眼底観察装置としては、従来から眼底カメラが広く用いられている。図8は、従来の一般的な眼底カメラの外観構成の一例を表し、図9は、眼底カメラに内蔵される光学系の構成の一例を表している(たとえば特許文献1参照。)。なお、「観察」とは、眼底の撮影画像を観察する場合を少なくとも含むものとする(その他、肉眼による眼底観察を含んでもよい。)。
まず、図8を参照しつつ、従来の眼底カメラ1000の外観構成について説明する。この眼底カメラ1000は、ベース2上に前後左右方向(水平方向)にスライド可能に搭載された架台3を備えている。この架台3には、検者が各種操作を行うための操作パネル3aとジョイスティック4が設置されている。
検者は、ジョイスティック4を操作することによって、架台3をベース2上において3次元的に移動させることができる。ジョイスティック4の頂部には、眼底を撮影するときに押下される操作ボタン4aが配置されている。
ベース2上には支柱5が立設されている。この支柱5には、被検者の顎部を載置するための顎受け6と、被検眼Eを固視させるための光を発する外部固視灯7とが設けられている。
架台3上には、眼底カメラ1000の各種の光学系や制御系を格納する本体部8が搭載されている。なお、制御系は、ベース2や架台3の内部等に設けられていることもあるし、眼底カメラ1000に接続されたコンピュータ等の外部装置に設けられていることもある。
本体部8の被検眼E側(図8の紙面左方向)には、被検眼Eに対峙して配置される対物レンズ部8aが設けられている。また、本体部8の検者側(図8の紙面右方向)には、被検眼Eの眼底を肉眼観察するための接眼レンズ部8bが設けられている。
更に、本体部8には、被検眼Eの眼底の静止画像を撮影するためのスチルカメラ9と、眼底の静止画像や動画像を撮影するためのテレビカメラ等の撮像装置10とが設けられている。このスチルカメラ9と撮像装置10は、それぞれ本体部8に対して着脱可能に形成されている。
スチルカメラ9としては、検査の目的や撮影画像の保存方法などの各種条件に応じて、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を搭載したデジタルカメラや、フィルムカメラや、インスタントカメラなどを適宜に装着して使用することができる。本体部8には、このような各種のスチルカメラ9を選択的に装着するための装着部8cが形成されている。
スチルカメラ9や撮像装置10がデジタル撮像方式のものである場合、これらにより撮影された眼底画像の画像データを、眼底カメラ1000に接続されたコンピュータ等に送信し、その眼底画像をディスプレイに表示させて観察することができる。また、眼底カメラ1000に接続された画像記録装置に画像データを送信してデータベース化し、たとえば電子カルテ作成用の電子データとして用いることができる。
また、本体部8の検者側には、タッチパネルモニタ11が設けられている。このタッチパネルモニタ11には、(デジタル方式の)スチルカメラ9や撮像装置10から出力される映像信号に基づいて作成される被検眼Eの眼底画像が表示される。また、このタッチパネルモニタ11には、その画面中央を原点とするxy座標系が眼底画像に重ねて表示されるようになっている。検者が画面上の所望の位置に触れると、その触れた位置に対応する座標値が表示されるようになっている。
次に、図9を参照しつつ、眼底カメラ1000の光学系の構成について説明する。眼底カメラ1000には、被検眼Eの眼底Efを照明する照明光学系100と、この照明光の眼底反射光を接眼レンズ部8b、スチルカメラ9、撮像装置10に導く撮影光学系120とが設けられている。
照明光学系100は、観察光源101、コンデンサレンズ102、撮影光源103、コンデンサレンズ104、エキサイタフィルタ105及び106、リング透光板107、ミラー108、LCD109、照明絞り110、リレーレンズ111、孔開きミラー112、対物レンズ113を含んで構成されている。
観察光源101は、たとえばハロゲンランプにより構成され、眼底観察用の定常光(連続光)を出力する。コンデンサレンズ102は、観察光源101から発せられた定常光(観察照明光)を集光して、観察照明光を眼底にほぼ均等に照明させるための光学素子である。
撮影光源103は、たとえばキセノンランプにより構成され、眼底Efの撮影を行うときにフラッシュ発光される。コンデンサレンズ104は、撮影光源103から発せられたフラッシュ光(撮影照明光)を集光して、撮影照明光を眼底Efに均等に照射させるための光学素子である。
エキサイタフィルタ105、106は、眼底Efの眼底画像の蛍光撮影を行うときに使用されるフィルタである。このエキサイタフィルタ105、106は、それぞれ、ソレノイド等の駆動機構(図示せず)によって光路上に挿脱可能とされている。エキサイタフィルタ105は、FAG(フルオレセイン蛍光造影)撮影時に光路上に配置される。一方、エキサイタフィルタ106は、ICG(インドシアニングリーン蛍光造影)撮影時に光路上に配置される。なお、カラー撮影時には、エキサイタフィルタ105、106はともに光路上から退避される。
リング透光板107は、被検眼Eの瞳孔と共役な位置に配置されており、照明光学系100の光軸を中心としたリング透光部107aを備えている。ミラー108は、観察光源101や撮影光源103が発した照明光を撮影光学系120の光軸方向に反射させる。LCD109は、被検眼Eの固視を行うための固視標(図示せず)などを表示する。
照明絞り110は、フレア防止等のために照明光の一部を遮断する絞り部材である。この照明絞り110は、照明光学系100の光軸方向に移動可能に構成されており、それにより眼底Efの照明領域を調整できるようになっている。
孔開きミラー112は、照明光学系100の光軸と撮影光学系120の光軸とを合成する光学素子である。孔開きミラー112の中心領域には孔部112aが開口されている。照明光学系100の光軸と撮影光学系120の光軸は、この孔部112aの略中心位置にて交差するようになっている。対物レンズ113は、本体部8の対物レンズ部8a内に設けられている。
このような構成を有する照明光学系100は、以下のような態様で眼底Efを照明する。まず、眼底観察時には観察光源101が点灯されて観察照明光が出力される。この観察照明光は、コンデンサレンズ102、104を介してリング透光板107を照射する(エキサイタフィルタ105、106は光路上から退避されている。)。リング透光板107のリング透光部107aを通過した光は、ミラー108により反射され、LCD109、照明絞り110及びリレーレンズ111を経由して孔開きミラー112により反射される。孔開きミラー112により反射された観察照明光は、撮影光学系120の光軸方向に進行し、対物レンズ113により集束されて被検眼Eに入射して眼底Efを照明する。
このとき、リング透光板107が被検眼Eの瞳孔に共役な位置に配置されていることから、瞳孔上には、被検眼Eに入射する観察照明光のリング状の像が形成される。観察照明光の眼底反射光は、この瞳孔上のリング状の像の中心暗部を通じて被検眼Eから出射するようになっている。このようにして、観察照明光の眼底反射光に対する、被検眼Eに入射してくる観察照明光の影響を防止するようになっている。
一方、眼底Efを撮影するときには、撮影光源103がフラッシュ発光され、撮影照明光が同様の経路を通じて眼底Efに照射される。なお、蛍光撮影の場合には、FAG撮影かICG撮影かに応じて、エキサイタフィルタ105又は106が選択的に光路上に配置される。
次に、撮影光学系120について説明する。撮影光学系120は、対物レンズ113、孔開きミラー112(の孔部112a)、撮影絞り121、バリアフィルタ122及び123、変倍レンズ124、リレーレンズ125、撮影レンズ126、クイックリターンミラー127及び撮影媒体9aを含んで構成される。ここで、撮影媒体9aは、スチルカメラ9に用いられる任意の撮影媒体(CCD等の撮像素子、カメラフィルム、インスタントフィルムなど)である。
瞳孔上のリング状の像の中心暗部を通じて被検眼Eから出射した照明光の眼底反射光は、孔開きミラー112の孔部112aを通じて撮影絞り121に入射する。孔開きミラー112は、照明光の角膜反射光を反射して、撮影絞り121に入射する眼底反射光に角膜反射光を混入させないように作用する。それにより、観察画像や撮影画像におけるフレアの発生を抑止するようになっている。
撮影絞り121は、大きさの異なる複数の円形の透光部が形成された板状の部材である。複数の透光部は、絞り値(F値)の異なる絞りを構成し、図示しない駆動機構によって、透光部が択一的に光路上に配置されるようになっている。
バリアフィルタ122、123は、それぞれ、ソレノイド等の駆動機構(図示せず)によって光路上に挿脱可能とされている。FAG撮影を行うときにはバリアフィルタ122が光路上に配置され、ICG撮影を行うときにはバリアフィルタ123が光路上に配置される。また、カラー撮影を行うときには、バリアフィルタ122、123は、光路上からともに退避される。
変倍レンズ124は、図示しない駆動機構によって撮影光学系120の光軸方向に移動可能とされている。それにより、観察倍率や撮影倍率の変更、眼底画像のフォーカスなどを行うことができる。撮影レンズ126は、被検眼Eからの眼底反射光を撮影媒体9a上に結像させるレンズである。
クイックリターンミラー127は、図示しない駆動機構によって回動軸127a周りに回動可能に設けられている。スチルカメラ9で眼底Efの撮影を行う場合には、光路上に斜設されているクイックリターンミラー127を上方に跳ね上げて、眼底反射光を撮影媒体9aに導くようになっている。一方、撮像装置10による眼底撮影時や、検者の肉眼による眼底観察時には、クイックリターンミラー127を光路上に斜設配置させた状態で、眼底反射光を上方に向けて反射するようになっている。
撮影光学系120には、更に、クイックリターンミラー127により反射された眼底反射光を案内するための、フィールドレンズ(視野レンズ)128、切換ミラー129、接眼レンズ130、リレーレンズ131、反射ミラー132、撮影レンズ133及び撮像素子10aが設けられている。撮像素子10aは、撮像装置10に内蔵されたCCD等の撮像素子である。タッチパネルモニタ11には、撮像素子10aにより撮影された眼底画像Ef′が表示される。
切換ミラー129は、クイックリターンミラー127と同様に、回動軸129a周りに回動可能とされている。この切換ミラー129は、肉眼による観察時には光路上に斜設された状態で眼底反射光を接眼レンズ130に向けて反射する。
また、撮像装置10を用いて眼底画像を撮影するときには、切換ミラー129を光路上から退避して、眼底反射光を撮像素子10aに向けて導く。その場合、眼底反射光は、リレーレンズ131を経由してミラー132により反射され、撮影レンズ133によって撮像素子10aに結像される。
このような眼底カメラ1000は、眼底Efの表面、すなわち網膜の状態を観察するために用いられる眼底観察装置である。換言すると、眼底カメラ1000は、被検眼Eの角膜の方向から眼底Efを見たときの2次元的な眼底像を得るための装置である。一方、網膜の深層には脈絡膜や強膜といった組織が存在し、これらの組織の状態を観察するための技術が望まれていたが、近年、これら深層組織を観察するための装置の実用化が進んでいる(たとえば特許文献2、3参照)。
特許文献2、3に開示された眼底観察装置は、いわゆるOCT(Optical Coherence Tomography)技術を応用した装置(光画像計測装置、光コヒーレンストポグラフィ装置などと呼ばれる。)である。このような眼底観察装置は、低コヒーレンス光を二分し、一方(信号光)を眼底に導き、他方(参照光)を所定の参照物体に導くとともに、眼底を経由した信号光と、参照物体で反射された参照光とを重畳して得られる干渉光を検出して解析することにより、眼底の表面ないし深層組織の断層画像や、この断層画像に基づく3次元画像を形成することが可能な装置である。このような画像は、光CT画像やOCT画像などと呼ばれる。
特開2004−350849号公報
特開2003−543号公報
特開2005−241464号公報
本発明に係る眼底観察装置の好適な実施の形態の一例について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、従来と同様の構成部分については、図8、図9と同じ符号を用いることにする。
まず、図1〜図5を参照して、本実施形態に係る眼底観察装置の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る眼底観察装置1の全体構成を表している。図2は、眼底カメラユニット1A内の走査ユニット141の構成を表している。図3は、OCTユニット150の構成を表している。図4は、演算制御装置200のハードウェア構成を表している。図5は、眼底観察装置1の制御系の構成を表している。
[全体構成]
図1に示すように、眼底観察装置1は、眼底カメラとして機能する眼底カメラユニット1Aと、光画像計測装置(OCT装置)の光学系を格納したOCTユニット150と、各種の演算処理や制御処理等を実行する演算制御装置200とを含んで構成されている。
この眼底カメラユニット1Aは、演算制御装置200とともに、本発明の「第1の画像形成手段」の一例を構成している。また、OCTユニット150は、演算制御装置200とともに、本発明の「第2の画像形成手段」の一例を構成している。また、この「第2の画像形成手段」には、眼底カメラユニット1Aに設けられた走査ユニット141など、信号光が経由する各種の光学部材も含まれる。
OCTユニット150には、接続線152の一端が取り付けられている。この接続線152の他端には、コネクタ部151が取り付けられている。このコネクタ部151は、図8に示した装着部8cに装着される。また、接続線152の内部には光ファイバが導通されている。OCTユニット150と眼底カメラユニット1Aは、接続線152を介して光学的に接続されている。OCTユニット150の詳細構成については、図3を参照しつつ後述することにする。
〔眼底カメラユニットの構成〕
眼底カメラユニット1Aは、図8に示した従来の眼底カメラ1000とほぼ同様の外観構成を有している。また、眼底カメラユニット1Aは、図9に示した従来の光学系と同様に、被検眼Eの眼底Efを照明する照明光学系100と、この照明光の眼底反射光を撮像装置10に導く撮影光学系120とを備えている。
なお、詳細は後述するが、本実施形態の撮影光学系120における撮像装置10は、近赤外領域の波長を有する照明光を検出するものである。また、この撮影光学系120には、可視領域の波長を有する照明光を検出する撮像装置12が別途設けられている。更に、この撮影光学系120は、OCTユニット150からの信号光を眼底Efに導くとともに、眼底Efを経由した信号光をOCTユニット150に導くようになっている。
さて、照明光学系100は、従来と同様に、観察光源101、コンデンサレンズ102、撮影光源103、コンデンサレンズ104、エキサイタフィルタ105及び106、リング透光板107、ミラー108、LCD109、照明絞り110、リレーレンズ111、孔開きミラー112、対物レンズ113を含んで構成される。
観察光源101は、約400nm〜700nmの範囲に含まれる可視領域の波長の照明光を出力する。また、撮影光源103は、約700nm〜800nmの範囲に含まれる近赤外領域の波長の照明光を出力する。この撮影光源103から出力される近赤外光は、OCTユニット150で使用する光の波長よりも短く設定されている(後述)。
また、撮影光学系120は、対物レンズ113、孔開きミラー112(の孔部112a)、撮影絞り121、バリアフィルタ122及び123、変倍レンズ124、リレーレンズ125、撮影レンズ126、ダイクロイックミラー134、フィールドレンズ(視野レンズ)128、ハーフミラー135、リレーレンズ131、ダイクロイックミラー136、撮影レンズ133、撮像装置10(撮像素子10a)、反射ミラー137、撮影レンズ138、撮影装置12(撮像素子12a)、レンズ139及びLCD(Liquid Crystal Display)140を含んで構成される。
本実施形態に係る撮影光学系120には、図9に示した従来の撮影光学系120と異なり、ダイクロイックミラー134、ハーフミラー135、ダイクロイックミラー136、反射ミラー137、撮影レンズ138、レンズ139及びLCD140が設けられている。
ダイクロイックミラー134は、照明光学系100からの照明光の眼底反射光(約400nm〜800nmの範囲に含まれる波長を有する)を反射するとともに、OCTユニット150からの信号光LS(約800nm〜900nmの範囲に含まれる波長を有する;後述)を透過させるようになっている。このダイクロイックミラー134は、本発明の「光路合成分離手段」の一例に相当する。
また、ダイクロイックミラー136は、照明光学系100からの可視領域の波長を有する照明光(観察光源101から出力される波長約400nm〜700nmの可視光)を透過させるとともに、近赤外領域の波長を有する照明光(撮影光源103から出力される波長約700nm〜800nmの近赤外光)を反射するようになっている。
LCD140には、内部固視標などが表示される。このLCD140からの光は、レンズ139により集光された後に、ハーフミラー135により反射され、フィールドレンズ128を経由してダイクロイックミラー136に反射される。そして、撮影レンズ126、リレーレンズ125、変倍レンズ124、孔開きミラー112(の孔部112a)、対物レンズ113等を経由して、被検眼Eに入射する。それにより、被検眼Eの眼底Efに内部固視標等が投影される。
撮像素子10aは、テレビカメラ等の撮像装置10に内蔵されたCCDやCMOS等の撮像素子であり、特に、近赤外領域の波長の光を検出するものである(つまり、撮像装置10は、近赤外光を検出する赤外線テレビカメラである。)。撮像装置10は、近赤外光を検出した結果として映像信号を出力する。タッチパネルモニタ11は、この映像信号に基づいて、眼底Efの表面の2次元画像(眼底画像Ef′)を表示する。また、この映像信号は演算制御装置200に送られ、そのディスプレイ(後述)に眼底画像が表示されるようになっている。なお、この撮像装置10による眼底撮影時には、照明光学系100の撮影光源103から出力される近赤外領域の波長を有する照明光が用いられる。この撮像装置10(の撮像素子10a)は、本発明の「第1の検出手段」の一例に相当するものである。
一方、撮像素子12aは、テレビカメラ等の撮像装置12に内蔵されたCCDやCMOS等の撮像素子であり、特に、可視領域の波長の光を検出するものである(つまり、撮像装置12は、可視光を検出するテレビカメラである。)。撮像装置12は、可視光を検出した結果として映像信号を出力する。タッチパネルモニタ11は、この映像信号に基づいて、眼底Efの表面の2次元画像(眼底画像Ef′)を表示する。また、この映像信号は演算制御装置200に送られ、そのディスプレイ(後述)に眼底画像が表示されるようになっている。なお、この撮像装置12による眼底撮影時には、照明光学系100の観察光源101から出力される可視領域の波長を有する照明光が用いられる。この撮像装置12(の撮像素子12a)は、本発明の「第1の検出手段」の一例に相当するものである。
本実施形態の撮影光学系120には、走査ユニット141と、レンズ142とが設けられている。走査ユニット141は、OCTユニット150から出力される光(信号光LS;後述)を眼底Ef上において走査する構成を具備している。
レンズ142は、OCTユニット150から接続線152を通じて導光された信号光LSを平行な光束にして走査ユニット141に入射させる。また、レンズ142は、走査ユニット141を経由してきた信号光LSの眼底反射光を集束させるように作用する。
図2に、走査ユニット141の具体的構成の一例を示す。走査ユニット141は、ガルバノミラー141A、141Bと、反射ミラー141C、141Dとを含んで構成されている。
ガルバノミラー141A、141Bは、それぞれ回動軸141a、141bを中心に回動可能とされている。回動軸141a、141bは、互いに直交するように配設されている。図2においては、ガルバノミラー141Aの回動軸141aは、同図の紙面に対して平行方向に配設されており、ガルバノミラー141Bの回動軸141bは、同図の紙面に対して直交する方向に配設されている。すなわち、ガルバノミラー141Bは、図2中の両側矢印に示す方向に回動可能に構成され、ガルバノミラー141Aは、当該両側矢印に対して直交する方向に回動可能に構成されている。それにより、この一対のガルバノミラー141A、141Bは、信号光LSの反射方向を互いに直交する方向に変更するようにそれぞれ作用する。なお、ガルバノミラー141A、141Bのそれぞれの回動動作は、後述のミラー駆動機構(図5参照)によって駆動される。
ガルバノミラー141A、141Bにより反射された信号光LSは、反射ミラー141C、141Dにより反射され、ガルバノミラー141Aに入射したときと同一の向きに進行するようになっている。
なお、前述のように、接続線152の内部には光ファイバ152aが導通されており、この光ファイバ152aの端面152bは、レンズ142に対峙して配設される。この端面152bから出射した信号光LSは、レンズ142に向かってビーム径を拡大しつつ進行するが、このレンズ142によって平行な光束とされる。逆に、眼底Efを経由した信号光LSは、このレンズ142により、端面152bに向けて集束されるようになっている。
〔OCTユニットの構成〕
次に、図3を参照しつつOCTユニット150の構成について説明する。同図に示すOCTユニット150は、従来の光画像計測装置とほぼ同様の光学系を有するものであり、光源から出力された光を参照光と信号光とに分割し、参照物体を経由した参照光と被測定物体(眼底Ef)を経由した信号光とを重畳して干渉光を生成する干渉計を具備するとともに、この干渉光の検出結果を解析して被測定物体(眼底Ef)の画像を形成するように構成されている。
低コヒーレンス光源160は、低コヒーレンス光L0を出力するスーパールミネセントダイオード(SLD)や発光ダイオード(LED)等の広帯域光源により構成されている。この低コヒーレンス光L0は、たとえば、近赤外領域の波長を有し、かつ、数十マイクロメートル程度の時間的コヒーレンス長を有する光とされる。この低コヒーレンス光源160から出力される低コヒーレンス光L0は、眼底カメラユニット1Aの照明光(波長約400nm〜800nm)よりも長い波長、たとえば約800nm〜900nmの範囲に含まれる波長を有している。この低コヒーレンス光源160は、本発明の「光源」の一例に相当するものである。
低コヒーレンス光源160から出力された低コヒーレンス光L0は、たとえばシングルモードファイバないしはPMファイバ(Polarization maintaining fiber;偏波面保持ファイバ)からなる光ファイバ161を通じて光カプラ(coupler)162に導かれる。光カプラ162は、この低コヒーレンス光L0を参照光LRと信号光LSとに分割する。
なお、光カプラ162は、光を分割する手段(スプリッタ;splitter)、及び、光を重畳する手段(カプラ)の双方の作用を有するが、ここでは慣用的に「光カプラ」と称することにする。
光カプラ162により生成された参照光LRは、シングルモードファイバ等からなる光ファイバ163により導光されてファイバ端面から出射される。出射された参照光LRは、コリメータレンズ171により平行光束とされた後、ガラスブロック172及び濃度フィルタ173を経由し、参照ミラー174(参照物体)によって反射される。
参照ミラー174により反射された参照光LRは、再び濃度フィルタ173及びガラスブロック172を経由し、コリメータレンズ171によって光ファイバ163のファイバ端面に集光される。集光された参照光LRは、光ファイバ163を通じて光カプラ162に導かれる。
なお、ガラスブロック172と濃度フィルタ173は、参照光LRと信号光LSの光路長(光学距離)を合わせるための遅延手段として、また参照光LRに分散の影響を付与するための手段として作用している。
また、参照ミラー174は、参照光LRの進行方向に沿って移動可能に構成されている。それにより、被検眼Eの眼軸長などに応じた参照光LRの光路長を確保するようになっている。なお、参照ミラー174の移動は、モータ等の駆動装置を含む駆動機構によって行われる。
一方、光カプラ162により生成された信号光LSは、シングルモードファイバ等からなる光ファイバ164により接続線152の端部まで導光される。接続線152の内部には光ファイバ152aが導通されている。ここで、光ファイバ164と光ファイバ152aとは、単一の光ファイバにより構成されていてもよいし、また、各々の端面同士を接合して一体形成されたものであってもよい。いずれにしても、光ファイバ164、152aは、眼底カメラユニット1AとOCTユニット150との間で、信号光LSを伝送可能に構成されていれば十分である。
信号光LSは、接続線152内部を導光されて眼底カメラユニット1Aに案内される。そして、レンズ142、走査ユニット141、ダイクロイックミラー134、撮影レンズ126、リレーレンズ125、変倍レンズ124、撮影絞り121、孔開きミラー112の孔部112a、対物レンズ113を経由して、被検眼Eに入射する(このとき、バリアフィルタ122、123は、それぞれ光路から退避されている。)。
被検眼Eに入射した信号光LSは、眼底(網膜)Ef上にて結像し反射される。このとき、信号光LSは、眼底Efの表面で反射されるだけでなく、眼底Efの深部領域にも到達して屈折率境界において散乱される。したがって、眼底Efを経由した信号光LSは、眼底Efの表面形態を反映する情報と、眼底深部組織の屈折率境界における後方散乱の状態を反映する情報とを含んだ光となる。この光を単に「信号光LSの眼底反射光」と呼ぶことがある。
信号光LSの眼底反射光は、上記経路を逆向きに進行して光ファイバ152aの端面152bに集光され、この光ファイバ152を通じてOCTユニット150に入射し、光ファイバ164を通じて光カプラ162に戻ってくる。光カプラ162は、この信号光LSと、参照ミラー174にて反射された参照光LRとを重畳して干渉光LCを生成する。生成された干渉光LCは、シングルモードファイバ等からなる光ファイバ165を通じてスペクトロメータ180に導光される。
ここで、本発明の「干渉光生成手段」は、少なくとも、光カプラ162、光ファイバ163、164、参照ミラー174を含む干渉計によって構成される。なお、本実施形態ではマイケルソン型の干渉計を採用したが、たとえばマッハツェンダー型など任意のタイプの干渉計を適宜採用することが可能である。
スペクトロメータ(分光計)180は、コリメータレンズ181、回折格子182、結像レンズ183、CCD184を含んで構成される。本実施形態の回折格子182は、透過型回折格子であるが、もちろん反射型回折格子を用いることも可能である。また、CCD184に代えて、その他の光検出素子を適用することももちろん可能である。このような光検出素子は、本発明の「第2の検出手段」の一例に相当するものである。
スペクトロメータ180に入射した干渉光LCは、コリメータレンズ181により平行光束とされた後、回折格子182によって分光(スペクトル分解)される。分光された干渉光LCは、結像レンズ183によってCCD184の撮像面上に結像される。CCD184は、この干渉光LCを受光して電気的な検出信号に変換し、この検出信号を演算制御装置200に出力する。
(参照光の光路の構成について)
ここで、参照光LRの光路の構成について説明する。まず、参照光LRを導光する光ファイバ163は、光カプラ162により生成された信号光LSが眼底Efを経由して参照光LRと重畳されるまでの間に付与される分散の影響とほぼ等しい分散の影響を参照光LRに付与するための構成を有している。
すなわち、参照光LRは、この光ファイバ163のコアによる分散の影響によって収差を付与されつつ導光される。また、信号光LSは、光ファイバ164、接続線152内部の光ファイバ152a、レンズ142、走査ユニット141、ダイクロイックミラー134、撮影レンズ126、リレーレンズ125、変倍レンズ124、撮影絞り121、孔開きミラー112の孔部112a、対物レンズ113を経由して被検眼Eに入射され、被検眼Eから出射された信号光LSは、この経路を逆に辿って光カプラ162に戻ってくる。このとき、信号光LSは、光ファイバ164、152a、レンズ142、ダイクロイックミラー134、撮影レンズ126、リレーレンズ125、変倍レンズ124、対物レンズ113の各光学素子を通過するときに、当該光学素子による分散の影響によって収差が付与される。これらの各光学素子による分散の影響(分散量)は、その光学素子を形成する材料の特性(屈折率等)などに基づいて算出することができる。また、光に付与された分散量を測定する装置も汎用化されている。
参照光LRを導光する光ファイバ163は、これらの光学素子が信号光LSに付与する分散量の合計値にほぼ等しい分散量を参照光LRに付与するためのファイバ長を有するように形成されている。このとき、光ファイバ163は、前述のガラスブロック172や濃度フィルタ173により付与される分散量を減算して得られるファイバ長を有する。すなわち、光ファイバ163、ガラスブロック172及び濃度フィルタ173は、上記の光学素子が信号光LSに付与する分散量とほぼ等しい分散量を参照光LRに付与するように構成されている。
また、信号光LSは、その光路(信号光路)上の空気による分散の影響も受けるが、参照光LRの光路(参照光路)は、この空気による信号光LSへの分散量にほぼ等しい分散量を参照光LRに付与するように構成されている。なお、この空気による分散の影響は、光学素子による分散の影響と比較して非常に小さいものである。したがって、本発明に係る眼底観察装置としては、光学素子による分散の影響のみを考慮するように構成してもよい。本実施形態では、この空気による分散の影響をも考慮して、画像計測の精度を更に高めている。また、参照光路上のガラスブロック172や濃度フィルタ173は、信号光路が信号光LSに付与する分散量とほぼ等しい分散量を参照光LRに付与するためのものであるが、このガラスブロック172等の存在によって信号光路と参照光路との光路長にズレが生じる。この光路長のズレは、参照光路の光路長を信号光路の光路長に合わせることにより、解消することができる。たとえば、参照光LRが空気を経由する距離が、信号光LSが空気を経由する距離にほぼ等しくなるように、参照光路を設計する(たとえばガラスブロック172等の配置間隔を適宜な間隔に設計する)ことによって、光路長のズレを解消することができる。
〔演算制御装置の構成〕
次に、演算制御装置200の構成について説明する。この演算制御装置200は、OCTユニット150のスペクトロメータ180のCCD184から入力される検出信号を解析して、被検眼Eの眼底Efの断層画像を形成する処理を行う。このときの解析手法は、従来のフーリエドメインOCTの手法と同じである。
また、演算制御装置200は、眼底カメラユニット1Aの撮像装置10、12から出力される映像信号に基づいて眼底Efの表面(網膜)の形態を示す2次元画像を形成する処理を行う。
更に、演算制御装置200は、眼底カメラユニット1Aの各部の制御、及び、OCTユニット150の各部の制御を実行する。
眼底カメラユニット1Aの制御としては、たとえば、観察光源101や撮影光源103による照明光の出力制御、エキサイタフィルタ105、106やバリアフィルタ122、123の光路上への挿入/退避動作の制御、LCD139等の表示動作の制御、照明絞り110の移動制御(絞り値の制御)、撮影絞り121の絞り値の制御、変倍レンズ124の移動制御(倍率の制御)などを行う。また、演算制御装置200は、走査ユニット141内のガルバノミラー141A、141Bの回動動作の制御を行う。
一方、OCTユニット150の制御としては、低コヒーレンス光源160による低コヒーレンス光の出力制御、参照ミラー174の移動制御、CCD184の蓄積時間の制御などを行う。
以上のように作用する演算制御装置200のハードウェア構成の一例について、図4を参照しつつ説明する。演算制御装置200は、従来のコンピュータと同様のハードウェア構成を備えている。具体的には、マイクロプロセッサ201(CPU、MPU等)、RAM202、ROM203、ハードディスクドライブ(HDD)204、キーボード205、マウス206、ディスプレイ207、画像形成ボード208及び通信インターフェイス(I/F)209を含んで構成されている。これら各部は、バス200aを介して接続されている。
マイクロプロセッサ201は、ハードディスクドライブ204に格納された制御プログラム204aをRAM202上に展開することにより、本実施形態に特徴的な動作を実行する。
また、マイクロプロセッサ201は、前述した装置各部の制御や、各種の演算処理などを実行する。また、キーボード205やマウス206からの操作信号に対応する装置各部の制御、ディスプレイ207による表示処理の制御、通信インターフェイス209による各種のデータや制御信号等の送受信処理の制御などを実行する。
ハードディスクドライブ204には、前述の制御プログラム204aの他にも、たとえば患者に関する情報(患者情報)などの各種情報が記憶されている。この患者情報としては、たとえば、患者ID(識別情報)や患者氏名とともに、被検眼の眼球光学系の球面度数、乱視度数、乱視軸角度、角膜曲率半径、収差等の検査情報などが含まれている。
キーボード205、マウス206及びディスプレイ207は、眼底観察装置1のユーザインターフェイスとして使用される。キーボード205は、たとえば文字や数字等をタイピング入力するためのデバイスとして用いられる。マウス206は、ディスプレイ207の表示画面に対する各種入力操作を行うためのデバイスとして用いられる。
また、ディスプレイ207は、LCDやCRT(Cathode Ray Tube)等の任意の表示デバイスであり、眼底観察装置1により形成された眼底Efの画像を表示したり、各種の操作画面や設定画面などを表示したりする。
なお、眼底観察装置1のユーザインターフェイスは、このような構成に限定されるものではなく、たとえばトラックボール、ジョイスティック、タッチパネル式のLCD、眼科検査用のコントロールパネルなど、各種情報を表示出力する機能と、各種情報を入力する機能とを具備する任意のユーザインターフェイス手段を用いて構成することが可能である。
画像形成ボード208は、被検眼Eの眼底Efの画像を形成する処理を行う専用の電子回路である。この画像形成ボード208には、眼底画像形成ボード208aとOCT画像形成ボード208bとが設けられている。眼底画像形成ボード208aは、眼底カメラユニット1Aの撮像装置10や撮像装置12からの映像信号に基づいて眼底画像を形成するように動作する、専用の電子回路である。また、OCT画像形成ボード208bは、OCTユニット150のスペクトロメータ180のCCD184からの検出信号に基づいて眼底画像(断層画像)を形成するように動作する、専用の電子回路である。このような画像形成ボード208を設けることにより、眼底画像を形成する処理の処理速度を向上させることができる。
通信インターフェイス209は、マイクロプロセッサ201からの制御信号を、眼底カメラユニット1AやOCTユニット150に送信する処理を行う。また、通信インターフェイス209は、眼底カメラユニット1Aの撮像装置10、12からの映像信号や、OCTユニット150のCCD184からの検出信号を受信して、画像形成ボード208に入力する処理などを行う。このとき、通信インターフェイス209は、撮像装置10、12からの映像信号を眼底画像形成ボード208aに入力し、CCD184からの検出信号をOCT画像形成ボード208bに入力するように動作する。
また、演算制御装置200がLAN(Local Area Network)やインターネット等のネットワークに接続されている場合には、通信インターフェイス209に、LANカード等のネットワークアダプタやモデム等の通信機器を具備させて、当該ネットワーク経由のデータ通信を行えるように構成することが可能である。その場合、制御プログラム204aを格納するサーバを設置するとともに、演算制御装置200を当該サーバのクライアント端末として構成することができる。
〔制御系の構成〕
以上のような構成を有する眼底観察装置1の制御系の構成について、図5を参照しつつ説明する。図5は、眼底観察装置1が具備する構成のうち、特に本発明に係る動作や処理に関わる部分を選択して示したものである。
眼底観察装置1の制御系は、演算制御装置200の制御部210を中心として構成される。制御部210は、マイクロプロセッサ201、RAM202、ROM203、ハードディスクドライブ204(制御プログラム204a)、通信インターフェイス209等を含んで構成される。なお、制御部210を構成するハードディスクドライブ204には、前述のように、当該被検眼の眼球光学系の収差等の検査情報が記憶されている。
制御部210は、制御プログラム204aに基づいて動作するマイクロプロセッサ201により、各種の制御処理を実行する。たとえば、前述のように、眼底カメラユニット1Aのミラー駆動機構241、242をそれぞれ制御することにより、ガルバノミラー141A、141Bをそれぞれ独立に動作させるようになっている。
また、制御部210は、眼底観察装置1により撮影される2種類の画像、すなわち眼底カメラユニット1Aによる眼底Efの表面の2次元画像(眼底画像Ef′)と、OCTユニット150により得られた検出信号を基に形成される眼底Efの画像(断層画像や3次元画像等)とを、ユーザインターフェイス250のディスプレイ207に表示させるための制御を行う。これらの眼底画像は、それぞれ別々にディスプレイ207にさせることもできるし、それらを並べて同時に表示させることもできるようになっている。
画像形成部220は、眼底カメラユニット1Aの撮像装置10、12からの映像信号に基づいて眼底画像を形成する処理と、OCTユニット150のCCD184からの検出信号に基づいて眼底画像を形成する処理とを行う。この画像形成部220は、画像形成ボード208を含んで構成される。
画像処理部230は、画像形成部220により形成された眼底画像に対して各種の画像処理を施すものである。たとえば、OCTユニット150からの検出信号に基づく眼底Efの断層画像に基づいて眼底Efの3次元画像を形成する処理や、眼底画像の輝度調整等の各種の画像補正処理などを実行するものである。
補正処理部240は、制御部210のハードディスクドライブ204に記憶された被検眼の眼球光学系の収差に基づいて、眼底EfのOCT画像(断層画像や3次元画像)を補正する処理を行う。ここで、被検眼の眼球光学系の収差は、たとえば本出願人による特開2002−306416号公報に開示された眼特性測定装置などによって測定することができる。なお、この眼特性測定装置は、眼球光学系の高次収差まで測定することが可能である。補正処理部240によるOCT画像の収差補正は、既存の任意の手法を適宜に用いて行うことができる。この補正処理部240は、本発明の「補正手段」の一例として作用するものである。
ユーザインターフェイス(UI)250は、キーボード205やマウス206等の操作デバイスと、ディスプレイ207等の表示デバイスとを具備している。
以下、制御部210による信号光LSの走査の制御態様について、そして画像形成部220及び画像処理部230によるOCTユニット150からの検出信号に対する処理の態様について、それぞれ説明する。なお、眼底カメラユニット1Aからの映像信号に対する画像形成部220等の処理については、従来と同様であるので説明は省略することにする。
〔信号光の走査について〕
信号光LSの走査は、前述のように、眼底カメラユニット1Aの走査ユニット141のガルバノミラー141A、141Bの反射面の向きを変更することにより行われる。制御部210は、ミラー駆動機構241、242をそれぞれ制御することで、ガルバノミラー141A、141Bの反射面の向きをそれぞれ変更し、信号光LSを眼底Ef上において走査する。
ガルバノミラー141Aの反射面の向きが変更されると、信号光LSは、眼底Ef上において水平方向(図1のx方向)に走査される。一方、ガルバノミラー141Aの反射面の向きが変更されると、信号光LSは、眼底Ef上において垂直方向(図1のy方向)に走査される。また、ガルバノミラー141A、141Bの双方の反射面の向きを同時に変更させることにより、x方向とy方向とを合成した方向に信号光LSを走査することができる。すなわち、これら2つのガルバノミラー141A、141Bを制御することにより、xy平面上の任意の方向に信号光LSを走査することができる。
図6は、眼底Efの画像を形成するための信号光LSの走査態様の一例を表している。図6(A)は、信号光LSが被検眼Eに入射する方向から眼底Efを見た(つまり図1の−z方向から+z方向を見た)ときの、信号光LSの走査態様の一例を表す。また、図6(B)は、眼底Ef上の各走査線における走査点(画像計測を行う位置)の配列態様の一例を表す。
図6(A)に示すように、信号光LSは、あらかじめ設定された矩形の走査領域R内を走査される。この走査領域R内には、x方向に複数(m本)の走査線R1〜Rmが設定されている。各走査線Ri(i=1〜m)に沿って信号光LSが走査されるときに、干渉光LCの検出信号が生成されるようになっている。
ここで、各走査線Riの方向を「主走査方向」と呼び、それに直交する方向を「副走査方向」と呼ぶことにする。したがって、信号光LSの主走査方向への走査は、ガルバノミラー141Aの反射面の向きを変更することにより実行され、副走査方向への走査は、ガルバノミラー141Bの反射面の向きを変更することによって実行される。
各走査線Ri上には、図6(B)に示すように、複数(n個)の走査点Ri1〜Rinがあらかじめ設定されている。
図6に示す走査を実行するために、制御部210は、まず、ガルバノミラー141A、141Bを制御し、眼底Efに対する信号光LSの入射目標を第1の走査線R1上の走査開始位置RS(走査点R11)に設定する。続いて、制御部210は、低コヒーレンス光源2を制御し、低コヒーレンス光L0をフラッシュ発光させて、走査開始位置RSに信号光LSを入射させる。CCD184は、この信号光LSの走査開始位置RSにおける眼底反射光に基づく干渉光LCを受光し、検出信号を制御部210に出力する。
次に、制御部210は、ガルバノミラー141Aを制御して、信号光LSを主走査方向に走査して、その入射目標を走査点R12に設定し、低コヒーレンス光L0をフラッシュ発光させて走査点R12に信号光LSを入射させる。CCD184は、この信号光LSの走査点R12における眼底反射光に基づく干渉光LCを受光し、検出信号を制御部210に出力する。
制御部210は、同様にして、信号光LSの入射目標を走査点R13、R14、・・・、R1(n−1)、R1nと順次移動させつつ、各走査点において低コヒーレンス光L0をフラッシュ発光させることにより、各走査点ごとの干渉光LCに対応してCCD184から出力される検出信号を取得する。
第1の走査線R1の最後の走査点R1nにおける計測が終了したら、制御部210は、ガルバノミラー141A、141Bを同時に制御して、信号光LSの入射目標を、線換え走査rに沿って第2の走査線R2の最初の走査点R21まで移動させる。そして、この第2の走査線R2の各走査点R2j(j=1〜n)について前述の計測を行うことで、各走査点R2jに対応する検出信号をそれぞれ取得する。
同様に、第3の走査線R3、・・・・、第m−1の走査線R(m−1)、第mの走査線Rmのそれぞれについて計測を行い、各走査点に対応する検出信号を取得する。なお、走査線Rm上の符号REは、走査点Rmnに対応する走査終了位置である。
それにより、制御部210は、走査領域R内のm×n個の走査点Rij(i=1〜m、j=1〜n)に対応するm×n個の検出信号を取得する。以下、走査点Rijに対応する検出信号をDijと表すことがある。
以上のような走査点の移動と低コヒーレンス光L0の出力との連動制御は、たとえば、ミラー駆動機構241、242に対する制御信号の送信タイミングと、低コヒーレンス光源2に対する制御信号(出力要求信号)の送信タイミングとを互いに同期させることによって実現することができる。
制御部210は、上述のように各ガルバノミラー141A、141Bを動作させるときに、その動作内容を示す情報として各走査線Riの位置や各走査点Rijの位置(xy座標系における座標)を記憶しておくようになっている。この記憶内容(走査位置情報)は、従来と同様に画像形成処理において用いられる。
〔画像処理について〕
次に、画像形成部220及び画像処理部230によるOCT画像に関する処理について、その一例を説明する。
画像形成部220は、各走査線Ri(主走査方向)に沿った眼底Efの断層画像の形成処理を実行する。また、画像処理部230は、画像形成部220により形成された断層画像に基づく眼底Efの3次元画像の形成処理などを実行する。
画像形成部220による断層画像の形成処理は、従来と同様に、2段階の演算処理を含んで構成される。第1段階の演算処理においては、各走査点Rijに対応する検出信号Dijに基づいて、その走査点Rijにおける眼底Efの深度方向(図1に示すz方向)の画像を形成する。
図7は、画像形成部220により形成される断層画像の態様を表している。第2段階の演算処理においては、各走査線Riについて、その上のn個の走査点Ri1〜Rinにおける深度方向の画像に基づき、この走査線Riに沿った眼底Efの断層画像Giを形成する。このとき、画像形成部220は、各走査点Ri1〜Rinの位置情報(前述の走査位置情報)を参照して各走査点Ri1〜Rinの配列及び間隔を決定して、この走査線Riを形成するようになっている。以上の処理により、副走査方向(y方向)の異なる位置におけるm個の断層画像G1〜Gmが得られる。
補正処理部240は、各断層画像Giについて、被検眼Eの眼球光学系の収差による影響を補正する。
次に、画像処理部230による眼底Efの3次元画像の形成処理について説明する。眼底Efの3次元画像は、上記の演算処理により得られたm個の断層画像に基づいて形成される。画像処理部230は、隣接する断層画像Gi、G(i+1)の間の画像を補間する公知の補間処理を行うなどして、眼底Efの3次元画像を形成する。
このとき、画像処理部230は、各走査線Riの位置情報を参照して各走査線Riの配列及び間隔を決定して、この3次元画像を形成するようになっている。この3次元画像には、各走査点Rijの位置情報(前述の走査位置情報)と、深度方向の画像におけるz座標とに基づいて、3次元座標系(x、y、z)が設定される。
また、画像処理部230は、この3次元画像に基づいて、主走査方向(x方向)以外の任意方向の断面における眼底Efの断層画像を形成することができる。断面が指定されると、画像処理部230は、この指定断面上の各走査点(及び/又は補間された深度方向の画像)の位置を特定し、各特定位置における深度方向の画像(及び/又は補間された深度方向の画像)を3次元画像から抽出し、抽出された複数の深度方向の画像を配列させることにより当該指定断面における眼底Efの断層画像を形成する。
なお、図7に示す画像Gmjは、走査線Rm上の走査点Rmjにおける深度方向(z方向)の画像を表している。同様に、前述の第1段階の演算処理において形成される、各走査線Ri上の各走査点Rijにおける深度方向の画像を、「画像Gij」と表す。
[作用・効果]
以上のような構成を有する本実施形態に係る眼底観察装置1の作用及び効果について説明する。
本実施形態に係る眼底観察装置1は、眼底Efの表面の状態を表す2次元画像を得るための眼底カメラとして作用する眼底カメラユニット1Aと、眼底Efの断層画像(及び3次元画像)を得るための光画像計測装置として作用するOCTユニット150とを備えている。
OCTユニット150による画像形成に使用される信号光の光路は、眼底カメラユニット1Aの撮影光学系130により形成される光路(撮影光路)に合成されて被検眼Eに導かれる。この光路の合成は、ダイクロイックミラー134によって為されている。
また、信号光LSの眼底反射光は、撮影光路に沿ってダイクロイックミラー134まで導光されるとともに、このダイクロイックミラー134によって撮影光路から分離されてOCTユニット150に向かうようになっている。
このように、眼底カメラユニット1Aの撮影光路と、信号光LSの光路とを合成し、分離するように作用するダイクロイックミラー134を設けることにより、眼底Efの表面の2次元画像と眼底Efの断層画像(及び3次元画像)との双方を取得することが可能となる。
特に、被検眼Eに対して、眼底カメラユニット1Aによる照明光の照射と、OCTユニット150による信号光LSの照射とを同時に行っても、それぞれの眼底反射光をダイクロイックミラー134によって分離し、それぞれを検出して画像を形成することができるので、眼底Efの表面の2次元画像と眼底Efの断層画像の双方を同時に撮影することが可能である。
このとき、OCTユニット150からの信号光LSと同時に照射される照明光は、撮影光源103からの近赤外光であってもよいし、観察光源101からの可視光であってもよい。
また、本実施形態に係る眼底観察装置1は、光カプラ162により生成された信号光LSが眼底Efを経由して参照光LRと重畳されるまでの間に付与される分散量とほぼ等しい分散量を参照光LRに付与するためのファイバ長を有する光ファイバ163を備えている。また、参照光LRに分散量を付与するガラスブロック172と濃度フィルタ173を備えている。更に、参照光LRに分散量を付与するための光ファイバ163やガラスブロック172等により、信号光路の光路長と参照光路の光路長とにズレが生じるが、参照光LRが空気中を経由する距離が、信号光LSが空気中を経由する距離にほぼ等しくなるように、参照光路を設計することにより、この光路長のズレを解消している。
すなわち、この眼底観察装置1は、信号光LSが経由する複数の光学素子の分散量の合計値と、参照光LRが経由する複数の光学素子の分散量の合計値とがほぼ等しくなるように構成されていることに加えて、信号光路の光路長と参照光の光路長とがほぼ等しくなるように構成されている。
このような眼底観察装置1によれば、信号光LSに対する分散の影響と参照光LRに対する分散の影響とがほぼ等しくなるので、信号光LSと参照光LRとを高い干渉効率で干渉させることができ、十分な強度の干渉光LCを生成することができる。それにより、OCT画像のコントラストが低下して画像が不明瞭になったり、画像の確度が低下したりする事態を防止することができる。
なお、上記のように構成された光ファイバ163、ガラスブロック172、濃度フィルタ173、参照光路は、それぞれ、本発明の「分散付与手段」の一例に相当するものである。
また、本実施形態に係る眼底観察装置1によれば、被検眼Eの眼球光学系の収差に基づいて、眼底EfのOCT画像(断層画像や3次元画像)を補正するように構成されているので、OCT画像の明瞭さや確度の更なる向上を図ることができる。
[変形例]
以上に詳述した構成は、本発明に係る眼底観察装置を好適に実施するための一例に過ぎないものである。したがって、本発明の要旨の範囲内における任意の変形を適宜に施すことが可能である。
たとえば、上記の実施形態においては、参照光LRを導光する光ファイバ163や、ガラスブロック172や、濃度フィルタ173や、参照光路を、本発明の「分散付与手段」として用いているが、これらのうちの少なくとも1つを使用すれば十分である。また、これらの他にも、参照光LRに分散の影響を付与する任意の形態の分散付与手段を適用することが可能である。
このような分散付与手段を用いて参照光LRに分散量を付与することにより、撮影光路上の光学素子や空気によって信号光LSに付与される分散量の少なくとも一部を補償することができ、信号光LSと参照光LRとの干渉効率の低下を抑制することが可能となる。それにより、OCT画像のコントラストや確度の低下を抑制することができる。
また、上記の実施形態では、低コヒーレンス光L0として、約800nm〜900nmの波長の近赤外光を使用しているが、眼底Efのより深い領域の画像計測を行うために、より長い波長の光を使用することができる。たとえば、約900nm〜1000nmの波長の近赤外光を使用することや、約1000nm〜1100nmの波長の近赤外光を使用することができる。
なお、約900nm〜1000nmの波長の低コヒーレンス光L0を使用する場合には、眼底カメラユニット1Aにおける照明光として、たとえば約700nm〜900nmの波長の近赤外光を使用することができる。また、約1000nm〜1100nmの波長の近赤外光を低コヒーレンス光L0を使用する場合には、眼底カメラユニット1Aにおける照明光として、たとえば約850nm〜1000nmの波長の近赤外光を使用することができる。ここで、いずれの場合においても、低コヒーレンス光L0の波長を、眼底カメラユニット1Aの照明光の波長よりも長く設定することが望ましいが、波長の長短の関係を逆にした構成を適用することも可能である。
また、本発明に係る眼底観察装置の第1の画像形成手段は、眼底カメラ(ユニット)に限定されるものではなく、眼底表面の2次元画像の形成することが可能な任意の眼科装置を適用することが可能である。たとえば、スリットランプ(細隙灯顕微鏡装置)などを第1の画像形成手段として用いることができる。
また、上記の実施形態では、画像形成部220(画像形成ボード208)によって眼底画像の形成処理を行うとともに、制御部210(マイクロプロセッサ201等)によって各種制御処理を行うようになっているが、これら双方の処理を1台若しくは複数台のコンピュータによって行うように構成することができる。