JP2004026636A - 徐放機能を有するメソポーラス無機材料 - Google Patents

徐放機能を有するメソポーラス無機材料 Download PDF

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Abstract

【課題】内包物質の放出の制御が可能な一次元細孔構造のメソポーラスシ無機材料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料であって、外部刺激による化学反応により結合する官能基を細孔口に有するメソポーラス無機材料。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、官能基により修飾された新規なメソポーラス無機材料、その製造方法及び利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
化学物質を固体材料内に包含して内部から外部へ徐放する機能を用いる技術は、コントロール・リリース・システムと呼ばれ、近年注目されている技術である。かかる技術は、例えば、医薬、農薬、化粧品類、種々の触媒、肥料、香料等の分野で、種々の機能を発揮する化学物質を、与えられた環境に応じて、必要な時に必要な量供給する技術として産業的に利用できる。このような技術は、化学物質の効率的な利用のみならず、環境へのリスク(化学物質による汚染)の低減や医療における副作用の抑制(ドラッグ・デリバリー・システム)等の先端技術とも直結している。
【0003】
コントロール・リリース・システム技術として従来提案されているのは、高分子ゲルの中に化学物質を混合したり、化学物質と高分子材料の複合体を作るという手段が大部分を占めていた。このようなコントロール・リリース・システムでは連続的に化学物質が放出されるため、化学物質の徐放の速度を遅くすることはできても、必要な時に必要な量だけ化学物質を徐放するというオン−オフ制御を備えたものではなかった。
【0004】
オン−オフ制御を備えたコントロール・リリース・システムとしては、電極を用いたデバイスによるもの等が提案されている(特許文献1〜6参照)。しかしながら、これらシステムでは電場による信号で化学物質を徐放するため、電源・電極およびそれらを連結する系を構築する必要があり、このような系を構築できない場合、例えば生体内等での応用は困難である。従って、オン−オフ制御を備え、電源等と結びつかない独立したコントロール・リリース・システムを微少な系で作ることが求められている。
【0005】
シリカ(ゲル)は、環境や生体へのリスクのほとんどない無害な化合物であるため、広く実用化されている材料である。その一つの特徴は、材料内部に大きな細孔を持つことであり、これにより内部に種々の化学物質を吸着、内包することができる。シリカ(ゲル)を用いた内包化学物質の外部への徐放は、コントロール・リリース・システムに応用できると期待されるが、そのまま用いた場合には、やはり徐放のオン−オフ制御機能はない。近年、シリカゲルやカプセル状シリカに徐放のオン−オフ制御機能を付与した技術が提案されている(特許文献7〜9参照)が、シリカゲルの細孔は均一でないので、内包物の精密な徐放性の制御は充分ではなく、外部へのアクセス、すなわち外部への出口がより均一な材料を用いることが求められている。
【0006】
このような材料として、細孔の直径や配置構造が規則正しいMCM−41等のヘキサゴナル・メソポーラスシリカが挙げられる。最近、MCM−41内に包含された薬物の自然拡散による徐放の特性についての報告がなされた(非特許文献1参照)が、徐放のオン−オフ制御技術は有していない。
【0007】
【特許文献1】
特開平05−269373号公報
【0008】
【特許文献2】
特開平05−261278号公報
【0009】
【特許文献3】
特開平05−231560号公報
【0010】
【特許文献4】
特開平05−221469号公報
【0011】
【特許文献5】
特開平05−221468号公報
【0012】
【特許文献6】
特開平05−212277号公報
【0013】
【特許文献7】
特開2000−279817号公報
【0014】
【特許文献8】
特開2001−131249号公報
【0015】
【特許文献9】
特開2001−213992号公報
【0016】
【非特許文献1】
M.Vallet−Regiら、Chem.Mater.Vol.13,308頁、2001年
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、内包物質の放出制御など有用な機能を有する新規なメソポーラス無機材料及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料の細孔口に可逆的に結合する官能基を導入し、官能基の可逆的な結合及び開裂による細孔の開閉によって、細孔内の内包物の放出が制御できることを見いだし、更に鋭意検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0019】
即ち、本発明は下記の各項に示す発明に係る。
【0020】
1.一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料であって、外部刺激による化学反応により結合する官能基を細孔口に有するメソポーラス無機材料。
【0021】
2.無機材料がシリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、リン酸スズ、リン酸ニオブ、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、並びにそれらの酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物、テルル化物、複合酸化物及び複合塩からなる群から選ばれるいずれか1種である項1に記載のメソポーラス無機材料。
【0022】
3.外部刺激が、光、熱、放射線、酸、アルカリ、架橋剤、磁気及びイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である項1記載のメソポーラス無機材料。
【0023】
4.化学反応が、二量化反応、多量化反応、重合反応、縮合反応、付加反応及び錯形成反応からなる群から選ばれる少なくとも1種である項1に記載のメソポーラス無機材料。
【0024】
5.官能基が、不飽和基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、カルバメート基及びシラノール基からなる群から選ばれる少なくとも1種である項1に記載のメソポーラス無機材料。
【0025】
6.官能基がクマリン誘導体由来の官能基である項1に記載のメソポーラス無機材料。
【0026】
7.細孔内に機能性物質が充填されている項1に記載のメソポーラス無機材料。
【0027】
8.機能性物質が、ステロイド化合物、ビタミン化合物、ホルモン化合物、薬理活性化合物、農薬化合物、生理活性化合物、アミノ酸、糖類、脂肪酸及び核酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である項7に記載のメソポーラス無機材料。
【0028】
9.メソポーラス無機材料の製造方法であって、
(1)水溶液中で界面活性剤を鋳型として、一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料を調製する工程、
(2)工程(1)において得られたメソポーラス無機材料に含まれる界面活性剤を除去する前に、外部刺激による化学反応により結合する官能基をメソポーラス無機材料の細孔口に導入する工程、及び
(3)界面活性剤を除去する工程、
を含む製造方法。
【0029】
10.工程(1)と工程(2)の間に、酸処理を行うことを特徴とする項9に記載の方法。
【0030】
11.機能性物質が細孔内に充填されたメソポーラス無機材料の製造方法であって、
(1)水溶液中で界面活性剤を鋳型として、一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料を調製する工程、
(2)工程(1)において得られたメソポーラス無機材料に含まれる界面活性剤を除去する前に、外部刺激による化学反応により結合する官能基をメソポーラス無機材料の細孔口に導入する工程、
(3)界面活性剤を除去する工程、
(4)機能性物質をメソポーラス無機材料の細孔内に充填する工程、及び
(5)(2)で導入した官能基を外部刺激による化学反応により結合させる工程を含む製造方法。
【0031】
12.工程(1)と工程(2)の間に、酸処理を行うことを特徴とする項11に記載の方法。
【0032】
13.化学物質の取り込み及び/又は除去方法であって、項1に記載のメソポーラス無機材料の細孔内に化学物質を取り込んだ後、外部刺激により官能基を結合させる工程を有する方法。
【0033】
14.機能性物質の放出を制御する方法であって、(1)請求項7に記載のメソポーラス無機材料に外部刺激を与えて官能基の結合を開裂して機能性物質を放出させる工程、及び(2)外部刺激により官能基を結合して(1)における機能性物質の放出を停止させる工程を有する機能性物質の放出を制御する方法。
【0034】
15.ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカであって、光による二量化反応により結合する有機官能基を細孔口に有するメソポーラスシリカ。
【0035】
16.有機官能基が不飽和基である項15に記載のメソポーラスシリカ。
【0036】
17.有機官能基がクマリン誘導体由来である項15に記載のメソポーラスシリカ。
【0037】
18.ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカであって、細孔内に機能性物質が充填され、二量化した有機官能基により細孔口が塞がれたメソポーラスシリカ。
【0038】
19.有機官能基が不飽和基である項18に記載のメソポーラスシリカ。
【0039】
20.有機官能基がクマリン誘導体由来である項18に記載のメソポーラスシリカ。
【0040】
21.光による二量化反応により結合する有機官能基を細孔口に有するメソポーラスシリカの製造方法であって、
(1)水溶液中でヘキサゴナル構造を形成し得る界面活性剤を鋳型として、ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカを調製する工程、
(2)工程(1)において得られたメソポーラスシリカに含まれる界面活性剤を除去する前に、光による二量化反応により結合する有機官能基をヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカに導入する工程、及び
(3)界面活性剤を溶剤を用いて除去する工程
を含む製造方法。
【0041】
22.工程(1)と工程(2)の間に、酸処理を行う項21に記載の方法。
【0042】
23.機能性物質が細孔内に充填されたヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカの製造方法であって、
(1)水溶液中でヘキサゴナル構造を形成し得る界面活性剤を鋳型として、ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカを調製する工程、
(2)工程(1)において得られたメソポーラスシリカに含まれる界面活性剤を除去する前に、光により二量化し得る有機官能基をヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカに導入する工程、
(3)界面活性剤を溶剤を用いて除去する工程、
(4)機能性物質をメソポーラスシリカの細孔内に充填する工程、及び
(5)有機官能基を光により二量化する工程
を含む製造方法。
【0043】
24.工程(1)と工程(2)の間に、酸処理を行う項23に記載の方法。
【0044】
25.化学物質の取り込み及び/又は除去方法であって、項15に記載のメソポーラスシリカの細孔内に化学物質を取り込んだ後、有機官能基を光により二量化する工程を有する方法。
【0045】
26.機能性物質の放出を制御する方法であって、項18に記載のメソポーラスシリカの二量化した有機官能基を開裂させることにより機能性物質を放出させる方法。
【0046】
27.機能性物質の放出を制御する方法であって、項18に記載のメソポーラスシリカに二量化した有機官能基が開裂する波長の光を照射することにより機能性物質を放出させる方法。
【0047】
28.機能性物質の放出を制御する方法であって、項18に記載のメソポーラスシリカに、二量化した有機官能基の結合が開裂する波長の光を照射することにより機能性物質を放出させ、有機官能基が二量化する波長の光を照射することにより機能性物質の放出を停止させることにより機能性物質の放出を制御する方法。
【0048】
【発明の実施の形態】
本発明のメソポーラス無機材料は、一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料であって、化学反応により可逆的に結合する官能基を細孔口に有するメソポーラス無機材料である。さらに、本発明には、前記メソポーラス無機材料の細孔内に機能性物質が充填されたメソポーラス無機材料も含まれる。
【0049】
一次元細孔が規則的に配列した構造
一次元細孔が規則的に配列した構造とは、均一な孔径を有し、一次元細孔が規則的に配列された構造であれば特に限定されることはない。規則的に配列されたとは、細孔が一軸配向性を有して整列していることを意味する。均一な孔径とは、各細孔の孔径が一定の範囲内であることをいう。孔径の大きさは、細孔に封入又は充填する化合物の大きさ等により適宜設定し得るが、通常1〜30nm、好ましくは1.5〜15nmである。クマリン誘導体由来の官能基を用いる場合には、1.5〜5nm、更には2〜4nmの範囲が好ましい。細孔の大きさは、界面活性剤を変えることにより作り分けることができる。
【0050】
一次元細孔が規則的に配列した構造としては、具体的には、ヘキサゴナル構造、オルトロムビック構造、モノクリニック構造が挙げられる。
【0051】
このようなメソポーラス無機材料は、規則的な細孔構造を形成し得る界面活性剤を鋳型として調製することができる。
【0052】
無機材料
本発明の材料となる無機材料としては、適宜所望のものを用いることができる。例えば、シリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、リン酸スズ、リン酸ニオブ、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、ならびにそれらの酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物、テルル化物又は複合酸化物、複合塩などを用いることができる。
【0053】
このうち、特にシリカ等の含ケイ素酸化物が耐熱性、耐薬品性、及び機械的特性に優れる点で好ましい。
【0054】
官能基
本発明のメソポーラス無機材料が細孔口に有する官能基としては、外部刺激による化学反応により結合を形成するものであれば、特に限定されることはない。外部刺激による化学反応による結合とは、可逆的又は非可逆的な結合であって、外部刺激の条件に応じて、結合の形成及び結合の開裂を行い得る結合をいう。具体的には、光の照射により二量体・単量体と変化するものや、酸化還元反応により結合の形成や開裂が行われるものなどをいう。
【0055】
可逆的な結合を形成するものは細孔内部に機能性物質を一時的に貯蔵する材料として使用する場合に好ましい。非可逆的な結合を形成するものは細孔内部に機能性物質を半永久的に貯蔵する材料として使用する場合に好ましい。
【0056】
外部刺激の種類は、特に限定されないが、例えば、光、熱、放射線、酸、アルカリ、架橋剤、磁気及びイオンが挙げられる。このような外部刺激は、光照射、加熱、冷却、放射線照射、pH値の変化、酸及び/又はアルカリの添加、共存イオンの変化、共存化学物質の変化、外部磁場の変化等によって与えられる。
【0057】
化学反応の種類も特に限定されず、例えば、二量化反応、多量化反応、重合反応、縮合反応、付加反応、錯形成反応などが挙げられる。具体的には、光による二量化反応等が挙げられる。
【0058】
結合の種類も特に限定されず、例えば、水素結合、イオン結合、共有結合、配位結合、ファンデルワールス結合等が挙げられる。
【0059】
外部刺激により結合する官能基としては、例えば、不飽和基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、カルバメート基及びシラノール基などが挙げられる。不飽和基としては、ビニル基、α、β不飽和ケトン基などが挙げられる。エーテル基としては−O−R(Rは炭素数1〜6のアルキル基)などが挙げられる。エステル基としては、−COOR(Rは炭素数1〜6のアルキル基)等が挙げられる。具体的には、クマリン誘導体由来のα、β−不飽和ケトン基などが例示できる。
【0060】
これらの官能基によって形成される結合としては、例えば、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、アセタール結合、カルバメート結合などが挙げられる。
【0061】
本発明において、このような官能基は、上記一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料の細孔口に導入される。細孔口とは、より詳しくは細孔の出口又は入口の近傍であって、概ね外部表面から1〜5ナノメートル程度の範囲である。
【0062】
官能基の導入方法としては、例えば、メソポーラス無機材料を合成した後に導入するものと、合成する時に同時に導入するもの等が挙げられる。このうち、合成した後に導入するものが細孔出口に優先的に官能基を導入する点で好ましい。
【0063】
このような官能基は、外部刺激の条件の変化により細孔を開閉する「ドア」のような機能を有することとなる。このドアは、例えばある波長の紫外線により閉まり、また別の波長の紫外線によって開くことができる。この「ドア」を有するメソポーラス無機材料の内部に化学物質を予め入れておいて細孔の出口の「ドア」を閉めておけば、その化学物質は材料外部へ放出されることはなく、貯蔵する事ができる。そして、この化学物質が必要となった時、結合を開裂することによって、化学物質を材料の外へと放出することができる。
【0064】
以下、細孔口に官能基を有する本発明のメソポーラス無機材料の具体的な作成方法について、一例としてメソポーラスシリカの場合を挙げて説明する。
【0065】
(i)   鋳型界面活性剤入り一次元細孔構造のメソポーラスシリカの調製
まず、界面活性剤を鋳型として調製した一次元細孔構造のメソポーラスシリカの鋳型除去前の粗生成物を得る。かかる粗生成物は、例えば、水溶液中でヘキサゴナル構造を形成する界面活性剤とシリカ源を原料として用いた従来公知の方法により得ることができる。
【0066】
界面活性剤としては、水溶液中で一次元細孔が規則的に配列した構造を形成するものであれば特に限定されるものではなく、一般にメソポーラスシリカを製造する際に用いられている界面活性剤を用いることができる。具体的には、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化オクタデシルトリメチルアンモニウム、臭化デシルトリメチルアンモニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルジメチルエチルアンモニウム等の脂肪族第四級アンモニウム塩、ヘキサデシルアミン等の脂肪族アミン塩、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩等を挙げることができる。
【0067】
シリカ源としては、一次元細孔が規則的に配列した構造のメソポーラスシリカを得ることができる限り特に限定されない。例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラ−n−プロピルシランなどを用いることができる。
【0068】
これら界面活性剤とシリカ源はいずれも水溶液として用いられるが、その水溶液は別々に調製する。
【0069】
水溶液中の界面活性剤の濃度は、一次元細孔が規則的に配列した構造を形成するような濃度であればよく、界面活性剤の種類に応じて適宜設定することができるが、通常、0.2〜2M程度である。
【0070】
界面活性剤の水溶液には、必要に応じてアルカリ剤(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラメチルアンモニウム)を添加してもよい。アルカリ剤を添加する場合の使用量は、界面活性剤に対して、1〜1.5当量程度が好ましい。
【0071】
水溶液中のシリカ源の濃度は、特に限定されるものではないが、通常、0.5〜4M程度である。
【0072】
これら水溶液は、例えば室温〜40℃程度で0.5〜5時間程度撹拌しながら混合する。
【0073】
この場合、界面活性剤の水溶液とシリカ源の水溶液との混合割合は、界面活性剤により形成された一次元細孔が規則的に配列した構造の鋳型にシリカ源が充分に充填されるような量である限り特に限定されるものではない。通常、ヘキサゴナル構造の場合には、界面活性剤の水溶液(vol):シリカ源の水溶液(vol)=1:4〜1:1程度となるような量である。また、キュービック構造の場合は界面活性剤の水溶液(vol):シリカ源の水溶液(vol)=1:1〜1.5:1程度、ラメラー構造の場合は界面活性剤の水溶液(vol):シリカ源の水溶液(vol)=1.5以上:1程度である。
【0074】
その後、混合液のpHを9〜12程度、好ましくは10〜11程度とするために、硫酸、硝酸、塩酸、次亜塩素酸などの無機酸を加えて、室温〜80℃程度で、0.5〜6時間程度撹拌する。加える無機酸の濃度や量は、pHが上記した範囲内の所望の値程度となれば特に限定されるものではないが、濃度が0.5〜4M程度、好ましくは1〜3M程度、添加量が、界面活性剤とシリカ源の混合液100mLに対して20〜100mL程度、好ましくは50〜70mL程度である。
【0075】
沈殿が生成した後、沈殿物を濾別し、水で洗浄した後、80〜130℃程度、好ましくは90〜110℃程度にて、10〜40時間程度、好ましくは12〜26時間程度乾燥することにより、鋳型界面活性剤入りの一次元細孔構造のメソポーラスシリカを得ることができる。
【0076】
上記のようにして沈殿物が生成した後、そのまま沈殿物を濾別して乾燥してもよいが、濾別する前に、酸処理を施してもよい。
【0077】
酸処理としては、例えば、以下に挙げるような方法が挙げられる。
【0078】
まず、沈殿を含む混合液を、80〜120℃程度で20〜30時間静置する。次いで、中性の塩(例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなど)をシリカ源に含まれるケイ素原子を100%とした場合、60〜90mol%程度、好ましくは70〜80mol%程度となるようにして添加する。この際、塩は小量の水に溶解させておく。
【0079】
その後、液のpHを9〜12程度、好ましくは10〜11程度となるように、無機酸(例えば、硫酸、硝酸、塩酸、次亜塩素酸などの無機酸)を加える。無機酸の濃度は、pHが上記した範囲内の所望の値となる限り特に限定されるものではないが、0.5〜4M程度、好ましくは1〜3M程度である。
【0080】
無機酸を加えた後、沈殿を含む溶液を80〜120℃程度で20〜30時間静置する。
【0081】
このような酸処理を行った後、再び、混合液のpHが9〜12程度、好ましくは10〜11程度の値となるように無機酸を加え、沈殿を含む溶液を80〜120℃程度で20〜30時間静置する操作を繰り返してもよい。酸を加える場合、2回目目以降は、塩を加えなくてもよい。
【0082】
酸処理は、何回繰り返して行ってもよいが、通常、1〜5回程度、好ましくは2〜3回程度繰り返すのが好ましい。所定の回数の酸処理を終えた後、沈殿物を濾別して上記と同様にして乾燥すればよい。
【0083】
このような酸処理を行うことにより、得られるメソポーラスシリカの熱安定性が向上する。
【0084】
このようにして、一次元細孔が規則的に配列した構造のメソポーラスシリカを得ることができる。なお、この時点で、界面活性剤はメソポーラスシリカの細孔に入った状態である。界面活性剤を内包したまま二量化性有機官能基を導入することにより、有機官能基がメソポーラスシリカの細孔の内部には入り込まず、優れた徐放性を有するメソポーラスシリカを得ることができる。
【0085】
(ii)  有機官能基の導入
有機官能基の導入について、光照射により二量化する官能基を導入する場合を例として説明する。
【0086】
光により二量化する有機官能基(以下、「二量化性官能基」という場合がある)をメソポーラスシリカに導入するために、二量化し得る有機官能基を有する化合物(以下、「二量化性化合物」という場合がある)を用いる。このような化合物としては、紫外線等の光照射により可逆的に二量化するもの、或いは紫外線などの光照射により非可逆的に二量化するもののいずれであってもよい。物質の徐放制御を行う場合には、光照射により可逆的に二量化するものが好ましい。
【0087】
このような化合物としては、例えば、α,β−不飽和ケトンが挙げられる。具体的に、光照射により可逆的に二量化する有機基を有する化合物としては、7−ヒドロキシクマリン、3,4−ジヒドロキシクマリン、4−ヒドロキシクマリン、7−アミノ−4−メチルクマリン等の水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基[例えば、−CO−OR(Rは、例えば、炭素数1〜6程度のアルキル基である。)]等の置換基を少なくとも1個、好ましくは1〜2個有するクマリン誘導体を提示することができる。
【0088】
また、非可逆的に光二量化する有機基を有する化合物としては、例えば、4−ヒドロキシカルコン、4’−ヒドロキシカルコン、4,4’−ヒドロキシカルコン等の水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エステル基[例えば、−CO−OR(Rは、例えば、炭素数1〜6程度のアルキル基である。)]等の置換基を少なくとも1個、好ましくは1〜2個有するカルコン類を挙げることができる。
【0089】
二量化性化合物をメソポーラスシリカに導入するために、例えば、二量化性化合物にオレフィン基を導入した後、ヒドロシラン類を反応させて二量化性基含有シラン化合物を合成する。
【0090】
二量化性化合物へのオレフィン基の導入は、例えば、オレフィン基を有する有機ハロゲン化物を二量化性化合物の水酸基などの官能基に常法に従って、例えば溶媒中、塩基の存在下で、反応させることにより行うことができる。オレフィン基を有する有機ハロゲン化物としては特に限定されないが、塩化アリル、臭化アリル、ヨウ化アリル、3−臭化シクロヘキセン、6−臭化−1−ヘキセン等の炭素数3〜8程度のオレフィン基含有有機ハロゲン化物を挙げることができる。オレフィン基を有する有機ハロゲン化物の種類(炭素数)は、二量化し得る有機基を有する化合物の種類に応じて、二量化した後、メソポーラス無機材料の細孔の入り口を塞ぐことができるようなものを、適宜選択することができる。
【0091】
溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等が挙げられる。特に、アセトンが好ましい。塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カリウム、炭酸セシウム、ナトリウムメトキシド、カリウム−t−ブトキシド等が挙げられる。塩基の使用量は、例えば、7−ヒドロキシクマリンなどの二量化性化合物に対し、1〜3当量であればよい。反応温度は、例えば、40〜100℃程度であればよく、好ましくは、60〜80℃である。反応時間は、例えば、3〜24時間程度である。
【0092】
こうして得られたオレフィン含有二量化性化合物に、アルコキシシランを、常法に従って反応させ二量化性基含有シラン化合物を得る。ここで用いるアルコキシシランとしては、一次元細孔構造のメソポーラスシリカのシラノール基と反応して、二量化性官能基を該メソポーラスシリカに導入できるものなら特に限定されないが、例えば、少なくとも1個のアルコキシ基を有する化合物、好ましくはHSiR(式中、Rは、同一又は異なっても良く、炭素数1〜4程度のアルキル基又は炭素数1〜3程度のアルコキシ基を示し、Rの少なくとも1つが炭素数1〜3程度のアルコキシ基である。)で表されるアルコキシシランが挙げられる。具体的には、トリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ジエトキシメチルシラン、エトキシジメチルシラン等を挙げることができる。
【0093】
当該反応は、溶媒の存在下、触媒の存在下に反応させることにより行うことができる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ベンゼン、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。特に、トルエン、キシレンが好ましい。オレフィン含有二量化性化合物の使用量としては、アルコキシシランに対して、例えば、1〜1.5当量程度が好ましく、特に、1〜1.2当量程度が好ましい。触媒としては、例えば、白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体、白金−2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニル−シクロテトラシロキサン錯体、塩化白金酸、活性炭担持白金、アルミナ担持白金等の白金触媒、ウィルキンソン錯体(RhCl(PPh)、活性炭担持ロジウム、アルミナ担持ロジウム等のロジウム触媒、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、活性炭担持パラジウム等のパラジウム触媒等が挙げられる。当該触媒の使用量は、アルコキシシランに対して、例えば、0.005〜0.5mol%程度であればよく、好ましくは0.02〜0.1mol%程度である。反応温度は、例えば、0〜80℃程度であればよく、好ましくは、室温(25℃付近)〜30℃程度である。反応時間は、例えば、10分〜4時間程度である。
【0094】
こうして得られた二量化性基含有シラン化合物を一次元細孔構造のメソポーラスシリカに導入する際には、鋳型である界面活性剤を焼成や抽出等で除いた一次元細孔構造のメソポーラスシリカは用いずに、鋳型界面活性剤で細孔が充填された状態のままのメソポーラスシリカを用いるのが好ましい。細孔には鋳型の界面活性剤が充填されているため、二量化性基含有シラン化合物は、細孔の内部には入り込まず、細孔の入り口のシラノール基とのみ反応し、導入されるからである。
【0095】
一次元細孔構造のメソポーラスシリカを溶媒(例えば、n−ヘキサン、トルエンなど)中に懸濁させ、次いで二量化性基含有シラン化合物を加えて、室温〜80℃程度で10分〜6時間程度反応させることにより、二量化性官能基をメソポーラスシリカの細孔の入り口に導入することができる。
【0096】
二量化性基含有シラン化合物の使用量は、導入後二量化することにより一次元細孔構造のメソポーラスシリカの細孔に内包(充填)させる機能性物質を閉じこめるようなことができるような量であれば特に限定されるものではないが、通常、鋳型界面活性剤が充填されたメソポーラスシリカ100重量部に対して、2〜20重量部程度である。
【0097】
上記の方法以外にも、一次元細孔構造のメソポーラス無機材料の細孔口に、二量化性官能基に代えて、種々の架橋性官能基、例えばエステル基やアミノ基等を公知の反応方法により導入し、容易に開裂できるような結合、例えば、エステル結合、アミド結合、アセタール結合などを形成させておけば、適当な方法により開裂させて、化学物質の取り込み乃至除去や機能性物質の放出制御などを行うことができる。
【0098】
(iii)   界面活性剤の除去
次いで、二量化性官能基をメソポーラスシリカに導入後、細孔内に残留する界面活性剤を、溶媒抽出、或いは、焼成などにより除去する。
【0099】
クマリン基等の熱に弱い有機官能基を用いる場合には、焼成処理により残留する界面活性剤を除去すると、導入した二量化性官能基が消失してしまうので、溶媒で界面活性剤を除去することが好ましい。
【0100】
溶媒抽出の方法は、特に限定されないが、用いた界面活性剤を良好に溶解し得るアルコール(例えば、メタノール、エタノールなどの脂肪族アルコール類)で除去するのが好ましい。アルコールを用いる場合は、塩酸との混合液として、それを用いて除去するのが好ましい。塩酸を用いる場合、混合液中の塩酸の濃度は、特に限定されないが、0.5〜5M程度が好ましい。
【0101】
焼成の場合、温度は特に限定されないが、500〜600℃程度が好ましい。
【0102】
本発明には、このようにして得られた一次元細孔構造のメソポーラスシリカであって、二量化し得る有機官能基を細孔の入り口に有するメソポーラスシリカ自体も含まれる。このようなメソポーラスシリカにおいて、「二量化し得る有機官能基」は、未だ二量化しておらず、細孔の入り口は開いた状態である。また、有機官能基は細孔の入り口に導入されており、細孔の内部にはかかる有機官能基は実質的に導入されていない。二量化し得る有機官能基は、当該官能基が二量化すると細孔の入り口を塞ぐことができるような位置に導入されている。
【0103】
iv )機能性物質の充填及び二量化性官能基の二量化
このように合成した二量化性官能基導入メソポーラスシリカは、該官能基を二量化させることにより細孔の入り口に蓋をして塞ぐことが可能となる。
【0104】
二量化は、官能基の種類に応じた波長の紫外線照射等の光照射により行うことができる。照射時間は、二量化する官能基の量等に応じて適宜設定することができ、例えば二量化性基の吸収ピークを確認しながら設定することができる。
【0105】
二量化性化合物としてクマリン誘導体などの光による二量化を可逆的に行うことができる基を導入した場合は、二量化は、波長310nm以上の紫外線(二量化性化合物としてクマリン誘導体を用いた場合は、通常、310nm〜340nm程度の範囲の光)を照射することにより行うことができる。この際用いるランプは、波長310nm以上の紫外線を照射できるものなら特に限定されないが、高圧水銀ランプが好ましい。高圧水銀ランプを用いる場合、耐熱性の硬質ガラスジャケットを通して行うと、波長310nm以下のものを除くことができる。一方、二量化した官能基は、二量化性化合物としてクマリン誘導体を用いた場合、250nm付近(例えば、240〜260nm付近)の紫外線を照射することで開裂させ、単量化することもできる。かかる波長の紫外線照射は、低圧水銀ランプで石英ガラスの容器を用いて行うことができる。このような可逆的な変化は、紫外線スペクトルで光二量化性基の吸収(クマリン誘導体の場合は、310〜330nmの吸収)の有無を調べることで確認できる。
【0106】
このようにして、二量化を可逆的に行うことができるクマリン誘導体等の二量化及び単量化反応を利用することにより、メソポーラスシリカの細孔に内包させた機能性物質の、細孔外への徐放のオン−オフ制御が可能になる。即ち、二量化した有機官能基の結合が開裂する波長の光を照射することにより機能性物質を細孔外に放出させ、有機官能基が二量化する波長の光を照射することにより機能性物質の放出を停止させることができ、これにより機能性物質を、所望の場所で所望の量を、放出させることが可能になる。また、このようなオン−オフ制御は外部刺激の条件を変化させて繰り返し行うことができる。
【0107】
クマリン誘導体由来の官能基を導入したメソポーラス無機材料において、官能基の結合及び開裂により細孔の開閉を行い、細孔内化合物の放出・貯蔵を行う様子を図1に示す。
【0108】
光により二量化した基を開裂できない場合は、メソポーラスシリカへの結合の態様に応じて開裂させればよく、例えば、エステル結合、アミド結合などの場合は、酸などを用いた加水分解反応によりこれら結合を開裂させ、機能性物質を細孔外に放出させることが可能である。このように、不可逆的な結合の場合であっても、所望の場所又は時間で細孔内に閉じこめた機能性物質を放出させるオン−オフ制御を行うことができる。
【0109】
メソポーラスシリカの細孔内に充填させる物質としては、細孔内に入ることができる機能性物質なら特に限定されるものではなく、用途に応じた物質を適宜選択することができる。例えば、コレスタン、コレステロール、プロゲステロン、テストステロン、エストラジオール等のステロイド化合物や、ビタミンA、ビタミンD等のビタミン化合物、アドレナリン、ノルアドレナリン等のホルモン化合物、ペニシリン、イブプロフェン等の薬理活性化合物、リン酸エステル類等の農薬化合物、アルカロイドやプロスタグランジン等の生理活性化合物、オリゴペプチドを含むアミノ酸、単糖類、多糖類を含む糖類、脂肪を含む脂肪酸及びオリゴヌクレオチドを含む核酸等を用いることができる。
【0110】
機能性物質を細孔内に充填する方法としては、機能性物質の種類等に応じて適宜選択することができるが、例えば、官能基が二量化していない状態(オフの状態)の本発明メソポーラスシリカを、機能性物質を含む液体に浸漬し、細孔に機能性物質が導入させ、その後官能基の二量化を行って細孔の入り口を塞ぐことができる。
【0111】
充填させる方法として、二量化性基官能基としてクマリン誘導体を用い、ステロイドの一種であるコレスタンを機能性物質として用いた場合の具体例を以下に示す。
【0112】
コレスタンのn−ヘキサン溶液(コレスタンの濃度や溶液の量は特に限定されない)にクマリン誘導体有機基修飾メソポーラスシリカを浸漬する(24時間程度)。その後、メソポーラスシリカをろ別し、n−ヘキサンでよく洗浄する。コレスタンを含んだメソポーラスシリカに、耐熱性の硬質ガラスジャケットを通し310nm以下の波長の光を除くようにして高圧水銀ランプで紫外線照射する。照射時間は、メソポーラスシリカの量に応じて適宜設定することができ、紫外線スペクトルで光二量化性基の吸収を測定して、光二量化性基の減少がなくなるまで照射すればよい。
【0113】
また、低圧水銀ランプで石英ガラスの容器を用いることで250nm付近の紫外線を照射することにより、二量化した官能基を開裂させて、機能性物質を放出(徐放)させることができる。この際の照射時間は、その際徐放させたい機能性物質(コレスタン)の量に応じて適宜設定することができ、紫外線スペクトルで光二量化性基の吸収を測定して、光二量化性基の吸収の増加がなくなった時点で照射を停止すればよい。
【0114】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0115】
実施例1
(1) (鋳型界面活性剤入り)ヘキサゴナル状メソポーラスシリカ(MCM−41)の合成
ケイ酸ナトリウム22.86g(ケイ素:0.20mol;ナトリウム:0.184mol)を100gの水に完全に溶解させる。これとは別に、48.86gの水酸化テトラメチルアンモニウム(0.134mol)と38.72gの臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(0.102mol)を100gの水に加え、35℃に加熱し完全に溶解させる。この二つの均一な水溶液を混合し、室温にて2時間十分に撹拌する。
【0116】
次いで、51gの水に13.28gの硫酸(0.13mol)を溶解させた溶液を、上記溶液にゆっくり加え、室温にて2時間撹拌して沈殿を生成させた。この混合液の溶液部分のpH値は、約10.5になった。当該混合液をポリプロピレン瓶に移し、100℃で24時間静置した。室温に冷やした後、pH値が約10.5になるまで濃硫酸を加え、次いで、塩化カリウム11.83g(0.15mol)を加え、再び100℃で24時間静置した。その後、pH値を約10.5に調節するための濃硫酸の添加を2度行った。生成した沈殿をろ別し、蒸留水で十分に洗浄し、105℃で24時間乾燥した。こうして、構造が安定した鋳型界面活性剤入りヘキサゴナル状メソポーラスシリカを合成した。
【0117】
(2) 7−アリロキシクマリンの合成
市販の7−ヒドロキシクマリン3.24g(20mmol)のアセトン溶液(100mL)に、無水炭酸カリウム4.15g(30mmol)を加え(不溶)、次いで臭化アリル6.05g(50mmol)を加えた。この混合溶液を70℃で12時間反応させ、不溶物をろ別の後、反応液を減圧蒸留し、残査4.02g(粗収率:99%)を得た。この固体をエタノールで再結晶することにより、標題化合物3.85g(収率:95%)を得た。得られた化合物の分析データを示す。
H NMR(CDCl、400MHz):4.60(d、2H)、5.49(dd、1H)、6.0〜6.08(m、1H)、6.24(d、1H)、6.85(d、1H)、6.86(dd、1H)、7.38(d、1H)、7.64(d、1H).
赤外線スペクトル(KBr法)(主要な吸収):3082、1726、1615、1285、1228、1128、1127、998、843cm−1
【0118】
(3) 3−(7−クマリロキシ)プロピルトリエトキシシランの調製
7−アリロキシクマリン2.02g(10mmol)とトリエトキシシラン1.80g(11mmol)を50mLのトルエンに溶解させ、乾燥窒素を約10分吹き込んだ。その後、当該溶液に、触媒溶液(白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体の溶液をトルエンで希釈して2mMとした溶液)0.5mLを加え、室温で20時間反応させた。溶媒(トルエン)を減圧留去の後、得られた油状生成物を減圧乾燥し、粗目的物(3.45g;粗収率95%)を得た。この粗生成物をそのまま次の合成(下記の、実施例1の(4))に用いた。得られた化合物の分析データを示す。
H NMR(CDCl、400MHz):0.75(dd、2H)、1.23(t、9H)、1.80〜1.95(m、2H)、3.78(q、6H)、4.00(t、2H)、6.23(d、1H)、6.80〜6.90(m、2H)、7.35(d、1H)、7.63(d、1H).
13C NMR(CDCl、99MHz):9.97、18.39、22.61、58.12、70.58、101.22、112.23、112.73、112.79、128.56、143.29、155.71、161.05、162.16.
赤外線スペクトル(KBr法)(主要な吸収):2970、1736、1616、1124、1078cm−1
【0119】
(4) クマリン誘導体由来の有機基導入メソポーラスシリカの合成
上記(1)で調製したメソポーラスシリカ2gを20mLのn−ヘキサンに懸濁させ、次いで、上記(3)で調製した3−(7−クマリロキシ)プロピルトリエトキシシラン0.2gを加え、室温で30分間撹拌してグラフト処理を行い、クマリン基由来官能基を導入した。溶媒を80℃で2時間減圧留去した後、150℃で12時間真空乾燥した。得られたクマリン誘導体由来の有機基含有メソポーラスシリカに残存する鋳型(界面活性剤)の除去は、1Mの塩酸を含むエタノール100mLを用いて、80℃、4時間還流することにより行った。その後、上澄み液を除き、固体を再び同様のエタノール溶液で還流処理した。計3回の還流処理の後、固体はろ別し、エタノールで充分洗浄し、80℃で12時間乾燥した。鋳型の界面活性剤が完全に除かれたことを、ガスクロマトグラフィー、熱重量測定および元素分析で確認した。上記操作により得られたメソポーラスシリカをSample2Aとする。
【0120】
(5) クマリン誘導体由来の有機基導入メソポーラスシリカを用いたコレスタンの徐放のオン−オフ制御
1gのコレスタンが溶解した20mLのn−ヘキサン溶液に、1gのクマリン誘導体由来の有機基が導入されたメソポーラスシリカを室温で24時間懸濁させた。メソポーラスシリカをろ別し、n−ヘキサンで5回洗浄し、60℃で12時間乾燥した。メソポーラスシリカに残留したコレスタンの量は、洗浄に用いたn−ヘキサン中のコレスタンの量から算出した。その結果、重量比で33.0%のコレスタンがメソポーラスシリカに内包されていることがわかった。
【0121】
当該コレスタン内包メソポーラスシリカの固体そのものに、耐熱性の硬質ガラスジャケットを通して、波長310nm以下のものを除いた紫外線を、高圧水銀ランプを用いて3時間照射した。該メソポーラスシリカを再びn−ヘキサン20mLに懸濁させて、室温で24時間十分に撹拌した。その後、固体をろ別して十分な量のn−ヘキサンで洗浄した。全てのろ液を集めてガスクロマトグラフィーで溶出コレスタン量を定量したが、検出されたコレスタンは5%であり、28%が依然残存していた。
【0122】
当該メソポーラスシリカの固体そのものに、低圧水銀ランプで石英ガラス容器を用いて波長240〜260nmの紫外線を約5分照射し、次いで、当該メソポーラスシリカを再びn−ヘキサン20mLに懸濁させて、室温で48時間十分に撹拌した。その後、固体をろ別して十分な量のn−ヘキサンで洗浄した。全てのろ液を集めてガスクロマトグラフィーで溶出コレスタン量を定量した結果、内包されているコレスタンは6%、すなわち22%のコレスタンが溶出していた。
【0123】
クマリン誘導体由来の有機基導入メソポーラスシリカを用いたコレスタンの徐放のオン−オフ制御の概念図を図2に示す。
【0124】
実施例2
実施例1におけるクマリン誘導体由来の官能基導入において、グラフト処理を24時間行う以外は、実施例1と同様の操作を行って、メソポーラスシリカを合成した(Sample2B)。また得られたメソポーラスシリカを用いて、実施例1と同様の方法によりコレスタンの徐放のオン−オフ制御を調べた。その結果、細孔中に貯蔵されたコレスタンは5%、その後に放出されたコレスタンは2%であった。
【0125】
実施例3
実施例1のクマリン誘導体由来の官能基導入において、官能基を導入する前に、界面活性剤を溶媒抽出し取り除き、次いで、グラフト処理を行う以外は、実施例1と同様の操作を行ってメソポーラスシリカを合成した(Sample2C)。また得られたメソポーラスシリカを用いて、実施例1と同様の方法によりコレスタン徐放のオン−オフ制御を調べた。その結果、細孔中に貯蔵されたコレスタンは13%、その後に放出されたコレスタンは2%であった。
【0126】
実施例4
実施例1において、メソポーラスシリカを合成する際、3−(7−クマリロキシ)プロピルトリエトキシシラン等の有機置換基含有シラン化合物を共存させて、ワンポット合成により、メソポーラスシリカの調製とクマリン誘導体由来の官能基導入を行う以外は、実施例1と同様の操作を行ってメソポーラスシリカを作成した(Sample2D)。また得られたメソポーラスシリカを用いて、実施例1と同様の方法によりコレスタン徐放のオン−オフ制御を調べた。その結果、細孔中にはコレスタンは全く貯蔵されなかった。
【0127】
実施例1〜4で作成したメソポーラス無機材料Sample2A〜2Dについて、200分の光照射(波長>310nm)を行った後のUV吸収を調べた結果を図3に示す。
【0128】
Sample2Aは、クマリンの324nmの吸収がほぼ消失しており、クマリンの殆ど全て(>98%)が二量化していることがわかった。Sample2B及びSample2Cの場合は、324nmの吸収の減少が見られ、それぞれ一部(Sample2Bは25%、Sample2Cは63%)が二量化していることがわかった。一方、Sample2Dは、光による二量化はほとんど確認できなかった(<1%)。
【0129】
比較例1:二量化性官能基を有していないメソポーラスシリカを用いたコレスタンの徐放
実施例1の(1)で得られたメソポーラスシリカから、実施例1の(4)に記載された方法と同様にして、塩酸を含むエタノールを用いて界面活性剤を除去した。このメソポーラスシリカを、1gのコレスタンが溶解した20mLのn−ヘキサン溶液に室温で24時間懸濁させた。メソポーラスシリカをろ別し、n−ヘキサンで5回洗浄し、60℃で12時間乾燥した。
【0130】
このようにしてコレスタンを内包させた後、当該メソポーラスシリカを再びn−ヘキサン20mLに懸濁させて、室温で24時間十分に撹拌した。その後、固体をろ別して、十分な量の新たなn−ヘキサンで洗浄した。全てのろ液を集めてガスクロマトグラフィーで溶出コレスタン量を定量した結果、最初に用いたほとんどのコレスタンがn−ヘキサン中に溶出し、メソポーラスシリカへのコレスタンの残存量は2%以下であった。
【0131】
比較例2:光照射を行わなかったクマリン誘導体由来の有機基導入メソポーラスシリカを用いたコレスタンの徐放
実施例1の(4)で得られたクマリン誘導体由来の有機基を導入したメソポーラスシリカを、1gのコレスタンが溶解した20mLのn−ヘキサン溶液に室温で24時間懸濁させた。メソポーラスシリカをろ別し、n−ヘキサンで5回洗浄し、60℃で12時間乾燥した。
【0132】
その後、紫外線照射を行わずに、当該メソポーラスシリカを直接n−ヘキサン20mLに懸濁させて、室温で24時間十分に撹拌した。その後、固体をろ別して、十分な量の新たなn−ヘキサンで洗浄した。全てのろ液を集めてガスクロマトグラフィーで溶出コレスタン量を定量し、最初に用いたほとんどのコレスタンがn−ヘキサン中に溶出し、メソポーラスシリカへの残存量は2%以下であった。
【0133】
実施例5:クマリン誘導体有機基導入メソポーラスシリカを用いたピレンの徐放のオン−オフ制御
内包させる物質としてコレスタンの代わりに1gのピレンを用いた以外は実施例1と同様にして、本発明のメソポーラスシリカを用いた徐放のオン−オフ制御を行った。高圧水銀ランプでの紫外線照射後のn−ヘキサン洗浄後に内包されていたピレンは、メソポーラスシリカに対する割合(重量)として1.05%であった。低圧水銀ランプで照射しn−ヘキサン洗浄後に内包されていたピレンは、メソポーラスシリカに対する割合(重量)として0.28%であった。
【0134】
内包させる物質としてコレスタンの代わりに1gのピレンを用いた以外は、比較例1及び2と同様にして行った場合、n−ヘキサン洗浄後に内包されていたピレンは、いずれも0.00%であった
実施例1及び2並びに比較例の結果から明らかなように、紫外線照射により光二量化した場合は、内包した機能性物質(コレスタン、ピレン)はこれら機能性物質の溶媒を用いて洗浄によっても徐放されないが、短い波長の紫外線照射により二量化有機基を単量化させることで、内包機能性物質(コレスタン及びピレン)を細孔外へ徐放できる、すなわち光による内包物の徐放のオン−オフ制御が可能であった。クマリンは、光により可逆的に二量化し得るので、このオン−オフ機能は、繰返し行うことができると期待される。
【0135】
【発明の効果】
本発明によれば、一次元細孔が規則的に配列した構造のメソポーラス無機材料の細孔口に外部刺激により結合又は開裂する官能基を導入することによって、細孔の開閉機能が該メソポーラス無機材料に付与される。これにより本発明のメソポーラス無機材料は、特定物質の封入、放出又それらの制御を行うことが可能になる。具体的には、外部刺激の条件を変化させることによって、メソポーラス無機材料の細孔を開閉することができ、このような開閉機能によって、有害な化学物質の除去や所望化学物質の取込、或いは細孔内に充填した機能性物質の放出やその制御などが可能になる。
【0136】
本発明のメソポーラス無機材料は、機能性の化学物質を固体材料内に包含して内部から外部へ放出(徐放)できる作用を有しており、種々の分野(例えば、医薬、農薬、化粧品類、種々の触媒、肥料、香料等の分野)で、与えられた環境に応じて、必要な時に必要な量を供給できる技術として用いることが可能である。
【0137】
例えば、外部の臭いセンサーとの連動により、臭気が観測された際、内包された芳香化合物を外部へ徐放し、空間内の空気を快適に保ったり、害虫等の飛来に応答して農薬等を散布するという利用方法が考えられる。また、薬物内包したメソポーラスシリカを注射等で体内に注入し、その後患部のみに紫外線を照射することで患部にのみ薬物が作用するようにするドラッグ・デリバリー・システムとしての利用も考えられる。一方、環境中に存在する化学物質の濃度が高くなったときに、二量化していた機能性基を開き、その化学物質を細孔内に吸収して系内より除去するような利用方法も期待できる。
【0138】
このように、本発明のメソポーラス無機材料は、種々の分野に応用可能な優れた技術手段を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、クマリン誘導体由来の官能基を導入したメソポーラス無機材料を用いて、細孔内化合物の放出・貯蔵を行う様子を示した図面である。
【図2】図2は、クマリン誘導体由来の有機基導入メソポーラスシリカ(MCM−41)を用いてなるコレスタンの徐放のオン−オフ制御の概念図である。
【図3】図3は、実施例1〜4で作成したメソポーラス無機材料のUV吸収を調べた結果を示す図面である。

Claims (28)

  1. 一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料であって、外部刺激による化学反応により結合する官能基を細孔口に有するメソポーラス無機材料。
  2. 無機材料がシリカ、チタニア、ジルコニア、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカ−チタニア、リン酸スズ、リン酸ニオブ、リン酸アルミニウム、リン酸チタン、並びにそれらの酸化物、窒化物、硫化物、セレン化物、テルル化物、複合酸化物及び複合塩からなる群から選ばれるいずれか1種である請求項1に記載のメソポーラス無機材料。
  3. 外部刺激が、光、熱、放射線、酸、アルカリ、架橋剤、磁気及びイオンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のメソポーラス無機材料。
  4. 化学反応が、二量化反応、多量化反応、重合反応、縮合反応、付加反応及び錯形成反応からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のメソポーラス無機材料。
  5. 官能基が、不飽和基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、カルバメート基及びシラノール基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のメソポーラス無機材料。
  6. 官能基がクマリン誘導体由来の官能基である請求項1に記載のメソポーラス無機材料。
  7. 細孔内に機能性物質が充填されている請求項1に記載のメソポーラス無機材料。
  8. 機能性物質が、ステロイド化合物、ビタミン化合物、ホルモン化合物、薬理活性化合物、農薬化合物、生理活性化合物、アミノ酸、糖類、脂肪酸及び核酸化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項7に記載のメソポーラス無機材料。
  9. メソポーラス無機材料の製造方法であって、
    (1)水溶液中で界面活性剤を鋳型として、一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料を調製する工程、
    (2)工程(1)において得られたメソポーラス無機材料に含まれる界面活性剤を除去する前に、外部刺激による化学反応により結合する官能基をメソポーラス無機材料の細孔口に導入する工程、及び
    (3)界面活性剤を除去する工程、
    を含む製造方法。
  10. 工程(1)と工程(2)の間に、酸処理を行うことを特徴とする請求項9に記載の方法。
  11. 機能性物質が細孔内に充填されたメソポーラス無機材料の製造方法であって、
    (1)水溶液中で界面活性剤を鋳型として、一次元細孔が規則的に配列した構造を有するメソポーラス無機材料を調製する工程、
    (2)工程(1)において得られたメソポーラス無機材料に含まれる界面活性剤を除去する前に、外部刺激による化学反応により結合する官能基をメソポーラス無機材料の細孔口に導入する工程、
    (3)界面活性剤を除去する工程、
    (4)機能性物質をメソポーラス無機材料の細孔内に充填する工程、及び
    (5)(2)で導入した官能基を外部刺激による化学反応により結合させる工程を含む製造方法。
  12. 工程(1)と工程(2)の間に、酸処理を行うことを特徴とする請求項11に記載の方法。
  13. 化学物質の取り込み及び/又は除去方法であって、請求項1に記載のメソポーラス無機材料の細孔内に化学物質を取り込んだ後、外部刺激により官能基を結合させる工程を有する方法。
  14. 機能性物質の放出を制御する方法であって、(1)請求項7に記載のメソポーラス無機材料に外部刺激を与えて官能基の結合を開裂して機能性物質を放出させる工程、及び(2)外部刺激により官能基を結合して(1)における機能性物質の放出を停止させる工程を有する機能性物質の放出を制御する方法。
  15. ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカであって、光による二量化反応により結合する有機官能基を細孔口に有するメソポーラスシリカ。
  16. 有機官能基が不飽和基である請求項15に記載のメソポーラスシリカ。
  17. 有機官能基がクマリン誘導体由来である請求項15に記載のメソポーラスシリカ。
  18. ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカであって、細孔内に機能性物質が充填され、二量化した有機官能基により細孔口が塞がれたメソポーラスシリカ。
  19. 有機官能基が不飽和基である請求項18に記載のメソポーラスシリカ。
  20. 有機官能基がクマリン誘導体由来である請求項18に記載のメソポーラスシリカ。
  21. 光による二量化反応により結合する有機官能基を細孔口に有するメソポーラスシリカの製造方法であって、
    (1)水溶液中でヘキサゴナル構造を形成し得る界面活性剤を鋳型として、ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカを調製する工程、
    (2)工程(1)において得られたメソポーラスシリカに含まれる界面活性剤を除去する前に、光による二量化反応により結合する有機官能基をヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカに導入する工程、及び
    (3)界面活性剤を溶剤を用いて除去する工程
    を含む製造方法。
  22. 工程(1)と工程(2)の間に、酸処理を行う請求項21に記載の方法。
  23. 機能性物質が細孔内に充填されたヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカの製造方法であって、
    (1)水溶液中でヘキサゴナル構造を形成し得る界面活性剤を鋳型として、ヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカを調製する工程、
    (2)工程(1)において得られたメソポーラスシリカに含まれる界面活性剤を除去する前に、光により二量化し得る有機官能基をヘキサゴナル構造のメソポーラスシリカに導入する工程、
    (3)界面活性剤を溶剤を用いて除去する工程、
    (4)機能性物質をメソポーラスシリカの細孔内に充填する工程、及び
    (5)有機官能基を光により二量化する工程
    を含む製造方法。
  24. 工程(1)と工程(2)の間に、酸処理を行う請求項23に記載の方法。
  25. 化学物質の取り込み及び/又は除去方法であって、請求項15に記載のメソポーラスシリカの細孔内に化学物質を取り込んだ後、有機官能基を光により二量化する工程を有する方法。
  26. 機能性物質の放出を制御する方法であって、請求項18に記載のメソポーラスシリカの二量化した有機官能基を開裂させることにより機能性物質を放出させる方法。
  27. 機能性物質の放出を制御する方法であって、請求項18に記載のメソポーラスシリカに二量化した有機官能基が開裂する波長の光を照射することにより機能性物質を放出させる方法。
  28. 機能性物質の放出を制御する方法であって、請求項18に記載のメソポーラスシリカに、二量化した有機官能基の結合が開裂する波長の光を照射することにより機能性物質を放出させ、有機官能基が二量化する波長の光を照射することにより機能性物質の放出を停止させることにより機能性物質の放出を制御する方法。
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