JP2007191380A - レーザ加工用シリカガラス - Google Patents
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Abstract
紫外域のレーザによりガラスの揮発を起こすレーザ加工用のシリカガラス又は珪酸塩ガラス及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
フッ素化合物をラザフォード後方散乱法(RBS法)による計測で1モル%以上含有することを特徴とするレーザアブレーション用シリカガラス及びその製造方法。
【選択図】図2
Description
また、酸化鉄酸化セリウムを主成分とするガラスが知られているが、加工速度も1発あたり最大0.2ミクロンと小さい(特許文献2)。さらに、レーザー加工用ガラスとして、硼珪酸系多成分ガラスが知られている(特許文献3)。
レーザにより石英ガラス、水晶、シリカガラスの微細加工ができることは既に公知である(非特許文献1)。
また、アルミニウムとアルカリ金属を等量含む母材ガラスに対してイオン交換により銀イオンを導入することによりレーザ加工に必要なレーザ出力をさげることが知られている(特許文献5)。
さらに、顔料をガラス表面に付着させることで、レーザエネルギーの吸収を増大させる発明も知られている(特許文献6、特許文献7)。
また、レーザ照射によるクラックの発生を抑える発明も知られている(特許文献9)。
ガラス製膜方法に関しても公知である。ここではガラス膜中のフッ素の存在に関しては全く言及されていない(非特許文献2)。
さらに、シリカガラスにArFエキシマレーザを1発照射した場合、1J/cm2に閾値が存在し、閾値以下のレーザーパワーでは全くアブレーションは見られず、閾値以上では、一発の照射で厚さ数百nmのシリカガラスが揮発する。この原理を利用してレジスト剤を用いない微細加工を行うことは、古くより提案されてきたが、閾値が高すぎるために、微細加工の主流は反応性イオンエッチングであり、レーザアブレーションは実験室レベルで留まっていた(非特許文献3)。
フッ素のドーピングにより、レーザアブレーションの閾値が1J/cm2から200mJ/cm2と大幅に下がった。これは、フッ素のドーピングによる効果、およびフッ素のドーピングにより、シリカガラスの中距離構造秩序を大きく変化させることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、
本発明は、フッ素化合物を6モル%以上含有することを特徴とするレーザアブレーション用シリカガラスである。
また、本発明においては、シリカガラスとして、非晶質シリカ、石英ガラス、珪酸塩ガラスを用いることが出来る。
さらに、本発明は、フッ酸水溶液にシリカゲルを飽和するまで溶解させ飽和溶液に、ホウ酸水溶液を加え攪拌したのち、シリコンウエハーを浸漬させ、20〜45℃に保持することにより、シリコンウエハーの表面上に析出させるレーザアブレーション用シリカガラスの製造方法である。
また、本発明は、六フッ化硫黄(SF6)を原料ガラス組成物に添加し、垂直軸付法(VAD法)を行うレーザアブレーション用シリカガラスの製造方法でもある。
また、本発明のレーザアブレーション用シリカガラスには、ラザフォード後方散乱法(RBS法)による計測で1モル%以上のフッ素化合物、好ましくは2%以上のフッ素化合物を含有する。フッ素化合物としては、フッ化ケイ素を初め図5aで検出されるようなフッ素化合物が含まれる。
さらに、レーザアブレーション用シリカガラスは、非晶質シリカ、石英ガラス若しくは珪酸塩ガラスを用いることが出来る。本発明で云う珪酸塩ガラスとは代表的には、アルカリ金属、アルカリ土類金属を含むシリカガラスを意味する。例えば20Na2O:80SiO2のようなガラスや、アルミも含むとアルミノ珪酸塩、硼素を含むとホウケイ酸塩ガラスである。
本発明における、レーザアブレーション用シリカガラスに含まれるフッ素化合物は、レーザアブレーション用シリカガラスの製造方法により異なってくる。
すなわち、フッ酸水溶液にシリカゲルを飽和するまで溶解させ飽和溶液に、ホウ酸水溶液を加え攪拌したのち、シリコンウエハーを浸漬させ、20〜45℃に保持することにより、シリコンウエハーの表面上に析出させるレーザアブレーション用シリカガラスの製造方法では、フッ酸の反応物であり、垂直軸付法(VAD法)を行うレーザアブレーション用シリカガラスの製造方法では、添加した六フッ化硫黄(SF6)の反応物である。
参照用として、シリコンウエハーを酸素・水素雰囲気中で熱酸化させ、シリコンウエハー表面上に薄膜(以降wet酸化膜と云う)を得た。
非晶質シリカの膜厚は、それぞれ700nm(LPD膜),1ミクロン(wet酸化膜)であった。
レーザとして、ArFエキシマレーザ(発振波長193nm)を用意した。レーザの出力は200mJであった。このレーザを合成シリカガラスのレンズを用いて集光し、単位面積あたりのレーザ出力を、248 mJ/cm2から3.3 J/cm2の間で一発照射を行った。
図1は、上側がLPD膜、下側がwet酸化膜である。レーザパワーは左側より、415mJ/cm2,3.3J/cm2,1.8J/cm2である。LPD膜では、415mJ/cm2でもはっきりと照射部分がわかる(a-1)のに対して、wet酸化膜では何の変化も認められない(b-1)。
照射後の膜厚を縦軸にして、整理したのが図2である。除去膜厚は段差計(DekTak)にて計測した。248mJ/cm2で150nm/pulseのアブレーションが確認できた。これに対して、wet酸化膜では1J/cm2までアブレーションは認められなかった。LPD膜では、1.2J/cm2で非晶質シリカ膜はほぼ完全に除去されていると考えられる。
LPD膜では、D1, D2帯とも強度が大きくなっていること、通常の430cm-1付近のピーク強度は著しく小さくなっていることがわかる。この結果よりLPD膜では4員環構造、平面3員環構造が極端に多いシリカであることがわかる。また、935mc-1に見られるピークはSi-Fに帰属されている。このSi-Fの強度とEPMAにより見積もったフッ素濃度は、比例関係にあることが知られており、この関係からフッ素濃度を見積もると、10%程度のフッ素を含有する非晶質シリカであることがわかる。
図5(b)はSi2pスペクトルである。ピークの中心エネルギーは103.4eVであり、これはSi-O-Siに帰属されている。またこの形状はwet酸化膜とほぼ同じであり、LPD法で作製した薄膜のシリコン(4配位)は4つの酸素と結合していることを示している。ただし、低エネルギー側にスペクトルの線幅が広がっている。これは、102.9eVにピークをもつSi-OF成分によるものと考えられる。高温処理(400℃、600℃)を行うと、線幅は狭くなっていく。これは、低エネルギー側のSi-OF成分と高エネルギー側のSi-OH成分(104.7eV)の消失によりスペクトル線幅は狭くなっている。高温処理でF, OH成分が消失することは実施例3と4の結果を裏付けている。またO1sスペクトルに関しては、wet酸化膜との優位な差は認められなかった。このことから、LPD膜のシリコンと結合しているのは4つの酸素原子であること、酸素と結合しているのは2つのシリコン原子であることがわかる。
比較のためにフッ素をドーピングしないで作製したバルクシリカガラスに同様のイオン照射、およびエッチングを行った結果が図6(b)である。穴の直径は400nm程度であることがわかる。フッ化バルクシリカガラスをヘリウム雰囲気中1000℃で4日加熱したものに、同様のイオン照射とエッチングを行った後、電子顕微鏡観察を行ったのが図6(c)である。Etched trackの直径は400nm程度であり、図6(b)に示したフッ素をドーピングしていないシリカガラスとほとんど同じ直径になっていることがわかる。このことより、フッ素をドーピングしたことにより、イオンビームに対しても優れたエッチング効果がでることが示された。また、加熱によりフッ素を揮発・除去することにより、フッ化バルクシリカガラスのエッチング効果は通常のバルクシリカガラスと同程度のものに戻ることも確認できた。
また、この時のフッ素の存在状態は、赤外分光法、ラマン分光法よりシリカガラスネットワークとSi-Fという形で結合していることがわかった。また、ラマン分光法より得られたスペクトルを図7に示した。
Vadwetとはフッ素を添加していないものである。フッ素を導入しないため、脱水が不十分のため水酸基の形で不純物を30ppm程度有する。
FS,FLはそれぞれフッ素濃度3%, 6%のものである。D1, D2と書かれている鋭い散乱ピークはそれぞれ、中距離構造秩序がSiO4四面体の四員環、平面三員環に帰属されている。フッ素の濃度が高くなるほど、D1, D2の強度は小さくなっていくことがわかる。
これらのシリカガラスに6.4eV光(波長193nm, ArFエキシマレーザ波長に相当)を照射しながら、6.4eV光の透過損失をその場測定した(図8VADDRYはフッ素を添加せず、四塩化炭素(CCl4)で脱水を行ったもの、Type-IIIは、火炎加水分解法により得た合成シリカガラスでOH基を1000ppm程度含有するものである。FL, FSは図7と同様である)。
フッ素の濃度が高いほど6.4eV光照射による光透過率の低下が抑制できていることがわかる。フッ素の濃度が高くなるほど光耐性が上昇することがわかった。
また、非晶質シリカ中の酸素のシグナルは+のように650keV〜750keV付近に現れる。750keVの立ち上がりが非晶質シリカ最表面であり、650keV付近が非晶質シリカとシリコンの界面に相当する。フッ素は750keV〜900keV付近に現れる。
非晶質シリカの元素比率Si:O:F=32.1:65.6:2.3としたとき、実測RBSスペクトルとシミュレーションが極めてよく一致する。
従って、フッ素濃度は2〜3%程度であると考えられる。
図9(b)は横軸をエネルギーではなく深さに、縦軸を元素比率にして再計算したものである。シリコン、酸素はもちろんフッ素も非晶質シリカの深さ方向に対して、均一であることがわかる。
実施例3の垂直軸付け法(VAD法)で得られたプリフォームロッドについて、XPS測定におけるF1s, Si2p, O1sの各シグナルの強度(面積)からフッ素濃度を見積もった。原子感度因子(Atomic Sensitivity Factor; S)は文献によるとSF:SSi:SO=1:0.17:0.63である。実測シグナル強度(I)とすると実際の濃度(n)は以下の式で現される。
n1/n2 = (I1/S2)/(I2/S2)
従って、XPSより見積もったフッ素濃度は、1.3%となる。この値は、実施例4のRBS、実施例5のFT-IR法に比べるとかなり低くなる。XPSはx線を表面に照射しているために、x線で刺激されてフッ素が脱離している可能性がある。さらにXPS測定の特徴として表面極近傍(数nm領域)の測定であることが挙げられる。従って、XPS測定は必ずしも、210nmもの膜のフッ素の濃度を定量することには適していないと考えられる。
Claims (4)
- フッ素化合物をラザフォード後方散乱法(RBS法)による計測で1モル%以上含有することを特徴とするレーザアブレーション用シリカガラス。
- シリカガラスが、非晶質シリカ、石英ガラス若しくは珪酸塩ガラスである請求項1に記載したレーザアブレーション用シリカガラス。
- フッ酸水溶液にシリカゲルを飽和するまで溶解させ飽和溶液に、ホウ酸水溶液を加え攪拌したのち、シリコンウエハーを浸漬させ、20〜45℃に保持することにより、シリコンウエハーの表面上に析出させるレーザアブレーション用シリカガラスの製造方法。
- 六フッ化硫黄(SF6)を原料シリカガラス組成物に添加し、垂直軸付法(VAD法)を行うレーザアブレーション用シリカガラスの製造方法。
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