JP2007179456A - 機構構造物の設計装置および設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】機構運動を行う構造要素を含む構造物を、多数の形状モデルの解析結果に基づき設計する手法において、形状モデルの作成工数を削減する。
【解決手段】クランク軸の基本形状に基づき、有限要素分割された写像モデルを作成する。この写像モデルを組み立て、また位相的に等しい形状を維持して、形状モデルと幾何的に等しい形状に変形して、基本モデル76を作成する。また、基本形状の一部の寸法を変更した形状モデルを作成し、この変形された形状モデルと幾何的に等しい形状となるように、前述の写像モデルを変形して、変形モデル78を作成する。写像モデルを共有することにより、基本モデルと変形モデルの有限要素分割された個々の要素の番号が承継される。基本モデル78において指定された、機構運動解析のために特定すべき要素の番号が、変形モデル78にも承継され、再度の指定が不要となる。
【選択図】図8
【解決手段】クランク軸の基本形状に基づき、有限要素分割された写像モデルを作成する。この写像モデルを組み立て、また位相的に等しい形状を維持して、形状モデルと幾何的に等しい形状に変形して、基本モデル76を作成する。また、基本形状の一部の寸法を変更した形状モデルを作成し、この変形された形状モデルと幾何的に等しい形状となるように、前述の写像モデルを変形して、変形モデル78を作成する。写像モデルを共有することにより、基本モデルと変形モデルの有限要素分割された個々の要素の番号が承継される。基本モデル78において指定された、機構運動解析のために特定すべき要素の番号が、変形モデル78にも承継され、再度の指定が不要となる。
【選択図】図8
Description
本発明は、構造物の設計装置および設計方法に関し、特に機構運動を行う構造要素を有する構造物の設計に関する。
構造物の設計において、有限要素解析を用いて、この構造物の強度、振動特性などの解析を行い、要求仕様を満足する構造物の形状とすることが行われている。有限要素解析においては、解析対象の構造物の形状をCAD(Computer Aiaed Dsign)データより取得して、自動的に有限要素へ分割する方法が、下記特許文献1、非特許文献2など各種提案されている。有限要素に分割したいくつかのモデルに対し、強度、剛性、振動特性などの解析(有限要素解析:FEM)を行い、設計上の要求を満足するモデルが選ばれ、このモデルに基づく形状が当該構造物の形状として決定される。
一体ものの構造物ではなく、回転やスライドなどの機構運動を行う構造要素を含む構造物の振動解析を行う場合、機構運動と弾性振動の連成計算が必要となる。このような解析を行う場合、各構造要素について有限要素モデルが作成される。機構運動を行う構造要素どうし、およびこれに関連する構造要素の間の運動を規定するために、スライドや回転など相対運動を行う構造要素の対向する面を指定する必要がある。また、回転する構造要素が発生するジャイロ効果を考慮するために、回転部分を指定する必要がある。これらの相対運動を行う面や回転部分の指定は、操作者が、作成された有限要素モデルを見ながら、該当する要素を一つ一つ指定することによって行っていた。
一方、最適形状を探索するためには、構造物の一部の寸法を変更した多数の変形例の形状について解析を行う必要がある。従来の有限要素への自動分割においては、CADデータなどの与えられた形状データごとに分割を行っているため、変形例ごとに別個の分割が行われる。この結果、個々の有限要素モデルごとに、前述の相対的に運動する面、回転部分等の指定を行う必要があるが、これは多大な工数を必要とし、きわめて効率が悪い。
本発明は、機構運動を行う構造要素を含む構造物の有限要素解析を用いた設計において、構造物の多数の変形例を有限要素に分割する際、相対運動する面等の指定を容易にする。
前述のように、構造物の設計においては、基本となる形状に対し、寸法などを一部変更した変形例を解析し、より最適な形状を探索する手法が採られる。本発明においては、基本となる形状の有限要素モデルと、変形例の有限要素モデルとの間で、それぞれの有限要素を特定するための情報が承継される。これにより、基本となる形状のモデルにおいて指定した相対運動する面、回転部分などを特定する情報が、変形例のモデルに対してもそのまま用いることができ、作成されたモデルごとに指定する必要がなくなる。
有限要素を特定するための情報を承継するために、構造物の、基本となる形状に基づき複数の分割体に分割し、個々の分割体に対して有限要素分割を行った写像モデルを作成する。写像モデルは、個々の分割体と、位相的に等しい形状である。この各写像モデルの位置決めを行うことで、元の構造物の形状の有限要素モデルが作り出され、これが元の構造物の形状に基づく基本モデルとなる。
変形例の有限要素モデルである変形モデルは、各写像モデルを、その有限要素の位相的の関係を維持した状態で変形し、このモデルを位置決めすることにより作成される。写像モデルから新たな変形モデルを作成することにより、写像モデルの各有限要素を特定する情報が変形モデルにも受け継がれる。これにより、基本モデルにおいて、相対運動を行う面、回転部分等であると指定した部分が変形モデルにも承継され、変形モデルごとに特定部分の指定を行う必要がなくなる。
構造物の最適形状は、構造物の振動解析の結果と、寸法を変更した構造要素の質量とから、定めることができる。すなわち、振動レベルが所定の要求を満たすものである形状であって、寸法を変更した構造要素の質量が最小となる形状を最適として決定することができる。
機構運動を行う構造要素を含む構造物としては、例えば内燃機関が挙げられる。内燃機関は、機構運動を行う構造要素として、例えばクランク軸、コネクティングロッドおよびピストンを有する。クランク軸は、エンジンブロックのジャーナル軸受部に回転可能に支持されている。この軸受部分の有限要素モデルにおける結合を規定するために、ブロック側、クランク軸側の軸受面を指定する必要がある。クランク軸の形状を最適化するために、変形例のモデルを作成する際、この軸受面の情報が基本モデルから承継されることにより、軸受面の指定を変形モデルに対して行う必要がない。
軸受部分においては、両構造要素間に潤滑油が介在しており、この油膜を介して力の授受が行われるとして、解析を行うことができる。クランク軸おいてはクランクジャーナルの外周を構成する節点と、ブロック側は主軸受の内周面を構成する節点を用いて、油膜を規定することができる。この油膜を介して作用する力は、クランクジャーナルと主軸受内周面の、半径方向および回転方向の相対運動に伴う力と扱うことができる。
また、振動解析の際には、内燃機関の出力軸が、出力軸の平均速度で回転する構造体に、ばね要素および減衰要素を介して接続されているとして解析を実行する。
また、クランク軸のカウンタウエイトが回転することにより生じるジャイロ効果が生じる。この効果を考慮するためにカウンタウエイト部分を指定することができる。これも、基本モデルから変形モデルに受け継がれる。
以上のように、基本モデルの有限要素を特定する情報を変形モデルにも承継することにより、変形モデルにおける有限要素解析が容易となる。
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。
初めに、写像モデルを利用した有限要素への分割について説明する。この分割は、前記の非特許文献1に記載された方法を利用したものであり、日立製作所製HICAD/CADAS for CATIA V5(MSG)により実行可能である。
図1は、写像モデルを利用した要素分割の概略を説明するための図である。(a)は、解析対象となる形状モデル10であり、CADデータなどから取得することができる。この形状モデルを接続関係にある線分の集合を形状単位として定義し、この単位ごとに分割した分割体12を求める。(b)は、この分割体12を示しており、図の例では、三つの分割体12a,12b,12cに分割されている。分割体12は、形状モデルの幾何的な形状を反映した形状を有しているが、これを、直交座標系の軸に平行な直線で形成された形状の直方体モデル14に変形する。この変形においては、分割体の形状が位相的に等しく、幾何的に最も近い形状となるようにされている。(c)は、この直方体モデル14を示しており、直方体モデル14aが分割体12aに対応している。直方体モデル14b,14cも同様に分割体12b,12cに対応している。
この直方体モデルに対し、立方体の有限要素に分割して有限要素モデル16を得る。(d)は、この有限要素モデル16を示しており、この有限要素モデルを、以降写像モデル16と記す。また、図において写像モデル16aは直方体モデル14aに対応しており、同様に写像モデル16b,16cは直方体モデル14b,14cに対応している。この写像モデル16を、相互に位置決めして写像モデルを組み立て((e)参照)、形状モデル10の形状へと変形させて、形状モデルを有限要素分割した基本モデル18を得る((f)参照)。
以上が、上記非特許文献1に示されている要素分割の手法の概要である。
この分割手法を用いると、形状データの一部の寸法が変更されても、写像モデル16が変わらなければ、それに対応する有限要素モデルの有限要素の節点番号が維持される。例として、形状モデル10の上方に突出した円柱部分の直径を大きくする変形例について説明する。
図2には、前記の円柱部分の直径を大きくした場合の形状モデル20を、元の形状モデル10とは関連なく要素分割を行った例が示されている。形状モデル10を基本形状モデル10、変形した形状モデル20を変形形状モデル20と記して説明する。円柱部分の分割体22bは、基本形状モデル10の場合の分割体12bに比べて直径が大きくなっている。他の分割体22a,22cは、基本形状モデルの対応する分割体12a,12bと同様である。分割体22bより写像モデル26bを作ると、元の分割体12bより直径が大きくなった分、有限要素の数が増加する。これに基づき有限要素モデル28をつくると、その有限要素の数が増加し、節点番号が異なることになる。
図3には、基本形状モデル10の写像モデル16を用いて、変形形状モデル20の要素分割を行った有限要素モデル30が示されている。この有限要素モデル30は、基本形状モデル10の円柱部分の写像モデル16bを、変形形状モデル20の円柱部分に適用するように変形を行うことで、有限要素分割を行っている。共通の写像モデル16bを位相的な関係を維持するように変形しているので、基本モデルの有限要素モデル18の円柱部分と、変形形状モデルの有限要素モデル30の円柱部分との各々の有限要素は、位相的に等しい関係にある。すなわち、それぞれの有限要素は1対1に対応し、基本形状モデルの有限要素モデル(基本モデル)18において円柱外周面を構成する節点と同一の番号を有する節点は、変形形状モデルの有限要素モデル(変形モデル)30においても、円柱外周面を構成するものとなる。
次に、本発明に係る実施形態として内燃機関のクランク軸の設計について説明する。図4は、設計全体の流れを示す図である。まず、設計変数の種類と範囲を設定する(40)。クランク軸の設計においては、基本となる形状のクランク軸の形状データを設定し、その形状の設計変数(パラメータ)として、例えばカウンタウエイト部分の幅寸法、クランクジャーナルの径などを設定し、さらにその変数の範囲を設定する。これらの設定に基づき、パラメータスタディ(パラスタ)の自動実行指令42を、CAD・FEM制御部44に送出する。CAD・FEM制御部44は、変数を変更したCADモデル作成部46、FEMモデル作成部48に対し、各モデルの作成を指令する。このとき、変数を変更したFEMモデルは、基本となる形状の写像モデルを変形することにより作成され、これによって、FEMモデルの節点番号等、有限要素を特定するための情報が、基本形状のモデルから承継される。FEMモデルは、FEMソルバ部50に送られ、機構運動と弾性振動が連成した機構振動の計算が実行される(52)。この計算結果は、CAD・FEM制御部に送られ、再度変数を変更したモデルが作成される。この処理が繰り返されて、応答曲面が作成され、応答曲面上において制約条件を満足する範囲で、最適な形状を探索する(54)。具体的には、所定のエンジンの振動レベルを満足する範囲で、最も軽量な形状を探索する。
さらに、詳細にクランク軸の設計方法について説明する。クランク軸を支持する構造物であるエンジンブロック等も完全な剛体ではあり得ず、本実施形態においては、弾性振動を生じる構造要素として取り扱う。図5,6には、内燃機関のクランク軸を含む回転部分と、エンジンブロックおよびミッションケースなど、回転部分を支持する部分との有限要素モデルの一例が示されている。クランク軸60には、クランクプーリ62と、クラッチを含むフライホイール64が結合されており、さらにクラッチを介して変速機のメインシャフト、カウンタシャフト等の回転要素66が結合されている。図6には、図5に示された回転要素を支持する部分としてのエンジンブロック68、ミッションケース70などの有限要素モデルが示されている。
図7には、設計対象であるクランク軸60の基本形状が示されている。(a)には、直列4気筒エンジンのクランク軸60を軸直交方向より見た図が、また(b)には、各クランクアーム72,カウンタウエイト74を軸方向より見た図が示されている。(a)において、右側がフライホイール64に結合される端で、左側にクランクプーリ62が結合される。図7に示される形状が基本形状であり、クランクアーム72およびカウンタウエイト74の形状は、各スローにおいて、共通となっている。この例においては、クランクアーム72およびカウンタウエイト74の形状に係る寸法が設計変数に設定されている。具体的には、クランクアーム72のショルダ部高さa、アーム幅b、カウンタウエイト高さc、カウンタウエイト支持部位置d,e、同支持部厚さfが、変数に設定されている。
クランク軸60の両端にはそれぞれ、フライホイール64とクランクプーリ62が結合されているが、これらは質量、慣性モーメント共に大きく異なる。また、機関の出力もフライホイール側の端からなされる。このようなクランク軸およびこれに関連する構造要素の非対称性から、クランク軸の全てのスローにおいて、クランクアーム等が共通の形状であることが最適であるとは限らない。そこで、上記の各変数を変更し、最適な形状の探索が実行される。例えば、各変数の上限値、下限値、必要に応じて中央値を用いて、実験計画法に基づき変数に対する応答、本実施形態ではエンジンの振動レベルを計算する。この設計変数と応答との関係を用いて応答曲面を作成し、応答曲面上で、所定の制約(エンジン振動レベルの上限値)の下で、クランク軸が最も軽量となるクランク軸形状を探索する。
図7に示す、基本形状のクランク軸60のCADデータを取得し、形状モデルを作成する。この形状モデルに対して、有限要素に分割された基本モデルが作成される。基本モデルは、図1の(f)に示した有限要素モデル18に相当し、基本形状モデル10から、写像モデル16を介して、作成されたものである。写像モデルは、図1で説明したような直方体を基本とした形状である必要はない。
図8(a)には、基本形状のクランク軸60の基本モデル76の一部が示されている。ここに示した部分は、クランクアーム72、カウンタウエイト74を含む部分であり、これをクランクの回転軸方向に見た状態が示されている。図面に付された4桁の数字は、囲みがないものは節点の番号、破線の長方形で囲まれた数字は、多角形等で表された有限要素の番号を示している。
基本モデル76に対し、所定の変数の値を変えた変形例の変形形状モデルおよびこれを有限要素分割した変形モデルを作成する。変形モデルは、基本モデル76と共通の写像モデルを変形して作成され、これにより、節点番号等の有限要素を特定するための情報が基本モデルと変形モデルの間で承継される。
図8(b)には、基本モデル76に対応した変形モデル78の一例が示されている。図8(a)に示された節点番号、有限要素番号と同じ番号の節点および有限要素が示されており、図8(a)と図8(b)において、節点番号が承継されていることが理解できる。例えば、番号2955の節点は、図8(a)および図8(b)の双方において、クランクアーム72の頂点付近の節点である。また、各節点、各有限要素の位相的な関係が維持されており、基本モデル76と変形モデル78は位相的に等しい形状となっている。
基本モデル76に対して、ジャイロ効果を生じる回転部分を有限要素または節点を指定することにより決定する。ジャイロ効果を生じる部分としては、例えば、カウンタアーム、カウンタウエイト、クランクピンなどのクランク軸本体にかかる部分と、フライホイールなど、クランク軸に結合されている部分である。基本モデル76において、これらの部分を指定しておけば、変形モデル78においても節点番号等が承継されるので、変形モデル78において再度指定を行う必要がない。
基本モデル76、変形モデル78に対して、機構・振動計算を行いエンジン振動の解析を行う。この解析においては、軸受部分の油膜、クランク軸の出力を受けるモータ要素、さらに、ピストンの受ける燃焼圧、ピストンおよびコネクティングロッドの慣性力を考慮する必要がある。これらの取扱いについて、以下説明する。
主軸受を例として軸受部分の油膜の処理について説明する。まず、油膜を持つ軸受要素の基本的な処理について図9および図10を用いて説明する。図10において、(a)は軸直交断面、(b)は軸を含む断面であり、軸80と軸受82には、油膜84が介在している。軸受要素は、流体潤滑理論に基づいて、軸心の偏心量e、偏心速度e(・)、偏心角γ、偏心角速度γ(・)、軸と軸受の相対角速度ω(−)から、軸受荷重Fbx、Fbyを計算する。この軸受荷重が、クランク軸とエンジンブロックの主軸受との間で作用する力となる。なお、( )内の記号は、数式においては、その前の文字の上に付された記号に対応する。流体潤滑理論によれば、軸と軸受が図9に示す関係のとき油膜圧力pの分布はレイノルズ方程式(1)に従う。
この偏微分方程式を解析的に取り扱うため、軸受の幅が軸形に対して十分小さいと仮定し、式(1)の左辺第1項を無視して、式(2)とする。
軸受幅B(図10参照)として、その両端の境界条件をp=(x=0,B)とすると、式(2)を解いて、式(3)を得る。
軸受幅の方向の平均圧力p(−)は、式(3)から、次式(4)となる。
式(4)を円周方向δに沿って正圧になる領域を積分することで、軸受に伝わる荷重Fbx,Fbyが計算できる。
軸受要素は、図10のように軸80の5つの節点と、軸受82の複数(4つ以上、個々では8つの例)の節点によって定義される。軸受要素の座標系{x、y、z}は、軸受の節点から次のように決定される。軸受の8つの節点(#2−1〜#2−8)の位置ベクトルをそれぞれr21,r22,r23,r24,r25,r26,r27,r28として、まず軸受中心の位置ベクトルr2cを計算する。
次に、x,y,z軸それぞれの座標軸ベクトルを式(6)、(7)、(8)の順に決定する。
軸と軸受のそれぞれの節点は、この要素座標系のx−y平面上にあるものとして、上記流体潤滑モデルが適用される。
図11、図12には、軸受部分の指定を行った有限要素モデルの一例が示されている。図11は、軸側の有限要素モデルであり、クランク軸の基本モデル76,変形モデル78の一部を示している。このモデルでは、軸の傾きも考慮するために、クランクジャーナル88の軸方向の2箇所において、軸を規定する節点番号を指定している。図11において、手前側の軸直交平面上の節点が#11−1〜5,奥側の節点が#12−1〜5となっている。奥側の節点については、隠れている部分は省略されている。
図12は、軸受側の有限要素モデル86である。このモデルにおいても、軸側と同様に軸方向2箇所において、軸受を規定する節点番号を指定している。手前側の節点が#21−1〜8、奥側が#22−1〜8である。奥側については、図12には示していないが、手前側に対応して節点が指定されている。
図13は、軸、軸受を2箇所で規定した場合の、図10に対応する(a)軸直交断面、(b)軸を含む断面を示す図である。クランク軸の軸線と、軸受の軸線は、常に平行であるとは限らないので、(b)に示すように、軸方向に二つの部分に分けて、それぞれについて油膜要素の計算を実行する。
次に、モータ要素の取扱いについて説明する。図14は、エンジンの出力軸の、モータに接続される端を含む部分を示した図である。本実施形態においては、クランク軸の基本モデル76、変形モデル78の出力側の端がこの部分に相当する。クランク軸の端に節点#1−1〜4を指定する。一方、モータ要素90は、図15のように、グランドの節点#2−1〜4を使用する。モータ要素90の要素座標系は、節点#2−1〜4の図心、すなわちこれらの節点を通る円の中心を原点とし、原点から節点#2−1の節点の向きにx軸、このx軸と原点から節点#2−2の向きへのベクトルとの外積の方向をz軸、さらにz軸とx軸の外積の方向をyとして決定する。この節点と座標系により、図16のモータ要素に係る運動モデルが得られる。
クランク軸の回転角θ1 、回転速度θ1(・) 、モータ要素90の回転角θ2 、回転速度θ2(・) とすれば、出力トルクTは、次式で表される。
軸が回転方向に運動し、弾性振動を生じた際のモータからの反力は、上記設定された節点で代表される軸およびグランドの相対運動に伴う力として計算される。機関回転速度が一定の場合について解析を行うときには、モータ要素の回転速度を、その機関速度に対応した一定値とすればよい。
さらに、ピストン・コネクティングロッド(以下コンロッドと記す)要素の取扱いについて説明する。図17は、ピストン・コンロッド要素の運動モデルが示されている。燃焼圧力と、ピストンおよびコンロッドの慣性力は、クランク軸の基本モデル76,変形モデル78のクランクピン上の一つの節点#1−1に作用するとして取り扱う。クランクピンとコンロッド大端部の接合部分にも現実には油膜が介在するが、本実施形態では、この油膜は無視する。ピストン要素92は、ピストン頂面と、ピストンスカート下端に相当する面内に指定された節点#2−1〜8で規定する。
図18には、最適化されたクランク軸94の形状が示されている。#1〜#8の各スローのクランクアームおよびカウンタウエイの形状は、それぞれ異なっていることが分かる。このような形状は、人が案出することは困難であり、コンピュータを利用した最適形状探索法を用いた解析が必要である。
以上の設計方法は、コンピュータを設計装置として機能させるプログラムにより実現することができる。
なお、本実施形態においては、写像モデルは、直交座標系の軸に平行な辺から形成された立体、言い換えれば直方体を組み合わせた形状としているが、これに限るものではない。例えば円柱を組み合わせた形状とすることもでき、また直方体と円柱の双方を用いてこれらを組み合わせた形状とすることもできる。
また、本実施形態においては、設計対象のクランク軸と、これを支持するエンジンブロックの双方を弾性振動を生じる構造要素として取り扱ったが、簡易的にクランク軸のみ弾性振動を生じる構造要素として取扱い、エンジンブロックに関しては剛体として取り扱うようにもできる。
10 形状モデル(基本形状モデル)、16,26 写像モデル、18 有限要素モデル(基本モデル)、20 形状モデル(変形形状モデル)、28 有限要素モデル、30 有限要素モデル(変形モデル)、60 クランク軸、72 クランクアーム、74 カウンタウエイト、76 基本モデル、78 変形モデル。
Claims (14)
- 機構運動を行う構造要素を含む構造物を設計する設計装置であって、
構造物の形状モデルに基づき当該構造物が複数の分割体に分割され、この分割体ごとに有限要素に分割されて作成された写像モデルを受け入れる手段と、
前記写像モデルに基づき作成された基本モデルであって、当該構造物の、機構運動中の振動解析を行うための有限要素モデルである基本モデルを受け入れる手段と、
基本モデルに対し部分的に形状を変形した構造要素を含む少なくとも一つの変形モデルを、写像モデルをその有限要素間の位相的な関係を維持した状態で変形することにより作成する手段と、
基本モデルおよび変形モデルを用いて、それぞれのモデルに対応する構造物の振動解析を行う手段と、
基本モデルおよび変形モデルを用いて、それぞれのモデルに対応する構造物の、前記部分的に形状を変形した構造要素の質量を求める手段と、
振動解析の結果と求めた質量とから、振動レベルが所定値以下であり、質量が最小となる形状モデルを求め、構造物の形状を決定する手段と、
を有する構造物の設計装置。 - 機構運動を行う構造要素を含む構造物を設計する設計装置であって、
構造物の形状モデルに基づき作成され、当該構造物の機構運動中の振動解析を行うための有限要素モデルである基本モデルを受け入れる手段と、
基本モデルに対し部分的に形状を変形した構造要素を含む少なくとも一つの変形モデルを作成する手段と、
基本モデルおよび変形モデルを用いて、それぞれのモデルに対応する構造物の振動解析を行う手段と、
基本モデルおよび変形モデルを用いて、それぞれのモデルに対応する構造物の、前記部分的に形状を変形した構造要素の質量を求める手段と、
振動解析の結果と求めた質量とから、振動レベルが所定値以下であり、質量が最小となる形状モデルを求め、構造物の形状を決定する手段と、
を有し、
変形モデルを作成する手段においては、基本モデルにおける有限要素を特定するための情報が変形モデルの対応する有限要素に承継され、有限要素間の位相的な関係が維持される、
構造物の設計装置。 - 請求項1または2に記載の構造物の設計装置であって、前記構造物は内燃機関を含み、前記部分的に形状を変形した構造要素はクランク軸である、構造物の設計装置。
- 請求項3に記載の構造物の設計方法であって、振動解析を行う手段は、クランク軸の軸受部分においては、油膜を介して力の授受が行われるとして解析を行う、構造物の設計装置。
- 請求項3または4に記載の構造物の設計装置であって、振動解析を行う手段は、内燃機関の出力軸は、出力軸の平均速度で回転する構造体に、ばね要素および減衰要素を介して接続されているとして解析を行う、構造物の設計装置。
- 機構運動を行う機構構造物の設計装置であって、
機構構造物の形状モデルに基づき当該機構構造物が複数の分割体に分割され、この分割体ごとに有限要素に分割して作成された写像モデルを受け入れる手段と、
機構構造物を機構運動可能に支持する支持構造物の形状モデルに基づき、振動解析を行うための有限要素モデルを作成する手段と、
機構構造物と関連をもって機構運動を行う関連構造物の形状モデルに基づき、振動解析を行うための有限要素モデルを作成する手段と、
機構構造物の、機構運動中の振動解析を行うための有限要素モデルである基本モデルを、写像モデルに基づき作成する手段と、
基本モデルに対し部分的に形状を変形した少なくとも一つの変形モデルを、写像モデルをその有限要素間の位相的な関係を維持した状態で変形することにより作成する手段と、
支持構造物および関連構造物の有限要素モデルと、基本モデルおよび変形モデルを用いて、基本モデルおよび変形モデルに対応する機構構造物と、支持構造物および関連構造物の振動解析を行う手段と、
基本モデルおよび変形モデルを用いて、それぞれのモデルに対応する機構構造物の質量を求める手段と、
振動解析の結果と求めた質量とから、振動レベルが所定値以下であり、質量が最小となる機構構造物の形状モデルを求め、機構構造物の形状を決定する手段と、
を有する機構構造物の設計装置。 - 請求項6に記載の機構構造物の設計装置であって、
機構構造物は、油膜を介して支持構造物に支持され、
振動解析を行う手段は、油膜を介して力の授受が行われるとして解析を行う、
機構構造物の設計装置。 - 請求項7に記載の機構構造物の設計装置であって、
機構構造物は内燃機関のクランク軸であり、支持構造物はエンジンブロックを含み、関連構造物はコネクティングロッドおよびピストンを含む、
機構構造物の設計装置。 - 機構運動を行う構造要素を含む構造物の振動解析を行う装置であって、
当該構造物の、機構運動中の振動解析を行うための有限要素モデルである基本モデルを受け入れる手段と、
基本モデルに対し、部分的に形状を変更した少なくとも一つの変形モデルを作成する手段と、
基本モデルおよび変形モデルを用いて、それぞれのモデルに対応する構造物の振動解析を行う手段と、
を含み、
変形モデルを作成する手段においては、基本モデルにおける個々の有限要素を特定するための情報が変形モデルの対応する有限要素に承継され、有限要素間の位相的な関係が維持される、
構造物の振動解析装置。 - 請求項9に記載の構造物の振動解析装置であって、
基本モデルは、当該構造物を複数に分割した分割体ごとに有限要素分割を行った写像モデルに対応し、
変形モデルを作成する手段においては、前記の形状の変更に応じて写像モデルを変形させて変形モデルを作成する、
振動解析装置。 - コンピュータを、請求項1〜5のいずれか1項に記載された構造物の設計装置または請求項6〜8のいずれか1項に記載された機構構造物の設計装置または請求項9〜10のいずれか1項に記載された振動解析装置として動作させるための、コンピュータが読み取り可能なプログラム。
- 機構運動を行う構造要素を含む構造物の設計方法であって、
構造物の形状モデルに基づき、当該構造物を複数の分割体に分割するステップと、
前記分割体ごとに有限要素に分割し、写像モデルを作成するステップと、
当該構造物の、機構運動中の振動解析を行うための有限要素モデルである基本モデルを、写像モデルに基づき作成するステップと、
基本モデルに対し部分的に形状を変形した構造要素を含む少なくとも一つの変形モデルを、写像モデルをその有限要素間の位相的な関係を維持した状態で変形することにより作成するステップと、
基本モデルおよび変形モデルを用いて、それぞれのモデルに対応する構造物の振動解析を行うステップと、
基本モデルおよび変形モデルを用いて、それぞれのモデルに対応する構造物の、前記部分的に形状を変形した構造要素の質量を求めるステップと、
振動解析の結果と求めた質量とから、振動レベルが所定値以下であり、質量が最小となる形状モデルを求め、構造物の形状を決定するステップと、
を有する構造物の設計方法。 - 機構運動を行う構造要素を含む構造物の設計方法であって、
構造物の形状モデルに基づき、当該構造物の、機構運動中の振動解析を行うための有限要素モデルである基本モデルを作成するステップと、
基本モデルに対し部分的に形状を変形した構造要素を含む少なくとも一つの変形モデルを作成するステップと、
基本モデルおよび変形モデルを用いて、それぞれのモデルに対応する構造物の振動解析を行うステップと、
基本モデルおよび変形モデルを用いて、それぞれのモデルに対応する構造物の、前記部分的に形状を変形した構造要素の質量を求めるステップと、
振動解析の結果と求めた質量とから、振動レベルが所定値以下であり、質量が最小となる形状モデルを求め、構造物の形状を決定するステップと、
を含み、
変形モデルを作成するステップにおいては、基本モデルにおける有限要素を特定するための情報が変形モデルの対応する有限要素に承継され、有限要素間の位相的な関係が維持される、
構造物の設計方法。 - 機構運動を行う機構構造物の設計方法であって、
機構構造物を機構運動可能に支持する支持構造物の形状モデルに基づき、振動解析を行うための有限要素モデルを作成するステップと、
機構構造物と関連をもって機構運動を行う関連構造物の形状モデルに基づき、振動解析を行うための有限要素モデルを作成するステップと、
機構構造物の形状モデルに基づき、この機構構造物を複数の分割体に分割するステップと、
機構構造物の分割体ごとに有限要素に分割し、写像モデルを作成するステップと、
機構構造物の、機構運動中の振動解析を行うための有限要素モデルである基本モデルを、写像モデルに基づき作成するステップと、
基本モデルに対し部分的に形状を変形した少なくとも一つの変形モデルを、写像モデルをその有限要素間の位相的な関係を維持した状態で変形することにより作成するステップと、
支持構造物および関連構造物の有限要素モデルと、基本モデルおよび変形モデルを用いて、基本モデルおよび変形モデルに対応する機構構造物、支持構造物および関連構造物のの振動解析を行うステップと、
基本モデルおよび変形モデルを用いて、それぞれのモデルに対応する機構構造物の質量を求めるステップと、
振動解析の結果と求めた質量とから、振動レベルが所定値以下であり、質量が最小となる機構構造物の形状モデルを求め、機構構造物の形状を決定するステップと、
を有する機構構造物の設計方法。
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