JP2007186910A - セラミックス系焼結体、バラスト、及びバラスト道床 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アルミナ及び石炭灰に、エタノールを溶媒として加え、ボールミルを用いて混合、粉砕し、スラリーを得た。このスラリーから、減圧式の防爆型振動乾燥機を用いてエタノールを除去し、アルミナ、石炭灰混合粉末を得た。この混合粉末を、手動式油圧プレスを用いて成型し、さらに、大型大気焼結用スーパーカンタル炉を用い、最高温度1500にて焼結して、セラミックス系焼結体3を得た。このセラミックス系焼結体3は、道床バラスト石質試験のうち、単位容量重量、摩損率、硬度、圧縮粉砕率、形状の試験の全項目において合格であった。また、曲げ強度、圧縮強度、弾性率について、実機の道床バラストと同等以上である事を確認した。
【選択図】 なし
Description
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、強度が高く細粒化しにくく、飛散しにくいセラミックス系焼結体、バラスト、及びバラスト道床を提供することを目的とする。
セラミックス成分と石炭灰とを含む混合物を焼結してなるセラミックス系焼結体を要旨とする。
また、本発明における石炭灰としては、例えば、微紛炭燃焼ボイラの燃焼ガスから集じん器で採取された石炭灰(フライアッシュ)、微紛炭燃焼ボイラの燃焼ガスが、空気予熱器・節炭器などを通過する際に落下採取された石炭灰(シンダアッシュ)、微紛炭燃焼ボイラの炉底に落下して採取された石炭灰(クリンカアッシュ)等が挙げられ、特にフライアッシュが好適である。フライアッシュとしては、例えば、その化学組成が、SiO2:44.6〜74.0重量%、Al2O3:16.4〜38.3重量%、Fe2O3:0.6〜22.7重量%、MgO:0.2〜2.8重量%、CaO:0.1〜14.3重量%のものが挙げられる。
セラミックス成分と石炭灰とを含む混合物は粉末であることが好ましい。この粉末の粒径は、1〜100μmの範囲が好適であり、特に、1〜50μmの範囲が好適である。
(2)請求項2の発明は、
前記混合物がさらにアルカリ金属含有成分を含むことを特徴とする請求項1記載のセラミックス系焼結体を要旨とする。
(3)請求項3の発明は、
前記セラミックス成分がアルミナ系セラミックスを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス系焼結体を要旨とする。
アルミナ系セラミックスとしては、例えば、アルミナ、アルミナと他のセラミックスとの混合物等が挙げられる。
(4)請求項4の発明は、
前記セラミックス成分がジルコニア系セラミックスを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス系焼結体を要旨とする。
セラミックス系焼結体全体に占めるジルコニア系セラミックスの割合は、10〜70重量%の範囲が好適であり、特に20〜50重量%の範囲が好適である。
(5)請求項5の発明は、
請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックス系焼結体から成るバラストを要旨とする。
(6)請求項6の発明は、
請求項5に記載のバラストで構成されることを特徴とするバラスト道床を要旨とする。
(7)請求項7の発明は、
セラミックス成分と石炭灰とを含む混合物を作成する第1工程と、前記混合物を焼結する第2工程と、を有するセラミックス系焼結体の製造方法を要旨とする。
第1工程においては、例えば、セラミックス成分と石炭灰とを含むスラリーを製造し、そのスラリーをボールミル等の手段を用いて混合、粉砕し、その後、スラリーの溶媒を除去することで、粉末状の混合物を作成することができる。上記スラリーの溶媒としては、例えば、エタノール等のアルコール、蒸留水、水道水等が挙げられる。
(8)請求項8の発明は、
前記第1工程においてさらにアルカリ金属含有成分を混合するとともに、前記焼結時の最高温度が1100〜1400℃の範囲にあることを特徴とする請求項7記載のセラミックス系焼結体の製造方法を要旨とする。
(9)請求項9の発明は、
前記第1工程において、前記セラミックス系成分としてジルコニア系セラミックスを混合することを特徴とする請求項7又は8に記載のセラミックス系焼結体の製造方法を要旨とする。
以下のようにして、セラミックス系焼結体を製造した。
a−1)原料調整
原料として、アルミナと、石炭灰(フライアッシュ)を準備した。このアルミナは、一般的な昭和電工(株)製の標準粒A−13−M(平均粒径60μm、カタログデータ)である。また、石炭灰は、碧南火力発電所で採取され、(株)テクノ中部碧南事業所において表1に示す品質を確認されたものである。
上記a−1)で製造した成型用の粉末を、最大20tonまで加圧可能な手動式油圧プレスを用いて成型した。成形体は、φ100mmの円柱型のもの、70mm×70mm×hの直方体のもの、42mm×74mm×hの直方体のもの、30mm×40mm×hの直方体のものをそれぞれ製造した。ここで、hは成形体の高さ(mm)であり、成形型への成型用粉末の充填量により定まる。
a−3)焼結
上記a−2)で製造した成形体を、炉内焼結スペースが600W×500H×600Lの中外エンジニアリング(株)製の大型大気焼結用スーパーカンタル炉を用いて焼結し、セラミックス系焼結体を得た。焼結時の温度の推移は、図1に示すように、最高温度が1500℃となるようにした。
次に、上記a)で製造したセラミックス系焼結体を道床バラストとして用い、バラストとしての特性を評価した。以下、具体的に説明する。
試験容器(20×20×25cm)全体にセラミックス系焼結体を満たし、容器の上縁を平らにする。このとき、1/3ずつ満たすごとに、容器を振幅50mmで上下に振動させる。次に、試験容器に入ったセラミックス系焼結体を他のボールに移し、ボールとセラミックス系焼結帯の全体重量を秤量する。下記式により、単位容積重量を算出する。
(ii)摩損率
フルイ分けしたときの粒径分布が下記表3となるような、セラミックス系焼結体のサンプルを用意する。尚、表3において粒径53.0の区分にあるものは、目の大きさが53.0mmのフルイの上に残るものであり、粒径37.5の欄にあるものは、目の大きさが53.0mmのフルイは通過するが、目の大きさが37.5mmのフルイの上に残るものである。その他の区分においても同様である。
次に、サンプルを取り出し、目の大きさが1.7mmであるフルイを用いてフルイ分けする。その後、フルイの上に残ったものを水洗し、乾燥させてから、重量を測定する。下記式により、摩損率を算出する。ここで、W1は、上記重量測定での測定値(単位はグラム)である。
(iii)硬度
セラミックス系焼結体から、直径2.5cm、長さ60mmの円柱形のテストピースを作成し、そのテストピースの一方の底面を塗料で塗りつぶす。この塗りつぶした底面を、塗料の色が消えるまで、ドリーのすりへり摩耗試験器を使用して擦る。この段階でテストピースの重量を測定し、その測定値をWaとする。次に、28RPMで1000回転させ、再び重量を測定し、そのときの測定値をWbとする。下記式により硬度を算出する。
尚、計量は10-3g単位で行い、回転時には石英砂を1000回転で8.2Kg程度散布する。
フルイ分けしたときの粒径分布が下記表4となるような、セラミックス系焼結体のサンプルを用意する。尚、表4において粒径53.0の区分にあるものは、目の大きさが53.0mmのフルイの上に残るものであり、粒径37.5の欄にあるものは、目の大きさが53.0mmのフルイは通過するが、目の大きさが37.5mmのフルイの上に残るものである。その他の区分においても同様である。
(v)形状
セラミックス系焼結体をフルイを用いて、下記の表5のようにフルイ分けした。
それぞれの区分において、粒の厚みが扁平制限値以下であるものの重量を算出した。フルイ目53.0の区分において、粒の厚みが扁平制限値以下であるものの重量をWS53.0とし、フルイ目37.5の区分において、粒の厚みが扁平制限値以下であるものの重量をWS37.5とし、フルイ目31.5の区分において、粒の厚みが扁平制限値以下であるものの重量をWS31.5とし、フルイ目19.5の区分において、粒の厚みが扁平制限値以下であるものの重量をWS19.0とする。
扁平度=((WS53.0+WS37.5+WS31.5+WS19.0)/W)×100(%)
また、細長度を下記式により算出する。
尚、上記各式において、Wはセラミックス系焼結体全体の重量である。
(i)本実施例1のセラミックス系焼結体は、現状のバラスト材と同程度の密度でありながら、強度、弾性率は現状のバラスト材よりも遙かに高く、摩損や破砕が生じにくい。そのため、本実施例1のセラミックス系焼結体をバラスト材に用いれば、耐久性が高く、細粒化しにくい。
本実施例1のセラミックス系焼結体の作用効果を確かめるために、以下の試験を行った。
上記a)で製造したセラミックス系焼結体を加工し、4点曲げ強度、圧縮強度、及び弾性率試験用の試験片を作成した。具体的には、以下の手順で行った。
上記d−1)で作成したセラミックス系焼結体の試験片を用い、4点曲げ強度、圧縮強度、及び弾性率を測定した。また、比較例として、現用道床バラストである名古屋砂岩(名古屋地区で採取された砂岩、以下同様)、三島安山岩、豊橋輝緑岩、静岡玄武岩、高強度セメント1(具体的には日本セメント製)、及び高強度セメント2(具体的にははデンカ製)についても、同様に測定を行った。
図2に示すように、本実施例1のセラミックス系焼結体の密度は、約2.7g/ccであり、現用道床バラストとほぼ同程度であったが、4点曲げ強度は、現用道床バラストの平均値である39MPaの約2倍であり、高強度セメント(高密度セメント1と高密度セメント2)の平均値である25MPaの約3倍であった。また、図3、図4に示すように、本実施例1のセラミックス系焼結体の圧縮強度及び弾性率は、現行バラストや高強度セメントの測定値よりも顕著に高かった。
本実施例1では、セラミックス系焼結体の製造工程において、上記a)に記載したように、ボールミルの1ポットに、アルミナ500g、石炭灰500g、エタノール2.5Lを充填して混合粉砕を行っているが、ボールミルへの各原料の充填量をそれぞれ半分にしてセラミックス系焼結体を製造すれば、その密度を2.9g/cc程度に高めることができ、強度、弾性率が更に向上する。これは、ボールミルでの粉砕、混合効果が向上することで、セラミックス系焼結体のクラック長さ(気孔の大きさ)が小さくなるためであると考えられる。
以下のようにして、セラミックス系焼結体を製造した。
a−1)原料調整
原料として、アルミナと、石炭灰(フライアッシュ)と、珪酸ソーダとを準備した。このアルミナ及び石炭灰は前記実施例1と同様のものである。また、珪酸ソーダは関東化学(株)の試薬であって、組成がSiO2:35〜38%、Na2O3:17〜19%のものである。
上記a−1)で製造した成型用の粉末(10%添加粉末及び20%添加粉末)を、最大20tonまで加圧可能な手動式油圧プレスを用いて成型した。成形体は、φ20mmの円柱型のもの、50mm×60mm×hの直方体のものをそれぞれ製造した。ここで、hは成形体の高さ(mm)であり、成形型への成型用粉末の充填量により定まる。
上記a−2)で製造した、φ20mmの円柱型に成形した成形体を、炉内焼結スペースが600W×500H×600Lの中外エンジニアリング(株)製の大型大気焼結用スーパーカンタル炉を用いて焼結し、セラミックス系焼結体を得た。焼結は、最高温度が1000℃の条件、1100℃の条件、1200℃の条件、1300℃の条件、1400℃の条件でそれぞれ行った。そして、それぞれの条件で焼結させたセラミックス系焼結体の密度を測定した。図6に、その結果を示す。
混合粉末に含まれる石炭灰のうち、シリカは60%以上であり、アルミナも20%以上含まれている(表1参照)から、混合粉末の主成分はアルミナとシリカであるが、図5の状態図に示すように、アルミナとシリカのみを含む系よりも、Na2Oを添加した系の方が液相になり易い。本実施例2のセラミックス系焼結体においては、珪酸ソーダ中のNaと原料粉末中のAl2O3、SiO2とが反応し、1200℃以下の比較的低温でも液相を生成し、焼結が進行して密度が高くなると推測できる。また、最高温度1300℃以上で焼結したセラミックス系焼結体の表面に、発泡したと思われる痕跡が認められる。これは、珪酸ソーダ添加による液相生成により、比較的低温での焼結体が形成されることを裏付けている。
上記a−2)で製造した、50mm×60mm×hの直方体の成形体を、炉内焼結スペースが600W×500H×600Lの中外エンジニアリング(株)製の大型大気焼結用スーパーカンタル炉を用いて焼結し、セラミックス系焼結体を得た。焼結は、最高温度が1200℃の条件、1300℃の条件でそれぞれ行った。
上記a―4)で得られたセラミックス系焼結体の密度を測定するとともに、前記実施例1のd)と同様に、4点曲げ強度、圧縮強度、及び弾性率の測定を測定した。セラミックス系焼結体のうち、20%添加焼結体の4点曲げ強度の測定結果を図7に示し、圧縮強度の測定結果を図8に示し、弾性率の測定結果を図9に示す。
以下のようにして、セラミックス系焼結体を製造した。
a−1)原料調整
原料として、アルミナと、石炭灰(フライアッシュ)と、ジルコニアとを準備した。このアルミナ及び石炭灰は前記実施例1と同様のものである。また、ジルコニアは東ソー(株)製のTZ−3Y(型番)である。
上記a−1)で製造した成型用の混合粉末A〜Cを、それぞれ、最大20tonまで加圧可能な手動式油圧プレスを用い、成型した。成形体は、50mm×60mm×hの直方体のものを、混合粉末A〜Cのそれぞれについて2個ずつ製造した。ここで、hは成形体の高さ(mm)であり、成形型への成型用粉末の充填量により定まる。
上記a−2)で製造した成形体を、炉内焼結スペースが600W×500H×600Lの中外エンジニアリング(株)製の大型大気焼結用スーパーカンタル炉を用い、最高温度1500℃の条件で焼結し、セラミックス系焼結体を得た。なお、混合粉末Aを用いて製造したものをセラミックス系焼結体3−Aとし、混合粉末Bを用いて製造したものをセラミックス系焼結体3−Bとし、混合粉末Cを用いて製造したものをセラミックス系焼結体3−Cとする。
上記a―3)で得られたセラミックス系焼結体3−A〜3−Cの密度を測定するとともに、前記実施例1のd)と同様に、4点曲げ強度、圧縮強度、及び弾性率の測定を測定した。4点曲げ強度の測定結果を図10に示し、圧縮強度の測定結果を図11に示し、弾性率の測定結果を図12に示す。図10〜12には、前記実施例1のd−2)と同様に、比較例として、名古屋砂岩、三島安山岩、豊橋輝緑岩、静岡玄武岩、高強度セメント1、及び高強度セメント2の測定値も記載している。
また、本実施例3のセラミックス系焼結体3−A〜3−Cは、4点曲げ強度、圧縮強度、及び弾性率において、比較例の測定値よりも顕著に高く、しかも、前記実施例1のセラミックス系焼結体よりも、4点曲げ強度、圧縮強度、及び弾性率の測定値が一層高かった。
また、本実施例3のセラミックス系焼結体は、機械的特性(強度、弾性率)において優れている。
3・・・バラスト
5・・・路盤
7・・・道床
9・・・まくら木
11・・・レール
Claims (9)
- セラミックス成分と石炭灰とを含む混合物を焼結してなるセラミックス系焼結体。
- 前記混合物がさらにアルカリ金属含有成分を含むことを特徴とする請求項1記載のセラミックス系焼結体。
- 前記セラミックス成分がアルミナ系セラミックスを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミックス系焼結体。
- 前記セラミックス成分がジルコニア系セラミックスを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセラミックス系焼結体。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のセラミックス系焼結体から成るバラスト。
- 請求項5に記載のバラストで構成されることを特徴とするバラスト道床。
- セラミックス成分と石炭灰とを含む混合物を作成する第1工程と、
前記混合物を焼結する第2工程と、を有するセラミックス系焼結体の製造方法。 - 前記第1工程においてさらにアルカリ金属含有成分を混合するとともに、前記焼結時の最高温度が1100〜1400℃の範囲にあることを特徴とする請求項7記載のセラミックス系焼結体の製造方法。
- 前記第1工程において、前記セラミックス系成分としてジルコニア系セラミックスを混合することを特徴とする請求項7又は8に記載のセラミックス系焼結体の製造方法。
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