JP2007176762A - 酸化還元応答性メソポーラス無機材料及びその誘導体の調製方法並びに触媒 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料であって、酸化剤もしくは還元剤の作用により可逆的に結合を形成もしくは開裂させ得る官能基を細孔口に有するメソポーラス無機材料。
【選択図】図1
Description
量化反応により細孔入口の開閉をオン−オフ制御して、メソポーラスシリカ体のコントロール・リリース・システムおよびドラッグ・デリバリー・システムへと応用した技術もその後報告された(特許文献4)。また、最近、細孔内に修飾した光応答性有機置換基の運動により徐放速度を促進させる技術も報告されている(特許文献5)。しかしながら、従
来の技術では、可逆的酸化還元応答性を持った技術、およびそれを触媒活性の制御に用いる例は知られていない。
みであり、シリカ細孔を塞ぐという目的には用いられていない。また、酸化還元作用によるドラッグデリバリーシステムとしては、硫化カドミウムのナノ粒子(非特許文献2)や
環状高分子(非特許文献3)をメソポーラスシリカのフタとして用い、還元剤の作用でそ
のフタをはずすという技術が報告されているが、このフタは一度離れると元には戻れないため、非可逆的システムである。
1. 一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料であって、酸化剤もしくは還元剤の作用により可逆的に結合を形成もしくは開裂させ得る官能基を細孔口に有するメソポーラス無機材料。
2. 前記無機材料がシリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、リン酸スズ、リン酸ニオブ、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、並びにそれらの酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物、テルル化物、複合酸化物及び複合塩からなる群から選ばれるいずれか1種である項1に記載のメソポーラス無機材料。
3. 前記無機材料が細孔内部で触媒部位を有する項1記載のメソポーラス無機材料。
4. 前記官能基の酸化型がジスルフィド基(−SS−)、還元型が2つのチオール基(−SH)から構成される、項1〜3のいずれかに記載のメソポーラス無機材料。
5. 細孔内に機能性物質が充填されてなる項1〜4のいずれかに記載のメソポーラス無機材料。
6. 機能性物質が細孔内に充填されたメソポーラス無機材料の製造方法であって、
(1)水溶液中で界面活性剤を鋳型として、一次元細孔が規則的に配列した構造を有する
メソポーラス無機材料を調製する工程、
(2)界面活性剤を除去する工程、
(3)工程(2)において得られたメソポーラス無機材料に、酸化剤の作用により可逆的に結合を形成し得る還元型官能基をメソポーラス無機材料の細孔口に導入する工程、
(4)機能性物質をメソポーラス無機材料の細孔内に充填する工程、及び
(5)(3)で導入した官能基に酸化剤を作用させて可逆的に結合を形成する工程を含む、製造方法。
7. 機能性物質の放出を制御する方法であって、(1)項5に記載のメソポーラス無機材料に還元剤を与えて官能基の結合を可逆的に開裂して機能性物質を放出させる工程、及び(2)酸化剤により官能基の結合を形成して(1)における機能性物質の放出を停止させる工程を有する、方法。
8. 細孔内に触媒部位を有し、かつ、酸化剤もしくは還元剤の作用により可逆的に結合を形成もしくは開裂させ得る官能基を細孔口に有するメソポーラス無機材料に触媒の作用を受け得る物質を共存させた触媒システムにおいて、酸化剤もしくは還元剤を使用して細孔内で起こる触媒反応の進行を制御する触媒システム。
9. 一次元細孔が規則的に配列した構造を有し、かつ、前記細孔内に触媒部位を有するメソポーラス無機材料系触媒であって、酸化剤もしくは還元剤の作用により可逆的に結合を形成もしくは開裂させ得る官能基を細孔口に有する触媒。
P123等も用いることができる。既知の方法の改良により、細孔径や構造の均一性が増し
安定性は向上するが、内包物の徐放制御機能に関しては、際立った差はない。またここでメソポーラス無機材料とは、上記等の界面活性剤のミセル等を鋳型として用いた無機材料のことを指す。
を共に有する有機官能基を用いることが良い。このような有機化合物としては、特に限定はされないが、例えば下記のような化合物をあげることができる。
、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル等の直鎖又は分岐を有するC1〜C4の低級アルキル基、フェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基等のジ(C1〜C4の低級アルキル)アミノ基、トリメチルシロキシ基等のシロキシ基を示す。)。
ものが良い。この酸化還元応答性有機化合物の分子の長さは2ナノメートル程度となるものが多く、細孔径が3ナノメートル程度のメソポーラスシリカの細孔内には容易には侵入できないため、メソポーラスシリカの外表面および細孔の出入口近傍にのみ導入される。また、細孔径が3ナノメートルよりも大きなメソポーラスシリカの場合は、酸化還元応答性有機化合物をより大きな分子にすれば良く、その方法としては、例えば、図1におけるケイ素に結合しているアルキル基の長さを長くすることによって調節することができる。図1においては、アルキル基はプロピル基であるが、これをブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等にするのである。また、単なるアルキル基以外にもフェニル基、エーテル基、エステル基、アミド基、炭酸基等を用いて長さを調整しても構わない。したがって、このような調節が十分な場合は、焼成処理等により界面活性剤を除去したメソポーラスシリカ体を用いても、細孔内の奥が修飾されることはほとんどない。
チレンの二量化反応を制御することを試みた。その結果、酸化処理により細孔入口が塞がれている場合は、触媒反応が進行しない一方、還元処理により細孔入口を開放すると触媒反応が進行し、α−メチルスチレンの二量体が生成した。このように、細孔の出入口に可
逆的に開裂・形成する有機官能基を導入し、その開裂・形成により細孔内で起こる触媒反応の進行を制御するという触媒材料の概念を実現することができた。
実施例1:メソポーラスシリカ体の合成
水酸化ナトリウム(2.706 g、67.65 mmol)をとり、脱イオン水(97mL、5.389 mmol
)を加えて均一溶液とし、その水酸化ナトリウム水溶液をn-ヘキサデシルトリメチルアンモニウム・ブロミド(9.858 g、27.05 mmol)に加えた。これを室温で30分間撹拌させた
。その後、十分に乾燥させたシリカゲル(メルク・シリカゲル60)(16.853 g、280.5 mmol)を加え、さらに30分間撹拌させ、オートクレーブ中で水熱合成(115 ℃、20時間)した。ろ別、撹拌洗浄(脱イオン水 1L、2回)、120 ℃で一晩乾燥の後、これを550℃
で6時間焼成処理、メソポーラスシリカ体を得た(約12.5g)。サンプル1とする。
アルミニウムアセチルアセトナート錯体2.43g(7.50 mmol)をトルエン溶媒50mLに溶かし、実施例1で合成したメソポーラスシリカ体8.5gを加え、2時間環流処理した。その後、ロータリーエバポレーターで溶媒を留去し、さらに80℃で乾燥の後、550℃で8時間焼成処理、アルミニウム導入メソポーラスシリカ体を得た(約8.4g)。サンプル2とする。
市販の6−ヒドロキシ−2−ナフチルジスルフィドを0.070 g(0.200 mmol)と、市販
の3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン(0.099 g、0.40 mmol)を脱水ジメチルホルムアミド5mLに溶かした溶液を、窒素雰囲気下で120 ℃で42時間加熱し、目的と
する酸化還元応答性有機化合物を得た。
4-ヒドロキシチオフェノール(1.634 g、12.95 mmol)をメタノール30mL に溶かし、室温で2時間撹拌させた。ヨウ素(1.633 g、6.43mmol)をメタノール30mLに溶かし2 時間撹拌させた。ヨウ素溶液を4-ヒドロキシチオフェノール溶液に加えると褐色が消え、無色透明になった。この溶液をさらに室温で一晩撹拌させた。炭酸ナトリウム(2.016 g、19.02mmol)を水20mLに溶かし、一晩撹拌させた。この溶液を上記溶液に加え、30 分撹
拌させた。この溶液をろ別し、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去した。ジエチルエーテル100mLと脱イオン水100mLを加え、分液ロートにより分液し、エーテル層に無水硫酸マグネシウムを加え、一晩静置させた。このろ液をろ別し、この溶液の溶媒を減圧蒸発させて、固体を得た。クロロホルムを加え、加熱させて固体を溶かした後冷蔵庫で一晩冷やし、固体を析出させた。この溶液をろ別し、4-ヒドロキシ-1-フェニルジスルフィド
(0.296 g、1.182 mmol)を得た。この固体を0.0502 g(0.2005 mmol)用い、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン(0.099 g、0.40 mmol)を脱水ジメチルホルムアミ
ド5mLに溶かした溶液に加え、窒素雰囲気下で120 ℃で42時間加熱し、目的とする酸化
還元応答性有機化合物を得た。
実施例3で得られたジスルフィド溶液0.4 mLをトルエン100mlに溶かした溶液に、実
施例1で得たメソポーラスシリカ体を10.01 g加え、120 ℃、24時間で加熱還流した。ロ
ータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去させ、80 ℃で4時間減圧乾燥した。溶媒洗浄(ベンゼン400mLを用い計2回)し、酸化還元応答性有機置換基修飾−メソポーラスシリカを得た。
実施例3で得られたジスルフィド溶液0.4mLをトルエン100mLに溶かした溶液に、実施例2で得たアルミニウム導入メソポーラスシリカを10.01 g加え、120 ℃、24時間で加
熱還流した。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去させ、80 ℃で4時間減圧乾燥した。溶媒洗浄(ベンゼン400mLを用い計2回)し、酸化還元応答性有機置換基修飾−アルミニウム導入メソポーラスシリカを得た。サンプル3とする。
実施例4で得られたジスルフィド溶液0.4 mlをトルエン100mLに溶かした溶液に、実
施例2で得たアルミニウム導入メソポーラスシリカを10.01 g加え、120 ℃、24時間で加
熱還流した。ロータリーエバポレーターを用いて溶媒を留去させ、80 ℃で4時間減圧乾燥した。溶媒洗浄(ベンゼン400mLを用い計2回)し、酸化還元応答性有機置換基修飾−アルミニウム導入メソポーラスシリカを得た。
実施例6で得た酸化還元応答性有機置換基修飾−アルミニウム導入メソポーラスシリカ2gに、DL−ジチオスレイトール0.67g(4.34mmol)を40mLに溶かした脱イオン水溶液に加え、室温で16時間撹拌、ろ別、室温で放置、自然乾燥させて酸化還元応答性有機置換基修飾−アルミニウム導入メソポーラスシリカの還元体を得た。サンプル4とする。図2より、還元処理前のサンプル3には、ジスルフィド基(S−S)に相当する吸収が250nmにあるが、還元処理によりジスルフィド基の吸収が消失し、還元的に開裂して生成したチオール基の吸収が235nmに観測された。また、再酸化処理後では、還元処理前とほぼ同じスペクトルが得られ、再びジスルフィド基が生成したことを確認した。
実施例6で得た酸化還元応答性有機置換基修飾−アルミニウム導入メソポーラスシリカ2gに、L-システイン(3.649 g、30.09 mmol)を脱イオン水100 mlに溶かした水溶液に加
え、室温で16時間撹拌、ろ別、室温で放置、自然乾燥させて酸化還元応答性有機置換基修飾−アルミニウム導入メソポーラスシリカの還元体を得た。
実施例8で得た酸化還元応答性有機置換基修飾−アルミニウム導入メソポーラスシリカ還元体1gをヨウ素0.7gを溶解させた脱イオン水50mL、酢酸50mLの混合溶液に加え、50℃で16時間反応させた。ろ別、室温で放置、自然乾燥させて酸化還元応答性有機置換基修飾−アルミニウム導入メソポーラスシリカの再酸化体を得た。サンプル5とする。
実施例8で得た酸化還元応答性有機置換基修飾−アルミニウム導入メソポーラスシリカ還元体1gをシャーレ上にごく薄くなるように展開し、空気中で408時間放置し、空気中
の酸素により再酸化させ酸化還元応答性有機置換基修飾−アルミニウム導入メソポーラスシリカの再酸化体を得た。
α−メチルスチレン0.118g(1 mmol)を溶かしたトルエン溶液10 mlに、修飾アルミニウムメソポーラスシリカを20 mg加え、窒素雰囲気下、110℃で2時間反応させた。α−メ
チルスチレンの3つの二量化生成物は、それぞれガスクロマトグラフィーにより定量した。表1には、それぞれの酸化還元応答性有機置換基修飾−アルミニウム導入メソポーラス
シリカの構造特性とα−メチルスチレンの二量化反応の収率を示す。また図3には、酸化還元応答性有機置換基修飾−アルミニウム導入メソポーラスシリカによる触媒反応進行の概念図を示す。
実施例5で合成した酸化還元応答性有機置換基修飾−メソポーラスシリカ2gに、L-システイン(3.649 g、30.09 mmol)を脱イオン水100 mlに溶かした水溶液に加え、室温で2
0時間撹拌、ろ別、室温で放置、自然乾燥させて酸化還元応答性有機置換基修飾−メソポーラスシリカの還元体を得た。このサンプル2gをフェナントレン1gを溶解させたn−ヘキサン溶液50mLに加え、20時間撹拌の後、ろ別、80℃で6時間で乾燥した。このサンプルを、ヨウ素1.2gを溶解させた脱イオン水100mL、酢酸50mLに加え、50℃で20時間反応させた。ろ別、80℃で6時間乾燥させ、その後、十分量のn−ヘキサンで洗浄できるフェナントレンを除去した。TGAの結果より、得られたサンプルの約5重量%分が内包されたフェナントレンであった。このサンプル0.5を、DL−ジチオスレイトール0.67g(4.34mmol)を40mLに溶かしたアセトン溶液に加え、室温で20時間撹拌した。ろ別、80℃での乾燥の後、TGA分析の結果、内包されていたフェナントレンの90%以上が溶媒中に放出されていた。
本特許で新しく提案する細孔内への反応物質のアクセスを細孔出口近傍の有機置換基の架橋等の状態により抑制し、触媒反応の進行を制御することは、化学工業において、触媒反応の稼働を分子レベルで制御できることとなる。例えば、本特許においては、反応を進行させたいときは還元剤を反応系に加え、反応を停止させたい時は酸化剤を加えることで
、触媒反応の進行の制御を完全に行うことができる。このように、化学工業における生産の開始と停止を、単に反応系にわずかな量の添加物を加えるだけで行えることは、化学工業における生産の機動性、すなわち需要に合わせた機敏な生産調整等、化学プロセスの効率化に寄与できると期待される。
Claims (9)
- 一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料であって、酸化剤もしくは還元剤の作用により可逆的に結合を形成もしくは開裂させ得る官能基を細孔口に有するメソポーラス無機材料。
- 前記無機材料がシリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、リン酸スズ、リン酸ニオブ、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、並びにそれらの酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物、テルル化物、複合酸化物及び複合塩からなる群から選ばれるいずれか1種である請求項1に記載のメソポーラス無機材料。
- 前記無機材料が細孔内部で触媒部位を有する請求項1記載のメソポーラス無機材料。
- 前記官能基の酸化型がジスルフィド基(−SS−)、還元型が2つのチオール基(−SH)から構成される、請求項1〜3のいずれかに記載のメソポーラス無機材料。
- 細孔内に機能性物質が充填されてなる請求項1〜4のいずれかに記載のメソポーラス無機材料。
- 機能性物質が細孔内に充填されたメソポーラス無機材料の製造方法であって、
(1)水溶液中で界面活性剤を鋳型として、一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料を調製する工程、
(2)界面活性剤を除去する工程、
(3)工程(2)において得られたメソポーラス無機材料に、酸化剤の作用により可逆的に結合を形成し得る還元型官能基をメソポーラス無機材料の細孔口に導入する工程、
(4)機能性物質をメソポーラス無機材料の細孔内に充填する工程、及び
(5)(3)で導入した官能基に酸化剤を作用させて可逆的に結合を形成する工程を含む、製造方法。 - 機能性物質の放出を制御する方法であって、(1)請求項5に記載のメソポーラス無機材料に還元剤を与えて官能基の結合を可逆的に開裂して機能性物質を放出させる工程、及び(2)酸化剤により官能基の結合を形成して(1)における機能性物質の放出を停止させる工程を有する、方法。
- 細孔内に触媒部位を有し、かつ、酸化剤もしくは還元剤の作用により可逆的に結合を形成もしくは開裂させ得る官能基を細孔口に有するメソポーラス無機材料に触媒の作用を受け得る物質を共存させた触媒システムにおいて、酸化剤もしくは還元剤を使用して細孔内で起こる触媒反応の進行を制御する触媒システム。
- 一次元細孔が規則的に配列した構造を有し、かつ、前記細孔内に触媒部位を有するメソポーラス無機材料系触媒であって、酸化剤もしくは還元剤の作用により可逆的に結合を形成もしくは開裂させ得る官能基を細孔口に有する触媒。
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