以下に、この発明を実施するための最良の形態について、図面に基づいて説明する。図1は、この発明の実施形態に係るインク吐出装置10の概略の構成を示す図である。
インク吐出装置10は、インク吐出ヘッド11、メインタンク12、サブタンク13、加圧ポンプ14、及び、減圧ポンプ15などを備えている。
インク吐出装置10が製造装置として用いられる場合は、インクとして製品を製造するための液体材料が用いられ、インク吐出装置10が画像記録装置として用いられる場合は、インクとして画像記録用の液体材料が用いられる。
メインタンク12は、加圧室17及びインク室18を備えている。インク室18は、可撓性を有するフィルムで形成され、気密性が高い加圧室17内に収容されている。加圧室17内の気圧は、加圧ポンプ14によって調整される。加圧室17内の気圧が高められることで、インク室18内のインクが流出する。
メインタンク12は、インク吐出装置10の本体に対して着脱自在に構成されている。メインタンク12には、図示されていないインク残量検出器が設けられており、メインタンク12内のインク量が所定量より少なくなると、ユーザーに注意喚起される。メインタンク12は、インク残量が少なくなると、インクが充填された別のメインタンクと交換される。
サブタンク13は、圧力室19及びインク袋20を備えている。インク袋20は、可撓性を有する材料で形成され、気密性が高い圧力室19内に収容されている。圧力室19内の気圧は、減圧ポンプ15によって調整される。
サブタンク13は、流入口26及び流出口27を有する。流入口26は、サブタンク13のインク袋20とインク供給チューブ21で接続されており、メインタンク12から流出されたインクは、流入口26を通してサブタンク13のインク袋20内に供給される。インク供給チューブ21の中間には閉止弁23が接続されている。流入口26はこの発明のインク流入口に相当する。流出口27はこの発明のインク流出口に相当する。
サブタンク13の流出口27とインク吐出ヘッド11とは、インク供給チューブ22で接続されている。インク袋20内のインクは、流出口27を通ってインク吐出ヘッド11に供給される。サブタンク13の構造の詳細については後述する。
インク吐出ヘッド11は、図示されていないキャリッジに搭載されている。キャリッジが水平方向に移動することで、記録媒体16の所望の位置に、インク吐出ヘッド11からインクが吐出される。
インク吐出装置10は、キャップ24及び減圧ポンプ25をさらに備えている。キャップ24は、不使用時のインク吐出ヘッド11に被せられる。このとき、減圧ポンプ25がキャップ24内を減圧することでキャップ24内が負圧となり、インク吐出ヘッド11からインクが排出される。
つぎに、インクをメインタンク12からインク吐出ヘッド11へと導く初期充填の工程について説明する。
まず、閉止弁23を閉じる。次に、インク吐出ヘッド11をキャップ24と当接する位置へ移動し、インク吐出ヘッド11をキャップする。この状態で減圧ポンプ25を稼動させ、インク吐出ヘッド11を介してインク供給チューブ22及びサブタンク13内に残留しているエアを排出する。この状態で時間が経過すると、サブタンク13は大気圧に押しつぶされた状態となる。
この状態で閉止弁23を開弁すると、メインタンク12のインクが、インク供給チューブ21を通ってサブタンク13へ流れ込み、さらにインク供給チューブ22を通ってインク吐出ヘッド11まで流れ込む。
ここで、減圧ポンプ25を止め、キャップ24内の気圧が大気圧近傍になるまで待機する。その後、インク吐出ヘッド11をアンキャップする。
次に、加圧ポンプ14を稼動させ、加圧室17内を加圧し、閉止弁23を開く。サブタンク13のインクレベルがフル状態となると、閉止弁23を閉じ、加圧ポンプ14を停止させ、加圧室17が大気圧に戻り、インク充填が完了する。
上述のように、メインタンク12とインク吐出ヘッド11との間に、可撓性を有するインク袋20を備えたサブタンク13を介在させることで、気泡の混入を抑制しながらインク供給系にインクを充填することができる。
インク吐出装置10では、インク吐出ヘッド11の水頭差は、サブタンク13との高さの差で定まる。キャリッジ動作等によってインク吐出ヘッド11のノズルからインクが流出しないように、インク吐出ヘッド11はサブタンク13より上方に位置されることで、インク吐出ヘッド11の水頭差は負圧に維持されている。なお、インク吐出ヘッド11がサブタンク13より下方に位置される場合は、インク袋20を圧力室19内に密閉状態で収納し、減圧ポンプ15を用いて圧力室19を負圧に保つことで、インク吐出ヘッド11に所定の負圧を与えてもよい。
もし、インク袋20の剛性が高いなどによって、サブタンク13内のインク袋20の内圧が大気圧より高くなると、インク吐出ヘッド11は負圧の水頭差を得ず、ノズルからインクが流出し、記録媒体16を汚すことになる場合がある。
また、インク吐出装置10をカラーフィルタ製造装置として用いる場合は特に、インク吐出ヘッド11のノズルから吐出するインク滴の体積について、非常に高い精度が求められる。インク吐出ヘッド11から吐出するインク滴の体積は、水頭差によっても変動するので、インク滴を高精度に吐出するためには水頭差の変動を少なくすることが望ましい。
このため、インク袋20は、内部の圧力が圧力室19内の圧力に容易に追随し、圧力室19内が大気圧以下である場合にインク袋20内の圧力が大気圧以上にならないような可撓性を有することが必要である。
図2は、サブタンク13の構成を示す正面視における断面図である。図3は、サブタンク13の構成を示す側面視における断面図である。
インク袋20は、互いに対向する2枚のフィルムの周囲28が熱溶着によって接着されることで、袋状に形成されている。2枚のフィルムのそれぞれは、可撓性及びガスバリア性を有する。インク袋20を構成するフィルムは、インク袋20の内側から、MDPE(中密度ポリエチレン)、アルミニウム及びナイロンの層からなり、互いがアルミニウム蒸着されることで構成されている。このため、インク袋20内に収容されたインクの溶存空気量の増加が抑制される。なお、フィルムの上述の各層は、アルミニウム蒸着されることに限定されず、ラミネートされてもよい。
インク袋20は、この実施形態では鉛直方向に配置され、流入口26及び流出口27が下端部に設けられている。サブタンク13の下端部にはフランジ部29が設けられている。フランジ部29は、プラスチックで形成されており、インク供給針の挿入及び抜去が自在にされている。フランジ部29の所定の箇所にインク供給針が挿入されることで、流入口26とインク供給チューブ21とが接続され、及び、流出口27とインク供給チューブ22とが接続される。なお、インク供給針によらず、Oリングなどによって接続する構成にしてもよい。
インク袋20の第1面に、検出板30が、両面テープによって接着されている。検出板30は、インク袋20の第1面上に鉛直方向に立設されており、インク袋20の第1面に対して水平方向に突出している。検出板30は、光を遮る性質を有する材料で形成されている。検出板30はこの発明の遮光部材に相当する。なお、検出板30は、エポキシ系接着剤などによってインク袋20の第1面に接着されてもよい。
検出板30は、インク袋20の鉛直方向の寸法をLとすると、鉛直方向においてインク袋20の中央部より0.2L上方の位置が中心位置となるように、インク袋20の第1面に配置されている。この実施形態では、インク袋20の第1面のうち、中央部より0.2L上方の検出板30が配置された位置が、この発明の所定箇所に相当する。
この実施形態では、インク袋20の容量は約18mLである。インク袋20の横寸法は47mmで、縦寸法は48mmである。この実施形態では、検出板30は、鉛直方向におけるインク袋20の中央部より約9.6mm上方に配置されている。なお、検出板30は、鉛直方向において、インク袋20の中央部より0.1L〜0.2L上方の位置が中心位置となるように、インク袋20の第1面に配置されていてもよい。
また、この実施形態では、インク袋20の厚さ方向に直交する方向である幅方向において、すなわち、図2における紙面の左右方向において、検出板30は略中央部に配置されている。
インク袋20について、第1面の検出板30が接着された箇所の高さと略同じ高さの第2面の部分が、インクの収容量にかかわらず変位しないように、固定部材33を介して板材34に固定されている。これによって、この実施形態では、検出板30は、水平方向に最大で約10mm変位する。
サブタンク13の圧力室19の側壁には、検出板30と同じ高さの位置に、窓31,32が設けられている。そして、窓31,32を通して検出板30を検出可能な位置に、発光素子41と受光素子42とからなる光学センサ40が配置されている。発光素子41と受光素子42とは、略同じ高さに配置されている。
発光素子41として、指向性が高いレーザを発するものが好ましい。光学センサ40として、検出エリアの水平方向の幅が約10mmのものが使用されている。光学センサ40の検出エリアの幅と検出板30の最大変位量とが略等しくなる光学センサ40を用いることで、光学センサ40の検出エリアが必要最小限の大きさとなり、インク吐出装置10の小型化を図ることができるようになる。
インク袋20内のインクが増減することでインク袋20の第1面が変位すると、それにともなって検出板30も水平方向に変位する。検出板30が変位することで、検出板30による光学センサ40の検出エリアの遮光面積が変化し、受光素子42で受光される光量が変化する。検出板30で遮光された光量を光学センサ40で測定することで、検出板30の変位量が測定され、インク袋20内のインク量が検出される。
なお、この実施形態では、検出板30の変位量を検出することでインク袋20の第1面の所定箇所の変位量を間接的に検出しているが、光学センサ40によってインク袋20の第1面の所定箇所の変位量を直接的に検出してもよい。
図4は、鉛直方向に配置されたインク袋20の形状変化の仕方を示す図である。図4(A)はフル状態のインク袋20の形状を示し、図4(B)はフル状態とエンプティ状態との間の状態のインク袋20の形状を示し、図4(C)はエンプティ状態のインク袋20の形状を示す。
ここで、エンプティ状態とは、インク吐出装置10の動作時にインク袋20内に収容されているべき最小量のみのインクが収容された状態をいい、フル状態とは、インク吐出装置10の動作時にインク袋20内に収容されるべき最大量のインクが収容された状態をいうものとする。
インク袋20内に収容されたインクには、図4におけて矢印35で示す方向の重力が作用する。インク袋20の流入口26及び流出口27は、インク袋20の下端部に配置されている。
図4(A)に示すように、フル状態では、インクはインク袋20の下部及び上部の両方に収容される。図4(A)及び図4(B)に示すように、フル状態に近い状態でインク袋20内のインク量が増減すると、鉛直方向においてインク袋20の中央部に比べて、中央部より上方の部分の方が、インク袋20の表面の変位量が大きくなる。
また、図4(A)〜図4(C)に示すように、フル状態に近い状態及びエンプティ状態に近い状態でインク袋20内のインク量が増減すると、鉛直方向においてインク袋20の中央部の表面は略角度を変えずに水平方向に変位するのに対して、中央部より上方の部分は、傾きの角度を変えながら水平方向に変位する。
インク袋20内のインクは重力の影響によって下方に溜まるので、特にフル状態に近い状態において、鉛直方向における中央部の表面に比べて中央部より上方の表面の方が、水平方向への変位量が大きく、角度の変化が大きい。このため、特にフル状態において、検出精度が向上する。
図5は、インク袋20内のインク量と水頭差との関係を示す図である。
この実施形態では、インク袋20の場合、インク吐出ヘッド11によるインクの吐出精度を高く保つために、エンプティ状態とフル状態との水頭差を0.2kPa以内にするものとする。
この実施形態で用いられるインク袋20では、水頭差を0.2kPa以内にできるので、インク袋20内のインク量が3mL以上9mL以下の範囲内にあるときである。したがって、この実施形態では、インク袋20のフル状態は9mL、インク袋20のエンプティ状態は3mLに設定される。
図6は、インク袋20内のインク量と光学センサ40で測定される光量との関係を示す図である。図6において、縦軸の光量は、光学センサ40が検出する光量の最大値を100%としている。また、実線は、この実施形態に係るインク吐出装置10におけるインク量と光量との関係を示している。破線は、比較例であって、検出板30が鉛直方向におけるインク袋の中央部に配置された従来の構成に係るインク吐出装置におけるインク量と光量との関係を示している。上述のように、この実施形態に係るインク吐出装置10では、インク袋20の鉛直方向の寸法をLとするとき、検出板30は、鉛直方向においてインク袋20の中央部より0.2L上方に配置されている。なお、図6に示したデータは、実験を5回ずつ行ったときの平均値を示している。
図6において、傾き=Δ光量/Δインク量、の関係が成立することから、Δインク量=Δ光量/傾きの関係が成立する。ここで、“Δ”は、差分を表す。このため、傾きが大きいほど、光量に対するインク量の誤差は小さくなり、インク量を精度よく検出することができると言える。言い換えれば、傾きが大きいほど、インク量の変化が光量に大きく反映されやすいと言える。
この実施形態では、インク袋20のフル状態を9mLに設定しているので、8mL〜10mLのときにインク容量を精度よく検出する必要がある。図6から分かるように、インク容量8mL〜10mLにおいて、傾き(Δ光量/Δインク量)は従来例より実施例の方が大きい。
また、この実施形態では、インク袋20のエンプティ状態を3mLに設定しているので、2mL〜4mLのときにインク容量を精度よく検出する必要がある。図6から分かるように、図6から分かるように、インク容量2mL〜4mLにおいても、傾き(Δ光量/Δインク量)は従来例より実施例の方が大きい。
以上の結果から、インク袋20が鉛直方向に配置され、インク袋20のフル状態およびエンプティ状態を検出するとき、検出板30は、鉛直方向におけるインク袋20の中央部より0.2L上方に配置されている方が、鉛直方向におけるインク袋20の中央部に配置されている場合より、精度がよくなるということが分かる。
つぎに、検出板30は鉛直方向におけるインク袋20の中央部より0.2L上方に配置されている方が、鉛直方向におけるインク袋20の中央部に配置されている場合より、インク袋20のフル状態およびエンプティ状態を精度よく検出できることの原理について考察する。
図7は、インク袋20内のインク量が変化したときの検出板30の変位の過程を示す図であり、図7(A)は、インク袋20の側面図であり、図7(B)〜図7(D)は、図7(A)の一部拡大図である。図7(B)はエンプティ状態の検出板30の位置を示し、図7(D)はフル状態の検出板30の位置を示し、図7(C)はエンプティ状態とフル状態との間における検出板30の位置を示している。光学センサ40は、図7における紙面に垂直な方向に、発光素子41から受光素子42へ向けて発光している。
従来では、検出板30は、インク袋20の鉛直方向の中央部に配置される。このため、インク袋20内のインク量が増減した場合、検出板20は変位時に角度を変えることなく即ち回転運動をすることがなく、水平移動のみ行う。
これに対して、この実施形態に係るインク吐出装置10では、インク袋20内のインク量が増加するにつれて、検出板30は、インク袋20の厚さ方向(図7における左右方向)に水平移動するとともに、回転運動している(傾きの角度を変えながら水平方向に変位している。)。
検出板30の回転運動は、インク袋20が可撓性を有しており、インク袋20の第1面20Aがインク量に応じて撓んでいるために起こる。
検出板30の回転運動の回転中心は検出エリア43の中心線上にはなく、インク袋20の幅方向(図7の左右方向)におけるインク袋20の中心方向へずれているので、検出板30による検出エリア43の遮光面積の変化量は、単に平行移動する場合より増加する。
具体的には、インク袋20内へのインクの流入過程において、エンプティ状態からフル状態へ移行するとき、図7(B)、図7(C)、図7(D)をこの順に参照して、検出板30は、傾いていない状態から、角度α、角度β(α<β)と次第に大きい角度で傾き、検出板30が回転運動をともないながら水平移動する。インク袋20からのインクの流出過程においても同様に、検出板30は、回転運動をともないながら水平移動する。
インク袋20のフル状態およびエンプティ状態を精度よく検出するためには、Δ光量/Δインク量の値が大きい、即ち、インク量の変化量に対する光量の変化量が大きい方がよいので、検出板30による検出エリア43の遮光面積の変化量が大きい方がよい。
インク袋20へのインク流入過程おいて、フル状態近傍で検出板30の角度の変化量が大きいほど、遮光面積の変化量も大きくなり、インク袋20内のインク量の検出精度が向上する。同様に、インク袋20からのインク流出過程おいて、エンプティ状態近傍で検出板30の角度の変化量が大きいほど、遮光面積の変化量も大きくなり、インク袋20内のインク量の検出精度が向上する。したがって、インク吐出装置10は、フル状態およびエンプティ状態を精度よく検出することができる。
図8は、検出板30の回転運動についての説明図であり、図9は、検出板30の回転角度θと検出板30による検出エリア43の遮光面積の増加率との関係を示す図である。
検出板30の回転中心は、インク袋20の第1面20Aの撓み変形によって任意の点に存在する。ここでは、図8に示すように、検出板30は所定の1点に回転中心があると仮定し、角度θをもって回転するとして、回転による検出エリア43の遮光面積の増加率をシミュレーションした。その結果を図9に示す。例えば、検出板30が20度回転すると、遮光面積は約5%増加している。
図9に示すシミュレーションの結果から、検出板30が回転運動することによって遮光面積の変化量は増加し、インク量の検出精度が向上することが分かる。
図10は、検出板30の取り付け位置と検出精度との関係についての説明図である。図10では、横軸に示す検出板30の取り付け位置として、鉛直方向におけるインク袋20の中央部からの距離Xを示している。
上述のように、検出板30が鉛直方向における中央部から0.2L上方のインク袋20の第1面20Aに配置されることで、中央部の表面に配置される場合より、フル状態及びエンプティ状態の検出精度が向上する。
検出板30が鉛直方向における中央部から0.1L〜0.2L上方のインク袋20の第1面20Aに配置されることで、中央部に配置される場合より、フル状態及びエンプティ状態の検出精度が向上することを、図10を用いて模式的に説明する。
インク袋20内のインク量を検出するとき、検出板30を取り付ける位置の違いによって、以下の2つのことが言える。
(1)インク袋20の厚み方向(水平方向)の変形量は、鉛直方向の中央部が最も大きく、中央部から離間するに従って小さくなる。この関係を、図10において直線F(X)で示す。
(2)インク袋20内のインク量の増減(インクの流出入)過程において、インク袋20内に収容されたインクは、重力の影響によってインク袋20の下部に溜まりながら流出入するので、インク袋20がフル状態に近い状態においては、検出板30が中央部より上方に取り付けられた場合の方が、中央部に取り付けられた場合よりも、検出精度が向上する(図4及び図7参照)。この関係を図10において直線G(X)で示す。
上述のF(X)及びG(X)の関係を重ね合わせると、図10の曲線H(X)のように表せる。その結果、検出板30を、インク袋20の中央部に取り付けるよりも、中央部より0.1L〜0.2L上方の位置に取り付けた場合の方が、検出精度が向上することが分かる。
図11は、鉛直方向における検出板30の取り付け位置と、検出精度との関係についての実験結果を示す図である。
図11では、検出板30を鉛直方向の中央部に配置したときを基準として、検出板30を中央部に配置した場合より検出精度がよいときを○、同程度のときを△、悪いときを×とした。ここでの検出精度は、Δ光量/Δインク量で測定している。
図11に示す実験結果から、検出板30が鉛直方向における中央部より0.1L〜0.2L上方の位置に取り付けられたときに、中央部に取り付けられた場合よりも検出精度がよくなることが分かる。
インク吐出装置10によれば、インク袋20を鉛直方向に配置する場合に鉛直方向におけるインク袋20の中央部より上方の第1面に検出板30を配置することで、フル状態に近い状態においてインク袋20内のインクが増減した場合に、検出板30が回転しながら水平方向に変位するので、検出板30の変位量を大きくできる。したがって、インク袋20のフル状態を精度よく検出することができる。
また、エンプティ状態とフル状態との間の変位量は、鉛直方向におけるインク袋20の中央部の第1面と比較して、中央部より上方の第1面の方が小さいので、光学センサ40の検出エリア43を小さくすることができる。したがって、インク吐出装置10の小型化を図ることができる。
さらに、インク袋20の鉛直方向の寸法をLとするとき、検出板30を、鉛直方向においてインク袋20の中央部より0.1L〜0.2L上方のインク袋20の第1面に配置することで、フル状態に近い状態における検出板30の変位量が大きくなるので、インク袋20のフル状態をより精度よく検出することができる。
また、第1面の検出板30が接着された箇所の高さと略同じ高さの第2面の部分を、インクの収容量にかかわらず変位しないように、固定部材33を介して板材34に固定することで、インク袋20内のインクの増減によるインク袋20の第1面20Aの変化を、検出板30が配置された第1面20Aにのみ表すことができる。また、インク袋20内のインク量が減少した場合でも、少なくとも検出板30が配置された位置ではインク袋20の倒れ込みを防ぐことができる。したがって、インク袋20のエンプティ状態及びフル状態を、より精度よく検出することができる。
さらに、必要最小限の大きさの検出エリア43を有する光学センサ40を用いることで、インク吐出装置10のさらなる小型化を図ることができる。
また、インク吐出装置10では、フル状態及びエンプティ状態の検出のみに限らず、任意のタイミングで全ての状態のインク袋20内のインク量を、光学センサ40によって測定することができる。
インク吐出装置10は、フル状態を精度よく検出できるので、インク袋20にインクを補給する作業を自動的に精度よく行うことが可能になる。したがって、画像形成用の一般的なインク吐出装置だけでなく、長時間の稼動を必要とする製造装置としてのインク吐出装置としても利用できる。
なお、上述の実施形態では、インク袋20を鉛直方向に配置する場合について説明したが、水平方向に配置した場合でも、インク袋20のフル状態及びエンプティ状態を精度よく検出することができる。この場合、流入口26及び流出口27は、水平面内の所定方向におけるインク袋20の第1の端部に設けられる。
インク袋20を水平方向に配置したとき、インク袋20には周囲28に接着部があり、インク袋20は可撓性を有するため、インク袋20の第1面(上面)20Aのうち、上述の所定方向における中央部以外の箇所の表面は、インク袋20内のインク量が増減するときに、傾きの角度を変えながら鉛直方向に変位する。このため、インク袋20を水平方向に配置した場合も鉛直方向に配置した場合と同様に、インク袋20内のインク量が増減するときに、図7に示すように検出板30は回転運動しながら鉛直方向に変位するので、検出板30が検出エリア43を遮光する面積の変化量は大きくなる。
また、インク袋20内のインク量が増減するときに、インクは重力によってインク袋20の下部に溜まり、第1の端部と反対側のインク袋20の上面と第1の端部側のインク袋20の上面とでは第1の端部側の上面の方が傾きの角度の変化量が大きくなる。このため、検出板30を第1の端部側のインク袋20の上面に配置した方が、検出板30が大きく回転しながら変位することになる。したがって、インク袋20を水平方向に配置するときは、上述の所定方向において中央部より第1の端部側に検出板30を取り付けることで、インク袋20内のインク量の検出精度を向上させることができる。
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。