト案内面13aに一致する程度に溝部16に入り込むか、あるいは、溝部16の内部に収納されるか、溝部16外に一部が突き出た程度となり、これによって異物の噛み込みによるベルト案内面13aとベルトとの間の接触面圧が大きく低下するようになる。したがって、実施の形態では、溝部16に入り込んだ異物はベルト案内面13aによりベルトを案内中はベルト案内面13aと一体回転し、ベルト案内面13aやベルトと相対回転しないから、ベルト案内面13aやベルトを摩耗させる力を弱くすることができ、これにより、ベルト案内面13aやベルトの摩耗が大きく抑制されるようになる。
以上により、本実施の形態の樹脂製プーリ10は樹脂製で金属製よりも硬度に劣るが、耐摩耗性や硬度等を考慮して樹脂素材を選定する必要はなく、異物による摩耗を抑制することができる。同時にまた、プーリ表面に耐摩耗性が向上するから、耐摩耗性被膜をプーリ表面に別途の手間やコストがかかる工程により形成する必要もないので、耐摩耗性に優れた樹脂製プーリを安価に製作することができる。
溝部16は、例えば図3(a)で示すように矩形状の溝部、図3(b)で示すように楕円状の溝部など、異物の形状、寸法、等に応じて、ベルトが接触する面より凹んだ凹み部分として種々に設定することができる。
溝部16は、上記したように異物によるベルト案内面13aやベルトの摩耗を抑制することができることに加えて、樹脂製プーリの表面積を拡大していることにより、放熱性を高める放熱用溝部としても機能することができる。樹脂製プーリは、エンジンブロックへの取り付け位置、エンジンの状態、補機の状態等により、高負荷荷重下、高温環境下等で高速回転するような場合、樹脂製プーリがベルトとの摩擦熱あるいは他の部位からの熱を蓄積する一方、樹脂は熱を放熱させにくい。そのため、樹脂製プーリは熱で劣化してくる可能性が高い。溝部16は、上記したようにベルト案内面13aの面積を拡大してその熱を有効に放熱することができる。
図4は実施の形態の樹脂製プーリ10を備えた図1のプーリユニット17を固定ボルト18を介してエンジンブロック19に取り付けた状態を示す。樹脂製プーリ10の外径面のベルト案内面13aにベルトAが案内されている。エンジンブロック19のボス部19bに設けたねじ孔19aに固定ボルト18の一端側が装着され、この固定ボルト18に環状スペーサ20が介装されるとともに、プーリユニット17がワッシャ21を介して固定ボルト18に装着されている。プーリユニット17はワッシャ21を介して固定ボルト18の頭部内面と環状スペーサ20の内端面との間に位置決めされて固定されている。このプーリユニット17において、玉軸受11は外輪11aと、内輪11bと、外輪11aと内輪11bとの間に転動自在に配置された複数の玉(転動体)11cと、保持器11dと、軸方向両側のシール11eとを備え、内輪11bが固定で外輪11aが樹脂製プーリ10と一体回転してそのベルト案内面13aに巻き掛けたベルトAを案内することができるようになっている。
このプーリユニット17においては、樹脂製プーリ10のベルト案内面13aに多数の不連続な溝部16が形成されているので、ベルトAの案内中にベルト案内面13aとベルトAとの間に砂塵やその他の異物が噛み込んでも、それら異物は溝部16に嵌り込み、異物がベルト案内面13aとベルトAとの間を相対移動してベルト案内面13a等を摩耗することを抑制することができる。
図4に示す樹脂製プーリ10に代えて、図5に示す樹脂製プーリ10を上記プーリユニット17に組み込むことができる。図5の樹脂製プーリ10では、ベルト案内面13aの溝部16に加えて、樹脂製プーリ10の側面にその表面積を拡大してその放熱性を高める凹部21を多数形成している。図5では図解の都合で凹部21は樹脂製プーリ10の側面の全体に形成した状態で示していないが、樹脂製プーリ10の側面の全体に形成してもよく、一部に形成してもよい。なお、溝部16も前述したように樹脂製プーリ10の表面積を拡大しているので放熱効果があるが、図5に示す樹脂製プーリ10では、その側面にさらに多数の凹部21を設けていることにより大きい放熱効果を得ることができ、樹脂製プーリ10の熱変形を抑制することができて好ましい。特に、樹脂製プーリ10は高速回転すると周囲の空気の流れにより冷却風が発生し、この冷却風が溝部21に入り込んで出て行くことで一層放熱し易い環境を得ることができる。溝部21の形状にはディンプル等による不連続な円形、方形、楕円形、その他の形状の溝部や、例えば矩形状の凹部が格子状に並んだワッフル状の溝部などがある。ただし、図5ではディンプル構造で示している。以上の図5に示す樹脂製プーリ1をプーリユニット17に組み込んだ場合、樹脂製プーリの欠点である熱が蓄積され易い一方で放熱されにくく、熱変形し易いという課題を解消することができ、ベルト案内動作を長期にわたり安定して行わせることができる。
なお、図6で示す樹脂製プーリ10は、ベルト案内面13aの軸方向両側に半径方向外向きのベルトの脱落防止鍔部13b,13bを備えたものであり、この樹脂製プーリ10では、両鍔部13b,13bと環状連結部14それぞれの側面にのみ放熱用の溝部22を多数不連続に形成して放熱効果を高めた構造になっている。図6ではディンプル構造で示しているが、ワッフル構造も含む。
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で、種々な変更ないしは変形を含むものである。
10 樹脂製プーリ
12 内側円筒部
13 外側円筒部
13a ベルト案内面
14 環状連結部
16 溝部
12 内側円筒部
13 外側円筒部
13a ベルト案内面
14 環状連結部
16 溝部
Claims (2)
- 外側円筒部の外周面にベルトを案内するベルト案内面を備える樹脂製プーリにおいて、このベルト案内面に、ベルト案内中にベルトとの間に介在する異物の嵌まり込みが可能な溝部を不連続にかつ多数設けた、ことを特徴とする樹脂製プーリ。
- 内側円筒部と、これと同心の外側円筒部と、前記両円筒部を連結する連結部とを備え、内側円筒部はその内周面に転がり軸受が嵌合され、外側円筒部はその外周面にベルト伝動系のベルトを案内するベルト案内面を備える樹脂製プーリにおいて、前記外側円筒部のベルト案内面に、ベルト案内中にベルトとの間に介在する異物の嵌まり込みが可能な溝部を不連続にかつ多数設けるとともに、当該樹脂製プーリの側面に放熱用の溝部を多数設けた、ことを特徴とする樹脂製プーリ。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2006011042A JP2007192300A (ja) | 2006-01-19 | 2006-01-19 | 樹脂製プーリ |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2006011042A JP2007192300A (ja) | 2006-01-19 | 2006-01-19 | 樹脂製プーリ |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2007192300A true JP2007192300A (ja) | 2007-08-02 |
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JP2006011042A Pending JP2007192300A (ja) | 2006-01-19 | 2006-01-19 | 樹脂製プーリ |
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JP (1) | JP2007192300A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2021189636A1 (zh) * | 2020-03-23 | 2021-09-30 | 北京理工大学 | 钢带传动机构及其带轮 |
-
2006
- 2006-01-19 JP JP2006011042A patent/JP2007192300A/ja active Pending
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WO2021189636A1 (zh) * | 2020-03-23 | 2021-09-30 | 北京理工大学 | 钢带传动机构及其带轮 |
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